Lt. Rob Morris, from Annapolis, Md., observes a F/A-18F Super Hornet from the “Jolly Rogers” of Strike Fighter Squadron (VFA) 103 land on the flight deck of the Nimitz-class aircraft carrier USS Abraham Lincoln (CVN-72) on May 30, 2019. US Navy Photo
米海軍が新型艦載戦闘機の開発作業を静かに開始した。20年ぶりの開発となり、事業室を立ち上げ、業界と協議を始めた。USNI Newsの取材でわかった。
新型機はF/A-18E/Fスーパーホーネット、EA-18Gグラウラー電子攻撃機を2030年代に更新する大規模事業だ。
調達部門トップに就任したジェイムズ・ゴーツは次世代航空制空戦闘機(NGAD)構想の事業推進室を立ち上げたと先週記者団に明かしている。
海軍航空システムズ本部(NAVAIR)が発足させたNGAD事業推進室だが、時あたかもペンタゴンは予算不足に直面しながら新国防戦略でロシア、中国の脅威にインド太平洋地区で対抗する必要に直面している。
新型有人戦闘機の目指す方向
米海軍は有人戦闘機の実現にむかっており、F-35CライトニングII共用打撃戦闘機で実現した性能以外にさらに進歩した技術も導入し、航続距離は伸びるはずとブライアン・クラーク(ハドソン研究所で海軍関係アナリスト)はUSNI Newsに以下述べている。
「既存の性能と同様の水準を21世紀モデルとして構築する必要がある。センサー入力は全てシームレスに融合統合し、パイロットに活用させる必要がある。自律運航機能の採用も必要だ」とクラークは解説する。「そうなるとパイロットにはコンピュータとの共同作業がF-35以上に必要になり、コンピュータが機体を飛ばしシステムを操作する度合いが今以上になる」
海軍は完全新設計の第六世代機というものの、ロッキード・マーティンF-35とボーイングF/A-18を合わせて新技術を盛り込もうとしているとクラークは解説する。
「これではうまくいかないのではないか。コストが上昇するが、海軍には予算に余裕はない」
F-35の戦闘行動半径が700カイリだが、海軍は1,000カイリ以上を望んでいる(クラーク)。
開発工程を加速化する
海軍が新型機の配備開始に想定する2030年代にはスーパーホーネットが耐用年数末期に達する予定で、海軍はスーパーホーネットの供用状態をにらみながら時間の余裕がないことも承知している。
事業を加速しつつ新設計構想の実現を狙う海軍だがペンタゴン予算に余裕がない。
「海軍は時間表を早めてNGADをスーパーホーネットに交代させるつもりだが、新設計でエンジンも新型になれば、技術リスクも増える。同時に日程を早めれば日程上のリスクが増えるし、対策予算が確保困難な環境になる」(クラーク)
海軍の2021年度予算案ではスーパーホーネット調達を終了し、製造元ボーイングとの複数年度調達の最後とする。海軍は5年間で45億ドルを捻出してNGADに使うと説明している。
議会予算局の2020年1月報告ではF/A-18E/Fの更新機に670億ドルが、グラウラーでは220億ドルが必要と試算している。
「試算には新型ジャマーポッドの配備費用、既存装備の能力向上費用は含んでいない」と報告書にある。「たとえば、海軍は新世代ジャマーポッドをEA-18Gに搭載するが、これだけで40億ドルかかる」
事業推進室立ち上げ
海軍はNGADの代替策検討(AOA)を2019年7月に行ったが、国防長官付のコスト評価事業評価(CAPE)はAOAは「不十分」と2019年9月にまとめたとNAVAIR広報官コニー・ヘンペルがUSNI Newsに明かしている。
NGAD事業のスタートとして海軍は次世代制空機事業推進室を5月に発足し、海軍ではこれをPMA-230と呼称している。その主幹にアル・ムソー大佐が就任した。ムソーは以前はミッション統合特殊事業室(PMA-298)でも主幹を務めていた。
海軍はNGADに関し民間企業との接触を始めており、ボーイング、ロッキード・マーティン、ノースロップ・グラマンの競作になりそうだ。
情報請求がいつ出そうかと問われて、ヘンペル広報官は必要書類を準備中と答えた。
海軍からスーパーホーネット、グラウラーの後継機の詳細はほとんど発表されていない。だが2016年に海軍は各種システムのファミリー構成方式を模索しこれをF/A-XXとして戦闘機一機種を調達する以前の構想を変更した。
各種システムのファミリー方式で海軍は空軍のNGAD開発と類似した道をたどるとクラークが解説し、海軍は有人戦闘機を購入し、その他無人装備で補完してミッションを完遂する。
「ウェポンペイロード、ステルスも大切だが、速力、航続距離を重視する。C4ISR性能を引き上げるが、搭載量や敵防空網突破能力の一部は重視しない。こうした性能は無人装備に任せる。そこで各種システムのファミリー構成が活きてくる。F-35を5機投入するかわりに新型機3機うち無人機数機で同じミッションが実行できる」(クラーク)
新型有人機にはステルスを、無人機には速力、航続距離、大量搭載能力を任せるのが各種システムのファミリー構成の骨子だ。
海軍作戦部長マイケル・ギルディー大将は昨年末に海軍が目指す将来の航空戦力は有人、無人双方の装備で構成するとワシントンDCで開かれたフォーラムで述べていた。ただし、航空機の運用装備については今日の原子力空母以外の可能性もあると匂わせていた。
新型戦闘機構想が進む中で、敵勢力が低コスト長距離ミサイル整備を進めており、空母を狙うことへ対抗策が必要とクラークも指摘する。
「新型有人機の航続距離を延長して、中国、イランさらにロシアが長距離ミサイルで空母を狙う状況に対抗する構想ですが、勝ち目のないゲームになります。というのはミサイルのほうが安価なためです。航空機は高価ですので費用対効果で不利なのです」
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有人機、無人機の併用でこの問題に対応できそうだ。
「費用対効果の問題はこれで解決できるかもしれません。航空機をそこまで長距離飛ばす必要がなくなります」
「機体を何千マイル飛ばしても、敵の対艦弾道ミサイルは2千マイル先から発射できるわけで、有人機は到達不可能です。有人機にはせいぜい千マイルまで対応させればよく、その先は無人装備に任せればよいのです」■
この記事は以下を再構成したものです。
Navy Quietly Starts Development of Next-Generation Carrier FighterN
August 18, 2020 7:27 PM
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