2023年1月9日月曜日

2023年の展望③ 地政学で見る世界の現状、米中関係、ロシア、中東、アフリカなど

 

 

 

21世紀で最初の25年が近づいてきが、世界情勢は今までになく不安定で、不確実なままだ。

 

 

2023年は、市場の混乱が続く中、過去数十年で最も困難な年になる予想がある。インフレは抑制されるかもしれないが、例外的に高止まりし、世界的な景気後退は避けられない。大きな疑問点は、景気後退がどの程度の長さと深刻さになるかだ。世界的な景気後退は、COVID-19大流行とウクライナ戦争に影響をされ、地域ごとに異なる反応を示すだろう。

 英国は不況に突入していると言ってよい。米国は、地理的に近く、伝統的にエネルギーに依存しているため、ウクライナ紛争に直接さらされる欧州に比べて、景気後退は短く、深刻ではない可能性が高い。2023年に中国がCOVIDとの共存を覚えれれば、中国の景気は回復するだろう。しかし、いつ、どのようにウイルスを管理するかという問題が残る。さらに、パンデミック後の中国需要の回復は、欧米諸国にインフレ率の上昇をもたらすかもしれない。

 新興国における債務の増大は、ほとんど持続不可能になりつつある。2023年には、協調的かつ効果的な再建努力が開始されない限り、特にアフリカで国債のデフォルトが続出するリスクがある。ガーナは2022年末に国際通貨基金(IMF)との間でぎりぎりの救済措置に合意した。2023年には他の国もこれに続くと思われる。さらに、投資家は保有株式のヘアカットの可能性にも備えなければならない。

 地政学的な面では、ウクライナで今後数週間から数ヶ月の間に最悪の事態が起こっておかしくないという残念な現実がある。特にロシアは2022年末までの数ヶ月間に20万人以上の新兵を採用し、2023年前半の大攻勢に備えつつある。現時点では真剣な交渉のための信頼、意志、インセンティブがなく、当面の間、停戦の見通しは立っていない。

 ロシアの指導者プーチンにとって、この紛争は存亡の危機であり、ウクライナでの勝利のため必要なものは何でも投入することを約束するものである。さらに、プーチンは時間が味方になると考えており、戦争を無期限に引き延ばすことができる。彼は、ウクライナ疲れによって、西側諸国の政治的連帯と国民の忍耐力を時間をかけて消耗させようとする。しかし、ロシア軍の士気と資源へのアクセスは、プーチンが勝利を追求する上で深刻な課題となっており、そもそも勝利がまだ明確に定義されていない。

 

ウクライナのゼレンスキー大統領は、ワシントンDCを訪問し、高性能ミサイル防衛システムPatriotを含む、2023年までに求めるものの多くを確保した。ウクライナの主要な軍事資金提供者として米国は、紛争初年度に1,000億ドル近くを拠出する。しかし、新たに就任した共和党下院の指導部は、これ以上ウクライナに「白紙委任」しないと明確にしている。2023年に米国の資金援助が停止することはないものの、ペースは落ち、支出前の精査も厳しくなるだろう。

 2023年、米中間の緊張は、特に台湾と南シナ海(海洋権益と領土問題)をめぐるいくつかの面で危険なまで高まったままとなりそうだ。米中双方は直接対立を避けたいと願っているが、瀬戸際外交が続けば、思わぬ災難に見舞われる可能性がある。

 最近、南シナ海で米中両国の航空機がわずか3メートル差で衝突を回避したが、武力紛争の火種として歴史の流れを変えていたかもしれない。今回の事件や過去の同様の事件は、冷戦時代の米ソのような米中間の効果的なコミュニケーション・ホットラインが不可欠であることを強調している。

 中国による台湾侵攻の脅威は、2023年に実現する可能性は極めて低い。中国には効果的な侵略能力がない。さらに、中国と世界にとって経済的な影響は壊滅的になるだろう。ロシアのウクライナ侵攻の失敗が貴重な教訓を与えてくれる。結局のところ、西側諸国は中国の指導者が期待していたほど分裂しておらず、衰退もしていないのかもしれない。

 習近平国家主席は、米国からの挑戦を感じ、台湾独立への政治的転換が不可逆的になれば、台湾を封鎖はしても、侵略はしないであろう。2022年8月のナンシー・ペロシ前下院議長の訪台など、米国の政治指導者がさらに台湾を訪問すれば、中国に封鎖の口実を与え、台湾に対する圧力のラインをさらに有利に変化させることができる。

 2024年に行われる台湾総統選挙で、独立を求める声が高まり、危機に陥る可能性がある。根本的には、米中両国の指導者は、定期的に関与し、果的に関係を管理する必要がある。それを怠れば、世界的に悲惨な結果が生まれる。

 2022年はCOVIDがほぼ制御下に置かれた年になった。2023年、中国は、悲惨なゼロCOVID政策を突如終了したが透明性を欠いたため、この進展が覆される危険性がある。ワクチンに耐性を持つ新たな変異体の脅威は、依然として現実のものだ。

 共産党指導部は、面子を保ち、権力を維持するため、2020年初頭のCOVID発生当初と同じ無責任な行動を見せている。パンデミック制御の失敗とそれに伴うシナリオによって、国内ですでに信用を大きく失いつつある。

 地政学面では、2023年にも世界の安定を脅かす深刻な火種として、ペルシャ湾におけるイランとサウジアラビア、そしてその主要な安全保障保証国である米国との間で続く不安定で危険な瀬戸際外交がある。さらに、インドとパキスタン、中国という核保有三カ国の微妙な国境は、日常的な小競り合いがいつ深刻な武力紛争につながるかわからないホットスポットのままだ。

 2023年には、地域レベルで地政学を形成し、定期的に世界的な影響を及ぼす中東の影響力が増大する。特に、サウジアラビアの国際エナジー価格決定力、トルコのウクライナ戦争への影響力などがある。■

 

 

In 2023, Uncertainty Will Shape the Global Landscape

by Marco Vicenzino

January 8, 2023  Topic: geopolitics  Region: Eurasia  Tags: GeopoliticsRecessionCoronavirusChinaRussiaTaiwanWar

https://nationalinterest.org/feature/2023-uncertainty-will-shape-global-landscape-206086

 

Marco Vicenzino is a global strategy advisor to decisionmakers operating internationally in both private and public sectors. He focuses on geopolitical forecasting and analysis and international business development.

Image: Shutterstock.



ホームズ教授の解説:日本の防衛力増強で米軍は攻撃任務に専念できる。日本が聖域になれば、台湾救援作戦にも有益。

 相変わらず、焦点があっていないメディアは日本の防衛力増強を「戦前」「戦争」「説明義務の不全」といったレッテルを貼って報道していますが、(1月7日のTBS系列『報道特集』がその一例)、抑止力とはなにか、なぜ抑止力が必要なのか、どこまで状況は深刻になっているかは全く触れていませんね。また地政学の観点も欠落しています。そこで、ホームズ教授の講義を御覧ください。1945の記事からです。


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経アジアはこのほど、元海兵隊中将で国防次官補だったウォレス・"チップ"・グレグソン(19FortyFiveの寄稿者でもある)に、中国と台湾の両岸戦争で日本がどう貢献できるかをテーマにインタビューした。チップは、自衛隊の共同戦力の必要性、日本にある約7000の島々を移動し侵略者を撃退する能力の強化、反撃用兵器の獲得について述べた。つまり、東京は1945年以後の受動的な国防アプローチを放棄し、大国としてふさわしい姿勢をとるべきだというのである。

 

 

しかし、インタビューで最も重要なのは、次の言葉だ。

 「台湾有事で日本ができる最大の貢献は、日本の領土を堅固に守ることで、他のことは米国がやってくれる」。

 確かにそうだ。

 日本が自国を守るのに十分な軍備と武力を有していれば、米軍は不要だ。米国は日本ではできないこと、例えば核抑止力の拡大や日本から遠く離れたシーレーンの安全保障を提供し、その間に台湾の安全保障など同盟国の利益を高める他の活動に集中できる。むしろ、これを一般的なルールとすることもできるだろう。同盟国協力国への働きかけを管理する国防総省のスローガンは、「同盟を助けるには、自分を助けよ」だろう。

 同盟国の強化は、自国の利益と共通の大義を助けることになり、好循環を生み出す。

 同盟国が米軍事力に過度に依存せず自国を防衛できるようになれば、米軍は遠征任務に専念できる。米軍は、相手国の領土を守る必要性にとらわれず、中国やロシアといった卑劣と極悪の巣窟の住人を撃退するため力を発揮できる。米国は同盟国を対米従属から解放する必要がある。そうすれば、1945年以降の覇権的同盟体制を対等な同盟体制に転換できる。

 覇権国と劣等な同盟国との一方的な議論よりも、相互に敬意を払う仲間同士の戦略的議論の方が健全で実りあるものとなる。さらに、ホスト国が自国防衛を主な任務とする対等なパートナーシップは、国際関係における最も基本的な要素つまり利己主義に関与することになる。自衛のためのゲームに参加するのは簡単なことなのだ。

 日本の話に戻ろう。グレグソン大将が思い通りにやるなら、つまり日本が防衛の重荷のほとんどを負い、アメリカが同盟の打撃部門を提供するなら、米軍は台湾近辺で戦闘行為を行う聖域を享受できる。聖域は、しばしばハードランの紛争における勝利の重要な要素である。敵対勢力には与えず、自軍にそれを作り出そうとする。

 聖域とは、作戦を行う、あるいは戦闘による損害を修復する、あるいは貯蔵品、燃料、弾薬を補充する安全な基地を持つことである。そのような避難所を持たない遠征軍が勝つことは難しい。そのため、中国は過去四半世紀にわたり、航空、地表、地中の戦力を背景に、陸上の巡航ミサイル、弾道ミサイル、そして今では極超音速ミサイルといった、反アクセス防衛や領域拒否防衛に資源をつぎ込んできた。中国の要塞は今や、西太平洋における米軍の潜在的な聖域をすべて覆っている。

 アメリカの砦であるグアムでさえ、人民解放軍の弾道ミサイルやミサイルを搭載した戦闘機の攻撃を受ける可能性がある。この点を見逃さず、中国の兵器専門家は、巧妙な手口で、PLAロケット軍のDF-26弾道ミサイルを「グアムキラー」と名づけている。このような兵器の背後にある論理には反論の余地がない。米軍の聖域を拒否すれば、後方支援も拒否される。後方支援を拒否すれば、米軍は立ち去るか、活動停止に陥る。いずれにせよ、中国の勝ちとなる。

 つまり、グレグソンは正しい。自力で国土を守れる筋肉質な自衛隊が西太平洋に聖域を取り戻し、侵略を打ち負かす同盟の能力が強化することができるのである。日本が基地を守り、米軍が海外に行くとのは、素晴らしい役割分担のように思える。

 東京は今後数年間で防衛費を倍増させ、地域の平和と安全のため自己主張を身につけると宣言した。これは早急に実現しなければならない。■

 

Japan Matters If China Invades Taiwan

 

ByJames Holmes

Japan Matters if China Invades Taiwan - 19FortyFive

 

 

Dr. James R. Holmes is J. C. Wylie Chair of Maritime Strategy at the Naval War College and a Nonresident Fellow at the Brute Krulak Center for Innovation & Future Warfare, Marine Corps University. The views voiced here are his alone. 


ウクライナを支援するNATOのAWACSにカナダCBCが同乗取材---多国籍乗員によるISR活動の重要性がよく理解できます

 

ウクライナ戦で西側が物資のみならず情報でも有益な支援をウクライナに与え続けているのは、ロシアに取って目の上のたんこぶといったところでしょうか。カナダのCBCがNATOのE-3に同乗取材を許されました。


NATOと同盟諸国は、専用機に搭載された巨大なレーダーを使って、ウクライナの戦場をほぼ24時間体制で監視している。(David Common/CBC)

 

ウクライナ周辺におけるロシア軍を監視し、同盟国に情報を提供するNATOの高性能偵察機のおかげでウクライナは迅速対応が可能になっている。

 

NATOの空中警戒・司令機が、ポーランドとウクライナ国境のすぐ内側を飛行しているとき、実際の行動はその背後で起きている。戦時下のウクライナの奥深くをのぞき込む多数の機内レーダースクリーンに、監視員や武器管制官が群がっている。

 ロシアの軍事的な動きに関するリアルタイム情報は機密性が高いため、説明はない。しかし、高度な監視・通信機器を満載したE-3が搭載する巨大レーダードームを使って、何かを発見していることは明らかだ

 

 CBCニュースは10月中旬、ドイツに拠点を置くNATOの14機空中警戒管制システム(AWACS)の一機に搭乗する貴重な機会を得た。同機は陸海空のレーダーやその他監視技術を通じて日常的に情報を収集し、戦闘時にはNATO同盟国に戦場を見渡す情報を提供する。

 

ウクライナ全土のロシアの位置を示す機密レーダー画面を覗き込む隊員たち。CBCニュースは2022年10月中旬、NATOのドイツを拠点とする14機のうちの1機に搭乗する貴重なアクセスを得た。 (David Common/CBC)

 

ウクライナはロシア侵攻軍との戦いで領土を一部取り戻したが、西側情報が成功の重要要素であったのは明らかで、AWACSが提供する全体像もその一つだ。

 司令官たちは、航空機の400キロ先を「見る」ことができ、ウクライナ領空に接近するロシア戦闘機、攻撃に備える海軍船舶、ロシアの大型無人機を追跡できるシステムの能力を認めた。状況によっては、戦車など軍用車両も追尾している。

 AWACSは航空機以外に、ミサイルの進路も把握できるとカナダ王立陸軍大学のウォルター・ドーンWalter Dorn教授は言う。「解像度はガチョウの群れも追跡できるほどです」。

 

ウクライナ南部で今最も活発な活動

ジョアオ軍曹はその他乗組員と同様、保安上の理由でファーストネームしか名乗らない。ジョアオ軍曹は、南部で急増しているウクライナ反攻を押し返そうとするロシアの努力を認め、「クリミアで多くの活動が見られます」と述べた。

 公式には、情報は即座にNATO諸国にのみ送られる。しかし、NATO諸国には、情報をウクライナ軍と共有するところもある。ウクライナ軍は、迫り来る攻撃に対抗するため、また戦場全体におけるロシアの幅広い動きを理解するため、情報を利用していると広く認識されている。

 

「西側から、ウクライナはロシア軍のほぼリアルタイム画像を受け、効率的な戦闘作戦を組織できます」とカナダ地球問題研究所のアンドリュー・ラシウリスAndrew Rasiulisは言う。

 業務の性質上、乗組員が共有できる情報、およびCBCニュースが撮影できたレーダー画像は限られているが、同機に長年勤務するある隊員は、これを「自分のキャリアで最も有益な仕事」と表現している。

 また、この夏、ロシア機が黒海のスネーク島に接近し、爆撃を行った際に警告を発した。スネーク島はウクライナにとって非常に象徴的な島で、同島に配置された兵士が攻撃してきたロシア艦に無線で「ロシア軍艦よ、失せろ」と言ったことが知られている。

 最近では、ウクライナ軍が南部のロシア前線を突破し、クリミアからロシア戦闘機が出発する様子を、AWACS機がいち早く見届けている。

 

NATOは公式には、収集した情報を軍事同盟の加盟国だけで共有している。しかし、そのうちの何カ国かはすぐにウクライナ軍に情報を渡して、すぐに使えるようにしていることが広く知られている。. (David Common/CBC)

 

 

ロシア軍のサインが消えるのを目撃

数では圧倒的に劣るが、ウクライナ空軍はロシアの戦闘機や地上目標を攻撃し、機能し続けている。

 あるAWACS乗組員は、ウクライナ戦闘機とのドッグファイトや地対空ミサイルによる交戦の後、「ロシアのレーダー信号が消えていくのを見た」と述べた。

 NATO同盟国が、非同盟国のウクライナにリアルタイムの情報を提供することの微妙さを理由に、こうした行動における自分たちの役割を詳しく説明する者は皆無だった。

 しかし、多国籍乗組員のアメリカ人エリッサ上級曹長など、最近の出来事について話すことを許された者もいた。

 「ウクライナ戦闘機が離陸し、領空を守り、ロシア戦闘機を追いかけるのを見た」監視オペレーターは、地上と空中のロシアの位置を追跡する何百ものシンボルが散りばめられた照明付きスクリーンを前に、「彼らは反撃し、愛する国を支配しているのです」と言った。

 

AWACSは、戦場での航空機の監視に特化して運用されるが、強力な監視ツールを備えているため、400km以上離れた場所まで詳細に見られる。ドローンや戦車などを追跡でき、リアルタイムで情報を提供するとともに、ロシアが何を計画しているのか、時間をかけて広く把握することができる。 (David Common/CBC)

 

情報共有は西側の役割の一部に過ぎない

ロシアは、ウクライナへの武器や情報の提供を声高に批判し、反撃に出ると脅している。AWACSのある乗組員は、ロシア戦闘機が時折、距離を取りながらも高速で向かってきたことがあると語った。

 「確かに状況は違う」と指揮官のウェイン少佐は言う。

彼は過去に米空軍で紛争地帯に隣接する空域で勤務したことがある。中東などでは、「我々が懸念するような有能な空軍の脅威はなかったが、ここでの脅威ははるかに大きい」という。

 

 

乗員はみな、公表内容に慎重だ。外国の諜報機関は、「私たちが言ったこと、報告されたことをパズルのピースのように捉えることができる」と、NATO機の機長ウェイン少佐は言う。 (David Common/CBC)

 

 

NATO機の自衛能力は限られており、戦闘機の護衛付きで飛行することもある。ウクライナ戦争中にロシア機がAWACS機に嫌がらせをするためNATO領空に侵入したことは、公には知られていない。

 木曜日、イギリスの国防大臣は、ロシア戦闘機が9月29日に黒海上の国際空域をパトロール中の非武装の英偵察機の近くにミサイルを発射したと発表した。ベン・ウォレス国防相は議会で、これは明らかな事故で、意図的な緊張の激化ではないと述べ、ロシア側が調査した結果、誤作動が原因であったと指摘した。

 ラシウリスは、ロシア側は現在、この戦争をNATOとロシアの事実上の戦争とみなしており、冷戦期の暗い時代を思い起こさせると指摘した。「重要なのは、常に米・NATOとロシアとの直接戦闘を避けることだ」。

 AWACSは12時間以上滞空し、飛行中に米空軍タンカーから燃料補給される。米国やフランスなど多国籍クルーが運用する偵察機と組み合わせ、ウクライナの戦場をほぼ24時間体制で把握することができる。

 陸上だけではない。

 「AWACSは黒海の船舶を追跡し、ウクライナに警告とターゲティングの両方の情報を提供できます」とドーンは指摘する。「海上での追跡は、西側によるロシア製品への制裁措置の実施にも役立つのです」。

 母国からの制約で名前を明かせない乗組員の一人は、「敵に変化を生じさせている実感がある」 と語っている。

 元国防省官僚のラシウリスは、プーチンの最近の行動と、ウクライナ戦争が冬の陣へ発展する中、NATOが継続的に行っている支援活動を説明してくれた。

 

ほぼ絶え間なく戦争の監視を続ける

AWACSに搭乗する唯一のカナダ人は、コリン・ワイリー大尉だ。この記事のためフルネーム掲載の許可を得た。監視活動の管制官として、すべての探知結果は彼のもとに送られ、確認された後、地上のオペレーションセンターに直ちに送信される。ワイリーは、ロシア機が「低空を飛行し、再び上昇する」のを何度もスクリーンで見てきた。

 

 

A man in a military uniform with a Canadian flag patch on his right shoulder wears headphones and watches a radar screen on an AWACS aircraft.

カナダ空軍のコリン・ワイリー大尉は、ドイツのガイレンキルヒェンにあるNATO AWACS基地に少なくとも3年間赴任している。少なくとも週に一度は監視管制官として空中で、ウクライナの広大な地域とロシアの軍事機器や軍隊の動きを監視している。(David Common/CBC)

 

非現実的な仕事だと彼は言う。

「朝、ベッドで起きて、東側へ飛び、戻って夜ベッドで寝る。(戦争から)離れられない人たちのことを考えさせられます」。

 AWACSが日の出前に始まり日没後に終わる任務を終えドイツのガイレンキルヒェン基地に戻ると、別のNATO監視機がすでに空中で、ウクライナの空などをほぼ常時監視している。■

 

Flying just outside Ukraine, NATO's sentinel planes warn of Russia's battlefield moves | CBC News

David Common · CBC News · Posted: Oct 22, 2022 4:00 AM ET | Last Updated: October 30, 2022

 

ABOUT THE AUTHOR

 

David Common

David Common covers a wide range of stories for CBC News, from war to disrupting scams. He is a host with the investigative consumer affairs program Marketplace, and a correspondent with The National. David has travelled to more than 85 countries for his work, has lived in cities across Canada, and been based as a foreign correspondent in the U.S. and Europe. He has won a number of awards, but a big career highlight remains an interview with Elmo. You can reach David at david.common@cbc.ca, Twitter: @davidcommon.


2023年1月8日日曜日

大晦日の夜に恐ろしい攻撃を受けロシア兵が大量に戦死した事件の背景。

 

HIMARS

HIMARS. Image Credit: British Army.

 

 

シアはウクライナ軍から致命的なロケット攻撃を受けたのを兵士の不注意のせいにしている。 戦闘中の休憩時間に個人の携帯電話の使用を控えるのは、どの兵士にとっても難しい。しかし今回は実際に、携帯電話の使用が命取りになったようだ。ウクライナ軍は携帯電話の位置情報を利用しロシア軍を収容する建物を攻撃し、元旦の真夜中過ぎに数十名が死亡したと伝えられている。

 ロシア国防省は、ウクライナのHIMARSから少なくとも25発のロケット弾が発射され、ロシア兵89人最大の戦死者と思われる。ウクライナは、死者数は数百人にのぼると考えている。

 

HIMARSの再攻撃 

ロシア兵は、ドネツク東部の町マキィフカの職業訓練校で休んでいたが、彼らの位置がウクライナによって追跡された。その後、HIMARSロケットがその場所に降り注ぎ、建物は完全に破壊された。

 ロシアの将軍は、携帯電話の使用は「無許可」なまま、広まっていると述べた。兵士たちは、携帯電話を使用すれば敵に見つかると警告を受けている。

 ロシアを批判する向きにとって、今回の事件は戦闘がうまくいっていない証拠だ。犠牲者は前線近くにいることに慣れていない徴募兵で、携帯端末を使う危険性を知らなかったのだ。

 

最も忠実なロシア人作家でさえ不満を感じている

ある親ロシア派のブロガーは、政府発表に不満を持ち、標的はウクライナのドローンや他の索敵装置により行われた可能性があると主張している。ロシアに有利なニュースを明らかにするセミョン・ペゴフSemyon Pegovは、国防省発表は 「説得力がない」、「非難の矛先を示す露骨な試み」だと述べた。

 ペゴフは、実際の死者数はロシア国防省発表より多いとみている。

 

弾薬庫の近くで休憩する兵士たち

他の独立系作家は、建物の選択について、弾薬庫の近くであったため、爆発がより強力になり、さらに兵士が殺されたと批判している。

 ロシア軍の陣地に深く入り込み、しばしば兵站や補給地を攻撃するHIMARSロケット弾に、軍はまだ慣れていない。米国が提供するHIMARSでウクライナ軍は驚きと勢いを得つつ、戦争における主導権を握っている。

  

ウクライナは電子戦に優れている 

今回の攻撃は、ウクライナが戦場でロシアを打ち負かすために高度な戦術を駆使しているあらわれだ。今回の標的は、NPOがウクライナに提供した高度な市販電子戦装備を使用することで嗅ぎつけられたようだ。

 

非営利団体から提供された機材が効果を発揮 

このシステムはSoftware Defined Radioと呼ばれ、5G携帯電話の会話やBluetoothを含む敵の無線通信を検知し、位置を特定できるという。また、Software Defined Radioは、敵のドローンや司令部に対しても使用される。

 ただし、このシステムは高価で、ウクライナ軍には手が届かないが、ニューヨークのAmerican Ukrainian Aid Foundationが提供しています。同キットは、各種無線システムを感知するソフトウェアを前線でプログラム可能で、ターゲットデータをHIMARSロケットランチャーに送る。

 

非対称戦の最たるもの

これは、ウクライナ軍が非対称戦争を巧みに利用しているもう一つの例で、ロシアが戦争中に直面すると考えもしなかったダビデ対ゴリアテのシナリオだ。送信場所を追跡され、ピンポイントで攻撃されたら、ロシア軍はどうやって通信するのだろうか。ロシアは通信手段を調整し、無線通信は短時間の使用にとどめ、個人的な携帯電話の使用は控える必要がある。

 戦争が長引けば長引くほど、ウクライナ戦闘員は、同盟国の政府だけでなく、時には公式な手段よりも早く高度装備を前線に送り出すNPOなど、西側の支援で熟練度をあげていく。

 ロシアが電子戦に不慣れかつ未熟な徴募兵に依存を深めれば、危険なHIMARSや通常砲撃に屈することになる。■

 

 

Putin Knows His War in Ukraine Is Falling Apart Fast - 19FortyFive

 

ByBrent M. Eastwood

Author Expertise and Experience: Serving as 19FortyFive’s Defense and National Security Editor, Dr. Brent M. Eastwood is the author of Humans, Machines, and Data: Future Trends in Warfare. He is an Emerging Threats expert and former U.S. Army Infantry officer. You can follow him on Twitter @BMEastwood. He holds a Ph.D. in Political Science and Foreign Policy/ International Relations.


 

米海軍もXQ-58Aを評価試験用に導入。自律型無人機の運用はこれからの標準になる。日本の準備は大丈夫か。変化の早い今だからこそしっかり未来をにらんでいてほしい。

 艦載機特に戦闘機パイロットの存在意義をめぐり、無人機導入に抵抗があった米海軍でもここに来て無搭乗機材の活用は避けられないと開発試験を加速化しています。空軍に続き同じ機材を試験用とは言え導入するのは、海軍が空軍の知見を活用したいと思惑が見えてきます。さて、これまで無人機については及び腰だった日本ですが、遅れを取り戻すことができるのかが2030年代の安全保障環境に影響を与えそうですね。The Warzoneの記事です。


Navy Buys XQ-58A Valkyries For Secretive ‘Killer’ Drone ProjectUSAF

米海軍が導入するXQ-58Aは、敵防空網を突破する自律型ドローンの能力実証で役立つ 

米海軍がクレイトスのXQ-58A Valkyrieドローンの最新のオペレーターになる。海軍はPenetrating Affordable Autonomous Collaborative Killerと呼ぶ新プログラムの一環として、ステルス低価格の同型2機の購入契約を同社に交付した。現在のところ、XQ-58Aの唯一のユーザーが米空軍で、機密扱いの共同戦闘機プログラムプロジェクトを含む様々な試験目的で使用中だ。

海軍がXQ-58Aをどう使用するか詳細は不明だが、今回の無人機購入は、海軍の将来的な無人化へのビジョンと、拡大し続け、大きな利益を生む可能性があるこの市場におけるクレイトスの位置づけに関して、重要な進展と言える。

国防総省は2022年12月30日、毎日の契約通知で、海軍がXQ-58Aを2機購入する契約を確定させたと発表した。契約は、海軍航空システム本部(NAVAIR)の海軍航空戦機部門(NAWCAD)を通じ行われ、15百万ドルで、生産と配送、不特定の 「センサーと武器システムのペイロード」が対象。

通知によると、無人機は、「貫通型安価な自律型協調キラー - ポートフォリオの目標を達成する」ため使用される。これには「非経常的なエンジニアリングサービス、システム/サブシステムの統合、設置、試験、地上・飛行運用、ロジスティクス、メンテナンス、および政府試験場での飛行試験と実証実験のため政府所有のまま請負業者による運用」が含まれるとある。作業は、9月30日に終了する今年度中に完了するとある。

契約通知には、対象のXQ-58Aが改良型ブロック2バージョンかどうかは書かれていない。両機の正確な性能は不明だが、クレイトスのウェブサイトによると、ヴァルキリーは海抜45,000フィートまで飛行可能で、最大航続距離は3,000マイルという。ペイロードは同社によれば、最大6,000ポンドになる。XQ-58Aは、各種センサーやその他のシステムを迅速に統合できるよう、モジュール式のオープンアーキテクチャ設計だ。

米空軍のXQ-58Aが2021年にテストされた  USAF

XQ-58Aは、地上ランチャーからロケットアシスト方式で離陸し、パラシュートで地上に帰還する。これにより滑走路に依存しない。クレイトスは以前から、ヴァルキリーが容易に展開できるプラットフォームであると宣伝しており、コンテナ型ランチャーのコンセプトも示していた。

国防総省の契約通知には、海軍が合衆国法典第10編第4023節の権限を行使し、特に実験目的の各種調達に適用され、競争なしでクレイトスを指名したと書かれている。

「貫通型アフォーダブル自律協働キラー」という説明と、「センサーと兵器システムのペイロード」の両方についての言及から海軍のねらう中核的な目的で強いヒントがわかる。これは、敵防空網を突破し、高度自律性で活動できるステルス無人プラットフォームを複数開発する計画で、潜在的にはネットワーク化された群として、有人プラットフォームと共同し多様な任務を遂行すると示唆している。これには、情報、監視、偵察(ISR)または通信ノード(いずれの場合もメッシュ・ネットワークの一部として)として機能すること、電子戦ノードとして機能すること、その他、空や地上の敵脅威と直接交戦することなどが含まれる可能性がある。

空軍は、協調型戦闘航空機材Collaborative Combat Aircraft(CCA)プログラムの目標を説明するため、同一ではないにしても、多くの類似した用語を使用している。さらに、CCAは、空軍の大規模な次世代航空支配(NGAD)構想の一部でもある。NGADには、新型無人機以外に、第6世代有人戦闘機の開発や、新型い高度なセンサー、ネットワーキング、戦闘管理スイート、兵器システム、次世代ジェットエンジンなど、さまざまなプロジェクトが含まれる。

給油中の第6世代戦闘機の想像図。Lockheed Martin

ロッキード・マーチン

海軍は独自のNGADプログラムを持っており、機密扱いだが、F/A-XXと呼ぶ第6世代戦闘機を含め、空軍と多くの点で類似している。また、海軍関係者は過去に、将来の空母航空団の航空機の50%以上が無搭乗になる可能性があると発言している。そのため、NAVAIRによるXQ-58Aの2機購入が、同軍のNGADの取り組みのうち、CCAのようなサブコンポーネントと結びつく可能性は大いにあり得る。

2019年以来、空軍はXQ-58Aを使用して、高度な自律機能、通信およびデータ共有スイート、CCAプログラムで取得する可能性を含む将来の無人機につながるその他システム、ならびに乗員付きプラットフォームに関する作業をサポートしてきた。2022年11月、フロリダ州エグリン空軍基地の第96試験飛行隊は、2機のヴァルキリーが第40飛行試験飛行隊に加わり、自律機能関連の試験を開始したと発表した。

空軍は2021年、わずか3回の飛行を終えた最初のXQ-58Aを引退させ、博物館に送ると決定し、同機の設計が低コスト重視であることも浮き彫りになった。当時、空軍の広報担当者はAviation Week誌に対し、同無人機は 「大規模なアップグレードや修理 」を想定していなかったと語っている。

ヴァルキリーの正確な現在の単価は不明だ。クレイトスが昨年発表したデータでは、年間50機生産した場合、約400万ドルになるとされているが、同社は過去に、100機以上の生産では200万ドル以下になる可能性があると述べていた。

このように考えると、海軍が保有する2機のXQ-58Aも同様に試験支援用で、空軍の知見を活用できる可能性がある。逆に海軍の自律化技術は、空軍の様々な先進的なドローン開発に活用されている。米軍は無搭乗機とのチーミング・コンセプトに長年取り組んでおり、2015年には海兵隊のAV-8Bハリアー・ジャンプジェットとクレイトスUTAP-22マコ・ドローンを連結し飛ばすテストも行った。

同型のドローンが作戦行動機材に移行することは予見していないのかもしれないが、それでも今回の機材は、さらなるヴァルキリーや改良型につながるかもしれない、そうした能力への貴重な足がかりにもなるだろう。

もちろん、ロッキード・マーチンノースロップ・グラマンジェネラル・アトミックスボーイングレイセオンなど、米国の主要な防衛関連企業も最近、将来の無人プラットフォームと、さらに高度な自律性と乗員・無人チーム編成コンセプトを支える技術のビジョンを打ち出している。こうした作業の多くは、少なくとも部分的には、空軍で発展途上の CCA 要件を満たすのが目的のようだ。しかし、多くは、海軍の同様のプロジェクト、たとえば「貫通型安価な自律型共同殺人機」のポートフォリオにも適用できる。

はっきりしているのは、有人機やその他無人機と連携できる高度自律性があり、比較的安価な大量の高度無人機を、将来の米国の航空戦力の重要な構成要素と米軍がみなすようになってきたことだ。この視点は、特に中国やロシアといった潜在的な互角戦力を有するの敵対国に対する、将来の高度紛争の計画時に顕著になる。例えば、米政府と契約するシンクタンクなどは、XQ-58サイズやそれ以下のドローンを混合した高度に自律的な群れが、中国の台湾への軍事介入時でのアメリカの反応シナリオで、ゲームを変える可能性を一貫して示している。

高度な無人航空機と自律型テクノロジーの開発と実用化で大きく進歩している中国の国営航空産業や、米国の同盟国協力国多数も、同様の結論に達しているようだ。

以上を念頭に置き、2022年11月にクレイトスが発注元二箇所からXQ-58A受注を見込んでいると述べていたことが興味深い。うち1つが米国海軍だと判明した。もう1つは未公表のままだ。同社は当時、別の無名の「第4の新規顧客でヴァルキリーシステム複数と」と交渉中と述べていた。■

 

Navy Buys XQ-58A Valkyries For Secretive 'Killer' Drone Project

 

BYJOSEPH TREVITHICK|PUBLISHED JAN 2, 2023 6:28 PM

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