昨日(8月13日)にNHKがこの記事をかいつまんで報道して驚いたので、今回全文を翻訳してみました。あまりにも偏向した内容といわれても仕方ないのか、本当に信念をもって公開書簡を送付したのか、Defense Oneが掲示した意味に考えさせられます。しかし、翌日にすぐさま反論投稿を掲載しているのはさすがです。(これは次回掲載します)。
ミリー大将殿、
貴官は平時における統合参謀本部議長の職責をよくご理解いただいているものと存じます。最高軍事顧問として米大統領に意見具申するとともに大統領並びに国防長官の下す法に基づく命令を戦闘部隊に伝達することです。平時におけるこうした職責は貴官が就任時に宣誓した「あらゆる敵から、国内外を問わず米国憲法を支え、守る」一環であります。
ただし今は平常時ではありません。米国大統領は選挙制度を積極的に覆そうとしており、憲法に反しても現在の地位に留まる構えを示しています。今後数か月のうちに、貴官は法に従わない大統領に公然と反旗を翻すか、貴官の宣誓に反する行動をとるかの二者択一を迫られる可能性があります。我々両名は貴官の選択を支持いたします。ドナルド・トランプが憲法で定める任期を超えても大統領の座を降りるのを拒む事態が発生すれば、米国軍の力で本人を除去すべきであり、貴官はその命令を下すべきです。
事態が合わさり恐ろしい状況になれば、以前なら考えるのもはばかられたシナリオ、米国内に強権的統治を敷く可能性が現実に強まります。まず、トランプ氏が大統領選挙で敗北した場合、本人は選挙結果で示された民意を軽視するはずです。次に、トランプ氏が敗北した場合、刑事訴追を受ける可能性もあります。三番目に、トランプ氏が民兵を組織し選挙結果を覆すばかりか、通常の法執行機能も妨害する可能性があります。2021年1月20日の大統領就任日に各勢力が衝突すれば、憲法に定めた秩序を維持できる力を持つのは米軍部隊のみとなります。
トランプ氏の落選は間違いないといってよいでしょう。160千名超の米国民がCOVID-19で死亡し、さらに合計数は11月には300千名に上ってもおかしくない状況です。米労働者の10名につき1名が失業状態にあり、米経済は直近の四半期で史上最大規模の景気後退に直面しています。米国民の7割近くが国の針路が誤っていると感じています。エコノミスト誌によればトランプ氏の落選可能性は91パーセントです。
暗い予測の中、トランプ氏は組織的な情報操作で選挙制度への国民の信頼を揺るがせております。同氏は郵送方式による投票は「不正確かつ不正」と根拠のない主張を展開しております。米郵便公社の業務を積極的に妨害し、郵送方式投票を遅らせ、信頼に泥を塗っています。また大統領投票の先送りも示唆していますが、本人にその権限はありません。
2020年大統領選挙の結果はトランプ氏にとって極めて重要です。落選の場合、刑事訴追を受ける可能性があります。マンハッタン地区地方検事はトランプ組織が銀行・保険両面で金融資産を過大評価する詐欺を働いたかどで調査を進めています。ニューヨーク州法務長官も同様の調査をしており、トランプの財務記録をドイツ銀行に提出させるのに成功しています。トランプ氏は駐英大使に対し全英オープンゴルフトーナメントをトランプ・ターンベリ・リゾートのあるスコットランドで開催するよう英国政府に圧力をかけさせました。この件は大統領在任中に利益誘導を禁じた連邦刑法で訴追対象となり、他にも多くの事例が出ています。
政界で有望な人物への恫喝が多数あるのに加え、自身の富と名声を使うトランプ氏の行いは歴史上の独裁者と同一であります。自身は私兵を組織し、命令一下で動く部隊としています。シーザーはローマで法の裁きを受けそうになり、出廷を拒むどころか、忠実を誓う武装兵をローマ政庁に放ちました。トランプ氏は歴史の成績はよくありませんが、シーザーの前例を踏む様相を強めています。大統領は武装した国土安全保障省係官を準軍事部隊として国内の政治デモ参加者に向かわせましたが、これは法的根拠のない行為でした。この私兵は警察等の所属を示すものを隠し、法執行ではなく、大統領の政敵を抑え込むのを職務としています。
大統領の落選、選挙制度そのものへの攻撃、本人の刑事訴追の可能性、私兵の組織化すべてが組み合わさると、来年1月20日の衝突は必至です。権力移譲を平和的に進めるのが米民主政体の確固たる特徴ですが、これを受け入れたくないトランプ氏が大統領退任を拒絶する可能性があります。選挙結果自体が詐欺だと、手あかのついた嘘八百を申し出るでしょう。トランプ氏の右派メディア内協調勢力がこうした虚偽の主張を拡散すれば一見根拠のある口実となります。権力の座を退くのを拒否する大統領により南北戦争以来最大の憲政史上の危機が現実となります。
米国の政治体制、法体制はこの瞬間に機能不全となります。上院内共和党議員は従属的な存在となっており、沈黙を保ち不活性なままでしょう。議会内多数派勢力の座を守ることに汲々とするはずです。一方、民主党が多数を占める下院が大統領選出団の結果を承認すれば、トランプ氏はフェイクニュースと一蹴するでしょう。各地の裁判所に民主党、トランプ氏の代理双方から訴えが殺到し、判決を下すまで数か月を要してもトランプ側は控訴するか無視を決め込むはずです。
しかし時間は着々と進み、2021年1月20日午後12時01分となっても、ドナルド・トランプは大統領執務室に陣取っているでしょう。街頭デモ隊がホワイトハウス周辺に集結するでしょうが、トランプ私兵がホワイトハウスに陣取るはずです。下院議長がトランプの任期終了を宣言し、ホワイトハウスからトランプを退出させるようシークレットサービスと連邦保安官に命令を出します。しかし連邦政府係官はトランプ私兵が数の上でも武装でも上回る事態に気付き、決定の時がついにやってきます。
この憲政史上の危機状態に際し、選択肢はふたつしかありません。第一は米軍部隊により前大統領をホワイトハウス敷地から移動させることです。トランプ私兵は軽武装の連邦係官には高圧的な態度でも82空挺師団の一個連隊の前にはひとたまりもありません。二番目の選択肢とは憲法が機能不全となっても米軍を動員しないことです。政権移譲は超法規的なトランプ私兵と民間デモ隊間の暴力の応酬に任せることになります。この場合の混乱は想像に難くありません。
米軍の上位将校として二つの選択はまさしく貴官にあるのです。憲政上の危機状態は上述の通りですが、貴官の職務は米軍の力で憲法で定めた政権移譲に向けた確固たる命令を下すことにあります。貴官が沈黙を保てば、クーデターに加担することになります。貴官はラファイエット広場に陣取るデモ隊に対し軍部隊を動員すべしとの大統領の意向に抵抗なく関与して公然と批判されました。政治権力の超法規的掌握に受動的にせよ関与すれば状況はさらに悪くなります。
240年の長きにわたり、米国は暴力で政権移譲する恐怖を回避できました。完全な形ではなくてもこの国の政体は完璧さを希求し、平和的に権力移譲を実施してきました。憲法が定める法の支配によりこの奇跡が可能となってきたのです。しかしながら、憲法上の秩序は自動的に維持されるものではありません。米国民は歴史を通じ、生命を犠牲にしても統治形態を維持する道を選択してきました。こうした英雄たちが築いてきた未完の仕事が続けられるかは貴官にかかっています。
以下を忘れないでください。
「私、マーク・A・ミリーは謹んでここに誓います。あらゆる敵から、国の内外を問わず、米国憲法を支え守り、また誠意と忠誠をもって職務にあたり、喜んで責務を受け入れ、躊躇することなく、逃避することなく、これから始める職務を忠実かつ良好に実行いたします。神のご加護を」
われらが共和国の運命は上記宣誓に忠実であるかにかかっています。
敬具
ジョン・ネイジおよびポール・インリン
ネイジは退役陸軍将校でイラク戦争二回に従軍し、フィラデルフィア郊外のヘイヴァーフォード校の校長を務める。インリンは中佐で陸軍を退役し、イラク、ボスニア、砂漠の嵐作戦に従軍した。
この記事は以下を翻訳したものです。
“. . . All Enemies, Foreign and Domestic”: An Open Letter to Gen. Milley
If the commander in chief attempts to ignore the election’s results, you will face a choice.
By JOHN NAGL and PAUL YINGLING
AUGUST 11, 2020
妄想の逞しい退役将校の反乱のそそのかしかな? 掲載すること自体、すべきでないと考える。
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