米空軍が人工知能を応用し、地磁気から航法地図を作成する技術の開発を民間公開方式でスタートした。
GPSの脆弱性については軍関係者から何度も警鐘が出ているが、研究陣は解決に取り組んでおり、量子時計から慣性航法まで多様な手段を研究している。米空軍ではあらたに地球の磁場の利用を提唱し、安全に位置情報をまず航空機で入手する方法となるとし、その他装備にも展開できる可能性がある。
磁場は地表の場所で強度が異なり、磁気異常分布図としてこれまで整備されてきた。2017年に空軍工科大学助教授のアーロン・カンチアーニが航空機に磁気センサーを装備すれば磁場強度が把握でき、判明している「地理特徴」に参照させれば機体の現在位置がわかるはずと考えた。論文ではセスナ機の前後に磁力センサーを搭載するとある。40時間のフライト分のデータと読み取り時のノイズ除去の工夫で主張に根拠があることが分かった。
だがGPSのかわりに磁場を使うのはそう簡単ではない。宇宙空間なら信号は明瞭だが、機体自体に流れる電流がセンサーに干渉し磁場測定の支障となる。そこで人工知能の出番となり、センサー読み取り値からノイズを除去し信号を明瞭にし、精度も上げる。
空軍で民間と連携してイノベーションを研究するAFWERX部門はMIT研究者とこの問題に取り組み、7月にペーパーを発表したところだ。磁場読み取りの精度は最高10メートルとGPSよりわずかに劣る程度まで実現できるとある。GPSの精度は3メートルだ。だが磁場センサーの読み取り値はGPS信号より妨害にはるかに強い。GPSは特定波長で送信する遠距離信号に依存するが、磁場センサーは機体周辺の磁力環境を読み取るだけだ。
「地球自体と磁場の大きさのため、地球自体の信号を妨害するのは相当困難で、相当というのは核爆発に相当する規模になる」とAFWERXのデイヴィッド・ジェイコブス少佐が本誌に語ってくれた。「それ以外に地殻からの信号を妨害しようとすれば巨大なスケールのマシンが必要となる。ただ機械学習によりこれも克服は可能でしょう」
空軍はAI業界に対しAIツールによる磁場航法の精度向上策を公募中だ。申し込みは8月28日に締め切る。
軍としては異例の動きで空軍上層部はデータセットを民間研究機関に公開し事業実現を目指している。空軍情報部でAIおよび機械学習の次長をつとめるマイケル・カナーンは民間企業向けに厳しい制約を課すのが通例の契約方式と異なり、民間のオープンソースデータと同様の共有ライセンス方式を考案した。契約ではユーザーは研究目的でデータを利用できるが、結果をAI業界に公開する義務を負う。「この方式は今年できたばかりですが、今回の案件以外でも利用がはじまっています」(カナーン)■
この記事は以下を再構成したものです。
Officials just launched a public challenge to help create the artificial intelligence needed to turn the planet’s magnetic fields into readable maps.
TECHNOLOGY EDITOR
JULY 31, 2020
これはおもしろい。地磁気ですか、考え付かんかったなあ。
返信削除ロボット天測を現代技術で改良するかな?とか思ってました。
でも、「AI」って言われるとなんかうさん臭くてイヤですね、個人的に。
「機械学習」だと、すとんと腑に落ちるのですが。