2015年4月17日金曜日

★F-35は最後の有人戦闘機になるとの海軍長官発言から見えるF/A-XXの方向性



海軍のほうが技術を軸に、しっかりと未来を見つめている気がするのは当ブログ運営者だけでしょうか。空軍が主力戦闘機を無人型にするというのは相当勇気がいることなのでしょうか。そのために可能性を自ら閉ざすということはないでしょうか。結果が出なければわからないといえばそれまでですが。

Mabus: F-35 Will Be ‘Last Manned Strike Fighter’ the Navy, Marines ‘Will Ever Buy or Fly’

By: Sam LaGrone
April 15, 2015 1:55 PMUpdated: April 15, 2015 3:56 PM

NATIONAL HARBOR, Md. レイ・メイバス海軍長官がF-35共用打撃戦闘機(JSF)が「海軍省が購入あるいは運航する最後の有人戦闘機になるのはほぼ確実」と発言し、ボーイングF/A-18E/Fスーパーホーネットの後継機種の方向性を暗示した。
  1. 「今後は無人機とくに自律運航型が広い分野で標準機種になる」(メイバス)
  2. またメイバス長官は無人戦闘装備の役割増大に呼応すべく無人システムを専門に取り扱う副次官補ポストを設け、水上戦や航空戦部局と同列の組織をN-99として新設すると発表。
  3. この措置は「無人装備全て、空中、水上、水中および海上陸上で運用する装備全体を調整し優秀な装備を確保するため」と長官は説明した。
  4. 海軍省でN2/N6の情報優越性確保の目的で情報収集・監視・偵察(ISR)機体を活用しているが、水中・水上の無人装備は多数の組織にまたがって運用されている。
  5. 「上位ポスト新設は海軍が無人航空機を重要視している証だが、その技術の進展如何で海軍の将来が影響を受けるので、有効活用が求められている」と下院軍事委員会シーパワー・兵力投射小委員会委員長ランディ・フォーブス議員(共・ヴァージニア州)がUSNI News取材に答えている。
  6. 「空母航空隊の将来は無人システムの開発に関係しており、長距離、敵地侵攻型の攻撃ミッションを接近阻止領域拒否の環境で実施できるかにかかっている。新ポストに就任するのが誰であれ、全体的な視野で戦略的観点から海軍の無人機構成を考え全体構想を前に進めてもらいたい」(フォーブス議員)
  7. 現時点で米海軍は武装UAVを保有しておらず、開発中のUCLASS(無人艦載偵察攻撃機)が攻撃能力を有する初のUAVとなる。
  8. また長官の発言で海軍の次期主力戦闘機F/A-XXの開発準備状況にも触れている。.
  9. F/A-XXでは2016年に選択肢決定のための分析作業(AoA)で各種オプションの絞込を行うがその時点では有人・無人機それぞれの性能比較を行うと思われていた。
  10. 海軍作戦部長(CNO)ジョナサン・グリナート大将からは今年はじめにF/A-XXは選択的に有人機になると発言していた。■


2015年4月15日水曜日

★X-47Bの最後のテストは空中給油の実施、そこでお役御免へ

X-47Bが順調にテストをこなしている間にUCLASSのコンセプトが決まらないのは歯がゆいですね。一方、いつの間にかドローンという言葉が一班に使われるようになりましたが、もとをただすとunmannedというコバに抵抗を感じた女性が出発点です。その女性は今週大統領選挙出馬を表明したヒラリーであり、このブログ管理者がどうしても支持したくないタイプの政治家です。

X-47B Drone Set For Refueling Test Tomorrow

By SYDNEY J. FREEDBERG JR.on April 14, 2015 at 4:50 PM

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NATIONAL HARBOR, MD: 「明日の天気はよさそうだ」とボー・デュアーテ大佐(米海軍で空母運用無人機事業を統括)は言う。慎重に「今のところはね」と付け加えた。
  1. 天候が良ければ米海軍の実験機X-47Bは空中給油を行う。無人機の空中給油は初の試みだ。これまでのテストでX-47Bは飛行中の給油機に30フィートまで接近し、ドローグ(燃料ホース)の背後についたまま飛行している。これまでは高精度GPSで空母着艦含む飛行を制御してきた。明日は新型光学センサーで燃料管をドローグに挿入する。
  2. 空中給油はパイロットにとっても神経をすり減らす仕事だが、アメリカが世界規模で空の優位を維持するためにはどうしても必要だ。無人機で空中給油が可能となれば可能性は増える。有人機の場合は燃料以外に搭乗員の人的限界で制約を受けるからだ。
  3. そこで海軍はX-47B後継機に超人的な耐久性を期待しており、UCLASSは24時間一週間連続の警戒飛行を航空母艦の周囲で行う。ただしUCLASSを巡り内部で苦い論争がまだ続いており、偵察・攻撃のどちらを優先すべきかで結論が出ていない。もともと防空体制の整備された空域に奥深く侵攻する構想だったが、長時間パトロール飛行しつつ、必要に応じ爆弾を投下する設定へと大きく変化している。.
  4. UCLASSは偵察・攻撃ミッションを均等に実施できない。海軍は偵察ミッションを重視し、最低でも飛行時間は14時間としている。国防長官官房(OSD)はこれに疑問を感じ高レベルで戦略性能検討会Strategic Portfolio Review (SPR, improbably pronounced “spear”)を開催し、何ヶ月も意見を戦わせているが問題は一向に解決のめどがついていない。
  5. デュアーテ大佐は海軍連盟主催の会議の席上で報道陣に対し検討作業は「夏のどこか」までに終わるとの見方を報道陣に示した。OSDがUCLASSの要求性能をめぐり議論を進める間に、大佐はUCLASSで求められる性能の実現を図っている。これは共用操作ステーションCommon Control Station と呼ばれ艦上で無人機と空母の間の通信を司る装備を含み、デュアーテは「今年度はCVN-70カール・ヴィンソンとCVN-77ジョージ・ブッシュの二隻を改造し」UCLASS運用の準備をする。
  6. ペンタゴンが戦略レベルでUCLASSの主任務を決めれば、海軍による要求性能に「修正が必要か判断できる」とデュアーテはいい、いよいよ待望の提案要求に移る。「産業界は息を殺して待っている」という。予算案では契約成立を2017年、作戦投入は2023年を想定する。
  7. その時点でX-47Bは確実に博物館入りしているだろう。同機はあくまで実証が目的で空中給油(AAR)に成功すれば十分な働きをしたといえるとデュアーテは言う。また給油テストで予算を使い果たしてしまう。
  8. 「目標項目はすべて達成し、得られた成果はUCLASSの性能諸元に反映させる」とデュアーテは言うが、UCLASSはX-47Bと相当違う機体になるはずで、制御系、降着装置など機構が異なる。そこでX-47Bをこれ以上テストに投入しても次期機種の開発に参考にならないということだ。現会計年度が終わる10月1日に海軍はX-47B2機を処分し、博物館に運ぶかデイビス・モンタン空軍基地(機体廃棄場)に移動させるかだという。そうなると同機は歴史を作る立場から歴史の一部になる。■


日本の安全保障で宇宙空間利用はどこまで進んでいるか



日本の宇宙開発で安全保障への応用で制約がすでに撤廃されていますが、意外に全体像は理解しにくいですね。Defense Newsがうまくまとめてくれましたのでご一読ください。結構安上がりですが期待できそうですね

Japan Begins National Security Space Buildup

By Paul Kallender-Umezu 11:01 a.m. EDT April 12, 2015
TOKYO — 日本の宇宙開発戦略本部が今後10年間の戦略方針となる基本計画を今年1月に固めた。日本が宇宙政策を安全保障戦略に組み込むのは初めて。日米同盟で中国を封じ込めるねらいがある。
  1. 準天頂衛星Quasi-Zenith Satellite System (QZSS)をGPS補完用として整備し、宇宙状況認識space situational awareness (SSA)、海洋状況把握maritime domain awareness (MDA)の開発を重要視している。情報収集衛星 Information Gathering Satellite (IGS)の運用数は二倍にする。またミサイル早期警戒衛星を開発する。
  2. 「QZSS、SSA、MDAが日本の三大重要宇宙事業だ。宇宙配備弾道ミサイル早期警戒衛星も検討していく」と自民党今津寛衆議院議員が述べた。党の宇宙政策委員会の前座長で、現在は政務調査会で安全保障関連をまとめる今津代議士は宇宙での安全保障体制構築を主導。
  3. 平成27年度予算でQZSSは18.5%増の223億円で7機の製作が決まり、IGSには14%増の697億円が計上され、宇宙関連全体では18.5%増の3,245億円がついた。
  4. 今回の基本計画は従来の政策方針とは明白に異なる。中国を全世界の安全保障の撹乱要素とし、2007年に衛星攻撃兵器をテストし、その後もジャミングやレーザー妨害実験を行っていると指摘する。
  5. 安全保障上施策に宇宙を取り入れるのは2013年12月発表の国家安全保障戦略方針で方向が決まっており、安倍首相の提唱する「受身的防衛」から「事前対応型防衛」へ転換していた。
  6. 米国は日本の新方向性を強く支援している。昨年5月にはワシントンで日米の第二回総合宇宙関連政策対話があり、日米は安全保障での宇宙利用で協力を進め、特にSSAとMDAで中国の動向を監視する共通認識を確認。
  7. 「新方針は大きな変化」と語るのはジェイムズ・クレイ・モルツ James Clay Moltz 海軍研究大学院の教授で "Asia's Space Race: National Motivations, Regional Rivalries and International Risks."アジアの宇宙レース:各国の背景と地域内対立関係および国際政治上のリスク」の著者だ。「宇宙での軍事活動実施に向け方策を具体的に展開した初の公文書だ。米国の宇宙政策文書と比較しても詳細に踏み込んでわかりやすくまとめられている」
  8. 特筆すべきは宇宙航空研究開発機構(JAXA)の事業内容に安全保障が組み込まれたことだ。JAXAは2012年改正で軍事目的の宇宙開発ができるようになったが、従来は研究開発機関の位置づけだった。
  9. JAXAの軍民両用プロジェクトでは次世代データ中継衛星を情報収集監視偵察(ISR)用途に投入する。防衛省が作成した赤外線ミサイルセンサーをJAXAの偵察衛星に搭載する。重量150キロ級の多用途衛星も開発中で、ミッションに応じ構成を変更する。超低高度試験衛星 Super Low Altitude Test Satellite (SLATS)も開発中で、地上操作で大気圏に突入・離脱が可能で鮮明な画像を撮影できる。
  10. JAXAを共同所管する文部科学省(MEXT)の宇宙開発利用課千原由幸課長は新方針を完全に支援している。「文科省、JAXAと防衛省の協力関係は強固になっています。JAXAと防衛省の科学技術協力合意が好例。高性能光学画像衛星にミサイルセンサーを搭載するのもその例で、協力を強化していきます」
  11. 一方で基本方針は今津代議士の構想から後退している。年間予算を早急に5,000億円規模に引き上げ、安全保障関連の事業を拡充し、IGS衛星数を倍増し、MDAを優先し、宇宙関連事業を国家安全保障会議の直轄にすべきと今津は提唱していた。
  12. 基本計画ではIGS衛星の整備目標数を明記せず、MDAは二年間かけて必要な規模を検討するとしている。ただし米国とはこの事業の推進で合意が形成済みだ。
  13. 変化の影響はSLATSのような公開型開発にも見られる。実現すれば軍事上も有益な技術提案が日本の諸研究機関から出ており、同一軌道で対衛星兵器に転用出来る技術などがあるが、提案側が民生利用の可能性を十分伝えきれず予算がついてこなかった。だが軍民双方に応用できる技術は日本の軍事宇宙利用の中核技術になる、とクリス・ヒューズChris Hughes(英国ウォーウィック大で日本軍事問題の専門家)は指摘。
  14. 「今回の計画改定は宇宙の軍事利用に道を開く。特筆すべきは国家安全保障を宇宙政策の根本に埋め込んだことで、これまでの民生用途限定を否定し、今後は順調に宇宙の軍事利用が進むだろう。目指している性能水準には本当にすごいものがあり、具体化している技術も多い。」■


2015年4月14日火曜日

バルト海上空でロシア空軍がRC-135に異常接近、米ロが言葉の応酬



Russia and US trade blows over Baltic interception

Gareth Jennings, London - IHS Jane's Defence Weekly
12 April 2015
The Pentagon claims that a recent interception of one of its RC-135 surveillance aircraft (pictured) by a Russian fighter was so dangerous as to put the lives of its crew at risk. Russia denies this, saying its pilot was trying to visually identify the US aircraft that, it alleges, was flying with no transponder. Source: US Air Force
米空軍の偵察機がバルト海上空でロシア戦闘機に迎撃され米ロ間で言葉の応酬が続いている。米側は「無謀、危険かつプロらしからぬ行為」とtロシアを非難した。
  1. 事件は4月7日に発生。米空軍ボーイングRC-135をロシア空軍Su-27「フランカー」一機が国際空域で迎撃した。国防総省によればロシア機は米軍機から7メートル間隔で飛行し、乗員の生命を危険にしかねない行為だったという。
  2. 米政府はロシア政府に「適正な外交公的チャンネルを経由して」正式に抗議ずみとペンタゴンは米報道陣に伝えている。
  3. ロシアからは米軍機はロシア領空に向け飛行し、トランスポンダーを切っていたと説明が入った。
  4. イゴール・コナシェコフ中将Major-General Igor Konashenkov はSu-27を緊急発進させ、未知の機体を迎撃し、数回にわたり接近飛行し機種と国籍を確かめたとロシア国防省で説明。「強調しておきたいがRC-135はロシア国境に向け飛行しており、トランスポンダーのスイッチは切ってあった。わが方のパイロットのプロとしての資質については、ロシア軍が評価すべきことだ」とアメリカの主張を一蹴している。
  5. ロシアと米国で軍用機の迎撃は今やありふれたことだが、今回の事件は一方の当事者が公式の抗議を他方に伝えた点で他の事例と一線を画す。
  6. NATOやスウェーデン、フィンランドはロシア爆撃機の迎撃に発進する事例が着実に増加しているのは2007年にウラジミール・プーチン大統領が長距離爆撃機でパトロール飛行を再開して以降のことだ。ウクライナ危機が2014年に発生していることもあり、回数は大幅に増えている。
  7. ロシア側パイロットがプロらしからぬ操縦をしたとの米側の主張はドイツ空軍のユーロファイター・タイフーン戦闘機パイロットの体験談と正反対だ。このパイロットは IHS Jane'sにロシア側から敵対的な行為は全く見られなかったと2014年12月のバルト海上空での迎撃時の体験を語っている。「ロシアのパイロットの操縦に変化は出ていない」とドイツ空軍バルト海警戒隊司令ゴードン・シュニトガー中佐Lieutenant Colonel Gordon Schnitgerは語っている。「双方で戦闘的な機体操縦はなかった」
  8. エストニア空軍の司令官ジャアク・タリエン大佐Colonel Jaak Tarienは報道陣に「NATOパイロットは練度が高く、規律もしっかりしている一方、ロシアのパイロットも訓練が大幅に改善しており、空の上で双方が正しい行動をとるよう期待している」とコメントしている。エストにははドイツのタイフーン飛行隊の駐留を認めている。
  9. それでも西側はロシア空軍が乱暴すぎると非難してきており、今回の事件でも同じ論調が米報道で見られる。
  10. ロシアが主張するように米軍機がトランスポンダーを切ったままで飛行していたというのは興味深い点だ。というのもNATOがロシア軍機が同じことをしていると指摘しているためだ。今回の米軍機が国籍と飛行位置を送信していなかったかは不明だが、ロシアの主張のとおり送信しないままの飛行だったとするとロシアも西側に仕返しした形だ。
  11. 今回の事件の真相はともかく、同様の事件の発生はもっと大きな危険につながる可能性がある。2001年に米海軍偵察機と中国戦闘機が空中衝突したが南シナ海上空で中国が迎撃していた。米軍のEP-3オライオンは海南島に緊急着陸を実施できたが、中国機は墜落しパイロットは死亡している。米軍機の乗員が拘束された数週間の間に両国はどちらの側に事故責任があるのか応酬を重ねた。最終的に米軍機乗員は解放され、米中両国は事件を忘れることにしたが、いったんことがおかしくなると大変だとの苦い経験になった。■

2015年4月13日月曜日

ISIS空爆は長期化し空の塹壕戦になるのか 



高価な戦闘用航空機でこれも高価な弾薬類を投下してトラック一台を破壊する、という作戦が根本的におかしいのは明らかです。が、代替策がない、というのが偽らざるところなのでしょう。大規模な地上戦でCASが主体の作戦なら話は違ってくるのですが。面倒な相手を選んでしまったようですね。

Trench Warfare With Wings: Can ISIL Airstrikes Go Beyond Attrition?

By SYDNEY J. FREEDBERG JR. on April 09, 2015 at 2:25 PM

ISIL targets since February 4th - 31 March図1.2月4日以降の航空攻撃目標分類 戦闘員>車両他>橋梁
航空戦力といえば高速で目標だけを正確に攻撃するイメージだが、実態は空の塹壕戦の様相を呈することもある。今週初めにティクリット奪回に成功した直後に米中央軍CENTCOM から詳細なデータで空爆作戦が自称イスラム国(ISISあるいはISIL)にどう展開されているかが示された。その内容を精査してみたところ、8ヶ月におよぶ空爆は消耗戦であるのが明らかになった。
一回の空爆で目標はトラック一台を目標、ときには戦闘員一名単位で、イラク部隊の近接航空支援が中心だ。空軍参謀総長マーク・ウェルシュ大将はF-22はCASに投入していないと言う。
2月発表の成果と比べると、戦略目標としての敵指揮官や石油関連施設が減っている。石油関連施設は合計151箇所で空爆対象5,457箇所の3%未満に相当するだけだ。
ISISに戦略級の目標そのものが少ないと思われがちだが、空軍力に深い知識を持つBreaking Defense 寄稿陣のひとりデイビッド・デプチュラ David Deptula退役空軍中将は空軍力を有効に使うべきなのに米国は機会を無駄にしていると主張。
「たいていのひとはこんな罠にひっかかる。『ここは工業化が進んでいないな』、確かにプロエスティ(ルーマニア、1943年に米軍が空爆)よりも精製施設の規模は小さいが、シリア国内の油田が連中の資金源になっているのだ」
これは反乱鎮圧作戦ではない。放置すれば国家を成立しそうで複雑なしくみを有する敵に対する戦いだ、とデプチュラは言う。「空爆作戦の立案に携わった関係にはイラク・アフガニスタンでHVIs(高付加価値目標人物)を狩り出した経験がたかが10年あるだけだ。ISIS指導層を麻痺させ、指揮命令系統を使えなくしないといけない」
ISIL Infrastructure - 31 March図2. 攻撃対象のインフラ種類別 2月4日と3月31日の比較
ただしシリア国内の空爆は大部分がコバニ付近の前線に向けられており、ISIS指導層やその指揮命令系統は標的になっていないとデプチュラは指摘する。砂漠を横断するようなテロリスト集団の長い通信線を遮断していない。「ラッカ(ISISが首都と称するシリア国内の地点)とモスルを繋ぐ道はなぜいまでも通行可能なのか。双方の都市でまだ電気が供給されているのはなぜなのか」
では送電網の両端を攻撃すれば民間人にも被害が発生しないか。する、とデプチュラは認める。ただし、戦争の原則に反しない範囲なら許容できるという。「これまで付随的被害の回避に注意し、民間人の死傷を発生させないことに気を取られて、肝心なISISの壊滅は二の次だった」というのだ。事実、かつてのジュリオ・ドゥーエの空軍力理論を思わせる口調で敵領土内の一般市民を空爆対象にすればISISの統治下の住民も逃げ出すというのだ。
ISIL troop positions - 31 March図3. 航空攻撃を受けたISIL戦闘員の位置別比較 (戦闘配置場所、集合地点、チェックポイント、地下壕の順)
「モスル住民のうちISIS戦闘員は何人いるのか」とデプチュラは次の激戦地になりそうなモスルに焦点を合わせる。「どこかの段階で地元住民も立ち上がり、占拠してきた勢力を排除するはずだ」
これに対して地上戦の専門家はデプチュラの主張は疑わしいと考える。「たしかに発電施設ほかを使えなくできる」とディビッド・ジョンソンは言う。「だがそれだとモスル住民全員への宣戦布告になる」 150万人の住民には米国やイラク政府を憎むものがあり、成人男子なら全員が武器を入手できる国である。
「チクリット制圧にほぼ一ヶ月かかった」とジョンソンは言う。ジョンソンは陸軍参謀総長レイ・オディエルモの上級顧問をしていた。奪回したがイラク軍は市街地をほぼ全部破壊している。「モスルはもっと大きい都市で人口も多い」とジョンソンは警句を発する。市街地は高密度でISIS側は防御が楽であり、空爆対象は見つけにくい。ジョンソンはイラク軍(正規軍、米軍事顧問団、シーア派戦闘員とイラン人)に戦術技能が十分あり無傷でモスルを奪回できるとは見ていない。ただ米軍の航空戦力は精密攻撃で支援を提供するだろう。
ISIL vehicles & heavy weapons - 31 March
図4.  攻撃対象のISIL車両種類別 上から、戦車、装甲車両、銃火器、ハンビー(イラクから捕獲)、テクニカルズ(武装ピックアップトラック)、自殺攻撃車両、その他(航空機、ボート含む)
ISIS指導部を標的にした場合に米空軍力は同じ予算で得られる効果は大きくなるのか。たしかに一部を殺戮することは可能だろうが、とジョンソンは言う、ただ指導層はゲリラ戦の経験が深い。「アメリカの航空戦力を目のあたりにし、自分の身を守る対策を持っている」という。頭の鈍いものはもうとっくに空爆で命を落としており、その当時はもっと多くの米軍機が投入されており、米地上軍も大規模に展開していたので該当人物を見つけるのは容易だった。
「敵は分散作戦を展開しており、統制がとれている」が、中央集中の構造ではないとジョンソンは指摘する。敵指導部を対象にした古典的な「断頭型」の空爆はISISには当てはまらないという。「頭はひとつだけなのかまだわかりません。」.
空爆対象に値する重要拠点が判明しないと長期の消耗戦を覚悟しなくてはならないだろう。■
ISIL targets to date - pie chart - 31 March図5. 空爆で撃破したISILの装備種類別(建物施設、車両重装備、戦闘員がほぼ均等

注 2月4日以降の合計数はデータとして整合しない。なぜならCENTCOMが分類を途中で変更しており、とくに航空機を追加しながら「ISIS実効支配中の橋梁、道路」「その他装備」「訓練施設」を除外しているからだ。そこでCENTCOMと連絡してなるべく比較対象出来る数字をまとめてある。
Colin Clark contributed to this story.


中国提唱の一帯一路、AIIBの本質を見抜け



AIIBの話題ではバスに乗り遅れるな、あるいは様子を見る、という状況にどううまく反応するのかという小手先の議論が中心になっていますね。覇権をめぐる争いは軍事量だけの話ではなく、ソフトパワーも重要な要素で一路一帯=AIIB=中国の考える新世界秩序につながっていくのですが、ばらばらな議論をしていては中国の思いのつぼです。Holisticに物事を見られないのは学校、職場、社会で教えられてきた要素還元主義の「科学的思考」の弊害ですかね。せめてこのブログの読者には発想を広げて大きな視野で物事を考えていただきたいですね。ご関心があれば「ブレイクスルー思考」で検索してみてください。

China's 'One Belt, One Road' Strategy

By Wendell Minnick4:53 p.m. EDT April 11, 2015

Modern-day Silk Road Effort Could Challenge US Influence in Asia, Africa, Mideast


Austrian President Heinz Fischer Meets with Chinese President Xi Jinping(Photo: Parker Song-Pool/Getty Images)
TAIPEI — 中国の提唱する「一帯一路」政策が実現すれば中国は押しもされぬ地政学上の大国になるというのが専門家の多数意見だ。
  1. 構想ではアジア、ヨーロッパ、アフリカを結ぶ新しい回廊を複数開発し、「新シルクロード経済通路」で中国とヨーロッパをむすぶべく、中央アジアの山岳地帯を直通する。「海のシルクロード」は中国の港湾部をアフリカ沿岸と結び、さらにスエズ運河経由で地中海に出る。習近平主席は3月28日海南島でのボアオアジアフォーラムBoao Forum でこの構想を公表。
  2. 「一帯一路構想は経済が出発点だが、政治的戦略的な意味もある」と上海交通大学Shanghai Jiao Tong Universityの国家戦略研究院副所長 庄建中Zhuang Jianzhongは解説する。「エネルギー安全保障では共同開発による互恵を目指す」
  3. 域内経済が向上すればテロリズムの根本原因が減るので米国も中央アジアや中東で同構想を安定化・平和の実現手段として歓迎すべきだというのが同副所長の主張だ。
  4. ただし専門家の多数意見は中国が新規開拓通商路の安全を維持できるのか疑問を呈している。それぞれ危険地帯を縫うように走るからで、アフリカ沿岸では海賊行為、中央アジアの「ワイルドウェスト」ではイスラム過激派が跋扈している。
  5. 各ルートには補給上の拠点が必要でその他通信インフラ、空港、鉄道、自動車道路、港湾の建設に加え軍部隊を配備しないと迅速な危機対応ができない。その場合は長距離戦略輸送機とともにマラッカ海峡・スエズ運河などに沿海戦闘艦船の配備が必要だろう。さらに病院船ほか各種装備で平時軍事作戦 Military Operations Other Than War (MOOTW)の実施を模索するだろう。
  6. 「一帯一路」はまだ構想段階と米海軍大学校で中国海事問題を専門とするジェイムズ・ホームズ James Holmesは言い、現時点では軍事上の意味はまだないが、「長期的には中国はアメリカをアジアから追い出し、わがほうの同盟国の切り離しを図るだろう」とする。
  7. 中国が目指すのはユーラシアに通商路複数を確保し、各国に対して中国式の制度がアメリカよりも上を行くと認識させることだが、そのためには実際に物資を輸送しなければならないとホームズは見る。「最終的に中国は仲間の各国へもっと多くを要求してくるはずで、米国が各国の港湾を利用するのを拒否するよう求めてくるでしょう。」
  8. ホームズは今回の構想は20世紀初頭のベルリン・バグダッド鉄道構想とは種類が異なると見ている。今回の構想は「経済開発に間接的な外交安産保障と軍事的意味を加えたもの」と見る。
  9. 新しいアメリカの安全保障を考えるセンターの主任顧問を務めるパトリック・クローニンPatrick Croninは「一帯一路で良くない結果が生まれる」と見るが、今のところはスローガンに過ぎず、現実になっていないと指摘。中国がソフトパワーで南シナ海、東シナ海での海洋領土問題を緩和させようとすると見る。
  10. クローニンはあわせて「米国もソフトパワーを発揮する絶好の機会なのに戦略的発想が欠けている」と批判する。
  11. 中国が提唱するアジアインフラ投資銀行は2013年に誕生しており、「一路一帯」の実現のため各種施設の建設が目的だが、これも中国のソフトパワーの一種であり、米国のアジア再配備に対抗するものとクローニンは指摘した。
  12. 専門家多数の見解ではAIIBは国際通貨基金・世界銀行・アジア開発銀行の既存体制へのあからさまな挑戦であり、中国は逆に既存体制は米国の支配下にあると見ている。
  13. 「中国が米国と各国の争奪戦をする気なら、目に見える恩恵を無理のない形で提供しくはずだ。これが中国式の発想の根本だ。中国王朝は贈り物を提供し代わりに中国への政治的服従を求めるのが常だった」(ホームズ)
  14. 現時点の構想では海上関係はまだ完成度が低い。人民解放軍海軍(PLAN)はMOOTW活動を近年頻繁に行っており、海賊対策はアデン湾で2008年から実施している。今月はじめにPLANはイエメンで民間人救助を実施しているほか、2011年にもリビア内戦で民間人避難にあたっている。.
  15. 2014年に胡錦涛主席がPLANに新歴史的ミッションNew Historic Missions (NHM)を与えていると国防大学校で太平洋問題に詳しいクリストトファー・シャーマンChristopher Sharmanが解説する。その中に国家経済発展の防衛が入っていた。これは中国軍にとって目新しい任務ではないが、「2012年国防白書で前面に出され、戦略的海上交通路の防衛を特記した」とし、現在の状況もこの戦略方針の一環で、「遠隔地海上防衛」が中国の海洋戦略の一部であることがわかる。
  16. シャーマンによれば中国海軍の戦力再編のあらわれが056型江島Jiangaoコルベットであり、大型艦船が遠隔地に派遣されることが多くなる想定で第一列島線付近の任務を十分こなす性能を盛り込んである。さらに遠隔海域での作戦を想定して新艦隊編成の可能性もある。
  17. 「海のシルクロードでがそのままPLAN艦船の遠隔海域展開すにはならないと見ていますが、段階的な艦船派遣拡大はありうるでしょう」とシャーマンはフリゲート、駆逐艦、潜水艦の動向に注意をはらうよう指摘している。
  18. 戦略面では中国海軍は「基地」ではなく「寄港地」の交渉に入るはずだ。今後もスリランカや東アフリカへのアクセスを求めるほか、インドネシアも視野に入れているはずとシャーマンは指摘する。
  19. シャーマンは国防大学校で論文"China Moves Out: Stepping Stones Toward a New Maritime Strategy"(「新しい海洋戦略に乗り出した中国」)を著しており、中国の空母二番艦が構想実現の大きな要素と見る。MOOTWの各種任務の実現とともに遠隔地で中国の軍事力を誇示するはず、というのだ。■


2015年4月10日金曜日

☆ 米空軍の主力機が大型機に統一される日が来る?



第六世代戦闘機の開発に乗り出そうというところで、冷水をかけるような報告書ですが、大きなインパクトが出そうです。戦闘機命のヒエラルキーに支配された空軍の成り立ちが変わってしまうかもしれませんが、やはり価値観の違いを理由に黙殺されてしまうのでしょうか。なお報告書の著者は米空軍出身(ただし戦闘機パイロットではない)でRAND研究所でも仕事をしていた人とのことです。


Should Future Fighter Be Like A Bomber? Groundbreaking CSBA Study

By COLIN CLARK on April 08, 2015 at 3:46 PM

WASHINGTON: 米空軍の次世代主力機は小型戦闘機ではなくステルス長距離爆撃機に近い機体になるかもしれない。
  1. これは予算戦略評価センター Center for Budgetary and Strategic Assessmentsがこのたび発表する報告書 TRENDS IN AIR-TO-AIR COMBAT: IMPLICATIONS FOR FUTURE AIR SUPERIORITYの結論部分であり、このたびBreaking Defenseは同センターとは無関係の筋から写しを入手した。
  2. 報告書の主な所見は以下のとおり。「包括的結論として電子センサー、通信、誘導兵器で相当な技術進歩が過去数十年で発生しているので航空戦闘の形態がすでに根本的に変化している可能性があることへ注意喚起する」
  3. 上記結語は報告作成者ジョン・スティリオン John Stillion が世界各地で1965年以降の「1,450件以上の勝利実績」を集めたデータベースを精査して得たものだ。
  4. スティリオンの研究では敵機を探知、待ちぶせ、攻撃し、かつ防空体制をスピードと操縦性で出し抜く航空機の製造は、航続距離、速度、性能それぞれ物理的な限界に近づいているという。
  5. 「電子センサーに加え、物理的な痕跡の削減、RF(電波)・IR(赤外線)対抗装置の重要度が高くなっていること、絶対有利なSA(状況認識)を可能とするLOS(見通し線)内のネットワーク構築も同様に重要になる中で、高速飛行性能や操縦性の戦術価値が減っていくと大型戦闘航空機の生存性が高くなり、場合によっては従来の戦闘機よりも優れた特性を示す可能性がある」とまとめている。
  6. 言い換えれば、ミサイルに対して優越性を発揮できる戦闘機は少なく、ステルスや電子戦の助けがあってもこれは覆させられないということだ。
  7. 一方で1965年以降の航空戦闘データベースからは長距離ミサイルの台頭の一方、ドッグファイトが急速に減っていることがわかる。1991年の湾岸戦争で米軍が撃墜した33機で操縦性がかぎになったのは4件のみだ。その25年後に長距離探知センサーとミサイルの性能は向上の一途で、これまで重要視されてきた飛行速度、推力重量比、旋回半径は今や重要性を失っており、将来はさらに失うだろう。
  8. そこで報告書の結論では速度があっても将来の機体を救えない。なぜなら高速になればエンジン排熱も大きくなり、前縁部など機体表面が発する余熱も大きくなる。すると将来は赤外線探知追跡装置(IRST)への依存が高まるだろう。なぜならデジタル式無線周波数メモリーDigital Radio Frequency Memory (DRFM) を使うジャマーにより捜索レーダーが妨害されると敵は熱源をIRSTセンサーで捜索し、高速で飛行する機体ほど探知が容易になる。
  9. この考察は第六世代機といわれる次世代戦闘機開発を目指すペンタゴンにどんな意味があるのだろうか。
  10. スティリオンによればペンタゴンには従来の戦闘機の概念から「過激なまでの」脱却が必要で、センサー性能をさらに引き上げ、物理的な痕跡を制御し、ネットワーク化で優秀なSAを実現しつつ、超長距離兵器で敵に発見される前に交戦する機体を模索すべきだという。
  11. 「2035年以降に制空権を確保するためには広範かつ客観的にしかも想像力豊かに考える必要がある。現在の機体を発展させるよりも常識にとらわれない形状の機体をめざすことになるかもしれないし、ならないかもしれない。大事なのは評価を客観的に行うこと」と報告書作成者は記者に電子メールで伝えてきた。
  12. ペンタゴンは国防優勢確保構想Defense Dominance Initiative および関連した航空機性能革新構想Air Innovation Initiative(DARPAが主導)により次期主力戦闘機F-X及び搭載エンジンの開発を行う。スティリオンの研究内容はDARPAおよびフランク・ケンドール(ペンタゴンで調達部門を統括)が目を通すはずでどんな実験が必要か検討するはずだ。
  13. 報告書を読んだ業界筋は「スティリオンは良い指摘をしている。戦略の見直しが必要だ。第六世代機ではスーパーF-22を作ってどうするのか。F-22よりわずかに性能が向上してもコストは莫大だろう。太平洋での作戦範囲を考えると航続距離は短い。であれば逆に大型機に焦点を合わせたほうがいいのではないか」
  14. 大型機なら大きな開口部(レーダー、赤外線)で遠距離から敵を探知できるし、大型ミサイルを搭載して敵を事前に攻撃できる。
  15. 「一番説得力があると思ったのは」と業界筋は話した。「将来の米空軍の攻撃力となる大型機、長距離機、大ペイロードでステルスの機体一種類を開発すべきという点だね。機体を共通化すればミッションに応じてペイロードを変更できる」
  16. この業界筋は機体を一種類にすれば攻撃型、空対空ミサイル運用型、核運用型、制空権確保用に指向性エネルギー兵器を搭載した型、早期警戒用機材、地上監視ミッション用機材と必要に応じて準備できる。
  17. これをつきつめると将来の米空軍は400機を「中核機材」として兵力投射用に整備すれば十分、と上記業界筋は言う。
  18. 「新型機の一部は無人機にし滞空性能を更に伸ばす。この機体を「戦機」 “Battleplane”と呼んでもいいかもしれない。これはジュリオ・ドゥーエが1920年代に夢見ていた機体だ。 大陸間横断飛行ができる飛行距離があれば地球上どこでも攻撃可能となり、同時に制空権も確保できる。敵に近い基地防衛のため何百機もの短距離戦闘機を配備する必要はなくなる。大型機は遠隔基地から運用し、機種統一で兵站面、開発・調達、人員配置の各要素でどれだけの節減になるだろうか」と同上業界筋は見る。
  19. 賢明な方なら長距離打撃爆撃機 (LRSB)事業の選定業者がこの報告書が想定する新型機製造に一番近い位置にあることに気づくはずである。長距離性能と大きな兵装運用能力が鍵だ。ただこれで確定ではなく、多分、という意味だが。
  20. ではペンタゴンがこれまで75年の道のりを大胆に捨てて新しい方向に行く可能性がどれだけあるだろうか。
  21. 「歴史を見れば、可能性はない」と同上業界筋は言う。「空軍上層部は基本的に戦闘機パイロット出身者で『爆撃機』を制空権確立ミッションに使うと言ったらどんな反応を示すでしょうか」
  22. 構想の実現にはペンタゴン上層部および空軍内部の価値観を変える必要がある。ただし予算が枯渇し、ロシアや中国が台頭し強引さを強めれば、将来構想を真剣に考える条件が整う。
  23. この報告書は今後長きに渡り引用元になり、貴重な成果が含まれており、当時のペンタゴンに変革に踏み出す勇気があったのか思い返す材料になろう。航空戦闘の意味を理解したいのであれば本報告書は必読だ。


2015年4月9日木曜日

イエメン空爆作戦に米軍が支援提供を開始


サウジアラビア主導で空爆作戦を開始したのはいいのですが、やはり戦闘継続には米軍の支援が必要になったようです。シリア、イラク、からイエメンまで空爆作戦の展開が広範囲に中東で見られますが、特にサウジ主導の湾岸諸国がどのように今回の作戦の経験を今後活用するのかが注目されますね。それ以前に何をもってイエメン作戦を終結できるかが課題ですが。イランの動向には要注意ですね。

U.S. launches aerial refueling mission in Yemen

By Andrew Tilghman, Staff writer5:59 p.m. EDT April 8, 2015
サウジ主導の有志連合によるイエメン空爆作戦で米軍は空中給油機を毎日飛ばす支援を開始した。中東地区での米国の関与がさらに拡大していることの現れと受け止められる。
  1. 米空軍のKC-135ストラトタンカー一機が4月7日夜、サウジ空軍所属F-15イーグルとUAE空軍のF-16ファイティングファルコンに空中給油したとペンタゴン報道官スティーブ・ウォーレン陸軍中佐Army Col. Steve Warrenが8日発表した。
  2. 米中央軍CENTCOMは毎日一機の給油機を飛ばし有志連合を支援するが、給油機はイエメンの領空に入らないとウォーレン中佐は説明した。
  3. ペンタゴンは限定的ながら兵站支援、情報支援も承認しており、サウジ主導の航空作戦用の弾薬補給も認める。サウジアラビアほかアラブ諸国はイランが支援する戦闘員を標的に作戦を展開している。
  4. CENTCOMは米軍関係者10数名を「融合センター要員」としてサウジ他湾岸諸国が加盟の湾岸協議会に派遣し、限定的ながら米軍と調整作業を行っている。
  5. 派遣要員は限定的な情報提供は行っているが攻撃目標の個別情報は共有していないとウォーレン中佐は説明。
  6. 兵站支援の範囲もイエメン国外に限定しており、米海軍が3月27日にアデン湾で機外脱出したサウジのパイロットを救出している。
  7. イエメンは米国による対テロ作戦の成功例ともちあげられてきた。米軍は少数の特殊作戦要員と無人機でアルカイダ系戦闘員の侵入を食い止めてきた。
  8. しかし3月になりイエメンは混迷の度を深め、米国も100名規模の特殊部隊を撤収。特殊部隊はイエメン南部で政府軍の訓練にあたっていた。
  9. 同じく3月にサウジ主導の有志連合がシーア派が支援するフーシを標的に空爆作戦を開始した。フーシは政権奪取を試み、イランの支援を受けている。
  10. 国務副長官トニー・ブリンケンは7日に報道陣に対してサウジ主導の有志連合は「フーシだけでなく、その後ろ盾の勢力に対してもイエメンを力で転覆させないと強いメッセージを送っている」と述べた。
  11. 専門家の多くがスンニ派とシーア派のイエメン内戦が中東全体に拡大するのではと懸念している。イランはイエメンに海軍艦船を派遣中との報道がある。
  12. ウォーレン中佐は米国は地域内の「海軍活動を逐一注意深く監視している」と述べた。■