2017年6月8日木曜日

★次期戦略偵察機SR-72(極超音速機)の開発状況がほんのわずか判明



Lockheed Martin


新型機の話題になるとAviation Weekがいつも真っ先に報道することになっており、時として内容がずれることがあるのですが保母信頼していいでしょう。2020年代はすぐそこにきているとはいえ、SR-72の供用は2030年代になるのでしょう。気を長くして待つしかないですね。


Aerospace Daily & Defense Report

Skunk Works Hints At SR-72 Demonstrator Progress

スカンクワークスがSR-72実証機開発の進捗状況をほのめかす

Jun 6, 2017 Guy Norris | Aerospace Daily & Defense Report



DENVER, Colorado—マッハ6の攻撃偵察機の開発構想発表から4年がたったが、ロッキード・マーティンによれば極超音速技術は十分成熟化し飛行実証機の製作が視野に入ったとする。
  1. 同社の極秘開発部門スカンクワークスが2000年代初頭から同技術に取り組んでおり、飛行可能な極超音速機の基本構成が完成しており、退役済みの米空軍マッハ3偵察機SR-71ブラックバードの後継機となるSR-72の縮小版を開発中と2013年に Aviation Week に明らかにしていた。しかしその後の開発状況はほとんど不明のままだった。
  2. 「これまで20年いつも極超音速飛行はあと二年で実用となると言ってきましたが、技術は今や成熟し当社はDarpaや各軍とともにこの性能をなるべく早く実現すべく奮闘しているということです」とロッキード・マーティン執行副社長兼高性能技術開発事業(スカンクワークス)部長のロブ・ワイスは語る。
  3. 当地で開催中のAIAA Aviation 2017会場でAviation Weekにワイスは「具体的な日程や性能の詳細については語れません。極めて機微な情報です。敵対勢力もこの分野で急速な進展を示しており、当方が今何をしているのかを語らないことにしています。一般的な性能水準はいいのですが、開発状況の各論には触れられません」と断わりを入れた。
  4. ただしワイスはコンバインドサイクル推進方式含む中核技術で進展があることをほのめかし、極超音速飛行への実現がかなり進んでいること、実証機に技術が応用されつつあることを認めた。実証機では地上テストが2013年から2017年にかけておこなわれており、同社は任意で有人飛行可能な飛行研究実証機(FRV)の製作に早ければ来年にも取り掛かるとみられる。FRVはF-22とほぼ同寸で実際のコンバインドサイクルエンジンを一基搭載する。
  5. 詳細は全く不明だが、ロッキード・マーティンがロケットダインと共同で2006年から既存タービン部品にスクラムジェットを組み合わせたコンバインドサイクル推進装置を製作中でマッハ6プラスを狙っていることは知られている。作業には空軍/DarpaのHTV-3X再利用可能極高音速実証機を使っている。同機は2008年に開発が中止されたが高速飛行可能タービンの統合のため再利用されている。HTV-3構想はDarpaのファルコン事業の一部でその他小型打ち上げ機、共用飛翔体や極超音速巡航飛翔体の開発を目指していた。
  6. 「コンバインドサイクルの実現はもうすぐで空気取り入れ式の極超音速実現で大きな突破口になります。極超音速飛行ではコンバインドサイクル以外にも必要な要素があります」(ワイス)
  7. FRVの初飛行は2020年代初頭の見込みそので進展を見て実寸大の双発SR-72製作に移行するとロッキード・マーティンは発言している。SR-72はSR-71とほぼ同寸の大型機となり2020年代末に飛行テストを開始する。■

2017年6月7日水曜日

★米海軍の進める電磁レイルガンの最新動向



ONRはリスク低減策を模索し、EMRGの砲身耐用期間を延長し毎分10発の発射を実現しようとしている。Source: John Williams/USN

レイルガンの実用化を一番恐れるのはロシア、中国、北朝鮮といったミサイルで西側を脅かそうとする勢力でしょう。それだけに米側も開発の実態を極力秘匿しておきたいようで、予算要求案を見ても一括要求都市レイルガン自体の開発予算はわからないようにしています

USN recharges railgun science and technology effort

米海軍はレイルガン研究開発に引き続き取り組む姿勢を強化

 Geoff Fein, Washington, DC - IHS Jane's Defence Weekly
06 June 2017
  

  1. 米海軍は2018会計年度予算で電磁レイルガン(EMRG)の艦艇搭載は要求せず、かわりに研究開発に予算を引き続き計上し試作型のテストを2019年度に実施をめざす。
  2. 2018年度予算で海軍が要求するのは93百万ドルで研究開発試験評価 (RDT&E)を数点の革新的海軍試作装備 (INPs) に投入するとし、EMRGもその中に含まれる。ただしレイルガンへの要求額は明らかでない。海軍がEMRG研究開発単体の予算額の公表を避けているからだ。
  3. 実際の予算額がどうであれ、EMRGは目標の32メガジュール毎分10発発射で長期間稼働可能砲身の実現にむけて引き続き開発を続けると海軍研究部門ONRでEMRGを担当するトム・バウチャーがJane'sに述べている。
  4. 一般の艦載砲と異なりEMRGは電力で砲弾を発射する。(弾頭はつけない)射程は100カイリ超となる。磁界が高電流で生まれ、金属製導体(アーマチャア)を加速し、4,500から5,600マイルで砲弾を発射する。
  5. 現在開発部門が取り組む課題は以下の分野だ。毎分10回発射の実現、EMRGの砲身内部の耐用期間を延長できる素材の模索、内部の熱管理、EMRGの電源管理システムの作成である。■

2017年6月6日火曜日

★日本生産F-35A一号機がロールアウト、今後の行方を占う



小牧基地を反対側から眺めることができる名古屋空港(愛知県営)は飛行機好きにとってたまらない場所ですが、今後はF-35の姿も普通に見られるようになりそうですね。旧国際線ターミナルを改装したモールのエアポートウォーク名古屋の一番上に展望室がありその横には金網がありますがバルコニーもあります。もうひとつおすすめは国内線ターミナルの屋上ですが、もうひとつ航空館Boonがある神明公園です。駐車場も豊富にあるのですが、今後はいずれもスポッターでにぎわいそうです。肝心のF-35ですが今の調達機数が確かに中途半端な規模ですが大幅な追加調達は日本からはないのではないでしょうか。韓国空軍のF-35は日本のFACOは利用しないと言っていますから今後の対応に注目しましょう。

Japan Just Built Its Very First F-35 Joint Strike Fighter


June 5, 2017


  1. 三菱重工業の小牧南工場内のF-35最終組み立て点検施設(FACO)が日本国内組み立てによるF-35A共用打撃戦闘機の一号機がロールアウトし米日両国の賓客が式典に参列した。
  2. 「日本国内組立てによるF-35A一号機から改めて本事業のグローバルな性格が見えてくる」と新任のF-35事業責任者マット・ウィンター海軍中将が述べた。「最新鋭の組み立て施設で才能豊かでやる気に満ちた人材が働き、他にはないノウハウと才能で世界最高性能の多用途戦闘機が生まれている。F-35により各国との訓練、演習、軍同士の交流で安全保障上のつながりとともに、長い時間を経て形成してきた同盟各国とのつながりがあらためて強まる」
  3. 日本政府は2011年12月にF-35を航空自衛隊のF-4EJ改ファントム後継機に選定した。F-4は三菱重工がライセンス生産したが、F-35はライセンス生産方式をとらない。三菱重工はFACOでの機体組み立てを担当し、米政府監視のもとロッキード・マーティンの「技術支援」により生産する。
  4. 「日本産業界との長い関係の上に当社はMHIとF-35生産提携関係を続け日本防衛省を支援する所存だ」と式典でオーランド・カラヴァルホ(ロッキード・マーティン・エアロノーティクス執行副社長)が抱負を述べた。
  5. 日本が導入する予定のF-35は計42機で、ロッキード・マーティンは4機をフォートワース工場(テキサス)から引き渡しずみで、残る38機は日本国内で組立てる。
  6. 米国防省は名古屋FACOを北部アジア太平洋の地域内重整備修理改修(MROU)施設として米国のF-35に利用する。
  7. 日本がボーイングF-15イーグルや三菱F-2の後継機としてさらにF-35を導入する可能性もある。
  8. 日本は国産第五世代ステルス戦闘機を開発中で、航空優勢任務につける意向だが、新型機国産機の完成に先立ちF-35追加調達が実現する可能性も十分ある。
  9. 日本はロッキード・マーティンF-22ラブター購入を断られ国産ステルス戦闘機開発に乗り出した経緯がある。米側がラプター売却を拒否した根拠がオベイ改正案で米国にF-22輸出を一番近しい同盟国にも禁じ同機技術が流出することを防ぐのが同法の趣旨だ。F-22購入の道を断たれた日本は三菱X-2心神の開発に走り、同機がF-3戦闘機につながるとみられる。■
Dave Majumdar is the defense editor for The National Interest. You can follow him on Twitter: @Davemajumdar.
Image: Lockheed Martin.


中国急成長のからくりと近づいてきた破たん


借りたものは返す、数字はうそをつかない、という常識は中国では以下に踏み倒すか、都合の良い数字に置き換えるかと理解されているようです。 嘘はいつか破たんします。中国経済が嘘の塊であれば信用した世界が一番の被害者になります。中国経済が破たんしたとき軍事力を中国はどう使う(使わない)つもりなのでしょうか。解放軍も一種の企業体であることを忘れてはならず、国営企業の常と同様に巨額の借り入れがあってもおかしくありません。このままでは中国の夢は文字通り夢に終わりそうです。朝鮮、中国と日本は大変な国家に囲まれていますね。

Five-yuan note. Flickr/David Steadman

Why China's Rise Is Built on Debt (And the Bill Keeps Getting Bigger)

中国はどうやって借入れをもとに台頭できたのか(そして借入額はどんどん増えている)

May 25, 2017

遅きに失したが中国が27兆ドルの債務の山を崩そうとして金融市場に動揺が走っている。果たして中国はバブルが破裂する前に信用の急膨張を制御できるのか。
どれだけ債務が増えているのか
  1. 前回National Interestが中国の借金問題を報じた際は国内総生産GDPの260パーセントを超え、2008年の163パーセントから急増し、金融危機前の米英の債務合計増加を上回る勢いになっている。
  2. 中国の「シャドーバンキング」も急拡大し、金融商品が3.8兆億ドルと三年で三倍になる一方、企業部門の借り入れはGDP比156パーセントになり、7年で四倍になった。
  3. ムーディーズは今週に入り中国債権の格付けをひと刻み下げ、中国政府が目指す経済成長の持続には借入を増やす必要があると指摘した。
  4. この切り下げ前に公表された中国のGDPデータでは政府が相変わらず借り入れ前提のインフラ建設で経済成長を狙っていることが明らかになった。第一四半期の成長率は6.9パーセントと伝えられ、市場予想の6.8パーセントを上回ったが、ANZリサーチは「いつも通りの投資の筋書きだ」と論じた。
  5. 固定資産投資は建設、不動産ともに上昇したが、サービス部門等の第三次産業の成長は鈍化している。
  6. 過熱気味の住宅分野はさらに熱くなり、不動産投資は9パーセント超の増加、住宅投資は10パーセントを上回った。住宅ローンは8,000億元(1,160億ドル)増と最大の伸びを記録した。
  7. 社会投資の合計は経済の全般的信用枠の把握に使うが、年率4パーセント増7兆元となり、320パーセント超の成長をしたシャドーバンキングが助けた格好だ。
  8. 第一四半期だけで借金が4.2兆元増え、GDPの四分の一に相当するとANZリサーチが指摘している。
  9. 「重要な問題は投資先導モデルがこのまま維持できるのか、当局が信用枠拡大の抑制に苦労していることです」(ANZ銀行)
  10. 「中国トップ指導層が金融引き締めをもっと強力に進めるのか注視したい」と同行は4月17日調査報で述べていた。
  11. これに対して別の格付け会社フィッチレイティングスは今年の経済成長目標が6.5パーセントと控えめになのに対し信用枠はGDPを50-100パーセント上回る増加ぶりだと警句を鳴らしている。
  12. 「この信用枠拡大により今年の中国経済では借り入れがさらに増える。当局は金融リスクの拡大を認識しているのだが」と同社は研究レポートで述べている。

最大のリスクとは
  1. 4月後半になり北京政府はやっと金融部門の債務拡大リスクの懸念に対応を示した。習近平主席が会議を招集し「国家金融市場の安全確保策」を4月25日に検討した。これは上海株式市場が2017年最大の下げを記録した翌日のことである。
  2. 過剰借入れ、株式投機などすべての対策と並行して中国保険規制委員会の前委員長が解任され、国家統計局の局長が収賄疑惑で起訴された。
  3. その結果として株式市場が停滞し政府発行債の利回りが急上昇した。ベンチマークになる上海複合指数は4月11日の最高値から4パーセント急落し、10年物政府債の利回りは2015年4月以来最高水準を記録した。
  4. 政府は資金の流れを制御しようと規制を一層強化にする一方、公式交換レートは高く誘導されたのは「通貨市場にパニックが広がるのを防ぐため」とエコノミストのXia Leは述べている。
  5. 中国企業が売り出しを止めた企業債は今期だけで推定1,840億元にのぼるが、一方で3兆元の金利支払いが必要だ。債券利回りは上昇傾向にある。支払い不能を宣言した企業は3月31日以来4社で今後借り入れコストがさらなる上昇で債務不履行となる企業は増えるとみられる。
  6. フィナンシャルタイムズによればファンドマネージャーの三分の一が中国の信用引き締め策が遅くに失しており「今や市場で最大のテイルリスク」と見ている。2016年1月以来、ユーロ圏崩壊の可能性より高いリスクとして中国が認知されているとバンクオブアメリカ=リンチはまとめている。
  7. オックスフォード大チャイナセンター研究員のジョージ・マグナスは中国には五つの罠が待ち構えているという。資本、債務、人口、中間所得層および歴史だという。「中国国内の信用形成を見れば、時間の問題であり、おそらく二三年以内に資金回収の波がやってくるはずで、低成長になり元安が長期間続くでしょう」
  8. マグナスの意見ではシャドーバンキング部門が中国のアキレス腱で、今年秋の全国人民代表会議までに経済を正常にしようとする政策部門にとって障害だ。
  9. 「この部門の貸付は仕組み上国営企業や銀行の債務よりもっと緊急性が高い時間問題」とマグナスは見ており、「闇貸付の危機は貸し手側が制度からはじかれてその結果焦げ付いた貸付が金融制度全体に悪い影響を与えることですが、今から半年から2年以内に表面化するはずです」
  10. マグナスはGDP成長率が6.5パーセントを下回るのが政府の「テスト」となるとみている。「債務問題は平和的に解決できない」とフィナンシャルタイムズに語っている。
  11. ロイター調査では中国経済は今年の6.5パーセントが2018年には6.2パーセントになるとみている。昨年の6.7パーセントが過去26年間で最低だった。

一帯一路の損金処理は
  1. 政策部門は全人代の前に減速を防ごうと必死だ。全人代は習近平の権力基盤強化になるとみられる。習が自らの地位を固めるため打ち出した一帯一路構想Belt and Road Initiativeは借金を増やすだけかもしれない。
  2. 同構想に参加する各国向けの中国各銀行の貸付は2,840億ドル(2016年末)に上っており、最近開かれた一帯一路サミットで追加1,000億ドル枠の提供が約束された。
  3. それでもクレアモント・マッケンナ大のミンシン・ペイ教授はプロジェクト全体は中国さえも対応不能な巨大な債務の山に終わると警告している。
  4. その指摘ではラオス向け総延長260マイルの鉄道敷設の費用は60億ドルとなっているのに対し、東南アジア最下位の同国のGDPは120億ドルにすぎず、巨額貸付が押し付けられており、借り入れ側は返済が困難になる例だという。
  5. 「中国は債務国側に対して影響力が限定され今後一帯一路が不良債権化すれば回収はわずかしか期待できないでしょう。中国の納税者がツケを払わされます」
時間がない
  1. 短期的に中国政府の期待は金融部門取締まり強化で過剰貸し付けを制限し、不動産価格急落を防ぐことだろう。後者は歳入確保を土地販売に頼る地方政府や金融機関に打撃となる。
  2. 国際通貨基金から中国の国内銀行までさらに政治家も債務危機を警告しているが、時間はどんどん減っており、このままだと2008年以来最大の債務危機は回避できそうもない。暴落が一度始まれば、アジア全体並びに世界がすぐに痛みを感じるはずだ。■
Anthony Fensom, a Brisbane, Australia-based freelance writer and consultant with more than a decade of experience in Asia-Pacific financial/media industries. You can find him on Twitter: @a_d_fensom.
Image: Five-yuan note. Flickr/David Steadman

パリ航空ショー開幕近づく F-35Aデビュー等の話題



Aviation Week & Space Technology

Paris Air Show: A Showcase For Defense Competition

パリ航空ショーは防衛メーカーがしのぎを削る場になる
Defense companies vie for attention in a crowded market
防衛メーカーは競合の中で関心をどれだけ集められるか

May 24, 2017 Jen DiMascio, James Drew, Lara Seligman and Tony Osborne | Aviation Week & Space Technology

  1. F-35をショーでデビューさせるかでなかなか結論が出なかったことに今日の防衛装備市場を取り巻く現状が見える。派手に展示しても調達や世界各地で高まる競争が変わるわけではない。
  2. 今年のパリ航空ショーでの防衛部門は流動的だろう。国防予算は米国や欧州で増額傾向が始まっている。原油価格が上がらない中でも中東各国は装備調達の大盤振る舞いを続けている。だが世界で防衛産業基盤が強化される中、競争の激化を皆が感じている。
  3. 世界最大級の武器輸入国インドを見てほしい。過去五年はロシアが武器供給先トップで68%の需要を満たしていた。米国、イスラエルが残り21%を供給していた。だがインドは今や新規供給先として韓国、やスペインを加えている。また同国が進めるメイドインインディア構想で将来は低価格戦闘機、ミサイル、電子製品等の国産化をめざしている。
  4. 米産業界にとって各地で競争を意味する。「米製装備の品質は比類ないとはいえ、顧客は適正な内容で価格面で有利な製品を検討し、技術移転、納期、対応を吟味しています」と米航空宇宙産業連盟Aerospace Industries Association (AIA)の副会頭レミー・ネイサンは指摘。ドナルド・トランプ大統領により税制改革、インフラ投資促進、規制緩和、国家予算変更が提唱されているので米製装備も価格面で訴求力をつけられるとネイサンは述べる。
  5. この環境を念頭に各社はパリに集まる各国の防衛大臣48名に焦点を合わせる。公式代表団は300を数え、うち150が87か国の軍部代表だ。ショーの会長エメリック・ダルシモレによれば大統領就任したばかりのエマニュエル・マクロンが首相(6月18日投票予定)をともなって恒例の展示会詣でをするという。関係者は明らかにしないが別の国家元首もショーにやってくる。
F-35Aのパリデビュー
  1. 今回はロッキード・マーティンもF-35Aを初展示する。
  2. 3月にフランス航空宇宙産業連盟(GIFAS)関係者が訪米している。二年前にはフランス側は第五世代戦闘機がファンボロ―航空ショーでデビューし、F-35Bが空中ホバリングしてショーで強く印象を集めたことを念頭に、仏側はステルス戦闘機の展示決定が時間切れになることを恐れていた。結局ロッキード・マーティン社パイロットが米空軍所属F-35Aをアクロバット飛行させることになったが発表まで相当の時間がかかった。
  3. 今回の展示飛行ではロッキードは第五世代戦闘機の操縦性を公開し、F-35では第四世代機の推力と性能に勝てないとの見方を崩す一環にしたいはずだ。JSFに疑問がついたのは模擬空戦でF-16に勝てなかったとの2015年7月のブログ記事がきっかけだった。
  4. ロッキードは受注増で80百万ドルの大台を割る機体単価を実現しようとしているが新規発注国は少ない。第五世代戦闘機に長距離精密誘導兵器を搭載してロシア脅威に対抗する意向を表明したポーランドが注目される。
  5. ショー主催者側は今年は盛会になるとみており、シャレ―やホールは昨年10月で売り切れた。45カ国から出展企業団体2,300が集まる。展示機材は150機で毎日飛行展示を2時間程度行うと主催者は述べている。
各国の初展示機材
  1. 今回パリでデビューする他の機体には三菱航空機のMRJ、川崎P-1があり、ともにヨーロッパ大陸では初のお披露目となる。このうちP-1は英国のロイヤルインターナショナルエアタトゥーで2015年に登場している。エンブラエルはKC-390輸送機を持ち込む予定でこれも昨年のファンボロー航空ショーでデビュー済みだ。
  2. 今回はロシア軍用機の出展は望み薄だという。実施中の経済制裁のためだがスホイ・スーパージェットはおそらく出展されるという。
  3. ウクライナのアントノフはサウジアラビアの資金提供を受けたAn-132を展示しそうだ。サウジアラビア空軍が同機を運用する。
  4. トルコ航空宇宙産業(TAI)はターボプロップ練習機フルクスHurkusおよびT625ヘリコプターのモックアップを展示する。同社はBAEシステムズとTF-X戦闘機の共同開発で合意しており、同国のF-35調達が不透明になる可能性が出てきた。
  5. 世界規模で開発先が再編される兆しを一番よく示しているのが米空軍のめざすT-X練習機構想で米企業各社が海外提携先と組んでいる。空軍は350機を導入しT-38練習機の後継機としたいとするが、選定に残った企業は最終的に1,000機の需要を見込めるはずだ。今年末までに選定結果が発表される。
  6. このため競合各社がショーに姿を現すはずだ。ボーイング/SAABのT-X、ロッキード・マーティン/韓国航空宇宙産業のT-50、DRS/レオナルドのT-100の各機だ。TAIもシエラネヴァダ/TAIのフリーダム練習機モックアップを展示しそうだ。
  7. エアバスはA400M輸送機のヨーロッパ内売り込みで苦労しており、戦術性能の実現がまず必要だ。
  8. エアバスはX6大型ヘリコプターの開発見直し案を出してくるとみられる。同ヘリは前回2015年のパリ航空ショーで正式に開発開始を発表されていた。同機のコンセプトは2020年代初頭の初飛行をめざし、トラブル続きのH225ヘリコプターに代わるものとなる。フランス陸軍はタイガーHAD攻撃ヘリを展示するだろう。
  9. 当然ながらダッソーはラファール戦闘機を売り込みたいはずだ。昨年は同機に大きな都市となり、インドが36機、カタールが24機の購入を決めた。
  10. ボーイングも着々と準備中だ。海外販売の成功でF-15およびF-18戦闘機の生産は2020年代まで継続が決まった。これだけの期間があれば同時に両機種の高性能版の売り込みも可能となる。同時にチヌーク、アパッチ両ヘリコプターの耐用年数延長にも期待する。さらにサウジアラビアがP-8ポセイドン哨戒機導入に関心ありと突然発表し同社を元気づけた。
兵器・中小サプライヤー
  1. 兵器類も輸出で大きな要素だ。米製ミサイル等の販売はこの五年間で774%と急増して2016年は30億ドル規模になった。2011年は3.47億ドルだった。(デロイトの分析による)ミサイルで強いレイセオンは自社製品を展示するはずだ。
  2. そしてAIAのネイサン副会頭はサプライヤー企業にも配慮している。「こういった『不可欠な輸出企業』はサプライチェーンで輸出価値の56%を生んでいるにも関わらずその姿が認知されにくいのですが、装備の開発、製造、維持に重要な存在です。主要装備すべてに数千単位の部品やサブシステムがあり、中小企業がサプライチェーン内で活動することで成り立っています。輸出競争力促進は一次契約企業より小企業に大きな役割を認めるべきです」
強化された保安体制と飛行空域の制限
  1. 今年のパリ航空ショー主催側は保安措置も強化しており、フランス国内でこの2年間で発生した数々のテロ事件を意識している。セキュリティチェックを厳しくし、パリ北方のルブウルジェ空港をヨーロッパ最大の航空宇宙展示会場に変身させる。「トラック攻撃に対する備えも万全です」とダルシモレは述べており、さらにフランス空軍も無人機攻撃に備え会場付近の空域を防御する。
  2. 保安関係者は1,000名超となり、軍・警察も会期中の会場防御に備える。会期は6月19日から25日まで。
  3. 保安体制引き上げの背景にはパリで続いた襲撃事件以外にフランス各地での事件が影を落としており、歩行者86名の命を奪ったニースでの車両暴走事件は昨年7月の出来事だった。会場入場者は手荷物携帯品のX線検査を通る必要がある。
  4. ショーを取り仕切るギル・フルニエによれば飛行展示も難題だという。空域利用で制約が強くなり会場付近の住宅地への配慮がその原因だ。一般公開日にフランス空軍の曲技チームのパトルイユ・ドゥ・フランスが飛行するが、飛行時間が10分短縮、編隊飛行も制約を受ける。見栄えのよい曲技飛行には広い空域が必要だが、今回は利用できないという。■

2017年6月5日月曜日

つまらない今年のシャングリラ対話


今回のシャングリラ対話は時事問題に傾き、スケールが小さくなっている気がしますがいかがでしょう。中国も参加しているようですが、西側の意見に反論もあったのでは。本来の開かれたフォーラムという位置づけが現実問題の前に見えなくなっているようですね。

Global allies call for continued US patrols in South China Sea

同盟各国が南シナ海における米パトロールの継続を求めている
By: Mike Yeo, June 4, 2017 (Photo Credit: Roslan Rahman/AFP via Getty Images)

SINGAPORE — 恒例のシャングリラ対話、アジア安全保障サミットの講演者から米海軍による南シナ海での航行の自由作戦継続を求める声が相次いだ中、各国参加者の心中では南シナ海の対立問題で懸念が広がっている。
  1. 政策スピーチではオーストラリア、日本の国防トップがそれぞれ米軍が国際法により認められた空間で今後も作戦を継続するとの米国防長官ジム・マティスの発言を支持すると述べた。
  2. 主催は国際戦略研究所(IISS)(Asia)で政府、非政府両部門の国防安全保障専門家が世界各地から集まり、アジア地域内で最大のサミットとなった。
  3. マティス長官は米軍が「国際法が許す場面すべてで飛行、航行、作戦を今後も継続し、決意のともに南シナ海以遠での作戦プレゼンスを示していく」と述べ、「該当地域内の作戦は共有する権益とともに国際法が認める自由を今後も守っていこうとうするわれわれの決意であり意欲のあらわれだ」とした。
  4. これに同調したのが日本の防衛相稲田朋美で航行の自由作戦を行う米海軍への支持をあらためて表明し、「開かれた自由で平和な国際海上航行の秩序を守ろうとする米国の決意のあらわれ」と評した。
  5. 稲田大臣はスピーチで東シナ海、南シナ海双方で領有権をめぐる緊張が続くことに光を当てたが、国名はあげず、「ある国の公船が定期的に日本領海を侵しており」一方で「南シナ海に置いて軍事目的に使うべく拠点整備を続けている」と述べた。
  6. 稲田大臣の次に登壇したオーストラリア国防大臣マリーズ・ペインからオーストラリアも「権利行使を認める権利を強く支持する」と述べ、オーストラリア軍艦船航空機も作戦行動を「過去数十年同様に南シナ海で続けて航行とともに上空飛行の自由の権利を一貫して守る」と述べた。
  7. オーストラリア空軍はゲイトウェイ作戦としてロッキード・マーティンAP-3Cオライオン一機をマレーシアのバターワースに年間4回から8回派遣し二週間間隔で上空飛行を行っている。
  8. オーストラリア国防省によれば上空飛行はオーストラリアによる東南アジア域内安全保障と安定性確保策の一環とし、海上警戒飛行は北インド洋と南シナ海双方で行っているという。
  9. マティス長官と稲田大臣からは昨年下された国際法廷によるフィリピン提訴の中国の南シナ海活動に法的な根拠がないとの結果内容を強調し、関係該当国は法の判断を守るよう求め、紛糾の解決にはこれを出発点とするべきと主張した。ただし中国は司法手続きに参加を拒否し、裁定内容は無視すると公言している。
  10. パトロール航行の必要を重視するのは閣僚級参加者だけではない。IISS-Asiaのシャングリラ対話上級専門職ウィリアム・チュンは米国が「航行の自由作戦の執行を続ける必要がある」と報道陣に指摘し、パトロール航行が7か月間実施されていなかったことに注意を喚起した。駆逐艦USSデューイが5月24日にミスチーフ礁から12カイリ内を航行して再び実施されたがトランプ政権下で初の航行の自由作戦パトロールになった。■


中国の核脅威の拡大も要注意であるのを忘れていないか



米ロはこれまで苦労して戦略核兵器の抑制を目指し、今や相当の水準まで進んでいるのですが、中国は全く関係ない顔をして核兵器を大幅に拡張する方向に進んでいるわけです。北朝鮮ではあれだけ騒いでおきながら日本を既に照準に収めている中国の核戦力には声を上げないメディアの姿勢もいかがかと思います。現在はまだ小規模なのがこれから拡大するという今だからこそ早く認識すべきと思うのですが。南シナ海、尖閣といい中国が既存秩序を壊そうとする勢力であるのは歴史的に見ても明らかで毅然とした対応が西側に求められています。

 


The Big China Nuclear Threat No One Is Talking About

だれも口にしていない大規模な中国の核脅威


June 2, 2017

  1. 中国の軍事政策が大きく変化している。核実験に成功した1964年以来、中国は比較的小規模の核戦力を維持し、敵の人口密集地を標的にしてきた。
  2. 通常兵器では米国のような一等装備を備えた敵に「戦い勝利する」目標で近代化を図ってきたが中国の核兵力は推定264発と米ロ両国が新START条約で保有する各1,550発よりはるかに小規模だ。
  3. 小規模核戦力は中国独自の抑止理論に基づくものであり、核の先制使用はしないとの考え方が背景にある。だが技術開発により中国は核兵力増強に向かいそうだ。
  4. まず核運用の三本柱が中国で初めて確立した。核兵器保有国ながら中国はこれまで単弾頭の陸上発射弾道ミサイルに依存してきた。だだし晋級(094型)原子力弾道ミサイル潜水艦(SSBN)で抑止力を海中に展開できるようになった。中国は晋級潜水艦4隻を就役中で、少なくとももう一隻を建造する。晋級SSBNはミサイル発射管12本にJL-2潜水艦発射式弾道ミサイル(SLBM)を搭載する。射程は7,500キロだ。一部報道ではJL-2は複数独立再突入弾頭(MIRV)を2個から8個搭載するとしており、晋級一隻で核弾頭480個を搭載することになる。
  5. さらにペンタゴンによれば次世代SSBN096型の配備が2020年代にはじまりJL-3SLBMを搭載するという。報道では096型は発射管24本を搭載するとしている。中国が096型を5隻建造しJL-3がすべて単弾頭型だと想定すれば核弾頭120発が必要となり、中国の推定保有核弾頭の半分に相当する。これに094型の核弾頭も加えると中国の海洋核抑止力は核戦力の75パーセントに上る。
  6. だが陸上配備弾道ミサイルにも核弾頭は必要だ。中国は陸上配備弾道ミサイルのMIRV化を進めている。今年初めの報道でDF-5CミサイルをMIRV弾頭でテストしている。DF-5Cの保有数は不明だが、ペンタゴンはDF-5A、DF-5Bミサイル合わせて20発と推定している。このうち半数がDF-5Bと仮定し、各ミサイルが弾頭3個を装着すれば計130発で、中国核戦力の半数相当となる。さらに新型ICBMのDF-41開発が進行中で弾頭数は10発に増える。この新型ミサイルが10本製造されすべて10個弾頭を搭載すればさらに100発の弾頭になる。既存のDF-5BやDF-5Cとあわせると230発、つまり87パーセント相当になる。
  7. たしかに数字には一部誇張がある。中国がミサイルを大量製造しないかもしれないし、ミサイルすべてをMIRV化しないかもしれない。また弾頭の一部はおとりの可能性が高い。それでも技術の進展で中国は今後大幅に核弾頭数を増やしそうだ。
  8. 核分裂物質の高度濃縮ウラニウムとプルトニウムで核爆弾の中心部を形成するが増産は容易である。中国には高濃度ウラニウムが14-18トン、兵器転用可能プルトニウムが1.2-2.3トンあると推定される。これだけで核爆弾750発から1,600発が製造できる。もっと多いかもしれない。すべては爆弾の設計次第だ。また民生部門の原子力利用で核分裂物質はさらに入手できる。中国の核産業界で知見が高いHui Zhangによれば2020年までに年間に分離作業量(SWU)3百万の濃縮能力が実現するとしており、年間7百個の爆弾に相当する高濃度ウラニウムが核エネルギーを利用しながら入手できることになる。
  9. とはいえ中国が核戦力規模を一夜にして拡大することではない。歴史通りなら中国は慎重かつ順序を追って核戦力を増強するはずだ。ただ中国の核戦力が今後拡大するのは確実で米国の核政策、核兵器管理戦略はこの点を考慮せざるを得なくなるはずだ。

Zachary Keck is the former managing editor of the National Interest. You can find him on Twitter: @ZacharyKeck.
Image: Soldiers of the People’s Liberation Army of China at Moscow’s 2015 Victory Day parade. Kremlin.ru

2017年6月4日日曜日

もし戦わば(15) ロシア、中国が同時に開戦してきたら米国に勝ち目はあるのか



要は世界秩序を破壊したいと考える勢力が一方にあり、残りの世界は現状維持が一番都合委がよいと考えているのです。ロシア、中国とも実力を把握せず空威張りしており、あるいは米国の没落を真剣に信じ時期が来るのを虎視眈々と待っているのでしょう。エッセイでは太平洋地区の主要同盟国たる日本に対する不信感が見られますが、南シナ海というより太平洋地区での繁栄の条件を守るため日本が何もしないはずはなく、むしろ時の政権によりますが、積極的に米国と共同戦線を張るはずなので、論調には違和感があります。読者の皆さんはどう感じますか。

Wikimedia Commons

Could U.S. Win War Against Russia and China? 

米国はロシア、中国と同時に戦えるのか

 
ROBERT FARLEY
中国とロシアが共同して太平洋とヨーロッパで同時に攻勢をしかけてきたらどうなるか。
  1. 米国はすでに「二正面戦」構想として同時に二大勢力を相手にした戦闘は断念している。イランやイラクと戦いながら北朝鮮を封じ込めるべく国防総省の調達部門は補給体制や基地設置戦略を冷戦後の世界に展開してきたが、それはソ連との対決がもはやあり得ないと判断したためだった。米国の構想放棄には国際社会の仕組みが変わり中国の台頭やテロリストのネットワークが巧妙に世界に広がったことも一因だ。
  2. だが米国が一度に二つの戦争をたたく必要が生まれたら、しかも相手が北朝鮮やイラン以上の敵の場合はどうなるか。中国とロシアが相互調整して同時に太平洋と欧州で戦火を開いたらどうなるだろうか。
政治調整Political Coordination
  1. 北京とモスクワが一連の危機状態を巧妙に作り出し、米軍の反応を別々に引き出す作戦に出たらどうなるか。可能性が高いのは両国の一方が都合よくすでに発生ずみの危機状態を拡大し地域内で利益を求める状況だ。例としてモスクワがバルト海諸国に手を伸ばす状態が考えられる。米国が南シナ海で足元を奪われていれば好機になる。
  2. いずれにせよ、モスクワあるいは北京が手を下せば開戦となるだろう。米国は各地での現状維持で利益を得ているのであり、外交手段、経済手段で政治上の目的の達成を目指すことが得策である。米国が戦争につながる状況を作り出せば、ロシアあるいは中国が引き金を引くだろう。
柔軟性Flexibility
  1. 良い面は欧州や太平洋の戦闘で必要になる条件が別になっていることだ。第二次大戦時と同様に米陸軍がヨーロッパを守り、海軍は太平洋に集中するだろう。米空軍は両戦線で支援にまわるはずだ。
  2. ロシアには北大西洋でNATO軍と戦う実力がない。つまり米国とNATO同盟国がうまく装備を配分すればロシアの海上交通路を遮断でき(同時にロシア海軍の封じ込めも)、その間に米海軍は太平洋に専念できる。戦闘状態がどれだけ長引くかによりまたどこまで事前警告があるかによるが、米国は米陸軍装備の相当量をヨーロッパに輸送し本格戦闘に投入できるだろう。
  3. 米空母、潜水艦、水上艦は太平洋やインド洋に集中配備し、中国のA2/AD接近阻止領域拒否体制に対抗するほか、中国の通商路を遮断する。ステルス爆撃機など長距離航空機材等は両戦線で必要に応じ投入する。
  4. 米軍はいずれかの戦線で決定的な勝利を早く達成するプレッシャーを受けるだろう。このため米国は航空宇宙ならびにサイバーに注力し戦略的かつ政治的に意味のある勝利をどちらか一方でまず確保してから残る戦線に注力するはずだ。在欧米軍の戦力を見れば米軍は太平洋方面をまず優先するのではないか。
同盟関係の実態Alliance Structure
  1. 太平洋地区での米国の同盟構造は欧州とは大きく異なる。現在、欧州同盟国の防衛努力不足が懸念されているが、米国がNATO同盟関係を犠牲にしてまでロシアに戦いを挑む理由はない。米国が戦火を開き、ドイツ、フランス、ポーランド、英国が加わるはずだ。米国以外のNATO加盟国だけでもロシアに対して相当の優位性を発揮できる。ロシアがバルト海諸国を占拠してもNATO空軍力により相当の代償を払うはずで、占拠も長く保持できないだろう。米海軍と米空軍が支援にまわり協調作戦をすればロシアを撃退する優位性がNATO加盟各国に生まれる。米核戦力もロシアに戦術・戦略核兵器を使わせない保険となる。
  2. だが太平洋では米国の状況はもっと困難だ。日本やインドも南シナ海に権益を有しても、だからと言って参戦の保証にはならない。(中立を宣言するのではないか) 有事の同盟関係は紛争の固有条件により左右される。フィリピン、ヴィエトナム、韓国、日本または台湾が中国の標的になる。残る各国は米国の圧力があっても傍観を決め込むかもしれない。そうなると米国は西太平洋制圧を自国だけで進める状況に追い込まれるかもしれない。
結語Parting Shots
  1. 米国には大規模戦闘を二つ同時に戦い勝利を収める力があるが、最低でもロシアないし中国を勝てないと達観させられるだろう。米国がこの目的を達成できるのはあくまでも世界最強の軍を維持しているからであり、極めて強力な軍事同盟を主導しているからに他ならない。さらにロシア、中国はともに独自の軍事上の問題に直面しているため、米国は軍事力の一部をどちらかに集中させ、残りの軍事力で別の相手に対応できる。
  2. ただし、この状況が永遠に続く保証はない。米国も優位性を無期限に維持できず、長期的にはどこまで関与すべきかを慎重に検討せざるを得なくなる。同時に国際秩序を作ってきたのは米国であり、各地の有力国の繁栄がこの秩序で生まれているのだ。したがって当面は各国の支援を期待してよい。■

Robert Farley, a frequent contributor to the National Interest, is author of The Battleship Book. He serves as a senior lecturer at the Patterson School of Diplomacy and International Commerce at the University of Kentucky. His work includes military doctrine, national security and maritime affairs. He blogs at Lawyers, Guns and Money , Information Dissemination  and the Diplomat .
This appeared last summer and is being reposted due to reader interest.


検討が始まったエアフォースツー、緊急時国家指導部司令機の後継機種




A C-32 aircraft taxis at Yokota Air Base, Japan, in 2011.

日本では757が一機も導入されず知名度が低いのですが使い勝手がいい機材なのでしょうね。トランプも選挙運動中に専用機としていました。しかしさすがに老朽化が目立ってきたのでしょう。今から導入するのなら787が一番いいのでは。容積を考えれば777-Xですかね。エアバス機を採用することはあり得ないでしょう。日本政府は777を発注しており、さらにMRJを運用するそうですから、MRJがC-32に相当するのでしょうね。(航続距離が全く違いますが。)

Pentagon Wants to Get Started on New Air Force Two and Doomsday Planes 

ペンタゴンが新型エアフォースツー、緊急時用対応機材の後継機検討に入った


  •  BY MARCUS WEISGERBER

老朽化してきたC-32とE-4Bの後継機は同様の機材か、少なくとも同様の装備を搭載する機材になる

  1. トランプ大統領の批判が新型エアフォースワン購入計画に向けられたがペンタゴンがエアフォースツーとして供用中のボーイング旅客機4機の後継機選定を静かに始めることは許容されそうだ。
  2. トランプ政権初の予算要求案では6百万ドルが事業推進室立ち上げならびに初期検討に計上されており、米空軍のC-32A後継機の検討に入る。C-32はボーイング757を改修した機材で通常は副大統領はじめ主要閣僚・議会関係者を乗せ飛行している。
  3. 同機は大統領が滑走路の関係でVC-25A(747改修機でエアフォースワンのコールサインを用いる)が使えない場所に飛ぶ際にも使われている。
  4. 「C-32A後継機は現行のC-32AをVC-25A並びに次期エアフォースワン代替機として使う前提で現状の性能ギャップを埋める優秀な機材とする必要があります」と空軍は予算要求案で述べている。「C-32A後継機は航続距離、乗客数、国家指導層向け通信能力の面に加え執務環境面でも現状より優れている必要があります」
  5. ペンタゴンは新エアフォースツーを次期エアフォースワンならびに別に進めるE-4B通称「世界最後の日に飛ぶ機体」(大統領、国防長官が核戦争時に使用する飛行司令部)とも親和性を高めたいとする。国防長官はE-4Bを外遊時に使うことが多い。
  6. 同時にトランプ政権予算案では7.8百万ドルでE-4Bと海軍のE-6マーキュリー(これも核戦争時の指揮命令機能を果たす機材)の機能統合の検討を開始し、「統一仕様機材」を目指す。新型機は残存可能空中作戦センターSurvivable Airborne Operations Center機と呼れる。
  7. E-4は1980年から、E-6は1990年代初めから飛んでいる。空軍はまだ機種を指定していないが、「民間機派生型」と呼んでおり、既存機種を原型にする。C-32と一番近いのがボーイング767で空軍は同機を元に新型空中給油機の導入を進めようとしている。757よりわずかに全長が大きい767はワイドボディ機で搭載機器、乗客数が増える。
  8. C-32は整備面でも負担になってきた。2014年には当時の国務長官ジョン・ケリーの太平洋歴訪の最後にハワイで故障した。二か月後にもウィーンで故障している。二回とも長官は民間機での帰国を迫られた。国務長官専用機は2014年に4回故障している。
  9. ボーイングはC-32を空軍に1998年に全4機納入している。757最終号機は2005年4月に上海航空に引き渡され生産終了している。現在同型を運用するエアラインは少なくなり、部品入手が毎年困難になっている。米空軍は2016年3月にボーイングに319百万ドル契約を交付してC-32全機のとC-40(737の軍用仕様)の大修理を2023年までに完了するよう発注している。
  10. 空軍の運用する各機にはきれいな上部白、下部青の塗装以外に衛星通信他ハイテク機器が搭載されている。機内は隔壁で分けられ、前方から乗員の作業部署、長椅子と執務机を備えた小部屋が真ん中に、スタッフの作業部が続き、最後部にスタッフ乗員向けの椅子席が続く。快適とはいえ、贅沢さはなく、新型民間エアライナーの完全フラットシートやプライベート空間とは大きく異なる。■