2013年9月26日木曜日

韓国F-X選定をひっくり返したのは韓国空軍なのか、それとも?

South Korean AF Derails F-X Phase 3 Choice Of F-15

By Bradley Perrett perrett@aviationweek.com, Amy Butler abutler@aviationweek.com
Source: AWIN First
aviatinweek.com September 24, 2013
Credit: Boeing

韓国空軍が同国F-Xフェイズ3 戦闘機選定でボーイングF-15SEにいったん決まった選定結果を覆すことに成功した。
  1. この結果ボーイングはF-15生産を2018年を過ぎても維持するという目論見の実現がなくなるだろう。韓国からの発注で同機の戦闘有効性は高まるはずで、その後の海外販売に弾みをつけるというのが同社の希望だった。
  2. 韓国国防調達計画執行委員会がF-Xフェイズ3の仕切り直しを決定したもので、8月にはF-15が総額8.3兆ウォン(77億ドル)で60機調達されることに決まっており、その時点での敗者はF-35とユーロファイター・タイフーンで後者は入札過程での違反が理由だった。今後一年以内に機種選定競合を再開する。
  3. 韓国空軍は一貫してF-35選定を希望しており、特に日本が同機を選んでからその勢いをまし、F-15に決まってからも同機の弱点をあげつらっていた。空軍将校がF-15選定で次期戦闘機計画が「間違った方向へ進んでおり、当初の狙いから外れている」と発言したと同国メディアが報じている。おそらく正しい方向とはF-35を指しているのだろう。
  4. もし韓国がF-35を結局選ぶのであれば、共同開発国以外の導入は三番目となり、日本に続いて同機のコスト、開発難航など問題あることを棚上げしての導入になるだろう。
  5. ただ韓国で困るのはこれが過去11年で二回目の選定の取り消しである点で、戦闘機に求める性能水準はあらかじめ決まっていたようだ、つまり入札側は営業費用を無駄に使って実は競争ではない競争に付き合っていたことになる。ボーイングがF-15Kでフェイズ1の受注に成功したのが2002年のことで、当時ダッソーは今後の韓国戦闘機選定には参加しないと表明。同社は提案内容に自信があったが、最初から採択の可能性がなかったのだ。
  6. フェイズの調達規模は20機で韓国国防調達計画庁の求めるF-15代替機調達をまともに受け止める競合メーカーは皆無で、ボーイングが単独で入札している。
  7. これに対し韓国国防省はF-15選定取り消しの理由は一部は北朝鮮核兵器の胸囲であり「非対称兵器」であるとする。ただ韓国政府関係者からは朝鮮半島の脅威状況は要求内容で大きな要素ではないと発言。さらに北朝鮮の脅威は昨日今日はじまったものではない。
  8. 同省は航空工学の進展が早くなっていることも理由に上げる。中国のJ-20ステルス機が試作機として出現したことが韓国の近隣では大きな技術的な進展だ。ただこれも二年前のことであり、その時点で国防省はF-Xフェイズ3の中止を求めていなかった。
  9. .国防省スポークスマンは「韓国が第五世代機を必要とし、北朝鮮の増大する脅威に対処する必要性は国民の総意」と発表。これに当てはまる機種はF-35しかない。
  10. .もうひとつ韓国にとって頭が痛いのはフェイズ3機種で更新しようとしているF-4ファントムとF-5タイガーがともに戦闘用航空機としての価値が残っていないことだが、新機種の導入は2017年から2021年の間になる予想だ。
  11. ボーイングからは「今回の韓国国防調達計画管理委員会の決定に深く失望」との声明が出ており、「当社は国防調達計画当局の指示内容を厳格に順守してきた。当局からの詳細通知を待つ」
  12. .これに対しロッキード・マーティンから選定過程でj引き続き米政府をを支持する、と声明を発表。F-35は海外軍事販売制度を通じて販売される予定だ。
  13. 今回の競合を通じEADSおよび子会社ユーロファイターは結局米国製戦闘機の当て馬に使われたのかと不審に思っている。だが駐留米軍により同国の安全が守られていることもあり、韓国は米国調達を選ぶ外交的な圧力を受けているのも事実だ。
  14. そこでユーロファイターおよびボーイングは次回入札に参加するのかが大きな疑問だ。とくに国防省が第五世代機が必要と宣言してしまっている。ボーイングは「考えられるすべての選択肢を」試すだろうと業界筋は見ていて、F-15SEの開発をさらに進めることも検討するだろう。同機はステルス性は限定的だが、高性能エイビオニクス機能があり、F-35に対して価格競争力がある。
  15. ボーイングは現在サウジアラビア向けF15SA84機の生産中で生産完了するのが2018年、最終機の引き渡しは2019年になるという。

オリジナルコメントのご紹介


  • 少し訂正したい。韓国空軍はF-15SE案に賛成している。反対したのは委員会の半分の席を占める民間委員だ。民間委員は当初は監視役として過去の汚職発生事例の再発が目的だったが、情報が限られる民間委員がロッキード・マーティンの宣伝攻勢に踊らされ、決定を取り消したのだ。
  • 今度は驚いた韓国空軍がジェット機編成をどうやって維持するかを真剣に考える番だ。F-X IIIが中止となれば次のF-X IVは別の予算で別の技術諸元での選択となり、早くてもこれから5年後のことになるからだ。
  • ボーイングは今回の結果を生んだのは同社の広告宣伝が実際には存在しないも同様だったためで委員会には情報を提供できなかったためだともする。そこで次回は「大衆教育」を大々的に行い、自社モデルと輸出版F-35の対比で訴えるとしており、明らかにボーイングは次回も競合に参加する意向だ。ボーイングはロッキード・マーティンのネガティブキャンペーンにより同社の提案内容を大衆が理解しなくなったと非難している。
  • 韓国国防調達庁スポークスマンの説明が腑に落ちない。なぜなら同庁と韓国空軍はサイレントイーグルを擁護し、民間委員による執拗な非難から2.5時間も非公開審議に持ち込んだものの、結局素人の民間委員の決心を変えられず、このひどい体たらくを国民に発表しているからだ。.
  • このためボーイングは今回は訴訟でなく大衆教育を次回の最優先事項に選んでいる。これは同社が国防調達計画庁と韓国空軍には今回の結果の責任がないとわかってるからであり、ロッキードの汚い手法に対し、あまりにも紳士として振舞っていたことをボーイングは反省し、次回波高は行かないぞと見ている。

2013年9月25日水曜日

米空軍でこれから一括削減される機種、これから開発が期待される機種はどれか

USAF Eyes T-X, New JStars Projects

By Amy Butler
Source: Aviation Week & Space Technology
aviationweek.com September 23, 2013

米空軍の三大次期機種調達F-35、KC-46給油機そして長距離爆撃機以外の機体に将来はあるのだろうか。
  1. ここ数ヶ月にわたり米空軍から発信されるメッセージが厳しく統制されている。上記三機種は推進し、残りは削減対象にするか、あるいは新開発機種であれば無期限の延期にするか。だが、空軍参謀総長マーク・ウェルシュ大将が自ら優先順位案を示している。強制予算削減で実際に支出策が大幅に削減されるが、案はその先を見越したもの。
  2. トップ3以外にウェルシュ参謀総長は老朽化してきたE-8C地上監視任務機およびT-38高速ジェット練習機の後継機種開発を希望。業界側はすでに両機種更新を見越して準備態勢を整えようとしている。しかし、まず議会が予算計上の可否を握っていることを参謀総長も承知の上だ。
  3. そこで空軍は「ハイ」と「ロー」の予算案二種類を準備していく。後者が最悪シナリオ想定で強制削減の影響を最大限に予想し、2015年まで続くとするもの。前者は新機種開発が数件認められる前提だ。
  4. E-8Cジョイントスターズは旧式ボーイング707旅客機の機体を活用しており、中古機を90年代00年代に改装したもの。そのため機体寿命は限定され、維持費用が高い。地上部隊からは監視能力の向上を求める声が強く、移動車両に加え徒歩で移動する兵員までの監視能力が必要だとし、同機の性能が追いついていないとの批判がある。そこで空軍は代替手段検討でビジネスジェット機に新型装備を搭載して速度と運用コストを両方満足させる案が浮上。アクティブ電子スキャンアレイ方式レーダーで技術が進んできたことから多機能探知追跡機能を同時に複数目標を対象に実施できるめどがついてきた。
  5. E-8Cと同様にE-3空中早期警戒管制機およびRC-135リヴェットジョイント情報収集専用機の機能を同じビジネスジェットに盛り込むことを最終目標とするプロジェクトに空軍が着手している。
  6. 業界ではT-Xで現行350機のT-38 後継機の採択に備える動きがあるが、米空軍は次期練習機の配備を2023年に先送りしている。BAEシステムズ/ノースロップ・グラマンはホークT2を、ジェネラルダイナミクス/アレニア・アエルマッキはM346で、ロッキード・マーティン/韓国宇宙航空工業はT-50で一般競争に臨む。ボーイングはサーブと完全な新設計機体の実現を交渉中といわれる。空軍訓練教育センター長エドワード・ライス将軍Gen. Edward Rice, head of the Air Education and Training Centerは現在の予算環境ではT-Xをすぐに実現化できないとし、T-38 そのものがまだ安全に飛行できることを理由に挙げる。
  7. その他米空軍の計画の多くが削減対象になる。空軍は可能な限り「垂直」削減、つまり機種毎の一括共用停止を求めており、この方が節約効果が高いのが理由だという。この垂直削減により特定機種のコスト以外に訓練、部品供給全体の削減効果も見込める。
  8. その垂直削減の有力な候補がA-10全機とMC-12Wプロジェクトリバティー各機だ。両機種はすきま任務に従事している。「予算問題さえなければ維持しておきたい性能なのだが、維持しておきたい機種が他にあるのでMC-12を犠牲にする」と空軍戦闘軍団司令官マイク・ホステージ将軍Gen. Mike Hostageは語る。L-3コミュニケーションズ製のMC-12Wは2009年に配備されたばかりで、イラク、アフガニスタンでの情報収集機需要に迅速にこたえたものだ。
  9. これとは対照的にA-10はその精密な近接航空支援(CAS)能力を陸軍から賞賛されている。空軍は以前も同機を退役させようとしたが、陸軍から議会への働きかけで存続が先送りされてきた経緯がある。ホステージ将軍は目標補足機能ポッドと精密誘導弾薬があればCAS任務は他の機種でも実施できるという。「陸軍は不満だろうが、財政危機であることを理解してくれるだろう」と同将軍は言う。「地上支援ミッションをやめるわけではない、単にその方法を調整しているだけだ」.
  10. これ以外の機種でも部分的な削減対象となっている。ロッキード・マーティンC-130やジェネラルアトミックスMQ-9リーパー無人機がその例で、「プレデター・リーパーは制空権が確保されない環境では無用の存在」とホステージ将軍派言うが、リーパー部隊の適正規模について言及していない。
  11. C-130では余剰機を処分することになりそうだ。一方でJ型の多年度購入契約も提案されている。空軍は現時点で340機のC-130を保有しているが、航空機動軍団司令官ポール・セルヴァ大将Gen. Paul Selva, head of Air Mobility Commandは300機あれば十分だという。
  12. 同大将からはKC-10給油機の早期退役も提案されている。ボーイングKC-46が就役することで退役すべきという。KC-10はKC-135より給油能力が大で、海軍、海兵隊機材にも給油ができる点で唯一の存在だ。一方でKC-135が大部分R型に改装されており、同様のミッションを実施できるようになるのも事実だ。
  13. 給油機の必要機数は479なので、KC-46の第一期分18機の編入が2017年に実現する時点でKC-10全機を退役させることが可能だろう。
  14. さらに削減対象にはC-5A部隊があり、同型は信頼性でC-5Mより相当低くなっている。M型はエンジンを換装し、信頼性が高くなった。議会は国内空軍基地の閉鎖を恐れ同機の退役を差し止めた経緯がある。
  15. 予算検討会の最終答申案は来年早々に議会に提出される。

2013年9月23日月曜日

テキストロンが製作中のスコーピオンは既成概念を破る機体になる予感

Textron Unveils Scorpion Light Attack, Recce Jet

By Amy Butler
Source: Aviation Week & Space Technology
 
aviationweek.com September 16, 2013
Credit: Textron

ペンタゴンに対して民間会社から国防総省が要求していない性能をまったくの新規機体として提案するのは相当の勇気が必要だろう。ましてや国防予算そのものが大幅な削減を受けつつある中では。
  1. だがこれこそ新しく生まれた共同事業体としてテキストロンと新興企業エアランドエンタープライジスAirLand Enterprisesが行おうとしていることなのだ。テキストロンはセスナビジネス機で知られる企業であり、ベルヘリコプター事業も長年にわたる回転翼機の経験がある。そして提携先エアランドは投資家数名によりできた企業で退役国防関係者も巻き込み軽量攻撃機の新しいコンセプトを実現するべく発足した。
  2. 予算状況が厳しい中で同事業体は新しい機材、複座双発のスコーピオン構想の有効性を示す必要がある。自己資金による同機は9月16日の空軍協会年次総会で発表され、このたびAviation Weekは関係者から詳しい内容を独自に知らされた。
  3. スコーピオン実証機は米空軍が求める低価格低運行コスト機材の要望に応えるもので5時間にわたり情報収集監視偵察(ISR)任務や兵装を搭載しつつ飛行して、空軍が想定するローエンド任務(米国からの阻止行動、自然災害への緊急対応、領空パトロール)に対応する。目標は飛行時間あたり運航コストを3,000ドル以下に抑えることだ。ただし同社は機体価格の目標水準は明らかにしていない。ペンタゴンからは類似ミッションの多くをこなすF-16の時間当たり運用コストは24,899ドルと公表している。
  4. アフガニスタンとイラクではF-15、F-16、A-10]が引き続き近接航空支援に投入されており、まったく制空権で心配のない環境で作戦が実施中だ。これでは過剰投入との声が出ている。また各機の高速度飛行性能、高G機動操縦性もこれらの戦場では使い道がなく、単に爆弾を投下するか地上部隊に上空監視を提供するだけだ。
  5. 「軍はハイエンドに関心を集中させています」とF-35調達で既存機種の多くを代替させようとする米空軍の動向を表現するのがテキストロンCEOスコット・ドネリー Scott Donnelly は語り、「だから需要があるのであり、国防総省の予算がこれから削減されることがわかっており、だからこそ今がチャンスなのです」
  6. スコーピオンの運用コストがそのとおりとするとペンタゴンは一年で燃料費だけで10億ドルの節約になる、と元空軍長官のF・ホイッテン・ピータースF. Whitten Petersはじめとする退役軍関係者は試算しており、彼らがエアランドを創設し、スコーピオン構想を数年前に提唱したのだ。テキストロンと提携を2012年に結んで勢いが増してきた。
  7. テキストロンにとって今回の提携は想定外の案件であった。同社は戦闘用の固定翼機を製造した事例がない。傘下のベルヘリコプターはH-1およびV-22ファミリーで軍用機を生産し、テキストロンシステムズは軍用車両や無人機製造でペンタゴンと密接な関係にある。だがテキストロンは米空軍の契約実績トップ企業には入っていない。だがエアランドの退役将官から空軍に本案件の紹介があり、相当の営業活動があったらしい。.
  8. ピーターズの空軍長官在任時にハイローミックスとして双発F-22と単発F-35の組み合わせが構想された。両機種ともロッキード・マーティンが契約会社で両機種ともに技術問題と遅延で価格が大幅に上昇している。その結果、空軍の調達機数はF-22が187機となり、F-35は今のところ1,763機になりそうだ。同時に両機種ともに低視認性性能を持つことで運用コストは高くなる。
  9. クリストファー・ボグデン空軍中将(F-35計画主査) Air Force Lt. Gen. Christopher Bogdan, F-35 program executive officer によればF-35Aの機体単価は生産がピークに入れば80ないし90百万ドルになるというが現時点での単価は124百万ドルで、ここにエンジンおよびテストで判明した必要な供用後改修の費用を含む。
  10. そこでスコーピオンは空軍で大部分を占める上空監視ミッションを担うローエンド機材となる。そしてはるかに経済的にそのミッションを実施できるとピータースは語る。
  11. ただし空軍からはそのような機材が必要との声は出ていない。調達は通常は長い工程を経て、提案競争により決定される。これに対しテキストロンはジェネラルアトミックスの例を期待するだろう。同社のプレデター、リーパーは空軍の要求を待たずに納入することができた。その理由として議会の一枚岩の支援があったからだ。
  12. スコーピオンはタンデム構成の複座機だがパイロット単独でも運用可能だ。設計では 3,000 lb.の兵装あるいは情報収集機材を機内搭載するほか、ハードポイント6箇所を準備する。エンジンはハネウェルTF731双発で十分な推力のほかISR機材の冷却に必要な出力も得る。
  13. コックピットにはコバム Cobham を選定し、フラットパネルディスプレイを多用する。スコーピオンはフライバイワイヤ機構を選択せず、コストを下げ、構造を簡略化している。同機の無人機版が将来実現する可能性があるとドネリーは認めている。
  14. エアランドは複合材料性機体で経験のあるものをビジネスジェット機分野やF-22から集め、機体を設計した。機体製造はテキストロンのウィチタ工場で行われ、今後の国際市場での需要規模を考えると複合材料の採用で機体寿命は相当の長さになると見られ、太平洋諸国や中東市場で苛酷環境に耐えるものとして注目をあびるだろうとドネリーは見ている。
  15. 両社は空軍が購入を決めるまで座って待つつもりはなく、海外向けに営業を開始する構えだ。ただしドネリーは空軍による調達決定は海外販売の可能性を引き上げる可能性があると認めている。
  16. またスコーピオンで両社は当初の目標ミッションである軽攻撃,高速ISRがすきま需要であることで営業に拍車をかけるだろう。現状は双発ターボプロップ機としてMC-12プロジェクトリバティがこなしているミッション、T-38後継機、ハイエンドステルス戦闘機のすき間になるという認識だ。
  17. 同盟各国でターボプロップ武装攻撃機を導入する動きがあり、ペンタゴンはエンブラエルA-29スーパートゥカーノをアフガニスタン作戦用に調達する。また練習機を軽攻撃ミッションに転用する傾向も各国で見られる。
  18. これに対しスコーピオンは双発ターボプロップ各機より速度ですぐれ、練習機より機構が簡略化される。練習機はF-22やF-35パイロット養成用に高G対応の設計となるからだ。またプレデター、リーパーといったUAVを国境監視用に使用しようとする国が今後出てくるが、国内航空交通領域の大部分で無人機は締め出されテイルのが現状だ。
  19. スコーピオンの機体組立は最終段階に入っており、初飛行は今年末までに実施が予定されている。■

米空軍は発想の転換を 低コスト機の開発を真剣に考えるべき

       

Editorial: USAF Should Be Open To Low-Cost Aircraft

Source: Aviation Week & Space Technology
aviationweek.com September 16, 2013
Credit: USAF

1947年の創設以来一貫して米空軍はハイエンド機機材を求めてきた。発足時の第一線機は軽量P-51マスタングとF-86セイバーだったが、その後重量級F-105サンダーチーフ、F-106デルタダートそしてF-111(正式名称なし)へと変遷していく。
  1. ベトナム戦争では機関銃を装備した高機動戦闘機が必要と痛感されたが、空軍の理解は重量級双発F-15イーグルとして実現した。この裏では通称「戦闘機マフィア」の空軍将校および民間人アナリストが一緒になり、軽量級戦闘機の必要を訴えていた。
  2. その結果生まれたのがF-16で最も成功した戦闘機という評価もあるが、同機はローエンドとしてF-15とのハイローミックスで生まれたもの。だが空軍はすぐ昔どおりのやり方に戻り、ステルスだが大重量で高価なF-22ラプターを開発し、同機のハイローミックスのローエンドがF-35共用打撃戦闘機となるはずだったが、F-35はとても軽量とは言えず、戦闘機というよりも攻撃機の性格が強い。
  3. F-22調達は190機弱に削減され、F-35はコストと日程で大きなプレッシャーを受け続けている。一方で空軍はアフガニスタン上空でF-15、F-16やB-1を周回飛行させて情報収集監視偵察任務に投入することで数百万ドルを毎日支出している。今こそ空軍の思考型式を再構築すべきではないだろうか。
  4. 空軍の元将官、元将校が業界の「一匹狼」テキストロンと組んで、新思考で自費開発を低運行費の戦闘航空機開発を開始している。同機はスコーピオンの名称で近接航空支援機としてA-10やF-16に替わるものとなるが、軽量攻撃機スーパートゥカーノやISR機材キングエアよりは上位の位置づけになる。
  5. 同じような事例があった。60年代初頭に海兵隊の一部将校が対ゲリラ戦機材を提唱し、これをノースアメリカンがOV-10ブロンコとして実現、同機は成功事例とされる。70年代初頭に戦闘機マフィアがF-16、F/A-18を生んだ。ジェネラルアトミックスはプレデター原型機を入手し、空軍とペンタゴンに無人機運航を忍耐強く説得し、その後戦闘のあり方を変ええている。
  6. 一方で内部外部から考え方を変えようとする試みには失敗例も多くある。80年代初めにノースロップは自社費用でF-20をF-5発展系として開発したものの、政府がF-16輸出を解禁したことで頓挫している。80年代なかごろにはボーイングがアレス低価格攻撃機を提唱し、今回のスコーピオンと似た構想だったが結局失敗している。
  7. では今回は退役将官とビジネスジェット機、ヘリコプター、ゴルフカーとノ生産で知られる民会会社のチームが過去にうまく行かなかった試みを成功させられるだろうか。課題は空軍に過去の経験を学ばせて再度ハイローミックスを戦闘の実態に合う形として実現できるかだろう。
   

       
上記記事に対するオリジナル読者コメント
  • この案件でメーカーは固定価格を提示すべきだろう。コスト上昇分を政府が全部負担した時代は去り、新兵器の購入は新車購入と同じく買い手は正価を払うべきだろう。議会は兵器システムのコスト超過事例にうんざりしており、米空軍は確実な固定価格を提案すべきだ。
  • 国防産業を存続させるためにも大手業者は自社費用による開発を行い、成果物を完成させてから軍に売り込みをかけるべきではないか。まさしくこの方法で海外政府は米国製防衛装備を購入しているのであり、米国は例外というのは認められない。
  • DoDが過剰性能の案件すべてに過剰支出するようなことはもうやめるべきだ。これでは米国は破産に追い込まれる。
  • F-15,F-16,F-18でそれぞれ近代化改修の提案があり、電子装備、ステルス性の向上がうたわれているが、各機はすでに世界最高級の機材であることは証明済みであり、各機の生産継続には意味がある。第三世代、4.5世代機に改修を加えれば2020年代までは十分通用するのではないか。
  • 米空軍以外は単一目的の機材を発注しているが、米空軍は多用途機を発注して価格、性能への影響を無視する過ちを繰り返している。
  • 低コスト機を米空軍が開発するのであれば第五世代機でなくてはならない。つまり、最低限でも全領域ステルス性、兵装内部搭載、センサー融合,AESAレーダーが必要。つまり第四世代機を改修しても敵が第五世代機を配備した環境では優越性を確立できない。仮に米空軍がF-35を中止しても中国、ロシアがそれに応じて自国の第五世代機開発を中止することはない。仮に米空軍がF-35を中止しグリペンを採用するのであれば、70年代にF-16を取りやめてヴィゲンを導入するのと同じだ。米空軍、NATO双方に良い結果をもたらすとは思えない。
  • ダグラスA-1スカイレイダーは傑出した安価な地上攻撃機だった。アフガニスタン戦役の後半に同じ構想で設計した機材を投入できればよかったのだが。実際には空軍も海軍も第一線ジェット機を石器時代の軍事技術を用いる敵に投入している。F-18を地上攻撃に使って何十億ドルを浪費してきたのだろうか。
  • 米空軍はどんどん空っぽの組織になってきた。機材の平均機齢は高くなる一方だ。ごく少数で使用自体がリスクになる高価格の機体しか配備されないとどうなるか。F-22は一回も実戦投入されていない。非常に低価格だが高性能のグリペンの発注に賛成だが、土壇場でスペックを変更してそれまでの努力を無駄にすることは避けたい。(大統領専用ヘリでのばかげたスペックとコスト上昇の例がある)
  • 同時進行する多方面戦闘では一番状況が厳しい戦線に最優秀機材を投入し、そうでない方面に低価格機材を配備すべきだ。低脅威の戦場に高価格機材を投入し続ければ破産してしまう。あるいはいつも最悪のシナリオを想定していても同じだ。海軍にはF-18の三ないし四飛行隊が改修を待ち、稼動していない状態で各機1ないし3百万ドルかけ機体寿命延長を待っているが予算不足あるいは人員不足で計画通り進んでいない。新型F-18EF調達を毎年2機削れば既存F-18C/D/E/Fが40から50機改修する予算が捻出できるのだが。
  • アフガン戦線でT-6、トゥカーノのどちらが優れているか論争があるが、なぜOV-10のエンジン換装型を投入できないのかどうしても理解できない。未整地飛行場での運用性と単純な機構により同機はアフガニスタンの作戦環境に合うはずだ。
  • スコーピオン構想は低脅威ミッションで異なる状況に柔軟対応できそうだ。機体を複雑な構造にしても低脅威ミッションでは決定打になない。むしろ柔軟性が肝要だ。今日の機体そのものがコンピューターの格納容器になっているのが現状だ。
  • A-10の代わりになる機材はひとつしかない。A-10を増産すべきだ。F-35はあまりにも高価であるが、既存機材に匹敵する性能はない。ではF-15等の改修はどうかというと、はるかに安価でそれでも相当の性能を実現できる。F-22の役割は開戦時に航空融雪製を確保することでその後は安価で作戦に適応した機材を投入すべきだ。その意味でA-10の代わりになる機材はない。
  • 家計収入支出の基礎講座をアナポリス、ウェストポイント、空軍士官学校では勉強していないようだ。
  • ハイローミックス構造は常に有効。ローエンド機材に対する航空優勢確保は過剰投入になる。第五世代機による航空優勢確保には利点があり今後も米空軍の基本となろう。しかし、ローエンドもしっかりとデマケされて今後も成長していく。 AT-6/A-29なら過去20年で発生した紛争の大部分で有効な攻撃支援機材となる。A-10は基本的に対戦車攻撃任務の地上支援機材であり、その設計思想は次の機材に一部継承されようが、新型機はフルダ渓谷で敵戦車を釘付けにする必要はもはや存在しないのだ。精密兵器と目標捕捉技術の進歩で搭載兵器を目的地に運び、自機を防御することだけすればよくなった。一機ですべての任務を果たすのは不可能。
  • はっきりさせよう。機材はアメリカ製にすべき。
  • 第五世代機がステルス性を維持できるのは兵装、燃料を着たい内部に搭載してこそ。中国のJ-20は十分な機体寸法があり、Su-50も機内搭載で空対空任務をこなす設計だ。一方F-35はこの点で機体が小さすぎ、爆弾投下も風量が低いことが条件なので、視認誘導のSAMの標的になろう。低コスト機材の役割は①防御的正確の短距離交戦 ②ステルス機の模擬飛行特性再現 とし第五世代機のライフサイクルコストを節約すべきだ。

イージスBMDテストで初の連続発射で迎撃に成功

Aegis Intercepts In First-Ever Salvo Test

By Amy Butler abutler@aviationweek.com, Michael Fabey mike.fabey@aviationweek.com
Source: AWIN First
September 19, 2013
Credit: MDA

.米ミサイル防衛庁 (MDA) がSM-3 Block IBミサイルによる初の連続発射によるミサイル迎撃に成功した。迎撃はこれまでの最高高度で実施された。
  1. 一発目のSM-3 Block IBは目標を捕捉。この目標は短距離弾道ミサイルで「これまででもっとも複雑な迎撃目標」とレイセオンが説明している。
  2. 二発目は2分後に一発目が失敗した場合に備え確実な目標破壊のため発射された。一発目がすでに迎撃に成功したため、破片がとびちる中を飛翔した。
  3. 目標補足したのはイージス巡洋艦USSレイクエリーのSPY-1レーダーで同艦がミサイルを発射。同艦のイージスシステムはBMD4.0ウェポンシステムで、SM-3 Block IBにはミサイルには二元赤外線追尾装置および高性能方向変換高度完成機能がついておりIAから改善されている。
  4. 同艦には第二世代イージスBMDウェポンシステムが搭載されており、火器管制の解を出しSM-3ミサイル二発を発射している。この第二世代では交戦距離が拡大しており、高性能の弾道ミサイルにも対応できるようになった。
  5. 今回のテストデータはシステム評価に活用される。レイセオンによると二発目のSM-3 IBの飛翔データから連続発射方法を確立していくという。
  6. 「今回のテストは実戦を意識したもので、標的の発射時刻や方位は事前に知らせておりません。また標的はこれまでで一番難易度が高くなっていました」と海軍が発表。
  7. 今回のテストはFlight Test-Standard Missile-21 (FTM-21)と命名され、これでSM-3ブロックIBはイージスBMD4.0ウェポンシステムを使いテストに四回連続成功したことになる。.
  8. 「今回は初めてUSSレイクエリーの乗員がBMDウェポンシステムを使い解析、発射、管制を同時に複数のミサイルを対象に実施したもの」とイージスの主契約社ロッキード・マーティンは説明。
  9. イージスBMD計画は2002年より発射テストを開始しており、今回のFTM-21は33回中27回目の迎撃成功となった。
  10. SM-3は数週間内で再度テスト発射が予定され、次回も成功すれば、本格生産が開始の運びとなる。

2013年9月22日日曜日

ボーイングC-17生産は2015年に終了

Boeing To End Production Of C-17 In 2015

By Jen DiMascio
Source: Aerospace Daily & Defense Report
aviationweek.com September 19, 2013

海外発注の低迷および米国防予算削減に伴う不確実性を理由に、ボーイングはC-17生産ラインを2015年に閉鎖する。同社が発表した。
  1. 「生産終了は困難だが必要な決断」とボーイング防衛部門の社長CEO、デニス・ムレンブーグ Dennis Muilenburg は声明文を発表。
  2. ボーイングは海外顧客複数が発注している22機を完成させてから生産ラインを閉じる。
  3. 今回の決定で影響を受けるのは3,000人規模で、多くがカリフォーニア州ロングビーチの同社最終組立工場で働いている。発表はセントルイス、メイコン(ジョージア州)、メサ(アリゾナ州)の同社事業所にも同時中継され従業員が聞いた。従業員削減とサプライチェーンへの影響が発生するのは2014年以降とC-17担当副社長ナン・ブーチャード Nan Bouchard が発表。ブーチャードによればロングビーチ工場ではこれ以外の生産予定はないという。
  4. これから生産する22機のうち、2機は非公表国向けで7機がインド向けだ。インドは10機発注。
  5. 「インドには追加発注を打診しています」とブーチャードは語り、インド政府の追加発注の決定を引き伸ばし手も受け入れるつもりだという。ただし残る13機については発注が確定していない。
  6. 先の未公表の発注元について同副社長は語ろうとしないが、可能性のあるのはクウェート、アルジェリア、サウジアラビアだろう。ボーイングはすでに同機を導入しているオースラリア、カナダ、インド、カタール、UAE、英国および12カ国構成のNATO平和のための戦略空輸能力構想への追加販売もありうる。
  7. ボーイングは米空軍と製造後契約を取り交わしており、同機の製造工具類を保持し予備部品供給を継続するこれにより米空軍向けにC-17 生産再開も可能だが、ブーチャードは「その予定はない」と語る。
  8. またロングビーチ工場はボーイング所有の施設のため閉鎖費用の一部しか空軍が負担しないという。.
  9. グローブマスターの初飛行1991年からの累計は2.6百万飛行時間に上る。空軍は223機を購入したほかボーイングは上記各国への機材引渡しをしている。

コメント: 発注元がなくても機材の生産をしてしまうところが民間航空との違いでしょうか。日本も貿易黒字だったらトラブル続くC-2ではなく売り先のない機材をまとめて購入していたかもしれませんね。

2013年9月21日土曜日

F-35 購入機数を減らしたオランダの決定

Netherlands To Buy Fewer JSFs

By Anthony Osborne tony.osborne@aviationweek.com
Source: AWIN First

aviationweek.com September 18, 2013

オランダ政府は共用打撃戦闘機導入をついに正式決定したが、当初よりも少ない機数の購入になる。
  1. 同国政府によると当初の85機ではなく37機を購入する。F-16ファルコン更新機材導入予算が45億ユーロ(60億ドル)と規定されており、これを遵守する必要があるため。
  2. 「F-35なら軍の求めるオプションの大部分を実現できる」と国防相ジャニン・ヘニス=プラシャート Jeanine Hennis-Plasschaert は発言。「同時に今後の発展の可能性も高く、とくにネットワーク状態での作戦が期待できる。また国際協力を訓練、保守点検、配備で実施する機会になる可能性も重要」
  3. オランダの計画ではF-35国防省2019年にF-16と平行して開始する。同国国防省は「財政事情のため」追加購入はないとしている。ただし、国防力整備を展望する同国政策文書ではJSF購入をめぐる不満を記述しており、結果として予算措置では導入、運用の10%分を「リスク予算」として追加計上している。
  4. 国防省は「37機の購入相当の予算措置は十分」とし、これを根拠に今後同機共同開発国に導入規模変更を通知する。
  5. 政治論争や計画反対派により最終決定がここまで遅れてしまった。実際には同国はすでに分担金を10億ユーロも負担しており、開発機材としてF-35Aを2機購入し、現在は米国において運用評価試験に使用されている。
  6. .うち一機はエドワーズ空軍基地で保管中で、残りはフォートワースのロッキード・マーティン工場にあり、飛行中である。■