2021年5月5日水曜日

クアッド:オーストラリア、インド向け装備品の大型FMS売却案件がまとまる。オーストラリアには装甲車両、CH-47、インドにはP-8追加

  

 

米海軍のP-8ポセイドン。インドが追加調達の意向を示している。 (US Navy)

 

イデン政権はオーストラリア及びインド向けに有償海外軍事援助制度(FMS)を活用した装備品売却を4月末に承認し、総額436億ドルの商談が米企業に生まれる。

 

4月29日、オーストラリアは重装甲戦闘装備一式購入を16.85億ドルで承認された。またCH-47Fチヌーク輸送ヘリコプター4機購入を2.59億ドルで承認された。翌30日にはインドはP-8I海上哨戒機を24.2億ドルで6機購入できることになった。

 

FMSによる販売案件では国務省がまず承認し、国防安全保障協力庁(DSCA)が議会に送付する。議会通知で売却が自動的に決定するわけではない。議会が反対しなければ、該当国との協議に移り、その過程で金額と数量が変更となることがある。

 

案件はともに米国が重視するインド太平洋地区の二大重要同盟国向けであり、両国は「クアッド」で米国、日本と並ぶ有志連合の一部だ。

 

インド向け売却内容にはP-8Iの6機以外に通信装備、エンジン、航法装備、契約企業向け支援を含む。ボーイングが主契約企業となり、作業はシアトルで行う。提案内容は「米国の外交安全保障を支援すべく米印戦略提携を強化するのに役立ち、相手国の安全保障を改善することでインド太平洋及び南アジア地区の政治安定、平和、経済進歩で重要な作用を引き続き発揮する」とDSCAは案件の意義を説明している。

 

インドは先にP-8Iを8機2009年に一般民間取引の形で導入しており、2016年に4機追加調達した。インド海軍が同型機を2013年から運用している。

 

オーストラリア向け重装甲戦闘システムにはM1A1戦車の車体構造160基を米国内在庫から提供し、これを各種車両装備にする。M1A2 SEPv3エイブラムズ主力戦車75両、M1150強襲突破車両29両、M1074共用強襲橋梁車両18両、M88A2ハーキュリーズ戦闘回収車両6両、AGT150ガスタービンエンジン122基となる。

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発表内容で興味を引くのは「特化装甲装備の開発」という表現だが、内容の詳細には触れていない。ジェネラルダイナミクス・ランドシステムズ、BAEシステムズ、レオナードDRS、ハネウェルエアロスペースが関与するとある。オーストラリアはFMSで民間企業の見返りを要求するのが常である。

 

「M1A2 SEPv3主力戦車はオーストラリアで供用中の M1A1 SAの改修となりオーストラリア装甲軍団の戦力構造に変化は生じない」「M88A2車両の追加配備でオーストラリア戦車部隊の車両改修機能が向上する。M1150強襲突破車両(ABVs)およびM1074共用強襲橋梁車両(JAB車両はオーストラリア工兵部隊に新装備となり、架橋及び突破能力を付与し、オーストラリア工兵部隊の機能と生存性を高め、装甲部隊の機動性を高める」とDSCAは説明している。

 

チヌーク案件は4機が対象で、「専用改装」を施すとある。T55-GA-714A 航空機用タービンエンジン8基他ミッション装備品を含む。機体は米陸軍の備蓄から提供する。

 

トランプ政権で承認済みFMS案件をバイデン政権下の国務省が執行停止し内容を点検していたが、これまで15件が承認ずみで、総額は8.9兆ドルに達している。■

 

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India, Australia cleared to buy $4.3B in US military gear

By: Aaron Mehta 5 hours ago

 


2021年5月3日月曜日

正念場を迎えるF-35。何が問題でどこまで解決しつつあるのか。F-35不要論が出る環境になってきた。米空軍は別機種検討に入った模様で存続に黄信号。





ここがポイント

  • 米空軍で最重要と位置付けられてきたが高コスト、低稼働率、その他の問題が一向に解決されず、厳しい目を向けられている。

  • 性能に一定の評価があるが、整備コストが高水準のまま、部品供給の課題が解決されないF-35は、バイデン政権初の予算提案を待ち構える議会内の反対勢力に攻撃材料を与えている。


ッキード・マーティンのF-35納入は毎月11機で、うち5機が米空軍向けとおおむね予定通りとなっている。運用側は性能におおむね満足している。だが部品問題、エンジンの支援体制は数年かけても未解決な中でバイデン政権は国防装備調達の新組織を立ち上げようとさえしている。


3月初めに下院軍事業務委員会(HASC)委員長アダム・スミス(民ワシントン)がブルッキングス研究所主催のイベントでF-35の「損失額を削減する」画期的な方法が見つからないことに感嘆していた。同委員長は維持経費が「莫大」な同機事業は「予算の無駄遣い」とまで述べた。同月、HASCの即応体制小委員会でジョン・ガラメンディ委員長は「F-35全体を大きく懸念」していると述べた。


ガラメンディ委員長は「大量調達しても、先に調達した機体が維持できない。そうなると調達が増えても全体戦力は低下してしまう。これは止めなければ」と語っている。


同議員によれば議会は空軍に対し「全体整備計画」を数カ月以内に作成するよう命じるべきとし、F-35含む新型装備、極秘装備を本当に使いこなせるか質したいとする。


ケリーACC司令官の解決策


航空戦闘軍団司令のマーク・D・ケリー大将はF-35製造支援施設を3月視察し、F-35の稼働率改善並びに現在時間当たり36千ドルの飛行経費を下げる確証が見つかると期待していた。しかし、ケリー大将は確証は得ていないとしている。


「空軍はF-35に賭けており、同機の性能は国家安全保障で必要となる水準に合致している」とケリー大将は述べた。これに同調するのが参謀総長チャールズ・Q・ブラウンジ・ュニア大将で、F-35を航空戦闘力で「不可欠な存在」と評している。ケリーは「同機はその他空軍戦闘機部隊を下支えする存在でなければならない」と加えた。


問題はF-35の飛行時間当たり運航コストを2025年までに25千ドル(2012年度ドル価格)に下げるとする目標が実現できるかだ。インフレを加算すると2021年で28,867ドル、さらに2025年で32,233ドルに相当する。


「合理的判断ができるなら同意しないはずだ」とケリーは言い、「ロッキード・マーティンは2025年25千ドル目標は達成可能と今も主張しているが、自信がどこから来るのか」とする。インフレ3パーセントとすると現在の機体価格、整備コストは35パーセント以上も下げる必要がある。


これ以上に重要な課題は存在しない。空軍には「高性能、高稼働率かつ購入可能な価格帯のF-35を戦闘機部隊の中心とし、いかなる競合勢力に打ち勝てる装備品」として必要だ。


ただケリー大将はF-35の運用実績は良好で本領を発揮しているとした。「18カ月にわたりロシア製統合防空体制が整備されたシリア国内外でF-35Aを作戦投入し、海兵隊、英海軍がF-35Bを各地で運用している。機体の完成度が高まり、厳しい空域で非常に高い性能を示してる」


ユタ州ヒルAFBから六カ月展開を三回行ったF-35の42機は延べ1,300ソーティを各5時間で行った結果、350発を投下し3.700発の機関砲弾を発射した。平均稼働率は70パーセントだった。各機支援に1,100名が動員された。


だが空軍はこれで満足せず、さらに高い水準をめざすとケリーは「『厳しい環境でもよく機能できた』から『高度なまで厳しい環境で抜群の機能を発揮した』に進展させる」としており、テクニカル・リフレッシュ3改修で同機のブロック4機能を「開放」する必要があると説明した。


このテックリフレッシュ3(TR3)は新型コアプロセッサー、レーダー性能向上、新型コックピットディスプレイで構成し、ソフトウェアも改良を加え、電子戦能力を引き上げる。


ブラウン大将は空軍協会主催の航空宇宙戦シンポジウムでF-35調達のペースを加速することが戦闘機部隊の近代化につながるとしながら、この実現性は低いと2月に述べた。「現在の予算環境では各種事業の『加速化』は困難」とし、空軍のめざすF-35Aの1,763機調達規模には変化はないものの、年間60機の調達では目標達成は2040年になってしまう。


次の機材登場まで待てるか


目標達成につながりそうな方策が出ている。F-35共用事業推進室(JPO)の広報官が3月に一部軍で「導入を先送りしブロック4性能の実現を待つ」F-35調達予定の変更への動きがあると述べていた。


今後始まるF-35製造ロットは三つあり、現在交渉中だが、製造数は先のロット三個分より100機減るとロッキードで長年F-35事業に携わり最近航空部門の執行副社長になったグレゴリー・アルマーが明らかにしている。


ケリーも空軍は新型機開発に何十年も待つ余裕はないとし、F-35開発に時間がかかりすぎているとする。過激主義勢力が相手なら、USAFは「老朽機材や予定を上回るコストで納期が遅れたり、予定より納入機数が少ない機材」でも敵を「壊滅」させられる。だが、大国相手ではこうはいかない。時間が重要要素だ。ブロック4仕様のF-35は「大国の機材に十分対抗でき勝利できる」が「そのためにはTR3が時間通りに実施できることが必要」なのだという。JPO広報官はTR3改修は「2023年予定のロット15から行う」とした。


ケリー大将は空軍が「2030年までに戦闘対応のF-35飛行隊を20個整備する予定に向け順調に推移中」とし、国防戦略構想の方針を実現するとした。もし24機編成で飛行隊を整備すると、20飛行隊で480機なので、実現は2027年になる。年間60機調達のままだと、2030年で8飛行隊追加となる。その後は不明だが、他機種の選択肢があれば、F-35事業は予定より早く打ち切りになりかねない。


実際に空軍は別の選択肢検討に入っている。ケリーは航空宇宙戦シンポジウムで次世代制空機(NGAD)について中国より先に第六世代機材の開発を完成させる必要を訴えた。


「この国に中国より先に性能を実現する決断と集中力があるのかわからない」(ケリー) 米国式の戦争では制空権確保が前提で、「これがないままの戦闘作戦は想定外だ」という。


そこで新型の各軍共用戦闘航空機材の研究が進行中で航空戦闘力の分析とともに今後求められる機材構成を模索している。その構成はおそらくNGAD、F-35、F-15EXと無人機になるはずで、無人機に兵装、電子戦装備を搭載し援護任務につかせる。また低度脅威には低コスト有人機を、その他ミッションには低コスト消耗品扱い無人機を投入することになろう。こうした機材は戦闘中喪失が受容できるほどの低価格が条件だ。


F135の予備エンジンはわずか12パーセント分しかなく、本来は25ないし30パーセント必要だ。C-17グローブマスターIII輸送機がアラブ首長国連邦アルダフラ航空基地に到着し、現地で運用中のF-35修理用のエンジンを搬出している。Tech. Sgt. Charles Taylor


フル生産への道が遠い 


バイデン政権はF-35の20年にわたる開発をどこかの時点で終了し本格生産移行の宣言をどこかの時点で迫られる。トランプ政権の調達維持事業のトップ、エレン・ロードが18カ月延期してきた。理由としてF-35を共用シミュレーション環境に投入するのに困難があったことがある。


同上JPO広報官は解決にまだ数カ月かかると認めたが、生産が本格的に拡大するとは見ていない。コスト削減効果はペンタゴンが複数年度調達に向かうことにより生まれる。


ロッキードのアルマーもF-35機体価格の下降傾向は続かないとみており、ロット15から17にかけ生産機数が減ること、高性能ブロック4仕様になることを理由としている。


F-35の維持にかかわる問題はつまるところ一つの問題につながる。事業開始直後に各部品の供給を楽観的にとらえすぎており、補給処や整備要員の訓練も同様だった。各要素が欠乏してミッション実施率が低迷し、部品や技術要員の確保を実戦部隊に優先してさらに悪化している。


米会計検査院(GAO)は稼働率の低さの原因として部品不足を2019年4月に指摘しており、改善は遅いとしていた。サプライヤーはA-C型以外に仕様別の各種部品を製造しており、予備部品確保が困難な状況が続いている。さらに部品はF-35共同開発パートナーの16か国で共有する。GAOは各軍でF-35部品の在庫状況を把握していないのを問題視している。海兵隊F-35で部品が同時に展開中の他機と互換性がなかった事例が発生したという。


ロッキードでF-35の運用維持にあたるケン・マーチャント副社長は部品入手率が改善していると今年2月述べている。以前は47パーセントだったが97パーセントになったという。改善は今後も続き、今年は五か年の改善計画の二年目にあたる。


エンジン問題

 

F-35が搭載するプラット&ホイットニーF135エンジンも支障を生んでいる。最悪の場合、空軍は2025年にF-35Aの2割でエンジンが稼働できなくなるとしており、JPOもこれを認めている。


問題は多様だ。政府がF135エンジン発注数を絞ったため、稼働率が高くならない。またF-35のエンジン補給体制も軌道に乗っていないのはプラットから必要な工具道具類の供給が遅れ、補給処に訓練済み人員が不足しているためでもある。


「悪循環ですよ」と空軍の補給部門関係者が述べている。「必要な人員を投入する前に工具類が必要なのですが」とし、プラットは「何とか予定通りに動いているが、人員確保に時間がかかる。特にパンデミック状況では」


またF-35の機体維持が国際規模の構想になっているのも課題だ。「技術的にエンジンはわが国だけの所有物ではありません。エンジンは協力国間で共有し、交換したら別のエンジンがやってきます」(同上関係者)


エンジンも二型式あり、A型C型用とF-35B用だ。F-35の開発段階が終了に向かう中でエンジン仕様も落ち着き、サプライヤー各社も集中して利用できるエンジンが増えるとの見方が業界関係者にある。


「基本的に予備部品供給は成熟化しつつあり、必要な場面に使える状態になってきた」と業界関係者が述べている。「ただ、未対応の部品がある」


業界ではプラット側サプライヤー企業が要望に追い付いていないとの指摘がある。F135の予備は12パーセント台に終始しており、本当に必要な25-30パーセントに及ばない。


「補給処がちゃんと機能していれば予備エンジンはそこまで必要とならない」と業界関係者がコメントしている。「だが補給処の対応が間に合わないと不足する」


F135では別の問題もある。高圧タービン部のファンブレイド塗装だ。中東の砂がカルシウム、マグネシウム、アルミナ珪砂含むCMASとして吸入され、高圧タービン部で加熱されることでガラス状に溶融しブレイド表面の塗装を損傷させる。プラットは一年前に塗装剤を変更したが、耐久性が向上し、ブレイドは以前より長時間稼働できるようになったが、最終的な耐久性は未知だ。


ケリーはF-35の中東地区運用に制限を付ける予定はないとするが、エンジン不足問題は短期的に解決されると発言した。


砂漠の運用環境はエンジン寿命を短くする要因の一つとケリーは述べ、「エンジン運転時間、エンジンの経年数、異物による損傷、補給処の運用能力」もその他の要因だという。エンジン不足の解消策としてACCはF-35飛行展示チームの活動を減らし、エンジンを「戦闘訓練及び実戦の要求に対応させる」としている。


PBLへの移行


ロッキード・マーティンは実績ベース補給活動(PBL)をF-35事業協力国に2019年提言し、今年2月に同社は単独契約企業を選定する予定を公表した。同社は2025年までに25千ドル/時の運用コスト実現を目指している。ペンタゴン関係者はからは機体維持活動に関し。ロッキードにさらなる裁量を認めることにJはPOが及び腰との評がある。


節約効果はサプライヤー企業が今以上の経済効果を生む大量発注を受けることで生まれるとマーチャントは述べている。ロッキードはすでに一部業者と5年契約を結んでおり、政府とは年度別契約でも、以前問題を起こしたサプライヤー企業に「正しい行動」を取らせるとしている。


ロッキードとJPOは行き詰まっている自動補給情報誌システムALISから運用データ統合ネットワークODINに切り替えを図っているが、まだ道半分といったところだ。ALISは20年前の技術がベースとロッキードは認めており、大

幅刷新が必要になっていた。新システムは安定度を高め、誤発注を減らし、使用が楽になるという。


ALISからODINに完全交代するのは2022年末の予定で、F-35部品の稼働状況や対応ぶりの解明が進むことで予知保全につながることが前提だ。


F-35でこうした機体維持の改善が実現すれば米空軍は1,763機調達という目標の実現に近づきそうだ。だが、今のペースで別問題が予算と労力を消費している状態では、F-35は次の戦闘機材へのつなぎに終わりそうで、以前想定された活躍は実現しないかもしれない。■


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Make-or-Break Time for the F-35

By John A. Tirpak

April 23, 2021

 

中国との対決に備え、装甲車両部隊の整備運用を再構築しつつある陸上自衛隊だが、輸送力確保など他部隊との協調連携が不足したまま突っ走っていないか検証が必要だ。

 


Japan Self-Defense Force tank armored vehicle

10式戦車(左)、90式戦車(右)と16式機動戦闘車両 January 12, 2020. KAZUHIRO NOGI/AFP via Getty Images

 

ここがポイント

  • 日本は冷戦時にソ連に対抗すべく装甲部隊を大規模整備した

  • 中国の台頭で新しい課題が生まれ、日本は装甲車両を一新しつつ使用方法を変えようとしている


二次大戦期の日本装甲部隊はわずかな例を除き、連合軍戦車部隊の数量に圧倒され勝ち目は薄かった。


この経験とソ連の脅威から戦後の日本は戦車開発を進めた。1990年代には高性能装甲部隊を大規模整備するに至った。


だが、自衛隊は軌道修正を迫られている。


中国の脅威の台頭により陸上自衛隊は装甲車両、火砲集中投入を前提とする北部展開方針から迅速に南西部に展開可能な機動性部隊の必要に直面している。


このため、輸送力整備、新型装甲車両の開発、さらに陸上自衛隊戦車部隊そのものが変わろうとしている。


ソ連への守りだった


Japan Japanese Type 61 tank

61式戦車 November 18, 1985. US Defense Department


両大戦間の日本の戦車部隊は近代的かつ革新的な存在だった。だがドイツ及び連合国が工業力にものを言わせ新型戦車の数々を第二次大戦中に登場させ性能向上させたのに対し、日本の限られた工業力では対応できなかった。


さらに第二次大戦の日本軍の戦略は南方侵攻で、大規模戦車戦は想定されず、海軍や航空機の整備を優先した。


戦後の日本は西側技術や設計にアクセスが許され、戦車の重要性を改めて認識し、ソ連侵攻に備え高性能装甲部隊の整備に注力した。


冷戦時の日本戦車部隊は61式、74式の両主力戦車が中心で90mm砲105mm砲を各搭載した。当時としては高性能車両で大量整備した。


1990年に90式戦車が導入され、50トンの車体に120mm砲を搭載し、あらゆる点で第一線級戦車となった。モジュラー式複合材装甲、レーザー測距、火器管制コンピュータ、熱探知暗視機能、自動装てん装置を搭載し、ドイツのレパード2A4に匹敵する戦車となった。


当時の日本はソ連侵攻の主戦場を北海道と想定し、戦車多数を配備した。1976年時点で陸上自衛隊は戦車1,200両、火砲1,000門の大部分を北海道に常駐させていた。


軽量かつ高機動の追求


Japan Self-Defense Force Type 74 tank

74式主力戦車 August 24, 2017. Tomohiro Ohsumi/Getty Images


冷戦終結でロシア侵攻の脅威は事実上消滅し、自衛隊は戦車台数の削減を決め、1995年の900両が現在は570両程に減った。さらに300両まで削減する。


90式は61式。74式の更改用に導入され、他方で新型戦車10式、16式機動戦闘車両が開発された。


このうち2012年に導入された10式は74式と交代し、90式を補完する存在だ。


最大重量48トンの10式は90式より軽量で取り回しが容易で、車体サイズのため90式が北海道及び富士山周辺でのみ運用が制限されるのに対し、10式は関係法規に合致し全国で運用可能となった。



10式の装甲はモジュラー式セラミック複合材とナノ結晶鋼材を採用している。モジュラーは追加、取り外しが可能でミッションや損傷程度に応じ対応できる。主砲は120mm砲で自動装てん方式だ。10式で注目を浴びるが電子装備機能で、高性能指揮統制機能で近辺の自衛隊部隊との交信・情報共有が可能となった。


これに対し16式は10式戦車導入後に登場した。車輪走行方式だが、戦車砲塔を搭載し、軽戦車の機能があるため、近接交戦、反抗作戦、地上部隊への直接火力支援に投入できる。


105mmライフル砲が主装備で車重26トンの16式は日本各地に移動可能で航空自衛隊輸送機で輸送できる。


南西部脅威への対応


Japan Self-Defense Force Type 16 Maneuver Combat Vehicle

16式の実弾射撃 May 23, 2020. CHARLY TRIBALLEAU/POOL/AFP via Getty Images


軽戦車の導入は一見理に反するが、今後の自衛隊の戦力構造に適した装備で、日本南西部で中国の脅威に対応する。


「冷戦が過去となり今までと違う脅威が現れる中、日本は国防の考え方を変え、真の脅威への対応を追求している」と日本の安全保障に詳しいRANDコーポレーションのジェフリー・ホーマンが語る。


「成果がここ10年、15年で具体化し、中国の脅威を意識している」


脅威は空と海が主な舞台だが、日本が実効支配中の尖閣諸島を中国が狙っている。日本指導部は中国の尖閣侵攻はあっても本土侵攻の可能性は低いとみている。


「中国が日本本土に揚陸作戦を展開するとは見ておらず、重装備装甲部隊の整備は不要と考えている」「かわりに南西部島しょ部分の環境に適した形で陸上自衛隊を投入し戦闘対応させる必要がある」(ホーマン)



迅速展開能力が必要だが


中国が大型島しょ部を攻撃すれば戦車部隊が重要装備となる。このため陸上自衛隊は迅速展開部隊を整備し、揚陸作戦に特化した部隊も創設した。


同時に輸送が容易な装甲車両、火砲を取得して、対艦対空攻撃能力を重視する一方、V-22オスプレイを隊員輸送に役立てる。


とはいえ陸自には未解決の課題もある。海上輸送力の欠如だ。主な脅威が南西部にあるにもかかわらず、迅速展開部隊の半数は今も北海道にある。


16式は空輸可能だが、90式10式は海上輸送が必要だ。外縁部への展開では隊員・装備の大半は海上輸送で対応せざるを得ない。


この任務に対応するのが海上自衛隊のおおすみ級戦車揚陸艦三隻で、2024年までに新型揚陸艦3隻を導入する予定だが、それでも輸送能力は必要規模より低く、有事に投入可能な艦艇が著しく不足する危険な状態だ。


「即応対応部隊を他軍の空輸、海上輸送能力をよく考慮せず整備してしまった点に問題がある」とホーマンは指摘する。■


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Japan Rethinks Use of Tanks to Prepare for Potential Clash With China

Benjamin Brimelow 1 hour ago


2021年5月2日日曜日

世界最強の五大空軍部隊リスト。意外な国がランク入りしています。

 

世界最強の5大空軍。規模のみならず訓練、装備も優れた部隊とは。

 

ここがポイントHere's What You Need to Remember: 中国空軍が機材近代化を目指す中、中国の航空産業界は新型機を次々に発表している。第五世代戦闘機を2機種同時に開発し、大型J-20戦闘機と小型J-31戦闘爆撃機が生まれた。

 

界最強の5大空軍の定義は容易ではない。規模、訓練、装備で優れた空軍でなければならない。その点でロシアが微妙になる。ロシア空軍機材は多くの国より機齢が高い。プーチンの発言を体現化する存在でNATO・日本の空域を脅かす行為を繰り返している。中国も似たようなものだ。

 

そうなると選定がややこしくなる。弱点が表面に出るのだ。装備、訓練は優れていても予算面が弱く、国防任務をこなす規模がない部隊、装備は素晴らしいが訓練が劣る部隊もある。(中東地区のほぼすべての国がこれにあたる)

 

今回は規模、影響力、ミッション実施効果を基準として選定した。

 

1. 米空軍

 

米空軍(USAF)は航空、宇宙両面を主任務とする。大陸弾道ミサイルからX-37宇宙機、A-10対戦車攻撃機まですべて担当する。軍用宇宙打ち上げの調整機関であり、陸軍部隊を降下させる他、ISISに空爆も行っている。

 

USAFの作戦機材は合計5,600機におよび、F-22ラプター、F-35、F-15、F-16の戦闘機、B-2、B-1、B-52の戦略爆撃機、C-5、C-17、C-130の輸送機がある。米本土以外に英国から日本にかけ分布する海外基地から運用している。

 

現役人員は312千名と人民解放軍空軍に及ばないが、運用機数はPLAAFより多い。

 

USAFは世界初のステルス機を運用し、第五世代戦闘機も初となった。予定ではF-35を1,763機のほか、有人無人操縦切り替え式の長距離打撃爆撃機B-2を100機程度導入する。無人機ではステルス性能と攻撃力を重視しており、今後比重を増やす。

 

USAFは米核兵器三本柱の二つを受け持ち、大陸間弾ミサイル450発と戦略爆撃機部隊を運用している。

 

2. 米海軍・海兵隊

 

米海軍・海兵隊合わせると各型式合計3,700機と世界第二位の規模となり、別項で扱うのが妥当だ。うち戦闘機1,159、攻撃機133、哨戒機172、輸送機247、ヘリコプター1,231という内訳だ。米海軍機材は米艦隊の防空および世界各地の海上から航空作戦を展開する役目を果たしている。海軍、海兵隊の機材は大部分が過酷な艦上運用で、高度な訓練とプロ精神が求められる。

 

空母航空団がまず目立つ存在で、原子力空母11隻で運用する。航空団の機材構成はF/A-18スーパーホーネット60機の三個飛行隊、E-2Cホーク愛空中早期警戒機隊x1、EA-18Gグラウラー電子戦飛行隊x1、ヘリコプター飛行隊x1を標準とする。

 

その他機材に巡洋艦、駆逐艦等の運用するヘリコプター、P-3オライオンおよびP-8ポセイドン海上哨戒機があり、一部P-3は電子情報収集ミッションに投入されている。またTACAMO機で戦略核部隊へ核戦争時の指揮統制機能を提供している。

 

海兵隊機材は海軍機の一部として算入した。海軍艦艇から運用するものの、海兵隊の目指す空地一体作戦に使われ、海兵地上部隊の支援を重視している。

 

3. ロシア

 

ソ連崩壊で空軍機材多数が新生ロシアの手に移り、運用を続けている。

 

ロシアの戦闘機材は1,500機、ヘリコプター400機で、大部分は旧型で改修を受けておらず、整備維持も適当だ。MiG-29、Su-27、MiG-31は冷戦中に登場した機体だ。

 

ロシア空軍はICBM運用を任されていないが、戦略爆撃機のTu-95ベア、Tu-22バックファイヤ、Tu-160ブラックジャックの各型を運用する。

 

そのロシア空軍も近代化を継続実施できるようになり、新型戦闘機の投入や開発が進んでいる。一例がSu-35で、長年活躍してきたSu-27フランカーに最新技術を導入し高い操縦性を実現した。ただし、導入規模は限定される。

 

ロシアの国防産業はT-50/PAK-FA戦闘機の開発に取り組んでおり、ロシア初の第五世代戦闘機実現を目指している。ロシアは同時に新型戦略爆撃機PAK-DA開発も目指しているとの報道がある。

 

ロシア空軍はウラジミール・プーチン大統領の強硬政策の最前線に立ち、NATO、スウェーデン、日本の領空付近で大規模作戦を展開しており、ロシア軍事力を誇示している。

 

4. 中国

 

人民解放軍のうち、人民解放軍空軍(PLAAF)と人民解放軍海軍航空部隊(PLANAF)が航空部隊を構成している。

 

合計すると戦闘攻撃機1,321、重爆撃・給油機134、早期警戒機20の規模となる。またヘリコプター700機の大半は中型機だ。

 

相当の規模に聞こえるが、機体の大部分は旧式機材だ。近代機と呼べるのは502機で、1980年代のロシアSu-27フランカーの派生型、国産のJ-10多任務戦闘機が中心だ。残る戦闘機819機は1970年代までさかのぼる機体で大きな脅威にはならない。

 

ただし、機材更新は続いており、中国航空産業界は新型機を次々に発表している。第五世代戦闘機2機種を同時開発し、大型J-20と小型のJ-31がある。またY-20戦略輸送機の開発に成功し、噂では西安H-6の後継機となる戦略爆撃機も開発中だ。米軍と同様に各種無人機の戦闘投入をめざしている。

 

その中で海軍航空部隊は急成長分野だ。初の空母遼寧に続き空母建造が続く。空母搭載機材の中心はSu-27派生型J-15戦闘機で、J-31が米海軍F-35Cに並び空母へ導入されるとの報道もある。

 

5. 日本

 

ダークホースが日本の航空自衛隊(JASDF)で、制空・多任務戦闘機300超が防空任務に特化して整備されており、空、陸、海の脅威に対応している。

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専守防衛方針を反映しJASDFは防空戦闘任務に特化している。防空が第一かつ最大の任務だ。日本は本土上空の制空権を喪失した結果を骨身に染みて理解している。

 

パイロットは日本領土への敵侵攻に備え地上攻撃も訓練しており、敵上陸部隊艦船攻撃も視野に入れる。ただし、長距離攻撃の訓練はない。

 

JASDFパイロットの練度は高く、各国もこれを認めている。USAF主催のレッドフラッグ演習に派遣されることも多く、日本領空に接近するロシア、中国機へのスクランブル出撃が増えて技量を維持している。

 

日本は最優秀水準を誇る制空戦闘機を米国から導入し、1980年代にF-15J、F-15DJ複座型合わせ223機を調達した。後継機としてF-22ラプター導入を期待していたが、米国がF-22輸出を禁じ実現を断念した。

 

そこでF-35A導入に切り替え、機数が順次増えている。また国産F-3開発でF-15の後継機にあてる予定で、今後登場する米製最新鋭戦闘機も調達不可能と想定している。一方で、F-15JとF-2で空対空戦能力増強の改修を行う。

 

早期警戒、指揮統制用には米製機材を導入しており、E-767早期警戒機x4、E-2Cホークアイx13がある。ここに最新のE-2Dを加え、防空任務の増加に対応する。■

 

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These 5 Air Forces Have Complete Control Over Earth’s Air Space

May 1, 2021  Topic: Air Force  Blog Brand: The Reboot  Tags: Air ForceRussiaChinaIndiaMilitaryTechnologyWorld

by Kyle Mizokami

 

 

Kyle Mizokami is a writer based in San Francisco who has appeared in The Diplomat, Foreign Policy, War is Boring and The Daily Beast. In 2009 he cofounded the defense and security blog Japan Security Watch. You can follow him on Twitter: @KyleMizokami. This piece was originally featured in 2014 and is being republished due to readers interest. 

Media: Flickr.


イージスアショアを新型多胴艦に搭載する案が浮上。海上自衛隊が既存設計から大きく舵を切るのか注目したい。イージスアショア設置を中止させた反対派はどう反応するのか。

 New Hibiki-class SURTASS Ocean Surveillance Ship Launched for JMSDF 2ひびき級三番艦あきの進水式でSWATH小水線面積双胴艦構造に注意。JMSDF picture

 

売新聞が2021年4月29日、防衛省がイージスシステム搭載艦設計の候補として多胴艦を検討中と伝えた。

 

2020年に中止となったイージスアショアを水上艦に搭載する構想が出ている。日本は同年12月に新たな艦艇建造を決定していたが、要求性能等は後日検討するとしていた。

 

海上自衛隊が4月9日公表したイージスシステム搭載艦に関する文書に多胴艦構想があり関心を集めた。同文書では「多胴艦設計の設計建造に関する知見」を要求しているが、これがあるのは三井E&Sのみで、海上自衛隊向けにひびき級音響測定艦を建造しており、艦艇建造事業は三菱重工業に移譲する。

 

読売新聞は多胴構造の利点として波の影響を受けにくいと解説し、「ミサイル発射に適している」とした。ただし、この説明には疑問が残る。確かに多胴構造船舶は波に強いが、ミサイル発射の好条件に直結しない。海上自衛隊の既存イージス艦はすべて単胴艦だがミサイル発射に支障があるという話はない。さらにイージスアショアにかわるイージス艦が展開されるのは日本近海で、波が高い公海ではない。となると多胴構造を検討する理由は甲板面積を広くとれることで大型構造物の搭載に適している。

 

防衛省のイージスアショア用のレーダー、垂直発射装置VLSは発注済みで支払いも完了している。製作は始まっており日本向けソフトウェアJ7.Bイージスウェポンシステムを搭載したSPY-7レーダーは今年2月に完成している。

 

日本国内報道ではSPY-7は陸上海上ともに対応可能jとある。ただし、大型で重量も大きいことため海上運用では搭載艦艇を海上自衛隊の既存イージス艦より大型化する必要があるという。この通りなら、多胴艦はイージス装備の要件を考慮したものだ。

 

ただし、多胴艦は建造費が単胴型より高くなり、途中で変更となる可能性も残る。■

 

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コメント ひびきは満排水量4千トン未満ですので、現行イージス艦以上の艦容としても2.5倍程度の拡大設計となるはずです。建造費は相当高くなりそうですが、他艦種への応用発展のための投資と考えれば合理的な決定になりますね。たとえばヘリコプター搭載大型高速輸送艦とか。皆さんはどう思いますか。しかし、イージスアショアを艦上運用すれば、いろいろ理由をこじつけてきた反対派も手も足もだせなくなりますね。


Japan's MoD New Aegis-Equipped Missile Defense Ships May Be Multihulls

Yoshihiro Inaba  01 May 2021