海兵隊の大胆な戦力再編で戦車中隊の一部が解隊されている
再編は迅速な戦力展開をめざすためだが、他軍に海兵隊業務を任せると各軍間の関係が悪化すると危惧する向きもある
米海兵隊は戦車を全廃し太平洋の離島伝いに展開できる機動力の整備を進めているが、陸軍が業務を引き受ければ軍間の分断状態が発生すると防衛専門家が警句を鳴らしている。
海兵隊戦車中隊の一部で運用停止がすでに発生しており、今週も第二戦車大隊C中隊がノースキャロライナ州のキャンプ・レジューンで解隊された。同中隊のM1A1エイブラムズ戦車が搬出された。第一戦車大隊でも同様の光景が展開された。
この動きには複雑な心情もあり、方針に不満を感じる退役海兵隊員は、保守系シンクタンクのヘリテージ財団主催の仮想イベントで「これからの戦闘にむけた海兵隊再編はそもそも必要なのか、それとも狂気の沙汰なのか」と題するセッションを開いた。
第一戦車大隊にあった最後の戦車がカリフォーニア州の海兵隊航空地上戦センターから搬出された。2020年7月6日。 US Marine Corps/Sgt. Courtney White
「海兵隊は自らをスイスアーミーナイフと見られるのを好む」とマーク・キャンシアン退役海兵大佐(現戦略国際研究所顧問)が発言。「だがスイスアーミーナイフの持ち主はもう不要になったからと切れ刃数枚を外してしまった」
キャンシアンと、退役中佐フランク・ホフマン(国防大学特別研究員)はともに強力な敵を相手とする次の戦闘に備える海兵隊総監のデイヴィッド・バーガー大将の部隊再編構想には良い点もあるとも認めている。
ホフマンは改編は国家防衛戦略につながる点が多いと指摘。長射程精密火砲や小型揚陸艇への予算重点投入は中国と開戦の際に必要な措置とキャンシアンが追加コメントした。
ただし両名は海兵隊から戦車全廃の決定には懸念を表明した。
「海兵隊でなくなる能力は陸軍が提供してくれるという。だがこれは実現しないと思う」とキャンシアンは述べ、「海兵隊で必要な場面が発生すれば陸軍に助けを求めることになる。そうなると軍間で利害が対立するのではないか」
エリック・スミス中将は海兵隊で戦闘開発本部を率い、Military.comに即応部隊としての海兵隊は可能な限り軽装備で移動可能にする必要があると今年初めに語っていた。
「国防総省にはその他の軍組織があり、そもそも統合運用をしているので大規模な威力を発揮できる」とスミスは述べ、「例として陸軍に戦車大隊は37個もあり、戦車戦力として十分な規模だ」とした。
キャンプペンドルトンのホワイトビーチで海兵隊のM1A1エイブラムズ戦車を揚陸舟艇から誘導する海軍隊員。 US Marine Corps
これに対しホフマンは海兵隊構想が統合部隊の戦略方針に合うかまだわからないと指摘した。陸軍部隊に海兵隊任務を補完させるのであれば、今までと違う訓練や戦闘方針が必要という。
キャンシアンも同じ意見で、海兵隊構想で陸軍に追加任務が課せられると指摘。両名は海兵隊予備部隊に戦車を温存すべきと提言した。
「これならリスク対応としては妥当な戦略方針だ」とホフマンは述べた。両名とも海兵隊予備部隊にいたことがある。
だが予備部隊では第四戦車大隊A中隊がすでに解隊されている。第四大隊の六個中隊は大隊司令部と2021年までに解隊される。■
この記事は以下を再構成したものです。
The Marine Corps' big plans to get rid of its tanks could end up being a hassle for the Army
Gina Harkins, Military.com 18 hours ago
コメント
コメントを投稿
コメントをどうぞ。