2022年9月3日土曜日

インド国産空母ヴィクラントの就役式典で首相はじめ異様な昂揚感のスピーチ。インドは新たな歴史に入った。

 

インド初の国産空母INSヴィクラントVikrantの就役式がコチン造船所で行われた(Source: https://twitter.com/ThingsNavy)




インド国防省の報道発表より


ュリ・ナレンドラ・モディShri Narendra Modi首相は2022年9月2日、コチン造船所(CSL)で初の国産空母インド海軍艦船(INS)ヴィクラントを就役させ、国産建造力の高まりを示すとともに、「Aatmanirbhar Bharat」(インド自立)への道で大きなマイルストーンとなった。式典で首相は植民地時代の残滓を取り払い、豊かなインドの海洋遺産にふさわしい新しい海軍の軍艦旗(Nishaan)も発表した。首相は、新しい海軍旗を古代インドの英雄チャトラパティ・シヴァージーに捧げた。

 式典で首相は、「ここケララ州の海岸で、すべてのインド人が新しい未来の日の出を目撃している。INSヴィクラント就役式典は、世界の地平線で上昇するインドの精神に敬意を表するものである。今日、私たちは、自由戦士たちが思い描いた、有能かつ強いインドの夢の実現を目の当たりにしている」と述べた。

 「ヴィクラントは巨大で、重厚で、広大である。ヴィクラントは単なる軍艦ではない。これは21世紀のインドの努力、才能、影響力、コミットメントの証だ。目標が遠く、旅が長く、海と挑戦が果てしなく続く中でインドの答えがヴィクランドだ。ヴィクラントは、インドの自立をユニークに映し出しているのです」。

 首相は、今日のインドに困難な挑戦はないと述べ、国民の新しい気分についてコメントした。「インドは、自国技術でここまで巨大な空母を製造できる国々に加わった。INSヴィクラントは、国に新たな自信を満たし、国に新たな自信を作り出した」と述べた。首相は、海軍、コチン造船所の技術陣、科学者、そして特にこのプロジェクトに携わった作業者の貢献を認め、賞賛した。またケララ州酒器祭日オナムという縁起の良い機会が、幸福感をさらに高めていると述べた。



就役式でスピーチをするインド首相 (Indian MoD photo)


INSヴィクラントの各部品には、長所、強みがあり、発展の旅路がある。INSヴィクラントは、国産化の可能性、国内資源、国産技術を象徴する存在だ。空軍基地に設置されている鋼鉄も、DRDOが開発し、インド企業が生産したもので、国産だ。首相は、空母の巨大さについて、「浮遊都市のようなだ。5000世帯分の電力を生産し、配線はコチンからカシに匹敵する。首相は、INSヴィクラントは、レッド・フォートの城壁から宣言した「パンク・プランの精神」体現している、と述べた。

 首相は、インド海運の伝統と海軍能力について語った。チャトラパティ ヴィール シヴァージー マハラジは、この海の力を強みに、敵を寄せ付けない海軍を築いた。イギリスがインドに来たとき、インド船舶とそれを使った貿易に威圧された。そこで彼らは、インドの海上パワーの背骨を折ることにした。当時のイギリス議会で法律を制定し、インドの船や商人に厳しい制限を課したことが歴史の証言者である、と首相は語った。

 首相は、2022年9月2日の歴史的な日に、インドは奴隷制の痕跡、奴隷制の重荷を取り払ったと指摘した。「インド海軍は、今日から新しい旗を手に入れました。今まで、インド海軍旗には奴隷制のアイデンティティが残っていました。しかし、今日から、チャトラパティ・シヴァージーに触発され、新海軍旗が海と空に翻ります」。

 首相は、ヴィクラントがインド海域を守るため出動する際には、女性隊員も多数搭乗するだろうと発言した。海の巨大な力、無限の女性の力、それは新しいインドの高尚なアイデンティティとなりつつある。今、インド海軍は、すべての部署を女性に開放することを決定した。今までの制限が取り払われようとしている。有能な波に境界線がないように、インド女子にも境界線や制限はない。



就役式でのヴィクラント (Indian MoD photo)



就役式でのヴィクラント (Indian MoD photo)



地政学的な状況変化について、インド太平洋地域とインド洋における安全保障の懸念は長く無視されてきたと首相は述べた。しかし、今日、この地域は国の主要な防衛上の優先事項となっている。そのため、海軍の予算増額から能力向上まで、あらゆる方向で取り組んでいるという。首相は、強いインドが平和で安全な世界への道を開くと述べた。

 ラクシャ・マントリ・ラジナート・シン首相は挨拶の中で、「アムリットカル」の開始にあたり、INSヴィクラントの就役を、今後25年間の国家の安全・安心を確保する政府の強い決意の証と称した。

 「INSヴィクラントは、意欲的で自立した新生インド の輝かしいシンボルだ。同艦は、国家の誇り、力、決意を象徴する。同艦の就役は、国産軍艦の建造で前例のない成果だ。インド海軍の伝統は、「古い船は死なない」である。1971年戦争で輝かしい役割を果たしたヴィクラントの姿は、私たちの自由戦士と勇敢な兵士たちへの謙虚な賛辞です」と述べた。

 また、ラジナート・シン国防大臣 Defence Minister

Shri Rajnath Singhは、世界情勢が刻々と変化する中、海上貿易が途絶えないよう国家海洋権益を確保することは、インド海軍の重要な責務であると主張した。また、インド海軍が国内外での危機に際し常に「ファースト・レスポンダー」であることを称賛し、INSヴィクラントの就役で海軍の能力がさらに向上することに自信を示した。また、インドが地域の集団安全保障上の必要性を十分に満たす能力を有していることを友好国に保証するとも述べた。「私たちは、自由で開かれた、包括的なインド太平洋を確信しています。この点での我が国の努力は、首相が構想した『SAGAR』(地域のすべての人のための安全と成長)につながります」と述べた。



ヴィクラントの甲板をインド首相が歩いた 


シン国防相は、この目的を達成するため国防省で講じている一連の措置を挙げた。Uttar Pradesh州とTamil Nadu州における防衛回廊、3つのポジティブな国産化リスト、資本調達予算の68%を国内産業に割り当てること、2020年防衛生産・輸出促進政策、FDI限度額の引き上げなどだ。また、「Make in India, Make for the World」を目指し、昨年度の4000億ドル実績を超える輸出はこのビジョンを証明するものと述べた。

 海軍参謀長R・ハリ・クマール大将Admiral R Hari Kumarは、「インド製」艦船、潜水艦、航空機、無人船舶、システムで構成され、2047年まで完全に自立し、「戦闘準備、信頼性、結束力、将来性」を有する軍にするという、「インド@100」への海軍の決意表明を行った。さらに、海軍は、首相が思い描く5つの誓約-先進国インド、卑屈さの排除、遺産への誇り、団結、任務遂行への道を進んでいく決意であると述べた。

 海軍参謀長は、INSヴィクラント艦長と乗組員に対し、36年間も国に尽くし、1971年戦争で重要な役割を果たした旧ヴィクラントの誇らしい遺産を引き継ぐよう促した。



海上公試中のINS Vikrant (Cochin Shipyard photo)


海上公試中のINS Vikrant(Indian Navy photo)



INSヴィクラントについて



勝利と勇気を意味するヴィクラントは、2005年4月に行われた鋼鉄切断儀式で基礎を固めた。国産化を推進するため、インド鉄鋼公社(SAIL)が国防研究開発研究所(DRDL)およびインド海軍と共同で、国産空母建造に必要な軍艦級鋼材の国産化に成功した。その後、艦体製作が進められ、2009年2月に起工した。2013年8月に進水し、第一期工事を終了した。

 11月20日、本艦の推進・発電設備・システムの港湾における準備状況を確認する試験(Basin Trials)が行われた。ヴィクラントは、2021年8月から今日まで、各種条件に対する船体の反応、操縦試験、主推進、発電、配電(PGD)、ナビゲーションと通信システム、推進機の耐久試験など、艦性能を確認する複数フェーズの海上公試を終了した。

洋上試運転中のヴィクラント(インド海軍撮影)

ヴィクラントは、全長262m、全幅62m、満載時重量約43000トン、設計最大速力28ノット、航続距離7500NM。約2200のコンパートメントを持ち、約1600人の乗組員の設計で、女性士官や乗員を収容する特別キャビンも備える。高度な自動化で機械操作、航行、生存に備える。

 MiG-29K戦闘機、カモフ-31、MH-60R多任務ヘリコプターに加え、国産の高性能軽ヘリコプター(ALH)、軽戦闘機(LCA)(海軍)からなる航空団30機のを運用する。同艦は、StoBAR(Short Take-Off But Arrested Recovery)と呼ばれる新しい航空機操作モードを使用し、航空機発進にはスキージャンプ、機体回収には「アレスターワイヤー」3本を備えている。

 また、最新の医療設備を備えた医療施設も備え、モジュール式手術室、緊急用モジュール式手術室、理学療法クリニック、ICU、検査室、CTスキャナ、X線装置、歯科複合施設、隔離病棟、遠隔医療施設などを備える。


ヴィクラントの仕様

  • 全長262.5m

  • 全幅61.6m

  • 前項61.6 m 

  • 最大排水量約42.800トン

  • 速力(最大/巡航) 28/18ノット

  • 飛行甲板 12.500平方メートル

  • 推進力 GT-22MWx4、DA-3MWx8

  • 航続距離 7500海里

  • 武器 SAM - 32xMRSAM、AK630 CIWS

  • 航空団 30機の航空機とヘリコプターの組み合わせ

  • 滑走路 着陸191m、長距離離陸203m、短距離離陸145m

  • ヘリ着陸地点 6

  • アレスティングギアワイヤー3 

  • SACリフト(10×14m)2 

 

Indian Navy commissions indigenous aircraft carrier "INS Vikrant" - Naval News

02 September 2022.

Tayfun Ozberk  02 Sep 2022

 

AUTHORS

 

Posted by : Tayfun Ozberk

Tayfun Ozberk is a former naval officer who is expert in Above Water Warfare especially in Littoral Waters. He has a Bachelor Degree in Computer Science. After serving the Turkish Navy for 16 years, he started writing articles for several media. Tayfun also offers analysis services on global naval strategies. He's based in Mersin, Turkey.


空自F-15にトップガン塗装機が期間限定で登場。小松基地航空祭は9月19日開催。

 

@monimoni1002


トップガンに登場した機体塗装が、航空自衛隊のF-15イーグルに適用された


ート・ミッチェルの名前と「トップガン」の称号を掲げたカスタムペイントのF/A-18E/Fスーパーホーネットは、「トップガン」の主役だ。パラマウント・ピクチャーズで史上最大のヒット映画となった「トップガン:マーベリック」で特徴的なスーパーホーネット(少なくとも3機が映画用に用意された)に加え、もう1機、今度はF-15イーグルのそっくりさんが日本に登場した。海軍が主役の映画での塗装が空軍機体に描かれること自体が珍しい。

航空自衛隊のF-15J(製造番号52-8951)は、本日、航空自衛隊のTwitterアカウントで公式公開された。本州の小松基地でのF-15Jの非公式画像が公開された直後のことだ。

このF-15Jは、トム・クルーズがトップガン教官ミッチェル役で搭乗したF/A-18Eスーパーホーネットを参考に、胴体上部と尾翼に沿う黒と薄い青の縁取りが特徴的だ。

トップガンに登場した特別塗装のF/A-18E。

 Paramount Pictures

ミッチェルの名前、マーベリックのコールサイン、コックピットの下に3つの「MiG-28」キリングマークまで忠実に塗装されている。また、黒く塗られた外部燃料タンクにTOPGUNの称号がついているかは不明。尾翼には本機を運用する306飛行隊のイヌワシマークが残る。

この機体は、9月19日に開催される小松航空祭に向け準備されたもの。同航空ショーでは、航空自衛隊機が展示され、ブルーインパルスが曲技飛行を披露する予定だ。COVID-19の流行をうけ航空ショー開催は2019年以来となる。

小松基地の公式ツイートによると、マーベリックF-15はパラマウント映画社との公式コラボレーションで用意された。同基地はまた、航空ショーに合わせ別のF-15特別塗装機を展開するとしており、これは小松の別飛行隊である303隊の記念日を記念したものだという。

航空自衛隊は、8月30日にマーベリックF-15のティーザーを発表し、ツイッターに簡単な動画を投稿し、質問を投げかけました。「マーベリックの愛機、日本へ!?小松航空祭で真相を確かめよう!」。

小松基地は、航空自衛隊のアグレッサー部隊を受け入れているため、ユニーク塗装のF-15が数多く配備されている。同部隊は戦術航空訓練司令部隷下で、複座型F-15DJとT-4ジェット練習機が混在している。

 

アグレッサー部隊のF-15DJ。百里基地。. Cp9asngf/Wikimedia Commons

アグレッサー部隊のF-15DJが小松基地で飛行展示を行った。 Hunini/Wikimedia Commons

航空自衛隊アグレッサー部隊の機材は、非常に派手な塗装で知られ、F-15などで訓練するパイロットに、あるレベルの異質さを提供する意図がある。こうした機体が常時6機程度活躍し、航空自衛隊の訓練を支えている。

マーベリックF-15が加わったことで、少なくとも4機の戦闘機に映画と同じ塗装を施された。最初に登場したのは2人乗りのF/A-18Fで、トム・クルーズがコックピットに乗るシーンを撮影するため、カメラ機材を特別に装備し使用された。この機体は現在もマーベリックカラーを身にまとい、ネバダ州ファロン海軍航空基地でTOPGUNフラッグシップ機として運用されている。

映画の飛行シーンで見られる主要なジェット機は、同じくペイントアップされた単座のF/A-18Eだったが、その後スーパーホーネットへの移行の一環でブルーエンジェルス飛行デモンストレーション飛行隊に移管された。さらに少なくとも1機の単座スーパーホーネットもマーベリックのスキームで塗装された。

F-15がピート・ミッチェルのTOPGUNジェットで登場したことは間違いなく驚きだが、日本軍の特別塗装機(時には派手な塗装機)やポップカルチャーの言及の伝統に沿ったものだ。

特別塗装機、特にトップガンがテーマのジェット機には、入隊勧誘の役割も期待されているようだ。トップガン映画は、軍人のキャリアに興味を持たせる点で大きな成功を収めた。アメリカ空軍でも、最新作の上映開始前に採用コマーシャルを流しており、効果は絶大だ。航空自衛隊も近年は十分に人員が確保できない状況だ。

航空自衛隊のF-15は、「日本のトップガン」と呼ばれ、防空戦力の中核を担っている。レーダー、電子戦システム、武器などを追加し、F-15JSI「日本版スーパーインターセプター」規格にする予定だ。

新兵器については、AGM-158統合空対地ミサイル(JASSM)を筆頭に、日本が開発中の極超音速兵器など、将来追加される可能性のある兵器が含まれるようだ。また、長距離対艦ミサイル(LRASM)も検討されていたが、現在ではアップグレード計画から外れている。

AGM-158 Joint Air-to-Surface Standoff Missile (JASSM)をセンターラインに搭載した日本軍のF-15J改良型の想像図。 BOEING

アップグレード総額は56億2,000万ドルと見積もられている。

以前は、現在のF-15Jの約半数に相当する最大98機のイーグルを改修し、残りは中期防衛計画で示された105機のF-35Aに置き換えると発表されていた。現在の計画では、アップグレード対象は単座型F-15J68機で、複座型F-15DJ34機のアップグレードは未定だ。

アラスカ州エイエルソン空軍基地で開催されたレッドフラッグ・アラスカで、306飛行隊のイヌワシマークF-15Jが発進した。U.S. Air Force photo by/Staff Sgt. Miguel Lara

しかし、F-15JSIプログラムは、少なくとも2040年まで日本のF-15戦闘機を維持する設定で、より多くの特別な塗装スキームが今後出てくる余地がある。■

 

Japan Unveils Top Gun 2 Themed F-15 Eagle | The Drive

BYTHOMAS NEWDICKSEP 2, 2022 1:09 PM

THE WAR ZONE


米空軍CV-22オスプレイの飛行運用が再開された。ハードクラッチ結合問題で。根本原因は未解明。

 

第58特殊作戦航空団のCV-22オスプレイが空中給油機に接近中。ニューメキシコ州カークランド空軍基地上空。 April 20, 2022. Air Force photo by Jeremy T. Dyer.

米空軍CV-22で飛行運用が再開された

軍特殊作戦司令部は、安全上の問題から8月16日より始めていたオスプレイの飛行停止措置を終了したと、空軍特殊作戦軍団AFSOC広報部長のレベッカ・ヘイス中佐が9月2日にエアフォースマガジンに確認した。地上待機措置を最初に報じたのはBreaking Defenseだった。

6週間で2度、「ハードクラッチ係合」(HCE)が発生したため、8月16日に飛行停止となった。

HCEとは、ローターギアボックスとエンジンをつなぐクラッチが滑り、強く引っかかることで機体が傾く現象だ。

この2件の事故以前でAFSOCのオスプレィは過去5年間で2回しかHCEは発生していない。この2件の事故による負傷者は報告されていないが、直後に着陸を迫られた。

AFSOCは問題の根本的な原因を特定できていない、とヘイス中佐はAir Force Magazineに述べている。しかし、同司令部は、HCEで困難な事例に対処する緩和ガイドラインを策定し、同問題に対処するため複数のラインで取り組んでいる。

新しいガイドラインは、事故の多くが発生した飛行業務に焦点を当てたもので内容は以下の通りだ。

  • 離陸技術の修正

  • 同様の事故のリスクが高い業務について、リスク軽減の議論に飛行隊リーダーを参加させる

  • シミュレーター訓練にHCEのシナリオを組み入れ、修正する

  • 限界飛行力や離陸中止の訓練を強化する

「根本原因が特定され、解決策が実施されるまでは、HCEが多発する飛行体制での運用を緩和し、HCEが発生した場合に対処できるよう乗員訓練を可能な限り行うことに焦点を当てる」とヘイス中佐は述べた。

このガイドラインに加え、AFSOCはCV-22搭乗員にアンケートを実施し、ハードクラッチが作動した場合の対処法について理解を深めるとともに、問題に対する意見や解決策を提出するよう求めた。

整備士はまた、空軍整備情報システムのデータを検証・比較するため1回限りの点検を行い、「駆動系部品の稼働時間に関して」正確な情報をCV-22統合計画局と航空機メーカーのベル・テキストロンに提供した。

中期的な取り組みとして、AFSOCは駆動系部品が一定の飛行時間に達した後に交換することも検討している。長期的な目標は、根本的な事故原因を特定し、物理的な解決策を見出すとしている。■

CV-22 Fleet Cleared to Start Flying Again After Safety Stand Down - Air Force Magazine

Sept. 2, 2022 | By Greg Hadley

2022年9月2日金曜日

ウクライナ戦の余波:F-35を求める国が続いて出現。米軍の調達数削減を補うことは無理としても、ロッキードは強気に。

 

 

 



2018年2月14日、ユタ州ヒル空軍基地から第4戦闘飛行隊に所属する米空軍F-35AライトニングII 2機が、ユタ州試験訓練場で飛行訓練運用を実施。 (U.S. Air Force photo by Staff Sgt. Andrew Lee)




 

ダラス・モーニング・ニュース|ジョセフ・モートン 記

フォートワース - F-35統合攻撃戦闘機がロッキード・マーティンのフォートワースの生産ラインに沿いステーションからステーションへ移動すると、スクリーンには該当機の全体配列番号、行き先の軍事基地、発注国などの情報が表示される。

 英国、ノルウェー、イスラエルなど、第5世代ステルス戦闘機を発注した国の国旗が映し出され、雰囲気はまるで国連だ。

 ロッキード・マーティンのF-35事業開発担当副社長、J・R・マクドナルドJ.R. McDonaldは「世界中から大きな関心が寄せられている」「ウクライナの状況で誰もが自国の保護と安全保障について再考している」と述べている。

 アップグレードの問題、コスト超過、予算の制約に直面しているため、国防総省は少なくとも一時的に年間予算でF-35調達数を減らす方向に動いているが、上層部は将来のアメリカの戦闘機隊の基礎としてF-35にコミットしていると強調している。

 米軍がブレーキを踏むのと対照的に、同機に対する国際需要は高まってきている。

 海外販売によって、工場に大規模な雇用ブームが起こることはないだろう。

 そのため、フォートワース工場では、現在、約18,000人の従業員を安定的に維持する戦略をとっている。

 それでも、国際的なビジネスがこの工場の雇用を支えており、地域のトップ雇用主であると同時に重要な経済推進者でもある。


プログラムへの挑戦

F-35は米国で最も高価な兵器システムで、今年初めの政府説明責任局GAOによる調査では、製造、運用、維持のコストを含めた総コストは1兆7,000億ドル以上と見積もられている。

 GAOによれば、F-35の運用責任者は、空中で活躍するF-35を印象的で有能なマシンだと賞賛しているが、監視機関や他の機関は、コスト削減と航空機の信頼性向上が十分に進んでいない。

 GAOによると、「ブロック4」と呼ばれる重要な近代化改修がコスト上昇とスケジュールの遅れに直面しており、これが国防総省が同機発注数を削減する決定の一因となった。

 空軍はF-35の射出脱出シートに作動不良の疑いがあると判明したため、F-35の飛行運用を停止した。しかし、検査結果で先週に飛行再開が許可された。近年、射出座席で問題が発生した軍用機はF-35以外にもある。

 連邦議会では、F-35プログラムを追及しようとナイフを研ぐ議員もいるが、テキサス州の両党議員は、秋の中間選挙で共和党が過半数を奪還すれば下院歳出委員長という強力な地位に就く予定のケイ・グレンジャー議員Rep. Kay Granger(共、フォートワース選出)を始め、同機プログラムを擁護する姿勢を示している。

 フォートワース選出民主党のマーク・ヴィージー下院議員Rep. Marc Veaseyも、F-35を支持し、F-35をめぐる議論が続いても、将来にわたって重要な軍事資産になるとインタビューで語っている。

 「F-35の将来と工場の雇用は、長期にわたって確保されるが、代表団は協力して、予算が継続して流れるようにしなければならない」とヴィージー議員は語りながら、海外販売の重要性も強調し、特にドイツがF-35戦闘機への態度を変えたことを引き合いに出した。ドイツは、何年もの間、別の選択肢を好んでいたにもかかわらず、今年初めF-35を35機発注した。

 米軍は現在もF-35プログラムの中核で、合計約2,500機を購入する見込みである。現在までに納入された837機のうち、3分の2が米国向けである。

 マクドナルドは、国防総省が購入のペースを落とそうとするのは、性能問題とは無関係だと説明した。

「彼らは大規模なプログラムの文脈で予算を決定しているのだろう」と彼は言った。「戦闘現場は、できるだけ早く、できるだけ多くのF-35が欲しいと言っている」。

 また空軍は、機材の平均年齢を維持するためだけに、年間72機を購入する必要があると述べている



海外導入への期待

F-35プログラムをめぐる監視団の批判や議会での論争にもかかわらず、F-35戦闘機を購入するため列に加わる国が増えている。

 F-35プログラムに当初から資金援助していたパートナー国は、アメリカ、イギリス、イタリア、オランダ、オーストラリア、ノルウェー、デンマーク、カナダの8カ国だ。

 このうち、最後に出資を決めたのはカナダで、導入の最終決定に入っている。

 ロシア侵攻を受けて、パートナー国以外の国もF-35に乗り出しつつある。ドイツが最も顕著だが、チェコ共和国も最近採用の意向を表明し、ギリシャもその方向で動いている。

 F-35は、米国と同盟国が使用できる唯一の本格的な第5世代マルチロール戦闘機であることから、他国への売り込みが始まっている。ステルス性能により、防空網を突破し圧倒するユニークな能力を備えている。また、高度なセンサーで優れた状況認識能力を実現し、戦闘中の同盟軍にデータを提供する情報センターとしても機能する。

 戦闘機というと、ゴーグルとスカーフ、1対1のドッグファイト、映画「トップガン」のような熱い戦いをイメージしがちである。しかし、そのようなアクロバティックな空中戦は過去のもので、現代の戦闘機による戦闘は、むしろ空におけるサイバー戦争に近いものとなっている。F-35は、最先端のセンサーと通信技術により、敵の動きを察知し、情報を伝達し、爆破するという重要な任務を遂行するように設計されている。

 もう一つのセールスポイントは、相互運用性だ。

 iPhoneを買うのは、知り合いがみんな持っているからだ。メールも簡単だし、充電器も借りられる。

 スイスは、F-35を購入する予定だ。NATO非加盟のスイスだが、有事の際にNATO軍と連携できる飛行機を手に入れる。

 「同じように訓練し、同じように戦い、他のすべての国々とすぐ結束できます」(マクドナルド)。

 他の国々は、自国ニーズに合わせて特定の変更を要求することもできる。例えば、ノルウェーは、凍った滑走路に着陸する際、航空機をよりよく静止させるためドラッグシュートの搭載を要求している。


価格競争力

F-35は、空中で高い能力を発揮する一方で、気難しく、メンテナンスに手間取り、高い運用コストがかかる航空機だとの報告が出ている。

 マクドナルドはコスト面の進歩について、フィンランドやスイスが実施した競技会を含む、F-35が勝利した競技会でその証拠が見られると述べた。

 「F-35は、メンテナンスにお金がかかるという悪評がありました」「F-35は、第5世代機でステルス機だから高いのだと思い込んでいたのです」。

 米軍が購入ペースを落とした理由の一つは、ブロック4アップグレードを待つことがあり、機体を改造しなければならないため、コスト上昇が予想されるからだ。

 マクドナルドは、保留中の技術的なアップグレードで、航空機が将来にわたって適切であることを購入者に安心させるはずだと語った。

 西側諸国の戦闘機をウクライナに送る議論が続いているが、F-35が同国に向かう可能性は基本的にない。ウクライナにF-35を送ることは、ロシアからすれば宣戦布告に等しい。また、墜落したF-35がロシアの手に渡り、その技術を見抜かれてしまう危険性が高すぎる。

 しかし、ウクライナは、多くの国がF-35をどう見るかの転換点になっている。

 ロシアの戦闘機はウクライナの空を支配するのに苦労しており、F-35の先進的な性能の利点が浮き彫りになっている。

 また、紛争が国境を越える脅威になったことで、特にヨーロッパ諸国は軍事費を増やし、空における最新・最高の技術を確保する動きに前向きになっている。

 「安全保障は重要であり、防衛への投資は重要で、自国の主権を保証する能力は重要であると、各国が腰を上げたのです」とマクドナルドは言った。■


War In Ukraine Has Countries Lining Up to Buy F-35 Fighter Jets


24 Aug 2022

The Dallas Morning News | By Joseph Morton

 

https://www.military.com/daily-news/2022/08/24/war-ukraine-has-countries-lining-buy-f-35-fighter-jets.html



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イラン核合意再開に備え、準備を怠らないイスラエルの動き。

 


2021年5月14日、イスラエルのスデロットで、ガザ地区国境付近で砲兵部隊を準備するイスラエル軍部隊。 (Amir Levy/Getty Images)


イスラエル当局は発言こそ慎重だが、JCPOAが再び実現した場合に備え、対イラン軍事オプションを多数準備している



イラン、欧州、米国間で核合意再開に向けた合意が近づいてきた兆候が見られる中、イスラエルは予想通り動揺し、対応策としてテヘランに対する軍事行動も視野に入れていると示唆している。


イスラエル指導部は、バイデン政権が共同包括行動計画(JCPOA)を復活させようとしているのを公に批判しないよう注意してきたが、エルサレムが合意復活に反対していることは、この1年間で多くの兆候があった。


イスラエルは、ブリュッセル、ワシントン、テヘランの間で結ばれたいかなる協定にも拘束されるとは思っていないとも明らかにしている。その裏で、イランはJCPOA復帰で得る利益を受け取る資格を失うべきだとエルサレムが考えている、イランの不誠実な行動を示す情報を繰り返しワシントンに伝えてきた。


JCPOA枠組み案の詳細は先週、イラン反対派がロンドンで運営するウェブサイト「イラン・インターナショナル」がリークした。イラン・インターナショナルによれば、流出した報告書には、イランの核交渉責任者アリ・バゲリ・カーニAli Bagheri-Kaniが、イランが米国から受け取ったと主張する「譲歩」に関する発言疑惑が含まれている。しかし、その内容は、イランがJCPOAを遵守するために何をすることに合意したかには触れていない。


この話し合いを止める最後の努力に写るものとして、イスラエルの国家安全保障顧問エヤル・フラタ Eyal Hulataが今週ワシントンに滞在し、米国防当局者と会談し、イスラエルが「イランの核詐欺」と呼ぶものの詳細を共有しようと試みている。(フラタとアントニー・ブリンケン国務長官の会談は、スケジュール調整で直前にキャンセルされたと伝えられている)。


説明は、バイデン政権によるJCPOA 2.0推進について、国防と情報機関がどう感じているかを要約している。特に、ホワイトハウスは、イラン協定を破棄したトランプの決定を覆すことに固執しているので、イスラエルからの情報は無視したという感覚である。


「我々は、テヘランが継続的に嘘をついており、新協定の枠組みの中で行うと約束するすべてを履行するつもりはないことを、確実な情報証拠により何度も証明した」とイスラエルの上級防衛関係者はBreaking Defenseに語った。

JCPOA支持者は、協定がトランプ政権に破棄されるまでは、イランの「ブレイクアウトタイム」(イランが核兵器製造に必要な核分裂性物質を作り出す時間)を遅らせるため機能していたと主張し、イランを協定に戻すことは、すべての人にとって最善の利益となると主張している。しかしイスラエルでは、イランがJCPOAによる制裁緩和を受けながら、各開発をやめると約束したにもかかわらず、秘密裏に続けるという考えが根強い。


イスラエル軍モサドの元責任者ダニ・ヤトムDani Yatomは、Breaking Defenseに対し、JCPOA再発が運命づけられていると感じている今こそ、イランに抜け穴をつくらせないため米国と控えめな協議を行うべき時であると語った。「新核協定が結ばれれば、あらゆる機会を利用して、イランは旧協定同様に協定を破るだろう」とヤトムは述べた。


同様に、イスラエル国防軍の前情報局長アモス・ヤドリンAmos Yadlinは、Breaking Defense誌対し、イスラエルは新協定の締結前に、文言に影響を与えるべく最後の大きな働きかけをしなければならない、と語った。


主に、「イスラエルは、イランが核爆弾を持たないという、3代の前大統領による公約を果たすよう、ワシントンに要求しなければならない」と彼は言った。ジョー・バイデン大統領は以前、イランに核兵器を持たせないためなら武力行使も辞さないと発言している。


今後起こりうる行動

問題は、新たなJCPOAがイスラエルの作戦にどのような影響を及ぼすかである。結局のところ、エルサレムはすでに、イランに対するスパイ妨害活動、シリアにおけるイランの兵器輸送隊への公然の攻撃にも関与している。


イスラエルは、イランの核開発計画のどの段階においても、どのように行動すべきかを計画している。もちろん公式には誰も計画を詳述していないが、イスラエルが行ったとされる過去の行動から、JCPOAが再開すれば、現在進行中のいわゆる「影の戦争」はさらに高い次元に進むだろう。


イラン核施設に対する直接攻撃は、おそらく最後の手段のままだろうが、イスラエルが近年行ったとされる「ピンポイント」行動が強化されるというのが、専門家と情報筋の一致した意見だ。これには、核・弾道ミサイル技術者に対する攻撃の強化や、プログラムに関連するすべての拠点へのサイバー戦強化が含まれる可能性がある。


注目すべきは、ここ数カ月、イスラエル軍が合同演習を行い、情報筋によれば、イランが核兵器を獲得した場合に起こりうる戦闘シナリオを練り上げていることである。この演習には、イスラエル領内からの長距離攻撃を計画するため2011年に設置されたイスラエル国防軍の「深度司令部」と一般に呼ばれるあらゆる種類の部隊が参加している。イスラエルは、イランの主要核施設が地下にあることを認識しており、情報筋によると、この事実は戦闘シナリオの演習で考慮されたという。


イスラエル国防軍報道官は、今回の演習でイスラエルは「異なる」タイプの戦争に備えることになる、と述べるにとどめた。


もう一つの選択肢は、この地域のイラン代理人に対する攻撃になるかもしれない。先週、イスラエル参謀総長アビブ・コチャビ中将Lt. Gen. Aviv Kochaviは、ガザでのイスラム聖戦との最近の「ブレイキング・ドーン」衝突で、イスラエルが「第三国 」と呼ぶ場所で攻撃を実行したと明らかにした。同国の情報筋は、8月7日にイエメンの首都サヌアのキャンプで起きた爆発で、少なくとも6人のイランとレバノンの工作員が死亡したとするメディアの報道を指摘した。


アラビア半島の南端に位置するイエメンは、イランが支援するフーシ派民兵がサウジアラビアと紅海の標的を攻撃するための安全な避難場所となっている。


潜在的な行動が複雑になっている。11月1日にイスラエルの次期首相を選ぶ選挙が予定され、この選挙はわずか3年で5回目であるため、JCPOAが復活する可能性はイスラエル政治で難しい時期に来ることになる。


ラピッドYair Lapid現首相とベニー・ギンツBenny Gintz国防相は、次期首相候補で、マイクを向けばいつでも喜んでオフレコで話をするが、発言には慎重である。■


With a new Iran deal seemingly near, Israel frets — and plans - Breaking Defense

By   ARIE EGOZI

on August 23, 2022 at 12:06 PM