2013年9月18日水曜日

120時間連続飛行可能なUAVは偵察監視活動を変える可能性があります

どうしても戦闘機の話題が読者の関心をしめているようですが、このブログの本来目指しているISR機材関連、無人機の話題も日本には必要と考え、あえて掲載していきます。今回もその流れで超長時間飛行機材をご紹介します。無人機では大きく遅れを取っていることが明白な日本にとってまずこれまでの遅れをとりもどすためには大きく目を開く必要がありますね。

Aurora’s Orion MALE UAV Aims For 120-hr. Flight

By Graham Warwick
Source: Aerospace Daily & Defense Report

September 17, 2013
Credit: Aurora Flight Sciences
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オーロラフライトサイエンス Aurora Flight Science の新型無人機オライオン Orion が高度20,000 ft.ペイロード1,000-lb.120時間連続飛行という目標への最初の一歩を踏み出した。
  1. オライオンはプレデターと同等のペイロードを搭載し連続監視飛行を行うことができるようになる。現行のUAVは24時間ミッションが主なので、離発着回数を減らし、操縦制御する人員の負担と運用コストを下げることが可能となる。
  2. オライオンは8月24日に「西部のテスト施設」から初飛行したが、これはカリフォーニア州チャイナレイクのことと思われる。エンジンはAustro Engine のAE300で燃料効率が高いターボディーゼル2基で飛行時間は3.5時間に及んだ。高度は8,000 ft. で約60ノットだったと同社のUAS事業部の副社長トム・クランシー Tom Clancy が明らかにした。
  3. 国防総省内で同機の管轄が幾度も変わっている。オーロラ側は現在の管轄先を明かすことを拒んでいるが、Aviation Weekは米空軍のビッグサファリ計画室 Big Safari program office と理解しており、特殊用途機体の改修、調達をしている部門だ。
  4. 同社が開発を開始した2006年当時は陸軍予算で水素動力の「高高度長時間滞空機」 “high-altitude, long-loiter” (HALL) となるUAVを完成させる予定だった。2008年になり同社から空軍研究所に対し中高度版のオライオン案が通常エンジン動力として自主的に提案されている。これが共用技術コンセプト実証 joint concept technology demonstration(JCTD) の中高度グローバル情報収集監視偵機・通信中継機(Magic)となり契約が成立している。
  5. HALL設計案から複合材料製の主翼、尾翼を使ったオライオンはオーロラのゴールデントライアングル(ミシシッピ州)工場を2010年11月にロールアウトして、2011年8月に初飛行の予定だった。「案件の進展は予算計上の進度に左右されました」とクランシーは明かす。「ただし目標水準は最初に設定されたままです。120時間連続自律飛行のUAVでペイロード 1,000 lb. 高度20,000 ft.です」
  6. 技術上の目標はMagicの内容に準じている。「低価格を離着陸回数削減で実現し、自律性で訓練費用を下げ、オープンアーキテクチャアでアップグレード費用を最小限にするまたはミッションシステムを強化させることです」とクランシーは説明する。「プラグアンドプレイをめざしており、ミッション装備の変更も比較的容易になります」
  7. 初飛行時に機内にはミッションシステムはまったく搭載していなかったが、120時間連続飛行実証(2014年中ごろ)の際には搭載予定で、「情報収集機材複数となろう」という。オーロラからはMagic実証で三機の生産が提案されたが、現在は「二機以上になるかはお話できない」という。.
  8. また同機のシステムを作戦に投入する予定があるかについてもコメントがなかった。オライオンの主翼は長く複合材製の一枚構造で抗力を押さえ、軽量に仕上がっている。このふたつが中高度での長距離飛行を可能としている。もうひとつの鍵は燃料消費効率が高いターボディーゼルエンジンでジェット燃料を使う。
  9. 100時間超の長時間飛行を狙う機材は他にふたつあり、エアロヴァイロンメントAeroVironment’のグローバルオブザーバー Global Observer とボーイングのファントムアイ Phantom Eye はともに水素燃料を用い、高高度飛行設計だ。二機種ともに数回の飛行をしただけで買手がない状態だ。.
  10. 長時間飛行には高度の信頼性も必要となり、オライオンのシステムアーキテクチャアは同社の有人飛行可能なセントー無人機と同様の自律性と冗長性がもたせてある。「中には三重になっているものもあり、他は二重です。長時間飛行のためにはひとつも故障が許されませんからね」とクランシーは語る。■

2013年9月13日金曜日

ボーイング・サーブがグリペンをT-X候補として提案か

Boeing And Saab To Propose Gripen For T-X

By Bill Sweetman william.sweetman@aviationweek.com
Source: AWIN First


aviationweek.com September 11, 2013

ボーイングとサーブから米空軍の次期練習機T-X候補として両社が共同してJAS 39グリペンを提案するとの発表が近日中にある模様。両社は有力な候補案のロッキード・マーティン韓国航空宇宙工業共同提案のT-50よりもコスト競争力があると見ている。

T-Xは350機を調達しノースロップ・グラマンT-38を更新する内容だが、予算削減の影響で実施先送りとなっていたものだが、2015年度予算案で再スタートとなる見込み。

両社が参入すると競合にも影響が出そうだ。ノースロップ・グラマンはBAEシステムズと共同でホーク練習機を提案し、アレニアジェネラルダイナミクスと共同でM-346を提案している。
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ボーイングは新型機を提案するとしていた。しかし、サーブとの連携が現実的になったのはスウェーデン政府が新型JAS 39E(単座型)の開発をスイス向けに開始したため。スイス発注は単座型のみだが、これを複座型にしたF型は延長線上の機体になる。

T-50との比較ではJAS 39Fがわずかばかり大型で強力だが、同時により新しい設計でコックピットのワイドスクリーンはF-35に似ており、ディスプレイはヘルメットと一体化されている。取得価格はC/D型より安くなり、保守点検のしやすさ、運航コスト低減の設計だ。スイス空軍高官によると飛行時間単位のコストはタイフーンやラファールの半分程度だという。

正式にはT-Xの要求仕様内容はまだ発表とならないが、サーブ・ボーイング両社の動きから見てT-50で通用する要求内容ならグリペンでも通用すると判断している様子だ。業界筋によればT-Xグリペンはアグレッサー教導隊機材としても最適だという。あるいはF-22やF-35の訓練相手にもなる。米空軍はすでにF-38をF-22訓練用に配属している。さらに米空軍上層部に近い筋からは安価な選択肢として州空軍のF-15/F-16部隊の機材更新用になるのでは、との声も出ている。

ボーイングからはサーブとの契約についてその存在を確認も否定もしないとの声明が出ている。■


2013年9月12日木曜日

MDAがミサイル迎撃実戦テストに成功

MDA Goes Two For Two In First Operational Test Event

By Amy Butler abutler@aviationweek.com
Source: AWIN First

US Navy Photo


aviationweek.com September 10, 2013

米ミサイル防衛庁(MDA)が中距離弾道ミサイル二発の迎撃にそれぞれ成功した。小規模の攻撃をシミュレートした発射テストで、太平洋上クウェゼリン環礁で9月10日に実施された。
  1. 今回のテストは以前から米国のミサイル防衛網の実効性確認の機会として計画されており、ペンタゴン関係者はシリア攻撃で検討が進む中とは無関係と強調している。
  2. 今回のテストでは最終段階高高度地域防衛Terminal High-Altitude Area Defense (Thaad)システムおよびイージス装備の駆逐艦USSディケイターから発射のSM-3ブロックiAが迎撃した。
  3. 前方配備のAN/TPY-2レーダーおよび上空機材おそらく国防支援計画および宇宙配備赤外線システムの各衛星が脅威対象を探知し、追跡データを指揮命令システムに送信した。
  4. このうちAN/TPY-2が目標を捕捉したが、発射に必要な解は発射プラットフォームで独自のレーダーで求めたもの。すなわちThaadターミナルモードのAN/TPY-2とイージスのSPY-1レーダーである。.
  5. Thaadの二発目が発射されているが、これはイージスが目標迎撃に失敗した場合に備えてのこと。ただし、これは不要だった。イージスSM-3ブロックIAは昨年10月のテストで迎撃に失敗している。ジェイムズ・シリング海軍中将 Vice Adm. James Syring は8月に問題解決策はすでに織り込み済みと発言したものの、不良原.
  6. 今回の目標の一つはロッキード・マーティンの性能拡大型中距離弾道ミサイルExtended Medium-Range Ballistic Missile (EMRBM)で今回が初の発射となった。EMRBMはこの数年で急いで開発され、同規模の敵ミサイルをシミュレートするもの。C-17輸送機から投下されてから点火し飛行を開始している。今回のテストでは順調に飛行したことがデータで確認されている。MDAは同社から合計5基のEMRBM購入を契約している。
  7. 今回のテスト終了後にMDAから声明文が出ており、「テストでイージスの弾道ミサイル防衛(BMD)、最終段階高高度地域防衛(THAAD)で構成する層状防衛が機能することが実証された」としている。
  8. 今回は実戦テストだったので、操作には陸軍海軍の兵員があたり、「運用方針や戦術の内容向上に役立つ貴重な機会となり、同時に航空ミサイル統合防衛作戦の執行でいっそう自信がついた」とMDAは評価している。■

2013年9月11日水曜日

F-35の経済運用で協力を模索する英・ノルウェー

Norway And U.K. To Collaborate On F-35 Operations

By Anthony Osborne tony.osborne@aviationweek.com
Source: AWIN First
aviationweek.com September 06, 2013
Credit: LOCKHEED MARTIN

英、ノルウェー両国はF-35共用打撃戦闘機の運用で協力拡大を模索している。.
  1. 両国担当大臣がロンドンで5日合意書に署名し、機体整備、パイロット訓練、技術員養成で協力関係を検討することになった。
  2. 両国で資材、技術を共有してF-35を運用することでシナジー効果を狙う。
  3. さらにそれぞれの自国産業に共同事業を奨励して機体の維持管理を進めたいと考えている。たとえばノルウェーは国営企業 AIM Norway にF135エンジンの保守点検を担当させる。
  4. 「ノルウェー、英国にとって共通の機種を運用するのは60年ぶりのことで、当然新しい協力関係が生まれるでしょう。」(ノルウェー国務大臣エリク・トルスハウグEirik-Owre Thorshaug)英国はJSF導入の全体計画を決めきっていないが、協力関係の模索には関心が高い。
  5. 英国防筋はF-35最初の飛行隊となる14機の調達を年末までに決定する予定だ。同国はすでにF-35A型3機の引渡しを受けているが、発注済のB型は2018年にならないと納入されない。同型で空母打撃航空能力を構成する方針だ。
  6. 一方、ノルウェーが発注したF-35は2017年に引渡し開始となる。同時に完全に作戦能力を有する初のF-35となる予定だが、初期作戦能力の獲得は2019年になる。■


コメント なるほどあまりに高額になり、かつ今後の防衛力では依存せざるを得ない同機を単独で維持管理するよりも共同運用したほうが安上がり、という計算がすでにはたらいているようですね。日本はというとこの発想はないのですが、FACOの機能がこれから注目されるでしょう。とりあえずはシンガポールでしょうか。

2013年9月10日火曜日

シリア空爆後に今から備えるイスラエルは超現実主義国家

Israel Deploys New Iron Dome Batteries

By Alon Ben David
Source: AWIN First
September 04, 2013
Credit: Rafael

シリア攻撃の決断になかなか踏み切れない米国に痺れを切らし、イスラエルは攻撃実施後に備えようとしている。イスラエル空軍 (IAF) は高度警戒態勢に入っており、第六番目のアイアンドーム Iron Dome システム部隊を展開済みで、さらに第七番目も準備中だ。
  1. 「イスラエル軍はいつもどおり任務を継続する」とネタニヤフ首相 Prime Minister Benjamin Netanyahu は高らかに宣言したが、同時に追加予備役1,000名の召集を準備させている。
  2. IAFは第六番目のアイアンドーム部隊の引渡しをラファエルRafael から受け、各部隊を北部、中部、南部の国内に展開中。第七番目の部隊も米国がシリア攻撃の準備が完了するまでには納入されよう。アロー2 Arrow 2 弾道弾迎撃ミサイルも警戒態勢に置かれており、ペイトリオットMM-104地対空部隊も同様だ。
  3. シリアのアサド大統領Syrian President Bashar al-Assad はスカッドミサイル備蓄の半分を内戦で消費済みだが、さらにスカッドB/C/D合計500発を保有していると見られる。その射程は型の順に300,500、700キロメートルだ。ただし、液体燃料式のスカッドでは燃料注入に長時間が必要で、発射する前に存在が捕捉されてしまう。そこでイスラエルが懸念するのはシリア陸軍が多数保有する固体燃料式M600ミサイルのほうだ。これはイランのファター-110ミサイルのクローンで500-kg弾頭を300Km範囲で命中させることが可能でイスラエルの人口集中地区がほぼ全部含まれる他、戦略拠点も狙われる。そのほか 302 mm ロケットも 150 kmの射程があり、すべて化学兵器の弾頭を搭載できる。
  4. アローはもともとスカッドミサイルへの対抗手段として開発されているが、アイアンドームは短距離ロケット弾を想定している。さらに中間空域の防衛手段としてデイビッズスリングDavid’s Sling (別名 魔法の杖 Magic Wand )があり中距離ミサイルM600迎撃を想定しているがまだ開発中だ。イスラエルが保有するペイトリオットPAC-2が当面この間のギャップを埋める。「ある程度なら弾道ミサイルの脅威にも対抗可能だ」とアミール某中佐(氏名は非公開)はペイトリオット部隊指揮官として本誌取材に答えている。
  5. シリアの防空能力が一貫して弱体化しつつあるとはいえ、イスラエルは依然として強力な脅威とみなしており、イスラエル北部のラマット・デイビッド空軍基地 Ramat David Air Force Base ではサイレンが二時間おきに鳴り、戦闘機がスクランブルしておりイスラエル国境に向かうシリア戦闘機が探知されていることを示す。「敵を過小評価してはいけない」と同基地のF-16C/D部隊指揮官G中佐は語る。「好運に頼るわけに行かないのであり、わが国に向かう機体があれば現場に飛び領空侵犯が発生しないことを確実にしなくては」
  6. 前回のシリア空軍との交戦は1982年と1986年に発生しており、IAFが完全勝利している。IAFの航空管制部隊司令官アサフ中佐は「すべての動きを把握し、特に今回は警戒している。相手は現在も飛行を実施している。相手は作戦能力を維持しており、わがほうはこれを深刻に受け止めている」という。
  7. 近年になりシリアはロシアから高性能防空装備を受け取っており、SA-17(Grizzly/Buk) や SA- 22 (Greyhound/Pantsyr)をIAFは警戒しているようだ。2013年にIAFがシリア国内を数回空爆したとの報道が流れてからは防空装備はIAFにとって難題にならなくなった。このこともありイスラエルの判断はアサド大統領はあえてイスラエルを刺激してこないと見ている。
  8. 「イスラエルがその気になればシリアは全部失うことがアサドにはわかっている」とイスラエル国防筋の上席関係者が本誌に語っている。「わが国を攻撃すれば自殺行為とわかっている」 それでもIDFはこの二週間で各種のシミュレーションシナリオを試しており、米国による攻撃への報復としてシリアの息がかかった機関が代理攻撃としてシリアあるいはレバノン国内からロケット発射をしてくる、というもの。「それには即座かつ容赦なく対応する」とネタニヤフ首相は繰り返し警告している。
  9. イスラエル指導部は米国がシリア攻撃に踏み切るべきかに関しあいまいな態度をとっている。ひとつには化学兵器の使用という「レッドライン」を超えたシリアへは決定的な力の行使を希望しつつ、他方で米国のシリア介入で内戦の方向が変わるのを望んでいない。イスラエル指導部はアサド大統領を仇敵と見つつも内戦の反対勢力を見るとむしろ望ましくない結果につながることも恐れている。
  10. 9月のユダヤ休日を迎えようとする中で、イスラエル国民はガスマスクを手に入れようと行列を作り、国民防衛配給所に集まっている。米国による攻撃を受けたアサド大統領が化学兵器をイスラエルに発射するとの恐れから民間人多数が個人防護キットの入手に走っており、軍支給の同キットにはガスマスク一個とアトロピン注射器(神経ガス対策)が入っている。
  11. 指導層から繰り返し発せられるメッセージも国民の不安感情を鎮めることはできていない。イスラエル国民の多くがアサド大統領が化学兵器使用を自国民に使うのを躊躇しないのであれば、イスラエルにも躊躇せず使用してくるはずと考えている。■


2013年8月31日土曜日

シリア対応に5隻目駆逐艦投入、潜水艦も出動か

Fifth U.S. Destroyer Moves Closer to Syria

By: USNI News Editor Friday, August 30, 2013
                                                 

ノーフォーク海軍基地を8月18日に出港し米第六艦隊合流に向かう誘導ミサイル駆逐艦USSスタウト(DDG-55)(米海軍写真)



米海軍がアーレイ・バーク級誘導ミサイル駆逐艦の五隻目をシリア近くの海域に移動させていることが米海軍から明らかになった。
  1. USSスタウト (DDG-55) は8月18日にノーフォーク海軍基地を出港し、同海域で展開中の4隻の駆逐艦に合流する。
  2. 現在同海域にあるのはUSSマハン(DDG-72)、USSラメージ(DDG-61)、USSバリー(DDG-52)、USSグレイバリ(DDG-107)の四隻。各艦は弾道ミサイル防衛に加え地上目標をミサイル攻撃できる。
  3. 洋上の駆逐艦に加え、隻数不明の潜水艦も投入される模様で、トマホーク地上攻撃ミサイル (TLAM)を発射できる。報道によると英国海軍も少なくとも一隻の潜水艦を配備している。米海軍ではロサンジェルス級 (SSN-688-) およびヴァージニア級(SSN-744-)がともにTLAMS発射可能だ。
  4. 米海軍の誘導ミサイル潜水艦(SSGN)が該当海域に出動しているかは不明。SSGNは154発のTLAMの発射ができる。
  5. 米政府は8月21日に化学兵器がアサド政権により使用さみ計1,429名の住民が死亡したとみている。
  6. 「米政府は情報を総合してシリアの化学兵器部隊が8月21日の攻撃以前に準備していたと評価をあしている」とCNNが8月30日に報道している。
  7. 「攻撃実施の三日前に人的、通信、地理空間の各種情報収集 human, signals and geospatial intelligence を総合したところアサド政権の動きは化学兵器を使用した攻撃準備をしていると判明した、と米政府が発表した」と報道している。


スーパーホーネット改修型の売り込み先に米海軍に照準を合わせるボーイング

Boeing Targeting U.S. Navy For Super Hornet Upgrades

By Amy Butler
Source: Aerospace Daily & Defense Report
aviationweek.com August 29, 2013


ボーイングが米海軍に向けてF/A-18スーパーホーネット改修のデモを展開し、導入を働きかけている。

  1. 「もはや海外だけが当社の想定ではない」とボーイングでF/A-18、EA-18G営業を担当するボール・サマーズ Paul Summers は論じ、改修内容は「米国向けに適したもの」とスーパーホーネット、グラウラー担当主管のマーク・ギャモン Mark Gammon は説明する。
  2. 性能改修プロジェクトはF/A-18E/F 「国際ロードマップ」のもと2010年に改良内容のメニューが発表されている。ボーイングはその内容を海外政府向けに説明し、航空ショー他で紹介してきたが、米海軍にも一応義理もあり説明対象にしてきたという。
  3. これまではスーパーホーネット改修は最終的には同機最大の利用客であるペンタゴンに照準を合わせたものと誰かが言おうものなら即座にこれを訂正させてきた。
  4. 国防総省では予算確保で大きな困難な状態にあるが、海軍は同機改修内容に期待しているようだ。ただし予算は未計上だが。海軍からは新造スーパーホーネット一機を貸し出し飛行展示を求める他、ステルス燃料タンクなど設計修正を求める。産業側関係者によると早ければ2016年予算に計上となると見ているようで、実際の予算編成作業は来年の夏になる。
  5. 海軍が同機に関心を寄せるのはF-35C開発で慎重になっていることが理由。海兵隊は2015年12月までに、空軍はその一年後それぞれ作戦能力獲得を予定しているが、海軍は現時点で2019年が予定。ボーイングは高性能改修版スーパーホーネット Advanced Super Hornet なら、エンジン改修、前面ステルス性能、状況把握能力改善でロッキード・マーティンF-35Cに代わる選択肢になると吹き込んでいる。ただし、今回の改修内容は2030年以降に予想される脅威に対抗するものだという。
  6. 改修内容全部を開発しても10億ドル以内で実現できると同社は主張。仮に海軍が新造改修機体を調達すれば、機体単価は56百万ドルとなり、直近の機体単価51百万ドルから10%増えるだけという。(価格には機体、エンジン二基、電子戦装備を含む)
  7. 同社を勇気付けているのがオーストラリア空軍がF-35を先送りし、F/A-18E/F をつなぎ購入する方針を示したのが海軍に影響を与えていることだ。さらに新開発装備は既存機体にも後付装備できる。
  8. 「当社はF-35を意識して特定の技術分野をねらっているわけではなく、購入しやすい価格帯が差別化の最大の要素だ』(ギボンズ)
  9. 飛行テストの対象となる改修内容の一番手は機体上部に搭載する燃料タンク一組と機体中央線に装着する兵装ポッドで、空力特性・レーダー断面積を見る。ボーイングから製造したばかりのスーパーホーネット一機を海軍に貸し出しテストを行う。なお、この機体は合計100ポンドのレーダー波分散塗料が一部に使われている。.
  10. スーパーホーネット改修の大きな目的は低視認性の確保にあり、一体型燃料タンク、兵装ポッドや空気取り入れ口のレーダー探知妨害設計により現在稼動中のスーパーホーネットとの比較で前面で50%の改善効果を狙っている。■


コメント なるほど、F-15SEとアドバンストスーパーホーネット(日本語になっていません)でF-35を挟み撃ちにするのがボーイングの営業政策ですね。いつになるかわからないライトニングIIよりもお手頃な二機種でいいと考える国が現れるのは至極ごもっともなことに思えます。

2013年8月29日木曜日

サイレントイーグル後のF-15を検討するボーイング

Boeing Mulling F-15 Plans Beyond Silent Eagle

By Amy Butler
Source: Aerospace Daily & Defense Report

aviationweek,com August 28, 2013

ボーイングはサウジアラビア、韓国向け各型に続くF-15発展型を検討中というが、詳細は明らかにしていない。
  1. 韓国からのF-15調達60機の選定結果通知は9月中ごろと同社は期待。
  2. サウジアラビアがF-15SA導入したことで同機生産ラインは維持されており、2018年までの継続がまず決まった。これに加え韓国の発注でさらに3年のライン維持を同社は見込む。
  3. 同社からの最終提案内容および価格提示は8月16日に韓国政府に提出ずみ。ユーロファイター・タイフーンが早々と選定対象から外れて、実質上はF-15サイレントイーグルとロッキード・マーティンF-35の一騎打ちだが、F-35の高価格はあきらかだ。
  4. サイレントイーグルの特徴に一体型燃料タンクを兵倉庫に転用することがあり、韓国宇宙航空工業がこの兵倉庫を設計中で、イスラエル航空宇宙工業が一体型燃料タンクを別個に設計中。
  5. レーダー断面積削減のため、エンジン空気取り入れ口の形状変更を開発期間の初期段階で実現できると同社は期待。詳細は明らかにしていないが、変更設計は完了している模様。
  6. サイレントイーグルはサウジ政府資金により、デジタル式電子戦装備、アクティブ電子スキャンアレイ方式レーダーが開発された結果の恩恵を受けることになる。
  7. サイレントイーグルではさらにデジタル方式フライバイワイヤ飛行制御、一体型兵倉庫、高性能コックピットシステム(11x19 インチカラータッチスクリーン方式ディスプレイが加わる。ボーイングが提案しているレーダーはレイセオンAPG-82(v1) 。■


予算節約のためイージス発射テスト回数を減らす米海軍

U.S. Navy Mulls Cutting Aegis Flight Tests to Save Money

By Michael Fabey
Source: Aerospace Daily & Defense Report

aviationweek.com August 27, 2013

米海軍はイージス艦のシステム更新の予算を死守しつつ、今後は試射回数を減らして予算を節約することを検討中。なお最新のソフトウェア改善の効果を試す実弾発射試験に成功している。
  1. 「海軍はテスト内容を統合して支出を減らそうとしてます」とイージスの主契約会社ロッキード・マーティンで米海軍担当部長のジム・シェリダンは解説する。
  2. 海軍の5回の発射を3回にする予定とシェリダンは言い、同社も海軍の方針を支持するという。
  3. シェリダンによればテスト回数削減は改良型イージスの配備日程と矛盾するという。ただし、回数削減で同社には新しい挑戦課題が生まれ、これまではテストを増やして開発を進めてきた同社にとって新しい環境となる。「テスト内容がより多岐にわたり、テスト艦上では多忙になるでしょう」
  4. またテスト期間の短縮もテスト後の問題解決に当てられる時間の短縮となり同社は「迅速に切り回す」必要が生まれる。
  5. 現時点でソフトウェア改修は問題なく完了し、テストでも実用でも予定通りの性能を発揮しているという。また、「改修点」の多くはディッスプレイ装置の修正など「邪魔な」要素の排除だったという。
  6. 直近のイージステストでは今月初めに実弾発射を行い、見通し線の外でもデータを遠隔地のセンサーから統合して目標迎撃に成功したことでシステムの有効性を証明している。
  7. 海軍の統合火砲射撃対空手段 Naval Integrated Fire Control-Counter Air (NIFC-CA)  のテストも初めて洋上で実施され、イージスに遠隔地データを提供し目標迎撃に成功したのは二回連続となった、とロッキードが発表。使用したのは協同交戦機能 Cooperative Engagement Capability (CEC) で遠隔データを解析し、イージスがスタンダードミサイル-6 (SM-6)をUSSチャンセラーズビル(CG-62)から発射したもの。
  8. 同艦はイージスベイスライン9近代化改修の対象巡洋艦四隻で最初に改修を受け、3月に完成していた。
  9. ロッキードも弾道ミサイル防衛(BMD) 5.0 性能向上改修 (CU) によるイージス改修を進行中で、「コードを完成させようとしている」とのこと。
  10. BMDが米海軍の最重要開発分野になってきており、海軍は艦艇整備計画も大きく変更し、BMD能力の拡大を図っている。■



2013年8月27日火曜日

韓国F-XでF-15SE採用濃厚、しかし空軍はF-35に未練

South Korean Fighter Order: AF Backs F-35

By Bradley Perrett, Bill Sweetman, Amy Butler
Source: Aviation Week & Space Technology
aviationweek,com August 26, 2013
Credit: Boeing

ボーイングF-15SEサイレントイーグルが韓国F-Xフェーズ3で唯一の選択肢に残っており、60機導入が想定される中、韓国空軍はこの選択を快く思わず、ロッキード・マーティンF-35共用打撃戦闘機導入を実現しようとロビー活動をくりひろげている。.
  1. 韓国が採用すればF-15生産ラインは2020年代も維持可能となり、競争力のある機体を立ち上げることができる。ただし、これは韓国の国防調達プログラム庁 Defense Acquisition Program Agency (DAPA) の決定待ちであり、同庁はF-35は高価すぎる、ユーロファイタータイフーンは入札参加で想定外の事態ありとしていた。EADSは同庁に異議が申し立中。
  2. 政府横断型の特別委員会を国防相が主催し、DAPAの決定内容を来月裁定する。同委員会には軍代表に加え、国会の国防部会委員、財務省、DAPAに加え、国防開発庁からも参加。同庁はKF-Xとしてステルス戦闘機の国産開発を求めているところ。
  3. 財務省は政的に無理がないのでDAPA決定支持に回ると見られるが、空軍はF-35支持を鮮明にしている。
  4. 「空軍の一部にF-Xフェイズ3が本来の目標から誤った方向に向かいつつあると批判する向きがある」と聯合通信社Yonhapが8月20日、DAPA決定を報道する際に伝えている。「本来の目標」とは明らかにF-35発注のことで、それを支持する空軍関係者の姿勢は他の二機種も一応参加させるがあくまでも競争入札のためだとするものだという。
  5. これはデリケートな問題で、F-Xフェイズ1ではF-15が2002年に採用となったが、ダッソーは最初から採用の可能性がないと見て参加は時間の無駄と早々と結論付けている。同社は韓国では事業が展開できないと判断し、将来の競合にも参加の意思なしとした。そのとおりにF-Xフェイズ2でもF-15が採択となり、同社は参加せず、今回のフェイズ3でも同様だった。
  6. DAPAによるとF-Xフェイズ3ではEADSが資格外とされた模様。その理由は同社が価格を下げるべく同意済みの条件を一方的に変更してきたためだという。単座型45機・複座型15機を単座型54機と複座型6機に変更してしまったとするもの。EADSによればそもそもそんな合意はなかったという。”
  7. ロッキード・マーティンも選にもれているが、提示額が予算の8.3兆ウォン(74億ドル)を超過したため。ただ同社はまだ断念していない。
  8. 仮に韓国政府がDAPA決定をひっくりかえすと、再入札となる可能性がある。ただし、F-Xフェイズ3で代替しようとする機種はF-4ファントムとF-5タイガーでありそれぞれ部品供給が厳しくなり、機体寿命も終わりに近づいている。
  9. F-15SEは韓国発注が実現しないと生産に入らない。サウジアラビア向けF-15SAとの違いはレーダー断面積の削減にとどまらず一体型兵装庫の実現が一番大きい。これはF-15のこれまでの一体型燃料タンク(CFT)に代わるものでAIM-120空対空ミサイル4発あるいはAIM-1202発と1,000ポンド爆弾2発を格納するもの。
  10. そもそもボーイング案は有利だった。韓国で供用中の機体であり、価格では一番有利で、これがかぎとなる。DAPAは韓国国会から予算水準を越えた提案の採択は禁じられている。
  11. ロッキード・マーティンはF-35が高価格であるだけでなく米政府の海外軍事装備品販売foreign military sales (FMS) を経由しないと同機を提示できないというハンデもある。FMSでは米軍向け価格を下回る販売は禁じている。ボーイングはF-15SEを直接販売の対象とし、武装および一部装備品をFMS経由とした。
  12. もうひとつの利点は韓国航空宇宙工業がすでにF-15の主要部品メーカーになっている点で、ボーイングにすればDAPAのローカルコンテント要求水準を楽に満たすことができる。
  13. 三機種の中ではF-15が兵装搭載量、飛行距離性能で一番であり、タイフーンには米国による安全保障を受ける韓国では政治的ハンディが強かった。
  14. あるいは韓国政府がDAPA決定をそのまま尊重した場合、荒唐無稽と見られていたボーイングの戦略が有効だったことになる。サイレントイーグル構想が発表になったのは2009年3月のことで、その時点でF-35Aは米空軍で2013年までに作戦運用可能になっているはずで機体単価70から75百万ドルの想定だった。そのとおりならF-35は手ごわい競争相手になっていたはずだった。
  15. 現時点でF-35Aの米空軍での実戦化予定は2016年末以降で、2020年引渡し機体価格は96百万ドル。これに対しボーイングでは2012年のサウジアラビア向けF-15SA受注で生産ラインが再稼動し、F-15SEにも採用の新機軸実現の資金も入ってきたので相対的競争力は増えた。すなわち全デジタル方式の飛行制御システム、BAEシステムのデジタル戦システムDigital Electronic Warfare System (DEWS)、および再設計のコックピットに薄型ディスプレイを搭載したが、これらすべてを実現し開発リスクも下げられたのだ。
  16. サウジ事例ではF-15Sを現地でSAに改装するのも商談の一部であったので、韓国の場合もF-15Kで同じようなアップグレードも想定される。ただし、これは韓国の評価基準には含まれていない。
  17. ボーイングの戦闘機販売戦略は2009年から進化をとげ、特にF-15とF/A-18E/Fの調整がきめ細かくなった。F-15SAおよびSEのコックピットディスプレイはほぼ同じガラス素材、処理装置、、ソフトウェアを共用している。またボーイングはF/A-18向けに開発した技術を利用できるようにしており、パッシブ式目標捕捉システムがその例だ。F-15Kでは米海軍のスーパーホーネット用に開発中の赤外線探知追跡システムを搭載済みだ。
  18. サウジ向けF-15SAでは新型フライバイワイヤシステム、DEWSを飛行テスト中。新型一体型兵倉庫の開発は予定通り進行中だ。その他サブシステムでも性能要求水準の検討が完了ずみで設計変更の作業中。レーダー断面積の削減策もテスト継続中だ。
  19. サウジアラビア向けの新造機の引渡しは2015年にならないと実現しないが、F-15SのSA仕様への改修70機分の作業ははじまっている。サウジ向けの需要を満足するためには月産1機ペースで十分であるが、韓国向けには4年で60機という規模のため、月産数を倍増する必要が生じよう。韓国向けF-15Kおよびシンガポール向けF-15SGの引渡しは2012年で完了している。
  20. F-15Kでは機械式スキャンレーダーだったが、F-15SGではレイセオン製のアクティブ電子スキャン式アレイ (AESA) のAPG-63(v)3レーダーになっている。基本同じタイプがF-15SEに搭載される。ボーイングによればDAPAに対してもうひとつの選択肢としてレイセオンAPG-82があることは連絡済だという。これは米空軍がF-15Eに採用済みで2014年から第一線配備になる。APG-63(v)3ではF/A-18E/FのAPG-79と同様のアレイを採用しているが、APG-79と同じ処理装置他を使っており、このようにボーイングがF-15とF/A-18で共通化を提言している。.
  21. F-15SE採用が正式決定となった場合もF-35への影響は多分に心理的なものになるだろう。すでにF-35は日本での受注に成功しており、シンガポールでも競合相手がない状態で商談が成立しそうだ。オーストラリア、カナダ、ヨーロッパでの受注が確定すれば同機の戦略的な重要性がさらに増すことになろう。■