2014年12月8日月曜日

財政難でNATOのAWACS隊が規模縮小へ


ヨーロッパ各国も財政負担の捻出で大変ですが、ウクライナはじめ不穏なロシアの動きがある中で大丈夫なのでしょうか。また、一部抜け駆けをするのはいかにもヨーロッパらしい。通貨ユーロというのもインチキではないかと見ているのですが、偏見でしょうか。

NATO Faces AWACS Fleet Shrinkage

Funding shortfall is reducing key NATO surveillance fleet
Dec 1, 2014Tony Osborne | Aviation Week & Space Technology

NATOが加盟各国に防衛支出増額を求めている中、空中早期警戒機では各国に要望が虚しく伝わるだけだ。
  1. NATOの空中早期警戒指揮統制機隊(AEW&C)のE-3Aコンポネントが1980年代創設以来はじめて縮小を迫られている。しかもロシアがウクライナで強硬策に出ている最中に。

  1. 部隊はドイツのガイレンキルヒェンGeilenkirchen基地で、ボーイングE-3A17機で構成され、空中監視の他NATOの空軍演習を支援する。9.11以降は米国の要請で米領空内をパトロールしたほか、アフガニスタンでの運用を最近終了したばかりで、2015年には合計4,300飛行時間をウクライナ近隣のNATO加盟国向けに実施する予定。

  1. 運用に年間250百万ユーロ(312百万ドル)が必要で16カ国が分担しているが財政負担になっており、三年前にカナダ政府が分担を中止する決定をし、経済不況で予算節約を図った。.

  1. ガイレンキルヒェン基地ではカナダは三番目の規模で分担をして、乗員4組を派遣していた。カナダは今年8月に同基地から撤退している。

  1. カナダはAWACS以外に共同地上監視 Alliance Ground Surveillance (AGS) 運用からも手を引いて90百万カナダドル(79百万ドル)を毎年節約しようとする。カナダの資金提供がないと部隊は17機の全機運用ができなくなる。地上待機となる一機は部品取りに使うことになろう。

  1. カナダ撤退でNATO AEW&C部隊は不安定な状態になると司令官はみており、NATOはAGS導入(グローバルホークを投入)による戦力構造の再編を検討中だ。

  1. 再編でE-3AとAGS運用に2,000名が従事する。E-3Aコンポネントは現在2,300名規模で、AGSでは600名を投入する予定だったので、1,400名を削減することになる。

  1. コックピット近代化と新規航空管制対応の機体改装は米空軍のドラゴン事業として実施中だ。だがNATOはカナダ撤退後の16機のうち14機のみに改装を実施する。非対象の2機の退役は発表されていないが同一機種で仕様が異なる機材の運用の可能性は低い。改装作業が完了した初号機は12月17日に飛行可能となり、NATOへ2016年1月に復帰する。また残る全機も2018年中に改装を終える。

  1. 問題を複雑にするのは加盟国の中に独自にAEW&C整備をする動きがあることだ。トルコにはボーイング737を原型にしたEW-7Tピースイーグルがあり、イタリアはが降るストリームG550をAEWに改造した機材をイスラエルから購入した。

  1. またE-3Aの削減で英空軍のE-3Dセントリーに大きな役割が期待される。英国はNATOのE-3運用予算を分担していないが、自国の6機をNATOミッションに編入している。

  1. 国防予算削減の動きで英空軍機材でも影響は避けられないが、NATO、フランス、米空軍が運用する改造型の性能は既存機を上回るものがある。そこで英軍も運用機材の改修を急がないといけないとの危機意識がある。

  1. NATOのE-3A各機の退役は2025年予定だが、2030年代にかけて運用延長は可能だ。今のところ代替候補がなく、現行機材を使い続けるために「必須の性能とあったらよい性能」の仕分けで近代化を行っていくのだという。 その必須性能のリストには新型暗号化機能や多機能情報分散型の共用戦術無線システム Joint Tactical Radio System がある。■


2014年12月7日日曜日

★主張:イランは米国の同盟国に復帰できる



なるほど面白い観点ですが、イスラムの宗派の違いを無視していますね。ただし、イスラムとはイデオロギーよりも実は実利を重んじる考えのはずなので、イランをカウンターバランスとして米国が重視する可能性も排除できません。イラク領土内でイラン空軍が作戦を展開している事実も(国内向けに)イランは否定しているようですが、意外に早く事態が急変するかもしれませんね。原油価格低下とともに米国としては中東湾岸地区の安定を早く回復したいと思っているはずなので。こうなるとイスラム国は一層孤立感を覚え自暴自棄になる、それで滅亡が早まる、と言うシナリオなのかもしれません。

Opinion: Iran — America’s Old/New Ally

By: Cmdr. Daniel Dolan, USN (Retired)
Published: November 24, 2014 4:14 PM • Updated: November 24, 2014 4:15 PM

Behesht-e_Zahra,_Tehran,_Iran_(5072246576)
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ジュネーブで本日、関係六か国はイラン核問題協議を7か月延長すると決定した。

ジョン・ケリー国務長官は各国の気持ちを代弁した。米国、中国、英国、フランス、ドイツ、ロシアとイランだ。「一年でここまで来たこと、特にこの数日での進展を見ると、ここで決裂しては元も子もない」


交渉先送りする間に米国はイランを巡り新しい国家戦略目標を探る時間がとれるだろうか。こんな仮説はどうか。イランをペルシア湾岸における主要な戦略関係国にもう一度復帰させるのだ。

今になって振り返るとペルシア湾岸地方で安定が失われたのは米国の同盟国としてのイランを失った1979年のパーレヴィ国王の退場以降である。その後の米国は新しい同盟関係の構築に走り、巨額の予算と国民の生命を犠牲にして新しい勢力構図を作ろうとしてきた。イランに制裁措置をしてきたが、歴史から見れば、3,000年の歴史と文化を有する国が相手なのだ。


一見、米イラン接近は非常識に見えるが、歴史と地理の教訓からこの発想が実は理不尽ではないことがわかる。

まずイランは第二次世界大戦終結から1979年まで米国の主要戦略同盟国だった。イラン革命が終止符を打った。地理と文化的条件からイランは地域内で主導的立場を数世紀にわたりとってきた。直近の34年間がいかに混乱していたとはいえ、もっと長期視点からすれば例外的な期間であり、イランの地理文化的条件を直視すべきだ。

シャーが国王の座にあった時代を思い返してみよう。1979年までのイランは地域内で突出した軍事力を保有していた。第二次大戦後は英国に代わり我々がイランを同盟国の地位に押し上げたのである。そのため、当時の先端装備、F-4、F-14、ホークやハープーンミサイルを供与してきた。

現在のアメリカがイランを語る際は底流にある文化面を無視している。イランの有利な地理条件、65百万人の人口、そして古代文化が同国の地位を重要にする要素だ。石油は問題ではない。

二番目に同地域で発生した三つの危機状況で、イランは米軍作戦を妨害していない。

ひとつめが砂漠の嵐作戦で、イランの宿敵イラクを相手とした米国はペルシア湾に4個空母打撃群を投入したが、イランは干渉しなかった。2001年9月11日以降はアフガニスタンのタリバン勢力排除にイランは協力している。さらに現在進行中の対イスラム国作戦でイランと米国は共通の利害関係を見出している。

米・イラン関係はとげとげしく、上記の三例をもってイランとの関係を単純化するつもりはない。だが、事例は米国、西側諸国が危機に直面した1991年、2001年、2014年のいずれにもイランは米軍作戦を妨害しなかっただけでなく、一定の範囲で米国を助けていたのである。

三番目に地域内の9・11以降に現れた敵に米国の同盟各国が資金、人員、イデオロギーをそれぞれ供給していたという事実がある。9・11実行犯19名のうち、15名はサウジアラビア、2名はUAE、残りはエジプトとレバノン一名ずつだった。イラン出身者は皆無、またイランが資金援助した事実もない。

現在進行中の対ISIS作戦は第三次イラク戦争と言ってよく、ISISに資金・人員を提供するのは地域内の諸国だが、ここにイランは含まれていない。

イランには独自の代理テロリスト集団があり、レバノンのヒズボラは1983年に米海兵隊退舎をベイルートで爆破している。

ヒズボラやイランのQudsのような遊撃隊が代理勢力になっていることが今後の問題となるが、イラン関係の正常化がすすめば非対称的なそのような脅威勢力は不要となるのではないか。また地域内の同盟各国はたとえ国民の一部が航空機をハイジャックし、米国内で力の象徴に突入させてもやはり同盟国だと証明している。そうなると米国が各国に寛容になる余地が出てくる。

イランに何が起こっているのだろうか。イランが各国との外交関係を構築しようとしてるのは自ら課した外交的孤立を終えようとしている証拠ではないか。いかにも脅威を与る姿勢を示してきたイランはとてつもない経済的犠牲、地政学的犠牲を払ってきた。とくにアフマディネジャド政権下がひどかった。今のイランはこの孤立を終える寸前にあり、米国や西側各国との信頼関係を再構築する寸前でもある。

核協議の延長が決まったことで、将来の米イラン関係はこの段階では先が読めず、これまでの経緯から筆者の仮説はいかにも先走りしすぎとの観を与えるかもしれない。

しかし最後に付け加えたい。過去の世代では日本とドイツがアメリカで最重要の同盟国になるとは想像さえできなかったはずだ。両国とは全面戦争しているが、イランとの対立は比較すれば一度は友人だった二人が頑なに反目しあっているようなものだ。歴史と地理を注意深く観察すれば、筆者はイランとの関係正常化が米国の目指す方向であると楽観視している。



日曜日はのんびりと 真珠湾攻撃を描いた映画作品を並べてみた


日本では真珠湾攻撃は12月8日の出来事とされていますが、アメリカにとっては12月7日(日曜日)に「ひきょうな」奇襲を受けた屈辱の日、としています。今年は同じ日曜日になったため、海軍協会がこんな特集を組みました。どうも協会には映画好きのスタッフがいるようですね。ただし日本の「ハワイ・マレー沖海戦」はここに入っていませんね。


Movies About Pearl Harbor

By: US Naval Institute Staff
Published: December 5, 2014 12:28 PM • Updated: December 5, 2014 12:29 PM

Promotional painting for the 1970 movie Tora! Tora! Tora! by artist Robert McCall via Airport Journals
トラ・トラ・トラ!の宣伝用ポスターより。作Robert McCall via Airport Journals

真珠湾攻撃 DECEMBER 7th (1943) 日本未公開


アカデミー短編ドキュメンタリー部門で受賞したジョン・フォードによる本作は真珠湾攻撃を再現構成したもので、一部は完全なフィクションだ。また、作品中のシーンには真珠湾での実写に別のドキュメンタリー映画のシーンが含まれている。陸軍省が完成版からおよそ一時間分をカットしたのは、軍が開戦準備を怠っていた印象が植え付けられるのを恐れての事だった。


エアフォース、AIR FORCE (1943) 日本未公開


台詞は古臭く、演技は硬く、セットはボール紙製、効果は特殊とは程遠い本作だが、開戦直後のハリウッドが産んだ愛国心をそそるプロパガンダ映画としては抜きん出ている。物語はB-17爆撃機の乗員を中心とし、ハワイに攻撃寸前に着陸すると言う不幸なめぐり合わせを辛くも生き残り、後半で日本艦隊の攻撃で先陣を切る爆撃でしっかりとお返しをする。


地上より永遠に FROM HERE TO ETERNITY (1953)


フランク・シナトラ、ドナ・リード、監督フレッド・ジンネマンがそろってオスカー受賞し作品賞も得た。物語はハワイ駐留の陸軍を中心とし、開戦前の束の間の平和で始まる。バート・ランカスターとデボラ・カーが浜辺で波にもまれるシーンが一番有名だろう。

太平洋の嵐 I BOMBED PEARL HARBOR (1960)


米国内公開では原題をもっとセンセーショナルな“I Bombed Pearl Harbor” (ワレ真珠湾攻撃に成功セリ)に変更している。大戦を日本の視点で描くのは珍しい。物語は搭乗員を中心に真珠湾から緒戦の勝利に酔う日本海軍がミッドウェーで惨敗するまでを描く。

危険な道 IN HARM’S WAY (1965)


オットー・プレミンジャーが多層的に組み立てたソープ・オペラである本作は真珠湾の海軍軍人生活から始まり、ジョン・ウェイン、カーク・ダグラスはじめお馴染みの顔が多数出てくるが、1940年代の女性のはずが1960年代の髪型となっているのがご愛嬌である。ウェインはリラックスして、自信たっぷりだが、撮影時にすでに肺がんを発症しており二ヶ月後に左肺を摘出している。本作は大作であり、考えさせられる内容だが、海軍を扱ったものとしては楽しめる映画だ。

トラ・トラ・トラ! TORA! TORA! TORA! (1970)


真珠湾攻撃を巨額の予算で活き活きと再現している。日米合作で双方の視点から描く本作は史実の詳細に忠実にこだわり、攻撃当日の様子は観る者の記憶に焼きつく。特殊効果でオスカーを受賞している。本作と「パットン大戦車軍団」の二本で1970年は戦争映画の当たり年になったが、ベトナム戦争がまだ続いていたことを考えると皮肉に見えてくる。


パール PEARL (TV – 1978)


本作はABCテレビのミニシリーズでアンジー・ディキンソンとロバート・ワグナーが日本艦隊の来襲前のハワイで数々の登場人物がどんな暮らしをしていたかを語る。トラ・トラ・トラ!の使い回しで攻撃シーンを楽しめる。


地上より永遠に FROM HERE TO ETERNITY (TV – 1979)


オリジナル劇場上映作品をテレビのミニシリーズにしたもので、予想がつくと思うが、安っぽい作品にしあがっている。ただしジェイムズ・ジョーンズ原作を忠実に映像化しており、ナタリー・ウッドも最良の演技を披露してくれる。その他出演者にはドン・ジョンソンやキム・ベイシンジャーのようにその後90年代にかけて活躍していく者が出演している。

ファイナル・カウントダウン THE FINAL COUNTDOWN (1980)


本作の筋書きはあたかも高校生二人があの時歴史が変わっていたらと議論して作ったみたいだ。原子力空母で高性能超音速機を搭載したまま時間をさかのぼり、真珠湾攻撃の直前に日本艦隊を食い止めたらどうなるか、というもの。カーク・ダグラスとマーティン・シーンが歴史をの改変は許されるかと自問自答に苦しむ。米海軍全面協力の元で制作された本作にはUSSニミッツのドキュメンタリーとしても楽しめる要素があり、F-14他の艦載機の空母運用の様子がよくわかる。


戦争の嵐 THE WINDS OF WAR (TV – 1983)


ハーマン・ウォーク原作をミニシリーズ全盛期に映像化した本作は世界大戦の開始時の世界を描来、クライマックスは真珠湾攻撃により米国が参戦していくところで終わる。主演ロバート・ミッチャムは冒険心たっぷりの主人公ヴィクター・「パグ」・ヘンリー海軍大佐にはミスキャストであり、いつも昼寝したくてしかたない顔をしている。ただ高視聴率となり、続編「戦争と回想」が1988年に制作され、連合軍の勝利までを描く。


パール・ハーバー PEARL HARBOR (2001)


台詞が陳腐と批評家からバカにされ、歴史家からは不正確な描写で毛嫌いされ、観客からは冷笑されたベン・アフレック、マイケル・ベイ主演の本作はそれでも全世界で450百万ドルを稼いでいる。難点は多いが、攻撃シーンだけはなかなかのものだ。おかしなことにラブシーンに重点をおいた日本公開版は大ヒットになっている。
 
Article Keywords: Imperial Japanese Navy, Oahu

2014年12月4日木曜日

★主張:F-35の前途にはリスクがいっぱい 



なんかいつもF-35のことでネガティブなご紹介をしているせいで誤解もあろうかと思いますが、一貫して主張しているのはこの機体に西側の防衛を今後20年以上も頼ることは危険だという点です。無人機、電子戦、指向エネルギー兵器等の新しい波はパラダイムの変化を予見させていますが、有人戦闘機(だけ)に投資するのはおかしい、と言うのが当方の主張ですので誤解無いようにお願いします。

Opinion: Plenty Of Risk Remains For The F-35 Program

Budgets, aircraft competition could set the pace
Dec 1, 2014 Byron Callan | Aviation Week & Space Technology
http://aviationweek.com/defense/opinion-plenty-risk-remains-f-35-program


F-35の進展が順調なのは疑いないが、大きな疑問点が未解決のままだ。どこまでのリスクがどれだけ残っているのだろうか。低率初期生産(LRIP)第8ロット契約が11月21日に成立したのは大きな成果と言ってよい。11月18日にはロッキード・マーティンが金融アナリスト・機関投資家向け説明会をフォートワースで開催したが、好材料がない限りこの種の会合は開催しないものだ。ただし、F-35に未解決の課題が全くないわけではない。
 
まず予算管理法により国防総省が事業縮小を迫られたら、F-35にどんな影響が出るだろうか。現時点で米国発注分は2015年に34機、2016年に55機、2017年に58機、2018年・19年は90機超となっている。同機事業は同法の定める上限とは無関係になっているとはいえ、中間選挙後の影響が見えない中、強制削減の回避ができるか不明だ。すでに2016年発注は16機削減され、17年度でも一機削減するが、18年度・19年度は原案どおりとする。

二番目は各国の需要だ。生産拡大はこれを前提にしており、生産数と機体単価はあたかもニワトリが先か卵が先かの様相を示し、機体単価削減巾の7割8割は生産増で実現できるとする。ただし、それだけの受注がなければ単価も下がらないわけで、期待されるのは海外からの大量注文でこのため営業活動を展開しているわけだ。
第8ロットでは三分の一の14機が海外発注分だ。現状では2019年にかけて42から49%相当が国際顧客(もともとの事業協力国と有償海外軍事援助分を合算)になる見込みだ。ここでも各国の調達案では不確定要素がある。
2015年には英国とカナダで国政選挙があり、このうち英国の投票結果次第では戦略国防方針の見直しもありうる。イスラエルはF-35飛行隊x3の当初案を縮小する。デンマークは2015年にF-16代替用に導入を決断する見込みで、ベルギーはそれより遅く2010年代末に決定するだろう。ただし、それぞれ導入機数は小規模になる。そうなると大量購入先がないまま、国際販売の行方も見えにくくなる。
ロッキード・マーティンはF-35は最終的にF-16と同程度の機数が導入されるはずと見ている。今年の機関投資家向け説明会で同社はF-16の総販売機数はおよそ4,600機と強調した。想定される米国、その他国での導入予定を合算すると3,200機程度になるが、この数字には裏付けがない。
性能面でF-35はF-16をはるかにしのぐが、同時に価格もインフレ調整しても相当に高い。1981年度のF-16を2014年価格に換算すればおよそ22百万ドルとなり、F-35の目標価格帯【2019年】の四分の一程度だ。もちろん今日ではF-16も22百万ドルでは購入不可能だが、考えるべき点が二つある。まず各国の軍部でインフレ率に呼応して軍事予算がふえているところはない。また主要装備の価格の増加はインフレを上回る率になっている。
F-16を運用中の26か国のうち、F-35購入の意図があるのは6か国だけだ。また別の2カ国(デンマークとシンガポール)は共同開発国になっている。その他の国ではF-16の更新需要はあるが、F-35が買えない、あるいは導入が政治的に微妙な話題となっているパキスタン、台湾、エジプト、ギリシア、ヴェネズエラがある。いくらF-35の性能がF-16を上回ると言っても4,600機までの購入は非現実的だ。
最後にF-35と直接間接で競合する事業がある。長距離打撃爆撃機構想は空軍の予算を奪い合う相手になる可能性がある。日本、トルコ、韓国はそれぞれ次世代戦闘機開発の計画があり、無人空母運用空中監視偵察攻撃機(UCLASS)構想はとりあえず実現から遠のいているようだが、無人機案は多数あり、F-35の補完としてあるいは直接競合する機種が登場しないとは限らない。■

本記事を執筆したByron Callan はキャピタルアルファパートナーズの役員。


2014年12月3日水曜日

北朝鮮が核抑止力を海洋で整備する日が来るのか


旧式技術でも脅威が海にあれば、それだけで対応は振り回されます。ましてやミサイル潜水艦となれば最優先で追い回すことになるでしょう。北朝鮮といえども貴重な艦をみすみす失うことはできないので、その他の小型潜水艦などで輪形陣を作るのではないでしょうか。つまり海軍装備のエスカレートですね。そんな事態を避けるためにも北朝鮮がこんな装備を整備する本当の理由を考えるべきだと思います。意外にも戦前の日本と同じ国体護持ではないでしょうか。

Opinion: North Korea’s Sea-Based Deterrent

By: Debalina Ghoshal
Published: December 1, 2014 8:43 AM • Updated: December 1, 2014 9:25 AM

A Soviet Golf II class ballistic missile submarine underway in 1985. North Korea is reportedly building its own sea-based nuclear deterrent based on the Golf II design. DoD Photo
ソ連時代のゴルフII級弾道ミサイル潜水艦、1985年撮影。北朝鮮はこれを基に独自に核抑止力を整備中と言われる。DoD Photo



北朝鮮がソ連時代のゴルフ-II級を原型に国産潜水艦を開発中との報道が世界で注目を集めている。同級はすでに陳腐化しているとはいえ、搭載するミサイル発射管含め技術を「検分し」「複製」したとの報道もある。

そうなると同潜水艦から弾道ミサイルの発射が可能となる。潜水艦用にミサイル垂直発射システムを開発中との報道もあり、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)につながる。さらに不安を引き起こすのは北朝鮮の弾道ミサイルは核弾頭を装着可能である点だ。

別報道で北朝鮮に核弾頭小型化技術があるともいわれ、潜水艦発射弾道ミサイルの核兵器化の可能性が高まる。核ミサイル搭載の潜水艦が遊弋するようになれば北東アジアの安全保障が脅かされる。現在想定される潜水艦では北米攻撃は不可能だが、前進配備基地はアジア太平洋地区で攻撃対象となる。

中国、米国、韓国、日本が北朝鮮の核兵器開発に懸念を高め、朝鮮半島非核化を求める中で、この報道が入ってきたことから北朝鮮に核兵器放棄の意図がまったくないことがあきらかだ。それどころか核抑止力の増強を図っている。2013年に国営メディアで北朝鮮は朝鮮半島非核化は世界の非核化があって初めて実現すると伝えている。

核心的な問題が北朝鮮の潜水艦部隊が作戦運用に入れるのかであることは言うまでもない。核兵器保有を目指す各国が抑止力を海に配備する傾向は共通しており、北朝鮮がこの例に倣っても何ら不思議はない。

ただし、今話題になっている潜水艦は水中発射弾道原子力潜水艦でもなく、大気非依存型推進システム(AIP)もついていない通常型のディーゼル動力艦である。北朝鮮は旧式ゴルフ級をリバースエンジニアリングしているため、今日の対潜技術で簡単に排除できるはずで、排除されれば核報復を実施する北朝鮮の能力は低下する。

北朝鮮は地上配備ミサイルでは固体燃料・液体燃料を共に開発しており、初のSLBMもそのどちらかになる可能性がある。しかし、現時点での懸念は北朝鮮が潜水艦に核搭載可能ミサイルを格納できるかどうかである。
Kim Jong Un in the conning tower of what appears to be a Project 633 diesel submarine. KCNA Photo
金正恩がプロジェクト633級と思しき潜水艦の司令塔に立つ KCNA Photo



海に核抑止力を配備し、米本土あるいは前進配備の米軍基地を攻撃する抑止力があれば北朝鮮国内の地上配備弾道ミサイルの抑止力も高まる。つまり陸上配備ミサイルを第一撃に使用すれば、北朝鮮は海中の核抑止力を温存し、第二次攻撃に使える。たとえ先制攻撃方針を北朝鮮が採用しなくても、海中の核抑止があれば報復能力は増すので敵からの攻撃を未然に防ぐことができる。

国連安全保障理事会の決議に反して北朝鮮は弾道ミサイル開発を進めており、核実験も行っている。さらに韓国、米国へ核攻撃の恫喝を加えること数回で、北朝鮮が米本土を狙う潜水艦発射弾道ミサイルの取得を目指しているのは確かなようだ。陸上発射型ミサイルの射程距離が10,000キロを超えるまで進歩すればさらにこれは確実になる。

ただし北朝鮮が海から核抑止力を運用する能力を整備するにはまだ数年かかるだろう。■

2014年12月2日火曜日

中国の空軍力では戦闘機よりもミサイル、レーダーに要注意 珠海ショー余聞③




Opinion: China’s Radar and Missile Work Means More Than Fighters

China’s defense plans are not aircraft-centric
Dec 1, 2014Bill Sweetman | Aviation Week & Space Technology

マジックショーでは目を奪われる衣装の女性アシスタントがつきものだ。女性の仕事は男性観客の視線を釘付けにしておく間に、マジシャンが帽子の中からうさぎを出して驚かすことにある。

  1. 先月閉幕した珠海ショーで網タイツやハイヒール姿のアシスタントの役は瀋陽FC-31ステルス戦闘機だった。同機の役目は中国がステルス戦闘機ニ型式を有していることを示すことにあった。(成都J-20は実機こそ出展がなかったが、売店で縮小モデルがあちこちにあった。) ただし同機の試作型は飛行展示以外では人目から隠されており、展示機ではなかなか詳細がわからなかったが、飛行展示ではF-35の特長である渦巻き状の飛行機雲が見られたし、双発エンジンはおそらくロシア製RD-93と思われるが、排気口から煙が視認できた。
  2. これは一見何でもないようだが、実は重要だ。なぜなら中国は戦闘機用エンジンの国産化にまだ成功しておらず、ロシア大統領の承認なしでは成都J-10も、スホイ原型の機体も製造できず、もちろん輸出もままならない。展示されていた国産エンジンは戦闘機、練習機用とあったが、2年前の前回ショーで展示されていたものと同じだ。
  3. ショーの屋外展示で目を引いたのは成熟技術と新規技術の混在だ。青樹t苦とは1950年代の西安H-6M爆撃機であり、ノルデン照準器らしきものが爆撃手の場所で見られる。しかし同機のまわりには誘導兵器各種があり、一部は今回初めて公開されたものだ。
  4. 珠海会場のミサイル展示では、CX-1ラムジェット動力の対艦・対地ミサイル(7,700-lb.)からQW-19携帯型対空ミサイルまで各種にわたっていた。CX-1はロシア・インド合作のBrahMosと細部が異なるが、性能諸元は極めて類似している。二段方式の短距離地対空ミサイルはロシアがKBM ツングースカ、パンツィールの各ミサイル Tunguska and Pantsyr systemsで実現したコンセプトを拝借している。
  5. 目を引くのは中国製ミサイルの数の多さでミッションが違っても共通部品を使うのが流行のようだ。空対空ミサイルCM-400AKG は2012年ショーで初登場したが、超高速対艦ミサイルとして注目を集めていた。さらにCM-400AKG のモーターや弾頭部はSY400弾道ミサイルと共用で、パッシブ方式のレーダー・シーカーは新型B611MR準弾道対レーダーミサイルと共通だという。そしてB611MRのモーター、制御部分はM20誘導ミサイル(GPS・慣性誘導方式)と共通で同じ移動式発射台から発射可能で、CX-1と指揮誘導システムが同じで、これが中国が多数のミサイルをすばやく完成させる秘密だ。
  6. 「システムをシステム化する」のが珠海ショーの隠れたメッセージである。人民解放軍(PLA)防空部の装備展示の中心にあったのは巨大なJH-27A VHF方式アクティブ電子スキャンアレイレーダーで、世界でもこの方式は初の例となる。その左に小型AESAレーダーがあり、ひとつはUHF、別のものはセンチメートル波Sバンドで作動するもので、VHFレーダーで合図を送り作動するきわめて先進的なレーダーだ。
  7. ショー閉幕の翌週に開かれたロンドンの会議で退役米空軍司令官がステルス対抗手段を嘲笑っていた。どこからそんな自信がわいてくるのか知る由もないが、JH-27A他のレーダーは西側には存在せず、性能には不明点が多いのだ。
  8. さらにその先に三機種がある。レーダー・誘導式短中距離LY-60D/HQ-6D地対空ミサイルとノリンコ(中国北方工業公司)LD2000式7銃身30-mm機関砲だ。このふたつは局地防衛用で対航空機、精密誘導ミサイルへの対抗手段となる。トラックに搭載し、移動式で大型レーダーが付属している。防御の対象は高付加価値の移動装備で、敵の空爆から守ることが狙いだ。だが、100%の効果が期待できるだろうか。攻撃をより困難にするだろうか。確実にそうなる。
  9. 煙を吐くステルス機が注目を集める間にPLAは多額の予算を監視・攻撃複合装備に費やしており、中国に対する兵力放射にはリスクが確実に増えしている。またレーダーによりステルス機は探知、追跡、照準されてしまう。これがマジックショーのうさぎの役割で、目をつぶると自らで危機を招くことになる。

Gallery: See Bill Sweetman’s photos of Chinese defense technology on display at the Zhuhai air show. AviationWeek.com/ZhuhaiTech
Check 6: Bill Sweetman talks to AW&ST Editor-in-Chief Joe Anselmo about China’s evolving defense technology. AviationWeek.com/podcast

2014年12月1日月曜日

ワーク副長官に聞く ディフェンスニューズの単独インタビュー内容


いきなり中央舞台に上がった観のあるワーク副長官ですが、海軍での経験もあり、かなりの事情通のようです。だがその語りはかなり硬派のようであり、強面のする人物らしいですね。長官への昇格もとりざたされていますが、逆に長官の座につく別の人物からすればこんな副長官がいると仕事がやりにくいだろうな、と思わされました。

Interview: Bob Work, US Deputy Defense Secretary

Nov. 26, 2014 - 09:52PM   |  
http://www.defensenews.com/article/20141126/DEFREG02/311260038/Interview-Bob-Work-US-Deputy-Defense-Secretary

Bob Work is the US deputy defense secretary.
国防副長官ボブ・ワーク(Defense News With Vago Muradian)

アメリカの敵は商用、軍事技術の強化を急速に進め米国の能力に対抗しようとしている。この事態に国防長官チャック・ヘイゲルから国防能力イノベーション構想がは票された。多方面にわたり高度な実戦想定演習を行い今後の技術ニーズを明らかにし、長期間にわたる研究開発投資対象を決めるのが目的だ。ヘイゲルからは制度改革でペンタゴンの即応能力を引き上げる方向も示されている。
この中心に第三相殺戦略と呼ばれる技術開発の方向性があり、その提唱者ボブ・ワーク国防副長官は米国の敵が進める技術推進に対抗あるいは相殺できる策を考えている。第一回目の相殺はソ連が進める大量通常兵力に核兵器に対抗した冷戦時、第二回目は70年代にステルス、GPS、精密誘導兵器他の技術に集中投資している。そこで第三回目だが、内容がバラバラで一方中国は最先端の教育、技術、生産を実施しているとの批判が出てiいる。
Q. 米国の安全保障上で最大の脅威は何か。
A. 第一にやはり国家の存在で、中国、ロシアの両国は核兵器を有し国連安全保障理事会メンバーであり、地域内、世界大で野望をもっている。では両国とどう対処すべきか。これはわが方の注意を集めている話題だ。また核大国以外に地域内大国でも核兵器を目指す動きがある。一つは北朝鮮、もう一つはイランで、イランは核兵器を取得したいと公然と発言している。これが二番目だ。三番目は国際テロ活動、国際犯罪ネットワークだ。最上層部には極めて迅速に進行中の技術進歩がある。
Q. ばらばらの要素をどうくっつけるのか
A. 広義の国防イノベーション構想 Defense Innovation Initiative とはヘイゲル長官がレーガン国防フォーラムの席上で11月15日発表したもので、五つの要素がある。また技術だけを扱うものではない点に注意が必要だ。何と言っても一番は人員だ。人員が国防総省の秘密兵器だ。そこで核心的なリーダーをいかに確保するかが課題だ。二番目には軍事作戦演習の刷新だ。これは国防総省として長年慣れ親しんでいるのだが、この12年間にわたり実際の戦闘が続いていたこともあり活動が低下している。最後が調達など業務系だ。技術で優位性を確保しても業務執行をもっと革新的に変えなければ。
これまで整備してきた高性能装備や抑止力はあくまでも国家が相手だったが高性能兵器、抑止力整備に携わるものとして戦略面、演習でもコンセプトを固めているところだ。だが、長期に渡る研究開発の計画で技術優位性をどう確保するかがわかる。
Q. 産業界にどんなメッセージを送るのか
A. 国防総省には産業界とともにイノベーションを実施する能力が必要だ。イノベーションの中心は民生であり、バイオテクノロジー、ナノテクノロジー、ロボット、原子力だ。国防でもその成果を活用しなくては。
Q. 次の二年間で600億ドル以上を要求するというが優先順位はどうなるか。また要求通りにいかないとどうなるか。
A. 合衆国の安全保障は強制削減で悪影響を受けている。昨年はそのため五か年国防計画で大統領は1,150 億ドルを準備し、強制削減の規模以上の予算を確保している。ただし議会は反応していない。
そこで次の二年間で大統領の予算想定に沿った案を提出していく。議会も一緒になり強制削減効果に近い額を確保するよう期待したい。
Q. 変化すればもっと予算がもらえるのか
A. まだわからない。議会の一部から期待を感じさせる動きがあり、強制削減を終わらせようとしている。だが同じ議会でもその他の議員はこれに反対しており、強制削減を現状のまま維持すべきとしている。
Q. では我が国が直面する脅威に有効な対策が手に入るのか。
A. 統合参謀本部副議長のジェイムズ・ウィネフェルド James Winnefeld と一緒に半年間頑張ってきた。私は海軍次官で海軍予算には詳しかったが国防予算全般を俯瞰するのははじめてだった。そこで言うまでもなく必要な変更点があり、16年度予算から一部を実施したい。さらに17年度ではもっと多く実施し、戦略のあるべき姿を実現したいものだ。
Q. となると大型案件にも影響がでるのか
A. 大中小と規模を問わず影響が出る。
Q. 核兵器体系の見直しがおわったばかりで、核三本柱すべてを再強化すべきとの意見は一致しているが実施すれば相当規模の予算が必要だ。支出は可能か。
A. 核兵器体系見直しは現行の核抑止力の維持が目的だった。実際に核兵器体系の再整備が始まる2020年代まで陸上配備のミサイル・爆撃機と潜水艦発射ミサイルを維持できるだろうか。そこで予算を増やし、維持を図ることは賢明な選択だ。おっしゃるとおり巨額が必要だが、国家としてこれは必要。戦略兵器体系の近代化の実現に予算が必要でこれをこれから訴えていく。と言うのも今の想定予算水準では20年代の兵力再整備は実現不可能だからだ。
Q. 中国をどう抑止するのか
A. 太平洋で引き続き勢力を維持したい。中国にはこの意向を受け入れてもらいたいし、時間をかけて信頼醸成を図ってきたと大統領が発表したばかりだ。またこれは平和裏に実現できる。ただし保険が必要だ。中国が整備中の軍事能力は同盟各国にも問題となるのは必至で、だからこそ中国の力の行使を防ぐためにも抑止力が必要なのだ。
Q. イスラム国家対策であとどれだけの兵力が必要か、またその実施が予算の足を引っ張らないか。
A. 最高の戦略思考家とは戦略的な忍耐力を有する思考家である。この問題をすぐに解決すべきと考えるのが一般だが、今の案は派遣済み1,500名に追加1,600名を送るものだ。現時点でこの戦略はうまく機能していると見るが、時間がかかる。結果が出てこないことに我慢できない向きが多い。時間たてば成功すると考えるが、しなければ大統領、国防長官、統合参謀本部議長が何度も言っているように状況に適応していくしかない。
Q. 中国のA2・ADにどう対応するのか。大型予算をかけずに対応できるのか。
A. 現状は強制的にコストを押し付けられたままで、飛んでくるミサイルを撃ち落とすのは費用がかかるが、相殺戦略の重要な点は攻撃力を整備して対応していくことだ。そのため電磁レイルガン、指向性エネルギー兵器のような新兵器に注目している。新技術が実用化されれば、競争の様相は大きく変わってくる。
Q. 同盟国から「何を求めてくるのか」と聞かれたらどう答える?
A. それは国ごと、装備ごとにちがう。フランスが西アフリカで現在実施中の対テロ作戦を例とすれば、すごいことをやっている。相当の装備開発に予算を投じて、フランスは米国と同様の能力を整備している。われわれとしては現実の問題全般を通じて核同盟国向けにできることは何かを考えていく。
Q.想定する予算節減効果が得られなかったらどうなるのか
A. 下院軍事委員会,上院軍事委員会のどちらが国家軍事予算認証法案に影響を与えるのかを見極めようとしているところだ。最悪の想定は今後5年間で700億ドルカットになってしまうことで、これは想像したくないが、強制削減がまだ残っている中ではね。だからこの事態にならないよう内部で節減を探っていかなくてはいけない。
Q. 内部節約は目標どおりいきそうなのか
A. これまでだとペンタゴン内部の各員に「上位10%を削れ、後は任せる」と号令をかけるだけだった。あるときは契約をカットしたり、文官を整理したり、業務契約を削ったりしていた。これに対して今は全部門で垂直統合能力を確保しつつ行っている。
そこで海軍購買部Naval Exchange Serviceや陸軍購買部があるが、このやり方を進めたい。このやり方で節約が実現できるはずだ。国防ビジネス委員会Defense Business Boardで民間の手法を取り入れる研究を前から続けているところだ。
Q. では迅速にこれを実行できるのか。まさか地学的な時間ではないですよね
A. ペンタゴン内部では地質学的な時間の尺度が正しい場合もあるよ。■
By Vago Muradian in Washington.

2014年11月29日土曜日

★F-35:イスラエル内閣が追加購入を大幅削減



さすがイスラエルの民は論理的ですね。繰り返し主張しているようにF-35により西側陣営の空軍力は相当悪い影響を今後受けるのは必至なので、あえて「多数意見」に反対する態度を示したイスラエルにあらためて敬意を表したいと思います。筆者の考えるシナリオでは2020年代が西側空軍力のピンチでその間に第六世代機が登場するか、指向性エネルギー兵器の搭載(戦闘機とは限りません)で新しいドクトリンが生まれるのではないかと見ています。ちょっと無責任ですが。

Israeli Panel Rejects Proposed Increase Of F-35

Nov 24, 2014Alon Ben David and Amy Butler | AWIN First

イスラエル内閣の審議会が国防省提案のF-35共用打撃戦闘機追加31機購入を棄却し、第二期購入はわずか13機に削減される。
  1. 内閣が国防相承認の軍要求を逆転させるという前代未聞の結果となった。イスラエル空軍はF-35を19機発注しており、27.4億ドルで契約しているが、合計32機の陣容で我慢するしかないようだ。また二個飛行隊の編成は困難になった。
  2. 国防相モシェ・「ボウギイ」・ヤーロン Moshe "Bogie" Ya’alon はペンタゴンと44億ドルで31機追加購入をまとめていたが、今回の決定を受け削減するものの条件は同じで進めると国防省に指示している。合衆国は24億ドルの借款も提供し総額53億ドルでイスラエルが50機を導入すると期待していた。またF-35導入はイスラエルに提供する年間31億ドルの軍事援助で実施する。
  3. 購入機数が削減されたことで米側が同一条件を提示するか不明だ。国防筋は「ヤーロン大臣から若干遅れるが最終的に50機導入するとの通報がペンタゴンに入ると期待している」とAviation Weekに語っている。
  4. 予想外のF-35への反対意見だが、その中心人物は情報相ユヴァル・スタイニッツ Yuval Steinitz で「国防相や空軍の言いなりにはならない」と発言。F-35導入を検討した国防調達審議会でスタイニッツはAviation Week記事を数点示し、同機の有効性に疑いを表明した。
  5. 「ステルスのため、操縦性を犠牲にし、作戦半径は短く、ペイロードも相当小さい」とイスラエル関係者はAviation Weekに語り、「本当に同機のステルス性能が有効なのかわかるまで大量に導入すべきではない。あるいは同機への対抗手段があるのか確認したい。性能面ではF-35と第四世代戦闘機で相当の開きがあるのは事実だ」
  6. イスラエル空軍及び国防相はスタイニッツの意見は「古臭く無関係」ときりすてるが、スタイニッツはさらに発注済みの19機で打ち止めとし、代わりにF-15やF-16でもっと多くの機数を購入すべきと主張している。財務相ヤイル・ラピド Yair Lapid もF-35購入で米国からの軍事援助を使い果たしてしまい、イスラエルが独自に防衛予算を増額する結果になるとスタイニッツの側に回っている。
  7. これに対しイスラエル空軍はF-16やF-15の新型機を調達するとF-35よりも支出額が増えるとの試算結果が出した。このため閣僚の間にはF-35調達を13機に削減する妥協案が出てきた。
  8. ロッキード・マーティンにはイスラエルから正式な新調達案は届いていない。「観測記事に反応するのは避けたい」と同社広報は述べた。「当社はイスラエルの決定がいかなるものであれF-35の追加調達を支援いたします」
  9. イスラエル発注の最初の2機は低率初期生産第8バッチの一部として生産され、2016年第二四半期に納入の予定。第一期発注19機がそろうのは2018年となる。追加発注のF-35は2019年から引き渡し開始となる見込み。■




★A400M:1号機引き渡し完了、時間をかけて実用化に進む英軍



なかなか手こずっていますね。ヨーロッパの苦悩を象徴するような事例になりましたが、民生では順調なエアバスも軍用では経験不足なのか時間がかかるようです。そういえば我が国のC-2はどうなったのでしょうか。A400Mと合わせ、国産化の意味があるのでしょうか。

A400M Capability Delays Won’t Impact U.K. Operations

Nov 28, 2014Tony Osborne | AWIN First

英空軍が予定通りに今年中にエアバスA400M軍用輸送機の4機すべてを受領するのは無理なようだ。
  1. 技術的な問題が重なり、1号機の受領手続きが予想以上に長引いて、ブライズノートンt Brize Norton 空軍基地に飛来したのは11月17日になったことで、4号機は確実に、さらに3号機も来年早々の引き渡しになりそうだ。
  2. 1号機MSN15の引き渡し式典は11月27日に開催され、デイヴィッド・キャメロン首相も参加し、英軍への就役を盛大に祝うものとなった。
  3. フランス政府と生産スロットを交換したことで英軍向けA400M全22機の引き渡し完了は2018年の見込みで、初期作戦能力獲得は2015年とし、当初7機体制とする。
  4. 段階的に性能を加えていく予定で、戦術輸送能力の実施は2017年遅くまで行わないが、全性能の獲得は2022年に設定されている。同年に現行のC-130Jが退役する予定だ。
  5. 戦術ミッションでは高度250ft.での飛行訓練が必要で、貨物またはパラシュート兵の投下を行い、空中給油に加え未整備滑走路からの運用も想定。フォークランド諸島では特殊な要求があり、乗員は海上監視ミッション訓練も受ける。
  6. 一部乗員は特殊作戦向けの高高度パラシュート投下の他、ゴムボート投下、ヘリコプター給油、低高度150ft.飛行での訓練も必要だ。
  7. 引き渡しが遅れたのはメーカーのエアバス・ディフェンスアンドスペースが戦術作戦能力の付与で手こずり、11月初めには契約破棄寸前までの事態となったが、依然としてフランス、ドイツ、トルコの各国と同社の間で協議が続いており、トルコは2号機の受領を拒んでいる。
  8. 英国は徐々に性能を引き上げる予定だが、これは他国に比べると余裕があるためだ。C-130Jに加えC-17を保有する英国に対してフランス、ドイツ、トルコはC-160トランザールの老朽化が進み、ハーキュリーズも旧型を運用している。
  9. だが英国向けの1号機も受領したものの問題に直面した。11月17日の受領後に実施した訓練フライトは1回のみで、直後に技術的な問題が見つかり、地上待機となってしまった。
  10. 英軍用2号機MSN16はマドリッドのエアバス・ディフェンス社で防御装置一式の取り付けの作業中。英軍が採用したのはノースロップ・グラマン製の指向性赤外線防御システムでA330ヴォイジャー給油機、C-17,C-130Jに搭載されているのと同じもの。3号機の初飛行日程は未定だ。
  11. ブライズノートン基地ではエアバスとタレスが共同で訓練を実施し、まず教官パイロットの養成にあたっている。通常の乗員向け訓練は1月に開始される。
  12. 乗員はまずC-130JやC-17の経験者から選抜され、今後は新規パイロットが加わる。機種転換には5ヶ月かかる。
  13. 英国がA400M導入に当てる予算は28億ポンド(44億ドル)で、英国は同機にアトラスの名称を与えている。■




2014年11月28日金曜日

米国の戦略:ISIL駆逐の先にはアサド政権の消滅


たぶん読者の皆さんには受けが悪いと知りつつ、この話題は継続していることもあり、あえて掲載します。

ISIL Is The Symptom, Syria’s al-Assad Is The Disease

By JAMES KITFIELD on November 21, 2014 at 11:33 AM
WASHINGTON: 敵の敵は誰か。これが米中央軍の作戦立案スタッフが最近直面した疑問だ。中央軍はコラサン集団Khorasan Groupというアルカイダ強硬派を狙い、同集団がシリアで合衆国、欧州を標的にしたテロ攻撃を計画しているとしていた。空爆によりアルヌスラ戦線 Al-Nusra Front (アルカイダのシリアにおける提携先)がコラサン分子を供給していることもあり、同時に攻撃対象となった。
  1. だが米軍はシリア国内の反乱勢力も怒らせてしまった。もともと合衆国の代理と期待されていた世俗勢力だが、戦闘ではアルヌスラとの戦術面で連携して共通の敵と戦っている相手がダマスカスのバシャ・アル・アサド政権だ。米軍空爆への報復としてアルヌスラ戦闘分子がイラク・レヴァントイスラム国家(ISIL)に合流している。ISILこそイラク、シリアでの合衆国の主たる敵だ。
  2. 両者は結託して合衆国が支援する反乱勢力自由シリア軍 Free Syrian Armyに攻勢をかけ、自由シリア軍はトルコ国境付近の北部へ追い詰められた。アルヌスラ戦線とISIS指導層が会見して共同戦線を形成したとの報道がある。
  3. 敵が合流し、味方が弱体化すれば、戦略再考の潮時といってよい。オバマ大統領の安全保障チームが先週だけで四回も会議をしたのは根本的な戦略がISISを「劣化敗退させる」目標と遊離していると認識している証だろう。複数筋が今回の作戦で段階的アプローチを採用したオバマ政権自体が混乱を巻き起こしている、最終段階でアサド政権崩壊に追い込むと公に認めていない点を指摘している。
  4. 自らの戦略を敵に隠すこと(時には同盟国へも)は民主主義国家においても成功を勝ち取る基本的条件である。
  5. 「政権内部ではシリア向け政策の最終目標はアサド追放との認識があるが、社会一般は混乱が発生しているのは玉石混交の同盟をつくったためと信じがちだ」と語るのはダフナ・ランドDafna Rand (最近まで国家安全保障会議勤務、現在は新アメリカ安全保障研究所Center for a New American Securityの研究部副部長)だ。ジョン・ケリー国務長官は域内同盟各国とともにイラン、ロシアとアサド放逐の可能性を協議していると伝えられる。
  6. ランドは「根本的な疑問はロシアとイランにアサド政権との関係を分断させるにはどうすべきかです。一方で、アサドが自国内で米軍がISIS目標の攻撃を行うのを看過しているとは思えません。米軍が空軍力を使って介入した他の事例を見れば、アサドのような暴君がのさばれる結果にならないのは明らかですからね」
  7. 公にしていないがISISを「劣化敗退させる」作戦の対象にアサドが含まれるのがオバマ政権の理解だ。
  8. 政治面では共和党上院議員ジョン・マケインが上院軍事委員会Senate Armed Services Committee (SASC)委員長として自由シリア軍部隊向け訓練、装備提供を加速化すべく激を飛ばすことでアサド政権と合衆国は対決に近づくはずだ。マケイン議員は9月16日のSASC公聴会でチャック・ヘイゲル国防長官と統合参謀本部議長マーティン・デンプシー大将に、もしアサド政権の空軍部隊が合衆国の支援するシリア反乱軍を攻撃したらどうするか尋ねている。
  9. デンプシーは「その決定は今後に任せたい」と回答。情報筋によれば統合参謀本部はすでにシリアの代理部隊を守り強化すべく米軍部隊の活用方法を検討中だという。ヘイゲル長官はマケインに「我が国が訓練した部隊が攻撃を受ければ、我が国はそれを助ける」と回答。ヘイゲルから国家安全保障担当補佐官スーザン・ライス宛に書簡数通が送られており、現在のシリア戦略を深く杞憂していると伝えたといわれる。また合衆国は「アサド政権への対処方法を厳しく見直すべきだ」としているという。
  10. ケリー国務長官もアサドから権力を奪わない戦略は非現実的と見ているといわれるが先のスイス交渉では二回続けてイランとロシアの説得に失敗し、アサド政権への支援が両国から続いている。これはまだ進行形だが、国務省はイラン核問題を慎重に協議中でロシアとはウクライナ分離推進派支援の可否を話し合っている最中なので、アサドへの最後通牒を持ち出して協議を危険にさらしたくないのだろう。
  11. ISIS作戦で重要な推進役となる地域内同盟各国からアサド放逐を戦略案の一部に入れるよう強力な圧力が合衆国にかかっている。トルコとサウジアラビアが殊に強く主張しており、アサドが入っていない結末では両国の支援が不確かになりかねない。
  12. 「オバマ政権はシリア国内にあらわれた病状に対応しているが、病気そのものつまりアサドには対応していない」と言い切るのはターキ・アル・ファイサルTurki Al Faisal(サウジアラビア前情報長官、ファイサル国王イスラム研究センター長)で先週ブルッキングス研究所の講演での席上のことだ。
  13. 「シリア情勢は戦術面では非常に複雑化しているが、戦略面では極めて明白だ。軍事論理ではバシャ・アル・アサドの退場に向かっている」と発言したのはクリストファー・ハーマー軍事研究所主席研究員Christopher Harmer, a senior analyst with the Institute for the Study of Warだ。地域内の主要同盟国サウジアラビアとペルシャ湾岸各国ヨルダン、トルコとイラク国内のスンニ派指導層はすべて同じ主張だ。「アサドが原因で過激派が力を付けた。アサドがダマスカスで権力を掌握したままではISIS打倒は困難だし、シリアに望ましい結果が生まれない」
  14. 軍事面ではイラクを当面の注力の対象とし、シリアはあとまわしとする合衆国の戦略にほころびの兆候が見られる。合衆国がアサド駆逐を公に目標としない限り、シリア代理勢力は5,000名から15,000名程度から増えず、実力のある反乱勢力にならないだろう。または反乱分子がISISと提携してしまい、共通の敵アサド放逐に回るかもしれない。合衆国が目標と責任感をあいまいにしたままだとロシア、イランがアサド政権支持を中止しないと見る専門家もある。
  15. 「オバマ政権は非常に細い外交ラインの上を歩もうとしていますが、内戦はいつも恐ろしいテロリスト集団が生み、ISISのような集団に勝つ方法はその内戦を止めるしかありません」と語るのはケネス・ポラック Kenneth Pollack 元CIA中東アナリストで現在はブルッキングス研究所主任研究員だ。「そしてロシアとイランにアサド支援を中止させるにはアサドに勝ち目がないことを明らかにすること、アサド自身が重荷であることを示すしかありません」■

2014年11月27日木曜日

日本が購入するグローバルホークは計3機、E-2Dは4機と判明


Japan to Buy Three Global Hawks

Posted in Business News, Military UAS on November 25, 2014 - See more at: http://www.uasvision.com/2014/11/25/japan-to-buy-three-global-hawks/#more-34310

MQ-4-Global-Hawk-miramar2010
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日本はグローバルホーク3機を導入し、三沢基地を本拠に運用すると日本で報道されている。NHKと共同通信が24日に伝えたもので、合わせて同じノースロップ・グラマンのE-2D発展型ホークアイ早期警戒機4機も購入する

防衛省は来年度予算概算要求で無人機調達を盛り込んでおり、運用開始を平成31年度とし、三沢基地に配属する案だと報道された。

日本政府からはかねてから情報集機能強化の意向が示されており、中国の高圧的な姿勢が海洋領土で見られることと、北朝鮮の核兵器・長距離ミサイル開発が念頭にある。

米空軍のグローバルホークが日本上空を初飛行したのは2011年の大震災直後だったが、今年の夏にはグアム配属のグローバルホーク複数が三沢に転進している。

ノースロップ・グラマンはこの商談を歓迎し、24日に声明文を発表している。「日本から正式な予算手当がつく年末以降、当社は契約交渉を米空軍と海軍それぞれと始める」としている。

在日米軍広報からは同じく24日に米側関係者は日本が同機導入の決定をしたことを重く受け止めていると伝えてきた。

「グローバルホークは両国で協力して共通の地域内課題に対応するもので、人道援助、災害救難、海賊対策、テロリズム他があります」とトモダチ作戦での同機活用を念頭に、昨年フィリピンを襲った大型台風の救助活動ダマヤン作戦も言及している。