2012年1月7日土曜日

日本の航空宇宙産業にとってF-35採択はどんな意味を持つのか

                             

Japan's JSF Buy Balances Economics, Industry

aviationweek.com Jan 4, 2012    

三 菱重工製F-2戦闘機の最終生産の完了後に、生産継続の場合の単価を試算したところ150億円という値段になった。全くの新型機ではない戦闘機の価格とし てはいかなる国にも負担できる額ではない。一方、日本の国家予算の赤字額は国内総生産の9%に相当し、債務総額では年間GDPの230%相当で、ヨーロッ パのどの国よりも大きい。東シナ海の反対側には中国があり、その経済は年率10%成長をこの三十年間にわたり達成している。ただし今後は6ないし7%成長 に鈍化しそうだが、中国の国防支出も経済拡大とほぼ同じペースで拡大している。一方で日本経済はこの二十年間の成長実績は年率0.8%というかぼそいもの だった。今後は「Made in Japan」のスタンプが戦闘機部品に押されることになる。そして生産は拡大し、経済的な規模を確保できるだろうが、戦闘機自体の生産はなくなる。
  1. 日本政府によるロッキード・マーティンF-35統合打撃戦闘機採用の発表が12月20日にあり、その直後に過去35年間堅持してきた武器輸出3原則の緩和も発表され、国際共同開発による武器の開発、生産に道を開いた。
  2. この変更は大きな影響を西側防衛産業にも及ぼす可能性がある。制約から解放された日本の防衛産業は大量生産に走るかもしれない。AH-64Dアパッチの例のように年間1機というペースでの完成機の生産ではなく、米国向けに相当数の部品生産が可能となる。
  3. 武器三原則の変更を発表した藤村官房長官は緩和の理由は「防衛装備を巡る国際環境の変化」だという。どんな変化かは明らかにしていないが、日本の戦略的な環境条件はきわめて明瞭である。
  4. F-35選択で日本は西側装備採用国の普通のクラブメンバーになる。政策変更に同機の選択が触媒の役割をしたのは明らかだ。ただしどの部品が国内生産となり、三菱重工や三菱電機と言った国内メーカーがどこまで関与するのかはまだわからない。
  5. 苦労して国内で一貫生産の体制を築いた防衛関係者、国内産業界が新体制に抵抗を示すのは間違いない。一方で、日本産業界にも独自優位性を示せる 分野に特化する必要を感じていることが輸出規制見直しの際に浮かび上がってきた。民間航空機分野では三大メーカーは主翼、胴体中央部の生産に特化している 例がある。
  6. た だ防衛省は選定評価上でF-35がなぜ優位だったのかについては説明しておらず、単にオペレーションズ・リサーチ結果に基づき判断したとしているだけだ。 開発途中の装備を選択するのであれば、リスク評価も当然しているのだろうが、防衛省はこの点について何も言及していない。
  7. F-35Aの初期作戦能力獲得は米空軍で2018年になる見込みだ。とはいえF-4ファントムが新型の中国戦闘機に対抗できる余地があるとは思えない。現在二個飛行隊のファントムだが、2014年2015年にそれぞれ一個飛行隊が退役となる。
  8. 日 本が調達するF-35は低率初期生産バッチ8号(LRIP8)の一部。イスラエルも同じロットから初号機を調達する予定だ。LRIP8の機体にはブロック 3ソフトウェアが搭載される。日本は平成24年度予算でまず4機を調達する。納入は平成28年度(2016年)を予定。この発注での機体単価を99億円と している。これならF-2追加生産の150億円よりも安価に見える。防衛省が調達する42機全体では20年間の運用で総額1.6兆円を見込み、一方でF- 2(94機)は運用期間45年間で3.4兆円と見積もる。
  9. 一 方でロッキード・マーティンの生産ラインから直接購入すれば、価格は相当下がる。つまり国内生産が加わることで費用が増加するのだが、ロッキード・マー ティンからは最終組み立て及び検査工場を国内に設置する提案がすでに出ている。戦闘機生産の中核技術を温存したい日本にとってはロッキードが提案している 主翼、胴体中央部等の主要部分の国内生産が実現する事が重要な要素だ。米政府からは主翼、尾部の国内生産の可能性が言及されている。各国向けF-35では ロッキード・マーティンが主翼を、ノースロップ・グラマンが胴体中央部、BAEシステムズが胴体後部と尾翼を生産分担している。日本は同機の主要部品 300点のうち4割を国内生産できる見込みとの報道があった。
  10. F- 35事業開発担当副社長スティーブ・オブライアンSteve O’Bryanは日本からの要望の概要の言及を避けたが、関連する生産技術を間接的に紹介している。「日本は第4世代戦闘機のアルミ加工技術ほか旧式な技 術はすでにF-15生産ラインで実施ずみですが、F-35では複合材技術、自動フライス加工など高度な機械加工技術に加えて、高性能エイビオニクス技術も 手に入れるでしょう」
  11. た だ飛行テストが18%しか完了していない現状でさらに問題が出てくる心配もあり、ペンタゴンからはF-35の2016年引渡しは不可能ではないかとの懸念 が出ていることについて、ロッキードの首脳陣からは「引渡し予定日の実現には心配していない」との発言が出た。その一方、空軍と海軍のテスト関係者からは 開発段階での問題発生で懸念が10月に表明されており、その直後に国防総省の調達担当責任者代行フランク・ケンドールFrank Kendallに総括評価が送られており、その内容が報道陣に入手されている。
  12. ロッキード・マーティンはLRIP8でさらに韓国向け販売の余地も残しており、同国が日本にならいF-35を選定し60機調達すればこれが実現する。オブライアンによると同ロットではまだ余裕があるとのことだ。
  13. これでイスラエル、日本、韓国がLRIP8で顧客になるとすると、ペンタゴンからはそれ以前のLRIP生産をさらに遅らせて、開発が完了していない機体の購入でのリスクを減らす動きに出るかもしれない。.
  14. 一 方、選にもれたボーイングには打撃で各国政府に対して既製の機体の購入を継続するべく価格値下げと維持コストの低下をちらつかせている。日本での選定が実 現していれば経済危機続く各国に対してスーパーホーネットが費用対効果で優れているとの証明になっていただろう。ボーイングは日本の選択を「尊重する」と の声明を発表している。
  15. 現 状どおりならボーイングのF/A-18E/F生産は2015年で終了する。米海軍とオーストラリアが今年中に追加発注するかを決定する予定だ。ブラジルで は36機の調達規模を巡り、ダッソー・ラファールとサーブ・グリペンとともにスーパーホーネットが争っている。その他マレーシア、デンマーク、アラブ首長 国連邦ならびに「その他中東諸国」でも選定の対象となる可能性がある。
  16. タイフーンはインドの要求する中型多用途戦闘航空機(126機)の国内生産対象として残っているが、BAEは同機年間生産数を53機から43機に縮小するとの発表をしている。同社の受注残は260機あり、引渡し済み機体数は280機になっている。

イラン国内不時着で明らかになったRQ-170の特徴

                                                 

F-22 Technology On UAV That Crashed In Iran

aviationweek.com Jan 5, 2012
   
ロッキード・マーティンの RQ-170センティネル機体中央部偵察装置格納庫の鮮明な写真を見るとセンサー装置複数を収納していることがわかる。センサーは特殊加工透明パネル内に 取り付けられており、この部分はF-22用に開発されたものである。この写真が機密解除で流出したのは同機が12月4日にイラン国内で墜落したため。
  1. 写 真は9月30日にアフガニスタン国内カンダハールで撮影されていた。主脚を格納したまま着陸すれば格納庫及びセンサー類に大きな損傷が発生することがうか がえる。UAS計画にくわしい米国情報機関の技術者によればセンサー類は「電子光学・赤外線(EO/IR)装置」で非ステルス機・無人機用に開発されたも のに「類似している」という。
  2. 今回の墜落事故の原因は「データリンク消失がその他装置の作動不良と共にあるいはその後に発生したため」と同機関係者が明らかにした。ただし、今回の事故は特に驚きに値しないという。「MQ-1プレデターは50機、リーパーでは9機を同じようにこれまで喪失している」ためだという。
  3. センティネル運用部隊は2005年に編成されており、同機がカンダハール出始めて撮影されたのは2007年。初期の運用はアフガニスタン国内でCIAが関与して行われた他、韓国からも操作されている。
  4. その後2009年に各機は米国内に戻り、フルモーションビデオ(FMV)カメラを搭載してからアフガニスタンに再配備されたと米空軍情報関係者は語る。その時点では米空軍432航空団の第30偵察飛行中隊が運用していた。
  5. 再 装備の前には長距離EO/IRカメラを搭載しており、イラン東部のミサイル実験を監視していたのではないかと専門家は見る。RQ-170の運用高度上限は 50,000フィートでその他の低価格UAVやRC-135コブラボールが30,000フィート以下の運用であることを考えると有利な条件だ。
  6. そ の他の特徴としてB-2向けに開発された前縁部の機体特性が盛り込まれている。ステルス性確保のため前縁部を鋭くしレーダー波を分散させ、中央部で丸みを もたせるのが効果的だ。同機運用の初期にはアフガニスタン国境に沿って飛行し、隣接国の領空には侵入をしないようにしたが、短距離で有効なFMVを搭載し た後はパキスタン領空内を飛行し、オサマ・ビン・ラディンの所在地を監視しており、その後イラン上空を飛行したと国防関係者は証言する。
  7. RQ- 170はCIAと空軍で別箇に運用されてきた。同機はそもそも共用無人戦闘機システム実証事業が2006年に集結した後に予算措置され、米空軍の空中電子 攻撃(AEA)を実証するステルス機として開発されたと見られる。ただし、第30偵察中隊の編成は2005年9月で、別の未公表UAVの存在が推定され る。
  8. 2007 年にCIAが少数機を取得し、既製品のFMVおよび衛星通信装置を装着している。FMVを選択したことからCIAの狙いがイランの核開発・ミサイル開発施設以 外だったことを意味する。固定目標なら長距離斜角写真(Lorop) カメラで十分なはずであり、FMVが真価を発揮するのはビン・ラディン襲撃のように目標周辺の動きをモニターする場合で、CIAはパキスタンの防空レー ダーがリーパーの動きを捉えており、その動きが内通される可能性を懸念していたのではないか。.
  9. ま たFMVは動作重視の新しい情報分析方法で中核装備となる。この手法は国家地理空間情報庁(NGA)が実施している。NGAの情報分析は利用可能な情報すべてから目標の完全な姿を作成するものだ。ビン・ラディン邸襲撃の前に、本人と思われる人物が現地で確認されていないものの標的の所在が推論され ていた。
  10. 今回現れた写真を見るとRQ-170は小型機で主翼巾45フィート、全長17フィートをわずかにこえるほどしかない。主脚はT-6練習機からの流用だ。
  11. 前 部脚は側部に格納され、同機の中央線は装備格納により多く利用できる。写真からは偵察用装備の中心はボール状のセンサーでレーダー反射、赤外線通過性の素 材三層による「温室ガラス」で包まれていることがわかる。その素材は秘匿情報だが決して新しいものではない。F-22用に、同機が赤外線捜索追跡装置を搭 載する構想だったときに開発されたものだ。
  12. 主 翼上の左右のバルジはおそらく衛星通信アンテナだろう。これでRQ-170は脅威度が高い空間では「陰になる」アンテナで安全に通信をすることができる。 機体中央部は短すぎるので長い空気取り入れ通路は使えず、F-117用の格子状の短いものだろう。ただし、空気取り入れ口の氷結問題をどう解決しているか は不明だ。F-117では格納式のワイパーと化学スプレイを装備してパイロットが操作していた。

2012年1月3日火曜日

次期爆撃機に大幅予算割り当て

新年明けましておめでとうございます。さて、ターミナル2では今年も防衛関係の航空宇宙ニースをかいつまんでお伝えしていきます。Aviationweekはまだお休み状態のようなので、新春一号ニュースはAir Force Magazineから取りました。

Future Bomber Program Gets Funding Bump

Daily Report, airforce-magazine.com

Friday December 30, 2011

2012 年度予算に議会が新型爆撃機に大盤振る舞い。空軍提出案の197百万ドルに議会から100百万ドルが追加され、総額297百万ドルとなったことが2012 年度国防予算案で判明した。追加部分は下院法案2055歳出パッケージとして送付したものにオバマ大統領が12月23日署名しており、同法案は成立済み。 ただし同法案にはこの追加理由の記述がない。一方で空軍作成の197百万ドル相当の予算案も議会承認済みであるが大統領の署名はまだ。空軍は80機ないし 100機の新型長距離爆撃機の配備を2020年代半ばから開始する予定。

関連ニュースも同じくDaily Reportより。
                   
Bomber Not Derailed by Sentinel's Loss:                         
RQ- 170センチネルとそのステルス技術がイランの手に渡ったこと、そしておそらくほどなく中国・ロシアも入手する可能性があるが、空軍は次期長距離侵攻性能 を持つ爆撃機(LRS-B)の開発計画に変更ないことが判明した。空軍の説明ではLRS-Bには低リスクの開発済みステルス技術を採用してコストダウンと 開発期間短縮を狙うという。そこで、センチネルの喪失でその計画に変更が生じるかを知りたかったのだが、「歴史的に見ると新型の高性能航空機ウェポンシス テムはB-2やF-22のように1開発開始から配備開始まで5年以上かかっていますよね。米国に対抗する国なら米国の装備に匹敵する内容を開発しようとし ますが、やはり開発から配備までの年数は相当な長さになるはずです」(米空軍ステフィ少佐)
少 佐によると「低視認性機体の運用は相当複雑で、(ステルス性の維持のための)戦術、整備、訓練で米空軍は優位性を維持している」という。次期爆撃機に「実 証済みの技術」を応用すると「開発費用の低減ならびに性能・価格バランスで目標価格が実現できることを上層部に伝えられる」ことになる。12/19 /2011

な るほど、次期爆撃機の略号はLRS-Bですか。ただでさえ国防予算で縮減の動きがある中、さすがこれが戦略思考というものでしょうか。中国を視野に入れたAir Sea Battle構想で重要な鍵を握る機体になりそうですね。これから10年後に配備が始まるといいのですが、それまでに日本の戦略的な重要性が損なわれる事 のないように、日本国民はいよいよ安全保障を真剣に考える時期に入ったようです。本ブログではかねてからISR と UASに焦点を当ててお伝えしてきたつもりですが、有人戦闘機がお好きな方も相当いらっしゃいます。今年は大事なアジェンダを考える切っ掛けを当ブログが 提供できれば幸いです。

2011年12月31日土曜日

日本の武器輸出三原則緩和で何が生まれるか

     
                        


年末の大きなニュースはF-35の採用と武器三原則の変更でした。そもそもF-35が正しいのかという疑問は当ブログがかねてから主張しているところですが、政府として採択したのであれば納税者にとっても不幸な結果にならないようにお願いしたいところです。さて、その武器輸出制限の方針転換についてAviationweekは以下のように伝えています。これが今年最後の配信になります。それでは皆様良いお年を。

Japan To Ease Arms Export Ban

Dec 28, 2011    

武器輸出制限の緩和は歴史的な決断であり、日本は防衛装備の開発製造で国際的な活動に加わることになる。
  1. 今 回の方針変更で日本国内の防衛装備メーカーに大きな変化が生まれる。各メーカーは得意技術に集中することが可能となる。これまでは装備全体の製造を非経済 的な少量生産で強いられてきたのと好対照だ。ただし、この変化が現れるには時間がかかるものだろう。日本と防衛装備開発生産で協調可能な国は安全保障の関 係で米国、カナダ、オーストラリア、西ヨーロッパ各国が考えられ、韓国も可能かもしれない。
  2. そ の手始めにF-35ライトニングがあげられる。同機採用を選択した日本にとって国内の戦闘機生産基盤をどこまで維持できるかが課題だ。日本の購入予定はわ ずか42機に限られ、これが当初の予定数としても経済的な生産規模を維持するのは相当に困難だが、同機を運用する各国向けの部品を日本が生産した上で、そ の他部品を輸入してF-35を組立るのであれば話は別だ。
  3. 日本では戦闘機国内生産は1956年に開始され、今年9月に三菱重工業F-2の最後の二機を納入で終了している。F-35採択は日本の戦闘機生産のあり方を大きく変化することは避けられない。
  4. 武器輸出三原則はそもそも1960年代に提唱され、70年代以降は厳格に解釈されてきたが、結果として国際共同開発への参加を不可能にしてきた。共同開発は第三国への輸出が通常付随するからであり、それは新政策でも考慮すべき課題である。
  5. 日 本政府の考えでは共同開発装備の第三国輸出には日本の同意がなければ実施できないとする。二年前にも同原則の改正の機会があったが、当時も人権を軽視する 諸国への防衛装備販売はしないという条件を想定していた。もし、同じ原則を適用すると西側共同開発国が想定する輸出先への販売ができなくなる事態が生まれ るかもしれない。

2011年12月30日金曜日

サウジアラビア向けF-15SA販売が実現に

                             

Saudi, U.S. Finalize F-15SA Sale

aviationweek.com Dec 29, 2011    

サウジアラビアによるF-15SA購入によりボーイングのセントルイス工場の生産ラインの仕事が確保できたものの、同社が期待していたF-15の準ステルス阪の海外販売の希望は消えつつある。
  1. サウジアラビアは製造済みF-15SをF-15SAとして改造する機体の受領を2014年に開始し、完全新造のF-15SAがその翌年から加わり、総額294億ドルの商談となる。
  2. オバマ政権はこの商談で米国経済には年間35億ドル、5万人の雇用の恩恵が生まれるとしてこれを歓迎しているが、製造済み機体の改装作業の一部はサウジアラビア国内でアルサラム航空機Alsalam Aircraft Companyにより実施される。
  3. 今 回の商談成立はボーイングにとっては朗報で、実際に商談成立を見込んで社内作業は開始されている。また、韓国からの受注の期待もあったが、日本がF- 35AをF-18スーパーホーネットを退ける形で採用したため、韓国も日本の選択を真似ると見られる中、韓国向け販売の可能性は消えつつある。それはボー イングが2009年に発表したサイレントイーグル仕様についても同じだ。韓国とイスラエルが同機の導入可能性ありと見られていた。イスラエルもF-35を 選択しており、ボーイング首脳陣は韓国から正式な提案提出要請が出るのを待っているが、サイレントイーグルが選択肢になるかは微妙だ。
  4. ボーイングのシンガポール空軍向けF-15SGおよび韓国向けF-15Kの引渡しは2012年第三四半期に終了する。生産は一ヶ月一機になっており、サウジアラビア発注でこれを増加させることは可能。
  5. 今回の商談成立を発表したアンドリュー・シャピロ国務次官補はイランに対して強いメッセージを送る意味があり、米国は湾岸地区おより中東に安定をもたらす役割を果たしていくと発言している。   
  6. 今回の商談にはあわせてレイセオン製AESAレーダー、グッドリッチDB-110電子光学偵察装置、赤外線捜索追跡をもつSniperおよびLantirnボッド、電子戦装置が含まれている。
  7. 兵装ではAIM120C7空対空ミサイル、500ポンド・レーザー誘導爆弾、、イブウェイIIIレーザー誘導爆弾、AGM-84ハープーン・ブロックII、AGM-88B高速対レーダーミサイル(HARM)もサウジアラビの購入リストに入っている。
  8. サ ウジアラビアからは総額600億ドルの武器購入要請がかねてからあり、F-15はその一部だ。その他には256億ドルでAH-64Dアパッチ36機、 UH-60M72機、AH-6i軽攻撃ヘリ36機、MD-530F12機のヘリコプター購入がある。これらはまだ認可が下りていないが、サウジアラビアは このうちアパッチ36機分の購入同意書にサインしている。

2011年12月24日土曜日

捕獲されたRQ-170のデータは保全されているのか

2月8日に突如イランが世界に発表したRQ-170の「捕獲」ですが、米空軍に近いAviationweekが全然取り上げないため、今回は無人機の話題を専門に取り上げるUAS Vision www.uasvision.com から関連情報をご紹介しましょう。

US Says Downed RQ-170 Data Heavily Encrypted

                   
                        Posted on December 23, 2011 by The Editor                   
                                            

米関係者によるとイランには捕獲したCIA運用のステルス無人機からデータや技術を入手するのは相当困難だという。その理由に敵対的な空域で運用する無人機の情報価値を制限する措置が有効に働いているようだ。
  1. イラン発表によるとRQ-170センティネルを乗っ取り、イラン東部のカシュマル近郊に着陸させたと主張しているが、米国は同機が作動不良に陥ったというのが事実で、イランの主張を退けている。
  2. 各種専門家によると同機のデータと通信装置には重度の暗号化措置がされており、イランでは情報を引き出せないという。米関係者は無人機には自爆装置は装備されていないと公言している。
  3. 一方、イランの電子戦部隊がRQ-170の衛星通信リンクを妨害して同機の自動操縦装置を欺瞞しアフガニスタン基地に帰還させたと思わせ、イランに着陸させたと主張する技術専門家もいる。確かにGPS航法は弱点だ、とこの専門家は言っているらしい。
  4. これに対してイランがRQ-170の航法システムを妨害する性能があるシステムを保有している可能性は「きわめて低い」と見る専門家もいる。
  5. 米国の無人機は軍用GPS周波数を使っており、そのタイミングコードの手順は極秘事項になっている。民用GPSのリピーターは民間用周波数で作動している。
  6. 下 院情報委員会のマイク・ロジャース委員長はたとえイランが今回入手した技術を実用化したとしてもそれが実現する時点で該当技術は陳腐化していると発言。こ れに対してイランのアリ・アクバル・サレヒ外相は国営IRNA通信に対して無人機捕獲の発表を遅らせたのは同機喪失に対する米側の動きを試す意味があった と発言している。
  7. 米側は当初はアフガニスタン、イラン国境近く出運用していた無人機を喪失したとしていたが、その後イランがイランの軍事活動・核開発活動を監視するため同国内に侵入した同機を捕獲したことを認めている。

2011年12月23日金曜日

本当にF-35で大丈夫なのか

                             

Japan Judged F-35 To Have Best Performance

aviationweek.com Dec 22, 2011

日本の防衛省はロッキード・マーティンF-35Aライトニングの性能水準の高さがF-X選定の決め手だったと発表。
  1. また同省はF-35Aが一番安価であったともする。競合するユーロファイター・タイフーンおよびボーイング F/A-18E/Fスーパーホーネットがともに空中給油用にフライングブーム式に改装しなければならないためだという。
  2. 産経新聞報道によると同機の「主要部品300点」のうち、40%を国内生産すると報道しているが、読売新聞は米政府からF-35主翼および尾部の生産を持ちかけられていると報道している。
  3. 両報道を見ると日本は従来の限りなく完成品に近い国内生産にこだわる方針は予想通り撤回しているが、一定の国内生産基盤は維持する意向が見えてくる。ロッキード・マーティンからは最終組立ラインの国内開設も提案されており、この実現はありうる。
  4. 国 内生産比率が高くなれば、初期取得規模の42機完成後にも日本がF-35を追加生産する公算が高くなる。防衛省は業界の予測通り42機購入を確認してい る。かねてから日本の産業界からはF-X生産は2020年代後半まで維持してボーイングF-15J部隊の一部の後継機灯すべきだとの主張があった。
  5. 今回の防衛省の評価基準では50点が性能、22.5点が費用、22.5点が国内生産への寄与度、5点が導入後の支援体制だったという。
  6. だ が、F-35の性能は想定にとどまり、それだとF-35が性能面で最優秀だったという評価が生まれないのであり、防衛省は支援サービスが一番良いとの評価をしている。また国内生産への寄与 度も低い、それは米政府がステルス技術の移転を認める公算がないことによる。ユーロファイターは95%の「情報共有」を認め、ボーイングは70から80% を提示していい(産経新聞は伝える。これに対してF-35での情報共有比率は著しく低い(同紙)。
  7. ユーロファイターはタイフーン生産でも日本の希望通りの比率を認めるとしていた。この申し出は国会議員の一部に特に魅力的に写っていたとの報道があり、実際に、国会審議の中でタイフーンを採択すべきとの主張が展開されていたのが、F-35に落ち着いたものだ。
  8. F-35の初期作戦能力獲得は米空軍がF-35Aで2018年に実現する見込みだが、日本は最初の四機の納入を2016年に予定しており、単価は99億円。これに対し三菱重工F-2戦闘機の生産継続をした場合の単価150億円で相当の差がある。防衛省はF-35A合計42機の取得および20年間の運用に1.6兆円を計上する見込みだ。

ABL空中レーザー実験機は開発中止 ただし技術開発は進む

Lights Out For The Airborne Laser
aviaionweek.com Dec 21, 2011    

開発期間16年、50億ドルを投入し、弾道ミサイル迎撃テストで幕を飾る形でペンタゴンはボーイングによる747-400Fを改造した空中レーザー機をモスボール保存することを決定した。
  1. 米ミサイル防衛庁は新世代レーザーを超高度を飛行する無人機からの運用を検討中で、レーザー技術、発電、ビーム制御などABLの開発成果を活用する。
  2. ABL開発は1990年代に米空軍が開始したもので、メガワット級の化学酸素ヨウ素レーザー(COIL)により上昇中の弾道ミサイルの推進動力部分を焼ききり、逆にミサイルを発射地点に墜落させることをめざした。
  3. ABL は目標の撃破実験に昨年ついに成功したとはいえ、あまりにも巨額な予算見積と非現実的な運用シナリオ、さらに財政危機を反映したペンタゴンの予算状況 により止めを刺された格好だ。ABLは何回も中止対象にあげられていたが、MDAと業界が存続させてきた。2010年2月にABLが目標捕捉、破壊に初めて成功し(テリアブラックブラント固体燃料ロケット)、その一週間後たらずに外国製液体燃料ロケット破壊に 成功している。
  4. MDA長官パトリック・オライリー陸軍中将は新世代のレーザーシステムに本腰を入れており、「より高性能のレーザーを小型化し、もっと高高度から発射する」と今後の機器構成はより簡略化すると言っている。
  5. 「技 術的にはあと一歩のところに来ていると思います。二三年でプロトタイプを完成し高高度で無人機からの運用が可能となります。いろいろな技術でいわば競 馬をしているようなもので、今のところどの技術にも十分な可能性があります。2010年代中に高高度飛行UAVと組み合わせた実践能力が獲得できるでしょ う」
  6. ただMDAは詳細を公表していない。ABL実験開始後の進展では半導体レーザー研究がめだつが、必要な発電量が確保できるかが鍵だ。
  7. 実際にはABLのすべてをモスボール保存したり廃棄するわけではない。ボーイングはMDAにビーム制御、発射母機の運動特性などの専門家20名の保持を提言しており、「今後の高出力指向性エネルギー兵器開発に知見を円滑に移転する」ことができるという。
  8. ただ公式にABLが終了すると、ボーイングのミサイル防衛関連業務は地上配備中間迎撃(GMD)構想に中心を移すことになる。

2011年12月18日日曜日

日本のF-35導入を注視する韓国

Seoul Will Be Watching

aviationweek.com Dec 16, 2011                                                                 

英語ではジョーンズさんに遅れるな(見栄を張る)という表現があるが、韓国の国防関係者にとってはさしずめ田中さんに遅れない事が重要だ。
  1. 日本がロッキード・マーティンF-35導入に踏み切り42機以上を購入するとの観測が強まっている。韓国がこれを注視しているのは間違いない。
  2. 日 本からの発注が実現すれば即座に韓国も後を追い、結果としてF-35の需要を増加させて、資金難の米国や欧州各国による取り消し分を穴埋めする効果にな る。日韓両国はF-4ファントムの後継機種の選択を急ぐ必要があり、トラブルの多いF-35で納入を待つ期間が長くなるとしてもそのリスクを受け入れるだ ろう。
  3. 日 本の決定内容は現地メディアにリークされており、年末までには正式発表となると見られるが、日本にとって過去55年間の戦闘機国内生産体制に決別する内容 となる。日本はイタリアとならびF-35組立工程を抱える可能性があるが、ステルス機能の秘匿性のため米国外での完全生産は認められないし、実現するとし ても法外に高価な生産になろうと業界筋は見る。
  4. 一 方F-X候補とされてきたボーイングF/A-18E/Fスーパーホーネットとユーロファイター・タイフーンなら国内生産実現の可能性がはるかに大きい。こ の両社は日本で敗退すると韓国でも60機分の販売機会を失うリスクに直面する。両社とも韓国の国民感情から韓国国防省が日本の選択よりも先進性の劣る装備 を採択する可能性は少ないと見る。そうなるとF-35導入は両国にとって無難な選択か。未成熟技術を抱える同機の購入に走ることへの批判は両国内であるだ ろうが。
  5. ボーイングは韓国向けにF-15SEサイレントイーグルを提案してきており、一部同国内で生産できるとしていた。ここでもF-35を採択すれば国内の戦闘機生産ラインが維持できなくなり、現有の生産基盤と人員は他の仕事を探す必要がある。
  6. 日 本国内では新型戦闘機の国内生産を2020年代後半まで維持する必要が訴えられてきた。日本では普通の低率生産ペースであってもこれなら120機を生産で きるだろう。これによりF-15イーグルの一部交代も可能だ。また国内開発のi3計画により、2030年代以降の生産を視野に入れる先端技術を開発中だ。 そうなるとF-35を選択する意味にはステルス技術と情報ネットワーク機能があるはずと読売新聞は分析しており、米国が日本側メーカーに情報提供してくれ る条件に日本政府は満足の意を表しているという。日本では攻撃ミッションを論じるのはタブーであるが、F-35選択の決め手として明らかに特に北朝鮮の防 空網を突破する能力があるのは間違いない。F-4には防空ミッションも想定されてきたが、ロッキード・マーティンはF-35の対地攻撃能力を強調してい る。
  7. 日 本は最初の4機は完成機輸入として平成24年度予算に盛り込む。納入は2016年以降となる。日本国内のメーカーはその後の機材製作を一部担当する。日本 は武器輸出禁止原則を緩和しないかぎりF-35向け部品の海外供給は不可能だ。ただし、産業基盤を維持し、コストを低減するためには原則見直しに結びつく ことになるかもしれない。日本は昨年も同原則の見直しを図っており、その際にもF-35発注が念頭にあったのかもしれない。
  8. 成 約を確実にしようとロッキード・マーティンからは日本側に主要部品の一部国内生産に加え、最終組み立てと試験評価まで任せても良いとの提案が出されてい る。さらに保守点検、定期修理まで含まれる。業界関係者によると同機組立工場の建設費用は10億ドルと見ている。さらにプラットアンドホイットニー F135エンジンの国内組立も可能となるかもしれない。
  9. 航 空自衛隊は当初はファントム最終機の交代を平成21年度内に完了する希望でロッキード・マーティンF-22の導入を米国に求めていた。この更新のタイミン グは三菱重工、IHI三菱電機がF-2支援戦闘機生産を終了する時期に合わせるものと想定され、F-2最終号機は今年9月に納入されている。
  10. そこでメーカー側からF-2追加生産が提案されていたが、最近になりその可能性がないことが明らかになっている。一川防衛相が11月9日の国会審議でF-2増産分の一機単価は150億円と答弁している。
  11. 日 本による発注、さらにその後の韓国の発注でF-35開発は思いがけない追い風を受けることになりそうだ。両国とも早期の納入を希望しており、ロッキード・ マーティンとしても初期生産ロットの規模が大きくなれば単価引き下げ効果を期待できる。安定した生産の実現も同じく重要だ。部品供給各社にとっても恩恵と なる。
  12. 日本にとっては戦闘機部隊の維持のため同機の早期導が課題だ。2016年納入のためには定率初期生産バッチ8(LRIP8)での生産が求められ、発注は2014年までに完了する必要がある。2016年納入機材にはブロック3のソフトウェアが搭載されるだろう。
  13. 一方、韓国国防省も来年に発注し、同じく2016年納入を期待する。どうも日程計画はJSFの開発日程に限りなく近いようだ。最新の技術基本検討内容ではF-35Aのテスト終了を2016年としているのだ。
  14. 統 合参謀本部議長マーティン・デンプシー米陸軍大将Gen. Martin DempseyはF-35受注数の現象の可能性をほのめかしており、詳しくは2月予定の予算内容公表で明らかになる。一方国防調達委員会は総合計画を見直 し新しい費用積算見積もりを来月に検討する。
  15. F- 35開発パートナー各国の高官で構成する統合執行最高委員会(JESB)は今月に今年に入り第二回目の会合の予定であったが、3月まで先送りとなってい る。米国が同機の発注数変更を2月に公表する可能性があるためだ。討議内容にはLRIP6の各国分担義務が予定されていたが、発注数削減でその後の各 LRIPの規模に影響が出そうで、LRIP8もここに含まれる。
  16. これでLRIP8では100機以上の購入が実現することになる。購入国は米国、イタリア、オーストラリア、オランダ、ノルウェー、イスラエル、トルコがすでに予定されている。
  17. 日 本と韓国からの一刻も早い導入を求める声による後押し効果とは対照的にオーストラリアの立場が微妙になりつつある。オーストラリア政府はボーイング F/A-18A/B後継機種の導入が2020年代になることは受け入れがたいとし、スーパーホーネット導入に踏み切っている。
コメント 何度となく主張してきたのですがF-35選択ほど日本にとって不幸な結果になるものはないと考えています。高額な買い物になるだけでなく、さらに有人戦闘機への過信を継続させ、結果、無人機の開発、実用化が特に日本では遅れることになるでしょう。たしかにF-35に新技術が盛り込まれているのは魅力的ではありますが、まず第一線に配備できる機体でなければ絵に書いた餅ですね。

2011年12月7日水曜日

イラク空軍向けF-16販売へ


Iraq F-16 Order Finally Confirmed

aviationweek.com Dec 6, 2011                                                                 

長く決着がつかなかったイラク向けF-16売却だが、いよいよ実行に移される。ロッキード・マーティンに総額835百万ドルの海外軍事販売契約が交付され、18機が売却される。
       
国 防総省による同契約内容はF-16C12機とF-16Dブロック52を6機ならびに予備部品と支援サービスが含まれ、2018年5月まで有効になってい る。これによりフォートワースの生産ラインは2015年まで継続されることになり、ロッキード・マーティンにとってはF-16の確定受注は一年以上ぶり だ。
       
イラクはF-16購入交渉を2009年に開始し、同国空軍の拡充の柱としてきた。現在の同空軍にはヘルファイヤ搭載のセスナ・キャラバンしかない状態だ。当初予定してた購入の頭金は食料購入に流用されて実施できない状態になっていた。

その後交渉は再開し、ことし9月にイラクのF-16購入が発表され、同国は第26番目のF-16運用国になる。
              

F-35開発が中止になったら③代替エンジン開発は途中で中止に

                             

GE, Rolls Give Up on F136 JSF Alternate Engine

aviationweek.com Dec 2, 2011

ジェネラル・エレクトリックロールスロイスはF136エンジン開発を中止する。これでF-35共用打撃戦闘機の代替エンジン開発計画は消滅することになる。
  1. こ の決定の出発点は去る10月31日のGEエイビエーション首脳部と国防次官アシュトン・カーターAshton Carterの会合で「国防総省から自社開発への支援が得られる見込みがなくなったため」とGEは説明。国防総省はすでに4月にF136開発の中止を決め ていたので、驚くべき内容ではないが、これでF-35に採用済みのプラット・アンド・ホイットニー製F135エンジンを上回る性能をねらったF136の 15年に渡る開発は終了することになる。
  2. 業界筋ではJSFのエンジン関連業務量を1.000億ドル相当と見ており、代替エンジン開発による競争効果で15から20%の生涯費用節約を予想していた。
  3. F136 開発の中止により戦闘機用エンジンメーカー間の将来の第六世代戦闘機向けエンジン開発のバランスにも影響が出る。プラットとロールスが従来は考えられな かった共同事業の形で民間商用機向けのターボファンエンジン開発にとりかかっており、その延長で第六世代機用の軍用エンジン開発でも提携する可能性が出て きた。
  4. ペ ンタゴンから終結宣言が出た時点で開発は八割ほど完了しており、国家予算も30億ドル程度投入されていたが、GEとロールスは自社資金によりF136開発 を2012年度まで続けると宣言していた。しかし、GEによるとカーターの発言により「F136の開発継続が困難と判断し、JSF関連の連邦予算の動向も さらに不確実性を増している」という。
  5. これまでにF136開発用エンジン6基で合計1,200時間の稼働実績がある。GEによるとF136関連の人員は全員他部署へ移動の予定だという。
  6. F136 は技術的に先進性があるとはいえ、GEとロールスは別箇に将来の第六世代機用エンジン開発を空軍研究所の適合性多用途エンジン技術Adaptive Versatile Engine Technology (Advent) 他の研究成果を利用しながら模索してく。両社はF136技術で特許を出願しており、同エンジンはそのまま開発を継続できないばかりか、長距離爆撃機構想な どの他の用途に流用することはできない。
  7. GE、ロールス両社は開発中止は最終決定であり、仮に議会が自社開発案を指示したとしても、両社とも復活の意向はないという。
  8. こ れまで同エンジン開発を指示してきたのは上下両院のうち特に下院軍事委員会でペンタゴン、ホワイトハウスに働きかけてきたが、ホワイトハウスはブッシュ前 政権時代からこれに反対しており、同エンジン開発による支出増とそもそも2つのエンジンを開発することが効率性の観点から疑問を持たれていた。
  9. そ もそも両社の共同事業は1996年にロールスロイスがアリソンの親会社となり、GE-アリソンチームに加わりYF120巡航エンジンを当時検討中だった JSFの各種発展型用のエンジンとして開発を着手したことで成立した。両社はGEA-FXLエンジンとしてJSF短距離離陸垂直着陸型の垂直飛 行・巡航飛行用のエンジン案でも共同事業パートナーとなっている。
  10. 同年後半に政府が正式にYF120をJSF代替エンジン開発の対象として選定したことで両社の共同事業は正式になった。当初はアリソンがエンジン中核部分と低圧タービンを、ロールスがファン部分の設計と製造を担当する計画だった。
  11. 翌1997年に議会の求めに応じてペンタゴンがGE-ロールスチームにより代替エンジン開発の仕組みづくりを開始し、両社はF136と呼称を変更したエンジンの開発に取り組んだのであった。
       

2011年12月6日火曜日

F-35 第四ロット機は7%の予算超過に

F-35 LRIP 4 Jets 7% Over Target Cost

aviationweek.com Dec 2, 2011     By Amy Butler



総額3,800億ドル規模のF-35開発を管理する政府関係者によると同機生産の第四生産ロットでは機体単価が目標を約7%上回りそうだという。

  1. D・ヴェンレット中将(F-35生産統括責任者)によるとロッキード・マーティンには単価引き下げの可能性があると見るが、低率初期生産ロット4号(LRIP)の3割は完成しているという。
  2. ロッキード・マーティンも7%超過は「きわめて正確な予測だ」と認めている。
  3. では、政府が掌握している同機の単価はどうなっているのか。
  4. -通常型離着陸のF-35Aでは111.6百万ドル
  5. -短距離離着陸型は109.4百万ドル
  6. -空母運用型の初期生産で142.9百万ドル
  7. と なっており、契約により目標価格の120%上限までの価格超過部分は政府とロッキードが折半して負担する。初期の生産ロットでの超過額は11から15% だった。結果、政府はLRIP1から3までに総額771百万ドルを負担している。これは一機あたり27.5百万ドルの追加支払になる。このうち135百万 ドルはテスト期間に判明した補修を完成機に実施することにあてられた。これだけで対象28機に一機あたり4.86百万ドルをつかったことになる。

リビア作戦から明らかになったNATO軍の実態

                             

Libya Reveals NATO Readiness Highs And Lows

aviationweek.com Dec 2, 2011    

一 回の紛争事例の結果から「普遍的な真理」を引き出すのは危険かもしれない。今年前半に英国の戦略国防安全保障レビューはアフガニスタン作戦から将来の作戦 上のひな形を想定している。その報告では国家間の紛争とそれ以外の紛争のオプションの区別などきれいにまとめてはいるが、あくまでもきれいごとだ。では統 合護民官作戦Operation Unified Protector(NATOによるリピア内戦におけ国民、反乱軍保護ミッション)から意味のある教訓は引き出せるのか。
  1. NATOの即応体制が作 戦実施で欠点があきらかになったとか、ヨーロッパ各国の準備不足が露呈した等結論を急いで引き出す傾向があったが、空中給油機の8割 は米空軍が提供しており、このことが関係者に衝撃を与えているのが事実だ。欧州全体からはわずか20機程度しか動員できなかった。英国はVC-10とトラ イスターの退役で空中給油能力が低下しており、この状態はエアバスA330ヴォイジャー給油機が稼働開始するまで続く。フランスの給油機の稼働率は著しく低く、両国で進行中の調達拡充が実現すれば、「タンカーギャップ」は解消するだろう。
  2. 一方、敵防空網の制圧ではNATOは米国装備に頼りっぱなしであったのも事実だ。これは今回始まったのではなく、これまでの数十年間同じ状況で今後も変わりそうにない。また、救難捜索用機材がないため、サハラ砂漠が緊急時には着陸地点に指定されていた。
  3. だ が空軍戦力近代化の努力の結果が今回出ている。各攻撃機には目標照準・Istar(情報収集、監視、目標捕捉、偵察)ポッドを搭載し、1990年代よりも 状況に応じてはるかに柔軟な対応をしている。すでに他国からは今回のNATO作戦で示された欧州各国の軍用機の作戦状況に関心が寄せられており、複雑な攻 撃作戦の大部分を地上統制官なしで実施していることが注目を集めている。今回の作戦の前にはアフガニスタンの経験が念頭にあり、複雑な航空作戦を実施する には地上統制官が目標を示すことが必要だろうと広く信じられていた。リビア作戦はこの考え方をある程度変える結果になった。
  4. 初期報道では電子偵察能力では米国の機材がたよりといわれていたが、予想よりも広範囲で欧州各国装備はとくにIstar分野で性能を発揮したようである。スウェーデン空軍のサーブJAS39グリペン戦闘機はrecceポッドによる画像品質と即応性で高い評価を与えた。ダッソー・ラファールF3はタレス製 のAreos Reco NGポッドを搭載し、これも高い性能を発揮したと伝えられる。英空軍はこれに対しセンティネルR1アスターAstor(空中スタンドオフレーダー)が予算 削減で退役するところを引っ張り出し、ラプターRaptor(空中偵察ポッド、トーネード用)を投入。欧州だけでIstar運用を実施している。
  5. 使用された兵装についても興味深い点がある。フランスはサゲムSagem製AASM動力付き爆弾を225発使用している。トーネードGR4で主に使われたのはレイセオンのペイブウェイIV500ポンドレーザーGPS照準付きを700発以上使用した。同爆弾はアフガニスタンではすでに使用済みだが、リビアではもっと広範な目標に使用されている。そのバックアップとしてMBDA製ブリムストーンミサイルが使われた。もともとは対装甲兵器として開発されたが、レーザー誘導とミリ波レーダーがついて性能が向上している。リビアでの大量使用に呼応してMBDAには緊急生産発注がされている。
  6. 精密誘導兵器の在庫が不足してしまった小国もあるが、米国からボーイング製共用直接攻撃弾(JDAM)の購入に走っている。希望の兆しもある。各国は財務当局に以前よりも兵装在庫量を増加させる必要があると説得するのは容易になるだろう。
  7. リ ビア作戦で注目するべきは英仏両国が政治的な決断の後に長距離攻撃態勢を整えたスピードだ。また、両国では海軍艦艇による砲撃支援(NGS)が再び脚光を 浴びた。英海軍は4.5インチ砲で240発を発射し、高性能爆薬、曳光弾を混ぜて使用した。英海軍の砲火は英海兵隊向け支援として2003年にもイラクで 実績があるが、リビアでの実績により英海軍のタイプ26グローバル戦闘艦構想フリゲートには5インチ砲を搭載してNGSを提供することになろう。
  8. フランス海軍は100mm砲・76mm砲あわせて3,000発をNGSミッションで発射。このことから軽量弾では重量弾と同じ効果を得るためには大量の発砲が必要だとわかる。
  9. リビアは両国にとって攻撃ヘリを海上から運用する点で転換点となった。英国はボーイングAH-64アパッチロングボウを5機投入し、フランスはユーロコプターEC665 タイガーヘリを10機使用した。その実績は現在評価を受けているが今回限りの作戦というよりも今後の標準使用方法となりそうだ。リビアでのヘリ作戦様式が 高速ジェットと攻撃ヘリの混成運用に発展するかは不明だ。その実現にはより多くの訓練と実践経験の上により多くの支出が欧州に必要だ。
  10. NATO 軍はこれまで20年近くの経験をイラク飛行禁止地帯、バルカン半島、イラク、アフガニスタンで積んできているので航空作戦でリビアで得た教訓は常識の範囲 に留まる。ただし、250機から300機の作戦航空機を揃える英仏両国がわずか25機程度しか持続的に作戦に投入出来なかったことはひとつの懸念だ。
  11. 一 つ明らかなのは今回の統合護民官作戦は将来の運用の基準にはならないし、次回の作戦のひな形にもならないことだ。地上部隊投入がなくても実施できる作戦で はあったが、ほとんどの教訓はこれまでの結果を裏付けるものだった。ひとつには装備が整い、よく訓練され、ただしい指揮命令を受けた部隊にとっては想定外 の事態にもうまく対応できることが証明された形だ。アフガニスタンと平行して統合護民官作戦を実施するNATOの立場なら航空作戦の観点では対地攻撃方法 はひとつだけではないことがわかるだろう。

2011年12月3日土曜日

F-35が中止になったら② 結局F-15を徹底的に使いこなすことになるのか

                             

F-15s May Out-Maneuver Sequestration Impact

aviationweek.com Nov 30, 2011            

F-35開発が仮に中止あるいは更に遅延した場合、米国及び同盟国はレーダー断面積の少ない機体またはスタンドオフ兵器を敵の高性能防空網に向けて発射できる機体がより多く必要となる。
そこで現有機を改良して高性能通常型兵器、指向性エネルギー兵器、高性能電子戦(EW)能力の搭載が求められるが、その価格はステルス専用機の数分の一にすぎない。
  1. F-35開発中のロッキード・マーティンは既存のF/A-18やF-15、F-16を改装してもJSFと同程度の能力を実現することは不可能だと主張している。
  2. た だし、空軍内部でステルス機のF-22やF-35の能力を現有機が代替できると信じる向きはわずかだ。「現時点で利用できる技術を取り入れないのでは現在 の空戦で求められる機能を発揮できません。みなさんのほとんどが対空ミサイルの性能、配備数が上昇しており、対抗上機体断面積を小さくするステルス性が必 須になっていることをお分かりになっていないようです」(太平洋空軍司令官ゲーリー・ノース大将“Gen. Gary North, commander of U.S. Pacific Air Forces)
  3. 「空対空ミサイルの有効射程も伸びており、敵を先に探知し、集中的に電子戦を仕掛けることが重要になっています。各国の防衛政策では必要な装備をどこまで整備するのか、どれだけの防衛作戦を行うのか真剣に検討するべき時期が来ています」(同大将)
  4. だ が、ステルス機の配備数があまりにも少ないのであれば、その補完装備が必要だ。ここでボーイングのF-15ミッションシステムズ担当部長ブラッド・ジョー ンズがすき間市場として、サイレントイーグルを海外向けに売り込もうとしている他、米空軍向けには現有F-15CとF-15Eストライクイーグルの改修を 提案している。米軍装備が縮小に向かう中、急に発生する紛争事例(リビアがその例)に投入できる各国共通運用が可能な機体の需要が大きくなっていると分析 する。ただし第一の疑問は現有のF-15は今後の新型機導入あるいは現有機改修が実現するまでの間の耐用年数が残っているかという点だ。その中で米空軍の F-15は今世紀の中頃まで供用される見込みだ。
  5. 新型機の生産数が削減されるあるいは中止になる中で、戦闘機の機数不足は明らかで、実地運用・訓練用ともに必要な機数が今後足りなくなる。現時点で米空軍が運用するF-15はC型350機、E型222機であり、各型の耐用年数延長を急いで実施しようとしている。
  6. ボーイングはF-15Cの疲労試験を実施中で現在の飛行時間上限9,000時間を18,000時間に延長するのが目標だ。F-15Eはもともと兵装搭載を前提に主翼構造が強化されており、現行上限8,000時間を32,000時間にできないか疲労試験を開始するところだ。
  7. ボー イングは各機の近代化改修契約をすでに交付されており、アクティブ電子スキャンアレイ(AESA)レーダーに換装し現有の機械式スキャンレーダーの有効距 離56海里を2,3倍に拡大させる。また、機械式レーダーの平均故障時間は100時間だがAESAでは2,100時間になる。
  8. こ の新型レーダーAPG-82(v)1 には高精度の地図作成機能もあり、搭載する長距離攻撃兵装が高精度の目標捕捉をすることができる。さらに同レーダーの性能を増幅する機能が現在開発中の高 性能ディスプレー・コア・プロセッサー (ADCP II) であり、2013年度予算ではさらにデジタルEW機能の開発が予定されている。
  9. 空 軍は機体の運用可能性を延長するつもりだ。F-15には巡航ミサイルと同じサイズのChampのような長距離誘導で強力な兵装を搭載でき、チャンプは電子 攻撃の中核となる。さらにF-22にはさらに高高度を飛行させるか、敵防衛網の中に展開させ、F-15向けの目標情報を配信することが可能。そこでF- 15が実際の攻撃を担当し、F-22は指揮命令機能を提供する構想だ。
  10. ADCPIIは海軍のF/A-18E/Fと共通装備であり、機体の一部として取り付けられる。その中心部分のソフトウェアは海空軍共通化され、アップグレードの効果を共用出来る利点がある。
  11. もう一つのF-15改修の可能性はデジタル電子戦システム (DEWS)でギガバイト単位の大量データを使い、レーダー、プロセッサー群、EW装備への接続ポートを持つ。DEWSカラの情報がレーダー他の発信機に流れ、ジャミングや電子攻撃を実施する構想だ。
  12. 「ハー ドウェアは完成しています。今はソフトウェアの改修を検討しています。EWシステムには電子攻撃以外のオプションもありますが、ハードウェア全体は同じア レイの中に搭載し、アレイの中のチャンネルをふやせばもっとすごい仕事がこなせるようになりますよ」(ジョーンズ)
  13. その可能性の一つがデータビームであり、アルゴリズムを入れて敵の電子目標を発見することができる。「構想は完成しており、まだ完成していないのはアルゴリズムであり、プロセッサーに組み込むデーターベースだけです」(ジョーンズ)
  14. 敵 に発見されにくくなるF-15サイレントイーグルはすでに韓国のFX-3候補として提案済みである。「AESA,DEWSにフライ・バイ・ワイヤを盛り込 みました。特に韓国向けにはデイスプレイを大型化し、一体型兵装庫でレーダー断面積を縮小しています。」(ジョーンズ)
  15. 「ただし空気取り入れ口には手を入れていません。機体構造の大掛かりな変更になってしまうためです。そこでF/A-18 と同様のタービン表面の改修が選択肢に入ります。低費用で非探知性を向上できますよ」(ジョーンズ)

コ メント: ボーイングの商売上手はこれまで通りですが、結局F-35は西側世界の防衛体制を根本から揺るがす史上最大の失敗機になるのではないでしょう か。そのあげくがF-15の運用延長というのは泣けてきますし、F-22を母機にF-15が攻撃にとりかかる、というのはF-35の運用コンセプトそのも のですが、ステルス性がちがうF-15では相当の被害も想定しておく必要がありますね。くりかえし主張してきたようにF-35は日本には不要の機体であ り、今回のF-X選定でも失速する可能性が濃厚になって来ました。

2011年11月30日水曜日

F-35開発が中止になったらどうなるか

            

Are There Alternatives To The F-35 Program?

aviationweek.com Nov 29, 2011    

もしF-35開発がさらに遅れるか、規模縮小になるか、予算問題で取りやめになったとしたら米国の攻撃機戦力保持の代替策はあるのだろうか。
  1. 仮 にF-35の編成整備が高価過ぎると判断された場合、ペンタゴンの選択肢は即刻取りやめから海軍用F-35Cあるいは海兵隊用F-35B開発の中止または 先送りまでの範囲がある。空軍用A型の中止の場合は全体開発そのものが継続できなくなるので、むしろ開発を先送りにするか、空軍向け本格生産機数を現在の 目標の年間80機から縮小する可能性がある。
  2. JSF 関係者は代案はありえない、とか次善の策はないとこれまで巨額の規模の同機開発がサクッ元されようとすると繰り返し主張してきた。ただし、財務危機の現実 の前に計上済みの予算も削減の可能性が出てきた。JSFでは初期作戦能力獲得がいつになるのか未だに保証ができない状態であり、調達コスト、維持コストで も同機の将来には不安が離れない。一方で米国、海外において現行の各種機体の生産を今世紀半頃まで維持し、戦闘機の不足を回避するべきだと主張する向きが ある。現行機種ではステルス性が劣るため、その穴を無人攻撃機、長距離発射兵器、電子攻撃装置また探知性削減の装置装着で補う構想がある。
  3. それにしてもF-35で複雑な問題が国際共同開発国の役割だ。8カ国の合計でも全体機数の5%相当にしかならないが、各国は機体調達を早期に求めており、初期低率生産LRIP段階で各国が導入する機数は米空軍分に相当する規模になる。
  4. 仮に共同開発国が遅延と価格上昇に我慢できず、計画から脱落したら、生産数が低下し、単価がLRIP段階で上昇していしまう。LRIPでは初期の少数生産から急速に年間200機程度に増加するのが当初の計画だ。
  5. こ の規模は現在の戦闘機各種のいずれよりも大きく、この規模の経済がJSFの根本なのだ。これまで大規模投資が組み立て設備、試験機器等になされており、複 雑なサプライチェーンで中小企業含む多数の企業が参加しているが、これは一定規模の仕事量を前提としてきた。その結果、現行の戦闘機の生産量では不十分な 規模のシステムが生まれている。
  6. 前 国防長官ロバート・ゲイツが当時の計画主任デイビッド・ハインツ少将を解任してから二年もたたないうちにJSFはナン-マカーディ法案の定める上限に大幅 に反すると判定され、現時点でも遅延と予算超過の最終的な見通しは立っていない。その理由として同機を導入する予定の各軍がそれぞれ同機の初期作戦能力獲 得の確実な予定を立てられないことがある。
  7. またJSFはマイルストーンB承認(システム開発、実証、低率初期生産で必要な法律的な要求事項)を獲得していない。当初のMS-Bは2001年に交付されているものの、上記ナン-マカーディ条項違反を理由に取り消し処分となっている。