2022年10月6日木曜日

北朝鮮発射のIRBMを日本が今回迎撃しなかった理由。ミサイル防衛の実相をより良く理解する必要をなぜメディアは伝えず、Jアラート誤作動を取り上げるのか。

 Why Japan Didn’t Try To Intercept The North Korean Ballistic Missile

日本のイージス駆逐艦JSこんごうでのスタンダードミサイル-3発射の様子 U.S. Navy photo

日本には中距離弾道ミサイル迎撃能力があるが、撃ち落とさない正当な理由がある

 10月4日に北朝鮮が発射し日本上空を通過した「火星12」中距離弾道ミサイル(IRBM)を撃破する能力があるものの、日本は避難勧告を出し、列車を一時的に停止させるにとどまった。東京が迎撃しない選択をした理由がある。

飛翔してくるIRBMの迎撃能力があることの意味は大きい。しかし、実際に北朝鮮が発射したミサイルに迎撃発射したことは、一度もなく、多くの問題を提起している。オクラホマ州フォートシルにある陸軍防空砲兵学校の前司令官退役陸軍大佐デビッド・シャンクDavid Shankは、火曜日の朝The War Zoneに以下語った。

「弾道ミサイルが太平洋に着弾するのであれば、交戦理由にならない」。シャンクは、ミサイル防衛についてNational Institute for Public Policyで論文を共同執筆したことがある。

シャンクによれば、宇宙、海、地上のレーダーやその他センサーが豊富にあり、発射を素早く検知し、大体の軌道や高度を割り出すことができるという。

日本は弾道ミサイルの探知、対応をこうすると説明した防衛省の広報資料。(Japanese Defense Ministry graphic)

弾道ミサイル発射の軌道と高度はレーダーや人工知能を搭載した他のセンサーで「発射後5分間とかなり早く認識でき」、その後更新できるとシャンクは述べた。

浜田靖一防衛大臣は、東京時間午前7時22分に発射された月曜日のミサイル飛翔は、約22分間続いたと記者団に語った。

最大高度約1,000km(約620マイル)で約4,600km(約2,900マイル)飛行し、午前7時28分頃から午前7時29分頃まで青森県上空を通過した」と述べた。「7時44分頃、日本の東方約3,200km(約2,000マイル)の日本の排他的経済水域外に落下したと推定されます」。

今回、日本が北朝鮮のIRBMを迎撃しなかったのは、自衛隊が「自衛隊の各種レーダー」を使い、日本に着弾する危険性がないと確認したためと浜田防衛相は述べた。

「ミサイルが我が国に飛来する危険性はないと判断したため、自衛隊法第82条の3に基づく弾道ミサイルの破壊措置はとらなかった」。

同法は、防衛大臣の勧告と首相の承認を得て、自衛隊がいつ、どのように迎撃を開始できるかを明記している。

いつ撃つべきか

シャンクは、月曜日の状況で迎撃ミサイル発射をためらう理由として、4つ挙げている。

第一は、着弾地点が太平洋上のどこかである場合、迎撃ミサイルを発射すると「状況をエスカレートする恐れがある」ということ。

2つ目は、「交戦することで日米の能力(早期警戒やイージス巡洋艦や駆逐艦のシステムが標的と交戦する場合など)を示すことになる」点だ。

3つ目は、失敗した場合、「アメリカ、日本、世界各地の同盟国や協力国に大きな懸念を与え、北朝鮮に勢いを与える」ことだ。

4つ目は、人口集中地などの重要インフラ上空での交戦は、「交戦による破片の落下で」被害をもたらす可能性があることだ。

HS-12ミサイルを視察する金正恩。同ミサイルの発射風景。 (KCNA)

日本には弾道ミサイル迎撃手段が2つある。1つは艦載型SM-3迎撃ミサイルで、高高度で目標に向かい巡航中のミサイルをミッドコース迎撃し広範囲防衛が可能だ。もうひとつはペイトリオット(PAC-3 MSE)ミサイルで、弾道ミサイルが目標に向かい超高速で降下する最終段階で迎撃する。

シャンクは、日本のミサイル防衛でのペイトリオットシステムの有効性には悲観的だ。

ペイトリオットシステムは、「可能性はあるが、命中確率は非常に低い」。「そうなるとSM-3がIRBM迎撃で唯一のシステムだ」と言う。

ペイトリオットは、短距離弾道ミサイルの最終飛翔段階での迎撃に適していると知られており、SM-3のようなミッドコース迎撃ミサイルのような広範囲での防御能力はない。

「SM-3はミッドコース防衛、パトリオットPAC-3はターミナル防衛を担当する」とワシントンDCの航空自衛隊駐在官菅井博之空将補Maj. Gen. Hiroyuki Sugai,はThe War Zoneに語っている。「それぞれ別の領域をカバーします。一般的に言って、ミッドコースディフェンスは広いエリアをカバーし、イージス艦は広いエリアの迎撃ができます」。

日本は自信たっぷりだ

菅井空将補は火曜日の朝、The War Zoneに対し、核兵器搭載可能な「火星12」のようなIRBMを「迎撃」に自衛隊は「自信がある」と述べた。

スタンダードミサイル3(SM-3)迎撃ミサイルがこの種の攻撃を防御する能力を日本に与えており、同ミサイルの設計更新でさらに多くの能力が実現した。

SM-3迎撃ミサイルは、イージス艦の弾道ミサイル防衛に対応した基幹システムで、ヒット・トゥ・キルの動力学キル・ビークルを使用する。

現在、海上自衛隊のイージス艦は、まや級2隻、あたご級2隻、こんごう級4隻で構成している。まや型はあたご型の発展形で、こんごう型は米海軍のアーレイ・バーク級駆逐艦の日本での派生型。

菅井空将補は、日本が2017年より購した新型迎撃ミサイルSM-3ブロックIIAの運用状況はコメントしなかった。新型は実戦配備中のSM-3より交戦範囲が広くなり、広範囲のミサイルの脅威に対応する。同ミサイルは、日米共同開発で生まれた。

一方、日本はSM-3迎撃ミサイルの陸上配備を断念している。

陸上配備型イージス・アショアシステム計画は、技術的な問題、コストの上昇、国内の批判の中、2020年に作業が中断された。後者には、迎撃ミサイルの破片が日本領土に着弾し、損害や負傷を引き起こす可能性があるとの懸念があり、システムのミサイル部分のテストが危険にさらされる恐れがあった。また、イージス・アショアシステムの強力なレーダーの放射線が健康に与える影響でも、国民から大きな懸念が寄せられた。

そこで日本はイージス弾道ミサイル防衛能力を持つ艦船を増強する。

 

イージス艦まやは同級駆逐艦の一号艦だ。Japan Ministry of Defense

日本政府は、巨大な新型艦船2隻の建造を計画している。まだ名前のないミサイル防衛艦は、標準排水量が約2万トンになる見込みで、現在のイージスまや型護衛艦の2倍以上となり、第二次世界大戦後の日本で最大の水上戦闘艦になりそうだ。

日本以外にアメリカもイージスシステムを装備した駆逐艦と巡洋艦の一部にSM-3を配備している。また、韓国とグアムにはTHAAD(Terminal High-Altitude Area Defense)システムを保有している。これも最終段階の迎撃システムだが、能力はペイトリオットよりはるかに優れており、IRBMからの特定地域防衛に適している。

無言の反応

北朝鮮のミサイルに対して、米国も日本も迎撃ミサイルを発射しなかった。しかし、米国と同盟国日本、韓国は、発射を受けて行動を起こした。

韓国時間の水曜日、アメリカと韓国は「北朝鮮の中距離弾道ミサイル(IRBM)発射の翌日、合同訓練で東海に4発の地対地ミサイルを発射した」と、聯合ニュースは韓国軍発表を引用して報じた。

聯合ニュースは「双方はそれぞれ陸軍戦術ミサイルシステム(ATACMS)ミサイル2発を発射し、模擬標的を正確に打ち、同盟国がさらなる挑発を抑止する能力を示した」と報じている。

しかし、そのうち1発が誤射となり、江陵基地で爆発が発生した。

その前日、米インド太平洋軍と韓国空軍は韓国時間10月4日に西海上で合同演習を行い、「両国の相互運用性を示しながら、複合抑止力と動的攻撃能力を披露した」という。演習では、無人島の竹島にある射撃場で「共同直接攻撃弾(JDAM)の実弾攻撃を行った」。

 

 

北朝鮮の弾道ミサイル発射を受けて、日米韓空軍部隊が共同訓練を行った。米空軍第8航空団F-16ファイティング

ファルコンが韓国空軍第11航空団のF-15Kと共用直撃弾(JDAM)の実弾投下を行った。 (ROKAF photo)

さらに10月4日には、米海兵隊のF-35統合打撃戦闘機が航空自衛隊戦闘機と日本海上空で二国間演習を行った。

日米両国は北朝鮮IRBMを迎撃する能力があると主張しているが、実際に発射されたことはなく、デビッド・シャンクが指摘するように、火薬を乾いた状態にしておく理由はたくさんある。ミサイル防衛は、多くの人が認識しているような盾ではない。ミサイル防衛が機能するためには、多くが完璧に機能しなければならない。テストは粘り強く行われており、ある意味心強いが、実際の状況下でどの程度機能するかは疑問が残る。特に、複数ミサイルが一度に目標に向かって発射された場合、そうなる。

しかし、ある時点では、ミサイル発射をきっかけに、動力学的対応が必要となる時が来るかもしれない。北朝鮮の実験を動力学的に否定することが、ミサイル発射を未然に防ぐ重要な抑止力になると多くが考えている。特に、日本上空にミサイルを飛ばし、そ現実的な危険がある場合はそうである。

今のところ、北朝鮮情勢に関する他の多くのことと同様、日米は金正恩の弾道ミサイル発射実験を阻止することに関しては、現状維持にとどまっているようだ。■

 

Why Japan Didn't Try To Intercept The North Korean Ballistic Missile

BYHOWARD ALTMAN| PUBLISHED OCT 5, 2022 2:17 PM

THE WAR ZONE


2022年10月5日水曜日

ボルトン大使寄稿 プーチンの退場とロシアの政権交代を望む

 

Vladimir Putin 2017 New Year Address to the Nation.

 

 バイデン大統領は、ロシアによる2度目の無謀なウクライナ侵攻の1カ月後の3月、プーチン大統領について「頼むから、この男に権力の座に留まってほしくない」と述べ、ワシントンポスト紙は「ロナルド・レーガン以来最も反抗的で攻撃的なロシアに関するアメリカ大統領によるスピーチ」と評した。しかしバイデンのスタッフは、「大統領が言いたかったのは、プーチンが近隣諸国や地域に対して権力を行使することは許されないということだ」と即座に撤回し、「ロシアにおけるプーチンの権力や政権交代に触れたのではない」と述べた。その後、バイデン自身は律儀に政権交代を撤回している。

 ロシアの政権交代なしに、ヨーロッパの平和と安全の長期的展望はない。ロシア人は、明白な理由のため、それを静かに議論し始めている。米国やその他の国にとって、この問題をなかったことにすることは、はるかに多くの害をもたらすだろう。

 最近のウクライナの軍事的な前進にもかかわらず、西側諸国はまだウクライナにおける「勝利」の定義を共有していない。先週、プーチンはウクライナの4州を「併合」し、2014年に「併合」されたクリミアに合流させた。戦争は激化し、ロシア人戦死者多数と経済的痛みを生んでいる。プーチンへの反発は高まり、若者は国外に脱出しつつある。もちろん、ウクライナの民間人・軍人犠牲者も多く、物的被害も甚大だ。NATOを威嚇するため、モスクワは再び核兵器のレトリックを振りかざし、ノルドストリーム・パイプラインを妨害している。欧州は来る冬を心配し、誰もが欧州の決意の耐久性を心配している。目先の停戦や実質的な終戦交渉、その後のプーチン政権との「正常な」関係をどうするのか、誰も予想できない。

 戦争がいつまでも続くのを避けるため、われわれは今の計算を変えなければならない。ロシア反体制派による政権交代を慎重に支援することが、答えかもしれない。ロシアが核保有国であることは明らかだが、それはウクライナの自衛を支援するのと同様に、政権交代を目指すことへの反論にはならない。ホワイトハウスの道徳的価値観の発信でクレムリンは力を得ており、こちらを「悪魔崇拝」と非難し、バイデンがしていないのに、アメリカがロシア政府を転覆させようとしていると主張している。 言っておくが、クレムリンは何十年もの間、われわれに対してこのようなことをしてきたのだ。われわれはすでにクレムリンを転覆させたと非難されているのだから、なぜその恩返しをしないのだろうか?

 ロシアの体制転換を阻む障害と不確定要素はかなり大きいが、乗り越えられないわけではない。なぜなら、プーチンを交代させるだけでは済まないからだ。プーチン側近も後継者候補が何人かいるはずだ。問題は、一人の人間ではなく、過去20年間に構築された集団指導体制だ。キューバ危機後、ニキータ・フルシチョフを引退させたような政治局の姿はない。政権全体が退場しなければならない。

 政権交代が最も難しい問題であることは間違いないが、それに外国の軍隊は必要ない。重要なのは、ロシア人自身が、真の権威者であるシロビキ(権力者)層の分裂を悪化させることだ。反体制派がその気になれば、権威主義的な政権と同様に、意見の相違や反感はすでに存在しているので、それを利用できる。 1991年にロシアのホワイトハウスの前で戦車の上に立ったボリス・エリツィンは、ソ連支配層の分裂を証明した。政権の一貫性と連帯が崩れれば、変革は可能だ

 ロシアの軍部、情報部、国内安全保障部の内部では、今回のウクライナ侵攻前後におけるモスクワのパフォーマンスに、衝撃、怒り、困惑、絶望があることはほぼ間違いない。政権交代を主導するのは、プーチン政権に個人的に深く関与する軍幹部や官僚ではなく、下士官や下級官僚であろう。プーチン政権を変えるため最も協力的なのは、大佐や一ツ星将官、そしてそれに相当する文民機関である。反体制派が政権交代を実現するために特定し、説得し、支援しなければならない意思決定者は、この人たちである。もちろん、望まれる暫定的な成果は、完全な軍事政権ではなく、新憲法が制定されるまでの間、土俵に立てる暫定的な権威であることは明らかだ。この段階だけでも非常にリスキーなビジネスだが、現在のロシア国内政治の構造を考えれば避けられない。

 外部支援としては、反体制派の内部およびディアスポラとのコミュニケーションの強化、ロシアへの情報発信プログラムの大幅な強化(米国の情報技術力の長年の低下のため複雑化している)などがある。また、ロシア経済の状況を考慮すれば、必ずしも多額ではない資金援助も重要であろう。政権交代に関してワシントンが公言することは、反体制派や他の外国の同盟国と協調して行うべきである。われわれの行動を秘密にすることは不可能かもしれないが、大げさに宣伝する必要はないだろう。

外国の関与は反体制派を危険にさらし、プーチンにプロパガンダの機会を与えることになると反対する人もいるだろう。手短に言えば、彼はすでにこの点を指摘しており、われわれが何を言おうが何をしようが、それを続けるだろう。私たちの指標は、反体制派自身が外部からの援助に価値を見出すかどうかである。おそらく、彼らの費用便益分析では、プーチンの反米暴言を恐れるより、支援を歓迎するはずだ。ロシア人は、以前からそれを聞いている。

 プーチン政権のその後が、最重要問題となるが、ロシア人はすでに選択肢を考えている。当然ながら、後継政権を作るのは一義的には自分たちの仕事だからだ。ソ連邦崩壊後、多くの失敗を経験しただけに、今回は謙虚な姿勢で臨むべきで、早急な調査・計画が必要だ。

 

 

ロシア連邦とベラルーシ共和国の軍隊によるザパド2021年合同戦略演習を見守るプーチン大統領。

 

 ワシントンの明白な戦略的目的は、ソ連崩壊後と同様に、ロシアを西側へ同盟させ、NATOの適合候補とすることだ。しかし、そのような新ロシアに不満を持つ勢力もあろう。中国は、完全な衛星国とまで言わないまでも、北京のジュニアパートナーになりつつある現政権の崩壊は歓迎できない。中国が軍事含めプーチンを支援する可能性は否定できない。

 ロシアの体制転換は困難とはいえ、アメリカが100年以上にわたり偶発的に追求してきた平和で安全なヨーロッパという目標が、国益の中心であることに変わりはない。遠慮している場合ではないのだ。■

 

Putin Must Go: Now Is the Time For Regime Change in Russia - 19FortyFive

ByJohn Bolton

 

Ambassador John R. Bolton served as national security adviser under President Donald J. Trump. He is the author of “The Room Where It Happened: A White House Memoir.” You can follow him on Twitter: @AmbJohnBolton.

In this article:featured, Putin, Russia, Ukraine, War in Ukraine

WRITTEN BYJohn Bolton

Ambassador John R. Bolton served as national security adviser under President Donald J. Trump. He is the author of “The Room Where It Happened: A White House Memoir.” You can follow him on Twitter: @AmbJohnBolton.


世界第三位の軍事力整備に向かう日本の安全保障体制の本質を西側識者はこう見ている。

 


Japan global power観閲式に参加する航空自衛隊のF-35戦闘機。(Photo credit should read KAZUHIRO NOGI/AFP via Getty Images)


世界第3の軍事大国としての日本

日本は軍備を増強し、「二国間主義プラス」で世界の安全保障を担えるだろうか。

今後5年間の予算目標を達成すれば、日本は軍事力(戦力、防衛費でそれぞれ5位、7位)から、米国、中国に次ぐ世界第3位の軍事大国になる。

GlobalDataによれば、日本の防衛費は来年の531億ドルから2027年に704億ドルに増加すると予想されている。ここでは年平均成長率7.3%を想定している。

冷戦後の日本は「デュアルヘッジ」を維持し、中国と米国双方との関係を促進し、自国の自主性を維持してきた。第二次世界大戦後の吉田ドクトリンの下、日本は防衛と経済を主に米国に依存し、自国の軍事力増強の許容範囲は限定的で、軍事費の上限はGDPの1%としてきた。

このような状態は、冷戦時代、脅威に対する西側同盟国のバランスで維持されていた。冷戦終焉とともに、日本は中国との貿易関係を強化し、アメリカからの経済的自立を目指したが、アメリカとの軍事的な結びつきを強化しつつ、中国との関係深化は棄却した。

日本はヘッジに終止符を

ウォーリック大学副学長で日本研究・国際政治学教授のクリストファー・ヒューズDr. Christopher Hughesは、9月7日、東西センターEast-West Centerのオンライン討論会で、「日本は米国依存をもはやヘッジしていない」と述べた。グローバルな経済外交と米国への軍事的依存という吉田ドクトリンを、日本の政策立案部門は、今日の防衛・安全保障上の課題へ有効な戦略だと考えていない。

吉田は日本が永久に非軍事大国とすることを意図していたわけではなく、経済発展を優先し、軍事力整備はその後でいいと考えていた。地域的な脅威が存在する現代の多極化世界では、日本の反軍事的な傾向は支持されなくなっている。2015年以降の主要戦略は日米二国間同盟の強化に回帰した。

ヒューズが著書『Japan as a Global Military Power: New Capabilities, Alliance Integration, Bilateralism-Plus』で提示した日本の軍事面に関する新しい分析では、日本は「一層能力が高く、信頼できる、不可欠なまで統合された米国の同盟国」となることで、厳しい外部セキュリティ環境に対応しようとしていると論じている。 

グローバル展開に向けた自衛隊の整備

自衛隊は作戦能力と共同作戦能力の向上を目指すことで、多次元的な防衛力へ移行しつつある。近代化により、陸、海、空三軍はより緊密に連携し、サイバー作戦や宇宙など新領域にも踏み込んでいる。

三軍は、グローバル展開の可能性を秘めた先進能力を大幅に整備している。航空分野だけでも、日本は2013年より川崎P-1を導入し、現在33機を供用中で、さらに60機がP-3Cの後継機として発注中だ。また、2013年に日本はロッキード・マーチンとF-35A機導入の契約を締結し、その後2019年に契約を拡大てF-35Aを合計105機、F-35Bを42機取得することになった。最近では、2020年に第6世代ステルス戦闘機F-Xを100機近く開発する契約を三菱重工業と締結している。

海軍の分野では、日本は、いずも型ヘリ空母をF-35B戦闘機運用可能な本格的空母に改装することにより、ブルーウォーター能力を拡大している。水上艦隊は40隻以上のフリゲート艦駆逐艦を保有し、「そうりゅう」型潜水艦も保有している。

これは世界展開できる強力な艦隊である一方、東京は能力の多くを国土防衛、特に中国の侵略の危険にさらされる南西諸島の防衛に充てている。自衛隊と米軍は、米国の全体的な戦略に統合され、島嶼防衛、そして潜在的に台湾防衛において、行動を「ミラーリング」し始めている。「もう一つの重要な変化は、必要であれば、日本がグローバルな責任を負う可能性があるということです」とヒューズは述べている。


国際関係と集団的安全保障

北朝鮮の軍事的脅威への抑止力の強化への取り組みの一環として、韓国、米国、日本の3カ国が対潜水艦演習を実施。(写真:韓国国防省 via Getty Images)

「日本の軍事政策についての過去の分析多数は時代遅れの見解のままだった」とヒューズは言う。日本が国際的な安全保障協力を通じ、米国から自立性を高めると期待すれば、国際協力を期待する楽観的なパートナーにとって失望することになる。

日本は、日米同盟と米国の安全保障システムを通じ、ある程度までの地域防衛を含む防衛責任をさらに受け入れる方向にシフトしている。

しかし、東京がパートナーと共に行う活動や、地域的・世界的な軍事協力の拡大は、量的には増加しているものの、本質的には米国中心の自国防衛アーキテクチャを強化するためのものである。「日本はグローバルな軍事大国となりつつあるが、それは非常に選択的であり、これらのパラメータの範囲内」とヒューズは言う。

「日本は世界に打って出るだろう。他のパートナーとの協力も増えるだろう。しかし、あくまで日米同盟と自国の安全保障のためにのみ行われる」。

日本の関心領域が狭くても、米国の地域的・世界的安全保障システムを支え、支援し、再投資するため、日本は集団的自衛権の責任を負う必要が生まれる。ヒューズはこれを、2015年以降に初めて現れた「大きな変化」と捉える。

二国間主義プラスと「プラグアンドプレイ」同盟

「吉田ドクトリンから安倍ドクトリンへ、そして平和への積極的な貢献という話へとシフトしている」。

日本はこの数十年、他国と多くの横の安全保障防衛関係を構築し、新たに二国間、多国間、ミニ横の関係を構築してきた。機能的には、これらは日米同盟システムの延長で機能し、同盟をテンプレートとした統合抑止を実現する。

他の同盟国を日米中心の同盟システムに統合できる、「プラグ・アンド・プレイ」とヒューズは言う。

日本では国際貢献という言葉を使うが、本質的には米国との関係を強化をめざしている。

ヒューズはこのアプローチを「二国間主義プラス」と表現する。このアプローチは、多国間のアイデンティティを求めたり、米国から離反することを意味しないが、既存の日米安全保障関係を強化するネットワークや新しい関係を構築する。「日本は、米国がこの地域や日本の防衛にコミットすることに疑念を抱くたびに、それを倍加させます」とヒューズは言い、米国含む他の国々と安全保障協定を結び、同盟を再投資して強固なものにする。

安倍晋三は首相としてこれを新たなドクトリンとして確立し、米国との協力を深め、他国とのヘッジを減らしてきた。改訂版の日米防衛ガイドラインを見ると、日本が同盟の内外で得たヘッジの利益の多数を断念しようとしていることは明らかとヒューズは見る。

日本の二国間主義に対する牽制機能の潜在性

カリフォーニア大学サンディエゴ校グローバル政策戦略学部名誉教授エリス・クラウス博士Dr. Ellis Kraussは、ヒューズの論評を受け、日本が日米同盟を通じグローバルパワーとして活動する上で課題に直面していると指摘する。「日本が経済的に中国に依存していることは、二国間主義への最大の制限、あるいは牽制の一つだろう」とクラウスは、日本の米国への軍事的依存とその同盟内での行動能力は、中国のため地域内の貿易関係やある程度の良好な関係を維持する必要性で抑制されていると推測している。

東西センター討論会でヒューズは、日本の関係は経済的関与で複雑になっており、日本は重要な技術や投資などの主要分野で中国にとって「不可欠の」存在になりつつあると認めた。「日本は、米国の一部の人々が言うようなデカップリング(切り離し)は望んでいない」。

しかし、経済安全保障、主要サプライチェーン、主要技術、レアメタルなどについては、中国は日本の「敵」であることを認識している。

経済面の懸念を他の優先事項との関連で考慮されなければならず、強制力を有する最終決定を下すのは、経済であるとヒューズは主張する。インド太平洋地域における軍事態勢の強化が、その背景になる。「中国は、日本の領土でも、シーレーンのある台湾でも、日本の国家安全保障のレッドラインを越えてきている。これは、日本にとってかなり深刻な問題です」。■

Japan as the third global military power

By Andrew Salerno-Garthwaite



(新版)エンジン換装B-52の風洞試験が完了。全機改修は2030年代中頃になる予定。

 

Boeing

 

ボーイングがロールス・ロイスF130エンジン用の新型ナセルの風洞試験のビデオを公開した

 

 

ーイングは、B-52民生エンジン換装プログラムで、B-52ストラトフォートレス模型を使った風洞試験が完了したと発表するビデオを公開した。映像では、F130エンジンを搭載した機体の外観をこれまでで最も明確に見せている。ロールス・ロイスは、2050年代、おそらくその先も同機運用を続けるため、待望のエンジン換装契約を昨年勝ち取っていた。

 ボーイングがTwitterアカウントに投稿した短い動画では、B-52の4%縮小モデルが同社の遷音速風洞内で最大速度マッハ0.92でのテストが行われているのがわかる。ツイートには、模型は1950年代にエンジニアが使用したものと同じで、将来の飛行試験のデータ収集に役立つと説明されている。2基ずつのナセルで構成されるエンジンポッド4つに、合計8基のロールス・ロイスF130エンジンが搭載され、映像ではっきりと確認できる。

 F130エンジンは、ボーイングのエンジニアであるマイク・セルトマンMike Seltmanが映像の中で強調しているように、現行のプラット&ホイットニーTF33-PW-103エンジンに比べ、燃料効率とメンテナンス性が大幅に向上する。TF33は1985年で生産中止となっており、2030年以降にサポートが不可能になる予測だ。B-52Hでは、より高バイパス比のターボファンを搭載するために、Spirit AeroSystems製の新しいナセルが必要になる。

 「風洞試験の目的は、データを収集し、エラーデータベースを構築し、リスクを低減し、飛行試験につなげ、発注元のため実機を飛ばすことです」と、セルトマンはビデオで述べている。「新型エンジンは大きくなったので、ナセルも大きくなり、翼に近くなり制御性で面白い現象が起こりました」。

 

 

B-52モデルのエンジンナセルがはっきりとわかるボーイング映像のスクリーンショット。 Credit: Boeing

B-52民生エンジン交換プログラムに関する空軍のプレゼンテーションのスライド。 Credit: U.S. Air Force

 

 

 プラット&ホイットニーTF33は、B-52の68年にわたる運航に貢献してきたが、維持費が高くなりすぎた。空軍規則では、TF33は6,000飛行時間ごとのオーバーホールが義務付けられており、費用はエンジン1基あたり200万ドル(約2億円)にのぼる。2019年現在、これらの要因と燃料費で、B-52の飛行コストは1時間あたり7万ドルとなっており、ストラトフォートレスは空軍にとって最も運用コストがかかる航空機として定着している。

 そこで、空軍は2018年にB-52民生エンジン交換プログラムのコンペを開始し、ロールス・ロイス、プラット&ホイットニー、ゼネラル・エレクトリック・エイビエーションの3社が候補に挙がっていた。3年にわたる競合の末、ほぼ1年前の今日、ロールス・ロイスは5億80万ドル(オプションすべて行使されれば26億ドルに達する可能性)の契約を獲得した。この契約と、「BUFF」のエンジン換装までの長く曲がりくねった道のりについては、The War Zoneの過去の記事で詳しくご紹介している。

 ロールス・ロイスは、B-52を設計・製造するボーイングに対し、「B-52H爆撃機に使用する608基民生エンジンと予備エンジン、関連サポート機器、民生エンジニアリングデータ(維持管理活動を含む)」を提供すると、発注時に公表された国防総省の契約通知書に記載されている。ロールス・ロイスはインディアナポリス施設でF130エンジンを製造し、ボーイングが統合を担当する。

 

 

米空軍KC-135ストラトタンカーから燃料を受け取った米空軍第5爆撃航空団のB-52ストラトフォートレスは、主翼に並ぶ8つのナセルにTF33エンジンが搭載されているのが確認できる Credit: U.S. Air Force photo by Staff Sgt. Trevor T. McBride

 

 

 契約で製造されるF130は、現在76機あるB-52Hが搭載する8基のTF33エンジンと1対1交換となるが、予備も調達になるようだ。しかし、ロールスロイスが主張する、30%の燃費向上、航続距離の増加、現場での性能向上、信頼性向上、タンカー機の必要数の削減以外に、B-52H関連のF130で生まれるその他の性能指標は明らかにされていない。Air Force Magazineは3月、新型エンジンが飛行速度に悪影響を与えないと記していた。

 ロールス・ロイスF130は、現在ガルフストリームのビジネスジェット機GV/G550/G650だけでなく、空軍のVIP輸送機C-37、E-11 Battlefield Airborne Communications Node(BACN)などに搭載されているBR700エンジンの軍事転用型だ。ロールス・ロイスは、F130の搭載で、B-52H供用を通じ、「オンウイング」状態を維持できるとしている。

 

 

2021年11月18日、ネリス空軍基地で行われた米空軍兵器学校統合訓練で離陸する、バークスデール空軍基地第340兵器中隊に所属するB-52ストラトフォートレスCredit: U.S. Air Force photo by William R. Lewis

 

 B-52の民生エンジン交換プログラムが正式発表される以前から、B-52のエンジン換装として、民生仕様の高バイパス比ターボファンエンジンを含む提案が出てた。しかし、B-52の主翼に大型エンジンを組み込むのが困難なため、各提案は見送られた。8基から4基へ変更する場合、エンジンの地上高をどうするか、エンジンアウト時の推力の非対称性問題、主翼の変更、エンジン搭載用のパイロンの新設などが必要となる。

 

 

大型ハイバイパスターボファンエンジン4基を搭載したB-52を示すボーイングのコンセプトアート。 (Boeing Image)

 

 ボーイング自身も、維持費や燃料費で数十億ドル節約できる可能性があるとし、エンジン換装を推し進めてきた。長期間の節約によって「元を取る」という、「創造的」な調達と融資のスキームを売り込んでいた。

 

 

アイダホ州マウンテンホーム空軍基地で2020年6月19日、飛行ラインでタキシングするロールスロイスBR700シリーズエンジン2基を搭載した米空軍C-37A。Credit: U.S. Air Force photo by Airman 1st Class Andrew Kobialka

 

 B-52Hは新型ナセルとエンジンに加え各種アップグレードを受ける。目立つのは、状況認識と照準能力を強化する目的の新型AN/APG-79アクティブ電子スキャンアレイ(AESA)レーダーで、電子攻撃や長距離通信にも使用される予想だ。同AESAは、F/A-18E/Fスーパーホーネットにも搭載されているが、BUFFの大きなレドームを最大限に活用するため、適切な装着と配列の拡張改造が必要となる。

 APG-79の実用化スケジュールは、エンジン交換プログラムのスケジュールと重なっており、B-52Hでの飛行試験が2025年開始され、初期運用能力は2027年に期待されるとThe Aviationistが報じている。このため、B-52Hでは、新型レーダーを搭載した機体が新型エンジン搭載に先駆けて飛行し、B-52JかB-52Kという2つの名称を獲得することになる、と同記事は説明している。

 

 

テストスタンドに置かれたB-52エンジンのナセルのコンピュータ・レンダリング。 Rolls Royce North America

 

 

 2022年3月時点で、試験用F130エンジン2基が製造済みで、ミシシッピ州のNASAジョン・C・ステニス宇宙センターにあるロールス・ロイス屋外ジェットエンジン試験設備で評価を受ける。2025年末までに、最初のB-52H2機がF130エンジン搭載で納入され、その後地上試験と飛行試験が行われると空軍は予想。まず8機が、カリフォーニア州エドワーズ空軍基地のB-52テストフォースに加わり、次世代B-52が提供する新機能を評価する。空軍は、2028年末までに統合プロセスを完了し、改造済みで運用可能なB-52の一号機を納入する予定で、2035年までに全機がエンジン換装される予測だ。

 B-52はさらに進化し、100年以上飛び続けそうだ。■

 

 

This Is What The B-52 Will Look Like With Its New Rolls-Royce Engines

 

BYEMMA HELFRICH| PUBLISHED SEP 27, 2022 2:27 PM

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