2012年2月3日金曜日

米空軍の削減規模が明らかに

                             

U.S. Air Force Reveals Budget Cut Details

aviationweek.com Feb 2, 2012

財政赤字、予算削減への対応として米空軍は戦闘機123機、輸送機133機の削減策を提案する。
そ の他機種合わせて286機を削減するが、戦闘機123機は7飛行隊で戦術実戦部隊6と練習部隊1だ。このうち102機がA-10Cで、21機が旧型F- 16であるのは地上兵力の削減で支援機の需要が減るため。A-10 は246機が残る。ドンレー空軍長官が明らかにした。
  1. 開発の進捗を遅らせる各プログラムの予算は確保される。その例として長距離攻撃構想の一連の計画(新型爆撃機含む)、KC-46A空中給油機、高性能情報収集監視偵察(ISR)機材、F-16などがある。ただ装備近代化の進展がすべてペースを落とすわけではない。
  2. 「F- 35の開発遅延の余波でF-16近代化を350機対象に実施する方針を打ち出しました。一方、F-35の量産を遅らせますが、調達規模で今のところ変更は ありません。通産生産機数が1,000機ないし1,600機になる2020年代に全体規模を検討することになるでしょう(ドンレー空軍長官)
  3. ISR機材での変更では無人機が現状65機を85機に増強する。有人機では変更無く、RC-135 リヴェットジョイント、コブラボール、コンバットセントの各機材を維持する。装備品の更新には予算を十分準備する。
  4. 「RQ- 4グローバルホークのブロック30(18機)、RC-26(11機)のほか作戦中に損傷を受けたE-8Cジョイントスターズ一機を退役させます。このうち グローバルホークについてはコストが限界を超えたのが理由です。性能はほしいのですが、このコストでは無理です。代替としてU-2があったのですが、現時 点ではブロック20のグローバルホークが使えますし、移動目標の捕捉能力が高いブロック40の導入を進めます」(ドンレー長官)
  5. 人員削減は合計9,900名で、このうち空軍3,900名、州軍5,100名、900名が予備役だ。人員減を緩和するため州軍人員は    期間延長の場合は無人機操縦とISR部門に配属する。   
  6. 予 算削減の流れは昨年8月の赤字削減のための債務上限設定法から始まっている。空軍長官は運用上の工夫でこの流れに対応使用という考え方だ。昨年12月17 日はこの二十年間ではじめてイラク上空にわが国が軍用機の飛行がない日になっている。リビア作戦はその反対に、空軍が緊急要請に数時間で対応したという。 つまり、規模は縮小しても柔軟な対応が必要ということだ。

2012年2月2日木曜日

最新のXプレーン X-56Aを米空軍が発表

                             

USAF Reveals Latest X-Plane: X-56A

aviationweek.com Feb 1, 2012                                                         
米空軍がX-56Aの呼称をつけた新型実験機はアクティブ制御技術の可能性を追求し将来のHALE(高高度長時間飛行)偵察機に利用するねらいがある。
  1. 同機はロッキード・マーティンの スカンクワークスが設計した全翼機でNASAも今後利用する予定で、モジュラー構造の革新的な構造でアクティブなフラッター抑制と突風加重軽減をテストす るもの。この二つの課題は軽量かつ高アスペクト比の主翼の実現に不可欠とされ、将来の輸送機・ISR用無人機への採用が期待されている。
  2. 同機はフラッター発生の限界点を探る目的ももつ。フラッター現象は主翼伸縮と荷重が重なって発生すると考えられている。テストが限界点を超えて主翼が破損する可能性を考えてX-56Aの機体にはパラシュートが格納されている。
  3. エ ンジンは二基のJetCatP240ターボジェットで主翼は取替え可能となっており、固定翼以外に柔軟構造の主翼複数に交換できる。また機体後部上方に ハードポイントをそなえ、エンジン追加または連結した主翼のブームが取り付けられ、さらに高度な空力理論のテストが可能だ。
  4. 同 機は空軍研究所(AFRL)の多用途空力弾性実証計画Multi-utility Aeroelastic Demonstration Program (MAD)でテスト機として使用される。AFRLは先にSensorCraftの名称でHALE機材を監視、通信中継、、環境測定に使う構想を研究してお り、今回はその後をつなぐもの。空軍によるテストが完了した後、同機はNASAのドライデン飛行研究センターで軽量機体構造や将来の低排気輸送機のための 技術研究に使用される予定。
  5. AFRL によるとSensorCraftの研究結果で高アスペクト比主翼には柔軟度を高めることにしたという。突風加重軽減とフラッター抑制が鍵となる技術で、こ れまでアクティブ制御の実験では有効な試験機材が無かった。そこで専用の機材を開発したのだという。NASAも将来の航空機の構造の研究分野を共有してい る。
  6. X-56AはGFMIエアロスペース(カ リフォルニア州ファウンテンバレー)が最終組み立て中で4月末にロッキード・マーティンに引き渡され、その後6月にエドワーズ空軍基地に搬入される。 452試験航空隊が7月から9月にかけて飛行テストを実施する。合計25時間の飛行テスト終了後にNASAへ移管される。

2012年2月1日水曜日

F-35A:射出シート不具合で飛行停止

                             

Ejection Parachute Issue Grounds F-35As

aviationweek.com Jan 30, 2012
By Amy Butler abutler@aviationweek.com
WASHINGTON
   
ロッキード・マーティンF-35の完成したばかりの機体15機が射出シートのパラシュートの不適切な取り付けのために飛行できない状態になっている。
  1. このため1月26日以降は飛行テスト、高速地上テストが停止されており、エドワーズ空軍基地、エグリン空軍基地、フォートワースのロッキード生産施設で影響が生じている。
  2. パタクセントリバー海軍基地でテスト中の8機は一モデル前の射出シートを搭載しており、パラシュートも正しく装着されているのでこの処分の対象ではない。
  3. マーティン-ベーカー製US16E-21および-23型のシートが設計と180度反対になっていたとのことで、同社からの代替シートの到着には10日かかる見込み。ただ、これでパイロットの脱出が不可能になるわけではないという。
  4. た だ業界筋によればこのまま射出していればパイロットは傷害を受ける可能性があるという。地表に反対側でぶつかるためだ。パラシュートが反対側に装着されて いることで、操作ひも反対になっていた可能性があり、パイロットが着陸地点に接近することが困難になっていたかもしれない。
  5. 問 題の装備は英国のマーティン-ベーカーに返送され修理を受ける。改修後のパラシュートはエドワーズ空軍基地の6機に装着され飛行テスト再開となる。エグリ ンではF-35A6機とF-35B3機が地上操作限定の扱いとなっており、改修部品を取り付けるのはその後になりそうだ。-24型の射出シートが利用可能 になるまでは海上飛行は禁止となっている。
  6. 今回の不良騒動で米国に残るただ一社の射出シートメーカーであるグッドリッチに チャンスが来るかもしれない。F-35Aの買い手は合計11カ国になりそうで、そのうち米空軍だけで1,763機を最大購入する可能性がある。そこで、 F-35に採用されないと同社のエイセズ5射出シートの今後が危うくなるのだ。これ以外に大量購入の可能性は空軍のT-38C後継機種選定だが、次期高等 練習機はまだ正式に検討が始まっていない。
  7. 米空軍航空戦闘軍団(ACC)がエイセズ5射出シートをF-35Aに採用すれば同戦闘機の耐用年数全期間で費用節約になるとの研究がある。その理由としてすでに使用中のエイセズ2シートと共用性があるためだ。
  8. 議会からは同研究の内容の開示請求が昨年出ており、空軍はその結論部分を議会スタッフに示した。ただし、射出シートの価格情報があるため内容は公表されない。
  9. ペンタゴンは12月にもグッドリッチ製射出シートをF-35Aに採用すべきかを決定する見込みだが、2017年までに最大179機の購入を削減するという米国の思惑からこの決定のための会合を3月に前倒しすることになった。
                             

図はグッドリッチのエイセズ5射出シート Aces 5 from Goodrich
       

2012年1月31日火曜日

中国のステルス機J-20を分析すると.....

Chinese J-20 Stealth Fighter Advances

aviaionweek.com Jan 30, 2012

各種情報を合わせると成都J-20の登場は西側情報機関では予測されていなかったようだ。中国がステルス機を開発中との情報はあったもののJ-20の登場は予想より前で、機体は実験機あるいは実証機の域を超えた熟成度を示している。
  1. J-20の登場は2009年11月の中国テレビ報道で人民解放軍空軍副司令官He Weirong将軍とのインタビューで予測されていた。同将軍は「第四世代戦闘機」が2010年から11年に初飛行し、2017年から19年に実戦配備されると語っていた。
  2. 2011年1月11日のJ-20初飛行の時点で試作型の機体は少なくとも二機完成していたようだ。二機は排気口の形状で区別できる。一機はロシア製AL-31Fエンジン、もう一機は成都J-10と同じ国産WS-10エンジンを搭載しているようだ。
  3. J-20は大型機で、全長は66フィートでロッキード・マーティンF-22(68フィート)と大差はないが、兵器庫は機体下部にあるほか、小型の兵器庫が機体側面にあり、空対空ミサイルを格納すると見られる。
  4. J-20にもJ-10のようにカナード翼がついているが、J-20のカナードは主翼のすぐ前方で主翼と同じ高さに装着されている。
  5. ス テルス設計は大部分がロッキード・マーティンのF-22とF-35の例にしたがっているようだ。機体前部のチャインラインが高く、空気取り入れ口まで続い ており、機体上部のラインが平坦な下部につながっている。キャノピーはF-22の形状そっくりだ。J-20ではDSI(空気の流れをうかいさせない超音速 空気取り入れ口)を採用しており、J-10B、JF-17、サーブ・グリペンJAS39E/Fに続くものだ。
  6. 機 体後部のステルス性はさしてないようで、スホイT-50と共通。これは意図的にF-22の重量級2Dノズルの採用をしないためだろう。T-50,J-20 共通して高速、高高度飛行の機動性が高い機体は後部からの攻撃に遭遇する可能性は少ないとしているようで、F-22の元となった高性能戦術戦闘機構想 (1986年)以前の考え方である。
  7. 中 国国内の報道によると設計思想は高速、操縦性を中国国内で利用可能なエンジンで実現することであり、西側エンジンより推力重量比が劣ることを前提にしてい る。その結果でデルタ翼と機体を長くし超音速時の抗力を低くし、カナード翼で機動性を確保している。全動式垂直尾翼は通常よりも4割小さい、したがって軽 量といわれる。現在のエンジンでは超音速巡航はできないだろうが、機体設計はそれを狙っているようなので、中国国内のエンジン技術水準の向上を待つのだろ う。
  8. 2012 年の中国事情の観測筋は同期の飛行テストの進展を見守り、ステルス性の根拠となる設計上の特徴を見つけようとするだろう。ステルス機には多元的なアクティ ブ・パッシブ両方のセンサーが必要で、機能を統合し電波の発信量を最小にすることがもとめられる。同様にネットワーク環境での運行効率を最大限にするため にもステルス機には発見しにくい音声・データ両面の通信装置が必要だ。これらの分野では米国が25年かけて依然として解決をもとめているところだ。
  9. た だ根本的な疑問は残る。そもそもJ-20は何のために作られたのか。空中戦用途には機体が大きいが、中国の地理的な条件からF-22が想定するような敵機 との交戦は想定していないのかもしれない。同時にJ-20の武装格納庫はスタンドオフ型の空対地兵器には小さすぎる。一つ考えられるのは情報収集監視偵察 機材や空中給油機にステルス性と高速飛行で脅威を与える目的で作られたのかも知れない。

2012年1月29日日曜日

NGJで同時に期待される電子攻撃能力

   

New EW Capabilities To Emerge With NGJ

aviationweek.com Jan 27, 2012    

次世代ジャマー(NGJ)の技術内容はこれまで秘密にされてきたが、航空産業各社からヒントがあらわれつつある。
  1. アクティブ電子スキャンアレイ(AESA)はNGJ契約受注を狙う各企業チームがそれぞれ提案内容に入れているが、これによりNGJがセンサーと同時に電子攻撃機能も持つことを意味する。ただそれを実戦レベルにするための開発努力はまだ十分でなく、予算手当も必要だ。ロッキード・マーティンのF-22ラプターとF-35共用打撃戦闘機にそれぞれ電子情報収集能力と電子攻撃能力を装備する構想には予算が振り向けられていない。
  2. 「あの構想は予算節約の方法として考えたものです。ただ、実現していないのは正しい判断ではありません。官僚的な組織内決定により動きがとれなくなりつつあります。」(デイブ・デプチュラ空軍中将(退役)、情報収集・監視・偵察部門の前トップ)
  3. そこでこの任務はNGJとそれを搭載する機体が担うことが期待されている。電子戦を実施するためには電磁スペクトラムの広い範囲の利用が必要だ。
  4. 「AESA の基本アレイを4つの象限に分割し、各象限を各機能に振り分けるか、別の目標に使用する構想を検討しています。あるいはアレイ全体を超高出力の発射に使う ことも出来ます。NGJではタイル状のアレイがあり、全部使うと小型装置のおよそ三倍の出力を発生することが可能です。アレイを部分的に違う機能に振り向 けると出力は減ります。当社はアレイごとに周波数を割り当て、操作可能で指向性を持たせることを考えています。」(マーク・クーラ、レイセオン戦術航空システム担当副社長)
  5. その他先端技術としてアレイ同士のチャンネル干渉を最小にする課題があり、その解決方法として低調波harmonicsを使う受信機・励磁機の開発が提案されている。その他航空機の表面をアンテナとして使用する技術がすでに研究されている。
  6. レイセオンはAESAパネルアレイとしてこれまでのタイルアレイの半分あるいは三分の一の厚みしかないものを開発中だ。これまで垂直に積み重ねていたものを水平に広げる構造で取り付けの柔軟度が高まる。
  7. 海軍関係者は今後登場する空母運用型の無人監視攻撃機(Uclass) にはポッド搭載は、ステルス性の維持上望ましくなく、機体構造に取り入れる意味でパネル状のアレイが必要だと明らかにしている。
  8. 窒 化ガリウムを使った発信機を使い広範囲周波数能力の実現とともに高出力化が鍵となる。ただし、この発信機は発熱するためタイルをアルミ製芯部に組み込ん で、この芯部に冷却材を注入し、冷界技術cold-wall technologyを利用して長期間の使用を可能とするのだ。
  9. ステルス機はアンテナやアレイを機体表面に組み込み、発信機は機体内部に取り付けることが多い。だが、NGJには従来より大きな主電源が必要となる。
  10. 「レ イセオンのNGJでは内部にラムエアタービン式の発電機を取り付けて、必要量以上の発電能力があります。社内試験ではこの発電機をNGJポッド内に入れて 最高出力実験をしており、各高度・速度で熱管理の効果を検証しています。」(ニック・ユーロス レイセオンNGJ担当副社長)
  11. 実 戦の想定ではNGJの電子攻撃能力は使い捨ての空中発射電子戦兵器により補完されると海軍関係者は想定する。小型おとり装置のジャマー(Mald-J)は 小型巡航ミサイルの形状で高出力マイクロウェーブ装置を搭載し、短距離なら敵のセンサーを破壊、妨害、あるいは欺瞞する能力がある。Maldは使い捨てで 目標近くで利用できるのが利点であり、敵の電子装置を攻撃するだけの出力をもたせる必要がない。
  12. さらにMaldを作動させるのは短時間のため発熱問題はさして考慮しなくてよい。また小型であるため敵の防空網でも生存性は高い。そこで、MaldをNGJと併用することは敵の統合防空システムへの対抗策を個別的に提供できることにつながる。