2019年5月11日土曜日

イランをにらみ移動中の米軍部隊の全体像


The US is sending a ton of firepower to take on Iran — here's everything headed its way 

米軍がイランをにらみ大幅に軍事力を増強中 移動中戦力の全体像は以下の通り。

An F/A-18E Super Hornet from the
An F/A-18E Super Hornet on the flight deck of the USS Abraham Lincoln. US Navy photo by Mass Communication Specialist 3rd Class Jeff Sherman
  • イランによる米軍攻撃の可能性に対応し、米国は中東に追加部隊の派遣を決めた
  • 対象は空母航空団搭載の空母1隻、巡洋艦1隻、駆逐艦4隻、大型爆撃機隊、戦闘機、揚陸艦1隻、防空ミサイル一個中隊。
  • イランが米国権益への攻撃に出れば「容赦ない軍事力」で対応すると米国が警告している
軍は空母打撃群一個、爆撃機任務部隊一個、戦闘機、揚陸艦1隻、防空ミサイル一個中隊を中東に派遣しイランに軍事力を示威する。
USSエイブラハム・リンカン空母打撃群(空母、航空団、巡洋艦1隻、駆逐艦4隻)が移動中のほかB-52爆撃機も今週初めに移動開始した。
米空軍中央軍司令部は5月9日付けの発表でF-15Cイーグル部隊を同地域に移動し「域内の米軍部隊及び米権益を防護する」とし、10日にはペンタゴンがUSSアーリントン揚陸上陸艦、ペイトリオット地対空ミサイル一個中隊が移動中と発表した。
米中央軍は増派は「イラン及びイラン代理勢力が域内米軍部隊に攻撃を仕掛ける準備中との明確な兆候」への対応としている。

空母USSエイブラハム・リンカン

Aircraft carrier: USS Abraham Lincoln

The USS Abraham Lincoln. REUTERS/U.S. Navy/Chief Mass Communication Specialist Eric S. Powell/Handout
USSエイブラハム・リンカンは移動海上航空基地として空母打撃群を率い高度の戦力を有する空母航空団を搭載する。
今回移動中の第7空母航空団はF/A-18スーパーホーネット、EA-18Gグラウラー電子攻撃機、E-2ホークアイ早期警戒機ならびに回転翼機で各種任務をこなす。

巡洋艦USSレイテ・ガルフ

Cruiser: USS Leyte Gulf

The USS Leyte Gulf. US Navy
タイコンデロガ級誘導ミサイル巡洋艦は多用途をこなせる艦艇で垂直発射装備(VLS)122門の重装備でトマホーク対地攻撃巡航ミサイルから対空ミサイル、対潜ロケットまで発射できる。

駆逐艦四隻 USSベインブリッジ、USSゴンザレス、USSメイソン、USSニッツェ

4 destroyers: USS Bainbridge, USS Gonzalez, USS Mason, and USS Nitze

The USS Mason. Mass Communication Specialist 1st Class Blake Midnight/U.S. Navy via AP

駆逐艦もVLSを90から96門搭載し多任務をこなせる。対空対ミサイル防御以外に対地攻撃能力も有する。.
トランプ政権に入りシリアのシャイラート航空基地にトマホーク巡航ミサイル59発を発射したのは駆逐艦2隻だった。

爆撃機B-52

Bombers: B-52s

The B-52 with all its ammunition. Tech Sgt. Robert Horstman/US Air Force
B-52は亜音速高高度飛行可能の爆撃機で核・非核双方の運用が可能だ。各種兵装の搭載量は70千ポンドまでで戦略攻撃、近接航空支援、航空制圧、海洋哨戒まで各種任務をこなす。

戦闘機F-15Cイーグル

Fighters: F-15C Eagles

US Air Force F-15C Eagles arrive on a flight line U.S. Air Force photo by Tech. Sgt. Jocelyn A. Ford
同地域に配備中のF-15は実弾を搭載しているといわれ、AIM-120高性能中距離空対空ミサイル(AMRAAM) 6発、AIM-9Xサイドワインダー2発で対空戦に対応する。
ペンタゴンからは同機をイランの動きに対応するものとの発表はないが、このタイミングでの追加派遣は注目される。

揚陸艦USSアーリントン

Amphibious Landing Ship: USS Arlington

The San Antonio-class amphibious transport dock ship USS Arlington (LPD 24) departs her homeport of Naval Station Norfolk. U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 2nd Class Megan Anuci
サンアントニオ級揚陸輸送ドック艦は海兵隊、強襲車両群、上陸舟艇、回転翼機を搭載し、揚陸強襲作戦の他特殊作戦も支援する

対空ミサイル防衛 ペイトリオット中隊

Air-and-Missile Defense: Patriot battery

The Army test fires a Patriot missiles. U.S. Army photo
ペイトリオット一個中隊は長距離全天候防空装備として戦術弾道ミサイル、巡航ミサイルや航空機を一定条件で排除可能だ。

2030年米中戦が勃発すればどうなるか

We Dreamed Up a U.S.-China War in 2030 (And It's Terrifying)

Let's try to avoid this, please.
L
May 4, 2019  Topic: Security  Region: Asia  Blog Brand: The Buzz  Tags: World War IIIChinaAmericaTaiwanSouth China SeaJapanWar

華人民共和国(PRC)と合衆国は貿易戦争の崖っぷちに向かっているようだ。この戦争で両国経済に広範な影響が生まれ同時にグローバル経済秩序も影響を免れない。だがいまのところ爆弾やミサイルが飛び交う状況ではない。米中両国に数々の対立があるが、戦火を交える状況には至っていない。
だが次の10年間で状況は変わるかも知れない。いまは無関係に映る対立が時とともに重大性を帯びることがある。中国の国力増強の中で小さな論点が重大結果につながる体験を米国は迫られるかも知れず、反対に中国が調達・近代化サイクルの中で米国の無力を見抜く可能性もある。
2030年に両国の力のバランスは今と大きく異なるはずだし、戦略地図も変わる。2030年に米中両国が開戦すればどんな展開になるのだろうか。
開戦の契機
両国対決の根本原因は今と同じだ。中国と米国は新興国が既存勢力に対決する「トゥキディデスの罠」に陥る。中国の国力増大に終わりがないように見える一方、米国はグローバル国際秩序規範を設定する立場を守る。ただしPRCも合衆国も取るに足らない問題では開戦に進まないはずだ。
米同盟国への深刻な脅威が想定できる。日本、韓国、インド、台湾あるいはフィリピンかもしれない。中国と各国に紛争の種がすでにまかれている。PRCとこうしたいずれかの国の間で軍事衝突が発生すれば米国が巻き込まれるのは確実だろう。インドとPRCの戦争が危険度が最大で米国以外にパキスタンやロシアも巻き込まれるかもしれない。日中両国の対決の場合でも壊滅的な結果になりかねない。ここでは戦略構図の変化を受け入れる準備が必要で、日韓両国の対立関係が軍事衝突につながれば米中両国の軍事対決にまで発展しかねない。
どんな新技術が投入されるのか
対決場所は対決原因により左右されるが、東シナ海、南シナ海が重要な舞台になりそうで、空軍力と海軍戦力が重要となる。米陸軍、海兵隊も「複合ドメイン戦」で自らの役割を確保しようと懸命だ。
今後12年間で軍事バランスが中国有利になると容易に想像できる。だからといって中国が必ずしも優位に立つわけではないが、時間経過とともにPRCに有利になるのは確実だ。人民解放軍海軍(PLAN)の増強ペースは米海軍を上回っており、人民解放軍空軍(PLAAF)の装備近代化も米空軍を上回る。これは米海軍が355隻体制、空軍がF-35やB-21を実戦配備しても変わらない。
双方とも既存技術を大量に配備しているだろう。中国は2030年には空母四隻を運用し、内訳は遼寧型STOBAR空母二隻とCATOBAR通常型空母二隻のはずだ。米海軍が量的質的に優位だが中国は紛争開始直後に一時的に局所的優位性を示すはずだ。中国は潜水艦、水上艦艇も多数を集中展開するはずだ。これに対しUSNは優位とはいうものの、差はわずかしかない。
航空機では米空軍、海軍、海兵隊はF-35を相当数配備しているはずだ。空軍にはB-21レイダーステルス爆撃機もその他爆撃機部隊とともにある。中国はJ-10、J-11の増強で米軍のF-15、F-16、F/A-18と遜色ない戦力を整備しているはずだ。J-20も一定数配備され、J-31もPLAが導入を決めれば整備されるだろう。中国が装備近代化を進めても2030年までに米軍の水準に到達できないだろうが、PLAAFは急速に戦力差を埋めるはずで航空基地多数と各種ミサイルの支援を頼りにできる。
2030年までに発生する最大の違いは無人機材の大量導入で一部有人機材と交代しているだろう。この分野での技術進歩は高スピードで展開しており実用化となる機材の正確な予測は困難だが、空中、水上、水中の無人機材各種が無人機同士あるいは有人機材を相手に戦闘を展開するだろう。無人機材運用には偵察、通信の裏付けが必要で両陣営とも開戦直後からこの妨害を狙うはずだ。
サイバー戦になるのか
米中両国は社会、経済、軍事の各面でコンピュータ通信に依存し、サイバー空間接続に大きく頼っている。接続が妨害されれば破滅的な結果が待つ。だがサイバー戦の専門家からは米中ともにインターネットへの依存度が高い分だけ安全性を確保しており妨害に強くなっているとの声が聞こえる。例を上げれば20世紀に連合軍爆撃を受けてもドイツ産業界は予想とことなり崩壊しなかった。高度な冗長性をもたせたので破壊できなかったのだ。日本経済はそこまで洗練されていなかったため封鎖作戦と空襲で大打撃を受けた。複雑になっても脆弱になるわけではなく、デジタル経済への転換が進めば攻撃がそれだけ容易になるわけではない。
だからといって軍事衝突とサイバーが無関係ではない。むしろデジタル戦は軍事側面を巻き込むことが多い。米中ともに接続の弱点を見つけ攻撃を試み、敵の目を使えなくさせ、逆に敵の目を使おうとするはずだ。サイバー攻撃と「リアルの」軍事作戦を調整実施する腕が高いほうが有利に事態を進めるはずだ。
どのように終わるのか
米中戦の終わり方でいろいろ考察が出ている。ただし2030年の戦闘の姿は誰にもわからず、両陣営がどう決着をつけるかも不明だ。ただし2030年に入っても米国の産業基盤や継戦能力を制圧出来る通常戦力を中国が整備している可能性は限りなく小さい。他方で米国がPRCを圧倒するシナリオの実現度も低下している。敗退させても政治的な危機状況が続くだけだ。勝利条件は敵陣営の主力部隊を敗退させることになりそうで、一気に壊滅させても消耗戦にもちこんでもいい。
封鎖作戦は解決にならないだろう。中国のエナジー消費は2030年には今より増加しているはずで、PRCの戦略的脆弱性が高まる。ロシアとの間にパイプラインを強化する、代替エナジーを開発することでPRCは米国との戦闘を乗り切ることは可能だろう。しかしなんといっても中国に一番の打撃は対外貿易の崩壊だろう。
いずれによせ2030年の米中戦争の終結には慎重な外交工程が必要となる。戦闘が終結しても両国の対立関係は今世紀を通じ続くだろう。
結語
ほぼ40年にわたり専門家は米国とソ連の戦闘は避けられないと言っていた。実際に開戦寸前の危機はあったが、開戦しなかった。中国と米国でも武力衝突の回避も同様に可能だし、実際にそうなりそうだ。だが戦力バランスが傾いた場合の想定を想像しておくことに価値があるし、どんな機会が生まれるかも想像できる。運と技量に恵まれれば2030年になっても米中両国は戦争を回避できる。とは言うものの両国の政策立案部門は万一開戦となる可能性を真剣に受け止めて検討する責任があることを忘れてはならない。■
Robert Farley, a frequent contributor to TNI, is a Visiting Professor at the United States Army War College. The views expressed are those of the author and do not necessarily reflect the official policy or position of the Department of the Army, Department of Defense, or the U.S. Government.

2019年5月10日金曜日

★米国でソノブイ生産に黄信号、どうなる西側諸国の防衛産業のこれから



US could lose a key weapon for tracking Chinese and Russian subs

ロシア、中国の潜水艦追尾に必須の装備品が米国に不足する可能性が出てきた


By: Joe Gould and Aaron Mehta    


海軍がロシアや中国の潜水艦対策で頼りにする装備は重量8ポンド全長3フィート足らずで爆発もしない。
それがソノブイで消耗品水中センサーで数百本単位で空中投下し、敵潜水艦探知に使い米国や同盟国がこれまで数十年に渡り必須装備として使ってきた。ペンタゴンは2020年度予算要求で204千本調達するが2018年より5割増となる。
だがその重要装備の前途に危険信号が出ている。敵国による作為ではない。安心して供給を任せられるメーカーがなくなるのだ。
ペンタゴン装備品では供給メーカーが一社になっていく傾向がある。ソノブイでは米国と英国の合弁企業ERAPSCOである。ペンタゴンによればERAPSCOは2024年までに閉鎖され、英米双方の親企業、イリノイのSparton Corp.、ミドルセクスのUltra Electronicsは業務継続に必要な出資をしないのだという。
産業基盤上の「公然の弱点」でペンタゴンは解決策を見つける必要を迫られているとペンタゴンで産業政策を担当していたエリック・チュウニングが述べる。
ドナルド・トランプ大統領は3月に国防生産法に署名し、国内生産でAN/SSQソノブイ5型式を「国防に絶対必要」装備と指定し、運用能力の維持拡大を認める権限をペンタゴンに与えた。空軍は独自にERAPSO以外の供給メーカーを模索している。
ペンタゴンは「ソノブイ5型式生産で個別専用生産ライン」が必要というが、2社は「専用ライン設置には支援を必要としてくるはず」とDoD報道官マイク・アンドリュース中佐が述べている。
「相当の努力と出資が必要なため合弁企業の親企業が独自出資する見込みはなく2024年までに必要となるソノブイ需要に答えられない」とし「DoDが介入する必要がある」と述べた。
対潜哨戒機P-8やMH-60Rシーホーク対潜ヘリコプターで使うマルティスタティック・アクティブ干渉型MACのソノブイの電池は8時間程度使える。移動する潜水艦追尾ではソノブイは投下されてもすぐに意味がなくなる。P-8の場合はソノブイ120個をミッション一回で消費することがある。
「P-8でどれだけの面積を捜索するかにより変わりますし、標的潜水艦の水中速度にも左右されます」と戦略予算評価センターのブライアン・クラークが解説する。「捜索範囲は標的潜水艦への探知能力で変わります。P-8で対潜防衛帯を作る場合はそこまで多くのソノブイは不要です。移動中の静粛航行中の潜水艦が相手となるとソノブイ全部を使いきり、補充のため基地に戻ることになります」
ロシア、中国の潜水艦活動が活発になるなか対潜部隊はますます多忙になっており、ソノブイ在庫を使い切りそうだ。
米海軍のソノブイ調達予算は2018年の174百万ドルが2019年は216百万ドルに増え、2020年要求では264百万ドルになる。ペンタゴンは議会に第六艦隊のソノブイ再調整予算20百万ドルを要求したほか、38百万ドルでソノブイ追加調達を求めている。
ロシア、中国の潜水艦技術の進展でソノブイの重要性は増す一方だと専門家もみている。
「新時代の潜水艦が静粛化されロシア、中国が就航させており、従来どおりの潜水艦や水上艦を使った対潜戦では対抗しにくくなってきた」とクラークはいい、「わが方の艦艇や潜水艦がパッシブソナーの効果を発揮するためには従来より接近する必要があるし、逆にアクティブソナーは有効範囲が小さく発信源を露呈してしまう」
ロシア潜水艦の性能が高く、ロシアは潜水艦部隊の増強を続けていると国際戦略研究所のニック・チャイルズが指摘する。中国潜水艦は「技術面で遅れている」が大規模な支出で水中戦力の増強を図っている。
「当面はロシア潜水艦部隊が一番やっかいな相手でこのまま増強を続ければ米海軍ではソノブイが大量に必要となります」(チャイルズ)
ERAPSCOはソノブイ5型式のうち4つを製造しており、海軍は同社と四年契約で2023年まで確保している。競合状態を刺激しようと海軍はSpartanおよびUltra Electronicsの提携関係解消を求め、ソノブイを各社別々に供給するよう求めている。
だがSpartonは年次営業報告で「相当の企業努力と支出が必要となるためSpartonあるいはERAPSCO合弁企業体の親企業の双方」が海軍の要求に別個に応えられる保証はないと明記している。
Spartonは財務が苦しくなり2017年7月にUltra Electronicsによる買収で合意したもののわずか一年未満で破談となった。米司法省が独占禁止の疑いで成立を拒んだためだ。
SpartonはそこでCerberus Capital Managementに183百万ドルで自らを売却した。Cerberusはニューヨーク市の不良債権買い取り金融業者である。同社はStaples(事務用品メーカー)やSafeway(食料品小売りチェーン)を傘下に収めており、防衛部門でもDynCorpやNavistar Defenseを買収している。
アンドリュース中佐は政府の懸念事項をDefense Newsに伝えている。
「DoD/DoNは年間204千基のソノブイ5型式の購入を予定する。このためDoD/DoNは安定供給体制を必要とする。こうした要求のため、また安定したソノブイ生産の産業基盤のため5型式ソノブイそれぞれで専用生産ラインが必要だ」
「国防生産法第三章事業として米海軍向けソノブイ生産の産業基盤の維持再編を通じソノブイ供給元を最低2社確保したい」とし、「そのためトランプ大統領、DoD、DoNはDPA予算と民間支出分あわせ費用対効果が最優秀で利便性に富みかつ実務的な方法でAN/SSQシリーズのソノブイ性能確保という必須課題に応えていきたい」
国防支出法では国防総省に中核産業ニーズに関係する企業向けに資金提供を認めている。産業基盤検討結果を受けて実現した方策だ。
「われわれがしたかったのは資金投入で産業基盤への支援を確実に示し2社以上の供給元を確保することです」とチュゥニングが産業政策の責任者を務めた立場でDefense Newsに語っている。「現状の不具合を考えれば当然の結果でDPAの権限により製造拡大につながる刺激策を提供できるわけです」
Ultra Electronicsと Spartonは両社共同事業の今後についてコメントを拒否している。
「Ultra Electronicsは米海軍と協力関係を維持しソノブイ生産を継続し将来を見据えた開発も行います。当社は今後もASW関連の要望の増大に応えていきます」との声明が出ている。
米国がソノブイを国外調達するとしたら英国やフランスにもメーカーがあるが、生産はすでに該当国向けで確定しており、そもそもソノブイでは米国が世界最大の供給国なので米国の国内生産が消えればソノブイの世界的供給不足につながりかねない。
チャイルズやクラークも米国内にソノブイメーカーの確保は必須とみており、生産の必要性に加え「重要技術分野で最先端」として残るためにも必要だとチャイルズは見ている。■
David Larter in Washington contributed to this report.

心配になる話ですね。防衛産業といえども民間企業なので株主の利益が最大になる決定をしていくわけですが、国防事業は悩ましい分野なのでしょう。日米とわずこれから防衛事業から抜ける企業が増えれば大変なことです。ソノブイについてはNECもメーカーらしいのですが、性能がイマイチのようでやはり米国製輸入に頼るのが海自の現状らしいです。ということは米海軍が悩めば海自にはもっと大変な事態です。こうした中で政府が民間企業を支援してほしい産業製品を確保する「産業政策」を米国防総省の音頭で進めているのは皮肉にしか聞こえません(米国は日本の産業政策を散々批判し、自由企業体制を標榜していました)が、状況が状況なだけに防衛省も産業政策を今や堂々と進めるべき段階なのではないでしょうか。とかく、戦闘機や潜水艦といった「正面」装備に関心が集まりがちですが、産業基盤といったマクロの視点も必要と痛感します。■

2019年5月9日木曜日

5月9日、北朝鮮がミサイル二発を発射。まだ「飛翔体」と呼ぶのか


米特使のソウル訪問を横目に、北朝鮮がミサイルと思しきもの二発を発射
By KIM GAMEL AND YOO KYONG CHANG | STARS AND STRIPES
Published: May 9, 2019

"20219年5月4日の北朝鮮ミサイル発射を伝えるテレビがソウル駅で放映されていた。画面には「軍警戒態勢強化」とある。
AHN YOUNG-JOON/AP

朝鮮が短距離ミサイルらしき二発を5月9日に発射したと韓国国防筋が述べた。北朝鮮は一週間足らずで再びミサイルを発射した。



今回は米特使スティーブン・ビーガンがソウルを訪問中で北朝鮮非核化の停滞を前進させようする中での発射になった。

「北朝鮮が未確認飛翔体二発を発射し、短距離ミサイルと思われる」と韓国統合参謀本部が発表し、発射地点は北西部Gusungで東に飛翔したと伝えた。

ミサイルはそれぞれ260マイル、167マイル先に20分後に4:29 p.mに到達したと発表があり、当初の発表で発射は一発でSino-riからの発射としていたのを訂正した。GusungはSino-riと同じ地方に属し平壌の北西50マイルほど離れている。

韓国軍が監視体制を強化し更なる発射を警戒する中、韓米両国は密接に協議を続け「万全の体制』を維持するとしている。

5月4日北朝鮮はロケット数発および専門家が短距離弾道ミサイルと考える一発を発射し2017年11月から行われていなかったミサイル発射を再開した。

パット・シャナハン国防長官代行は前日の議会公聴会で北朝鮮が「ロケット弾とミサイルを発射した」と明言していた。

北朝鮮は5月9日早くに前回発射は「通常の自衛的軍事演習」の一環だったと説明していた。

氏名不詳の北朝鮮外務省広報官は同国が「最大限の忍耐」を示していると語り、土曜日の攻撃演習を韓国初め各国が批判する中で交渉が停止している状態に触れた。

「今回の演習は通常の軍事訓練以外の何物でもなく特定の国をねらったわけでもなく、ましてや域内情勢の悪化にもつながっていない」との談話を朝鮮中央通信が伝えている。

ビーガン特使は韓国関係者とソウルで木曜日午前会談した。米日韓の防衛当局者も同日にソウルで会議に臨んでいた。
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外交が手詰まり状態になり北朝鮮は不満を示しており、米国へ双方向協議を求める一方、韓国には南北経済構想の推進を求めているが米主導の制裁は続いたままだ。

トランプ大統領とマイク・ポンペイオ国務長官は土曜日の発射に対し慎重な発言で対応しており、緊張状態を引き上げたくないとの狙いが見える。■

現在のPLAに台湾大規模揚陸侵攻作戦の実施は無理とペンタゴンは指摘するが....

コメントは下にあります。

China is laying the groundwork for war with Taiwan 中国は台湾侵攻の基礎固めを続けている

By: Mike Yeo

H-6K爆撃機の戦闘演習を前に更新する航空兵 (Yang Ruikang/People's Republic of China)

国は台湾侵攻に向け準備体制を強化している。多方面の軍事能力を強化すべく制度改革と予算投入を続けており台湾を屈服させる選択肢を模索しているとペンタゴンが報告書で指摘した。
選択肢には海空での台湾封鎖から全面侵攻まであるが、後者では揚陸艦船の大幅拡充ができていないと5月2日に公開の国防総省による年次中国軍事力報告書は指摘している。
とはいえ、報告書では人民解放軍PLAが部隊再編を続けており「結果として戦力を拡充した旅団連隊レベルの部隊が生まれる」可能性を指摘し、「陸軍航空戦力の拡充と航空強襲旅団2個の新編で台湾侵攻に向け航空強襲攻撃とともに近接航空支援能力が生まれる」としている。
PLAは空からの兵力投入能力の拡充のため空挺部隊を再編し航空強襲部隊を新設し、重要拠点の確保を狙う。組織改編で空挺歩兵旅団、特殊作戦旅団、航空旅団や支援旅団が誕生し、2018年の演習では長距離襲撃作戦や空挺作戦を実戦を意識した展開を示した。
2016年には統合補給支援部隊を新設し、台湾侵攻のような戦略的意義のある作戦への支援を目的とする。作戦の成否は統合補給活動の指揮統制や補給品の供給や各種軍民統合支援活動にかかる。戦略支援部隊は電子戦、サイバー作戦を台湾侵攻時に担当し、「戦場の情報統制を現代の情報戦の形で行う」のが目的だ。
報告書ではPLAが情報業務を統合し戦域レベルで情報収集監視偵察能力を活用する方法を模索していると指摘するが、こうした戦略的効果統合で障壁だった条件を取り除く戦略的組織改編にも触れている。
とはいえ、報告書は中国の現行戦力で全面侵攻が実施できるか疑問を呈している。水上艦艇、潜水艦は質量ともに拡充しているがPLA海軍に新規就役したドック型上陸舟艇はわずかで「当面の重点が上陸用艦艇の充実より小規模遠征ミッションに置かれているのはあきらかで大規模揚陸強襲作戦は実施できない」とする。
拡充続くPLA陸戦隊の即応体制も疑わしいとし、演習も大隊レベル以上はごくまれで、新設旅団も「必要装備を受け取っておらずミッションを完全実施できる状態ではない」とする。このため報告書ではこうした部隊の訓練題目は「基礎の域を脱せず装備未達の旅団では揚陸強襲作戦の実施は不可能」とし、台湾侵攻は政治的リスクも伴い「中国軍にとって実施の難易度は高い」と結論づけている。■


ということは中国はプロパガンダを強めても実際の揚陸強襲作戦は当面は実施できないということですか。これも張り子の虎現象でしょうか。ともあれ、台湾周囲を封鎖するとか強圧的な態度を示すとかいやがらせはつづくでしょうね。最大の危機は今年秋の総統選挙への干渉でしょう。揚陸作戦を実施せずとも台湾を支配すべくいろいろ悪いことを考えているのでしょう。そこに揚陸作戦能力が実現したらもう止められなくなります。貴重な今の期間をどう活用するかが台湾の運命を分けそうです。

2019年5月8日水曜日

空母打撃群、爆撃機の中東展開がイランへの軍事圧力になるとイランはどんな対応をするだろうか

コメントは下にあります


Carrier And Bombers Ordered To Middle East Without Any Details On Supposed Iranian Threat 具体的なイラン脅威が不明のまま

空母、爆撃機の中東派遣へ

The announcement came from National Security Advisor John Bolton in an official statement that lacked any specifics on what caused prompted it. ジョン・ボルトン国家安全保障担当補佐官の発表には背景理由が欠如したままだ

BY TYLER ROGOWAYMAY 6, 2019

ンカン空母打撃群(下コメント参照)および戦略爆撃機がペルシア湾地域に展開することで相反するメッセージが出ている。ペンタゴンでも大統領でもなくホワイトハウス報道官でもなく国家安全保障担当補佐官ジョン・ボルトンが最初に伝えた。ボルトンの公式声明文は以下のとおりだ。
「事態悪化の兆しが増えている状態に対応し米国はUSSエイブラハム・リンカン空母打撃群および爆撃機部隊を米中央軍に派遣し、明白かつ誤解の余地のないメッセージをイラン政権に送り、米国の権益あるいは同盟国の権益を侵害する事があれば容赦ない軍事力で応酬すると伝える。米国はイラン政権側と開戦を望むわけではないが代理勢力、イスラム革命防衛隊あるいはイラン正規軍から攻撃を受ければ全力で対応する準備が整っている」
マイク・ポンペイオ国務長官も今回の配備は「以前から準備立案されてきたもの」であり新しい情報が入ったためでも状況で何らかの変化があったわけでもないが「イラン側に状況を悪化させる対応が出ている」としながら実際の内容には触れなかった。
ここで疑問が出る。予め予定されていた配備を利用しイランにメッセージを伝える意図なのか。ボルトン声明にはイスラエルが受けたロケット攻撃の言及はなく、米軍展開が突然行われる背景を説明していない。イランの支援を受けるハマスがロケット弾数百発をイスラエルに数日前に発射し、イスラエルもハマスが拠点を構えるガザに大規模報復攻撃を加え、イランの連絡要員も殺害され、イスラエル軍が意図的に殺害を図ったのは久しぶりのことだ。
USSエイブラハム・リンカンおよび護衛艦艇は最近まで東地中海を遊弋しており今回はスエズ運河を通過し米中央軍の管轄地区に入る。地域内で要注意地点が2つある。マンデブ海峡とホルムズ海峡でともにイランとその代理勢力がいつでも封鎖できる。一旦封鎖されればグローバル規模で市況だけにとどまらない大きな影響が出る。マンデブ海峡は低度ながらミサイルが飛び交う海域になっており、イランにホルムズ海峡封鎖の能力が有ることを米国も承知しており、こちらも封鎖されれば米軍自体の補給活動が深刻な影響を受ける。
またキアサージ揚陸即応集団(ARG)がペルシア湾にいたことが判明しており、USAFのF-35AもUAE国内のアル-ダフラ航空基地に展開している。
USN
USSエイブラハム・リンカン艦上の航空機運用。地中海にて。

爆撃機を中東に再派遣する命令に興味を感じる。B-52とB-1B部隊は久しぶりに中東への常時派遣体制を解かれたばかりで、B-1Bはカタールのアル-ユデイド基地から3月に撤収し、機体整備の時間や改修作業が可能となり乗員もミッション訓練に当たると見られていた。
B-1B部隊は酷使されており、中東からの撤収が完了ししばらくは休養するはずでトラブルが報じられた射出装置もその理由だった。その機体が先週に入り飛行再開した。アラビア半島への再派遣の機種は不明だ。
今回の移動とメッセージ発信はイラン原油輸入禁止の特例扱いを受けてきた8カ国にトランプ政権が突如として措置停止を発表した直後である。ホワイトハウスはイラン制裁再実施にともない特例扱いを認めてきた。該当する原油輸入8カ国と切り離しイランに圧力をかければイランが悪行に走るリスクも増える。このことを念頭に今回進行中の出来事はすべてイランの脅威を想定して予め立案されていたのだろう。
最大の圧力をかける意図はジョン・ボルトン補佐官の考えで、イランに関し同補佐官は長年タカ派で知られ、イランのミサイル開発、核開発、さらに国外への戦闘員派遣をめぐり政権変更が必要と主張してきた。
米国や同盟国との長期戦となればイランに勝ち目はないが、代償も非常に高くつく。イランには弾道ミサイルを雨のように域内に降らす能力があり、米軍の集積拠点も狙うだろう。ペルシア湾は一挙に対艦ミサイルの飛び交う交戦地帯になり、大規模破壊とともに環境面でも大惨事が生まれよう。
ホルムズ海峡が機雷封鎖されれば掃海活動は戦闘が終わらないと実施できないだろう。これにより原油の大量輸送が停止され世界経済は恐慌に陥り特に貧困国が大打撃を受けるだろう。
AP
国家安全保障担当補佐官ジョン・ボルトン

イランも代理勢力も動員し米権益や同盟国の権益を全面的に攻撃してくるだろう。ヒズボラもレバノンでロケット弾数万発を発射しており、その他高性能兵器も保有しイスラエル北部に第二戦線を開くだろう。ヒズボラの戦力を考えるとこの戦線だけでも深刻な事態になるはずで、ヒズボラにシリアでの戦闘経験が豊かなことを留意する必要がある。
これですぐに政権交代にはならないがイラン国民も開戦に興奮しこそすれ指導部は国民の不安を払拭に腐心するはずだ。米国民にも中東でまた戦火を開くことに積極的になる理由はなく、まして長期間にわたり占領者になるつもりもない。だが事態が劇的にエスカレートすれば限定的な対立で始まっても次第に選択肢が狭まっていくはずだ。
イランと戦争になればイラク侵攻など可愛く見えるはずだ。局地的ながら政権変更を目指す作戦は信じられない代償を人命と予算で求めてくるるだろう。ジョン・ボルトンのタカ派外交政策によりイラク戦の破滅的結果に我々は導かれたのだが今回も本人はイランで同様に動こうとしている。各方面から警報が鳴り響いている。無視してよしくない。
米国権益を脅かすイラン行動で現実の情報がったのであれば、軍事装備を大量動員して恐れが現実になるのを防ぐのは理にかなう。だがもし現政権がボルトンが永年に渡り熱望しているようにイランをぶちのめすつもりなら、実施には代償がついてまわり一度始めれば止まらなくなるのではないか。■
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日本はイランというか中東情勢に鈍感ですね。しかし事態はどんどん進展しています。日本にとっての安全保障ラインでもあり決してのんびり見物というわけにいきません。空母打撃群一個でも相当の戦力がありますが、これ以上の軍事力投入は当面不可能ではないでしょうか。今後も動向に注意すべきです。

なお、カナカナ表記に読者から疑問が出ていますが、当方は原語発音となるべく似た表記に変えるべきとの主張なので、このブログでは自由にさせてください。その場合慣用表記とは自由にさせてもらっています。これで英語を話す際にもいちいち思いっきり発音を変える必要が減るかなと思いますか、いかがでしょうか。

  アビオニクス → エイビオニクス
カリフォルニア → カリフォーニア
エネルギー → エナジー
リンカーン → リンカン

話はかわりますが、日本には駆逐艦はない、護衛艦だとの読者の声が以前ありましたが、ちゃんとDestroyerと日本も表記しているのであり、護衛艦などということばは国内向けに作られた「便宜用語」に過ぎないのです。こうしたごまかし、日本戦後の閉ざされた言語空間に穴をあけたいとのささやかな希望を持っていますのでこういう「わがまま」を許していただきたいと思います。さらに言えば自衛隊員が公務員扱いという制度上の落とし穴(戦闘で捕虜になったらどうなるのか)も「護衛艦」につながる時間稼ぎ、ごまかしで肝心の問題を先送りしてきたつけを払わされるのでしょうね。しかし最大の先送りは憲法改正ですね。