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統合参謀本部議長あて公開書簡への反論 軍が出動しても解決にならないし、期待するべきでもない

先に掲載した物議を醸す公開書簡への反論です。これが同じDefense One に掲載されたのはさすがに言論上のバランスをとる編集側の配慮があったからでしょう。

 

選したトランプをホワイトハウスからミリー大将が追い出すべきと考えるのでは無責任すぎるし、組織面でも無意味だ。

 

本稿はジョン・ネイグルおよびポール・インリンによるあまりにも無責任な見解が昨日公開されたことに反駁すべく準備した。両名は統合参謀本部議長に対し、米軍部隊でトランプ大統領をホワイトハウスから排除する命令の準備を求め、両名は共和政体の危険事態として解決が必要となる場合に備えるべきと主張した。この事態に備え検討するだけでも米国民と軍に所属する者の間の信頼関係を損ないかねない。選挙で選ばれていない軍関係者が判事、陪審員、執行者の職責を果たすべきと主張する両名は憲法を批判していることになる。

 

この国の建国では軍が選良の権利侵害をする可能性を懸念している。それは憲法に全軍最高司令官としての大統領と議会の間で責務を区別していることでもわかり、「軍部隊を整備し支援する」権限、「海軍を創設し維持する」権限、「武装を与え訓練させる」権限、「武装民兵を招集する」権限を与えていることでも明らかだ。常備軍の維持は当時は財政の浪費とみなされ、政治的な力の行使は個人の自由および共和政体双方に脅威とされてきた。

 

軍組織が選良ジョージ・ワシントンの権限を防護する役割に徹したのは実に幸運なことだった。米国民はその他民主政体では不可能なほど政策面で影響を受けており、自国の軍組織に信頼を寄せている。これは軍に服従の態度が深くしみこんでいるためである。軍事力行使をためらう態度があるため、軍の政治力発揮を妨げている。ネイグル-インリンの両名は米軍に政治結果の仲裁役を期待するよう国民をけしかけようとしており、これが実現すれば軍組織の精神ならびにこの国の特徴が不可逆的に一変してしまう。

 

憲法には大統領が辞職を拒んだ場合の解決策で規定がある。裁判所が選挙が法に従い執行されたかを判断し、下院が選挙団の投票結果を確認する。極端な場合でも、選挙結果を巡り意見が対立すれば、第20憲法改正分に条項が盛り込まれており、「大統領、副大統領の任期は1月20日正午をもち終了する」とあるのは、大統領承継にあたり法による支配が明確に存在する証左だ。新たに選出された、あるいは任命された大統領の宣誓式は主席判事が執り行い、前任職の権限はすべて消滅する。その時点から文官大統領を除き、軍やその他政府機関による命令は一切が非合法となる。

 

当然ながら法律とは自らで執行されない。軍以外の連邦政府機関が国内での法執行に責任を有している。この原則にも例外はあるが、各機関の法律上の権限と国内での権力を軍にそのまま移譲することは許されていない。

 

ネイグル-インリン両名はトランプ大統領が暴力をふるうデモ参加者と呼び、治安部隊(両名は民兵と表現)が街頭にあふれる悪夢に触れており、正直に言うと当方もこの懸念を共有している。だがシアトル、ポートランド他米都市で活動する治安部隊には法的根拠があった。米軍部隊をデモ隊制圧に動員すれば、軍は文官統率から解き放たれる。これでは米国民が軍に示す信頼の基盤が崩れてるし、政治的紛糾を解決可能なのは軍のみとなってしまう。

 

両名には軍で方針決定の経験があるのに、統合参謀本部議長に指導者の役目を提唱するとは驚くばかりだ。ミリー大将には軍で知名度が一番高いことから主張を伝えたのだろう。あるいはブラック・ライブ・マターズ運動中のラファイエット広場への対処で大統領、司法長官とともに芳しからぬ騒動に同大将が巻き込まれたことが念頭にあったのかもしれない。

 

だが実際問題として、クーデターを提唱するのなら、指導者には実際の部隊に指揮命令権限を持つ人物をあてるべきだ。統合参謀本部にはごく少数の兵員が配置されているが、統合参謀本部議長には手駒となる兵員はいない。1949年に議会が統合参謀本部議長の役目を定義したが、議長職を基本的に弱くした理由は、まさしくネイゲル-インリンの主張と同じだった。

 

ネイグル-インリンはミリーに直属部隊がないことから軍事組織内では大統領選挙が紛糾した場合でも脅威になる人物ではないと値踏みしたのではないか。だが、この見方はミリーが憲法に反し軍事力を動員したら暴力の連鎖がますますエスカレートし、法の秩序が回復不可能となる可能性に相反する。また米国民が軍部に寄せる信頼にひびが入る可能性も無視している。

 

 

コリー・シェイクはアメリカンエンタープライズ研究所で外交防衛政策研究長を務める常勤研究員。

ジム・ゴルビーはテキサス大学オースチン校のクレメンツ国家安全保障センターの上級研究員で、戦略国際問題研究センターで民間と軍の関係に触れる"Thank You for Your Service" ポッドキャストの共同ホストを務める。NATOの米代表部で国防政策諮問を務めたほか、副大統領の特別補佐官、統合参謀本部議長の特別補佐、ウェストポイント士官学校で社会研究学部の助教授、イラク戦争では偵察小隊長を経験している。


この記事は以下を再構成したものです。


The Military Won’t Save Us – and You Shouldn’t Want Them To

It’s deeply irresponsible, not to mention organizationally nonsensical, to suggest that Gen. Milley should evict an election-losing Trump from the White House.

By KORI SCHAKE and JIM GOLBY

AUGUST 12, 2020


コメント

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