中国の戦力を過小評価すれば深刻な過ちにつながる。中国軍は自国近海なら米軍に十分対抗できる実力を有している。
米政府は中国との新冷戦に進む決定をしたようだ。中国の在米ヒューストン領事館閉鎖を迫ったのが最新の動きで、中国は成都の米領事館閉鎖を命じた。世界一位二位の経済大国の軍事対決に一歩ずつ近づくのか。両国を開戦一歩手前に進ませないためには政策を即座に変更するしか手段がないようだ。
はっきりさせよう。中国のここ数年の動きは米国の権益に真っ向から挑戦するものだった。知的財産侵害を巡る争いに中国はさしたる関心をしめしてこなかった。中国は「台湾問題」解決に軍事力行使も辞さないと公言した。中国は香港住民に自由を与える約束を覆した。さらにコロナウィルス拡散を進めたのは中国の事実隠ぺいだ。だがこうした問題に対し米国は断固たる態度で臨む決心をしている。
マイク・ポンペイオ国務長官は中国に対抗する「連合を構築」すると7月にロンドンで発言した。真意は「力を合わせ中国共産党の行動を変えさせること」と本人は説明している。英国訪問に先立ち、さらにヒューストン領事館閉鎖の前に、米国は中国に極めて厳しい態度を示しており、香港の貿易上の特別待遇の取り消し、中国政府関係者への渡航制限、コロナウィルスを巡り中国の落ち度を非難し、米海軍の南シナ海での活動を強化し中国の主張に対抗したことが含まれる。
これに対し、中国も南シナ海で軍事演習を展開し、ヒューストン領事館閉鎖を巡り対抗措置を講じたのは予測通りといってよい。中国外務省報道官汪 文斌Wang Wenbinは領事館閉鎖は「国際法違反...であり中米関係を悪化させるための試み」と論評した。中国が米領事館閉鎖に動いたのも予想通りの動きだった。
米中両国はこのような動きと対抗措置を延々と繰り返していくだろう。関係悪化で恩恵は何ら生まれず逆に軍事対決の可能性が増えるだけだ。偶発的な戦闘もありうる。不幸なのはワシントンに頭を冷やそうという動機が見られないことだ。
米国の世論に影響を与えかねない言論人多数は意図しなうちに戦闘がおこるはずがないと達観しているようだ。米国は強大であり、何でも好きに行動でき、戦闘が発生しても敗北はないと信じこんでいるようだ。砂漠の嵐作戦が完了した1991年、翌年のソ連崩壊以来この考えが流行している。
中国は砂漠の嵐作戦での米軍作戦を熱心に研究している。1996年にはビル・クリントン大統領が台湾海峡に空母一隻を航行させ、中国は台湾への脅威をひっこめざるを得なくなり面子を失った。それ以来10年単位で軍全体の変革を行ってきた。戦闘第一の部隊編成にし、戦闘の教義を整備し、装備品を劇的に一新した。すべて米軍が中国攻撃にやってきても敗退させるためだ。
今日の中国軍は朝鮮戦争で米軍の前に数十万名を失った古色蒼然たる歩兵中心の軍ではない。また1996年に米軍に対抗できなかった旧式装備の軍でもない。中国共産党首脳部は自らの軍組織を近代的かつ強力な威力の軍に変革し、米国を相手にしても十分戦える組織に仕立て上げた。中国近海を舞台に米軍が容易に勝利できると思ったら大間違いだ。
米国の動きを見て中露両国は往年の対立をわきに置き経済ならびに軍事面でつながりを強めている。中国はイランともエナジー・軍事両面の協力協定を結んだばかりだ。さらに習金平主席は欧州、アフリカ、ラテンアメリカ各国との関係強化を効果的に進めている。
ワシントンは対中タカ派であふれている。その中で中国と戦闘回避することで米国の地位を守れると主張すれば「宥和派」のレッテルを貼られかねない。理性的な外交を続けることで安全も繁栄も将来にわたり実現するはずなのに、これを捨てて武力を前面に中国に強気で対抗する態度に出たことが結果として悪い選択にならなければよいのだが。■
この記事は以下を再構成したものです。
America and China Hurtling Towards War?
August 2, 2020 Topic: Security Region: Americas Tags: ChinaXi JinpingWarConsulateHong Kong
It would be a grave mistake to underestimate Beijing’s ability to fight the U.S. forces on its home turf.
by Daniel L. Davis Daniel L. Davis is a Senior Fellow for Defense Priorities and a former lieutenant colonel in the U.S. Army who retired in 2015 after twenty-one years, including four combat deployments. Follow him @DanielLDavis1.
武漢肺炎の世界的流行の中で中国は、何を行ってきたか?
返信削除インドとの国境紛争を再開しようとし、南シナ海で周辺国を排除し、香港の一国二制度を崩壊させ、尖閣諸島を占領しようと目論んでいるように見える。外交は、「戦狼外交」と呼ぶ、他国への脅しと恫喝を繰り返す始末だ。このような中国の極めて好戦的な増長はなぜ起きているのか?
中国は、いち早く武漢肺炎を終息させ、経済活動を再開させ、その国力は、武漢肺炎の流行に苦しみGDPが瞬間的に年率30%以上も低下する米国を凌駕していると考えたのだろう。軍事力も、米軍が武漢肺炎の感染拡大により空母などが出港できないなどその力は著しく低下し、PLAに対抗できないと期待したのだろう。
習は、覇権を獲得する足固めをするのは今だと考えたのかもしれない。これは火事場泥棒的で危険な考え方だ。
米国が、このような中国をたしなめる方法は、特に焦点になっている南シナ海の島嶼の中国の占拠が違法行為であることを宣言し、何群もの空母部隊と日本を含む同盟国艦艇との示威行動しかなかったのかもしれない。
中国の行動を放置すると間違ったシグナルを与え、周辺国が維持する南シナ海の島嶼は、片端からPLANに占領されていたかもしれない。特に台湾が実効支配する島々が狙われていたと思われる。
中国は、現地部隊を戒め、米国との緊張緩和に動いたようだ。
結果として、米国は、習の冒険主義的な試みを咎め、インドはオーストラリアとの結び付きを強め、周辺国は南シナ海の島嶼の中国の占拠が違法であると表明し、米台関係は著しく進展した。
一連の米軍の活動は、政治、外交と結び付き、極めて有効な行動であったと個人的に考えるが、いかがであろう。
また、記事が述べるようにPLAを過小評価してはならないし、さらに過剰評価する必要もない。そう考えたとしても、PLAの実力は、米軍と比較し、対抗できるものでないのは確かだ。