2014年2月11日火曜日

アジア太平洋地区でP-8輸出へ期待するボーイング


Boeing Eyes P-8 Exports

By Bill Sweetman william.sweetman@aviationweek.com
Source: AWIN First

aviationweek.com February 11, 2014
Credit: Boeing

「4ないし5カ国」がボーイングP-8Aポセイドン海上哨戒対潜(ASW)機に強い関心を示していると、同社の宇宙防衛部門副社長(ビジネス開発戦略担当)クリス・レイモンドChris Raymond, Boeing Defense, Space & Security vice-president for business development and strategyが明らかにした。「各国が真剣に技術面で関心を示しています」とレイモンドはシンガポール航空ショー前夜に語った。「各国は飛行距離と探査範囲を分析中で、運用中の艦艇と協同運用できるか、ライフサイクルコストも検討しています」

そのうち二三カ国がアジア太平洋地区だという。(残りの一カ国は英国である可能性が高い) 検討中の各国は現時点で固定翼方式のASW機材を運用していない。

ボーイングは同社がボンバルディアチャレンジャー605の機体を改装する新型海洋監視機材がP-8他のASW機材と補完関係にあると見ている。同社はP-8から上記海洋監視機材、キングエア改装のRamis(構成変更可能な複合センサー搭載機材)さらにスキャンイーグルほか無人機まで含む機種構成で情報収集・監視・偵察(ISR)を展開するファミリーの提案に動きつつある。■


コメント 固定翼ASW機材を持たないアジア太平洋諸国ですか、ベトナムやマレーシアがその候補でしょうか。お金があるのはシンガポールですが、はたしてどの国になるのでしょうか。楽しみです。

2014年2月10日月曜日

アジア各国の戦闘機整備が急展開中---日本、韓国、シンガポール等の最新状況



Fast-Changing Trends In Asia Fighter Market

By Bill Sweetman
Source: Aviation Week & Space Technology
aviaationweek.com February 03, 2014
Credit: USAF SSGT. William P. Coleman

韓国が一度選定に傾いたボーイングF-15SEサイレントイーグルを白紙に戻し、ロッキード・マーティンF-35A共用打撃戦闘機を選んだことで、ロッキードはアジア各国をJSFで席巻できると興奮気味だが、日本が同機を選定済みで、シンガポールもまもなく正式決定するものとみられる。その他の諸国も同じ流れになるかもしれないのは中国の脅威が増大していることに加え横並び意識のせいと言われる。.
  1. 現実はもう少し複雑で多くの要因が絡んでおり、武器取引と技術移転は動的な過程だ。韓国と日本の選定結果は共に両国の国家戦略が変化していることと米国との密接な関係が背景にある。また米国が同盟各国にJSF調達を強く求めているのも事実だ。では各国別に見てみよう
  2. 【日本】F-35Aの選択は強力な統合防空体制 integrated air defense semsyst (IADS)が整備された空域内の攻撃能力に重点を最初から念頭にF-4EJ改の後継機種を模索してきた結果だ。選定基準そのものが変化しているのは日本の防衛戦略の変化を表しており、中国は仮想敵国として、日本が実効支配する領土を奪わんと長期的に狙う国とみなしている。また、攻撃能力を強化し、戦後堅持してきた武器輸出の緩和を狙っている。.
  3. 日中の緊張増大は防空部隊の緊急出動回数が増えていることで明白だ。冷戦末期の航空自衛隊のスクランブル回数は年間800回超だったが、1995年から2005年までは年間200回程度で、2012年に567回に急増している。
  4. 航空自衛隊の戦闘機部隊は1960年代から常時三機種を稼働させてきた。機体数はほぼ一定を保ちながら、2020年台にはF-15と三菱F-2に加えステルスF-35が加わる見込みだ。
  5. 現有のF-15Jには赤外線探知追跡機能が付いているが、さらに性能改修したF-15MJにはAPG-63(V)1レーダー(機械式スキャン型としては最新型)を搭載し、三菱重工製AAM-5短距離空対空ミサイル(04式空対空誘導弾)の装着が始まる。AAM-5はドイツ・スウェーデン共同開発のIRIS-TやAAM-4B(アクティブ電子スキャン方式レーダーを搭載)と外形が類似している。
  6. 航空自衛隊はF-15のうち何機の性能改修を実施すべきの決断を求められている。機材の半数近くは1980年台前半に納入されており、性能改修の実施は高費用につく。
  7. 一方で侵攻部隊の接近阻止を主任務とするF-2部隊にもAAM-5、AAM-4、改良型AESAレーダーのJ/APG-2の装着で改良が加えられており、武装ではAIM-9サイドワインダーと日本製AIM-7スパローを搭載する。
  8. 予算10億ドルでE-767空中早期警戒管制機の改修、F-15とF-2の改良をすることで日本の防空対応能力はF-4飛行隊x2の退役があっても質的に向上する。F-35AはF-4の代替都の位置づけだがF-2の攻撃任務を一部補完し、F-2を防空任務に振り向けることが可能。もしF-15旧型機の改修を実施しない方針になれば、4飛行隊規模の新型機調達につながる。
  9. ただし円安でF-35調達の大日程への影響が危惧されており、予定42機の調達完了を2023年にずらすことになりそうだ。新型ヘリ護衛艦いずも(27,000トン)の完成でF-35Bで海軍航空兵力の整備に乗り出すとの観測があったが香田洋二海将(退役)元自衛艦隊司令官は1月にワシントンでこの見方を一蹴しており、そのような防衛力整備は他方面の装備調達を諦めなければ実現できず、中短期的には不可能だとした。
  10. 日本は三菱重工の高性能技術実証機 Advanced Technology Demonstrator-X (ATD-X) ステルス試作戦闘機にも予算をつけており、これまで10年近くの開発を続けてきた。実寸大のレーダー断面積測定はフランスで2005年に実施済みだ。技術開発筋によればATD-Xの初飛行は2014年度中に実施するという。つまり2015年3月までに、ということだ。
  11. 【韓国】 F-35小規模調達に国産機の性能改修を組み合わせる方向だ。国防調達庁の決定を覆す形で11月にF-35A導入を決定した同国だが、調達数は40機で納入は2018年以降になる。なお、調達費用は当初予定していたF-15SEなら60機を買う事ができた金額だ。
  12. 今回の選定の背景には韓国の軍事戦略の変化の影響がある。北朝鮮が機動性のあるミサイルを開発中とする証拠が増えてきた。これに対し韓国政府は「圧殺連鎖」で固定式強化陣地内の目標と移動可能な兵器の双方を破壊すると反応している。F-35Aの性能諸元はこの任務の想定に合致している。その際に念頭にあるのは湾岸戦争(1991年)の「スカッド狩り」がうまく行かなかった米同盟部隊のことだ。
  13. F-35A選定は「状況に応じた抑止力」で北朝鮮の核の脅威に対抗することで新たな米韓合意に先立つ形になった。これは先制攻撃でまず北朝鮮の核攻撃能力を減じて残存能力にはミサイル防衛で対応する戦略だ。
  14. F-16改修も実施し2030年代まで同機を稼働させる。韓国国防省はBAEシステムズと昨年12月に合意形成し134機あるF-16ブロック52機材にAESA技術によるレイセオン高性能戦闘レーダー、新型ミッション用コンピュータ、新型コックピット表示装置を装備する。改修済み一号機の納入は2018年だ。
  15. そもそもBAE選定は2012年だったが、一度白紙に戻されている。その理由はF-16を第三者が改修する初事例となったこと、また米空軍がロッキード・マーティンを選定し300機を対象に同様の性能改修 Combat Avionics Programmed Extension Suite (Capes) を発注していたからだ。同様の性能改修は台湾空軍のF-16にも予定されており、韓国他に提案されていた。米空軍がレーダー選定をロッキードに一任して同社は長年のパートナーであるノースロップ・グラマンを選んだのに対し、韓国はレイセオンを選定したので競争状態となった。
  16. BAEシステムズはフォートワース事業所で開発にあたり、F-16経験者を雇用する。同社はシステム統合ラボを建設中で大型ビジネスジェット機を飛行テストベッドとしてしんgなたシステムの性能確認をする。韓国空軍のF-16機材の第一陣が今年中に現地に到着し、改修作業を開始するが、フライトテストは2016年の予定だ。改修作業の本格作業は韓国国内で実施する。
  17. BAEシステムズは世界規模で1,000機の回収需要があると見ており、海外だけでは830機に期待する。同機の機体寿命は1万時間に延長されており、旧型機の改修の投資効果は十分あるという。
  18. そこでF-35Aに切り替えたことで国産ステルス戦闘機開発にも影響が出る。同機計画は韓国航空宇宙工業 Korea Aerospace Industries と国防技術開発庁Agency for Defense Development がKF-Xとして進めているもの。最新の予算では19百万ドルが計上されて、開発経費の上限を80億ドルとし、2025年に開発完了の条件をつけている。ただし同機の輸出には米国の承認が必要だ。開発には海外の提携先が必要となり、15%の費用負担を期待されている。
  19. 【シンガポール】 アジアで次にF-35を導入するのは同国だと言われ、とくに高速道路からの運用を想定してF-35Bに関心が高いという。想定場所の長さは8,000 ft.未満が多い。F-35Aでは滑走路長が足りず、JSF計画室長クリストファー・ボグデン中将は昨年4月にシンガポールによる同機選定は数ヶ月以内に実現見込みと発言していた。
  20. 同年にシンガポール国防相ン・エン・ヘン Defense Minister Ng Eng Hen がF-35購入を独に急ぐ必要なしと発言している。F-16後継機種としてF-35を真剣に検討しているのは事実だが、まず旧型機改修を実施するとしていた。米国防安全保障協力庁 U.S. Defense Security Cooperation Agency からはシンガポール保有のF-16のAESAレーダー換装他改修60機分の実施案が提示されており、同機の耐用年数を2030年代まで延長できるという。ただし改修に高い優先順位がつくかはシンガポールが潜水艦整備などで大型投資があることを考慮すべきだ。
  21. シンガポールは米空軍・ロッキードによるF-16改修業務Capesの有望対象国であるが、国防安全保障庁の発表内容は契約企業を明示せず、新型レーダーの調達元も示していない。このことは将来のCapes改修が不確実であることを示すものであり、2015年度米国防予算削減の対象になる可能性もある。
  22. 【インドネシアとマレーシア】両国はSu-27/30を運用中で、Su-35が代替機種として提案されている。両国は次期戦闘機で米、ロ、欧州の三方向から選定する可能性があり、すでにユーロファイター・タイフーンとボーイングの高性能型スーパー・ホーネットが昨年のマレーシア航空ショーで展示されている。
  23. 【タイ】 サーブのグリペンもアジアに足場を広げる可能性がある。新型JAS39Eがすでにブラジルで選定されており、競争力が高まっている。シンガポールF-16改修は単価40百万ドルとの見積だが、同程度の費用でJAS39CをJAS39E仕様にアップグレードできるという。
  24. サーブを現在使用中なのはタイで、グリペンとともにスウェーデン空軍で使用していたサーブ340AEWを整備する計画を推進中だ。2013年にはグリペン6機とAEW2号機が納入されており、サーブはマレーシアにグリペンC/Dをリースする案を提示しており、JAS39Eにアップグレードできるとする。
  25. 【その他アジア太平洋諸国・ロシア】戦闘機選定は流動的だ。1月にワシントンの戦略国際研究所が武器流通に関する会議を主催し、米国企業の市場シェアを下げそうな要因に焦点をあてた。米国製高性能機器ではなくても「実用上十分な」システム選択が可能であることが指摘されている。
  26. 席上では米国による独占が終われば各国は防衛の後ろ盾が米国しかないので深刻な脅威に直面するとの指摘がでた。つまり装備品の新しい供給源が現れれば米国製装備との相互運用性が低くなるというのだ。
  27. またロシアはマイクロエレクトロニクス分野の基礎が不足しているため「旧式技術で食いつないでいる」との指摘があったが、「ロシアのハイテク産業は国防分野に集中している」との指摘もあり、相反する傾向があることになる。長距離地対空ミサイルの輸出事例ではロシアの地位が卓越している。もうひとつはロシアと中国の関係改善の象徴がスホイSu-35戦闘機売却の商談だ。ロシアが再度同機を中国に販売することに前向きになったのは、瀋陽J-11として中国がSu-27を不正コピーした事実を乗り越えて、ロシアの技術開発が再度活性化してきた証であり、不正コピーのリスクを軽視できるようになったのかもしれない。■


2014年2月9日日曜日

宇宙依存度が高い米国防体制は中国との軍事衝突で脆弱性を示すのか 専門家の知見に耳を傾ける米下院



U.S. Dependence on Space Assets Could be a Liability in a Conflict with China

USNI News By: John Grady
Published: January 29, 2014 10:28 AM
Updated: January 29, 2014 10:28 AM
Launch of Atlas V MUOS-2, July 19, 2013
from Cape Canaveral AFS. US Navy Photo


米国は宇宙空間で「サイバー空間と同程度」の課題に直面していると下院審議会の委員長が中国の宇宙での進展を念頭に発言した。また宇宙で米中両国が「長期間にわたる競争」に入っていることを認めている。
  1. 下院軍事委員会海洋力・兵力投射小委員会委員長のランディ・フォーブス議員(共・ヴァージニア . Randy Forbes (R-Va.)からスティムソンセンターの研究員マイケル・クレポンsenior Stimson Center associate Michael Krepon に米国の弱点は何かとの質問が出た。クレプトンからは「事実を無視することはできません。衛星は探知されてしまいます」
  2. さらに軍用民生双方で「中国の宇宙依存度は米国よりも低い」ことが次の論点だとカーネギー国際平和財団の主任研究員アシュレイ・テリス Ashley Tellis, senior associate at the Carnegie Endowment for International Peace が指摘した。
  3. エアリスアナリティックス社長ロバート・バターワースRobert Butterworth, president of Aries Analytics Inc.,からは「高エネルギー兵器などを衛星に使った場合の効果は不明」と発言あり、中国はこの分野に資金を投入する可能性があるという。
  4. 中国が2007年に軌道上でテストを実施して以来、デブリ問題が注目を集めており、敵衛星の破壊は自国の軌道上の機材も危険になることが浮き彫りとなったが、中国は直撃による破壊方法から「ソフトキル」や「視力破壊」といった非対称形式のアプローチに切り替えているとテリスは発言している。
  5. 上記三名の専門家は合衆国による今より水準の高い「宇宙用状況認識」能力開発の必要性で同じ意見であり、各種の軌道高度においてこれを実現し、攻撃を早く探知し、攻撃を仕掛けたのが誰かを特定すべきだという。バターワースは軍事衝突の際には米国の指揮命令通信網は防御された衛星システム以外に防御のない衛星にも依存しているためこれが弱点となると指摘。
  6. クレポンは「この問題では大事なのは」攻撃の発生源だという。テリスも「軍事衝突でストレスを受けるシステムもあり、攻撃の属性をはっきりさせる」べきだが、短時間でこれを実現するのは困難だという。
  7. その問題意識でクレポンは各国は「米国は各国の措置に対応できる能力を保有して」おり、このために米国にどの国に対しても優越性があるという。
  8. 開戦となれば、損傷被害が大、あるいは性能を発揮できなくなった衛星の代替手段を迅速に利用可能にすることが課題だ。テリスは米国の衛星システムは性能重視のあまり機数が少なすぎるという。「代替衛星を軌道に乗せるには時間がかかりすぎます。現状では衛星製作と軌道への運搬に予算上の問題が発生しています」
  9. 今後の展望として、軍事宇宙予算が削減対象になっていることから、バターワースは「「すごい大金」が新機軸の性能実現に必要であり、今後も軍事技術上の優位性を維持するためには「設計を根本から見直す」必要があるという。
  10. 核抑止力なら潜在的の敵の目の前に配置できるが、クレポンは「宇宙抑止力は多くが暗示的な存在ですが、敵対行動が結果をすぐ生む点が違う」という。
  11. そこで各国間で条約は無理としても「行動規範」を作り、宇宙空間上の行為を規制し、中国軍部民間関係者と宇宙関連の対話を実現することをクレポンは提唱。これは冷戦時代に前例がある。中国では軍部と民生で宇宙利用を軍主導とするか外交効果を重視するかで路線対立が生じているとクレポンは指摘する。■


2014年2月8日土曜日

ソチ五輪で危機管理として第六艦隊から二隻を黒海に派遣



U.S. Warhships Enter Black Sea in Support of Sochi Winter Olympics

By: USNI News Editor
Published: February 5, 2014 10:31 AM
Updated: February 5, 2014 11:43 AM
U.S. 6th Fleet flagship USS Mount Whitney (LCC-20) in the Black Sea in 2013. US Navy Photo
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米海軍第六艦隊の二隻が黒海に入り、ソチ冬季オリンピック開催前から同海域に展開していると海軍が発表した。
海軍によると二隻のうち第六艦隊旗艦の指揮統制艦USSマウント・ホイットニー(LCC-20)は2月4日に同海域に到着しており、もう一隻オリバー・ハザード・ペリー級フリゲイトUSSテイラー(FFG-50)が水曜日に黒海入りしている。

「二隻は黒海で通常任務の一環として同盟各国との協力関係を強化すべく、訓練や相互運用にあたる」と海軍は発表。
その文書では明示していないものの、二隻はソチでテロ攻撃が発生した際に米市民の脱出用に用いられる。
ロシアは保安体制を段階的に強化しており、イスラム過激派によるコーカサス地方の独立運動(チェチェン、ダゲスタンなど)を警戒している。

USS Taylor (FFG-50) departs Naval Station Mayport in 2014. US Navy Photo



2014年2月5日水曜日

20年の法律論争が結局物納で決着したA-12開発中止問題はF-35の今後にどんな影響を与えるのでしょうか



A-12 Avenger Suit Reconciled, At Last

By Jen DiMascio
Source: Aviation Week & Space Technology
aviationweek.com February 03, 2014
Credit: U.S. Navy Concept

開発中止からほぼ20年が経過しても調停が不調に終わっていた中、米政府がやっと総額4億ドル相当をジェネラルダイナミクスとボーイングから受け取ることで、海軍のA-12アヴェンジャーII(総額48億ドル)取り消しで紛糾していた対立が解決することになった。
  1. 今回の示談規模は政府としては当初目指していた訴訟内容の数分の1規模。政府は損害賠償として13億ドル(2014年価値で22億ドル)を要求していた。その根拠は結局実現しなかった艦載ステルス機に投じた経費相当で、今回の妥結額はいったんは合意形成されそうだった2003年の29億ドルよりはるかに小さい。
  2. 連邦請求裁判所 U.S. Court of Federal Claims が1月24日に棄却し、海軍と契約企業の求めに応じる形になった。昨年末には政府は両社と合意に達していた。
  3. 海軍はEA-18G2014年予算で承認ずみ21機とは別に三機を2016年めどでボーイングから受領する。ジェネラルダイナミクスは198百万ドル相当のクレジット枠を海軍に設定し、建造中のズムワルト級DDG-1000で使えるようにする。
  4. 「海軍航空史上で23年の長きにわたった事例を完結させようとしており、契約企業による物納の形で海軍の戦力増強につなげようとしている」と海軍長官レイ・メイバスNavy Secretary Ray Mabusが表明した。
  5. 「訴訟は長期化し難易度を増したが、海軍の予算数十億ドルの節約になった。当省は長年にわたる法務省の関与に感謝したい」
  6. 契約企業も安堵している。「ボーイングはこの長期訴訟が結末を迎えることをうれしく思います」と同社スポークスマンが電子メールで表明。「海軍、法務両省のご尽力で解決できたことに感謝しつつ、今回限りの措置を全関係者が受け入れたのはうれしい結果」としている。
  7. 紛争は1991年に始まり、ディック・チェイニー国防長官(当時)が48億ドル総額のステルス次期攻撃機開発を中止したことがきっかけ。同機はジェネラルダイナミクスとマクダネルダグラスの共同開発で後者がボーイングに吸収合併された。中止は契約社が価格と開発日程で要求水準に達していないと政府が判断したためだった。海軍は契約企業に13億ドルの国庫返納を求めていた。
  8. 主契約企業側は政府を訴え、政府こそ罰金を支払うべきと主張した。その理由は契約が解消されたのは「政府の都合」であり、成果が低いことではなかったため。案件は司法制度の中でさらに悪化し、最高裁案件になった。
  9. 1999年に案件は連邦請求裁判所に戻され、マイケル・マンキューソ Michael Mancuso (ジェネラルダイナミクスの最高財務責任者(当時))は「すぐに示談になる」と楽観的だった。実際にはそうならなかった。
  10. その14年後に解決の機会が再度訪れた。その時点で関係者は10年間にわたり巨額費用を法的手続きに投入していた。ペンタゴンは年間10百万ドルを訴訟費用として計上していたほどだ。契約企業側は29億ドル近くで手を打つつもりで、取引材料にヴァージニア級原子力潜水艦、共用直撃弾薬やF-18E/FやC-37で値引きを提示する構えだった。
  11. これが土壇場でペンタゴントップが拒絶されたとジョン・ヤングJohn Young が説明する。ヤングは海軍の調達部門トップとして妥協案を模索していた。ヤングによるとこれで機会が失われたという。
  12. 「裏交渉で結果が出ると思っていました。しかし残念なことに航空機まで含めた20億ドルの取引になってしまいました」(ヤング) ヤングはその後ペンタゴンの調達トップになった。「国防総省は今回取るに足らない金額で解決しています」
  13. 20年経過した2011年には最高裁が本事例を検討した。海軍の主張は契約企業は約束通りの仕事をしていないというもの。これに対し契約企業からは政府がステルス技術の情報を開示しなかったため効果が上がらなかったと反論。結局、最高裁は連邦請求裁判所に差し戻した、というのが経緯だ。
  14. 雪解けの兆候が出たのは昨年春で、オバマ政権から議会に対し、合意内容の実施許可を求めてきた。合意は国防予算案に盛り込まれ上記のような2014年国防予算承認法に盛り込まれたというのが今回の結末である。■


イスラエル向けV-22売却案件の内容が明らかになりました。


U.S. proposes to sell Bell Boeing V-22 Osprey tiltrotor aircraft, engines, and advanced airborne equipment to Israel in $1B FMS

avionics.intelligence.January 24, 2014

Executive Editor
WASHINGTON, 24 Jan. 2014..
イスラエル国防軍が特殊作戦、捜索救難用途でベル・ボーイングV-22オスプレイ・ティルトローター機を合計6機購入したいとの希望が表明され米国防安全保障協力庁が米議会に1月13日付けで概算11.3億ドルのイスラエル向け海外有償軍事援助(FMS)としてV-22BブロックC機材および関連機材、予備部品、訓練、兵站支援の売却案件として通告している。議会はその後二週間以内に異議を申し立てることができる。

同庁によればイスラエル政府が購入希望しているのはV-22BブロックC機材6機、ロールスロイスASE1107Cエンジン16基、AN/APR-39レーダー警告受信システム6基、AN/ALE-47機体防衛用ディスペンサー6基、AN/APX-123敵味方識別装置6基、AN/ARN-147超高周波(VHF)全方向距離(VOR)計器着陸装置(ILS)6基、多バンド無線機6基、AN/APN-194電波高度計6基、AN/ASN-163小型航空用GPS受信機6基、AN/AVS-9夜間暗視ゴーグル36個、共用ミッション立案システム、機体整備支援用機材、ソフトウェア、機体修理及び返却、機材フェリー移動、空中給油機便宜供与、予備交換部品、技術文書、人員訓練・訓練機材、米政府およびメーカーによる技術支援およびその他技術支援関連事項である。総額の試算は11.3億ドルになる。


ペンタゴンから議会に宛てた文書は以下のとおり
「合衆国はイスラエルの安全保障に責任を有し、米国の国益にとってもイスラエルを支援し、強力かつ即時性のある自衛能力の涵養及び維持することは重大な関心事である。今回の売却提案は上記目的と一致している

「今回提案のV-22売却はイスラエル国防軍の捜索救難ならびに特殊作戦の実施能力増大につながる。V-22Bは固定翼機では不可能な地帯に人員機材を輸送することが可能。イスラエル政府は同機が利用している技術を無理なく運用する事が可能。

「今回提案する機材売却を実施しても対象地の軍事均衡を崩すことは基本的にない。

「売却提案に関与する主契約社はベル及びボーイングであり、機材はテキサス州アマリロの両社合弁事業が完成させる。今回の提案に関し相殺契約は現時点では存在していない。

「売却を実施する場合、最高30回の米政府あるいは契約企業代表者のイスラエル出張が発生し、技術支援および進捗管理を行なう。

「提案中の売却が実施された場合に米国の国防即応体制への悪影響は発生しない。

「本売却通告は法律の求めるものであり、売却が成立していることを意味していない」■


2014年2月2日日曜日

エイビオニクス改修で威力をましたB-1

New era begins for B-1 bomber as Air Force begins taking delivery of Lancer aircraft with major avionics upgrades



avionics intelligence.January 26, 2014




ティンカー空軍基地(オクラホマ州) 1月26日----米空軍爆撃飛行隊にボーイングB-1ランサーの最新改修ずみ機体の納入がはじまっており、同機の長い歴史の中でも最大規模のエイビオニクス改修になっている。
  1. 納入機材はボーイングによる統合戦闘ステーションBattle Integrated e Station を搭載し、前方・後方のコックピット改修、新型診断機能、Link 16データリンク装置で状況把握能力と通信能力の改善が実現している。

  1. B-1は1970年代前半に開発が進められたが、1977年にカーター大統領により開発が取り止めになっている。その後レーガン大統領が開発再開を決定し、1986年から空軍配備が開始された。

  1. 同機は超音速低空飛行で敵地に侵入し、核・通常兵器の爆弾あるいはミサイルを運用する。敵防空網の突破に飛行速度とともに高性能の電子戦(EW)システムを利用する。

  1. 1月28日火曜日に統合戦闘ステーション搭載の一号機が空軍に引き渡され、ダイエス空軍基地(テキサス州)へ常駐する。

  1. 近代化改修で乗員は戦闘地帯で何が発生しているかを知る乗員の状況認識能力が上がり、通信もより高速かつ秘匿性がましたので敵目標の攻撃能力が上がっている。

  1. 統合戦闘ステーションは従来のディプレシ複数を新型多機能からーディスプレイで置き換えており、集中診断機能と機体性能監視コンピューターとLink 16によるネットワーキング能力も導入しており、飛行計器はデジタル式になった。

  1. B-1の新型デジタルデータリンクにより後方コックピットにデジタル式エイビオニクス機能が加わった。このうちLink 16により見通し線を超えるアプリケーション・プロトコル方式のデータリンクが加わり、カラーデイスプレイ上に直感的に理解できるシンボルが移動式地図上に表示される。

  1. また中央統合診断システムにより後方コックピットにあった旧式コンピュータが不要となり、あらたにカラーディスプレイが付けられたので、機体性能の状況を常時監視できるようになった。これにより地上要員による機体システムの問題解決が楽になる。

  1. 空軍第76航空機保守グループ(ティンカー空軍基地)が統合戦闘ステーションを機体に装着している。改修費用は総額975百万ドルで現有B-1全61機への装着完了には8年間かかる。

 (関連記事 B-1電子戦装備の保守管理をCrane Microwave へ委託)

 (関連記事 米空軍がB-1エイビオニクスソフトウェア更改業者の選定へ)


 (関連記事 B-1電子対抗装置にSyntonic Microwave製水晶発信機を選定)

2014年1月31日金曜日

米海軍の原子力空母削減案に待ったをかけたホワイトハウス


White House Pushing Against Proposed Pentagon Carrier Cut

USNI News
Published: January 30, 2014 3:45 PM
Updated: January 30, 2014 4:00 PM
USS George Washington (CVN-73) on Dec. 2, 2013. A proposed reduction in the US carrier fleet was stalled this week after the White House told the Pentagon to look for cuts elsewhere. US Navy Photo


ペンタゴンが提出した2015年度予算案で空母一隻を削減する内容がホワイトハウスにより差し戻しになっていると判明した。
  1. 国防長官官房Office of Secretary of Defense (OSD)提案では原子力空母一隻を退役させ現在の11隻体制を10隻にするとしていたが議会に続きホワイトハウスからも抵抗にあっている格好だ。.
  2. 政権内部からペンタゴンに空母の代わりにほかの予算節約策を模索するよう求めてきたという。.
  3. 下院議員有志からは先週にチャック・ヘイゲル国防長官に空母11隻体制の堅持を求める書簡が発出されている。その内容には引退予定の下院軍事委員会委員長ハワード・「バック」・マッケオンRep. Howard “Buck” McKeon(共、カリフォーニア州)ならびに海洋力小委員会委員長ランディ・フォーブスRep. Randy Forbes (共、ヴァージニア州)のほか民主党議員も賛同して署名している。
  4. 「強力な海軍維持のため11隻の原子力空母は超党派で支持が集まる課題」としている。.
  5. マーク・ワーナー上院議員 Sen. Mark Warner (民、ヴァージニア州)は今年は再選を控え地元の空母母港への影響から空母削減反対の圧力を受けている。.
  6. 海軍当局はホワイトハウスと国防長官官房間の協議の内容を明らかにしていない。
  7. 海軍報道官ドーン・カトラー大佐Capt. Dawn Cutler は「今後もきびしい内容の協議が続くことはこの財政状況では疑う余地がない」とUSNI Newsに文書で回答している。「15年度予算の作業は進行中であり、海軍予算案についての言及は時期尚早かつ決定前であるので差し控えたい」
  8. 米国で原子力空母を建造しているのはニューポートニューズ造船所(ヴァージニア州)が唯一の存在で、数千人を雇用し新型フォード級空母を建造する傍ら、USSエイブラハム・リンカン(CVN-72)の核燃料交換とUSSエンタープライズ(CVN-65)の解体作業をしている。
  9. OSDによる空母削減案はDefense Newsがいち早く報道しており、ニミッツ級原子力空母を想定の50年耐用年数以前に退役させるとし、就役期間途中の定期核燃料交換の機会に実施するとしていた。
  10. その対象はUSSジョージ・ワシントン(CVN-73)となる公算が大で、航空部隊も同時に削減する目論見。
  11. エンタープライズの退役で現時点の空母は一時的に10隻で、ジェラルド・R・フォード(CVN-78)の就役までこのままだ。
  12. 実はペンタゴンとホワイトハウスが空母をめぐり対立したのは今回が初めてではない。2011年にもペンタゴンが空母退役案を持ち出した。案を見た政権側からOSDに対し空母11隻体制の維持の指示が出ている。
  13. 空母は米軍司令官からの需要が一番高い艦艇であり、数十億ドルの価格の各空母は同時に維持運営でも一番お金がかかる艦艇でもあり、人員だけでも年間数億ドルがかかっている。.
  14. 原子力空母の退役作業も非常に高価である。エンタープライズの原子炉の撤去と廃棄だけで850百万ドル以上かかるといわれる。■

2014年1月29日水曜日

中国の極超音速ミサイル実験で冷静かつ真に理解すべきこと


U.S. Navy Sees Chinese HGV As Part Of Wider Threat

By Bradley Perrett, Bill Sweetman, Michael Fabey
Source: Aviation Week & Space Technology

aviationweek.com January 27, 2014


中国が1月9日に実施したマッハ10の超音速誘導兵器実験は米海軍が将来の戦闘形態で予測した内容と一致している。中国がこの技術を実戦配備した場合、防衛網を突破し弾道弾としての有効距離が拡大するが、攻撃兵器への応用はまだ数年かかるとみられ、目標捕捉と誘導方法でまだ課題が残っているのが現実だ。
  1. 超音速滑空飛翔体hypersonic glide vehicle (HGV)のテストは中国が対艦弾道ミサイル anti-ship ballistic missile (ASBM) に一歩近づいた証と受け止められており、低速だが操作性が高い再突入体reentry vehicle (RV)が今回試されており、ASBMも第二世代に入る兆候かもしれない。.
  2. 今回のテストを見て米国は指向性エネルギー兵器体系の配備を急ぐ必要があると指摘するアナリストもいる。つまり迎撃ミサイルではマッハ5以上の標的に対応できないというのだ。米国は指向性エネルギー兵器を開発中だが実用化の日程は不明だ。.
  3. 中国のHGVはペンタゴンがWU-14の名称をつけており、大陸間弾道弾をブースターに使い打ち上げられた。宇宙空間から再度大気圏に戻り滑空しながらマッハ10を記録。テストはすべて中国領土内で実施されたと中国国防省は説明。1月19日にはもう一機が同じ発射場(山西省太原Taiyuan)から打ち上げられたとワシントンにある国際評価戦略センター International Assessment and Strategy Center のリチャード・フィッシャーが明かした。このうち1月9日のテストはビル・ゲッツがワシントンフリービーコン Washington Free Beacon で解説している。
  4. 中国が達成した内容は正しい理解が必要だ。米空軍はマッハ15のHGVマクダネル製ブーストグライド研究機を1966年から68年にかけて四回にわたり飛行させている。そのあと実用的な設計にしたマクダネルダグラスの高性能操縦可能再突入体 Advanced Maneuvering Reentry Vehicle (AMaRV) のテストを1979年から80年にかけて実施している。ただしこれは実用的な兵器には結びついていない。80年代の軍備管理やミサイル防衛に中心が移ったためだ。
  5. 通常のRVには姿勢制御機構がなく、予測可能な弾道軌道で大気圏に入ってくる。弾道ミサイルの弾頭は事実上1980年代までは敵なしの状態だったが、その後迎撃ミサイルを中心とした海上あるいは陸上配備のシステムが長距離を飛行する弾道ミサイルの弾頭を撃破する能力があることが証明されてきた。
  6. HGVでは姿勢引上げ操作を大気圏突入後に実施でき、目標まで比較的平坦な飛行が可能。そのため探知は弾道ミサイルの弾頭よりも遅れ、迎撃に残された時間が短くなる。HGVは空力学的に制御可能なので、それだけ迎撃が難しくなり、その間に目標へ近づく。滑空距離はミサイル固有の射程距離より長くなり、比較的脆弱な中間段階の飛翔は目標地点や防衛体制の整った地点より遠くでの発生する。
  7. 中国の対艦弾道ミサイルDF-21Dは実用段階にあり、ペンタゴンによるとHGV開発が一層射程の長く制御性の高い対艦兵器開発につながる可能性がある。しかし、中国製HGVの飛翔は一つの事象でもっと大きな傾向の一部とサミュエル・ロックリア大将 Adm. Samuel Locklear (米太平洋軍司令官)は指摘する。「極超音速テストは将来に意味を持ってくる要素のひとつ」という。
  8. 2014年の年次水上海軍兵力協会 Surface Navy Association のシンポジウムでロックリア大将は「たくさんの国家が極超音速をテスト中なので今回のテストだけが特別なわけではありません。また中国だからと言って問題になるわけではありません。ただシステムが拡散しています。中国とお友達になろうとしても別の国がやはり同じ難問をつきつけてくるかもしれません。それが現実です」
  9. 同大将がいわんとしていたのは米国はWU-14の開発を注視しているということだ。中国は「技術投入で急速な進歩」を遂げミサイルテストの段階まで進んだというのだ。「中国の開発工程はわれわれと違っており、進展が早い」
  10. 例としてDF-21Dの想像図とされるものがインターネット上で示されているがそのRVの形状はマーティン・マリエッタ製のパーシングIIミサイルに似ている。このミサイルは1983年に実戦配備され88年に撤去されている。中距離核戦力条約の結果だが、DF-21とペイロード、射程距離が類似している。陸軍のパーシングII用教練マニュアルがインターネット上に流出しているのが見つかっており、オープンソースの文献として大部分が公表されている。
  11. パーシングIIのRVは1,400-lb. で四枚の制御フィンがついており、マッハ8、25gで引き起こし制御が大気圏突入後に可能で 30-nm にわたり滑空し、搭載するレーダーシーカーで目標地点の画像をとらえる。誘導システムがレーダー画面と一致し、打ち上げ前に読み込んだテンプレートで高い精度を実現する。一度目標を捕捉すれば同ミサイルは最終段階の降下を開始する。
  12. だがWU-14のような高性能のRVやHGVでは熱環境がいっそう苛酷になるため与えられる性能も異なってくる。長距離を飛翔する兵器では高速に加え、飛翔段階が長くなるので熱荷重の蓄積が高くなる。70年代のマクダネルダグラス製AMaRVでは双円錐形とし後縁フラップで制御していた。このAMaRV構想が2000年代に米空軍が研究した共通空中飛翔体Common Aero Vehicle,という大陸間通常弾頭攻撃兵器として復活している。
  13. 2011年には米陸軍が高性能極超音速兵器Advanced Hypersonic Weapon の試作機を実証している。これはフィン制御の機体で大気圏内弾道で飛行する設計だった。この際には高温耐久セラミック複合材をサンディア国立研究所が開発したことで実現している。
  14. 大陸間弾道弾にはすべてHGVを搭載可能。中国のICBMはHGVを運べば米国の防衛網に対する抑止力を手に入れられる。しかし短距離で使用する可能性の方が高く、実現も最初だろう。「HGVの用途は対艦あるいは戦術目的であり、戦略攻撃手段として米国都市の攻撃は想定外だろう」とみるのはヘリテージ財団 Heritage Foundation のアナリスト、ディーン・チェン Dean Cheng だ。「HGVがあれば弾道ミサイルで機動t的な目標の攻撃が容易になる」
  15. 地上攻撃用としての利用も最初に考えられ、再突入技術と経路修正の複雑さを回避できる(フィッシャー)。中国ではHGVの軍事利用を二通り考えているようだという。ひとつはうわさが出ているDF-26で、これはDF-21中距離弾道ミサイルに制御可能なHGVを取り付けたものだ。「HGVがあればミサイルの実質的な射程を延長することが可能」(フィッシャー) もうひとつが90年代末に投入したDF-31ICBMの射程8,000キロメートルを12,000キロメートルに延長することだという。.
  16. フィッシャーによれば性能が実証済みの安価なミサイルを使い、HGV弾頭で射程を延長することに利点が多いという。WU-14のテストおよびそれがミサイル迎撃を困難にすることで米国には急いで指向性エネルギー防衛手段を開発する必要を迫られていると警告する。
  17. ただしそれもHGVの実用化がいつになるか次第だ。新アメリカ安全保障センター主催の会議席上で香田洋二元海将から中国海軍の原子力潜水艦が将来の脅威の中心となる可能性が示され、ASBMで「到着する米軍を迎え撃つ」可能性があるという。ただし同海将によれば中国のASBMが真の脅威になるには10年から15年かかる見込みだという。対艦HGVだともっと時間が必要だろう。.
  18. ただし水上艦艇をいくら制御可能なHGVとはいえ直撃するのは容易ではない。 まず目標を捕捉し、識別し、正確に位置を割り出し追跡する必要がある。データをセンサーから指揮命令システムに渡し、ミサイルにも与えて中間飛行中の修正に使う。ミサイルの誘導システムは目標が移動することから存在可能性のある海域が拡大する中で捕捉する必要が生じる。そこで誘導システムは妨害に耐えつつ水上艦艇を識別することが求められる。
  19. 米海軍作戦部長ジョナサン・グリーナート大将 Adm. Johnathan Greenert は昨年5月に重要な「イベントの連鎖」について言及しており、海軍がその時点でシステム開発を進行中あるいは完了していると発言している。その意味は中国のDF-21Dへの対抗手段である。冷戦時のソ連がミサイル搭載Tu-22を配備していた際の対応と同様に海軍が目指すのは初期段階で敵の探知識別能力を無効にすることである。ただしグリーナート大将自身はこの方法に疑念をもっていることを大会の席上で示した。海軍は「電磁気戦」 “electromagnetic maneuver warfare” に重点を移すべきとし、「レーダー、通信、WiFiを使う際はどんな痕跡が残るのかを知る必要がある。すべての電子機器を切り、沈黙を作る必要がある。だが実態はテストを行うと沈黙になっていないことが判明している」.
  20. 広大な海域の探知手段として有望なのが宇宙配備レーダーだが年々費用が下がっており、性能は上がっている。ここで中国とロシアの連携を示す兆候がある。ロシア宇宙機関NPO Mashinostroyeniyaが昨年6月にコンドルーE合成開口レーダー衛星を打ち上げており、未公表の顧客の発注に対応したことになっている。中国の無人機開発ではレーダー断面積の削減が進んでおり、Soar Dragon といった新型機が海洋監視用途に使用されるかもしれない。
  21. 大会前のブリーフィングにおいてロッキードでイージスを担当する役員ジム・シェリダンJim Sheridanに対して海軍から同社にイージスでDF-21D対応の可能性で打診があったのか尋ねる質問が出た。「なんらかの意見交換はありましたが、詳しくは話せません」
  22. 極超音速ミサイルが目標に命中した場合は運動エネルギーだけで損害を発生できるかが分析部門の関心事だ。これに対してオーストラリア戦略政策研究所 Australian Strategic Policy Institute  のアンドリュー・デイビス Andrew Davies は懐疑的で重量 500 kg の不活性RVがマッハ6で突入すると亜音速のボーイングAGM-84ハープーンの運動エネルギーと爆発エネルギーに相当すると計算結果を出している。また上記RVの発するエネルギーは冷戦時代にロシアの「空母キラー」Kh-22の想定規模の四分の一にすぎないという。Kh-22は重量 12,800-lb. でマッハ4で2,200-lb.級の弾頭を命中させようとする。ただし極秘研究が80年代にマクダネルダグラスにより行われており、それによるともっと小さい弾頭でも貫通用に全長を伸ばせば艦船に十分な損害を与えて作戦海域から撤退させることが可能だという。■