指向性エナジーが実用化されれば戦力増強効果は莫大となり、このため同技術の開発に重点がおかれている。
「指向性エナジー兵器」構想はかつては空想科学小説の世界だけの存在だったが、早くも1930年代に英航空省が「殺人光線」兵器の開発を検討していた。研究はロバート・ワトソン-ワットが担当し、実現不可能とわかり、研究成果はレーダー開発に流用された。
指向性エナジー兵器の開発は既存技術をもとに継続されており、高出力マイクロウェーブ波もその一例だ。一方でロッキード・マーティンなど防衛産業の電磁エナジー研究開発も進んでおり、高出力にして画期的な指向性エナジー兵器の実現をめざしている。
調査企業GlobalDataがこのたび発表した報告書では指向性エナジー兵器(DEWs)の技術成熟度が急速に伸びており、広範囲で活用できる実用的かつ費用対効果に優れた運用が視野に入ってきたとある。その通りに開発配備が進めば、DEWsには大きな革命的効果を長期にわたり生む可能性がある。
同社報告書ではここ20年間でDEWsの軍事活用は研究開発段階から作戦部隊に移り、なかでもレーザーの軍事利用は高効果を生む手段と認識されるようになった。また報告書では資金投入の増加傾向が多くの軍で見られ、2030年代にかけてもこの流れは続くとあり、研究開発活動がさらに拡大される。
米国はDEWs開発で世界をリードし、2017年度から2019年度だけでも資金投入を535百万ドルから1,100百万ドルと倍増させている。その他国に中国、インド、ロシアがあり、DEWs開発を急いでいる。ただし、こうした各国は米国に匹敵する熱意を同技術に示していない。イスラエルは中東北アフリカ地域で唯一同技術に力を入れている。
現在のDEWs開発の中心は防御用途で、重要インフラ施設の防御や軍用車両、装備品の防衛も期待されている。具体的には飛来するミサイル、ロケット弾、無人機、無人機の群れ、小舟艇に対応する構想だ。
「今のところDEWsは防衛に焦点を合わせており、大きな可能性を秘めるものの、通常型兵器に対しても優位性を発揮できる。そ光速性能、精密攻撃、規模を自由に制御できる特性、補給面での優位性、また発射当たり低コストであることがその理由だ」とGlobalDataでアナリストをつとめるヌレッティン・セヴィ(トルコ陸軍大尉)は指摘。
「DEWsは最近になり既存の運動性兵器と並んで戦闘場面に投入されるようになってきた」とセヴィはいう。「将来の戦闘場面を一変する可能性を秘めている。ただし、軍、防衛産業は課題を抱えており、レーザー兵器では大気の状態で効果が下がり、拡散、あるいは振動、熱ブルーミングといった問題を解決していない」
DEWs技術で高度技術の脅威に十分対抗できるとされ、極超音速ミサイルや無人機の同時投入もその例という。DEWsは非殺傷用途にも投入可能で、デモ隊鎮圧や機械類を作動不能にできる。GlobalDataによれば指向性エナジーは今後さらに威力を増大させ、戦闘の成否を握る存在になるばかりか既存兵器にとって代わる存在になるという。
「戦場に投入可能なDEWsがあるかないかで2020年代の軍部隊の差がひろがるはず」とセヴィはいう。■
この記事は以下を再構成したものです。
Forget Stealth Fighters: Will Directed-Energy Weapons Revolutionize Warfare?
August 13, 2020 Topic: Security Region: Americas Blog Brand: The Buzz Tags: MilitaryTechnologyWeaponsWarEnergy
by Peter Suciu
Peter Suciu is a Michigan-based writer who has contributed to more than four dozen magazines, newspapers and websites. He is the author of several books on military headgear including A Gallery of Military Headdress, which is available on Amazon.com.
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