2017年6月15日木曜日

★中国がTHAADの韓国配備に反対する本当の理由



筆者は釜山大学の米人教授だそうですが、なかなか本質をとらえた論評をしていると感心せざるを得ません。問題は同じ論調が韓国の皆さんから聞こえてこないことです。「空気を読む」のと「感情」を優先するあまり正論・異論は韓国では声に出しにくいのでしょうか。韓国の将来が心配です。

 

 

South Korea’s Gen. Sun Jin Lee visits Guam’s THAAD site. DVIDSHUB/Public domain

 

The Real Reason China Wants South Korea to Ditch THAAD

THAAD撤去を韓国に求める中国の真の理由は何か
The U.S. missile system has fallen victim to South Korea’s tough position between Beijing and Washington. 米中のはざまで苦悩する韓国で米ミサイル防衛装備が犠牲になっている

June 13, 2017

韓国の新大統領文在寅が運用先送りを宣言した米ミサイル防衛装備は米軍が長年にわたり韓国に導入を図ってきた高高度ミサイル防衛装備だ。韓国政府は中国を挑発したくないため消極姿勢になり、米韓双方で合意ずみのトラック1、1.5、2内容を無視した格好だ。朴槿恵前政権がTHAAD最終段階高高度広域防衛装備の導入を2016年に入り決定し、一部導入済みだ。

中国とTHAAD

これに対し中国の反応は韓国向け経済金融措置として即座に現れた。韓国最大の貿易相手先が中国であり、この措置で国内経済に景気後退を生んだ。左翼政治家はTHAADは不要と言い始めた。北朝鮮のミサイル装備に対し過剰装備であるが、北朝鮮の韓国攻撃阻止には役立たないというのが理由だ。また北朝鮮と言えども同じ民族であり韓国を核攻撃をするはずがないとの主張だ。
 左寄りの文が大統領に就任するや配備を停止または遅延させる力が出てきた。文は配備を阻止すべく二方面で策を講じている。立法面の承認手続きと環境アセスメントだ。ただしこの作戦には反対意見が広く生まれている。民主国家として最高指導官には国防事項で幅広い裁量権が与えられている。朴大統領はTHAAD配備で議会承認を得ていないが議会承認を求める前例もない。さらに信じがたいのは環境を理由にした反対論だ。大統領の言う通りなら米側操作員や建設業者は危険な毒性物質に長年さらされていることになる。
 こうした反対論は保守派メディアが言うように中国の機嫌をおもんばかった戦術にすぎない。文は時間稼ぎをしている。文の得票率は41パーセントにすぎずTHAADを追い出せば中国に屈したとメディアからの非難は必至だ。だが文のジレンマは米中両国の間で韓国の未来を決する大戦略をお座なりにすることだ。米中のどちらを選ぶのかゼロサムの選択ではないはずだ。

What THAADでできること、できないこと

THAADへの中国の反対論は技術面とは別のところにある。THAADは中国の対米抑止力を侵害するものではない。THAAD迎撃ロケットの射程は長くない。またTHAADで中国の監視につながるISR情報収集監視偵察能力を新たに得るわけではない。米国は優秀な衛星群で中国の動向は監視中で中国のミサイル発射も迅速に探知可能だ。
 THAADのXバンドレーダーが話題になっているが、中国国内の探知用ではない。IバンドとちがいXバンドは360度回転しないが中国は想像力をたくましくしているようだ。さらに方向は北を向いており、北朝鮮監視用だ。
  中国(及びロシア)の反対根拠は中国北東部(ロシア極東部)が丸見えになるというものでもっともらしく聞こえるが正しくない。地球の湾曲のためXバンド信号も数百マイル離れれば有効でなくなり、北朝鮮国内の監視範囲内でさえも限定される。名称が示す通りTHAADは防衛装備だ。飛来するミサイルの迎撃が目的であり、中国ないしロシアが韓国や日本の都市を狙わない限り、両国に何の脅威にもならない。実は中国、ロシアもこの点は理解している。中国は朴大統領が昨年決定するまで技術的な懸念を示すべく長い時間があったはずだ。だがその機会をすべて無駄にしている。つまり政治的な動機を意味し、文が見え見えの虚構の言い訳で配備を遅らせようとするのもその一環だ。

選択肢

米中間で厳しい立場にある韓国でTHAADが犠牲になっている。中国の台頭で近隣各国には圧力がかかっている。北京は技術用語をちりばめたいいわけで圧力を欺瞞している。THAADで中国が丸裸になる、韓国製品に突如として衛生安全検査を実施するなどはあからさまなごまかしだ。しかも北京はそういう欺瞞を意図的に見せながら韓国エリート層に手袋の下の鉄拳を感じさせているのだ。
 北京が反対しているのは米韓同盟の深化であり、THAADはその象徴に過ぎない。THAADの技術面だけに目を取られると中国の策略が見えにくいが、THAADの本質を理解できるものには北京の反論がいかにも底の浅いことがわかり、真のメッセージが目に入るはずだ。つまり韓国はこれ以上の軍事関係を米国と進めるべきではない。
 ここに選択の分かれ目が見える。中国は米国に並ぶ勢力になりつつある。両国の格差が減少すると中国からの圧力が近隣国に増える。米中両国に受けのよい選択をめざせば韓国の能力は衰退する。THAADに見られる文政権の意思決定は配備を巡るメリーゴーラウンドの様相となるはずで、しかもこれで最後ではない。今回同様の騒動は韓国外交のお約束となりそうだ。
Robert Kelly is an associate professor of international relations in the Department of Political Science at Pusan National University. More of his writing can be found at his website. He tweets at @Robert_E_Kelly.
Image: South Korea’s Gen. Sun Jin Lee visits Guam’s THAAD site. DVIDSHUB/Public domain


B-52エンジン換装の検討状況、選択肢はすべて検討すると米空軍

U.S. Air Force Airmen from 96th Expeditionary Bomber Squadron execute air operations in support of Operation Inherent Resolve against the Islamic State on Feb. 13, 2017. The Air Force has set aside $10 million in its fiscal 2018 budget request for risk-reduction efforts in support of a potential future B-52 bomber re-engining program. (U.S. Air Force photo/Jordan Castelan)
米空軍第96遠征爆撃飛行隊所属のB-52が不朽の決意作戦でイスラム国を相手に作戦中。2017年2月13日撮影。
(U.S. Air Force photo/Jordan Castelan)
以前からお伝えしているB-52エンジン換装の動きですが、来年度予算に検討用予算が付く見込みで、米議会も必要性を認め高い優先順位をつけているようですので実現に向かっていくようです。ただしその動きは意外にゆっくりしているようですね。

Air Force Eyes Replacing B-52 Engines

B-52エンジン換装の検討を進める米空軍

DefensetechPOSTED BY: ORIANA PAWLYK JUNE 5, 2017

  1. 米空軍が2018年度予算要求で10百万ドルをB-52エンジン換装に備えリスク低減活動用に計上している。
  2. 承認されれば供用期間が60年を超えたB-52ストラトフォートレス爆撃機で大きな一歩となる。
  3. また予算案では227百万ドル超をB-52改修に向けると空軍報道官ローラ・マクアンドリュースがMilitary.comに伝えてきた。
  4. 総計13.4億ドルを2018年度から2022年度にかけ支出する要求でレーダー近代化、戦闘ネットワーク通信技術の導入、機体内兵装庫の改修、戦術データリンク統合が内容とマクアンドリュースが説明。
  5. このうち、兵装庫改修はIWBUと呼ばれ、「GPS誘導方式の共用直接攻撃弾搭載量がほぼ二倍になる」と第96爆撃飛行隊で兵装システム教官を務めるケニー大尉が説明している。保安上の理由で本人の姓は伏せた。「外部搭載をなくせるので抗力が減り、航続距離が延びる」
  6. B-52を2040年代まで供用したいとする空軍に対し議会は装備近代化の優先順位を高く認めている。エンジン換装で燃料消費で改善効果が期待される。
  7. 「エンジン換装で整備時間は95パーセント減り、大修理は事実上不要となり、燃料消費は30パーセント減ります」とマデレイン・Z・ボーダロ下院議員(グアム)が下院軍事委員会シーパワー兵力投射小委員会で5月25日に説明している。
  8. 「空軍にはB-52のエンジン換装で将来のコスト増加を回避し作戦効果を実現する企画があるのでしょうか」と同議員が発言。
  9. 公聴会には国防長官付け空軍副代表のアーノルド・W・バンチ中将、空軍参謀次長ジェリー・D・ハリス中将、空軍参謀次官スコット・A・ヴァンダーハム少将が出席。
  10. 「現行のB-52エンジンが供用期間中に寿命が来ることが分かっています。供用期間を延長するか、新エンジンに切り替えるか決めねばなりません」(バンチ中将)「選択肢すべてを検討中です。18年度に若干の予算を確保し、初期分析を選択肢に試したい」とバンチ中将は10百万ドルのリスク低減策に言及した。
  11. バンチからはエンジン換装は燃料消費の改善だけが目的でなく、給油機の活動を減らし、作戦執行の簡素化とともに人員投入量の削減も目指すと説明し、「整備要員を減らしながら作戦効率が引き上げられます」
  12. B-52は空軍グローバルストライク司令部の下で砂漠の嵐作戦やイラクの自由作戦さらに最近はISIS相手の戦闘に投入されてきた。
  13. 太平洋方面に10年近く展開していたが、昨年はB-1Bランサーがかわりに投入され、同地区での爆撃機継続プレゼンスを維持した。
  14. 直近ではRAFフェアフォード基地に先週配備されており、まもなく開始されるヨーロッパ演習に参加すると空軍が発表している。■



★★フィリピン南部でISIS作戦に活躍中の機材は何とOV-10ブロンコ!



日本で言えば九州の一都市が非国家勢力に占拠されたままといったところなのでフィリピンも大変です。シリアやイラクが落ち着いても周辺国や遠隔地に過激思想集団が拡散するのでは手に負えません。そうなると軽攻撃機やヘリコプターの低価格機の活躍の余地が増えますね。しかしOV-10はもともとベトナム戦用に採用された機体ですが、50年たってもほぼ原形のまま使えるとはよほど頑丈に作ってあるのでしょうね。 



PAF

 

The OV-10 Bronco Is Wailing On ISIS Yet Again, This Time In The Philippines

OV-10ブロンコはフィリピンでISIS攻撃に健在

Over 50 years since its first flight, the OV-10 is proving to the world once again just how relevant light air support aircraft can be.

初飛行から50年のOV-10が軽支援機の意義を証明中

 BY TYLER ROGOWAYJUNE 11, 2017

  1. 南部フィリピンのマラウィMarawi市がマウテMaute、アブサヤフAbu Sayyafの戦闘部隊に5月23日以来占拠されたままだ。両勢力はイスラム国と直接つながっている。フィリピン国軍は過激派排除をめざし、反抗作戦を実施している。フィリピン空軍の主力機はなんとOV-10ブロンコだ。
  2. 過激派戦闘集団は同地域の占拠を狙い、念入りに作戦をねっただけに排除作戦は極めて困難だ。市内各所に弾薬物資が蓄えられ、トンネルが掘られ戦闘員が魔法のように出現しては消えている。人間の盾も広く使われ、フィリピン海兵隊、特殊部隊の隊員は住宅一戸ずつから市街地の奪回を迫られ重大な損害も受けている。
PAF
PAFのOV-10Mブロンコ

  1. これまで少なくとも戦闘員138名とフィリピン国軍兵士58名が戦死している。一般市民21名が加わるが実態はもっと多い可能性がある。戒厳令で住処を追われた市民は数十万名におよぶ。
  2. 戦闘員集団が人口集中地区を占拠していること、フィリピン空軍(PAF)に精密誘導弾の在庫が少ないことから同国に残る8機のOV-10Mブロンコ(ほとんど改修を受けていない)が全力を発揮し近接攻撃と通常爆弾を可能な限り正確に市内に投下している。ウェブ上ではブロンコが同市で攻撃を加えるビデオが見られ、事態は緊迫しており、旧式近接航空支援機の出撃回数が明らかに増えている。
NOEL CELIS/AFP/GETTY IMAGES

マラウィ上空で汎用爆弾を投下するブロンコ
  1. 実はブロンコがISIS勢力攻撃に投入されるのは今回が初めてではない。相当の改修を受けたOV-10が二機イラクに派遣され、特殊部隊を助けながらイスラム国戦闘員を掃討した。ブロンコを操縦したのは米海軍の訓練経験豊かなパイロットで同機を「人狩り」機に変え、レーザー誘導ロケット弾を狙撃手よろしく発射していた。同機は驚くほど信頼性が高く、運用も簡単で前線近くから発進し、厳しい状況でも敵を執拗に追い詰めた。
  2. PAF所属のOV-10にはイラクで活躍した機体同様のセンサーや通信機器は見当たらないが、射撃は正確でGBU-12レーザー誘導爆弾も地上にレーザー照射があれば運用できる。
  3. OV-10以外にフィリピン空軍は持てる装備を全部動員して作戦に投入している。AW109Eヘリコプターは機銃とロケット弾を装着し攻撃監視活動にあたる。新規取得したFA-50PH軽攻撃機も攻撃任務に早速投入された。
  4. 自国民が暮らす場所に非誘導式兵器を投下するのは高性能機でも相当に高いリスクだ。友軍を攻撃することもある。5月31日には自国部隊10名が死亡し7名が負傷している。それでもフィリピン空軍には同市解放のため攻勢を続ける必要がある。
AP
航空作戦にAW109E、米海軍P-3CやSF260も投入されているが、攻撃の主役はブロンコだ。

  1. ここに米軍も加わっており、P-3Cが同市上空を低空飛行する姿が目撃されている。オライオンはおそらく電子光学装備を搭載し、赤外線やカラービデオ装備も使い上空から監視しながら目標情報を配信しているのだろう。フィリピン軍のレステイトゥト・パディラ将軍は「当方には有効な監視偵察装備がないので米軍に援助を求めた。これは非戦闘支援である」と述べている。
  2. フィリピン空軍の機材は大部分が支援機や旧式対ゲリラ戦機材で今日の基準から見れば時代遅れで初歩的に見える。市街地での軍事行動military operations in urban terrain (MOUT)では電子光学センサーが有効に使えるのが同国機材にはほとんど見当たらない装備だ。そのためP-3Cが一機でも戦場上空を飛べばフィリピン軍の状況把握が相当程度に進む。
  3. それでも三週間にわたり米軍が関与していることは物議をかもす発言で知られる大統領ロドリゴ・デュテルテでさえ驚いたようで支援を「アメリカに一度も接触していない」と述べている。また「到着するまで知らなかった」と述べ、現地に米軍の「地上部隊」はいないと述べているが、各種報道から米特殊部隊がマラウィに展開中なのは事実だ。任務の一部でRQ-20ピューマ無人機を運用しているようで同市上空を盛んに飛んでいる。
AP
マラウィ上空で500ポンドMk82汎用爆弾二発を投下するPAF所属のブロンコ

  1. マラウィでのIS戦闘員との戦闘の進展は今後もお伝えする。その中でOV-10が空から戦闘員を攻撃し続けるのは確実で旧式ながらまだ現役の同機を見ると軽攻撃機が従来よりも重要な存在になっているのがわかる。
  2. 追記 やはり米特殊部隊が掃討作戦でRQ-20により空中偵察を提供して支援していた。
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RQ-20ピューマを操作しフィリピン国軍を支援する米特殊部隊隊員の姿が
ソーシャルメディアで見られた。
  1. また噂ではフィリピンがA-29スーパートゥカーノ6機を受領し、ブロンコと交代するという。同機調達案はここ数年現れては消える状態だったが、今やトゥカーノがAT-6カヨーテを抑えて確実のようだ。選定結果の発表はまだないが、ブロンコ後継機の導入は再度先送りになりそうだ。A-29は米空軍が今夏進める軽航空支援機競合でも有力候補だ。■
Contact the author: Tyler@thedrive.com



2017年6月14日水曜日

中国が開発した高高度ソーラー無人機は米空母攻撃に効果を上げるのか



China Militaryに掲載された写真。太陽光動力無人機CH-T4のがテスト飛行。高度20から30キロに滞空し空中早期警戒偵察任務、災害監視、気象観測、通信中継用途に投入される。5月24日撮影. (Xinhua)

 

衛星より手軽に運用できる長時間滞空無人機の動力が太陽光になるのは論理的必然でしょう。夜間はバッテリーを使うためその分ペイロードも減ります。ただし、機体が軽量化されていると言えどもペイロードが圧倒的に小さいためISR機材も抜本的に小型化する必要があり、既存のISR機材同様の性能は望めないのでは。(少なくとも当面は) ただし電力では制約がありませんね。当面は中国の脅威のシンボルとして出てくるでしょうが、実用化はまだ先でしょうね。


China Might Have a New Way to Sink U.S. Aircraft Carriers 中国は米空母攻撃の新しい手段を手に入れるのか



June 10, 2017


ペンタゴンが恒例の中国軍事力報告を公表し、中国が米空母を狙っていることに再び警鐘を鳴らしている。時同じくして中国から接近阻止領域拒否(A2/AD)戦略の重要な一部になりそうな装備の発表が出ている。
  1. 中国国営メディアが今週発表したのはCaihong-T 4 (CH-T4)の名称の太陽光動力の巨大無人機で高度20千メートル飛行に成功したという。その高度では雲がなく、太陽光で飛ぶ無人機の飛行時間が相当長くなることだ。
  2. どのくらい長くなるのか。China Dailyによれば無限だ。「今後の改良で数か月から数か年の滞空が実現する」
  3. ブログEastern Arsenalの共著者ジェフリー・リンとP.W.シンガーはCH-T4は大きさと軽量の組み合わせに注目している。同機の翼幅は130フィートとボーイング737より大きいが重量は880ポンドから1,100ポンド(約400キロから500キロ)しかない。737の通常の最小空虚重量は70千ポンドだ。CH-T4がここまで軽いのはカーボンファイバーとプラスチックを多用したためだ。
  4. 同機の時速は125マイル(200キロ)だが65千フィート(約20千メートル)上空を巡航し広大な地域を監視できるので速度は必要ない。リンとシンガーはこう指摘している。「高高度を活かして見通し線外まで400千平方マイル(約104万平方キロ)の陸地海面を監視可能だ。これはエジプト全土の面積に等しい。ここまでの範囲を収めることで軍事民生共にも優秀なデータ中継手段となる」
  5. ただしリン、シンガー両名が言及していないのはCH-T4が米空母攻撃に使われる可能性だ。これまでも中国の「空母キラー」DF-21Dが注目を集めているが、ミサイル単体では空母攻撃はできない。高度の「キルチェーン」つまり監視偵察レーダー通信装備一式で標的情報の随時更新があってこそ飛翔中の対艦弾道ミサイルが効力を発揮する。
  6. 入手可能な資料によれば米国は中国のA2/ADへの対抗策として「キルチェーン」の効力を削ぐことに注力している。2013年に当時の海軍作戦部長ジョナサン・グリナート大将と空軍参謀総長マーク・ウェルシュ大将が共同でForeign Policy誌上にエアシーバトルでA2/ADに対抗する構想を発表していた。まず敵の指揮統制通信コンピュータ情報収集監視偵察能力(C4ISR)を遮断し、その後敵の武器運用能力(航空機、艦船、ミサイル基地)を破壊する、最後に発射された敵兵器を撃破すると述べていた。
  7. この方式の背景として「こちらを攻撃する前に敵は『キルチェーン』と呼ぶ一連の活動を完了する必要がある。偵察で米軍の位置を把握し、通信ネットワークで標的情報を伝達し、発射装置に入力して米軍に対抗できる。各段階の妨害遮断は容易であり、米軍はチェーンの弱点を狙えばよい」と両大将は述べている。
  8. CH-4Tが投入されると中国のキルチェーンは冗長性を増す分攻撃側が苦労することになる。もしアメリカが中国衛星を妨害あるいは破壊しても北京はこの無人機で米艦船追尾に必要な情報を得られる。CH-T4にはほかの偵察装備にない長所もある。まず低価格と衛星より柔軟運用が可能だ。また通常の機体や艦船より高高度を飛ぶことも利点だ。このため米側からすればキルチェーンの偵察部分の遮断が困難になるが、代わりに通信ネットワークの破壊に注力するのだろう。
  9. ただし以上は米軍には承知済みの内容だ。ペンタゴンの最新中国軍事力報告ではCH-T4の名称こそ触れていないが、「長距離無人航空機(UAVs)の開発調達で中国の長距離ISR能力および攻撃作戦両面が増強する」と述べている。
  10. 幸い米軍には対抗策を考える時間がある。China Dailyでは「設計技術陣が同機を改良し利用事業者に引き渡すのは数年先になる」と報じているためだ。米国におけるこの種の機体の開発期間を目安にすれば、中国はまだ数回の障害に直面するはずだ。NASAの環境調査航空機センサー技術(ERAST)事業はヘリオス試作機を原型に十年以上前から始まっている。同機は2001年に96千フィート(約29千メートル)の高度に達したが、その二年後に墜落している。ヨーロッパでもいわゆる疑似衛星として高高度無人機開発を目指している。■
Zachary Keck is the former managing editor of The National Interest. You can find him on Twitter: @ZacharyKeck.

合わせて中国のChinaMilitary英語版の記事を以下にご紹介しますが、ここでは軍事的色彩は全く見せず、携帯電話中継など民生用用途を前面に出しています。確かにペイロードを考えるとここらが現時点では現実的ですね。

Fly high: Chinese solar drone "Rainbow" reaches near space

Xinhuanet Huang Panyue 2017-06-14
BEIJING, June 13 (Xinhua) -- 中国のCaihong (CH)(「虹」)太陽光動力無人機(UAV)が中国初の準宇宙高度到達可能機として高度20km飛行に成功した。
  1. 中国航天科技集団公司(CAAA)を中心にしたチームから13日にCH UAVが15時間滞空し、無事着陸したと発表があった。
  2. 準宇宙空間は海面高度20から100キロの範囲で空気は薄く、通常燃料を利用する航空機エンジンの性能は低下する。
  3. しかしCH UAVをはじめとする太陽光無人機はここでも良好な性能を発揮し、数か月以上の滞空を将来実現すると関係者は述べている。
  4. CH UAVは全幅45メートルで太陽光パネルを主翼上に敷き詰めている。また太陽光発電の長所を生かして大気汚染は発生させない環境にやさしい機体であるといえる。
  5. CH UAVの飛行成功により中国は高高度太陽光無人機技術の実現では英国、英国に次ぐ三番目の国となった。米国は「ヘリオス」はじめとする無人太陽光機を開発しており、英国には「ゼファー」UAVがあり2007年に高度15キロを達成している。
  6. CH UAV開発チームによれば技術上の難関を数回克服している。空力形状、飛行制御、エネルギーの効率利用だ。複雑な気象条件で確実な飛行性能を確保するために一年以上かけたという。その他新素材、高性能太陽光電池、電力貯蔵技術の革新など中国航空工業の進歩に貢献していると関係者は自負。
  7. プロジェクトではCH UAVに「疑似衛星」機能を期待し、通信中継など一部機能を肩代わりさせる。
  8. また「空中Wi-Fiハブ」として移動体通信やインターネット接続を遠隔地や島しょ部向けに提供し、通信インフラ建設費用の節約効果も期待できる。その他森林や農地の測量や自然災害発生時のリアルタイム監視手段や緊急時の通信中継手段にもなる。
(Xinhua)


液体アンテナ技術登場か



すごい、これが実用化されれば設計の自由度も上がりますが、機体を広くアンテナとした画期的な機体が生まれます。民生への活用も可能ですね。可能性が大きく広がる革新的な技術になりそうです。

液体アンテナ用の複合材の試作品。(内部には液体金属は充填していない) 空軍研究実験部門がDoD Lab Dayでペンタゴンにて展示した。(Photo: Oriana Pawlyk)

Air Force Works on Liquid Antennas for Aircraft Adaptability

米空軍が液体アンテナの航空機搭載可能性を模索中


Defensetech POSTED BY: ORIANA PAWLYK JUNE 13, 2017


米空軍研究部門が液状アンテナを開発中で実用化となれば航空機の通信機器で変革が生まれそうだ。   

  1. 「実戦で必要なアンテナの種類が不明だと8-9本のアンテナを立てることになり、それぞれ周波数や用途が違うのです」とクリス・テイバー研究員は言う。
  2. Military.comがペンタゴンで開かれた国防総省技術展示会で研究スタッフに取材している。
  3. 空軍はミッションごとに各種電子機器を対応アンテナをあわせて機体に装着しているとテイバーは説明。しかし「一種類で全部用が足りるなら重量軽減になります」
  4. 空軍研究部門は作戦遂行に必要となる各周波数に対応できるチャンネルシステムを開発中だ。
  5. これを機体に搭載し、液体金属を充填すれば「どの周波数や指向性に対応できるアンテナが生まれます」とテイバーは述べる。
  6. またチャンネルは複数にし複合材内部に封印できる。「液状ですから移動は簡単でチャンネルの中に充填できます
  7. 「70メガヘルツから7ギガヘルツまでテスト済みで、これだけあれば相当の周波数帯をカバーできます」
  8. 機体にアンテナとして搭載するには二つの方法があるという。「液体金属を物理的に移動させれば電子機器の形状も変わります」「もうひとつは液体を柔軟な構造に充填し、電子機器そのものをストレッチできます」とし、柔軟性のあるハイブリッド電子機器NextFlexに言及している。(写真下)

フレキシブルハイブリッド電子部品も液体アンテナ実験に使われている。 (Photo: Oriana Pawlyk)

  1. 2015年に国防総省は「フレキシブル。ハイブリッド電子機器製造のための革新技術研究構想」として企業、大学、非営利団体162機関をまとめたFlexTech Allianceで同様の研究を行わせている。
  2. 「常温で液状になる金属は限られます。水銀はそのひとつですが、水銀はまき散らしたくないですね」と研究員のブレント・ヤング少尉は述べる。
  3. ただしガリウムは華氏87度で溶融する。ガリウム複合材は電子製品では頻繁に使われているとテイバーは指摘する。
  4. 「インジウムなどと合金にすれば溶解点は19度から17度低くなります。室温近くまで持っていけます」(ヤング)
  5. 今までのところ試験研究は実験室限定だが、次の段階は航空機に搭載することでMQ-9リーパー無人機を想定している。
  6. ヤング、テイバー両名は今後7年ないし10年で液体アンテナ技術が実用化されると見ている。■

2017年6月13日火曜日

ボーイングCEOムイレインバーグに聞く




ボーイングが民間、軍用、宇宙と多様な製品群を持っているため、ブログもターミナル1、ターミナル2共用記事とします。

Aviation Week & Space Technology

Boeing CEO’s $50 Billion Target

ボーイングCEOのめざす500億ドル目標とは

Jun 9, 2017 Joe Anselmo and Guy Norris | Aviation Week & Space Technology

巨大企業の変身
従業員145千名、年間売上1,000億ドルの企業を未来に向けどう率いていったらいいのか。新型機、軍用練習機、戦闘機や前例のないサービス事業がボーイングの最優先事項だ。会長兼社長兼CEOのデニス・ムイレンバーグが同社シカゴの本社でAviation Week編集長ジョー・アンセルモと上席編集者ガイ・ノリスの取材を受けた。
AW&ST:ボーイングが立ちあげたボーイング・グローバル・サービシズは7月1日に業務を開始し、年商500億ドルの目標だ。大規模事業だ
Muilenburg: 今後10年間の航空宇宙事業は7.5兆ドル規模と見ている。そのうち2.5兆ドルがサービス関連だ。当社の機材はセクター別では50パーセントのシェアだが、サービス関連では7-9パーセントしかない。そのため成長の余地があるとみている。当社にしかないOEM関連知識と技術により他にはない価値を顧客に提供できる機会が生まれる。500億ドルは相当の規模であり、大胆な成長目標だが達成の道筋が視野に入っている。
あなたはサウジアラビアからもどったばかりで、ボーイングはチヌークヘリコプター、誘導兵器他P-8哨戒機への関心表明も取り付けている
今後10年間で500億ドルのハードウェア、サービスの発注となる。商用軍用双方にまたがりサウジアラビアと米国で雇用数万名分が生まれる。グローバリゼーションの進め方としては秀逸だと思う。グローバル化すれば米国にも恩恵が生まれる。今回の事例もこの例だ。
商用機部門では日程、コスト両面で目標を達成しているようだ。ボーイングの強みが復活したのか
大変強い勢いを感じている。多くは過去の教訓から得ている。(前CEOの)ジム・マクナーニーと一緒に開発面で優秀事例確立を数年前に始め、その成果が出てきた。787-10は予定より早く完成し飛行性能も極めて良い。737Maxファミリーの引き渡しは想定費用以内かつ日程も若干早くなっている。残念ながら(KC-46A)空中給油機では工程改善が当初うまくいっていなかったので現在は同機が課題になっているが、それでも今後活かせる教訓を得ている。
提案中のNMA(新型中型機)はどうなっているのか
顧客各社との実のある対話から絞り込みつつある。737と787の中間に市場可能性を見ており、この機体は5千カイリを飛び、250席規模と想定している。757より大きく航続距離も長い。だが事業化が意味があるかを吟味する必要がある。開発開始を決定すれば、機体の技術面とともに製造面で大きな変化となる。市場需要があれば新型機開発に乗り出す。就役開始を2024年から25年とみており、時間はある。現在は777X開発が活況だ。新型機はこれと並行して進めることになろう。
双通路型のNMA構想ではコスト課題が難しいと思えるが
機体設計製造のやり方を変革中だ。デジタル設計でスマートイノベーションや自動化を製造工程に組み込んでいく。航空機製造の工数や費用を大幅に下げることができ市場への提供が早まる。
777X開発はうまく行っているのか
エンジン稼働中といったところだ。詳細設計に入っており、部品製造が始まった。エヴァレットにある複合材主翼生産センターを最近訪問した。各部品が工場内を流れウィングボックスになっていた。詳細設計段階から生産開始に移りつつある。2018年のフライトテスト、2020年の引き渡し開始に向かう。事業は順調に進んでいる。着実に成果がうまれつつある。ワイドボディ機の需要で伸びがなくなっているが、これは予想しどおりで、今後は更新需要でワイドボディ9,000機の新規需要が今後10年で生まれると見ている。777Xは787と完璧なタイミングになっている。
イランのエアライン数社向けに200億ドル相当の機材販売をボーイングが商談中だが、米イ間の緊張を考えると販売の可能性はどうなるのか
機材販売は続ける。各段階で政府認可が必要な仕組みになっている。おっしゃる通り政治面を考えると難易度は高いがこのことは最初から承知している。なんといっても商談規模が大きい。販売が成約すれば米国内に大量の仕事が生まれる。特にイランエアは80機発注と大きい。引渡しは2018年から開始したい。米政府の認証手続きは確実に遵守する。
ドナルド・トランプ大統領とのボーイングの関係は昨年12月に次期エアフォースワンで納税者に多大な負担となると大統領が非難したのと比べると改善の観がある
あの一言から対話が生まれ、顔を合わせ中身のある自由な話し合いが多彩な話題で可能となった。トランプ大統領はビジネス界の意見を歓迎する政権を作った。通商政策、税制改革、規制緩和、国防予算の強化安定化などを一緒に考える席に招かれてうれしく思っている。大統領は対話により考えや意見を取り入れるのがうまい。航空宇宙産業は米国最大の貿易黒字およそ900億ドルを稼いでいる。そのうちボーイングが大きな部分を構成している。サウスカロライナでは787-10(の生産ラインに)大規模投資している。大統領が訪問し一般従業員に声をかけてもらったことを名誉に思う。大統領に非常によい反応が返ってきた。
商用機のほぼ四機に一機が中国向けだ。新政権と中国との相互通商関係の重要性を話しているのか
している。対話から非常に意味のある米中関係が生まれている。習(金平)主席が訪米しトランプ大統領と非常に協力的な会話が生まれた。世界全体で今後20年間で新型機39千機が必要となり、そのうち中国向けが6,800機となる。737完成センターをZhoushan浙江省船山に開設し中国向けにもっと多くの機材を供給できる。また737を国内で月産が現在42機なのを今年中に47機へ来年は52機で2019年に57機に増産する。この件は大統領に報告しており、中国と良好な通商関係があれば相互恩恵が生まれると政権関係者にも伝えている。
ボンバルディアがCシリーズの米国販売でダンピングしているとの不服申し立てについて説明してほしい
公表資料によればCシリーズの製造原価は33百万ドルだが(ボンバルディアは)およそ20百万ドルで販売しようとしている。カナダ向けには(デルタエアラインズ向けよりも)高く販売するというので問題視している。古典的なダンピングだ。当社は公平で格差のない貿易条件を支持する。この原則でエアバスが不公平な政府補助金を受けている点を指摘した。将来の航空宇宙産業では競争相手がたくさん出ると見ているが当社は超競争的な環境での運用に備えている。
米空軍のT-X練習機競作に加わるが設計製造は米国内で行うとしている。これが有利に働くと見ているのか
機体での米国内製造比率はサプライチェーンも含め90パーセント超だ。これに対し競合各社は既存機種を外国から導入する案だ。当社のT-X案は完全新型機として設計し次世代の訓練用途を正面から考えているので独特だと自負している。他社は過去の設計を元にした既存機を改修あるいは改造して将来の用途に投入しようとしている。当社では二機が飛行中で非常に良好な成績を示している。選定が最終段階に入るが当社は自制心を保つ。この事業は当社の将来を左右するものではない。あくまでも当社の付加価値を高め、株主にも同様の効果が生まれるように万全を尽くす。
宇宙分野はボーイングの将来にどんな意味があるのか
当社は当初から宇宙ビジネスに携わっており、今後も当社の製品群で重要分野だと見ている。CST-100(ボーイング製有人宇宙輸送カプセル)により国際宇宙ステーションへのアクセスをNASAに提供する。低地球周回軌道は当社にも重要な分野となっており、微重力、ものづくり、宇宙観光に注目している。深宇宙探査向けにはNASAと打ち上げシステムを作成中の他有人宇宙探査で重要部分を担当している。衛星ビジネスでは電気推進方式に投資している。ユナイテッド・ローンチ・アライアンスは打ち上げを119回成功しており当社に極めて重要だ。一方でコスト拡大傾向を打破した宇宙アクセス方法の検討もしており、次世代ロケット開発ではブルーオリジンのような他社提携もいとわない。
ボーイングの有する強力な製造基盤に対して革新的な新企業といてスペースXやブル―オリジンとの提携が最良の選択肢と見ているのか
提携話は多数進行中だ。当社には技術の深みがあり技術力もある。だが重要なのは宇宙アクセスのコスト削減を新しいビジネスモデルで実現することだ。この分野では急速に変化が生まれている。関心度が高くなり、大量の資金が入ってくる。当社もホライゾンX(社内ヴェンチャーキャピタル部門)を立ち上げた。その目的の一つは新規提携先を見つけながら技術モデル、ビジネスモデルで阻害要因を取り除くことだ。今後も競合他社よりもイノベーションで先行する必要がありる。当然新しいビジネスモデルや提携先を求めていく。
今後の航空宇宙分野で最大の阻害要因は何か
製品面、工程面双方でいろいろある。ズナムアエロZunum Aero (ワシントン州カークランド)への共同投資を発表したばかりであるが、同社は小型機の電気推進を開発中だ。この技術がどこまでの大きさの機体に応用できるのかで疑問もあるが電気推進式航空機は実現しそうだ。手の届く運賃での超高速商用飛行を世界各地に二時間以内に移動するのを阻害するのは技術問題であり当社はこの分野にも投資をしている。
低地球周回軌道上の宇宙旅行をあたりまえにするには技術面で課題解決が必要でこの努力は続いている。防衛部門でも障害要因の解決にあたっており、電子製品に重点投資している。だが設計製造段階で課題につきあたることがある。モジュラー化、自動化、オンデマンド個別製造といった方面に努力している。付加製造additive manufacturing(3Dプリンターの利用)や設計から製造までのサプライチェーン全体のデジタル化を目指している。
X-51実験機でボーイングは世界初の極超音速機製造ラインを立ち上げた。それ以降大きな進展がないが、中国やロシアが極超音速飛行に向け大きく進展している
X-51は極超音速飛行技術の実証が目的で実施可能とわかった。超音速、極超音速飛行の事業化に向けて活動中だ。今後も投資を続ける分野であり、顧客向けにはあと一歩まで来たと伝えている。どこかの段階でこの技術は経済的に意味のある水準になる。当社が今後も技術面でリードするため続けている努力の一環だ。■


ルークAFBのF-35A飛行停止措置が延長


よくわからない現象ですが一刻も早い原因究明を望みたいですね。低酸素症と言い切らず、似た症状と表現がトーンダウンしていることに注目です。


Luke Air Force Base extends cancellation of F-35 flight operations ルーク空軍基地がF-35飛行停止措置を延長

 By: Valerie Insinna, June 12, 2017
(Photo Credit: Staff Sgt. Staci Miller/US Air Force)

WASHINGTON — ルーク空軍基地(アリゾナ)でのF-35の飛行運用中止措置が延長される。パイロットから低酸素症に似た症状を訴える事例が5件発生したことの調査が未完了と同基地報道官が6月12日月曜日に発表した。
  1. 第56戦闘機飛行隊で5月2日以降5名のパイロットから酸素不足の症状が報告されており、うち二件は先週に発生している。各事例で予備酸素が起動しパイロットは無事機体を着陸させたが、訓練は停止されF-35合同開発管理室JPOが調査に入っていた。
  2. 第56飛行隊報道官レベッカ・ヘイス少佐からはJPO調査チームが日曜日に同基地に到着し、現在インシデントの原因可能性を狭めていると発表した。あと数日中に根本原因が見つかる期待があるが飛行再開の暫定日程も発表できる状態ではないとDefense Newsに伝えてきた。
  3. 「第56戦闘機飛行隊は当地でのF-35A飛行を引き続き停止中でパイロット、整備陣、航空医官含む軍民共同チームの調査を待つ。この間に生理現象の技術的裏付けをとりリスク低減策を模索し飛行運用の再開を図りたい。
  4. 「F-35Aパイロット養成を通じ将来の空軍力整備にあたる当飛行隊で飛行再開に向け専門チームが全力を挙げ調査中。パイロットの安全は最優先であり、安全のためには時間をかけることは惜しくない」との声明を少佐が発表した。
  5. 飛行停止中にパイロット全員は集合教育を受けており、飛行停止の影響はパイロット49名55機に出ている。
  6. 現時点では何が起こったのかよくわからない。機内酸素発生装置が故障をしたのかも不明。5件すべては別の機材で発生しており、所属飛行隊・生産バッチも異なるとヘイス少佐は確認。しかしながら、低酸素症に似た症状が発生しているのはルーク空軍基地のみで空軍当局は当地のみで発生した現象と理解したいという。
  7. 第56飛行隊司令のブルック・レオナード准将が飛行再開の日程を最終的に決める。■

金正恩暗殺未遂を公表した北朝鮮の狙いは何か


北朝鮮内部が相当に動揺していることがうかがわれますが、仮に暗殺されても誰も憐憫の念を示さないことは想像に難くありません。プロパガンダ戦争はすでに始まっているわけですね。

North Korea Releases Details of Alleged Assassination Attempt On Kim Jong-un 北朝鮮が金正恩暗殺の企みがあったと発表


June 12, 2017


  1. 北朝鮮国営通信社が金正恩暗殺の企ての詳細を明らかにしている。
  2. 北朝鮮政府はCIA中央情報局と韓国のNIS国家情報院が5月の軍事パレードで生物化学兵器を使った暗殺を謀ったと非難した。
  3. 公表されたビデオでは外国情報機関の命を受けたKim Song Ilが北朝鮮指導者の殺害を企てたとし、計画が数案あったとする。そのひとつが「エアコンにナノ毒性物質」を隠すことで、金正恩に放射性プルトニウムを注射する案もあった。実行案に採用されたのは「最高指導者の座る椅子に毒物を付着させる」ことだった。
  4. 「テロリスト」と非難される暗殺未遂犯は祝賀会場の詳細情報を極力多く集めるよう指示されたと語っており、とくに北朝鮮独裁者の使う椅子、机のまわりの保安体制の詳細が求められたという。KimによればDo Hui-yun(拉致被害者の人権を考える市民連合CHNK)の幹部から接触を受けたのは2014年にロシア・ハバロフスクで木材伐採に従事している際だったと米 NK News は伝えている。
  5. CHNKはNGO団体だが北朝鮮は韓国情報機関の一部あるいは実行機関と見ている。
  6. Doは「Kimに金品を渡した」うえ、北朝鮮関連の偽情報と「反国家プロパガンダ」を与えた。Kimによれば2014年8月にNIS上層部に会い金正恩暗殺案の詳細内容を教えられたという。
  7. こうした物質を準備できるのはCIAだけだと北朝鮮国営通信は伝えている。
  8. 「生化学物質を使ったテロ襲撃案を作るよう求められ、現金1万ドル、Doogeeのスマートフォン、衛星送受信機を与えられた」とKimはビデオで自白している。なおビデオはUriminzokkiri北朝鮮公式宣伝サイトが制作した。
  9. Kimは2016年にHanと名乗る男が中国・丹東に「海外連絡センター」設立を試みたと述べている。センターでは韓国情報院工作員が大量の現金や武器を準備し襲撃準備をしていたという。金正恩暗殺用の「装備物質」は韓国工作員経由で2017年3月に入手したが、国家保安省が事前摘発し実施できなかった。
  10. 公表されたビデオは驚くほど詳細で内容は「国家支援によるテロ活動」に極めて批判的だ。
  11. CIAとNISを非難する今回の動きは米議会が北朝鮮を再度テロ支援国家に指定する審議が進む中で出てきた。北朝鮮工作員が金正恩の腹違いの兄金正男の今年2月のマレーシアでの暗殺に関与しているとの報道も出ている。
  12. 北朝鮮がこのタイミングで公表したのは米韓両国の批判をかわす目的もあるのだろう。■

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