2017年1月8日日曜日

★アルゼンチンがフォークランド再侵攻を試みる可能性---日本には何が参考になるでしょうか



1982年のフォークランド戦争は途上国対先進国の軍事衝突、かつ西側陣営内の紛争となりました。アルゼンチンが同様の作戦を実施する可能性は低いようですが、そもそもフォークランド侵攻は国内世論の不満をそらそうと当時の軍事政権が無謀にも実施したものであることをわすれてはいけません。中国、韓国とも領土を巡る対立を抱える日本にも他山の石取すべき事例であり、国内の矛盾を対外戦争で見えないようにするのは為政者の選択肢だということを忘れてはなりませんね。

Argentina Has Three Years to Retake the Falklands

It’s too late for Buenos Aires to rebuild its shattered air force before the U.K.’s new carriers arrive

by ROBERT BECKHUSEN
アルゼンチンは空軍再建を目指しイスラエルからクフィール戦闘機ブロック60の12機ないし14機導入を2017年中に狙う。旧式だが実力のある機材でブロック60はElta製2032AESAレーダー含む近代化もしている。
  1. 英国には現時点では作戦投入可能な空母はないが、一隻だけ匹敵する機能を果たせる艦がある。HMSオーシャンでヘリコプター空母だ。大型空母二隻を建造中だが、一号艦HMSクィーン・エリザベスが戦力化するのは2020年まで待つ必要がある。
  2. だが2020年時点で英軍用のF-35Bで実戦投入できる機材はごく少数だろう。2023年に24機で飛行隊が2つそろうとアルゼンチンには面倒な存在になる。
  3. アルゼンチンはなぜイスラエルから戦闘機調達を急ぐのか。当然自国領空の防衛のためだが、フォークランド諸島の支配をめぐり英国に再度挑戦する意向もあるのだろう。前回の侵攻作戦は1982年でアルゼンチンは敗退させられた。
  4. そうなるとアルゼンチンがフォークランド諸島奪還に使える時間は三年程度となる。クィーン・エリザベスの戦闘飛行隊が整備されるまでだ。
  5. とはいうものの再侵攻の可能性はきわめて低い。紛争後、英軍は大幅に戦力を縮小したが、アルゼンチン国軍はもっと惨憺たる状況だ。クフィールを導入しても再奪還の条件は整わないだろう。
  6. フォークランド戦争でアルゼンチン空軍は三分の一と機材多数を失い、紛争後も未だに戦力は回復していない。それでも現在のアルゼンチン空軍はラテンアメリカで最新鋭の戦力だが機材は三十年間放置され1990年代の経済崩壊で空軍は機材調達機能を喪失した。
  7. 再度侵攻はしないとの姿勢を示すマウリシオ・マクリ大統領は英国と関係回復を模索しているがアルゼンチンは今でもフォークランドを自国領と主張し、マクリ政権でもその主張に変わりはないが、軍事衝突の可能性は一層減ってきた。
英空軍のトーネード戦闘爆撃機。フォークランド諸島内のマウント・プレザント英空軍基地。撮影2007年、英国防省写真。
  1. アルゼンチン空軍の主力機はシュペール・エタンダールと亜音速のスカイホークと旧型機が飛行できない状態になっている。ミラージュIIIの最後の一機は2015に退役している。
  2. このためアルゼンチン防空の主役は30機あるプカラ対地攻撃機や少数のトゥカーノ、パンパ多用途練習機各型しかない。紛争の可能性に備えてアルゼンチンは高性能ジェット戦闘機と訓練済みパイロットが必要だ。
  3. 英国がフォークランドのマウント・プレザント基地に常駐させるのはユーロファイター・タイフーン2機ないし4機しかないが、地上には対空ミサイル陣地があり、英本土にはタイフーンが100機、トーネード多用途戦闘機が76機控えている。
  4. アルゼンチン陸軍には装備品が不足するとともに銃、弾薬、対戦車ミサイルが堂々と盗まれ闇市場に流れる問題もある。
  5. アルゼンチン空軍が再建されフォークランドの英空軍基地が侵攻部隊により無力化される事態を恐れて英国はクィーン・エリザベス級正規空母で航空優勢を確保しようとすれば、1982年のHMSハーミーズ及びインヴィンシブルで行った作戦を繰り返すことになる。
  6. ただしアルゼンチンの「兵力投射能力はきわめて限定的」と国際戦略研究所は2016年版報告書でまとめており、クフィールが10機ほど加わったところで状況は変わらない。空中給油なしではフォークランド上空に数分間しか残れない。アルゼンチンの空中給油機はハーキュリーズ改装型が二機あるが能力不足だ。
  7. イスラエルがアルゼンチン向けクフィールに希望通りの兵装を加えて提供する保証もない。アルゼンチンは海面すれすれを飛ぶゲイブリエルIII対艦ミサイルによる英海軍攻撃を希望している。またクフィール売却には米国の承認も必要だ。同機が米国製J-79エンジンを搭載しているためだ。だが決して不可能ではなく、米国もこれまでアルゼンチンに装備売却の実績がある。
  8. そうなるとアルゼンチンが同戦闘機を導入しても35年前の戦力水準には程遠い。アルゼンチンの機材が揃い、パイロット養成も順調に進んでも英空母群が艦載機とともに姿を表わすことになる。
  9. それに英軍の守備体制はも当時はわずかばかりの歩兵しかなかったのと比べれば小部隊といえども大きく変化している。増援部隊を受け入れる空軍基地も構築した。
  10. アルゼンチンの軍用輸送船は1982年当時の水準を大きく下回りフォークランドへ部隊を十分輸送できない。
  11. それでもアルゼンチンは知恵を絞れば英艦船の攻撃は可能だ。2016年2月にはエグゾセ対艦ミサイルの改良型を試射して、標的艦を破壊している。中国に習う戦略も可能だ。中国は南シナ海に着々とプレゼンスを築いている。
  12. とはいえフォークランド諸島の占拠、英艦艇に脅威を与えることの2つは同国には困難なままだ。■


2017年1月7日土曜日

ヘッドラインニュース1月7日(土)


1月7日のヘッドライン

筆者が注目する記事の要約を掲載しています。時差・掲載時間の関係でその後進展した内容と食い違うことがあります。


F-35はロシア、中国の防空網での有効性をこうして試されている
2030年代2040年代にかけてF-35を第一線作戦機材としたい米空軍は中国、ロシアの最高度の防空体制をシミュレーションして同機の有効性を試している。想定される相手国のSAMをデジタル化してシミュレートしていると米空軍は説明。またロシア製中国製防空装備を導入する国との対立も想定せねばならない。ハイテク、ハイエンドの脅威に対抗するためにモデリングとシミュレーションが一層重要になっているという。

E-2Dが日本へ来月やってくる
空母搭載早期警戒飛行隊(VAW)125タイガーテイルズは岩国海兵隊航空機基地に2月前方配備される。同隊は、NIFC-CA海軍統合火器管制防空体制で初の配備部隊としてテディ・ローズヴェルト空母打撃群に所属していた。交替となるのはVAW-115リバティベルズでE-2Cとともにカリフォーニアへ転属となる。E-2Dは海軍が進めるネットワーク化戦力の要となる機材だ。

新政権誕生でCIAは冷遇される
トランプ次期大統領はCIAと国家情報長官官房を縮小、リストラする意向であるとウォール・ストリート・ジャーナルが報じている。理由はともに組織が肥大化していること、政治的な思惑に動かされていることだとする。トランプの政権移行チームは情報機関が政治に左右されている傾向を指摘。

次期戦略ミサイル潜水艦コロンビア級の実現が一歩近づく
マイルストーンB審査を通過し、今後詳細設計に入る。ケンドール副長官(調達)が調達決定文書に署名した。コロンビア級の単価は80億ドルといわれる。マイルストーンB段階は昨年8月から開始されていた。

ヴァージニア級は最強の潜水艦だ



なるほどこれだけの威力のある潜水艦が安々と沿岸近くに進出するのでは中国は枕を高くして眠れませんね。トマホークミサイル、魚雷、機雷、シールズ、さらに無人水中機(この前中国が強奪したような観測用のものではありません)を運用するとなるとやはり艦体が大きくなりますね。ロサンジェルス級がすっかり性能不足に見えてしまいます。

The National Interest

The Virginia-Class Submarine Is Arguably the Best in the World (And the U.S. Navy Wants More)

January 4, 2017


米海軍は新型ヴァージニア級攻撃潜水艦の建造を加速しロシアや中国の水中戦力の増強に呼応していく。
  1. Scout Warriorの特別取材に対し海軍は産業界とともにオハイオ級後継艦建造事業によるミサイル原潜の建造が2020年代に始まる段階でヴァージニア級潜水艦を年間2隻建造できる能力を実現したいと述べた。
  2. 年間2隻のヴァージニア級建造能力は現状を打破しないとオハイオ後継艦の建造が始まる2020年代初頭には一隻に減るとみられるのだ。
  3. 前水中戦部長チャールズ・リチャード少将はScout Warriorの取材で戦略需要と産業構造の特別考察研究の課題は議会に提起したと述べている。
  4. 「産業基盤としてオハイオ後継艦が始まってもヴァージニア級二隻建造できるということです。この実現に向けて懸命に努力しているところです」
  5. リチャード少将は構想の実現には議会による予算配慮と追加的な開発が必要だとし、実現させるだけの能力があると初めて公言したのだ。ヴァージニア級の調達が成功していることも潜水艦建造隻数を増やせるとの見込みに後押ししている。
  6. 「各艦が予定工期より早く完成しており予算以下でおさまっている。このことから2021年でもヴァージニア機2隻体制が実現する可能性が見えてきた。2025年になると任務内容を実現できる隻数が確保できなくなるので今が最後のチャンスというわけです。
  7. かねてから潜水艦建造能力について疑問があっただけに少々の発言は特別に価値があり重要だ。
  8. かねてから海軍上層部は2020年代中頃に潜水艦が不足すると主張し、もっと攻撃型潜水艦が必要でロシアや中国からリードを保てないとしてきた。
  9. 米海軍で潜水艦が不足する事態は中国が米本土を潜水艦ミサイルで攻撃する能力を向上させている中で重要度をましている。当然ながら海軍は技術優位性を水中でも維持したいとするが、今後は各国からの追い上げが見られるだろう。
  10. 「中国は米本土を直撃する能力を有しています。その能力を有する二番目の国になりました。二国が能力を整備したため戦略抑止力の意義が一層次重要になっています」(リチャード少将)
  11. ヴァージニア級で採用の技術には静粛化技術、大開口艦首ソナーならびにトマホークをヴァージ二ア・ペイロードモジュールに搭載して威力を増したことがあり、米海軍潜水艦に接近阻止領域拒否体制を整備する敵性国家による挑戦への対抗能力を与えている。
  12. ヴァージニア級潜水艦は海軍とエレクトリック・ボート(ジェネラル・ダイナミクス子会社)とニューポート・ニューズ造船(ハンティントン・インガルス工業)の協力協定により建造が進んでいる。それぞれが艦の一部を「モジュール」として建造し、一体化して完成させている。
  13. 造船関係各社の幹部はこの方法を十分可能と評価し、海軍が求める建艦計画には協力していきたいと意向を述べている。

なぜ攻撃型潜水艦がもっと必要なのか:
  1. 建艦ペースを速めるとヴァージニア級が太平洋艦隊にもっと配備されることになる。
  2. 太平洋方面総司令官のハリー・ハリス大将は議会に対し潜水艦の増強を求めた。「太平洋こそ潜水艦がもっとも戦力を発揮できる場面だ。ヴァージニア級について言えば、今ある装備では最高の存在だ。潜水艦は不足している。要望水準に達していない」と議会で述べた。
  3. 技術優位性と次世代ソナーを備えた同級潜水艦は重要な情報収集監視偵察活動を水上艦なら接近も出来ない海域でも実施できる。このためヴァージニア級攻撃潜水艦は接近阻止領域拒否と呼ばれる動きへの対抗策としてはなくてはならない存在とされ、敵側がハイテク装備やセンサーで米軍の活動を戦略的に重要な地帯で封じ込めるのに対抗できる希望を与える。
ヴァージニア級攻撃型潜水艦の技術的特徴:
  1. ヴァージニア級潜水艦は高速攻撃潜水艦としてトマホークミサイル、魚雷の他にミッション装備各種を搭載している。対潜戦、攻撃任務、機雷敷設、ISR(情報収集監視偵察)、対水上艦攻撃、特殊作戦用に隊員を敵地に侵入させることが含まれるとの説明だ。
  2. ロサンジェルス級と比較するとヴァージニア級が沿海部での戦闘用に大幅に戦力を向上させていること、監視や公海での能力を増強していることを海軍は説明している。
  3. たとえばソフトウェアコードと電子装備で航行でき、細かい操作に人員の手を必要としないので大幅に時間と労力を節約できる。
  4. 「電子的に操艦できるので沿海部や潜望鏡深度で柔軟性が増えて従来より長期間に渡り探知されないまま活動できます」とヴァージニア級攻撃潜水艦開発に当たったデイヴィッド・ゴギンス大佐が以前発言している。(なおゴギンス大佐は現在オハイオ級後継艦建造事業の主管)その発言内容は数年前のものだが依然正確でヴァージニア級の建造を進める根拠にもなっている。
  5. 「フライバイワイヤ」機能で浅深度の海域でも静粛を保ったまま留まる事が可能で人力操艦の場合のようにつど浮上したり微調整が必要ないとゴギンスは付け加えている。
  6. また以前の級と異なるのはヴァージニア級には「ルックアウトトランク」と呼ぶ特殊作戦部隊用の区画が組み込まれており、潜航中に浮上せずに部隊を運用できる。
  7. 「シールズや特殊作戦部隊はルックアウトトランクに入り、海水を入れ潜航中に発進しても探知されないが、以前の潜水艦ではこれは無理だった」(ゴギンス大佐)
  8. ブロックIIIのヴァージニア級潜水艦には大開口ソナーの一体型アレイソナー装備が付く。音響音を発信して返ってくる信号から敵艦の位置や形状を把握する。
  9. これまでヴァージニア級は10隻以上が海軍で運用中で7隻が建造中だ。他の調達事業と同様にヴァージニア級でも「ブロック」型式になっている。
  10. ブロックIとIIで10隻を建造し、全艦が納入済みだ。またブロックIIIの最初の艦はUSSノースダコタとして引渡し済みである。
  11. ブロックIIIでヴァージニア・ペイロード・チューブと言われる装備が搭載され艦体価格を引下げながら戦略的意義を向上させている。
  12. 以前のヴァージニア級では直径21インチの垂直発射管12本でトマホークミサイルを発射できるが、ブロックIIIは87インチ発射管二本を搭載し、それぞれにトマホークを6発搭載する。
  13. 「発射管には油圧機構と電子装備があり、ブロックIIIでは発射管が12本から2本になりました。これで製造がずっと用意になりました」(ゴギンス大佐)
  14. 新型発射管は海軍が「価格に応じた設計」と呼ぶ戦略で費用圧縮を狙ったもので同時に戦略的な優位性を各艦で実現するものと海軍は説明。
  15. 「将来はトマホーク以外に別の兵器も搭載できるようになります」(ゴギンス)
  16. ブロックVになると海軍は新型97インチ長の部分で追加ミサイル搭載を実現すると期待している。この「ヴァージニア・ペイロードモジュール」(VPM)の技術性能開発要求はすでに文書化されている。VPMではモジュールとして潜水艦の艦体を追加してトマホーク・ミサイル搭載を12本から40本に増やす。
  17. トマホーク追加搭載の実現は2026年に実現する見込みで、SSGNに転換したオハイオ級誘導ミサイル潜水艦部隊が退役始めるまでに実現したいとゴギンスは述べる。
  18. 海軍技術部門が要求性能の実現に向け作業中で新型70フィートのモジュールでトマホーク換算28発を新たに搭載できるという。
  19. トマホーク搭載を想定しているが、VPMでは新型ミサイルやペイロード、さらに無人水中機も搭載できるようになると海軍は説明。
  20. VPMの狙いは明白だ。2020年代に入ると海軍はオハイオ級大型誘導ミサイル潜水艦四隻の退役を始める。各154発のトマホークミサイルを発射可能で、退役で水中発射能力が大幅に減少していく。
  21. 2002年から2008年にかけてオハイオ級の最古参四隻が通常兵器のみの運用に改装された。USSオハイオ、USSミシガン、USSフロリダ、USSジョージアの各艦でSSGNの呼称がついた。
  22. 「2020年代にSSGNの引退が始まるとそのまま何もしなければ海軍は水中攻撃発射能力の60%を失うことになる。そこでVPMの設計が始まったのであり、2019年に建造が始まれば60パーセントの喪失は2028年時点で40パーセント減少に変ることになる。VPMを手に入れることで火力の喪失を抑えることになるというわけだ。そのためVPM実現を急ぐ必要があり、なんとかその40パーセント喪失を緩和したい」(ゴギンス大佐)
  23. ブロックVでは円筒状構造を艦体中央に差し込み全長が増え、ペイロード性能が追加される。ブロックVの一号艦の建造は2019会計年度に始まると海軍は説明。
  24. VPM試作品の製作はすでに始まっており、製造を加速化したいというのが海軍上層部の希望だ。実現すれば潜水艦の火力は相当向上する。
ヴァージニア級調達の成功の要因:
  1. ヴァージニア級潜水艦の基本計画では30隻を建造することになっている。ただしこの規模が増える可能性を海軍関係者の多くが口にしており、海軍の公式な30年計画の建艦事業案でも迅速な建造ペースを求めている。
  2. 現在建造中の各艦は2008年12月22日付け契約で8隻建造する内容にもとづいて進行中だ。ヴァージニア級建造の契約三号がブロックIIIで艦体番号784から791で140億ドルの複数年度調達事業になっている。
  3. 複数年度契約にすることで費用圧縮と建造期間短縮を狙い業者には付属品を潜航調達し、生産活動を安定化させる効果を複数年に渡り期待できる効果がある。
  4. ブロックIVの最初の艦も建造中だ。USSヴァーモントとUSSオレゴン。海軍はジェネラル・ダイナミクスのエレクトリック・ボート部門とハンティントン・インガルス工業のニューポート・ニューズ造船に176億ドル契約でブロックIV艦10隻を建造させ、最終艦は2023年に納入との条件をつけた。
  5. 設計変更には推進器の素材変更があり、ブロックIV各艦では定期補修まで96ヶ月までの航行が可能となる。
  6. これにより運用コストとともに保守維持コストはブロックIVでずっと低くなるとともに追加配備期間を務めあげることが可能となる。これで同時に配備可能なヴァージニア級の隻数が14から15になると海軍は説明している。
  7. さらに建造期間の短縮が可能となり、費用を引き下げながら引き渡しを予定より前倒しで実現しているとゴギンス大佐は述べる。これまで予定の工期以前に引き渡しとなったヴァージニア級は少なくとも六隻あると海軍は説明している。
  8. 現在の年間二隻建造体制は遡れば2005年に当時の海軍作戦部長マイク・マレン大将が提起した課題を実現したものだ。前述したように日程をさらに加速化する検討が進んでいる。
  9. マレン大将は同級の建造事業に対して20パーセントの費用圧縮を求め、その分でVCSを年間二組製造できるとしたのだ。これにより単艦費用は400百万ドル程度引き下げられた。
  10. この実現の裏には多数の努力があり、海軍が業界と手を組んで建艦方法の改革に予算を回したこと、生産費用圧縮に効果のある技術に投資をしたことが中でも大きい。その他の費用圧縮要因には複数年度契約があり、生産を合理化し、作業工程を圧縮しながら事業経費を引き下げることに成功した。
  11. 米海軍はヴァージニア旧潜水艦の全体規模を説明する文書作成に取り組んでおり、最終的には51隻にまで引き上げたいと関係者は述べている。
Kris Osborn became the Managing Editor of Scout Warrior in August of 2015. His role with Scout.com includes managing content on the Scout Warrior site and generating independently sourced original material. Scout Warrior is aimed at providing engaging, substantial military-specific content covering a range of key areas such as weapons, emerging or next-generation technologies and issues of relevance to the military. Just prior to coming to Scout Warrior, Osborn served as an Associate Editor at the Military.com. Osborn previously served at the Pentagon as a Highly Qualified Expert with the Office of the Assistant Secretary of the Army - Acquisition, Logistics & Technology. Osborn has also worked as an anchor and on-air military specialist at CNN and CNN Headline News. This story originally appeared in Scout Warrior.



2017年1月6日金曜日

核の軍拡は始まっている 遅れをとる米核戦力の近代化を目指すトランプ政権に注目



オバマ政権が核兵器を軽視した中で中ロは着々と装備の高性能化を進め、北朝鮮まで原始的とは言え核戦力を整備し始めました。8年間の遅れをトランプ政権はどう追いつこうとするのでしょうか。核兵器そのものは非常にお金がかかる代物ですが相手が腕を磨く以上、こちらはトレーニングしなくていいいという世界ではないのでしょうね。これが現実です。皆さんはどう思いますか。

‘Let It Be An Arms Race’: Our Nuclear Adversaries Have Already Started

By ADAM LOWTHER on January 04, 2017 at 8:00 AM
ドナルド・トランプ次期大統領は自身のツィッターで12月22日に「米国は大幅に核戦力を強化拡張すべきだ」と主張した。その後MSNBCテレビで「軍拡競争あってしかるべきだ」とまで発言したとの報道があった。
核弾頭が2万発を超える状況に戻るのは願い下げだが、この十年ほどで米国の相手国側は運搬手段を近代化し、弾頭も更新しており、ロシア、中国、北朝鮮の核兵力は様変わりしている。核の軍拡競争はもうはじまっていたのだ。
ロシア
戦略ロケット軍が新型大陸間弾道ミサイル数種を導入して冷戦時の旧式装備を置き換えようとしている。SS-18、SS-19Mod3はSS-27Topol-MおよびSS-29Yars-Mに交替する。新型ICBMはサイロに配置されるか道路または鉄道網で移動可能だ。移動式ICBMの所在を突き止めるのは非常に困難。2020年代に入るとロシアはRS-28Sarmatの配備を始めるだろう。同ミサイルは「国家破壊兵器」といわれるように再突入体を15個も搭載し、防御性能もありミサイル防空体制に対応できる。
ロシアは新型弾道ミサイル潜水艦を導入して冷戦時のデルタIV型二交替させつつある。新型のボーレイ級はロシア潜水艦で最も静粛度が高く、SS-NX-30ブラーヴァ潜水艦発射指揮弾道ミサイル(SLBM)を16発まで搭載する。一号艦が2009年に就役しており、2020年までに8隻の陣容となる予想がある。
Tu-95ベア-HとTu-160ブラックジャックの爆撃機部隊も近代化を受けているが、新型ステルス爆撃機の設計開発も進んでいる。空中発射式巡航ミサイル(ALCM)の新型Kh-102は核運用可能でロシア領空内から発射して米大陸に到達可能だ。米領空に侵入するまでレーダー探知は困難だろう。
米ロがそれぞれ相手方の迎撃手段を熟知しており、弾頭設計で大きな進展が見られる。確実に弾頭が想定どおりの威力で爆発するようにすることにロシアが特に力を入れている。公開情報は少ないがロシアがこの分野で進展しているのは確かだ。
中国
中国の核抑止力は弾道ミサイルが中心だ。DF-5(CSS-4)は液体燃料式で1980年代から配備されている。単独大型弾頭で米国を攻撃する狙いなのは命中精度が低いためだ。DF-41固体燃料式ICBMに交替しつつあり、新ミサイルは命中精度、発射準備時間双方で大幅改良されている。
またDF-31(CSS-9)固体燃料式ICBMが2006年から配備されており、中国に弾頭三個を米国に到達させる能力が改良型DF-31Aとして実現した。さらにDF-31Bは道路移動式だ。
中国も核の三本柱体制整備に向け海上抑止力に力を入れており、晋級弾道ミサイル潜水艦の配備が2010年に始まり、5隻になる予想だ。公開情報では騒音レベルは高く、容易に米海軍が追尾できる性能の低さだがそれでも中国には一歩前進だ。晋級が12発まで搭載するJL-2(CSS-NX-4)は飛翔距離は5千マイルといわれる。
2009年にはH-6K爆撃機を配備開始した。これはソ連時代のH-6を近代化した機体でCJ-10K巡航ミサイルを搭載でき、通常弾頭のみと見られるが、核弾頭型も登場するかもしれない。アジアでの覇権を狙う中国にとってH-6Kの航続距離2,200マイルで域内各地を十分攻撃できる。
北朝鮮
北朝鮮は核兵器製造能力を見せつけ弾道ミサイル開発も活発だがKN-08道路移動型ICBMに核弾頭運搬能力があるのか不明だ。今のところ北朝鮮が弾道ミサイル搭載用に核弾頭を搭載するまで技術を磨いているのかが公開情報で読み取れない。ただし金正恩が核兵器を重視する中で北朝鮮の科学者技術者は失敗が許されない立場なのは明らかだ。
まとめると米国の敵対勢力は着々と核兵力を拡充している。米国も遅れを取ってはならないのである。■
Dr. Adam B. Lowther is the Director of the School of Advanced Nuclear Deterrence Studies (SANDS) at Kirtland, AFB. His latest book is Defending the Arsenal: Why America’s Nuclear Modernization Still Matters. The views expressed in this article are Dr. Lowther’s alone and do not represent the official position of SANDS or the Air Force at large.


ヘッドラインニュース1月6日(金曜日)


1月6日のヘッドライン

筆者が注目する記事の要約を掲載しています。時差・掲載時間の関係でその後進展した内容と食い違うことがあります。


B-52飛行中にエンジン脱落
1月4日ノースダコタ州上空を飛行中のB-52HのTF-33エンジン一基が機体から脱落し地上に墜落した。米空軍はヘリコプターでエンジン残骸を捜索中。落下地点は人口希薄な地帯。B-52エンジン換装の議論がこれを経緯に活発になりそうだ。

ロシアとインドが部品補給体制のインド国内設置で合意か
3月にも締結されるとみられる2国間合意でインドにスホイSu-30向けの予備部品補給処が設立される。部品のインド国内生産につながる一歩とみられる。インド空軍が運用するSu-30MKIの稼働率は現在63%に留まっており、今後の引き上げが期待される。

T-X競作にテキストロンは態度保留
テキストロン・エアランドによれば米空軍のT-X提案要求内容を検討中だがまだ参画するかの決定に至っていないとし、自社開発スコーピオンの行方はまだ不明だ。参入すれば競合他社と真っ向勝負となり、同社としては海外への販路開拓効果も期待したいところ。

核兵力近代化に米国が乗り出す姿勢
トランプは12月に核戦力の整備を重点に掲げ、軍拡競争に打って出る覚悟を表明。米核兵器が老朽化している間にロシア、中国、北朝鮮は近代化、拡充を進め、10年前とは全く異なる戦力を整備している。この三国の現況はどうなっているか。(この記事は別途ご紹介予定)

フィリピンに近づこうとするロシア
航空機、潜水艦など装備提供をロシアがフィリピンに提案していることが判明した。デュテルテ比大統領はこれまでの対米関係を見直す動きを公然と見せており、大統領就任後ロシア艦船が2隻フィリピンに寄港している。さらにロシアはフィリピンとの軍事協力も実現させたいとしている。恒例の米比海軍演習について同大統領は頻度を下げ、海域も南シナ海から離れた地点に変更し、中国を刺激したくないとしている。


2017年1月4日水曜日

ヘッドラインニュース1月4日(水)


1月4日のヘッドライン

筆者が注目する記事の要約を掲載しています。時差・掲載時間の関係でその後進展した内容と食い違うことがあります。


P-1,C-2のニュージーランド販売の成約をめざす日本
ニュージーランドの軍用輸送機、哨戒機調達事業に日本も手を上げている事が判明した。昨年9月の時点で日本政府から両機種の一般情報をニュージランド政府に提供している。日本からは両機種同時採用を期待し、部品の共通性を強調し、費用節約を利点に上げている。P-1はボーイングP-8との一騎打ちになるがC-2ではエアバスが競争相手になりそうだ。採用の場合、一部部品のニュージランド生産も認められるだろう。



中国空母遼寧が南シナ海で航空機運用を実施
中国によると1月2日に遼寧のJ-15をはじめて南シナ海で運用訓練したという。荒天下での運用でヘリコプターが支援に活躍し、空中給油も実施したとのこと。



カール・ヴィンソン空母打撃群が出港
USSカール・ヴィンソン(CVN-70)は空母航空隊2を搭載し、巡洋艦レイク・シャンプレイン、駆逐艦マイケル・マーフィー、ウェイン・E・メイヤーとともに今週西海岸を出港し、西太平洋に向かう。第三艦隊の指揮下で第7艦隊とも連携するという。


フューチャーウェポンのホスト、マックが死去
リチャード・マッコウィッツが1月2日死去した。脳ガン。元海軍SEAL隊の「マック」としてディスカバリーチャンネルの「フューチャーウェポン」でホストを務めた。

2017年国防関連の見通しをアナリストはこう見る


現時点で各アナリストも新政権の国防政策の行方を見通せなくなっているのが現状のようです。とはいえ、そこはアナリスト、以下の知見を紹介しています。でもF-35、核兵器近代化(これはトランプがすでに支持しています)、海外展開の行方については言及されていません。

Aviation Week & Space Technology

Opinion: Nine Defense Predictions For 2017

Dec 23, 2016 Byron Callan | Aviation Week & Space Technology

2017年の防衛産業セクターを予想したいが水晶玉は透き通ってこない。そこで無理やり予言することとする。
➊ 米国防総省予算はオバマ政権時より好転するとはいえ、十分ではない。予算強硬派を自認するミック・マルヴェイニー下院議員(共、サウスカロライナ)をホワイトハウスの予算管理局長に抜擢したことからしてペンタゴン支出案は連邦予算で別格扱いで増加するだろう。今後四年間年率3ないし5パーセント成長すると業界では期待している。ただし当初はそこまで達しないだろう。予算強制削減条項を2011年予算管理法から削除することになるだろう。
➋トランプがツィッターで国防調達の優先順位を示したことから懸念が残っている。とはいえ、騒ぐわりにはたいしたことではないのかもしれない。エアフォースワンとF-35を巡るツィートに対して業界はコスト削減に協力すると反応しており、危険性を緩和することになろう。また業界も急速に学習し、本人の事業知識が増えれば調達関連のツィートは減るだろう。
➌大手防衛産業の合併、企業買収に可能性がある。アシュ・カーターが国防次官時代に設定した現在の省方針は2009年のもので大手企業の合併を極力回避させるものだったが、新政権でこれが変更になる可能性がある。株価が記録更新し、金利上昇が見られる中で株式への影響は減り配当が伸びるのは近年の実績を上回るだろう。最大手5社間の合併はすぐに生まれないだろうが、製品の品揃えを補完するロッキード・マーティンとシコルスキーのような合併はあり得るだろう。企業整理による大規模一時解雇を回避する効果が期待される。
➍議会内部に大幅国防予算削減の動きは依然として見られない。失業率が低いとはいうものの高給の働き口が少ない中で、基地閉鎖は地元経済への影響が大きいし、国防インフラを閉鎖すること含め人気のない選択肢だ。
➎イランと中国が主要な安全保障上の課題としてトランプ政権が認識するだろう。ロシアは脅威度を減じてくるだろう。イランが注目されるのはトランプが2015年の核開発合意に反対していることに加え同国の域内での行動そのものが原因だ。トランプは中国については貿易と為替政策でコメントしており、「一つの中国」原則そのものへも疑問を感じていることも摩擦要因で安全保障構想にも影響がでそうだ。
➏国防調達の大型案件はインフラ整備と財政刺激策の形で現れるだろう。現行の兵器開発は即効性があるものとして地元経済や雇用への貢献が期待されるがGDPへの貢献となると財政刺激策が勝る。
➐民生技術の導入は議会の支持もあり引き続き活発だろう。下院・上院の軍事委員会はそれぞれ民生技術応用を軍に求めているが、ペンタゴンの新体制がカーター長官ほどの熱意を示すか不明だ。連邦事業の契約行為での規制緩和で国防分野への新規参入が楽になるが、大きな影響は生まれないだろう。
➑為替レートが国防装備品の調達価格に影響を及ぼすので、米ドルが主要欧州通貨に対し引き続き高止まりになるか注目だ。
➒地政学的な突発事件でトランプ政権の国防政策の方向も変わるだろう。国防事業社委員会は昨年10月の報告書で新政権は発足後270日以内に大きな危機的状況に遭遇する事が多いと指摘している。トランプの国家安全保障協議会で経験不足なこと、トランプのツィート癖がこれに輪をかけるかもしれない。2001年にブッシュ政権の当初の国防構想は9.11テロ攻撃でひっくり返されている。
バイロン・キャランはキャピタル・アルファパートナーズの役員。本記事中の見解はAviation Week とは無関係。​

2017年1月3日火曜日

2017年は台湾に注目 中国封じ込め体制の構築が太平洋の課題だ。


新年はトランプ大統領の新思考に注目です。中国については1970年代の思考が継続され、台湾を孤立させた方が都合が良い状況を作ってきましたが、トランプの電話一回で虚構が崩れつつあるわけです。やはりトランプが当選してよかったと思える瞬間でしたが皆さんはどうお感じになったでしょうか。台湾もそうですが、沖縄をめぐる中国の動きにも今年は注目していかなければなりません。米戦略では在日米軍もある程度の被害は避けられない前提ですが、そんな「想定外」の事態は考えたくないというのがこの国の「空気」でしょう。沖縄、台湾さらに日本列島と「空気」ではなく、地政学、パワーポリティクスで見ていくべき時代に来ていますね。なお、日米豪台と国名が出る中で韓国については全く言及がないことに注目すべきではないでしょうか。


Taiwan, Trump, & The Pacific Defense Grid: Towards Deterrence In Depth

By ED TIMPERLAKE and ROBBIN LAIRD on December 29, 2016 at 4:00
AM

トランプ次期大統領が台湾総統と電話会談したことで外交界に波紋が広がっているが、今や歴史のページを進めて21世紀の太平洋抑止力戦略の一部に台湾を組み入れるべき時が来た。
中華人民共和国(PRC)は太平洋進出を公言し、軍事影響力を行使し米国及び同盟各国の権益に真っ向から挑戦する姿勢を示している。台湾から先にも軍事外交戦略を展開し、太平洋での兵力投射を日本列島からさらにオーストラリアまで広げようとしている。
そこで台湾制圧が日本、オーストラリア、太平洋の米軍基地を睨むために重要な要素となっているのは明らかだ。では米国は台湾防衛を黙視したままでいいのか。太平洋戦略の再構築に台湾が果たす重要な位置を無視できるのか。
ニクソン、キッシンジャーがソ連への対抗策として中国の抱き込みを模索した時代から時間は止まったままだ。ソ連は崩壊したが、ロシアはソ連ではない。今日のクレムリンは中国とはレアルポリティクだけを共有する関係だ。このためロシア封じ込めを期待してPRCに媚を売っても得るものはない。ロシア封じ込めは異例の任務になる。21世紀のロシアはプーチンのもと軍事力で露骨に国益を実現することに躊躇していない。また中国も異例な規模の大国であり、ニクソン-キッシンジャーが交渉していた頃の姿から劇的なまでに変貌している。
「PRCとの関係正常化は三段階の共同声明が1972年、1979年、1982年で形成されてきた。各文書でPRCとUSは明確にお互いの相違点を確認し、暫定的な平和実現のため相違点をあえて黙認してきた。暫定という言葉に意味がある」とダニー・ラム(アナリスト)は強調する。
これがカーター政権末期に「一つの中国政策」に変わっていった。カーターは台湾と断交しPRCを唯一の中国合法政権と認定した。だがこの政策は冷戦期に今はないソ連と対抗する中に形成されたものであり、海洋進出するような軍事力を中国が獲得する前の話だ。政策方針の骨董品置き場から抜け出して21世紀の台湾政策を形成すべきときに来た。より広範な封じ込め戦略の一部とするのだ。
徹底的封じ込め政策
米国では運用可能なテクノロジーとあわせ太平洋地区の中核同盟国での政策変更により全く新しい徹底的な封じ込め戦略deterrence in depthが可能となった。日本は防衛体制の拡大に力を入れている。オーストラリアも防衛範囲を広げるべく戦力を整備中だ。米軍は太平洋で広範な作戦展開する体制づくりに入っている。そこで今こそ台湾の役割を太平洋全体の防衛安全保障の観点で再定義すべきときだ。
海兵隊太平洋地区司令官を務めたテリー・ロブリング中将がいみじくも言っている。「徹底的封じ込めという用語が気に入っている。実態をそのまま表しているからだ。徹底的防衛では対応にならないときがある。相手の行動を抑制し変えさせないと域内安定に役立たない。軍事経済両面で必要で国際法の規範に従うことがすべての諸国に求められている」
この考え方は軍事的にどう実現できるのだろうか。米海軍は統合破壊ウェブとして広範囲に分散した艦船、航空機、潜水艦をネットワークで結び、各種センサーと攻撃手段で「単独戦闘はもうありえない」体制を整備している。ドナルド・トランプ次期大統領が示した政治意思があれば台湾も同様な抑止体制の一環に取り組める。
海軍作戦副部長に就任したマイク・マナジール少将と話す機会があり、少将は広範囲な作戦海域で兵力を統合する意義を強調した。空軍、海軍、海兵隊のチームが互角の相手とのハイエンド戦を想定しているのは明らかだ。
米陸軍がここで果たすべき役割は防空ミサイル防衛能力の整備だ。だがそのためには部隊をモジュラー化し、機動性をもたせハイエンド含むあらゆる局面の軍事衝突で有効に機能を発揮できる部隊にすることが必要だ。
台湾が分散防衛体制ならびに徹底的抑止体制の一部に加わることは容易だ。その手始めに同盟国の沿岸警備部隊との共同作戦に組み入れることがある。台湾も米国並びに同盟国に参加しプレゼンス維持の一環になれるはずだ。
台湾海軍・空軍も分散プローチによる統合太平洋防衛戦略に参画できる。PRCが太平洋に軍事力を広げるのに対抗しようとする中で台湾を孤立させ、日米豪の抑止力部隊に加えない場合、北京政府は台湾を簡単に略奪してしまうだろう。トランプ次期大統領による電話会談はPRC封じ込めの新局面でとても大きな印を残したのだ。
両著者が三年前に太平洋戦略を論じた著書を書いた時点で北京は台湾を自らの帝国の遠心力により統御可能と見ていた。台湾解放戦は中国が考える中核的領土権益の一部に組み込まれている。台湾島は清朝が17世紀に統合して以来中国の一部とされてきた。1895年に日本が統治し、第二次大戦後に返還された。戦後の中国内戦で蒋介石は本土から追い出され、台湾に落ち着き、現在の中華民国となった。民主体制を進めた中華民国は強圧的な体制を旨とする中国本土からは睨まれる存在だ。[1]
台湾の意義
新台湾政策は太平洋諸島向けの新しい方向性とともに中国対象の「抑制封じ込め戦略」 “constrainment strategy”の創設でカギとなる。台湾はPRCが太平洋に出入りする際の軍事戦略上の連接点に位置する。台湾、米国、日本、オーストラリアのいずれも西太平洋や南シナ海で航行の自由を制約する中国の動きは認めてはならない。
PRCが台湾を制圧すれば、軍事的に米国や同盟諸国の作戦を妨害してくるだろうし、PLAにより中国沿岸から100マイル範囲で強固かつ有効な情報収集偵察監視拠点のネットワークが形成されればPLAAF攻撃機と軍事衛星は米海軍並びに同盟各国に大きな脅威になる。
台湾が自国防衛体制を強化するのは台湾の正当な権利であり、台湾関係法でも許容されている。「米国は台湾に防衛装備や防衛活動を必要な量なだけ提供し、台湾に十分な自衛能力を維持させることができるものとする」
だがPRCへ台湾が自衛するためには米、日、豪各国と共同しない限り戦略的な意義が生まれない。台湾は自国防衛の実現のみならず太平洋の防衛への貢献策を探っていくべきだ。一つの鍵は台湾が自国のISR体制を拡大し、指揮統制(C2)能力を引き上げることだ。
これは米陸軍が防空砲兵隊(ADA)能力をアジア太平洋で構築するのに呼応する。ADAには太平洋地区全域にTHAADミサイル防衛装備含む防空装備による支援体制を整備する必要があろう。
THAADを離島に防衛装備ネットワークの一環として展開するにはどうしたらよいか。THAADミサイル発射機の総運搬重量は66千ポンドあり、大型CH-53ヘリコプターでは機体内部には30千ポンド、機外吊り下げで36千ポンドしか運搬できない。しかも飛行距離は621カイリしかない。しかしミサイル自体は運搬車両を別にすれば26千ポンドでCH-53が機内搭載できる。
問題はミサイル発射機を起立させ再装填する機構にある。トラック除く発射機は強化コンクリートがあれば航空機で搬入できる。あるいはモジュラー方式の搬入設備でミサイル装填は可能だろう。そうなるとモジュール化がカギになりそうだ。運用要員は海兵隊のMV-22オスプレイで陸軍ADA部隊を送り込めばよく全く困難な話ではない。ただし、THAAD指令所とレーダーは別だ。
陸軍はMV-22やCH-53Kの運用を真剣に検討していない。両機種は海兵隊所属だからだ。だが前例はある。ヴィエトナム戦のさなかに陸軍はヘリコプターで大型火砲を運搬し遠隔地に陣地を構築している。THAADを離島に展開する構想も同じ発想だが利用する技術が異なるだけだ。
そこでADA陣地を島しょ部に展開し、必要に応じ飛行場を利用するとして、航空母艦は島しょ部から200キロ以上離れた地点に留まらせ、陸上陣地に防空体制を取らせる。米側がこうした防御網を構築する中で台湾も一部になる。近い将来に台湾が自前のC4ISR(指揮統制通信コンピュータ情報収集偵察監視)体制を構築すれば、台湾の防空能力を防御ネットワークの火力の一部に投入できる。
台湾関係法は明確にこうした手段を認めている。「米国による武力あるいはその他手段により台湾の安全、社会経済制度並びに国民の安寧を脅かす勢力に対抗できる能力を維持するものとする」
トランプ大統領は根本的に新しい政策のはずみをつけた。歴史はドナルド・トランプが台湾総統からの電話を取ったことを道徳上の義務の表れとし、ロナルド・レーガンがベルリンの壁を撤去せよと求めたのと同等に扱うだろう。■
[1] Laird, Robbin; Timperlake, Edward; Weitz, Richard (2013-10-28). Rebuilding American Military Power in the Pacific: A 21st-Century Strategy: A 21st-Century Strategy (Praeger Security International) (pp. 25-26). ABC-CLIO. Kindle Edition.


ヘッドラインニュース1月3日(火)


1月3日のヘッドライン

筆者が注目する記事の要約を掲載しています。時差・掲載時間の関係でその後進展した内容と食い違うことがあります。

T-X競合が正式にスタート
米空軍が次期練習機の情報提供要請を12月30日発表し、正式にT-X調達が始まった。業界からは5社から6社が回答を寄せ163億ドルの事業受注を狙う。高等パイロット養成事業では350機の調達をめざし、ノースロップT-38タロン(1961年~)と交替させる。性能要求水準は2015年発表の内容と変わらず、6Gの持続、瞬間で7.5Gだが超音速飛行の要求はない。T-Xは米空軍の費用性能解析事業の第一号となり、要求性能と機体価格のトレードオフを業界と情報公開しながら進めてきた。これにより開発コストの大幅削減を目指す。



T-X競合会社の陣容は?
ロッキード・マーティン、ボーイング、ノースロップ・グラマン、レイセオン、シエラ・ネヴァダとなりそう。選定は2017年中に決定する。低率初期生産をへて、初期作戦能力獲得は2024年度末の見込み。


B-21レイダーの予想性能
次世代ステルス技術と長距離航続能力で最先端の防空網も突破できると予測。情報は堅く秘匿されているが機体構造には排気管が全く見当たらないとの証言もある。ロシアがステルス対抗レーダーを開発したが米空軍は十分なステルス技術を発揮できる自信を示している。B-2も今後改良を行う。


トライデントII D-5発射実験に成功
USSメリーランドが大西洋で発射していたことが明らかになった。トライデントの発射実績はこれで159発目。試射用の弾頭には核爆弾は装着されていない。米英海軍が運用する戦略ミサイル原潜に搭載される。単価は30百万ドル。弾頭には100キロトンから455キロトンまでの選択が可能。今回試されたのはMk-5再突入体。ロシアとのSTART条約で米軍の核弾頭は7割が海軍潜水艦に搭載されている。

台湾の迎春編隊飛行
台湾空軍は恒例の初日の出編隊飛行を今年もF-16で花蓮県海岸でおこなった。