2016年2月24日水曜日

中国の南シナ海軍事化>高周波レーダーの設置は早期警戒網の整備の一環か


今度はレーダーですか。中国はなんとしても既成事実をどこまで積み上げるつもりなのでしょうか。ここまで事態が進展していることはオバマ政権の不作為として大統領選挙戦にも悪い影響がでないのかどうか。最も米国民にとっては南シナ海は遠い存在で争点は国内経済や格差問題なのかもしれませんね
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New Possible Chinese Radar Installation on South China Sea Artificial Island Could Put U.S., Allied Stealth Aircraft at Risk

By: Sam LaGrone
February 22, 2016 3:19 PM • Updated: February 22, 2016 6:56 PM

A Jan. 24, 2016 image of Cuarteron Reef in the South China Sea with what is likely a high frequency radar array. CSIS Asian Maritime Transparency Initiative, DigitalGlobe Image used with permission.
2016年1月24日撮影のクアテロン礁の衛星画像では高周波レーダーアレイらしき設備が確認できる。 CSIS Asian Maritime Transparency Initiative, DigitalGlobe Image used with permission.


中国が南シナ海にレーダーを展開し米国や同盟側のステルス機に探知リスクが出てきた。米国が冷戦時にロシア爆撃機を探知しようとしたのと類似した状況だ。
  1. 1月末の衛星画像が戦略国際研究所がDigitalGlobeと共同で公開され、高周波レーダーがクアテロン礁に設置されているのが判明した。同礁はフィリピンに近い。
  2. 画像では高さ65フィートの柱数本が埋立て造成地に視認され、形状はHFレーダーに酷似していると戦略国際研究所の Asian Maritime Transparency Initiative でグレッグ・ポーリングがUSNI Newsに2月22日語っている。「20メートルの柱数本が配置されている。これが高周波レーダーでなければ他にどんな可能性があるでしょうか」
  3. 画像では稼働中か不明で、国防総省に22日照会したが回答はまだない。なお本件はワシントンポスト紙が同日に最初に報道した。

A Jan. 24, 2016 image of Cuarteron Reef in the South China Sea with what is likely a high frequency radar array. CSIS, DigitalGlobe Image used with permission.
A Jan. 24, 2016 ima of Cuarteron Reef in the South China Sea with what is likely a high frequency radar array. CSIS, DigitalGlobe Image used with permission.

  1. 戦略予算評価センター(CSBA)の海軍関係アナリスト、ブライアン・クラークに言わせると同島の高周波レーダーは海上取締まり用途かもしれず、米国が同様の装備をメキシコ湾やカリブ海で運用しているという。だがクアテロン島のHFレーダーには軍事用途が二次的に想定され、ステルス機の探知が可能ではと見ている。
  2. 米ロ両国の類似レーダーでは水上目標を80マイルから200マイルの範囲で探知可能だが、中国レーダーがステルス機の探知が可能かは不明とクラークは言う。
  3. 「海上・空中ともに監視できるおあつらえの装備だ」とクラークは言う。「両方の機能があるところがいい。従来型の早期警戒レーダーの周波数で探知不可能だったステルス機も発見可能だ」
  4. 中国はすでに本土沿岸に類似型レーダーを設置しており、ステルス機の探知に投入している。
A Jan. 24, 2016 image of Cuarteron Reef in the South China Sea with what is likely a high frequency radar array. CSIS, DigitalGlobe Image used with permission.
A Jan. 24, 2016 image of Cuarteron Reef in the South China Sea with what is likely a high frequency radar array. CSIS, DigitalGlobe Image used with permission.

  1. クアテロンの高周波レーダーがデータリンクで探知結果を中国本土に送れば高性能レーダーは探知範囲を狭めて効率よく捜索できる。そのデータは対空ミサイル陣地に与えればよい。
  2. レーダー設備の導入は「該当地域にステルス機が運航されていることの証拠だろう」とクラークは見る。
  3. 米ステルス機各型はレーダー高周波数で最大のステルス性能を発揮する設定になっている。
  4. 高周波レーダーはステルス機が探知範囲に入れば判別できるが、兵器の照準ロックをするだけの正確性はない。しかし、USNI Newsが2014年に報じたようにロシア、中国はともに低バンドレーダーを改良しHF早期警戒システムと併用してステルス機探知に成功している。迎撃戦闘機に敵の大まかな位置を伝えることが可能だ。
  5. 米国も同様の構想でロシア爆撃機を探知する遠隔地早期警戒(DEW)ラインを1950年代末に設置している。
  6. クラークはクアテロン島のHFレーダーはこのDEWラインと同じ発想だという。「早期警戒レーダーの有効範囲を延長している」
  7. 設置場所がフィリピンに近い点を考えると、クアテロンのHFレーダーはフィリピンでの米軍機の活動を監視する目的もあ るが、すべて民生法執行活動の範囲内と中国は主張するのではと見クラークは見る。「漁業取締まり用だとか国境監視用と中国は説明するでしょう」
  8. 中国政府は繰り返し同島の設備は昨年完成した灯台とともに「公共の福祉と国際社会への貢献」が目的だと説明している。
  9. これと別に先週発表の衛星画像ではパラセル諸島のウッディ島に移動式対空ミサイル30基以上が配備されているのが判明した。これで中国がいう平和的目的の疑わしさが改めて浮上した。■

無人艦載給油機CBARSは攻撃機に進化するのか、それとも?



米海軍の次代機としてあれほど期待されたUCLASSが葬られ、代わりにタンカー構想が出てきましたが、この機体が同時に長距離攻撃任務にも使えるのでしょうか。あるいは実は別のプロジェクトがブラックの世界で進行しているのでしょうか。期待だけがふくらんでいきますが、その結果はあと数年すれば明らかになるでしょう。
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CBARS Drone Under OSD Review; Can A Tanker Become A Bomber?

By SYDNEY J. FREEDBERG JR.on February 19, 2016 at 1:58 PM
WASHINGTON: 米海軍の新型無人空中給油機CBARS構想を国防長官官房が精査中であるとBreaking Defense がつきとめた。
  1. 何を精査内容しているのかはわからないが先立つUCLASS構想の偵察攻撃無人機と重なる点がある。UCLASSも同じく長官官房が一年以上検討して結局中止に追い込み、そのためCBARS構想が浮上したのだ。今度の事業も同じ運命をたどらないと誰も断言できない。
  2. 前回の論点は要求性能だった。UCLASS空母運用空中偵察攻撃無人機の主任務は偵察なのか、比較的安全な空域を低速で飛行しそこそこの兵装を搭載するのか。あるいは攻撃に特化させ、防御固い敵地を長距離侵攻する重武装機なのかで論議が続いた。
  3. 後味の悪い論争の応酬が長官官房、海軍、議会の間で続き、2017年度予算ではどちらも否決された。かわりにそこまで大胆な性能を求めず、安価な空母搭載空中給油システムとしてCBARSが生まれた。CBARSの主任務はタンカーだが海軍によれば偵察能力と「限定的攻撃」能力も備えるいう。これでは偵察を主任務と想定したUCLASSに限りなく近いように聞こえる。
  4. そこでペンタゴン関係者にCBARSが想定する内容の説明を求めたが、きわめて丁寧にコメントはだれもできないというのだ。少なくとも官房による精査が終わるまでは。このことから証明はできないが、長官官房の誰かも同じ質問をしていると思われる。CBARSはUCLASSの軽量版なのか全く新しい構想なのか。
  5. 要求性能を正しく設定するのは不可欠だ。話を聞いた海軍航空関係のベテラン二名とも無人給油機は攻撃機にゆくゆくは進化するとみている。ただし今必要とされる空中給油だけが要求性能となれば二者択一式にCBARSがその他任務をこなす可能性が犠牲になる。
  6. 「無人給油機には長距離攻撃機に発展できる余地を残しておくべきでしょう」と語るのはジェリー・ヘンドリックス退役海軍大佐、現在は新しいアメリカの安全保障を考えるセンターに所属している。「発展可能性を残せばそれでいいと思います」
  7. 爆撃機転用は可能なはず、とヘンドリックスは言う。CBARSが別ミッション実施も前提に製造されれば。つまり目標への飛行途中で給油する「ミッションタンカー」にするのであり、空母周囲を飛行して単に給油を与えるだけの「リカバリータンカー」にしなければよい。「これまで20年の給油機は皆このタイプだった。他任務もこなせるタンカーはなかった」
  8. 「ミッションタンカーとして他機と一緒に戦闘空域へ飛ぶ機体になれば、遠隔地の敵空域でも空中給油は必要ですし、とくにS-400の脅威を考慮しなければ」とヘンドリックスは言う。高性能ミサイルが接近拒否領域否定の防空体制に配備されていることからその必要が痛感されるはずだ。このため比較的高性能の機体として兵装を燃料の代わりに積み、新型エイビオニクスとステルス塗装があれば爆撃機として運用できる。
  9. 「マッハ0.8で45千フィートを飛行できれば攻撃機と一緒に行動できる」とF/A-18E/FスーパーホーネットやF-35C共用打撃戦闘機を想定し、ヘンドリックスは見る。逆にCBARSが低性能偵察機になれば、攻撃任務実施は無理だろう。
  10. CBARSが将来の爆撃機の原型になるためには機体形状をクリーンにまとめておく必要がある。とくに搭載燃料は全部機内搭載とし、主翼にタンクを下げることは避ける。これでステルスを実現できるし、エンジン回りの設計は特に慎重にし、熱放射から赤外線探知される事態を防がないといけない。
  11. これまでの空軍の給油機は格好のレーダー標的で、民間機が原型のためだった。現在、一部F-18をミッションタンカーに転用しているが、ステルス性はない。
  12. CBARSを爆撃機に転用する前提だとタンカー性能が犠牲となり単価も高くなる。このため前海軍次官ボブ・マーティネッジ(戦略予算評価センター)は楽観視できないという。
  13. 「理論上はCBARSは侵攻型偵察攻撃機に進化する機体にできるでしょう」とマーティネッジは記者に電子メールで回答。「ただし、そのためにはタンカーの形状と推進系は攻撃機とほぼ同様に設定する必要があり、タンカーミッションが犠牲になります。これでは海軍提案と逆方向になります」「タンカーミッションに特化させれば主翼は高アスペクト比にし、主翼胴体から尾翼の形状、高効率エンジンが露出されることになり、これではステルス攻撃機には進化できません」
  14. 新型艦載給油機は二重の意味で有用だ。まずスーパーホーネットが給油任務から解放され、航空隊全体の運用距離が延びる。だがマーティネッジは「CBARSで解決できない問題がある。攻撃有効距離が不足しており、新しいネットワーク型のIADS(統合防空システムズ)を前に生存性が不足する問題だ。喫緊の課題は空母の作戦戦略上の威力を維持するためにも長距離侵攻可能な偵察攻撃機の確保だ」
  15. マーティネッジの推すのは「A-X」だろう。攻撃ミッションを主とする艦載機にはかつてはA-6イントルーダーがあった。無人機を一番要求が厳しい長距離攻撃任務用に設計しておけば、給油機にも転用できるはずだ。またCBARSを給油任務中心に定義したのちにステルス攻撃機型を別個準備するより費用は安くつくはずだ。開発期間も短縮できるとマーティネッジは言う。「A-Xを先に進めれば、その設計と技術内容から空母用給油機型をCBARSより先に公試、配備できるはず」
  16. マーティネッジが言う先行作業とは極秘の長距離空母運用型ステルス攻撃機のことかもしれない。この機体については今のところ誰も内容を知らないが、マーティネッジとCSBAで同僚のブライアン・クラークが予算の出どころをつきとめている。
  17. 「機体開発計画が別にあるか不明ですが、2016年度国防予算を見ると、議会が300百万ドルの追加予算をUCLASSに認めているのがわかります。これに対して海軍は同年度にUCLASS/CBARSに135百万ドルしか使うあてがないとして予算要求していました。DoDが別の300百万ドルを2016年度からどう使うつもりなのか見えてきません」
  18. もしペンタゴンが今もステルス長距離艦載爆撃機をブラック予算であるいはCBARSを進化させる形で構想しているとすれば、議会の有力筋には吉報だろう。議会は中国、ロシア、イランに対抗するには高性能が不可欠とみている。もし単なるタンカーを作れば、議会から鋭い質問が出てくるはずだ。■


2016年2月23日火曜日

★日本の安全保障の対象領域はどこまでなのか 思考を広げよう



日本にとっての安全保障の範囲はどこまでと考えるべきなのでしょうか。これまで思考停止していたツケを今払わされている感じがします。先回の国会論議を聞くと国境線と利益線は違うとすでに明治時代に力説していた陸奥宗光の言葉が重く感じられますね。国際社会の場で意見を堂々と発言すべしなどと威勢のいいことを吹聴する傾向がありますが、まず自分の言葉でしっかりと考えなければ。英語力だけでは中身のある意見になりません。改めて「あるべき姿」を根本から考えて、既成事実にとらわれなく創造的な思考の必要性を感じる次第です。
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Panel: Japan Concerned How U.S. Will Keep Sea Lines Open if Simultaneous Crises Occur in Asia, Middle East

By: John Grady
February 17, 2016 6:34 PM

中東と東シナ海あるいは朝鮮半島で同時に有事発生の場合に米国がどう動くのか、日本への原油輸送は維持できるのかと日本の政治指導層がこれまでにまして問いかけていると日本人講演者がブルッキングス研究所開催のフォーラムで紹介している。

  1. ㈱外交政策研究所の代表宮家邦彦は会場の質問に答えて「中国が本当に現状維持を欲しているのか、それとも変えようとしているのかが問題の核心だ」とし通商交通路を南シナ海とインド洋で維持することに言及した。
  2. 原油の8割が中東依存の日本の視点を宮家他の日本側講演者が紹介し、日米で現地で発生中の事態で関心事が違うと指摘した。日本は第七艦隊に母港を提供し、一部費用負担もするが、日米は「費用分担以上」をめざし、中国の軍事力経済力の進展に共同で対応すべきとした。
  3. 宮家のプレゼンテーションでは「中国は今や陸上国境線は確保ずみ」とし、中国にとって「脅威は海にあり」沿海部の工業地帯や金融機能防衛を重視し、日米安全保障同盟は脅威に写ると紹介。2011年の津波災害の直後に米国が空母二隻と揚陸強襲艦一隻を日本に派遣し災害救難活動を展開したのは有事の軍事力展開例と中国はとらえている。これに対して米国の視点は中国の歴史上で現在は海軍力、海洋力を発展させる二回目の時期に来ているとする。
  4. 中国も自国の交易エネルギー確保のため海上交通路の維持に配慮していると指摘するのはセントアンドリュース大の宮城由紀子だ。太平洋及びインド洋から眺めると日本の政策目標は「中東の情勢を平穏に維持する」ことだが日本の中東政策は「ジグザグの繰り返し」とし、アラブ・イスラエル紛争、イラン核開発問題、米国のイラク対策での例を挙げた。
  5. 宮家は歴史的にみて日本は中東で主要な役割を演じておらず、自衛力は増強したとはいえ、中東への兵力投射は日本には無理とし、中国が日本の周囲で影響力を増やしている事実を指摘する。またこの現実を受け入れて「中東と東アジアは一つの作戦戦域になりつつある」と日本や中国含む各国のとらえ方を紹介。「太平洋で大国の地位を確立するためには中東でも大国である必要がある」
  6. 中国がこの動きに出ていると指摘するのは中東を専門とするブルッキングス研究所のタマラ・ウィッツで、中国がアフリカの角で展開中の海賊対策を例示した。
  7. 米軍のイラク侵攻(2003年)とその後の「アラブの春」(2011年)を経た中東の情勢は極めて不安定とウィッツは指摘。「現在進行中の戦いは国家の本質を問うもの」でシリア、リビア、イエメンで内戦状態が進行しているところに域内の大国イラン、サウジアラビアがからみあうとともに外部からロシアが入っている。
  8. 「内戦でテロ集団が生まれる。テロ集団が内戦を悪化させる」と指摘したのはブルッキングスで中東政策を研究するダニエル・バイマンだ。外部からの介入が暴力を助長させると述べた。
  9. では米国に解決策があるのかが「大きな疑問、検討対象」だ。域内の協力国と米国が常に意見を共にしているわけではない。サウジアラビアはじめスンニ派国家はイランの核交渉結果を国益に反するととらえ、中東の優先事項はイスラム国の壊滅なのかイランの野望を食い止めることなのか、自国の政治システムを開放すべきなのか反対に縮小すべきか迷っているという。
  10. 米国がめざすイラク・シリアのイスラム国(ISISあるいはISIL)の撃破は単なるテロ集団の壊滅よりずっと規模が大きい目標で、アルカイダのような小規模集団が相手と全く違うとバイマンは指摘。イスラム国がパリやサンバーナディオ襲撃事件のようなテロ攻撃を中止しても依然として一大勢力のままだ。イスラム国のやっていることの95%は「昔ながらの国家建設であり、領土を奪取し、徴税すること」で秩序を確立しようとしているとバイマンは述べた。
  11. バイマンは日米が協力できる分野は多いと指摘した。中東各国のの国境警備隊の訓練やトルコやヨルダンへの支援でシリア難民の適正な処理に当たらせることを例示した。
  12. 会場の質問に宮家は日本の実業界トップは中東やイランをかつては石油供給の中心地と見ていたが、今や不安定の中にもあらためて権益を見つけていると指摘し、「機会だと見ればあなたも投資たくなるのでは」と述べた。
  13. 宮城は日本はイラン投資に相当慎重になるとの見方を紹介している。日本が建設した石油精製施設をイラン政府が接収した前例のためだ。ただし、「日本人の働き中毒ぶりはとても有名」なので中東のビジネスへの態度がとても異なることで「文化摩擦」の発生は必至と微笑しながら述べている。■


2016年2月22日月曜日

★レーザー、AIで優位性を目指す米空軍の最新開発状況



レーザーが実用化されたら軍事応用ではパラダイムチェンジにつながるかもしれませんし、人口知能の応用研究が相当進んでいることがこのような公開情報からもうかがえます。第三相殺戦略の一環でしょうが、一層技術の防衛が必要になりますね。このブログの筆者は依然としてレーザー搭載には発電容量の制約とセンサー、プロセッサーの必要性があり、一定の大きさの機体でないと実用上は役立たないとみており、戦闘機への搭載は懐疑的です。むしろBattle Planeを防御するのに戦闘機は有効でしょうが。
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The Air Force of the Future: Lasers on Fighter Jets, Planes That Think

By Lara Seligman, Defense News11:02 a.m. EST February 20, 2016
WASHINGTON — 高出力レーザーを発射する戦闘機、大量の情報をミリ秒単位で処理するロボット、考える能力を有する戦術航空機、これは米空軍が考える将来の戦闘の在り方を根本から変える技術革新の数例にすぎない。
  1. 新年度予算で米空軍は科学技術S&Tを再重視し、25億ドルを要求している。16年度は予算強制削減措置でS&Tは削減せざるを得ず、グローバルホークやB-2爆撃機で性能改修を先送りしているので増額要求は心強い。
  2. だがロシアや中国も必死に追いつこうとする中で米国が後塵を拝するのは許されないと空軍主任科学者グレッグ・ザカリアスはこう強調する。「技術進歩を大幅に続ける必要があり、のんびりしている余裕はない」
  3. 今後わずか五年以内に空軍は高出力レーザーの発射を戦闘機で実施する。「スターウォーズ」の技術がいよいよ実現する。
  4. 搭載機種はF-15が有望だ。F-22、F-16やF-35も想定がある。空軍研究所(AFRL)の「シールド」事業は航空戦闘軍団が支援し、高エネルギーレーザーを戦術機で2021年までに実戦化するのを目指す。
  5. 同事業は2015年2月に始まっており、半導体レーザーの最新技術を利用する。小型レーザー装置を組み合わせて10キロワット超の高出力を実現する。開発チームはレーザーは機体防御用だと強調する。
  6. レーザーを戦闘機に搭載できるまで小型にすれば、米空軍は戦闘の有効性とスピードで相当優位に立てる。レーザーの電源はジェットエンジンが発電し、従来型の兵装を搭載せずに機体を防御できる。
  7. 開発は複数企業間で競合させて進めていると空軍は説明。一方の企業がレーザーを開発し、他社がレーザー兵器システムとしてまとめる。ここには電源、冷却、システム制御コンピュータ、戦闘管理用コンピュータを飛行可能な規模にまとめる作業が必要だ。三社目はビーム制御システムを開発し、目標照準を実現し、四社目がシステム全体の統合を行う。
  8. このうちビーム制御の契約交付を3月に空軍は予定しており、統合作業分の契約は9月になるという。レーザー本体の契約は2017年に延期し、残りの契約企業が開発に十分な時間をあてられるようにするという。
  9. だがスターウォーズの世界が現実になる前にシールドチームは乗り越える課題がある。空軍は特殊部隊が運用するAC-130に搭載可能なレーザーウェポンシステムを2019年までに完成させようと着々と進行中だが、小型高速の機体に搭載するのは難易度がはるかに高い。
  10. 高速飛行中に正確に照準を合わせるのは振動のせいで相当困難だ。もうひとつがシステムの小型化で戦闘機の機体におさめなくてはいけない。またレーザーを有効に利用するため安定電源も課題だ。
  11. この解決のため空軍は他軍の知見を利用し、陸軍の高エネルギー機動レーザー実証事業(HEL MD)がその例だという。同事業は10キロワット級レーザーをオシュコシュ製軍用車両に取り付けたもので、海兵隊も同様にハンヴィー車両への搭載を行っている。
  12. AFRLは自律制御技術の開発も進めており、ロボット車両や航空機のみならず意思決定の補助やデータ解析に当たらせるという。
  13. 進行中のプロジェクトには人工知能でISR情報を各種手段からあつめたものを融合し有益なデータを迅速に取り出す機能がある。現在は空軍要員が何時間もかけ動画に目を凝らし、忍耐強く関係ある進展を把握し、指揮命令系統を順々に伝え指揮官の判断を仰いでいる。これが自律制御システムだとデータが即座に把握され人員は別の任務にまわすことができる。
  14. マシンがデータを精査し、重要な内容を区別してくれれば、負担軽減だけでなく人員にやてもらいたい仕事を割り当てられるはず、とAFRLは言う。
  15. ただし自律制御機能が開発されても人間の判断が不要になるわけではないとAFRLは強調する。むしろ空軍要員に知能の高い相棒を作り、ミッションの完遂をより効果的に進めるのが目的だ。AFRLチームは無人機を有人機と一緒に運用する技術の開発中だ。
  16. そこでAFRLは空軍テストパイロット養成課程と共同でこのチーム運用の有効性と実施可能性を実証している。有人F-16が無人F-16と編隊飛行し、無人機にはパイロットがコックピットで緊急時に備えたが、アルゴリズムだけで機体操縦を完了した。両機は有人機パイロットが指示するまで編隊を維持し、その後無人F-16は編隊から離れた後で復帰したという。
  17. だがAFRLがめざすのは自動飛行ジェット戦闘機だけではない。2022年に予定の演習では新技術は自動制御ではなく自律運航であることを証明し、自身で航法し、想定外の天候に対処し、地上からの指示なくても自分で航路を変更できる機能を示すという。■


南シナ海で軍事拠点化を進める中国への対抗策で選択肢は少ない


日本も真剣に考えないといけない問題ですが、すでに中国は自衛隊が哨戒任務を南シナ海で実施することを警戒して予防線を貼っていますね。国際社会の一員として言論だけでなく日本も行動を検討すべきではないでしょうか。その場合に南シナ海をひとくくりにするのではなく、それぞれの海域でアプローチを変える特定解が必要ですね。
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Few Choices For US As China Militarizes South Pacific

By SYDNEY J. FREEDBERG JR.on February 17, 2016 at 3:31 PM

Chinese HQ-9 anti-aircraft missile launcher (Wikimedia Commons)中国軍のHQ-9対空ミサイル発射車両
WASHINGTON: 南シナ海に対空ミサイル配備した中国を共和党の有力議員が非難しているが、米国にどんな対抗策を打てるのだろうか。高性能HQ-9ミサイルがパラセル諸島にあるということは、ヴィエトナム、台湾も領有を主張するなかで中国が確実に太平洋に軍事力を拡充させる一歩になったのではないか、さらにこれで終わりではない。
  1. アメリカが中国の動きの把握に精いっぱいであるのに対し、中国は長期戦略を進めている。中国は南シナ海全域を自国領土と主張し、悪名高き九段線をその根拠とするが、これは実は1949年に大陸から追放された蒋介石政権が作成したものである。今では域内の実効支配を強め、米国の存在など眼中にないようである。
  1. パラセルは米海軍駆逐艦が航行の自由作戦(FONOPS)を先月実施し、中国の領有主張に真っ向から挑戦した場所だ。しかしこの実施が中国のミサイル配備につながったのか、あるいは単なる口実におわったのか。専門家は口実だったとする。
  2. 「中国は米軍のFONOPSとともに域内での演習の強化で米国を非難しています。都合のよい正当化ですね」と語るのは軍事面では中道寄りの安全保障国際問題研究センターのボニー・グレイサーだ。「中国が進める空域海域の実効支配強化の一部でしょう」
  3. 米軍による作戦実施や台湾での独立派政党の選挙勝利、開催されたばかりのASEAN東南アジア諸国連合のサミット(カリフォーニア州)が中国の動きのタイミングと戦術につながっているとみるのは保守派ヘリテージ財団のディーン・チェンだ。だが裏には南シナ海の支配を目指す長期戦略と並んで習近平主席が掲げる中国の国家意識向上がある。
  4. 政治面では米中間の地政学的対立よりも実は中国国内の政治情勢が重要な要素だ。「来年に共産党の党大会を控え、習近平が上席指導層の入れ替えを図っており、経済は減速中だ。習は弱腰と見られる余裕はないはずだ」(チェン)
  5. 「中国はパラセル諸島は固有の領土としており、単に言葉の上だけでなく軍事的にも裏付けをしようとしている。『欲しければ取りに来い』といっているようなものだ。南シナ海の支配確立をめざす中国の目標にも一致する』とチェンは言う。
(Wikimedia Commons)
中国の領有権根拠となる「九段線」
【パラセル諸島の軍事的意義】
  1. ではパラセル諸島にどんな軍事的意味があるのか。まず、中国本土ヘはスプラトリー諸島より近い。中国はパラセル諸島を1974年に当時の南ベトナムから奪い、さらに1988年にも共産ベトナムとも交戦している。二番目に、スプラトリー諸島の一部はフィリピンが実効支配中だが、パラセルはすべて中国が支配している。
  2. パラセル諸島は習近平が掲げる非軍事化の約束の対象になっていないのが中国にとって都合がよいとグレイサーは指摘する。対象はスプラトリー諸島で、グレイサーも『だからと言って習近平が将来スプラトリー諸島を軍事化しないとは言い切れない」と慌てて付け加えた。
  3. 「パラセル諸島の軍事化は長年にわたり続いている」とグレイサーは言う。「中国の装備が急速に向上し主権主張に追いついてきたのが新しい展開です」
  4. パラセル諸島ではウッディ島に軍用仕様の滑走路を建設し、格納庫を空爆に耐えるようにした。11月には米軍の航行の自由作戦に対抗して実際に戦闘機を展開した。高性能地対空ミサイル部隊二個をウッディ島に展開し、これまでの投資を守る姿勢を示している。
  5. 「S-300/HQ-9はいやな存在だ」とチェンは言う。HQ-9はロシアのS-300が原型だが中国は米国のペイトリオット技術を追加している。1990年代にイスラエルが中国に技術援助したためだ。
  6. 「このミサイルで防空空域が前方移動し、高性能戦闘機以外は侵入をためらうようになります」とチェンは言う。「動きが鈍いP-3やP-8なら当然そうなります」
  7. 元海軍次官補ボブ・マーティネッジはここまで心配していない、とりあえず今のところは。「孤立した状況ならウッディ島に配備されたHQ-9の作戦上の意義は限定的だ」と記者に語り、「紛争が発生しても付近の航空路には限定的な脅威にしかならず簡単にこちらが制圧し、無力化できる。平時には米軍偵察機はおよそ100マイルの距離をとって危機発生を防いでいる」
  8. だがミサイル配備の意味はそこにとどまらない。もっと大きな戦略の中で見る必要があるとマーティネッジも指摘する。「とくに今回の配備がこちらの動きを探る観測気球だったらどうなるか。長距離地対空ミサイルや対艦巡航ミサイルが多数南シナ海に持ち込まれた場合は安定を損なう結果になり、米国が有事に介入する引火点を下げることになる(または米国が介入を断念するかもしれない)し、作戦上の不確実性も増えるだろう」 拠点がばらばらのうちは対応しやすいが、連携されると一種の「接近阻止領域拒否」機能のネットワークとなり、マーティネッジが所属する戦略予算評価センターが前から警告している事態が発生する。
【中国は次にどう出るか】
  1. ではパラセル諸島へのミサイル配備は一歩に過ぎないとわかったが、次の展開は何だろうか。
  2. 「中国は次に三番目の手に出るはずでこちらも準備しなければ」とチェンは言う。南シナ海領有の裏付けとして中国は海南島に地域全体を管轄する県を創設した。この県の名前が三沙で、パラセルが西沙、スプラトリーが南沙、マックレスフィールドバンクあるいはミスチーフ環礁が中沙と呼ばれる。このうちパラセルとスプラトリーで滑走路ほかの施設が完成しており、残るは中沙というわけだ。
  3. 「マックレスフィールドバンクに建造物他ができるでしょう」とチェンは言う。「現時点で地図を見ると滑走路、SAM陣地他を設置済みの拠点が三角形になっているのが見えるはずです。南シナ海に簡単に侵入できなくなります」
  4. 「中国は南シナ海で防空識別圏(ADIZ)を設定してくるでしょう」とグレイサーもいう。その手始めがパラセル諸島だという。東シナ海では中国はすでにADIZを設定しており、尖閣諸島がその中に入っている。次に中国が南シナ海でADIZを設定するとすればまずスプラトリー諸島周辺で領有権の根拠となる「基本線」を宣言するだろう。パラセル諸島では設定済みで米国はじめ各国はやりすぎとみている。
 【米国のとるべき次の手は】
  1. では米国は中国の動きにどんな対応ができるのだろうか。上院軍事委員会と下院シーパワー小委員会からそれぞれ提言が出ている。
  2. 「この瞬間にも中国は堂々と国際会議の席上で域内の安定を守ると主張しつつ、問題の島に武器を持ち込んでいる事実そのものが中国こそ地域を不安定にしている張本人と示すなにものでもない」と下院シーパワー小委員会のランディ・フォーブス委員長が声明文を発表。「米国は協力国とともに今後も航行の自由、上空飛行の自由を法による支配の一環として擁護していくべきだ」
  3. 上院のジョン・マケイン委員長はさらに先を行く。「中国の南シナ海での今週の動きは中国政府が軍事化と支配強化を引き続き希求していることのあらわれだ」と声明を発表し、「米国は中国がやすやすと行動できなくなるよう追加策を実行すべきだ。事態の変化を横目に航行の自由原則を堅持するという宣言だけでは足りない。ここまで事態が進展していることを米国は承服できないとし、中国がこれ以上の行動をとればリスクが発生するようにしなければならない」
  4. そのリスクとは何か。マケインは詳しく述べないが、アナリストは以下の見解を示してくれた。
  5. 「中国の意図は米国を挑発しエスカレーションを上げることで域内の安定を損ねようとしています」というのはジェリー・ヘンドリックス退役海軍大佐だ。「中国は米国に現状を受け入れさせ、抗議受けずに事を進めたいのです。しかし、これは受け入れがたく、またそのことを米国は明確に示しています」
  6. 「外交および政治チャンネルで中国に高いコストになるぞと伝えるべきです」とチェンもいう。「これまでは中国は自分の行動の代償を免除されています」とし、大型商談の取り消しや国際会議の締め出しは発生していない。中国は海軍のリムパック演習に招待されている。ペンタゴンは軍同士の接触があれば有事の際でも致命的な誤解を防げるとしており、政治的意図を理由から交流を中止すべきではないとしている。
  7. 「とりあえずFONOPSは中止すべきではない」とチェンは言う。「あそこが連中の領海だと認めることはできない。全く受け入れがたい。認めれば国際法の概念が無効になってしまう」
  8. 「理想的なのは友好国、同盟国と共同歩調をとることですがASEANは全く弱体です」とチェンは述べ、一部内陸国が海洋部での利害対立に無関心であり、中国の友好国も加盟していることを指す。「それでも危機感を共有する国とは連合ができるはず」とヴィエトナムやフィリピンに期待する。だがより中立的なインドネシアと慎重な姿勢のシンガポールも加盟できるはずだ。
  9. ただし各国を中国に対抗させようとすると「誰が猫に鈴をつけるのか」問題が発生する。各国が乗り気だとしても実際に実行してリスクを抱えることは遠慮したいところだ。「米国の主張や行動に賛同する国でも参加は嫌がるのではないか」とグレイサーは指摘する。「驚くべきことではない。中国を批判すれば代償を覚悟しなければならないとみんなわかっているから」と微笑しながら付け加えた。
  10. 現実はもっと悪い。航行の自由の主張も出ず、ASEAN共同宣言も出ず、ヘイグ国際法廷での係争案件にもなっていない。「いかなる手段をもってしても中国を抑制できないようですね」とグレイサーも認める。「域内各国は憂慮しており、米国が何をしても中国の軍事展開はパラセルだけでなくスプラトリーでも止められないのかと心配しているのです」■

2016年2月21日日曜日

★★T-50 PAK-FAは名ばかりの第五世代戦闘機だ



この記事の通りならロシアの新技術開発が相当遅れていることを露呈しています。一方でロシアには軍事装備ぐらいしか工業製品で輸出競争力がある商品はないので、本当ならT-50を黙って販売したいのでしょうが、同じスホイ社内製品がブロックするというのは製品開発戦略が根本的に間違っていることになりますね。ロシア航空界の今後は相当悲惨でしょう。
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Singapore Airshow 2016: Analysis - PAK-FA's Asian export hopes stymied by lack of 'fifth-generation' qualities

Reuben F Johnson, Singapore - IHS Jane's Defence Weekly
18 February 2016

第五世代戦闘機の触れ込みだがT-50 PAK-FAは今のところ第五世代戦闘機として性能発揮できるシステムが搭載されておらず、今後の生産機材でも不明だ。Source: Sukhoi

ロッキード・マーティンのF-22ラプターがシンガポール航空ショーに出展され、同社はアジアにおけるF-35各型への将来需要を強調しているのはアジアでの第五世代戦闘機需要の強さを改めて浮き彫りにしている。
ロシアはこれまでスホイT-50 PAK-FAを第五世代戦闘機と呼んできたが、よく見ると同機は「名前だけ」の存在だとわかる。次世代戦闘機の条件はステルス形状の機体外観だけではないとロッキード・マーティン社関係者が述べている。
ロシア防衛関連シンクタンクはT-50はスホイSu-27/30「フランカー」各型を運用中のアジア各国が採用すると以前に予測していた。インドネシア、マレーシア、ヴぇ営む、中国がここに含まれる。だが中国はスホイ機の大口導入国だが今や国産で次世代機の成都J-20と瀋陽FC-31を開発中だ。
T-50事業に詳しいロシア専門家は同機がアジア市場で人気を博するのは難しいとみている。その理由として機内搭載システムで第五世代機にふさわしい機能がほとんどないことを上げ、一方で機体価格はSu-35「フランカーE」(中国、インドネシアが発注)より相当高くなる。
T-50が搭載するNIIP製イルビスレーダーおよびNPOサトゥルン製117Sエンジンは同機の主要サブシステムであり、Su-35にも搭載されている。またT-50とSu-35でエイビオニクスの相当部分が共通だ。T-50の量産型で搭載システムが一気に刷新されSu-35と差別化される可能性は低いと上記専門家はみている。■



★★シンガポール航空ショーにて>戦闘機の新潮流に乗り遅れるな



これを見ると日米の第一線配備戦闘機は相当遅れている気がします。特に日本の場合は深刻では。攻撃、防御ともにバランスが必要ですが、中でもジャミングなど機体防御の能力が決定的に足りないのではないかと思います。相当先を行かれている感じがしますね。米空軍の場合は言ってみれば唯我独尊で世界の動向と無関係の世界に安住しかつF-35に相当の予算を取られたことが痛いのでしょう。なんといってもF-15/F-16コンビには今後20年近くがんばってもらわねばなりませんので改修へ相当のの投資が必要です。だったらヨーロッパの新型機材を導入したほうが安上がりという計算も成り立つでしょう。
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New World Ordnance At Singapore Airshow

Feb 17, 2016 Bill Sweetman | ShowNews

 
シンガポールのF-15SGは攻撃用兵装、レーダー、電子防御で先を行く機体だ。

これからのアジアでの空対空戦の姿をシンガポール航空ショーの航空展示・地上展示で垣間見ることができる。マレーシア空軍所属のSu-30MKMの姿は同機がSu-35S登場までは大きな存在であったことを思い出させてくれる。Su-35Sはまもなくアジアにも登場するだろう。ラファールが戻ってきた。地上ではシンガポール空軍のF-15SGとF-16はおなじみの機体だが、搭載性能は改めてよく観察する価値がある。
  1. ロッキード・マーティンのF-35共用打撃戦闘機は非ステルス機に対し6対1の航空優勢があるとの触れ込みだが、米空軍が額面通り信じているのなら供用開始後35年のF-15Cで性能改修に何十億ドルも投入しないはずだ。
  2. アジア太平洋でステルス機が大きな存在だが、スホイ各機を見れば戦闘機に二つの分野で整備が必要なのがわかる。電子戦と搭載兵器だ。
  3. 2012年10月にUSSジョージ・ワシントンがマレーシアに寄港し、スーパーホーネットとSu-30MKMが編隊飛行している。スホイの翼端の円筒形のポッドはロシア製KNIRTI SAP-518ジャミングシステムと判明した。SAP-518は高出力であり最新のデジタル無線周波数メモリー(DRFM)機能を利用している。おそらくAIM-120C高性能中距離空対空(AMRAAM)ミサイルを妨害できるはずだ。
  4. DRFM方式ジャミングが普及する中、ロシアはDRFMチップ各種を開発し米国はこれまで軽視してきたEW防御システムにあわてて注目している。スーパーホーネットが搭載するALQ-214を除くと戦闘機用の新型ジャマーは1980年代から開発されていない。
  5. イスラエル、シンガポールその他はこのギャップに以前から気付いており、だからこそシンガポール空軍所属の機体の表面には突出物が多数あり検分が必要だ。F-16Dにはエルビット子会社のエリスラElisraが開発した防御用装置が搭載されている。F-15SGにはデジタル電子戦装備があり、これもイスラエル製だといわれる。
  6. F-15SGにはジャミングに強いアクティブ電子スキャン方式アレイ(AESA)レーダーが搭載され、敵のEWが強力なら赤外線探知追跡 (IRST) を使えばよい。米空軍は今になってAESA、IRST、新型EW装置の予算をF-15用に確保しようとしている。ラファールの展示もダッソー、Saab、タイフーン提携企業がEW装備の重要性を最初から認識していることを思い起こさせる。
  7. スホイ戦闘機の機動性も課題だ。同機はAmrramでも簡単に捕捉撃破できない相手だ。Amraamの威力は距離が延びると劇的に低下するし、相手が機動性に富むと対応が困難だ。このためMBDAメテオミサイルが開発されている。
  8. ヨーロッパ製カナード翼付き戦闘機にはすべてメテオが搭載され、グリペンが先陣を切って実戦化される。AAM分野ではラファエルがI-Derby長距離ミサイルを開発中でAmraamに代わるDerbyミサイルの系列だ。またMBDAには高性能単距離AAMがある。新型Amraamでは地上発射、海上発射ミサイルと共通部品を採用してコストを下げるラファエルと同じ方法が採用されている。
  9. 米国のAAM開発は混乱をきたしているようだ。Amraamで制約になっているのはモーターの大きさでもとをたどるとF-16の主翼に搭載する設定のためだ。同様にAIM-9Xも旧型サイドワインダーのモーターを流用している。空軍はAmraam、海軍はAIM-9Xを推しており、国防高等研究プロジェクト庁も別案件を開発中だが、ばらばらで、一方でブラックの世界で別の進展があるようだ。
  10. その結果、長距離対応AIM-9XブロックIIIや統合両用モード航空優勢ミサイル事業などが現れては消えていったし、研究には最低限の予算しかついていない。レイセオンはこの一月に機体防御用ミサイル二種の開発契約を14百万ドルで取得している。だがAIM-120Dの先が見えない。ブラック世界のミサイルは同盟国には供与されず、米軍機に海外製ミサイルの搭載もない。2017年予算でMBDAのブリムストーンをスーパーホーネットで運用試験するため大変な議会対策が必要だった。
  11. F-16運用国は機体性能改修後もこういった制約を受け入れざるを得ないが、中期的にはEWや兵装の見地からヨーロッパ製機材が魅力的に映る可能性があり、センサー融合機能、IRST、機内搭載EW装備、広い兵装搭載の選択幅が訴求力を持つだろう。■


2016年2月20日土曜日

★ウッディ島への対空ミサイル持ち込みへの批判に反論する中国の論理は歪んでいる



中国人の考え方がよくわかる内容になっています。南シナ海は昔から中国の固有の領土、領土を守るため軍の装備を持ち込むことに何ら問題はないし、前からやっている。防御兵器なので軍事化とは別。人工島問題は南沙諸島だ。今回は西沙諸島の一部であり状況が違う。米国から干渉されるのは心外だ、問題は域内当事国と一対一で解決すべき。さあ突っ込みどころがいっぱいなのですが、ひとつひとつ論理で対抗していかなければなりません。そのためにも大統領が交代する時期は極めて米国西側には不利な時期です。規制実の積み上げをどう阻止できるのかが問われます。
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Defense Ministry: China's defense facilities on Xisha Islands have existed for years

Source: China Military Online Editor: Yao Jianing
2016-02-18 16:030

BEIJING, February 18 (ChinaMil) -- 中国国防省は2月17日いわゆる「中国の脅威」を再び西側メディアが誇大報道していることに反論した。同日に米国メディアが衛星写真から「中国が地対空ミサイルを南シナ海の永興島(ウッディー島)に配備した」と報じていた。
  1. 米報道では中国がそれぞれ8発のHQ-9地対空ミサイル発射台を有するミサイル部隊二個をレーダー装備とともに永興島に配備したとしている。中国国防省情報局はこの問題について質問に答える形で2月17日午後に西沙諸島は中国固有の領土であり、中国は正当な権利を行使して防衛装備を自国領土内に配備しているのであり、国家の領土主権を守る手段であると回答した。
  2. 該当島しょ部、環礁部の海空の防衛手段はこれまで長年にわたり配備されており、西側メディアがこの問題を取り上げて騒ぐのはいわゆる「中国の脅威」を蒸し返しているに過ぎないと国防省は論評した。
  3. 米フォックスニュースは2月16日にミサイルは前週に到着したと報じている。衛星画像を見ると同島の海浜は2月3日には何もなかったが、2月14日にミサイルが視認できる。
  4. 米政府関係者からは画像からHQ-9防空装備のようだと発言があったとフォックスにユースは伝えた。HQ-9の有効射程は125マイルで付近を飛行する航空機への脅威となるとフォックスニュースは述べている。
  5. 人民解放軍海軍の付属シンクタンク中国海軍学術研究所の研究員張軍社Zhang Junsheは西沙諸島は太古の昔から中国の主権下にあり、人民共和国建国の1949年以降は西沙、南沙、中沙の各諸島に行政事務所ができたほか、兵員が駐屯していると指摘。
  6. 西沙諸島、永興島が自然島であり人工島ではないことに議論の余地はないとZhangは述べている。米国は意図的に西沙諸島で問題を引き起こしており、中国が自国領土の保全のため防衛兵器を展開するのは当然だとZhangは発言。
  7. 自国領土の島しょ部分に兵器を配備するのはごく当たり前のことで多数の国家が実施しており、米国も信託統治領のグアム島に戦略爆撃機や原子力潜水艦を配備しているではないか、したがって米国にこの問題を批判する資格はないというのがZhangの論点だ。
  8. 西沙諸島に中国は1949年以降は各種防衛装備を展開しており、米国が意図的に西沙諸島を南沙諸島問題に関連させるのは不純な動機があるためだとZhang は付け加えた。■


クルーズ候補の国防政策提言は極めて健全かつ現実的な内容


今のところ予想が立てにくい大統領候補の乱立ですが、次第に淘汰されていくはずです。その際に決め手となるのが政策内容で、いよいよ各候補が考え方を示す時期が来たという感じですね。その中でクルーズ候補の国防政策は根拠がある内容になっているようですが、経済成長の加速が前提で、インフレを招きかねません。とはいえ、これまでの中では傑出した内容のようで、同候補に注目の価値はあるようです。クルーズ候補はカナダ出生のため国籍問題を攻撃されていますが、本人は米国人から生まれたので自分も米国人と主張しています。
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Cruz Wants $750B For Defense: Boost Services, Not Special Ops

By MARK CANCIAN on February 19, 2016 at 4:01 AM

Ted Cruz the family version 2016 presidential election
テッド・クルーズが一部世論調査ではドナルド・トランプを抑え共和党候補のトップになっている。同候補は詳細な国防政策案を今週発表している。CSISの国防予算アナリストであるマーク・カンシアンが早速その内容を精査しクルーズ構想の数字、前提をCSISの国防戦力計算ソフトに入力した。その結果は以下のとおりである。編集部
共和党大統領候補のテキサス州選出上院議員テッド・クルーズが国防政策の具体的提言を発表した。これまでの選挙戦では国防の拡充や海外の脅威など言葉が先行していたが、各候補もいよいよ具体策を提示すべき時期だと認識しているようだ
提言骨子は以下の通り。
  • 陸軍正規部隊は525千名とし「訓練を積んだ完全装備の兵員」とする。【現行の目標は450千名である。】
  • 海軍は空母打撃群12個体制と「最低でも350隻体制を維持」する。【現行は空母11隻、合計308隻。】
  • 空軍では「最低で6千機で、うち少なくとも1,500機の戦術戦闘機」だが、無人機の配備数とISRパイロットを増やす。【現行の目標は5,500機、うち戦闘攻撃機が1,100機。】
  • 海兵隊を拡充し、海兵隊から要求が出ている「戦闘部隊への女性隊員の配備要求を免除する」を検討する。(クルーズ陣営スタッフに一言。この提言を行った司令官が現在の統合参謀本部議長で、現在の司令官はオバマ政権方針に従う意向だ)
  • 総兵力は150万人体制 【現行の目標は127万名】
  • 特殊作戦部隊には変更なし
  • 核三本柱には必要予算全額を充当し、近代化を進める 【現行案でもこれをめざすが、2020年代に必要となる巨額資金投入の必要性は無視している】
  • ミサイル防衛能力を引き上げる 【予算は実質的にこの数年横ばい】
正確を記すと、クルーズ議員は他人のアイディアをそのまま利用するタイプではない。昨年10月にカーリー・フィオリーナが国防政策案を発表していたがほとんどすべてはヘリテージ財団の提言そのものだった。クルーズは自ら考える提言を発表した。
提言内容に大きな現状から逸脱はなく、アナリストや専門家多数と事前検討をすませているのは明らか。とくに昨年その前年の現状を反映している。つまりイラク、アフガニスタンの後に平和な時代が来ると思ったが中国の強圧的態度、ロシアの横暴さ、ISILが戦闘に勝利を収めて一挙に期待を裏切られた事態だ。
ただし提言にある陸軍、海兵隊を拡充するが、特殊作戦部隊はそのままという内容は比較的新奇といってよい。クルーズは「特殊作戦部隊は通常部隊の不足への回答にならない」と主張する。ヘリテージ財団のジェイムズ・カラファーノも同じ視点を主張している。特殊作戦部隊は具体的な行動を実施する部隊で、特別な標的の殺害や拉致がその例だが、通常の陸上部隊でこれを実施するのは適任ではない。政治家が特殊部隊を好むのは能力の高さや特定の戦略目標の実施を最低限の部隊投入で実施できる点を買っているのだが、実際には単独で効果を出しているわけではない。
もう一つ興味をそそられる提言内容がある。「【サイバー】報復政策を宣言し、必要なら強烈な反撃を加える」としている点だ。クルーズの主張は米国にはサイバー抑止力の整備を核抑止力と同様に検討する必要があるとする。これはサイバー専門家の間で議論を呼びそうだ。なぜならサイバー空間を「軍事化」すること、極秘戦時能力が明らかになってしまうからだ。だが防衛体制が機能していない現状を見ると議論の必要は感じられる。
新規装備や部隊整備はすべて相当の予算が必要だ。クルーズ候補もこのことは認めており、米国は現状のGDP3.3パーセント相当の国防予算を4.1パーセントに引き上げる必要を提言する。この数字で国防予算は7.500億ドル相当になるが、DoD予算だけでなく戦闘継続予算(OCO)やエネルギー省所管の核兵器関連予算以外にFBIはじめとする各省庁の国家安全保障関連予算も全部含めるのだろう。そこで提言内容を戦略国際問題研究センター(CSIS)の国防経費計算ソフトウェアに入力し、提言にある表現(「高い即応性」など)を数字に置き換えると、確かにその予算規模になった。若干低くなるが、他の候補とは一線を画しているのは確かで、クルーズ提言が意図的に数字を低く見積もっているとは言えない。(これだけの仕事をしたクルーズ陣営のスタッフに金星を進呈したい)
総額7,500億ドルというと2017年度用にオバマ政権が設定した予算が6,100億ドルで1,400億ドルも増える計算になる。これは現行の予算規模からみれば大きな増額だ。2012年時点のDoD試算よりさらに500億ドル国防に上乗せすることになる。当時の国防長官ロバート・ゲイツが考えた最低源の要求水準が2011年予算管理法でその後10年にわたり数千億ドル分カットされてしまった。反面、冷戦時代を思えばこの予算規模でも経済は圧迫されないといえる。当時の国防予算はGDP比で6から7パーセントだった。
もちろん問題はこれだけの予算をどうやって確保するかだ。クルーズ議員の提言では「アメリカ経済を5パーセント成長に乗せる」のを「税制、規制改革を通じ、支出を削減し、連邦資産等を売却する」事で実現するとしている。果たしてこの提言が成功するのかはエコノミストの判断に任せたい。
クルーズとバーニー・サンダースが一つ共通している内容がある。ペンタゴン内部の無駄と不要事業の削減だ。両議員は「ペンタゴン監査法案」の共同提案者である。前回のサンダース提言の分析で記しているが、無駄や重複の排除は考え方として健全とはいえ、実施は相当困難だ。真の改革は基地閉鎖(BRAC)で可能だが、総じて一方で不要な事業は他方で必要とするものがあるのが通例で、例として退役軍人向けの健康保険は大盤振る舞いで無駄なのか、国に尽くしてくれた1%の国民に何もしない残り99%が与えるべき恩典なのか。効率を追求し予算を節約することは無駄の排除ではなく何かを交換して実現できるものだ。
共和党候補がおしなべてオバマ政権が一方的に兵力を削減し国防予算を減額してきたと主張しているがこれには抗議すべきだ。近年の大きな削減は2011年予算管理法によるもので、この法案を成立させたのは下院に成立した共和党多数派だ。たしかにオバマ大統領は法案に署名したが、すべては共和党が作り、支援してきたからこそ継続してきたのだ。
ではその他の大統領候補への課題を伝えよう。共和、民主両党の候補者ともに国防政策に関して具体策を提示してほしい。それでこそ陳腐な言葉の羅列ではない真の議論が成立する。今から一年後にはいずれかが大統領になっている。国民ならびに首都の『評論家部隊」には世界で最も強力な軍事力をどうするつもりなのか各候補に聞く権利がある。■
記事を書いたマーク・カンシアンはオバマ政権の予算管理局で国防予算アナリストを務めた経験があり、現在は戦略国際問題研究センターで国防アナリストを務めている