2020年8月9日日曜日

鹿児島県馬毛(まげ)島にFCLP建設決まる。米海軍と自衛隊の訓練施設へ

本政府が鹿児島県馬毛島を米海軍空母航空隊5(CVW5)ならびに自衛隊F-35B向けに陸上空母発着艦訓練(FCLP)施設を開発する案を発表した。

131027 Mage Island Nishinoomote Kagoshima pref Japan01ss

663highland / CC BY-SA

 

政府は151百万ドルを地主に支払い、環境影響アセスメントを今秋にも行う。▼滑走路二本、機体格納庫、燃料施設が基地に構築される。主滑走路は8千フィート、横風滑走路は6千フィートとなる。自衛隊員150から200名が駐屯する。工期は4年の予定。▼基地への物資補給は陸上自衛隊のMV-22が行う。▼米海軍パイロットは空母想定の着艦訓練を硫黄島のFCLPで行っているが、海兵隊岩国航空基地から1,400キロ離れている。馬毛島FCLPが完成すると移動距離は400キロに縮まる。■


馬毛島を巡って過去にもお金が絡んだ話がいろいろあって、あらさがしが好きな野党が政府を攻めたてそうですね。ただし、野党にそこまでの調査能力があればの話ですが。自然破壊の大義名分をかざすのでしょうか。工期4年とありますが、すでに島では滑走路を想定した開発が先行しており、十分完成しそうですね。ただし、某国の息のかかった反対運動の妨害がなければですが。

この記事は以下を再構成しました。

Japan unveils plan to develop Mage Island into FCLP for CVW 5 and JSDF F-35Bs

http://alert5.com/2020/08/08/japan-unveils-plan-to-develop-mage-island-into-fclp-for-cvw-5-and-jsdf-f-35bs/#more-83704

Posted on August 8, 2020


2020年8月4日火曜日

スカイボーグ製造競作始まる。実現すれば空の上の戦いの様相はどう変わるのか。

空軍は納期および納入数を特定しない形でノースロップ・グラマンボーイングクレイトスジェネラルアトミックスの4社競作で、スカイボーグの製造契約を交付した。各社は米航空宇宙企業で技術力の高い企業である。


スカイボーグとは
スカイボーグは「自律運航機能で低コストかつ有人機との共同運用を可能としつつ、制空権が確保できていない空域で敵に対し迅速かつ決定的な行動を実現する手段」と空軍は定義している。

同事業のねらいは無人航空装備にパイロット主体の作戦を支援させることだ。スカイボーグで「空軍パイロットは重要データを得て、迅速な意思決定が可能となる。スカイボーグは有人機に広範囲の状況認識を可能とし戦闘ミッションでの生存性を高める」という。

空軍の調達責任者ウィル・ローパーはスカイボーグで戦闘中に「集合インテリジェント」が生まれ、人工知能と有人機を統合し米国の航空優位性が維持できると語っている。

低コスト無人機の登場で空軍戦術はこう変わる。まず、無人機は長時間かつ単調な哨戒飛行に投入できる。詳細な状況認識以外にパイロットを解放し別任務に投入できるようになる。スカイボーグは高価値機材のF-22やF-35の防御にも投入でき、高リスクミッションでパイロットの生命を守る効果も生まれる。

「実現すれば、各種機材に発展し、情報収集の神経網を共有しつつ敵に対しマシンのスピードで対応できるようになる」とローパーは説明しており、マン-マシン統合に言及した。興味深い話だがスカイボーグには課題もある。

単純な事前プログラムどおりの戦術行動に加え、スカイボーグでは人工知能と無人機ネットワークで収集するデータを組み合わせて高度の意思決定が可能となると、敵無人機だけでなく敵有人機への攻撃も可能となる。

なかでも物議になりそうなのはスカイボーグ含む無人機にどこまでの自律性を認めるかだ。武装している場合は攻撃させていいのか。

ローパーも武装無人機に倫理上の落とし穴があるのを認めており、武装無人機でも米軍搭乗員が守る倫理基準を順守させると主張している。「自律型UAVsで選択の幅は広がるが、交戦規則は守る。プロとしての空軍隊員は空軍創設時以来この倫理基準を守っており、自律型UAVsだからといって、これを変えることはない」

これからの航空戦への影響は
もう一つの問題は低価格無人装備の登場で武力対立がエスカレートする危険だ。人命や財産への危険が下がれば戦闘の敷居も低くなる。この意味は将来の航空戦で明らかになるはずだ。■

この記事は以下を再構成したものです。

August 1, 2020  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: F-22F-35SkyBorgU.S. Air ForceMilitaryDefenseUAVs

Caleb Larson holds a Master of Public Policy degree from the Willy Brandt School of Public Policy. He lives in Berlin and writes on U.S. and Russian foreign and defense policy, German politics, and culture.

2020年8月3日月曜日

GPSの脆弱性をカバーする地磁気センサーをもとにした航法技術の実用化を狙う米空軍

空軍が人工知能を応用し、地磁気から航法地図を作成する技術の開発を民間公開方式でスタートした。

GPSの脆弱性については軍関係者から何度も警鐘が出ているが、研究陣は解決に取り組んでおり、量子時計から慣性航法まで多様な手段を研究している。米空軍ではあらたに地球の磁場の利用を提唱し、安全に位置情報をまず航空機で入手する方法となるとし、その他装備にも展開できる可能性がある。

磁場は地表の場所で強度が異なり、磁気異常分布図としてこれまで整備されてきた。2017年に空軍工科大学助教授のアーロン・カンチアーニが航空機に磁気センサーを装備すれば磁場強度が把握でき、判明している「地理特徴」に参照させれば機体の現在位置がわかるはずと考えた。論文ではセスナ機の前後に磁力センサーを搭載するとある。40時間のフライト分のデータと読み取り時のノイズ除去の工夫で主張に根拠があることが分かった。

だがGPSのかわりに磁場を使うのはそう簡単ではない。宇宙空間なら信号は明瞭だが、機体自体に流れる電流がセンサーに干渉し磁場測定の支障となる。そこで人工知能の出番となり、センサー読み取り値からノイズを除去し信号を明瞭にし、精度も上げる。

空軍で民間と連携してイノベーションを研究するAFWERX部門はMIT研究者とこの問題に取り組み、7月にペーパーを発表したところだ。磁場読み取りの精度は最高10メートルとGPSよりわずかに劣る程度まで実現できるとある。GPSの精度は3メートルだ。だが磁場センサーの読み取り値はGPS信号より妨害にはるかに強い。GPSは特定波長で送信する遠距離信号に依存するが、磁場センサーは機体周辺の磁力環境を読み取るだけだ。

「地球自体と磁場の大きさのため、地球自体の信号を妨害するのは相当困難で、相当というのは核爆発に相当する規模になる」とAFWERXのデイヴィッド・ジェイコブス少佐が本誌に語ってくれた。「それ以外に地殻からの信号を妨害しようとすれば巨大なスケールのマシンが必要となる。ただ機械学習によりこれも克服は可能でしょう」

空軍はAI業界に対しAIツールによる磁場航法の精度向上策を公募中だ。申し込みは8月28日に締め切る。

軍としては異例の動きで空軍上層部はデータセットを民間研究機関に公開し事業実現を目指している。空軍情報部でAIおよび機械学習の次長をつとめるマイケル・カナーンは民間企業向けに厳しい制約を課すのが通例の契約方式と異なり、民間のオープンソースデータと同様の共有ライセンス方式を考案した。契約ではユーザーは研究目的でデータを利用できるが、結果をAI業界に公開する義務を負う。「この方式は今年できたばかりですが、今回の案件以外でも利用がはじまっています」(カナーン)■

この記事は以下を再構成したものです。


Officials just launched a public challenge to help create the artificial intelligence needed to turn the planet’s magnetic fields into readable maps.

TECHNOLOGY EDITOR
JULY 31, 2020


トップガンにF-35C配備始まる。海軍航空戦術が変わる可能性に期待する。

TOPGUNスクールを傘下に置く米海軍航空戦闘技術開発センター(NAWDC)へF-35CライトニングIIの配備が始まった。同機はファロン海軍航空基地(ネヴァダ州)に昨日着陸し、機体には同センターの象徴とTOPGUNバッジがつくが目立たない形で米第五世代戦闘機の標準を守っている。


厳しい米海軍戦闘機ウェポンスクール(NFWS)を修了した初のF-35パイロットが5月に生まれており、F-35の登場で同スクールにこれまでにない変化が生まれそうだ。TOPGUN学生は所属飛行隊から機材を借りて訓練課程に参加する。F-35CがNAWDCに到着し、TOPGUN教官他はライトニングを別飛行隊から借りずに運用できるようになった。


NAWDCは各種機材を運用しており、敵機想定や戦術開発に投入している。TOPGUN教官はF/A-18Cホーネット、F/A-4/E/Fスーパーホーネット、F-16A/Bファイティングファルコンを敵機の想定で空対空戦術訓練に使っている。F-35Cが加わり、低視認性機材(ステルス)の敵機を模した飛行を教官が展開することで、スーパーホーネットやライトニングIIを操縦する学生の技量を完全に試すことが可能となる。


JAMIE HUNTER
F-16Aに乗るTOPGUN教官.


NAWDCの F-35C一号機は初期製造の海軍航空機番号168843の機体で以前は海軍初のF-35教育隊となった打撃戦闘機飛行隊101(VFA-101)「グリム・リーパーズ」に配備されていた。同隊は共用訓練センターのあるエグリン空軍基地(フロリダ州)で2013年から活
動していたが、VFA-125「ラフレイダーズ」が2017年1月にカリフォーニア州レムーア海軍航空基地で発足したため昨年解隊された。機体は2014年にVFA-101に配備され、飛行時間は少ないようだ。NAWDCは初期生産型機材を受領することが多く、海軍は新型機材は実戦部隊に配備するのを好む傾向がある。


米空軍も初期生産型機材のアグレッサーF-35Aをネリス空軍基地(ネヴァダ州)に配備しており、高水準の脅威対象を模擬し、ウェポンスクール学生向けに使う以外にレッドフラッグ等の演習にも投入している。


STEVE LEWIS
尾翼に目立たない形ながらNAWDCのシンボルと有名なTOPGUNバッジが描かれている。

NAWDCのF-35C各機はTOPGUN以外にファロン基地の教官にステルス戦術を駆使して第一線部隊に挑戦することが任務となる。第一線配備前に各パイロットはいったんネヴァダに集まり、訓練を受けている。より重要なのはF-35Cを普通に運用できるようになったNAWDCが新戦術をいちはやく試せば艦隊航空部隊へ大きな効果が生まれることだ。

F-35Cが一機ファロンに到着しただけだが、海軍航空部隊には大きな出来事につながり、海軍仕様の共用打撃戦闘機に歴史が刻まれたといってよい。■

この記事は以下を再構成したものです。

BY JAMIE HUNTERJULY 31, 2020



2020年8月2日日曜日

イスラエルはF-15に磨きをかけ、ここまでの高性能機材を実現した

スラエル空軍(IAF)にはF-15イーグルのイメージがぴったりだ。同国向けF-15A初号機は1976年に到着し、現在も第一線で供用中、しかも一機も喪失していない。1988年にイスラエル空軍は同機の新型式を導入し、空対空、空対地両面対応とした。これがラアムRa’am(雷鳴)で長距離攻撃機の主力で、新たに導入されたF-35Iアディルを補完し、イスラエルの航空優勢体制を確保し、今後も維持しそうだ。

マクダネルダグラス(現ボーイング)のF-15イーグルの登場当時は純然たる空対空戦闘機だった。大型単座戦闘機の同機はバブルキャノピーで良好な視界を確保し、強力なAPG-63レーダー、AIM-7スパローレーダー誘導ミサイル4発とAIM-9サイドワインダー赤外線誘導ミサイル4発さらにM61ガトリング銃を搭載。プラットアンドホイットニーF100エンジン双発で圧倒的な推力重量比を誇り、簡単に垂直上昇できた。

開発陣はF-15の多任務機型を想定して、大出力、長距離航続力、多数の空対地兵器搭載能力を生かそうとした。ここからF-15Eストライクイーグルが生まれ、米空軍で1989年から供用開始し、直後に1991年の湾岸戦争に投入された。

湾岸戦争でのストライクイーグルの活躍ぶりにイスラエルも注目した。湾岸戦争ではイスラエルもサダム・フセイン率いるイラクが発射したスカッドミサイルの攻撃を受けたが、イスラエルは報復攻撃を控えるようにとの米国の圧力へ渋々従った。とはいえ仮に報復攻撃に踏み切っていてもイラク西部でスカッド狩りに投入可能な長距離攻撃機や偵察機材は欠如していた。戦闘終結後もサダム・フセインは統治の座に残り、クウェートから軍は撤退させられたがイラクは依然としてイスラエルにとって脅威のままだった。一方で、イランが核兵器開発の初期段階にあった。イスラエルを脅かす勢力への抑止手段として長距離戦闘機が必要なのは明白だった。

F-15Eのコンフォーマル燃料タンクで長距離地点への攻撃が可能となる。空対地空対空双方への対応能力によりF-15Eは援護機材を必要としない。ここで思い出すべきは1981年のイラク原子炉攻撃で、IAFのF-15は援護機として攻撃部隊F-16と飛んだが、空中給油他支援機材の必要性が痛感された。一機ですべてこなせるというのは魅力だった。

イスラエルはF-15Iラアムを1994年5月に選定し、21機をまず購入することとした。初期機材は4機のオプション購入(ピースフォックスVI)がつき、1995年に購入規模は25機に増えた。その時点でF-15はイスラエル空軍で15年の供用実績があったが、イスラエル技術陣には機体改修の各種構想があった。イスラエル航空宇宙工業がボーイングと共同してエイビオニクスを大改修した。

F-15Iにはイスラエル独自の特徴が見られる。まずイスラエル製のメインコンピュータ。GPS/慣性航法システム、エルビット製のディスプレイ表示ヘルメット(DASH)がある。機体にはF-15E用の高度の電子戦装備が搭載されていたが、イスラエルはエリスラ製SPS-2110統合電子戦装備に取り換えている。

F-15IはF-15Aの装備品すべてを運用できる。ラアムは当初AIM-9Lサイドワインダーとパイソン赤外線誘導方式短距離ミサイルを搭載していたが、その後パイソンに絞られた。また旧式AIM-7スパローと新型AIM-120AMRAAMレーダー誘導方式中距離ミサイルを併用した。

F-15Iの双発エンジンと大型機体では燃料、弾薬合わせ18千ポンドの運用が可能となった。IAFは当初はクラスター爆弾ロックアイ36発あるいは空対地ミサイルのマーヴェリック6発を運用した。現在はレーザー誘導爆弾ぺイヴウェイ、衛星誘導爆弾の共用直接攻撃弾(JDAM)、「バンカーバスター」爆弾BLU-109、精密誘導爆弾SPICE、対レーダーミサイルAGM-88HARMも運用する。

F-15Iの初号機は1997年にイスラエルに到着し、その後毎月一機のペースで1999年まで納入された。供用期間は25年に及び、対テロ作戦以外に、2006年のレバノン戦、ガザ戦、国防の柱作戦、キャストレッド作戦にも投入された。F-15Iはイラン核施設攻撃作戦にも投入予定だったが、2015年にイランが西側と核合意に至ったため作戦は実施されていない。

IAFはF-35IアディルAdirを導入したが、F-15への期待に変化はない。IAFは同機を「戦略機材」と呼ぶ。イスラエルに足りなかった戦力を今後も長きにわたり補う機材の位置づけだ。

2016年にイスラエルは改修計画を発表しているので、F-15Iは今後も供用を続けるのは確実だ。改修ではレーダーを電子スキャンアレイ方式に換装し、エイビオニクスを一新する。2018年にIAFはF-15IとF-35を比較検討し、前者が優れていると判断した。イスラエルがF-15の追加調達に向かえば、今世紀の大部分にわたる供用となるのは確実だ。1970年代初期に初飛行した機体として、これは高評価である。■

この記事は以下を再構成したものです。

July 15, 2020  Topic: Security  Blog Brand: The Reboot  Tags: F-15lF-15MilitaryIsrael


Kyle Mizokami is a writer based in San Francisco who has appeared in The Diplomat, Foreign Policy, War is Boring and The Daily Beast. In 2009 he co-founded the defense and security blog Japan Security Watch.

2020年8月1日土曜日

あなたの知らない戦史(6)日本本土への化学攻撃で農業生産の破壊を準備していた米陸軍

あなたの知らない戦史(6: 日本への化学戦を真剣に検討していた米軍の遺産は今日も世界各地の農地に残る。

ラク・オバマ大統領の歴史的な広島訪問を受け、日本を降伏させ第二次大戦を終結させるため原子爆弾投下は必要だったのか米国内で議論が巻き起こった。だが議論が触れていないのは米軍が原爆以外の恐ろしい攻撃の準備をしていたことで、化学兵器で日本の農作物を死滅させる作戦もその一部だった。

1944年4月に米陸軍は農作物の全滅をねらい化学化合物の開発を開始した。一年後に日本本土攻撃に投入できる成果が実現していた。

「日本本土の農作物を化学兵器で破壊する作戦は第二次大戦末期に真剣に検討されていた」との証言が1946年の国防研究委員会報告書にある。

日本は広島、長崎が原爆二発で破壊された1945年8月に米国との戦闘を断念した。だが戦闘が続いていたら、米軍は日本の農業生産を化学攻撃で破壊していたかもしれない。

農地と貯蔵食糧を破壊し敵を痛めつける構想は昔からある。だが第二次大戦末期の米国には想像を絶する規模でこの構想を実施する準備があった。

1945年4月までに陸軍は1,000種超の化学薬品を首都ワシントンから50マイルも離れていないメリーランド州キャンプ・ディートリックで試験していたと陸軍の生物戦公式記録にある。

陸軍はオハイオ州立大学に有望な化合物200種類以上の合成を委託した一方でその他の化合物をキャンプ・ディートリックで開発した。陸軍は共通記号「LN」の次に番号をつけて化合物すべて分類した。

「化学製品による農産物破壊は戦時中ということもあり前例のないきめ細かさと規模で展開し、成果を収めた」と研究委員会はまとめている。

軍事効果だけを見るとフェノキシ酢酸が最有力だった。投入で植物は正常生育ができなくなり枯死する。

陸軍はフェノキシ酢酸を少なくとも8種類の化学兵器に展開した。なかでもLN-8が一番の成果をテストで示し、大量生産に移された。ダウケミカルがLN-8を固体、アンモニアとの混合物、濃縮液三型式にした。ペンタゴンは三種類を野菜殺し酸、野菜殺し塩、野菜殺し液と呼んだ。

日本を除草剤で攻撃する方法として陸軍は空中投下あるいはスプレイ放射を考案した。農地や水田を有害物質で覆い尽くすのがねらいだった。

1945年4月にB-25に550ガロンタンクを爆弾倉に搭載し、インディアナ州テレホート、テキサス州ボーモントの試験農場で散布テストを実施した。各機は野菜殺し酸の雲を展開した。ディーゼル燃料等と混ぜることが多かった。

陸軍は高濃度で粘度を高くすれば途中で吹き飛ばされず安定して地上に届くと分かった。

「ただし散布効果を高めるため危険な低空飛行が必要とされた」と陸軍の生物兵器年報にある。「日本の水田を攻撃する場合は長距離高高度飛行が可能な大型爆撃機が必要とみられた」

陸軍航空軍は日本の都市部や産業集積地を標的に焼夷弾攻撃をすでに展開していた。散布テストの前月には東京空襲一回で100千人を殺傷し、280千棟に火災を発生させ、数百万名が住処を失った。

ペンタゴンは農作物破壊攻撃も同様に行う構えだった。1945年6月に米陸軍航空軍のB-25はユタ州のグラナイトピークの演習地でクラスター爆弾を投下した。

各キャニスターにLN-8混合物125ポンドが入っていた。だが実験は失敗でキャニスターが正しく開かなかった。陸軍は急いで別の手段に走った。

翌月にB-25はグラナイトピークに再び現れSPDマーク2爆弾を投下した。設計が簡略化され、格納部分に200ポンド近くの野菜殺し酸が入った。B-29なら十数発を搭載できた。

設定高度で外装が開き化学成分が空中放射された。陸軍はSPDを量産し、炭疽菌やリシンを生物兵器にも利用するとした。

SPDは作動したが、テストで新たな問題が浮上した。高高度で投下すると落下地点が拡散し、除草剤効果も拡散する。一方で地面近くで展開するとやはり効果が期待通りにならない。陸軍は爆発地点の最適高度を割出し、最大効果を上げるLN-8の格納容器のサイズも把握した。

一番効果が高いのは広葉の農産物と判明した。他方で穀物作物の小麦や米に効果が低いとわかった。このため陸軍は別の化学組成物の模索を始めた。

ただ化学製品による野生生物やヒトへの毒性は問題にしていない。1925年のジュネーブ協定では戦闘中の化学・生物兵器の使用を禁じている。

だが1947年時点で米陸軍はLN-8含む化学製品の危険性を正確に把握していなかった。土壌にいつまで残留するのか、水源を汚染した場合の効果もわかっていなかった。

「大量に使うと、2,4-Dは胃を刺激するが致死性はない」と陸軍は結論し、LN-8の有効成分に触れている。「2,4-Dは吸引しても非毒性で皮膚吸収も即座には発生しない」

B-29数百機が野菜殺し酸数千ポンドを日本の農業地帯に投下した場合、予測通りになったか不明だ。戦後はダウはじめ化学メーカー数社が研究成果をもとに民生用除草剤として販売開始した。

1987年に世界保健機関がこの化学品をがん発生物質と区分した。だがその20年後に米環境保護庁(EPA)はがん発生物質と結論付けられないと発表している。

LN-14も同じだったのかは不明だ。これも米陸軍が日本へ投下を想定していた。戦後数十年して研究者はこの生産工程でがん発生につながる危険物質が生成されていたことを発見した。これは一般にダイオキシンと呼ばれる。

米空軍と陸軍は同じ化学薬品数千ガロンを南ベトナム上空で1960年代1970年代に散布した。悪名高い除草剤エージェントオレンジにはLN-8と-14の有効成分が入っていた。

1985年にEPAは同製品の米国内販売使用を完全禁止した。ただし、ダウケミカルは2,4-D にグリホサートを混ぜた製品を米農家向けに販売すると発表し、この製品はラウンドアップの商品名で知られる。■

この記事は以下を再構成したものです。

July 31, 2020  Topic: Security  Region: Asia  Blog Brand: The Reboot  Tags: HistoryJapanWorld War IIHiroshimaWWIIMilitaryChemical Weapons


エリア51の真実

リア51を巡る噂は数多い。CIA、UFO分解工場、極秘米空軍研究施設?真偽はわからないが、グルーム湖を巡り判明している事実は以下の通りだ。

ソ連機材の性能評価
海外機材の評価で最大の成果が得られたのはMiG-21だった。▼1959年に迎撃機として登場したMiG-21はソ連と友好関係の各国へ広く輸出された。▼同機はヴィエトナムで本領を発揮し、米機材を多数撃墜したものの、旧型で低速かつ軽武装とみられていた。

1966年にイスラエルのモサド諜報機関がイラクパイロットのムニル・レドファの亡命工作を展開した。▼MiG-21のパイロットレドファはキリスト教徒のためイラク空軍での昇進に困難を感じていた。▼モサドは本人に亡命の意思があるのを知り、家族ともどもイスラエルへ脱出させた。▼レドファは巧妙な偽装でMiG-21をイラクからイスラエルへ飛ばし着陸させた。

イスラエルは入手したMiG-21の性能を調査した。1968年に同機は米国に貸し出され、国防情報局(DIA)のHAVE DOUGHNUTプロジェクトに使われた。▼このプロジェクトが展開したのがエリア51だった。▼同様にDIAはHAVE DRILLでMiG-17をこれもイスラエルの提供でグルーム湖で調査した。ともに調査結果から米空軍の対ソ連機戦術が変更されヴィエトナム戦に間に合った。

ステルススパイ機
エリア51は空軍、CIAの開発事業が数々展開している場所だ。▼U-2スパイ機はソ連上空偵察活動を想定した機体で人の目に触れない場所でテストの必要があった。▼U-2は高度70千フィートというい信じられない高高度で運用可能で、奇妙な外見からUFOハンターや陰謀説者に格好の材料となった。
ところが1960年にU-2がソ連上空で撃墜されるとCIAはソ連対空ミサイルや迎撃機の届かない空域をマッハ3+で飛行する機体が必要と判断。▼グルーム湖でCIAはA-12の初期試験開発を行い、同機ががSR-71ブラックバードになった。▼その後継機SR-72もグルーム湖にあるのか。

SR-71もある程度ステルス性能を有していたが、1977年に空軍は初の完全ステルス機を公表した。▼これがF-117ナイトホークでやはりテストはやはりグルーム湖で行われた。



今でも重要な拠点なのか
2019年、ロシア機が米ロ間のオープンスカイズ条約によりエリア51上空を飛行し写真撮影している。▼エリア51にはまだ秘密が隠されているようである。■

この記事は以下を再構成したものです。

July 27, 2020  Topic: Security  Blog Brand: The Reboot  Tags: HistoryArea 51MilitaryTechnologyUFOs
Area 51 has played host to a number of Air Force and CIA aircraft development projects.
Caleb Larson is a Defense Writer with The National Interest. He holds a Master of Public Policy and covers U.S. and Russian security, European defense issues, and German politics and culture.