2013年7月25日木曜日

中国を意識したアジア太平洋地域内の国防支出は今後五年で55%成長

       

U.S. Asian Allies Raise Regional Stakes With Military Spending

By Michael Fabey
Source: Aviation Week & Space Technology

aviationweek. com July 22, 2013

米国がアジア太平洋重視へ方向転換する中、親米かつ同盟関係にある域内各国が大規模な軍事装備投資を実施し、特に調達および研究開発分野の支出が目立つ。
  1. オーストラリア、インド、インドネシア、日本、マレーシア、パキスタン、シンガポール、韓国、台湾、タイの各国合計で1.4兆ドルを2013年から18年にかけ支出する予定で、2008年から12年までの合計が9,195億ドル相当だったので55%増加になる。これは Aviation Week Intelligence Network (AWIN) によるデータ分析であきらかになったもので、データは Avascent Analytics (ワシントンに本拠を持つ世界規模の防衛計画の市場調査オンラインキットを提供する企業)が提供した。
  2. ペンタゴンおよび米海軍の高官は米軍の「太平洋への方向転換」 “Pacific pivot” の原動力には域内各国との条約および協力関係だという。
  3. だが米国自体が同地域で新たに建設する拠点は比較的小規模であり、AWIN/Avascent分析から同地域内の同盟各国はずっと大規模な自国軍の拡張を計画中と判明した。
  4. 同地域に米国が軍事的な利害を感じるようになったのは中国が軍事力を近代化し、同地域内で抱える数々の領土問題で自国流の解決を模索している流れと一致している。
  5. 緊張は高い。「中国は神経質になっている。自国が包囲されていると感じている」とシャングリラ対話で主要な役目を果たしたアジア国際戦略研究所 International Institute for Strategic Studies-Asia (IISS)(シンガポール)のウィリアム・チュン William Choong は語る。
  6. チュンによれば米国のプレゼンスが増えれば、とくに同地域で中国と対立する小国を勇気付けて、数々の「ホットな」争点で誤った安全保障感覚を形作るという。
  7. 「よい点は米国がアジア太平洋地区の各国とくに東南アジアの小国からこれまで求められてきた安全の保証を提供していることです」という。
  8. 米国が提供している安全保障問題での指針内容はこれまで各国が求めてきたものだという。米軍はイラク、アフガニスタンに中心を置いてきた。「逆に悪い点は存在が小さいこと」だという。
  9. 米海軍作戦部長ジョナサン・グリーナート大将 Adm. Jonathan Greenert, the U.S. chief of naval operations も米国の兵力再編で海軍がアジア太平洋に移動させたのはわずか10隻の艦艇にすぎないと認めている。
  10. ただし同大将は対象艦の性能はこれまで以上の規模であわせて航空機その他同地域に展開している装備の性能も拡大しているという。
  11. ボーイングP-8AポセイドンがP-3Cオライオンと交代すれば、「飛行距離が伸びて搭載するプロセッサーの性能向上を享受できる」という。
  12. 海軍はあわせて性能向上型ボーイングF/A-18スーパーホーネットも展開させており、これにロッキード・マーティンF-35共用打撃戦闘機に加え、高性能魚雷、ミサイルその他も性能向上している。
  13. 一方米国の同盟国は率で米国を上回る装備増強を行っており、今後15年間に前例のない規模の研究開発支出が予定されている。2013-18年で614億ドル相当でそれ以前の5年の66%増となる。同時期に調達費用は61%増えて3,796億ドルになること予測される。
  14. アジア各国は海上兵力および艦船の整備にこれから2018年にかけて注力して、合計263隻水上艦艇、潜水艦31隻、回転翼機ではシコルスキーMH-60シーホーク調達への関心が高まり、固定翼機13機、無人海洋監視機5機の調達がデータ分析から予測されている。
  15. 水上艦艇の22%がパトロール・ミサイル艇で、P-8のような機体が同地域では重要度を増してくるだろう。特に海賊行為の横行が地域内では顕著である。パトロール回数が増えれば海賊行為は減少する傾向がある。
  16. アジア各国および米同盟国には既存装備の運用を維持する課題もある。2013-18年にかけてこのため4,513億ドルの支出が予測されており、これは2008年から12年の支出実績2,940億ドルに対して53%増の規模。■

2013年7月13日土曜日

ミサイル防衛テスト失敗で予定が狂うMDA

Latest U.S. Missile Defense Test An Embarrassing Failure

By Amy Butler abutler@aviationweek.com
Source: AWIN First
aviationweek.com July 08, 2013
Credit: MDA



ミサイル迎撃実験が5年間で三度目の失敗に終わり、2008年12月の迎撃成功後はうだつのあがらないテスト結果が連続している。


  1. 今回のテストは7月5日に実施、地上配備迎撃ミサイルがヴァンデンバーグ空軍基地(カリフォーニア州)から発射された。その標的は太平洋クワジャリン環礁から発射された。ミサイル防衛庁は迎撃が成立しなかったと発表したのみで詳細については口をつぐんでいる。
  2. 同庁から迎撃ミサイル(Orbital Sciences のブースター使用)が予定軌道に乗ったのか、大気圏内破壊体Exoatmospheric Kill Vehicle (EKV) (レイセオン製、直接衝突して弾頭を破壊する)を実際に使用したのかについて発表がない。さらに今回のテストで目標ミサイルがレーダーや光学センサーを妨害する対抗措置を作動させたかについても言及がない。今回の結果については議会と国務省にまず報告するという。
  3. 今回の失敗はチャック・ヘイゲル国防長官にはばつの悪い結果になった。同長官はそもそも北朝鮮による2月の第三回核実験に対抗し地上配備中間段階防衛Ground-Based Midcourse Defense (GMD)システムのテストを急がせていたのだ。テストにより「有事対応の自信増大」をするはずだったとMDA長官ジェイムズ・シリング海軍中将MDA Director Vice Adm. James Syring tは5月に上院で説明していた。米国には飛来する実しあるを迎撃する手段があることを誇示し、北朝鮮が進めようとする核ICBM能力開発を抑止するねらいがあったのだ。さらに今回の試験ではGMD迎撃手段の基本形を試す目的もあった。きわめて手順どおりのテストとして北朝鮮やイランに米国の能力を示すはずだった。
  4. シリング長官にとっても昨11月に就任後初の見せ場となるはずで、GMDでもボーイングが2011年に35億ドルで契約を勝ち取って初のテストとなるはずだった。ボーイングは契約獲得のため相当の価格提示を行い、結果35%もの予算規模削減が実現している。契約にはテスト支援も含まれている。
  5. 2008年の実験成功の後は新型攻撃体 Capability Enhancement II system. の配備に関心が移っていた。CEIIの内容は極秘だが、レイセオンが開発し対抗策に強く一発で命中するものといわれる。このCEIIがMDAが最も難易度が高いと表現したテストに2010年1月に失敗している。その後改良を加え、今年末に再度テストさえる予定だが、今回の失敗で予定が先送りになる可能性が出てきた。■

イタリアFACO竣工式は見送り。生産は7月18日開始

Ceremony Canceled As Italian F-35 Final Assembly Facility Starts Ops

By Amy Butler abutler@aviationweek.com, Anthony Osborne tony.osborne@aviationweek.com
Source: AWIN First

aviationweek.com July 12, 2013

イタリアで竣工したF-35向け最終組立点検施設 (FACO)の開所式が同国の政治事情により開催先送りになった。

当初の予定ではイタリア空軍、国防省高官、産業界幹部、米空軍クリストファー・ボグデン中将(ペンタゴンで同機開発を統括)が出席する予定だったが、7月18日開催予定だった。

ただしアレニア・アエルマッキとロッキード・マーティン両社は同機を巡りイタリア政界で対立がめだったことからひと目を引く開所式の実施を見送ったもの。

イタリア議会では6月26日に議決し、予定どおり90機の支出を承認したが、予定変更は都度議会の承認を必要とするとの付帯動議も可決。これは同機導入に異議を唱えた反対派への妥協策だ。同機の価格高騰と開発遅延からユーロファイター・タイフーンの導入を押す向きがあった。

イタリア国防省は今回の決議を勝利ととらえ、計画推進に勢いが得られたと理解。しかし反対派は米国外では初のFACO竣工祝賀会企画に騒ぎ立てていた。

米伊両国の産業界、政府関係者によると開所式はあくまでも「延期」扱い。しかし、F-35計画の推進を承認した議会決議に異を唱える向きを考慮して実施は実質上断念されているという。

式典そのものはなくなったが、最終組立作業は予定通り7月18日に開始されれう。FACOはイタリア北部のカメリ空軍基地Cameri Air Base にあり、機体各部が電子式接合調整システムElectronic Mate and Alignment Systemに投入される。

イタリア政府は同施設への投資によりイタリア産業界がF-35のハイテクに触れることができるべくリスクをとる決定をしている。実際には機体生産よりも長期間に渡る同機の保守点検に投じられる金額のほうが高くなる。

FACOはメンテナンス、修理、オーバーホールも行う施設だ。イタリア政府はカメリがヨーロッパにおける同機のメンテナンスの中心地となることを期待し、航空宇宙関連の雇用を生むことも期待。FACOからの1号機は2016年にアメンドーラ空軍基地Amendola Air Base iに配備される予定。■

2013年7月11日木曜日

UCASが空母着艦に成功-新たな歴史の創造

History Is Made As UCAS Lands On U.S. Carrier

By Amy Butler abutler@aviationweek.com
Source: AWIN First


aviationweek.com July 10, 2013
Credit: Amy Butler


米海軍の無人戦闘航空機システム(UCAS)実証機の2号機が航空史上に一ページを加えた。7月10日に航空母艦USS George H.W. Bushに拘束フックで着艦に成功した。場所はヴァージニア州ノーフォークの沖合い。
  1. 中国はじめ無人ステルス機の開発進む中、今回の着艦成功で米国技術の優位性が確立したと、海軍長官レイ・メイバスNavy Secretary Ray Mabus が艦上で着艦直後に開いた記者会見で発言。
  2. 同機は着艦を二回実施し、最初は三番ワイヤーを予定通り捉えている。二回目はカタパルトで発艦し、二番ワイヤーをこれも予定通り捉えた。パタクセントリバー海軍航空基地から発進している。
  3. 一回目の着艦の前に同機は艦上のLSO着艦システム運営者からゴーアラウンドを指示され、LSOはデジタル機器で指示を伝え、UCASのシステムソフトウェアが指示を受領し、機内に伝えた。
  4. 一点異常が発生したのはUCASオペレーターが同機の制御を甲板運用オペレーターに移管しようとした時点だった。甲板運用オペレーターは腕につけた制御端末で同機を格納庫までタキシー移動させようとした。一回目で無事移管が完了したことを示す青灯がつかなかった。赤が点灯し、移管が成立しなかったと表示したのだ。この移管手続きは機体を格納庫内で動かすために必要だ。甲板の要員が即座に予備端末に切り替えて青灯がつき、カタパルト発艦の準備を進めた。
  5. 拘束着艦の成功は大きな成果で、実証のうち難易度が最も高いテストだ。初のカタパルト発艦は5月に実施していたがその後も発艦、タッチアンドゴーを繰り返し実施していた。
  6. これに比べると着艦は複雑だ。同機の自律飛行ソフトウェアと精密誘導装置が海上の母艦のたてゆれを把握する必要があるためだ。誘導装置により同機は正確な自機の位置を母艦と対照しながら認識して着艦に備える。
  7. 艦上運用は7月16日までの予定で、関係者はもう一回は最低でも着艦を実施したいと考えている。その後二号機はパタクセントリバーに戻り、拘束着艦テストのデータを検討し、飛行テストの継続が必要かを判断する。
  8. ただし各機の飛行計画はほぼ完了しており、ペンサコーラとパタクセントリバーの海軍博物館でそれぞれ展示が決まっている。
  9. UCASは無人空母運用空中偵察攻撃機 Unmanned Carrier-Launched Airborne Surveillance and Strike (Uclass) のさきがけとなり、Uclassで海軍は航空母艦の周囲を一日24時間一週間毎日周回飛行させるミッションを実施できる体制にしようとしている。
  10. メイバス海軍長官は機体価格がUclassの鍵という。海軍は技術実証開発経費は別として最初の警戒飛行用二隊を150百万ドル以下で購入したいと考えている。
  11. ボーイング、ノースロップグラマン、ロッキードマーティン、ジェネラルアトミックスがUclass契約をめぐり争っており、各社の機体設計案は海軍が審査中。
  12. 並行して海軍は8月に同機の契約のキックオフとして入札提案仕様の第一版を発表する予定で、正式な仕様書は2014年3月までに公表し、同年10月に契約企業を選定する。■
 
 An X-47B Unmanned Combat Air System (UCAS) demonstrator completes an arrested landing on the flight deck of the aircraft carrier USS George H.W. Bush (CVN 77).

2013年7月10日水曜日

米海軍向け次世代ジャマー開発はレイセオンが契約社に

Raytheon To Develop U.S. Navy's Next Generation Jammer
By Graham Warwick graham.warwick@aviationweek.com
Source: AWIN First
July 08, 2013
Credit: Boeing

レイセオンが次世代ジャマー Next Generation Jammer (NGJ) ポッドの開発企業として選定された。NGJは    ALQ-99戦術ジャミングシステムと交代し米海軍のボーイングEA-18Gグラウラー電子攻撃機に搭載される。

契約規模は279.4百万ドルで技術開発(TD)フェーズ22ヶ月となっている。NGJの運用開始は2020年予定で、ジャミングで柔軟性と精密度を向上し、広帯域を拡大して脅威作動範囲を広げる。

レイセオンは他の三社とともに工期33ヶ月の技術成熟化フェーズに参加していた。他社はBAEシステムズITT エクセリス ITT Exelis ノースロップ・グラマンだが、国防総省の契約公表では今回入札したのは三社のみだったという。

TDフェーズでレイセオンは「NGJの基本ブロックとなる重要技術を設計製造する」と海軍航空システムズ本部は説明している。システム完成後はEA-18Gに搭載し54ヶ月にわたり技術生産開発フェーズに入る。

レイセオンは契約交付の事実を確認するとともに「現在のみならず将来のニーズにもこたえる革新的で次世代のソリューション」を提供すると発表している。今回入札した各社ともNGJポッドの設計はアクティブ電子スキャンアレイ方式のジャマーアンテナを元にしたもの。■


2013年7月6日土曜日

F-35実戦化はさらに遅れる 何が問題なのか。どうしたらいいのか考えましょう

きわめて深刻なF-35開発の進捗状況です。何度も当方が主張しているように西側各国はこれだけ問題の多い機体に今後の防衛を託す決定をすでにしてしまっていますので、早急に際決断をする必要があると思います。それが計画の打ち切りなのか、新型機の開発なのか、はまだわかりませんが、仮にこのまま開発を進めるとしても抜本的な開発体制の見直し、として各国が単に発注分の引渡しをふんぞり返って待つのではなく、得意分野を共有しながらロッキードの開発をもっと現実的に支援する必要があるのではないでしょうか。なお、面白いので原文の読者のコメントを追加しています。

More F-35 Delays Predicted

By Bill Sweetman
Source: Aviation Week & Space Technology

aviationweek.com July 01, 2013

本来なら現時点で初期作戦能力獲得を実現しているはずのF-35統合打撃戦闘機の開発でペンタゴンが工程表integrated master schedule (IMS) を作り直してから2年たらずで、この改訂版も実現が怪しくなっていることが国防総省の武器装備試験のトップから明らかになった。

  1. 海兵隊が目指す限定つき初期作戦能力獲得の目標期日に間に合わせるためのソフトウェア自体が8ヶ月遅れになっていると、マイケル・ギルモア(ペンタゴンの運用テスト評価部長 Michael Gilmore, director of operational test and evaluation (DOT&E) が上院軍事歳出小委員会で6月19日に明らかにしている。レーダーや電子光学系システムの問題により兵装統合が遅れ、そもそも設定してた時間余裕を食いつぶしたという。バフェット振動と亜音速での機体制御 wing-drop が「作戦能力(IOC)獲得上の懸念で残っている」とのこと。
  2. 何がソフトウェア開発を遅らせているのか。プログラムのテストで追加が発生しているためだ。その原因はギルモア部長によるとヘルメット搭載ディスプレイシステムhelmet-mounted display system (HMDS) の回帰テストで、変更内容が問題を発生させないことを確認する回帰テストだけで2013年中に試験項目363点の追加になったという。
  3. ブロック2Aの飛行テストは昨年3月に始まっており、非戦闘用ソフトウェアとして最後の版となる同ソフトのテスト完了目標は今年2月だったが5月末現在で35%しか完了していない。海兵隊にはブロック2Bを初期作戦能力獲得用に使うのが工程表の内容だったが、現時点では2014年4月以降にずれ込む見込みで、初期作戦能力獲得までわずか6ヶ月しかテストに使えなくなる。テストはプログラムの動作を確認し性能評価をする必要があり、海兵隊の目標が2015年7月から12月までのIOC確立なのでそれまでに完了しなくてはならない。
  4. 日程にあわせるためにブロック2Bの性能を落とすことは望ましくない、とギルモア部長も指摘し、「ブロック2Bの想定能力を実現しても運用上は他の戦闘機の支援が必要で、しかも制空権が確保されて、協力的な脅威の想定 threat is cooperative での話し」というのがその理由。
  5. ブロック3i が空軍のIOC目標(2016年8月ー12月の間)の前提となるが、これも日程は極めて厳しいとギルモアが説明。レーダーの仕様変更と関連して、電子戦、通信航法識別プロセッサーとの関連もあるという。(ただし報道された統合コアプロセッサーではない) 第6生産ロットのF-35の引渡しが2014年に始まるが、新型ハードウェアが搭載されブロック3i ソフトウェアがないと飛行できない。「ブロック3i 対応のハードウェア、ソフトウェアの成熟度が今後12から18ヶ月の課題です」とギルモアが注意を喚起してる。
  6. 同部長からはさらに2018年時点でJSFの戦闘能力について「最大の不確実性」は実用に耐えるブロック3i と平行してブロック3F が開発できるかだという。同ソフトウェアが2001年に設定した基本性能を実現する役割を持つ。
  7. ロッキード・マーティンからは「ソフトウェア開発日程を順調に完了することに自信を持っている」とし、ブロック3Fの基本開発は41% 完了している、という。
  8. HMDでトラブルが続いているが、そのテスト結果は「ばらついており、テストパイロットのコメントも分かれている」とギルモア提出の報告書が記述している。たとえば電気信号上の変動 jitter を低減させるソフトウェアは作動したが、逆に別の安定作動が犠牲になっており、コードでは「swimming」と表現されている。光源の漏れ対策としてパイロットは環境に合わせディスプレイを「微調整」しなくてはならなくなった。
  9. 日程で心配になる要素は兵装品の統合で、ギルモアが「きわめて遅い」と表現している。合成開口レーダーでは不正確な座標が出ており、電子光学目標捕捉システム electro-optical targeting system (EOTS) で追尾できない場合が見つかっている。これらを兵装テストが開始になる前に一つ一つ解決する必要がある。
  10. レーダーおよびETOSの問題は解決したが、IMSで設定した時間余裕はブロック2B、3Fの双方ですでに使い切っており、ギルモアは「ブロック3Fの最終兵装統合テストは当初の2016年でなく2017年末になりそうである。これによりブロック3Fの運用テスト開始を2018年に実現することは困難」と記述している。
  11. 現時点での兵装テストにはAIM-120誘導発射テストを2013年11月(ソフトウェア改修を前提)、GBU-12レーザー誘導爆弾テストを10月、統合直接攻撃弾薬 Joint Direct Attack Munitionの誘導投下テストを12月としている。
  12. 高速方向転換での振動および亜音速下の機体制御低下にはショックウェーブが関連しており、JSF各型で解決を迫られている。今年内に飛行テストでこの問題を解決する予定だが、現在の制御方法では限界に来ているとギルモアは見る。
  13. 以前のテスト評価部長報告書ではF-35が事故あるいは戦闘で受ける損害に耐えられるか批判的であったが、最新版も踏襲している。ギルモアが見るところ落雷耐久性テストは未完了であるが、すでに実際に落雷を受けた機体の点検が必要としており、落雷耐久性のあるファスナーを使用していないので機体表面でどこまで落雷の影響があるか点検したいといしている。従来型のファスナーは機体重量軽減化のため使われていない。ロッキード・マーティンによると飛行中の落雷対策は承認済みで設計審査も終わっており、今年後半にテストを集中的に行うという。
  14. ギルモアからは機体機能異常予知システムはF-35Bのリフトファンシステムの戦闘中破損を手際よく探知できないといい、垂直着陸への切り替え時に「パイロットが適切な対策をとれずに致命的な結果につながるかもしれない」という。ロッキード・マーティンからは「その故障の確率は低いが、パイロットは自動脱出できる」とコメントしている。■

オリジナル版の読者からのコメント(個人の意見です)

Superraptor

惨憺たる内容だ。希望が見えない。今こそF-35打ち切りの決断をし、もっと使いでのある機体開発に乗り出すべきだ。F-35は技術史で失敗作となっている。

Yodelling Cyclist

「制御方法の限界に来ている」

これが意味するのは構造的な変更が空力特性上の表面効果を出すために必要ということで、おそらく重量増(表面面積の増加により)となる。テストは規模を拡大することになる。あるいは西側諸国は亜音速では急方向変更できない戦闘機を配備することになるということ。

IOC予定時期について各軍から発表があったばかりで、今度は実はその期日がきわめてあいまいであることが暴露された形だ。悪い知らせを報じた者とは別に大嘘をついている者がいるということか。

Raptor

ソフトウェア開発が遅れているとは何ということか。LM社は米国以外に多くの諸国にとってF-35が最優先事項の開発案件であることがわかっているのか。

自身もプログラマーなので期日に合わせて複雑なソフトウェアの開発が大変であることは重々承知しているとはいえ、最重要国防案件に従事しているのにソフトウェア会社は発注者からお小言を受けないのか。

本来開発は二三年前に完了しているべきもので、今からではプログラマーが熟達するのに時間が足りないのでもう遅い。

またLM社ほどの大企業が納期にあわせるべく50人や100人のプログラマーを探巣のが困難とは信じられない。

フライトテストに関しては兵装投下テストはしているとは思うが、もし完成機が特定の兵装を投下できないことが判明したら格好悪いことこの上ない。

こう考えるとC型への悪影響が一番少ないようだ。同型がIOC獲得に到達するのが一番遅いから。

haavarla

バフェット振動と亜音速機体制御の低下について、なぜLMはスホイがSu-34でできたことができないのか。同機も主翼バフェット問題を抱え、とくに重装備で顕著だったが、スホイはこれにとりくみ、一日で解決策を考え、一週間で改修している。安上がりかつ効果的な方法だ。
だが、だめ、LMにはこれは簡単すぎるのだろう。同社はペンタゴンからもっと資金を引き出そうというのだろう

wuzafan

リフトファン破損を探知したらパイロットを自動射出脱出させるとは そんなひどい設計だったのか、なんという会社なんだ
一番いいのはすべてを終了してSu-35を購入することだろう。これ以上貴重な血液をこのような失敗作につぎこめばどうなるか。

SlowMan

F-35の中止は今からでも遅くない。二機種開発し、ひとつはステルス機でA型C型のかわりに、ハリヤーの後継機がB型にかわるもの。あ、ロッキード・マーティンは主契約会社にしないように。

制服組とDOTE文官組織で同機の現状をめぐり大きな断絶が存在している。もし、USAF/USMCの上層部の説明を聞けばすべてがすばらしく進展していることになる。だがF-35では数多くの問題が明らかになっており、LM社から報酬を得ている400名もの議員をかかえたまま、同機開発は結局進まないだろう。

Yodelling

「脅威が協力的」

脅威が協力的になることはない。何かが協力的だとしたらそれは脅威ではない。本当に「協力的な」脅威であれば小型機を投入すればことは足りる。なぜ超音速ステルスジェット戦闘機で垂直離陸機機能があるものを投入する必要があるのか。

ギルモアがいおうとしているのは「軽武装のゲリラを航空援護なしで攻撃するだけだったら、どうか神様われわれを危険地に送らないでほしい」ということなのだろう。

Tanker0316

なんと言う浪費。この失敗作はここでとめて次はもっとよい機体をつくるべし。アメリカがこんな機体しか作れないはずがない

Hardcore

もともと同機は西側の戦闘機需要を独占して他のメーカーの仕事を奪うのが目的だったのだろう。それが今では逆に米国のノウハウを危うくしている。F-35が長い時間をかけて実用化すると、ロシアや中国のジェット戦闘機はもっと先を行っているはずだ。グリペンNGも就役しているだろうし、その他のプロジェクトも出てくるだろう。トルコ、韓国、日本はもうその準備をしているようだ。するといつ日かEUもラファールトタイフーンの後継機種を求め始めるだろう。その時点で米国から提供できる機体が存在しているのだろうか。

Geogen

「IOC」どうのこうのではなくジェット機を「欠陥のあるまま」購入して格納庫にしまっておいたら?

大事なのは雇用の確保と産業間のシナジー効果なのでは。F-35が使える形になっても再作業改修に6年も7年もかけるのではないか。

JeffB
作成すべきソフトウェアの量が巨大なのだろう。テストチームも数百あって徹夜しても問題点を解明しようとしている。これだけの組織を統括するだけでもひとつの大プロジェクトだ。作業も長期間になり、技術開発が進んでくると新しい解決方法も視野に入るはずで、ソフトウェアを書き換えるのか、ハードウェアが追いついてくるまで待つのか。

IOCが2020年になるのではなく、「完全性能」とすべきだ。ブロック2Bと3Iのハイブリッド版が2017年ごろにはできるはずで、そうなると2002年時点で宣伝していた機能の7割が実現する。それでいいのではないか。F-16.netでバフェットとロールオフを指摘したら嘲笑を受けたが、どっちが正しかったのかわかるだろう。

royal

これだけの変更点や遅延は中国がハッキングや古典的諜報活動をしたための対応だろう。次回は米国企業・米国下請け企業とだけ取引すべきだ。

RunningBear

「プログラマーとして納期にあわせて複雑なソフトウェアを作成するのはとても困難な仕事と理解している」

おっしゃるとおり。ただ報道内容が古い。現時点でLRIP4ブロック2Aの32機中20機が飛行中で、残る12機も今年中に非公開視する。2A搭載一号機BF-19は海兵隊ユマ航空基地で飛行中だ。LRIP5の32機が来年引渡しになる。ブロック2Bへのソフトウェアアップグレード版がエドワーズで飛行中で、、2A搭載機すべてがアップグレードされる。ブロック3i へLRIP4/5の64機が後日更新される。システムアップグレードすべてでセンサー/ハードウェアのアップグレードが必要となるわけでない。

Hobart
二十年も前に海軍大学校で米空軍と米海軍がF-22とF-35、スーパーホーネットとF-35をそれぞれどちらを選択すべきかの議論があった。現在でもF-22もF-35も一発も実戦で発射していない。わが国はこれからどの国と一戦を交えることになるのか。両軍通じてもっとも優秀なウェポンシステムはA-10でUSAFは同機に消えてもらいたいと願っていたのだ。ところで米海軍用F-35Cは機関銃を搭載しない。F-4のベトナムでの教訓はどこに消えてしまったのか。

JOHN HANSEN

記事は60年代のTFX開発のように見える。

Patagonia

記憶が正しければ米海兵隊は総額200百万ドルで英国からハリアー149機および装備品を購入している。F-35Bの単価は135百万ドルといわれるので、ハリアーの耐用年数延長のほうが賢い選択ではないか。F-35B数機の値段で短期間で完了するのでは。もちろん航空機メーカーはこの案を受け付けないだろうが、米国の納税者としてはぜひ検討してもらいたい。

2013年7月5日金曜日

インド初の国産空母の進水近づく

India’s First Indigenous Aircraft Carrier Near Completion

By Jay Menon
Source: Aviation Week & Space Technology

July 01, 2013
Credit: Indian Defense Ministry

海軍力拡張を目指すインド初の国産航空母艦indigenous aircraft carrier (IAC) の進水は8月になりそうだ。

海上公試はその10ヵ月後とインド政府高官は発言。それでもINSヴィクラントVikrant (同国が運用した初の空母の艦名を継承)とすでに命名されているIACの艦隊編入は5年後の見込みだ。建造はコチンで進水は8月12日を予定し、その後作業を続け2014年6月に艦体は完成する。

海軍への引渡しは2018年1月までに行う。排水量は45,000トンで建造費は50億ドル。契約交付の2007年から工期は6年以上かかっている。IACの当初の艦隊編入は2014年の予定だったが、ロシア製鋼板の不足、ギアボックスの技術問題当で遅延したもの。

旧ロシア海軍のキエフ級空母アドミラル・ゴルシコフはINSヴィクラマディチャVikramaditya(45,000トン)として公試中であり近日中に就役中の唯一の空母INSヴイラット Viratに加わる予定。

インド洋におけるインド海軍力の整備は海賊対策の上でも有益とインドの国防研究研究所 Institute for Defense Studies and Analysesは見ている。■

2013年7月3日水曜日

米空軍 B-52を2030年代末まで運用する

B-52s to receive communications upgrade
USAF websiteより
Posted 6/28/2013  by Mike W. Ray
72nd Air Base Wing Public Affairs

6/28/2013 ティンカー空軍基地、オクラホマ州---長年にわたり供用中のB-52ストラトフォートレス爆撃機部隊の通信機材更新が7月より当地で開始される。

戦闘ネットワーク通信技術システム Combat Network Communications Technology,CONECT により乗員は情報の送受信を衛星経由で行えるようになり、ミッションプランの変更や目標の再設定が飛行中に可能となる。さらにパイロットは僚機との通信に加え地上部隊との交信も双方向で可能となる。現状ではミッション情報をフライト前に毎回アップロードしている。

その他の性能向上内容として最新鋭のコンピュータ・ネットワークに各自のワークステーションでアクセスできる他、デジタル式機内通話にノイズキャンセル機能を加え乗員はヘッドセットで会話ができる。

CONECT改修は総額76百万ドルでボーイングが実施し、ティンカー空軍基地でCONECTキットの生産、保守部品、維持管理を行なう。キットは低率初期生産分8セットでロット1とし生産の基盤を作り実用テストの後で本格生産に移る。最終的にB-52H全機にCONECTが搭載される。

7月に定期点検でティンカー空軍基地に到着する機体がCONECT搭載一号機となる。定期点検の標準工期は9ヶ月で終了は来年4月。

1961年から62年にかけ納入されたB-52Hは計画的改修で運航されてきた。たとえばGPSを航法システムに1980年代末に搭載している。

空軍は技術検討の結果から同機を最低でも今後25年間は運航できると考えている。■