2016年10月10日月曜日

★★ロシアがF-22撃墜は可能と公言、ステルス機はどこまで有効なのか



シリア情勢が混沌としてきましたが、無慈悲な空爆を続けるシリア政権=ロシア側に西側勢力がこのまま黙っているとは思えません。そうなると好むと好まざるを問わず、米ステルス機が有効性を実証する(あるいは限界を露呈する)機会が早晩発生するのではと思えます。現状のロシア製ハードウェアではまだ米ステルス機に有効な対策は打てないと思えるものの、どうなりますやら。

War Is BoringWe go to war so you don’t have to
The F-22 Raptor. Airwolfhound photo via Flickr

Could Russia Shoot Down an F-22 Stealth Fighter Over Syria?

The Kremlin deploys advanced anti-aircraft missiles

by DAVE MAJUMDAR
  1. 米ロ間で緊張が高まる中、ロシア軍にシリアでステルス機に標的を合わせる能力があると米国へ警告してきた。アルマースアンチェイ製S-400に加えS-300V4対空ミサイルの追加配備が完了している。
  2. 西側防衛専門家にもF-22とF-35はロシア製装備に対抗できる設計になっていないと見る向きがある。
  3. 「ロシアのS-300、S-400防空ミサイルがシリアのフメイミム、タルトゥス両基地に配備されており、飛行目標をどこでも捕捉できる有効射程がある」とロシア国防省報道官イゴール・コナシェンコフ少将がロシア国営報道機関スプートニクで話している。
  4. 「ロシア製防空装備の運用要員には空爆を実施中の機体の所属を確認する時間余裕はなく、直ちに対応する。『見えない』などど妄想があるようだが現実は落胆を生むだけだ」
  5. S-400およびS-300V4がステルスに対抗できるとロシアが堂々と語る一方、ロシア製低周波探査照準レーダーが戦術戦闘機の大きさでも探知できても、火器管制レーダーはC、X、Kuの各帯域で運用すればF-22やF-35は極めて近距離でないと探知できないはずだ。
  6. ステルスとは全く見えなくなるわけではなく、探知が大幅に遅れたままで戦闘機ないし爆撃機が目標に到達し、敵の対応の前に現場を立ち去るのが基本だ。
B-2 Spirit bombers at Andersen Air Force Base, Guam. U.S. Air Force photo
  1. 戦術戦闘機の機体サイズはC、X、Kuの高周波帯域に対抗できるように最適化している。単純な物理法則だ。ただし低周波では対応できず特定の閾値で共鳴現象が発生する。
  2. 共鳴現象が発生するのは機体の一部が特定の周波数波長の8倍の大きさを下回るときだ。
  3. 戦闘機サイズの戦術航空機には機体表面のレーダー吸収剤の厚みを2フィート以上にする余裕がないので、特定周波数に最適化する妥協策が施されている。
  4. つまり低周波レーダーのSやLバンドを運用すればステルス機でも探知追跡できるということだ。
  5. 突き止めれば低周波レーダー対抗策には大型のフライングウィング型機材のノースロップ・グラマンB-2や今後登場するB-21レイダーが必要だ。共鳴現象を引き起こす要因がないためだ。
  6. だがUHF、VHF帯域の波長では設計者がいくら頑張っても機体を隠すことができない。反対に技術陣はレーダー断面積を低周波レーダーのノイズにまぎれこませようとする。
  7. 低周波レーダーで火器管制レーダーに「合図」を送ることは可能だ。米国の敵対勢力は低周波照準レーダー開発に乗り出している。だが低周波火器管制レーダーはまだ理論でしか存在せず配備は相当先だろう。
  8. 「ステルスとは探知を遅らせる効果があるが遅延は縮まってきている。レーダー周波数が低周波帯に移っており米ステルス機の有効性が減ってくる」とマーク・ギャモン(ボーイング、F/A-18E/F ・EA-18G主管)が語ってくれた。「早期警戒レーダーはVHF帯域でステルス性能が低下する。このレーダーをSAMレーダーとネットワーク接続すればSAMレーダーが照準を得ようとする」
  9. しかし、低周波レーダーでは「実戦レベル」の追尾はできず、ミサイル誘導が不可能だ。そこで低周波レーダーをこの用途に使う案が出ているが、今のところ実用化のめどはない。
  10. 米空軍大佐マイケル・ピエトルチャがこの解決策を記者がAviation Week & Space Technologyで数年前に執筆した記事で述べていた。だが空軍関係者は同技術に無関心だ。
  11. 「技術的に可能といって戦術的に投入可能とは言えない」とステルス機の経験豊かな空軍関係者が説明している。
  12. 一方で現役のラプターのパイロットから記者は「SAM対抗戦術の詳細は極秘情報」と聞いているが、F-22は現行のロシア製地対空ミサイル装備には十分対抗できる。
  13. シリア上空の実戦でラプターが効果を証明する機会が生まれないよう望むばかりだ。紛争が急速に手におえないほど拡大するのは歴史が証明ずみだ。■


2016年10月9日日曜日

中国国産空母一号艦、完成に近づく---中国専門家による戦力予想は?



空母一号艦を訓練用に使い、二号艦から本格運用したいとする中国海軍ですが、搭載する機材はJ-15しかなく、その他任務を全部ヘリコプターに任せるつもりのようです。当然AEWなど機能は限られますが、中国の軍事戦略が本国カラテの届く海域を「要塞化」して防御することにあるので、有効範囲など限られても構わないと考えているのかもしれません。カタパルト技術の開発も進んでおり、おそらく第四号艦以降に採用になり、空母を囲む戦闘群が複数整備されたときに本格的な戦力になるのでしょう。技術の到達度とは別に中国の軍事情報への関心度(一般チャンネルで米装備など解説する軍事報道が毎日ある)が高いことには注目すべきでしょう。
OPINIONS Expert: China-made aircraft carrier may enter water at year end
2016-09-28
BEIJING, Sept. 28 (ChinaMil) -- 中国初の国産空母の建造中の写真がオンラインで再度現れ、Jane's Defence Weeklyは艦橋部分の据付けが済み完成に一歩近づいたと報じた。
  1. 軍事専門家Cao Weidongは同艦にはアクティブ・フェイズドアレイレーダー(APAR)とともに航空機各種とりまぜ40機ないし50機を搭載すると見る。また将来はレーザー兵器の採用も想定する。
  2. また艦橋設置は艦体建造の最終段階で艤装がこのあと始まると述べている。他国の空母建造では艦橋設置に半年かかっている。「だが我が空母は今年末あるいは来年早々に進水し、ずっと早く完成するだろう」と述べた。
  3. CCTVは海外報道を引用する形で艦橋上層部に長方形構造が二層あり、新型XバンドAPARを設置すると報道した。
  4. CaoはAPARは新型空母のニーズに合致し、中国のIT兵器需要にも対応するものと解説としている。探知範囲が長くなるだけでなく多数の目標を探知できるからだ。
  5. APAR搭載で国産一号艦のレーダー性能は遼寧を凌駕し、戦闘性能の引き上げに貢献するだろう。
  6. Caoは米国等が導入中のレーザーはまだ出力が低く、ミサイル他の破壊は無理でありまだ試験中段階だと指摘。
  7. ただしレーザーが将来の主要兵器開になることは疑う余地がない。発射速度と弾薬運搬搭載量の観点からだ。中国も開発に着手しており、将来は大型艦への搭載が想定される。
  8. 国産空母の40機ないし50機の搭載航空機のうち、J-15が24機ないし32機となる他、早期警戒機、電子攻撃機、ヘリコプターが搭載されると見る向きがある。遼寧が搭載するのはJ-15戦闘機が24機であるので相当の戦力増強となる。
  9. Cao Weigdongはこの数字に同意し、国際一号艦は排水量は中型から大型の範囲で搭載機は最大で50機程度だろうとし、固定翼機は遼寧と同程度と見ている。
  10. ヘリコプターを早期警戒、対潜哨戒、輸送用に使うことが理にかなう。「国産第一号空母は遼寧と排水量が近似し、スキージャンプ式発艦方式が共通し、搭載機数もほぼ同じだろう」とCaoは見ている。■


まだまだ現役、B-52の現状と今後の改修の方向性


まだまだB-52は供用されそうですね。エンジン換装が実現すれば一層その効果を発揮するでしょう。良い投資だったことになりますね。

The National Interest


Why America's Enemies Still Fear the B-52 Bomber

October 2, 2016


9月26日、大統領候補討論会でドナルド・トランプはヒラリー・クリントンから核戦力について聞かれこう答えた。

「ロシアの戦力増強で装備は近代化している。それに対し米国は新型装備配備が遅れている。
「先日の晩にB-52が飛んでいるを見たが皆さんの父親より古い機体で祖父の世代が操縦していた。このようにほかの国に追いついていない」

つまりB-52は老朽機で米空軍が世界から特にロシアから大幅に遅れを取っていると言いたかったのだろう。

でも本当に古い機体なのでは?

B-52ストラトフォートレスの初飛行は1952年で生産は1962年まで続いた。現在運用中のB-52H合計76機より高齢のパイロットは皆無に近い。トランプ発言は「祖父」というところまでは正確であり、B-52乗員の中には三世代続けて同機に搭乗員という家族がすくなくとも一組存在する。

その機体が今でも有益なのかが疑問となっているわけだ。

BUFFのニックネームが付くB-52は当初は核爆弾を上空から投下してソ連を攻撃するのが役目だった。だが地対空ミサイル、空対空ミサイルの登場で想定した任務は1960年代末に自殺行為となり、今でも同じだ。

では何に使うのか、米空軍がまだ運用しているのはなぜか。

B-52は湾岸戦争以降ほぼすべての戦役に投入されている。その理由は何か。

B-52には二つの大きな利点がある。大量の爆弾、ミサイルを搭載できること、遠距離に運べることだ。空中給油なしでも8,800マイルを飛べる。また性能向上用のスペースは機内に豊富にある。

同機は爆弾、ミサイルの長距離配達トラックということか。

防空体制を整備されあt標的にはどうするか。AGM-86空中発射式巡航ミサイルを最大20発を搭載する。核・非核両用の同ミサイルはスタンドオフ攻撃用だ。

だが高価な巡航ミサイルをB-52は発射していない。敵対勢力のタリバンやISISに強力な防空体制がくB-52は高高度を上空飛行できるからだ。

B-52はGPS方式のJDAM誘導爆弾12発あるいはGBUレーザー誘導爆弾を4から10発積んで戦闘地区上空で待機し、近接航空支援の要請を待つことがある。もちろんジェット戦闘機でも同じ仕事はできるが、戦闘機は上空飛行待機時間も限られる。アフガニスタンのタリバン討伐作戦を開始した2001年当時はB-52やB-1が米本土から飛来し爆撃していた。当時は近隣に米空軍が運用できる基地がなかったためだ。現在もB-52はタリバン、ISISを相手に作戦を展開している。

ISISへ絨毯爆撃していると聞いたが

絨毯爆撃では数百から数先発の非誘導型爆弾を投下し標的を爆撃する。無差別攻撃となりそのショック効果は大きい。B-52はこのために最適な機材で500ポンドから750ポンド爆弾なら51発を搭載できる。あるいはクラスター爆弾なら40発となる。イラク軍が砂漠地帯に陣取った1991年の湾岸戦争で低レベル絨毯爆撃を行っている。

ただし今日の空軍は絨毯爆撃には関心がない。空軍が同機を投入するの高密度目標だけだが敵側にそれだけの標的がないのが普通だ。付随被害も発生するので民間人居住区の近隣で実施できない。

BUFFは他にどんな任務に役立つの?

長距離飛行性能は海洋上空の監視飛行に最適だ。南シナ海の広大さと中国が覇権を狙っていることを想起してもらいたい。

B-52には海軍用機材が搭載するセンサーはないが、一部機材にライトニング、ドラゴンズアイの水上監視用レーダーポッド二種類が搭載され水上艦船の識別に使える。また別にAGM-184ハープーン対艦ミサイル8発搭載用に改修された機材もあり、160マイルの射程を誇る。このため水上戦闘でもB-52は威力を発揮できる。

ミサイルトラックとしてのB-52をもう一歩進めて空飛ぶ弾薬庫とする構想もある。その場合対空ミサイルも搭載するだろう。

戦闘機では空対空ミサイル搭載数に限りがある。特にステルス戦闘機でこの傾向が強い。そうなると数の上で優勢な敵との対決で不利だ。そこでステルス戦闘機の特性を活かし、アクティブ電子スキャンアレイレーダーにより接近してくる敵を探知させ、データリンクとネットワーク技術でデータを友軍機に送らせる。「弾薬庫」機としてB-52やB-1に長距離空対空ミサイルを多数の搭載させる構想がある。

現時点では理論にすぎず、制約もある。だがペンタゴンは構想を真剣に検討している。

ミサイル以外にB-52をどう活用できるだろうか。力の誇示で目立つ機材だ。弾道ミサイルとの比較では航空機は核兵器運搬手段として脆弱性が避けられない。だが地上配備、海中配備のミサイルはその存在が見えにくく、、一方でB-52は危険地帯近くへ飛ぶことができる。上空飛行で明白な力のメッセージを伝えることが可能だ。

B-52が南シナ海上空や核実験直後の北朝鮮付近を飛行する様子を伝えるニュースを耳にしただろう。ロシアのTu-95ベア爆撃機がイングランドやカリフォーニア沖合を飛行して嫌がらせをするようなものだが、B-52の上空飛行の方が政治的に大きな意味を有する。

だが機体の金属部品が疲労しないのか。また旧式エイビオニクスやエンジンはどうするのか。

その点は考慮ずみで心配は不要だ。空軍はB-52は2040年までの飛行供用は可能としさらに延長の可能性もあるとしている。B-52の設計が堅固かつ保守的であるのが理由で、その後登場した高性能機よりストレスへの許容範囲が高い。空軍は大規模投資でB-52の飛行性能を維持向上している。

だが搭載エイビオニクスは旧式だ。ニューヨーク・タイムズは油圧系統と配線が旧式でコンピュータも故障が多い旧型のまま機内に搭載されていると指摘している。

そこで空軍は11億ドルでBUFFにCONECTエイビオニクス改修を加え新型ディスプレイ、通信装置、データリンクによるネットワークを導入する。また兵装庫改修で誘導爆弾を追加搭載させる。現在はJDAMなら8発搭載可能だが、小型空中発射おとり(MALD)ミサイルも搭載し敵防空体制を混乱させる他、レーダージャミング装置も搭載する。

B-52のTF-33ターボファンエンジンは効率が劣る。一時間3,000ガロンの燃料を必要とする。そこ空軍はエンジン換装で整備コストともに経済性の向上を検討しているが予算がない。そこで浮上してきたのが民間会社に保守整備を信用払いで委託し、新エンジン換装で浮いた運用経費で費用を賄う支払い方法だ。

欠点はあるものの、B-52は今でもしっかりした仕事をしており、空軍も評価しているのは明白だ。ただし古ければすべてよし、というものでもない。

2015年にB-52一機を事故で喪失した空軍は13百万ドルで有名な航空機の墓場(アリゾナ州)からB-52H一機を代わりに復帰させた。13百万ドルで新型爆撃機は調達不可能だ。(なお、墓場にはB-52Hがあと12機温存されている。)

後継機種はないの?

空軍にはより近代的な爆撃機が二機種ある。B-2スピリット・ステルス爆撃機とB-1ランサーだ。だが両機種ともB-52の後継機種とはみなされていない。

B-2スピリットはステルス機で敵防空網の突破が期待されている。高度能力を持つ敵国に十分有効だが、20機しかない。運行は条件に作用され、飛行整備経費は一時間135千ドルとB-52のほぼ二倍だ。経費とともに搭載燃料・兵装量が少ないこともあり、爆弾トラックとして比較的安全な空域で毎日運用することは考えにくいし、海上監視機としても使いにくい。ただしステルス性能が効果を出すがステルスが外交的な力の誇示の目的には適さないことは明らかだ。

B-1BランサーはB-52と同様の効果が期待できる機体だ。搭載兵装量はより大きく、速度は25%も早く、レーダー探知も困難だ。だが今日の防空体制能力ではステルス機も探知されない保証はなく、迎撃を回避する速度も不足している。そこでB-52より性能が高いとは言え、空軍は同機を防空体制が整った空域に送りたくないはずだ。

そうなるとB-1(愛称ボーンズ)はレーザー誘導弾や巡航ミサイルを遠方から発射することとなり、B-52と同様になる。

B-1Bは高性能だが運用経費は一時間60千ドルとB-52より10千ドルも安い。ただし同機も63機と機材数が少ない。B-52がB-1の不足を補うことのか、爆撃ミッションを中止するのかとなり、このためB-52が今年はじめにISIS戦に投入されたのだ。
だがB-52に未来はあるのだろうか。空軍からB-21レイダーの調達を進めると今年発表が出た。これまで長距離打撃爆撃機と呼ばれていた機体だ。B-21はステルス機でB-2スピリットと形状が似ている。

B-21の設計思想は長距離爆撃機で遠隔地に飛び、敵防空レーダーに探知されずに飛行させることにある。中国、ロシアの低帯域レーダーはステルス機の探知にも有効と言われる。機体はB-2よりやや小さくなるだろう。

B-21の機体価格は5億ドルを超えるとされ、空軍としても新技術に真剣に対応しているというだろうが、ペンタゴンは最終価格でこっそりと交渉中と言われる。

ロシアには「最新性能」があるのか?

ロシアは三機種の爆撃機を運用中だ。高速のTu-22M3バックファイヤー、もっと高速のTu-160ブラックジャック、Tu-95ベアで冷戦時の機体設計だ。ただし、ステルス性能はなく、B-2や今後登場するB-21に匹敵する機材はない。

可変翼Tu-22M3はB-1より速度が70%も早いが兵装と燃料の搭載量を犠牲にしている。スピードが防御策にならないことは実証済みで2008年にジョージアで地対空ミサイルで一機撃墜されている。

巨大なTu-160は可変翼式でマッハ2とB-1よりはるかに高速だが兵装搭載量はほぼ同じだ。極めて高価な機体で製造、維持は大変だ。ロシアは16機を保有しているが大部分は飛行可能な状態にない。B-1同様にレーダー断面積は小さいが、敵防空網の突破は期待できない。

そこでTu-95SMとTu-142ベアがある。ロシア版B-52と言える機体で原型のベアは初飛行が1952年でB-52とほぼ同じ任務に投入されている。またうまく任務を実施している。だが何と言ってもプロペラ推進は低速で騒音がすざまじく、兵装搭載量はB-52の半分程度だ。

そうなると一定数の機材が運用されている唯一の重爆撃機は中国のH-6の120機で、冷戦時のTu-16を改修したものだが、飛行距離・兵装搭載量ともにB-52とは比較にならない。

ではトランプの言う「新能力」とは爆撃機以外のことを指しているのだろうか。ロシアにはたしかに新兵器が多数あるが、空の上で追いつくのに必死だ。Su-35はまだ生産が低調だがF-15より優位だといわれている。だがF-15は1976年初飛行で、Su-35はF-22ラプターには追随できない。

またT-50ステルス戦闘機の開発がある。現在の発注数は12機でラプターの一割にも満たない。米国にはラプターに加えやや性能が劣るがF-35も加わる。

地上兵力技術でロシアが進歩しているのは間違いなく、T-14アルマタ戦車には100両の発注がある。だが今のところはT-72戦車改良型数千両が主力で、米軍が1991年の湾岸戦争で粉砕した戦車の改良型だ。

一方でロシアのミサイルには畏怖させるものあり、これから登場するジルコン水上発射ミサイル、S-400地対空ミサイル、イスカンダル短距離弾道ミサイルが要注意だ。特に後者はロシアが航空機による効果に期待できない中で依存を高めそうだ。またロシアも米国同様に大陸間弾道ミサイルによる核戦力を保持している。

ロシアがここ数年で軍事力を増強しているのは明らかで、経済の停滞とは対照的だ。ただし、米国が2016年に投じた国防予算は597百万ドルに対しロシアは87百万ドルで7対1の差がある。多くの場合にロシアが有望な新技術を開発していても実際には十分な配備をする予算がないというのが実情だ。

そうなると…

B-52の愛称BUFFは「デカくて不格好な太っちょ野郎」という意味だ。

だが外観で判断してはならない。B-52にはセクシーさもステルス性能もなく、敵防空網突破やSAM回避はできないかもしれないが、地球の反対側に大量の兵装を投下することができ、ISISやタリバンの本拠地を壊滅することは可能だし、苦戦する地上部隊の援護にもかけつける。

新型機も同じ任務に投入できるし、より高性能機材も登場するだろう。だがB-52はこの時点でも後継機の必要がないほどの活躍をしている。古くても信頼性が高くしっかり仕事をこなす機体を廃棄する必要はない。■

Sébastien Roblin holds a Master’s Degree in Conflict Resolution from Georgetown University and served as a university instructor for the Peace Corps in China. He has also worked in education, editing, and refugee resettlement in France and the United States. He currently writes on security and military history for War Is Boring.
Image: A B-52H Stratofortress takes off after being taken out of long-term storage at Davis-Monthan Air Force Base, Arizona. Flickr/U.S. Air Force

2016年10月8日土曜日

空母ギャップ----定期大修理が遅延し、米新政権に頭の痛い事態が発生か


空母打撃群一個が下手な国の空軍力海軍力を凌駕する規模ですが、それだけに空母の運用には大きな負担が発生します。そこでお約束の予算削減、国内産業基盤の問題が工事を遅延させています。さらに記事では出ていませんが、新型フォード級空母の就役も遅れる見込みなので、「空母ギャップ」の発生は必至でしょう。来年1月発足の新政権にはつらい状況が生まれそうで、米国の敵対勢力は虎視眈々と様子を見ているのでしょうね。

US Carrier Delays Continue — And Another 'Gap' Could Affect The New Administration

By: Christopher P. Cavas, October 7, 2016
WASHINGTON -- ワシントンで新政権が発足すると、米国に対抗する各国がアメリカの意思を試す動きに出るのはほぼ確実だ。ロシア、中国、イラン、北朝鮮、ISIS、アルカイダが新大統領に圧力をかけ、指導者の資質を確かめようとするだろう。問題が来年発生すれば、新指導層が「空母はどこにいるのか」と尋ねるのは必至だ。
  1. 残念ながら国民が耳にしたくない答えが少なくとも新政権発足直後に出てくるだろう。
  2. 空母USSドワイト・D・アイゼンハワーはペルシア湾を哨戒中で米中央軍で唯一の強力な装備となっている。ISIS勢力をシリア、イラク国内で数ヶ月に渡り空爆したあと、同艦は来年一月にUSSジョージ・H・W・ブッシュと交代する予定だ。アイクはその後ノーフォークへ帰港し7ヶ月間の航海を終える。ここまで長い配備は海軍の目標どおりで、配備がさらに9から10ヶ月と長くなると人員、装備ともに消耗が激しくなる。
  3. だが問題がある。ブッシュの配備は予定より遅れており、保守点検期間が伸びたことが原因だ。ノーフォーク海軍工廠での工期は六ヶ月の予定だったのが13ヶ月になった。その間、乗員と搭載航空部隊は訓練を積み、12月にアイゼンハワーとの交替に備えていた。だが当初の10ヶ月訓練期間は2ヶ月短縮され、さらに4ヶ月削られている。
  4. 海軍当局はブッシュ打撃群は十分な練度を確保しているがこの遅れを取り戻す対応が間に合っていないようだ。
  5. 派遣が遅れたことでアイゼンハワーの哨戒活動を延長する必要が生まれたが、アイクが予定通り帰港していたら中央軍、欧州地域で空母ギャップが生まれていただろう。これはロシア、ISIS、アルカイダ、イランが挑発の動きを示しかねない中でいかにも望ましくない状況だ。
  6. ブッシュ派遣でも太平洋には影響は出ない。太平洋艦隊所属の空母各艦は中央軍任務を大西洋配備の打撃群に任せ、西太平洋や南シナ海に専念できるようになったためだ。
  7. ブッシュの大修理が大幅に遅れた原因には海軍工廠が予算削減の影響で人員を減らしている事があり、太平洋、大西洋の各部隊にも影響が今後出てくる。10月5日にUSSニミッツがピュージェットサウンド海軍工廠(ワシントン州ブレマートン)で20ヶ月の工事を完了し海上公試に出発した。これも予定より4ヶ月の遅延となった。ただし遅延現象が西海岸配備の空母に今後も影響を与えるかはまだわからない。
  8. この問題は新しい現象ではない。2014年10月に艦隊部隊本部からアイゼンハワーの大修理は2013年から2015年までの予定と発表していた。またUSSハリー・S・トルーマンがアイクが使えない間をカバーするとしていた。アイゼンハワーの再就役は結局2016年6月1日になった。
  9. 海軍工廠は四ヶ所あり、ノーフォーク、ピュージェット・サウンド、パールハーバー、ポーツマスの各所で海軍はここ数年間問題があると訴えている。上層部は予算削減で四箇所全てで作業員が減員されているとし、予算手当も遅れがちだという。そうなると艦隊は悪循環に陥る。作戦テンポが高まると艦艇は定期点検修理を先送りする。海軍工廠にやってくる艦船は予定より作業量が増えるので他艦の作業がそれだけ遅れることになる。訓練計画も影響を受け、艦の投入時期が数ヶ月遅れる。
  10. 海軍海洋システムズ本部(NAVSEA)が海軍工廠の管理元であるが、この問題の存在自体を認めていない。
  11. 「ブッシュの供用再開が遅れた大きな理由は海軍工廠の作業量が能力を超え、作業で難題に直面したため」とNAVSEA広報官ローリー・オコナーは語る。
  12. 「海軍工廠四ヶ所の作業量はここ数年増加傾向にある。海軍は人員増を量ったが作業量の伸びに追いつかず、ノーフォーク海軍工廠は優先順位をつけて投入資源を割り振った結果、人員不足が発生し作業が日程から遅れた」
  13. 同様の状況がピュージェット・サウンドでも発生しUSSニミッツに影響が出た。
  14. 「ニミッツの場合も工廠の対応能力不足で影響が出た。配備期間が延長され当初予定になかった作業が必要となったこともある」(オコナー)
  15. オコナーは四ヶ所で人員増を図っているという。それによると2013年以来、「海軍はおよそ14千名もの新規作業員を採用した」としている。
  16. ノーフォーク、ピュージェット・サウンド両工廠の民間人作業員は残る二箇所の二倍程度の規模となてとり、2013年から増加している。ノーフォークでは1,425名採用して10,542名に、ピュージェット・サウンドでは2,549名増で13,425名になっている。
  17. ただ人員増で問題が解決するほど簡単ではない。「採用しても訓練が必要」とオコナーも認め、「経験を積むのには時間が必要」という。
  18. そのため各海軍工廠では原子力潜水艦の定期修理作業を民間に外注することとし、これまで原子力関連の大修理はすべて海軍工廠で行ってきたのと大きく変化している。実施はジェネラルダイナミックスのエレクトリックボート事業部(コネチカット州グロートン)およびハンティントン・インガルス・インダストリーズ(HII)のニューポート・ニューズ造船(ヴァージニア州ニューポート・ニューズ)で四隻が作業中あるいは今後作業を開始する。
  19. 大修理の遅れは作業内容の困難度だけが理由ではない。他にも計画作業の問題もある。総じて各海軍工廠は年間実施計画を立てて、必要な作業内容を把握し、工程を編成し、必要な部品資材を先に発注し、作業員を確保する。ここで人員減が計画を狂わせる要因となるし、熟練度が想定より低いことも影響する。
  20. ノーフォークではブッシュの2015年から2016年にかけての作業を予定していた。一部筋によれば計画の一部がHIIに移管されて問題が発生したという。HIIでも問題が発生していたのだとする。
  21. HIIはジェネラル・ダイナミクス傘下のNASSCOとブッシュ工事の相当部分を請負ったが契約は個別作業別だったという。
  22. だがオコナーによればノーフォーク工廠が一貫して工事を統括していたとする。
  23. ノーフォークでは「ブッシュの工期計画作成を2014年に開始し、管理していた」とオコナーは説明。「HIIはじめ民間企業がノーフォークの作業量の一部を受け持ち、個別具体的な作業を担当した」
  24. HIIは23.8百万ドル契約を2015年6月に公布受け、「原子量推進系統はじめ複雑な改修作業を受け持ったが工期管理は対象外だった」とオコナーは説明している。
  25. GD NASSCOは42.4百万ドル契約でブッシュ工事を請け負った。
  26. 海軍工廠が空母工事の完了で遅延し2016年までずれ込んだことで艦隊戦力本部が訓練期間を短縮する選択をしたのかは不明だ。
  27. 艦隊戦力本部(USFFC)には空母部隊を緊急時に増強することを図る案があり、最適艦隊即応案 Optimized Fleet Response Plan (OFRP) で空母打撃群の配備準備に必要な装備、部隊を調整するとしている。
  28. ただUSFFCはブッシュの工事状況については同艦がノーフォークを出港した7月23日以降沈黙したままでそれまで喧伝していたOFRPが機能したのかも言及していない。海軍筋によれば8月に会議がありブッシュ打撃群の今後を検討したというがその結果は一切公表されていない。
  29. USFFC,NAVSEA、ノーフォーク工廠はブッシュ大修理期間中に定期的に連絡していたはずと同筋は説明している。ただ大修理完了後の配備日程ははっきりしていない。USFFCがブッシュ修理の延長でも状況に対応できなかったのではとの観測は否定しているが、関係者はこの問題を公に検討することを拒否している。
  30. ブッシュは洋上訓練ののち10月3日にノーフォークに帰港している。海軍筋によれば同艦の一部不具合がまだ解決していないという。次回長期訓練と合同訓練艦艇演習がないと乗員と艦上装備の即応体制は認証されず、航空部隊や随行する水上艦艇でも同様だ。
  31. 海軍は同艦が空母派遣のギャップができないように派遣してアイゼンハワーと交代できるのか明言を避けている。非公式ながら消息筋によればブッシュは2017年早々には派遣可能となるというが、アイゼンハワーの派遣期間を延長する決定はまだ出ていない。■

2016年10月7日金曜日

なぜこの時期に? 憶測を呼ぶ米空軍の模擬核爆弾投下演習

たしかにこの時期に模擬弾とは言え核運用の実験をおおっぴろに行うのは腑に落ちません。記事はロシアを意識とありますが、実は北朝鮮ではないでしょうか。まず北朝鮮の核開発能力を奪う【外科手術」攻撃を行うのではないでしょうか。

The US Air Force Just Dropped Two Fake Nukes

A B-2 stealth bomber drops an inert B61 nuclear bomb.
  • BY MARCUS WEISGERBER
OCTOBER 6, 2016

米空軍所属のB-2爆撃機二機編隊が700ポンドの模擬核爆弾をネヴァダの砂漠に投下し、このたびペンタゴンが情報を開示している。

ペンタゴンの10月6日付け報道資料では「今月始めに」B61核爆弾の模擬弾2発が投下されたとある。B61は1960年代から配備の核爆弾だ。うち一発は「地中貫徹弾」で地下目標物を標的にしたもの、もう一発はB61の戦術用途改良版だった。ともに実弾は搭載していない。

今回のテストの目的は実戦に近い状況で信頼性、正確性、性能のデータを入手することにあったと国家核安全保障局(エネルギー省の一部で核実験を担当)が明かしている。「このようなテストは兵器体系の供用期間延長とともに実効性を確認する一貫として行っている」

だがなぜこの時期に行ったのか。ロシアとの緊張がこれまでより高まっていることが関係しており、ロシアとの核軍拡競争が始まるのではとの恐れが増えている。今週始めにロシア政府は市民を対象に核戦争想定の大規模演習を実施すると発表していた。

同時にペンタゴンとしては配備後相当の期間が経過している核兵器を運搬手段と合わせて更新したいのだろう。総額数千億ドルになるとみられる。この内空軍は新型大陸間弾道ミサイルと核巡航ミサイルの必要性を訴えており、空軍協会主催の会合ではボーイングがミニットマンIII の次期ICBMを売り込んでいた。

新型ICBMを巡っては論争があり、空軍は地上配備戦略抑止力と呼称するがウィリアム・ペリー元国務長官は不要だと主張している。巡航ミサイルには長距離スタンドオフ兵器との名称がついているが、B61の改良型が2020年代に供用開始となることで無駄だとの声が出ている。

空軍は8月に各社宛に新型ICBM及び新型核巡航ミサイルの技術提案を求める通知を送った。その際に空軍戦略装備部門の核兵器センサー司令官スコット・ジャンソン少将は長距離スタンドオフ兵器を「米核抑止力体系で不可欠な装備」と表現していた。

空軍はノースロップ・グラマンへ新型長距離ステルス爆撃機B-21レイダーの生産契約を交付しており、将来的には核兵器を搭載するはずだ。海軍はコロンビア級原子力潜水艦を建造しオハイオ級に替えて核ミサイル運用を狙う。

新型核兵器体系をすべて整備すれば今後20年間で3,500億ドルから4,500億ドルの支出規模になるとの試算がある。■

もし戦わば⑥ 日中開戦と米軍介入のシナリオ


このような事態が発生しないためにも適正な抑止力が必要であり、日米同盟をしっかり機能させなければなりません。技術面では中国等の装備を一夜にして無意味にする新装備が登場すれば一気に安全保障の地図が変わるでしょう。でもその前に北朝鮮関係がきな臭くなってきたのが気になりますが。


This is what a war between China and Japan would look like

Oct 4, 2016 3:21:09 am


日中両国の間には長く激しい対立の歴史があり、深い不信が根付いており、近年は両国は西太平洋の二大大国として一歩間違えば第三次大戦の引き金になりかねない事態に向けた対応準備をしている。
東シナ海をめぐり両国が武力衝突する危険性をDefense Oneが9月に報じているが、両国が戦闘状態に入ればどうなるのか。
Japanese soldiers with the Japan Ground Self-Defense Force move the F470 Combat Rubber Raiding Craft off the beach during a beach raid as part of training for Exercise Iron Fist 2016, at Marine Corps Base Camp Pendleton, Calif., Feb. 24, 2016. Iron Fist is a five-week-long exercise focusing on advanced marksmanship, amphibious reconnaissance, fire and maneuver assaults, staff planning, logistical support and medical knowledge sharing, fire support operations, including mortars, artillery and close air support, and amphibious landing operations. (U.S. Marine Corps photo by Lance Cpl. Ryan Kierkegaard, 1st Marine Division Combat Camera/Released)
陸上自衛隊隊員がF470戦闘強襲用ゴム製舟艇を動かす。アイアンフィスト2016演習の一貫としてカリフォーニア州の海兵隊キャンプペンドルトンで。Feb. 24, 2016. (Photo: U.S. Marine Corps Lance Cpl. Ryan Kierkegaard)
中国の軍事力は日本を規模、実力ともに上回っている。常備軍2.3百万名と予備役2.3百万名が控え、航空機3千機、戦車装甲車両14千両、艦船714隻を保有する。
その中で中国軍のプレゼンスは日中が衝突しそうな箇所全てで増強されている。南シナ海含む太平洋は日本経済の要だ。島国の日本は中国が通商路を遮断すれば即座に食料他資源が枯渇する。
chinese tanker soldier
人民解放軍の戦車兵。瀋陽の戦車訓練施設にて。Mar. 24, 2007. (Photo: U.S. Department of Defense Staff Sgt. D. Myles Cullen)
だが日本は傍観しているわけではない。祖国防衛のため300千名が迅速に集結するだろう。また戦車装甲車両3.5千両、航空機1,590機、艦船131隻が支援する。中国の数字には及ばないとはいえ、本国防衛では相当の戦力であることに変わりはない。
中国が本気で日本を封鎖しようとした場合に日本に不幸なのは海上交通路を維持する軍事力がないことだ。だが日本には切り札があるから比較的小規模の軍事力の維持で十分なのだ。米国との相互防衛協定である。
日本軍の背後にはアメリカがおり戦闘が長期化すれば米国が参戦する。米軍事力は世界最高水準であり遠征戦に向け訓練を積み重ねている。
南シナ海で戦闘が発生すればこの遠征能力が鍵となる。米海兵隊と海軍は海兵遠征部隊を重要地点に送り込むだろう。遠征部隊は海兵隊員数千名規模で猛烈な戦闘力を発揮するだろう。さらに兵站活動と装甲車両や航空戦力が支援に回る。
What-you-need-to-know-about-North-Korean-threats
第22海兵遠征部隊が海岸強襲作戦を演習中。Feb. 2014. (Photo: U.S. Marine Corps Sgt. Austin Hazard)

米海軍は空母打撃群一個を派遣し、追加航空支援で海兵隊を助ける。さらに電子戦装備、監視偵察能力含む攻撃力は相当なものだ。
一方で米陸軍は4千名の旅団規模戦闘チームをアラスカから戦略拠点に空輸し、海兵隊の増派部隊とするか中国軍の侵攻の前に拠点確保させるだろう。
空挺部隊は空軍と共同で敵占領下の航空基地を奪取し、防衛隊を掃討し施設を米軍作戦に活用する道を開くだろう。

soldiers marching in Alaska
第25師団第四旅団戦闘チームの落下傘隊員がアラスカでの演習を終え集合地点に向かう。Aug. 2016. (Photo: U.S. Air Force Justin Connaher)

米陸軍はアラスカ駐留部隊の第25師団第四旅団戦闘チームを縮小する方針だったが、北極地方および日本、韓国への脅威が高まっていることもありそのまま保持することに方針転換した。背後に中国の脅威があるのは明白だ。
だが中国は守りを固めており米軍の介入は高い代償を求められるだろう。まず、南シナ海の人工島を軍事化しており、島しょ間の支援網を整備している。中国が防御を貫徹すれば攻撃側は相当の被害を覚悟しなければならないだろう。
それでも日米両国は勝利を収めそうだ。少なくとも今後数年間の間は。た出し中国が軍事支出を引き続き増強し、産業スパイ活動も続けた場合、中国が米軍の実力にどんどん近づいてくる。そこでRAND研究所は2025年に米中開戦となった場合には両陣営とも完全な勝利は得られず、相当の被害を被ると予測しているのだ。
戦争にはなるはずがないとの楽観意見がある。ピュー研究所の世論調査では日中両国が深い相互不信があるのがわかるが、両国の貿易関係は大規模だ。加えて両国の軍事力は相当なのでり武力衝突は相当の流血の事態となり得るものより失う物が大きく上回るはずだ。■
筆者は元米陸軍落下傘部隊員で第82空挺師団の第四旅団戦闘チームに所属していた。


2016年10月6日木曜日

★そうりゅう級潜水艦がオーストラリアに採用されなかったのは航続距離の不足が理由なのか



なるほどオーストラリアの求めた長距離性能が現行型では不足して、居住性でもケチを付けられていたわけですか。でもそんなことはオーストラリア版改修設計で対応できていたはずなので、選外となったのは別の理由があるのでしょうね。

The National Interest

Why Japan’s Soryu-Class Submarines Are So Good

October 1, 2016

  1. 第2次大戦で日本が得た教訓はふたつ。そのうち自ら開戦すべきでないという教訓はしっかりと生きているようだ。もうひとつが戦時中の連合国による海空の封鎖体制で日本は飢餓一歩手前まで追いやられたことだ。資源に乏しく耕作地も限られた日本にとって次の戦争を生き残り、海空の交通路を確保することが必須であり、そのため日本は第一級の海空部隊を保持する必要がある。
  2. 戦後の日本潜水艦部隊は世界有数の実力を備えるに至っている。海上自衛隊の潜水艦部隊は22隻までの潜水艦を保有を許され、隻数も世界有数の規模だ。すべて国産で三菱重工業と川崎重工業が神戸で建造している。
  3. 日本の潜水艦は反復建造が特徴で新型潜水艦がほぼ20年サイクルで現れるまでは既存型の建造を続ける。現在のそうりゅう級はおやしお級のあとに出現し、二型式だけで潜水艦部隊を構成する。そうりゅう級は自動化を高めたのが特徴で、乗員数も幹部9名科員56名と以前のはるしお級から10名の削減が可能となった。
  4. そうりゅう級は潜行時排水量4,200トンで9隻が在籍中で戦後日本最大の潜水艦だ。全長275フィートで全幅はほぼ28フィードである。航続距離は6,100カイリで最大深度は2,132フィートと伝えられる。そうりゅう級の特徴にX型尾部があり、一説では海底近くでの操艦性を高める効果があるという。このため浅海域で運動が優秀となり、日本への侵攻ルートに想定される主要海峡を意識しているのだろう。
  5. 各艦には電子光学式マストとZPS-6F水上監視・低高度対空レーダーを備える。ただし潜水艦として主センサーはソナーでヒューズ・沖電機によるZQQ-7ソナーは艦首のソナーアレイと、艦側部につけたアレイ四本活用する。また曳航式ソナーアレイも装備し艦尾方向の探知に活用する。
  6. 533ミリ魚雷発射管6門を艦首につけ、武装は89式大型ホーミング魚雷で射程27カイリあり、実用上は2,952フィート深度で発射できる。魚雷発射管は米国との強い関係で共通化しており、そうりゅうはUGM-84潜水艦発射方式のハープーンミサイルも運用できることになる。Combat Ships of the World では各艦は兵装30本の搭載可能と未確認のまま掲載しており、旧型の20本より多くなっている。
  7. また自艦防御装備も充実し、ZLR-3-6電子対抗装置および3インチの水中対抗装置発射管二本で音響装置を放出する。パッシブ防御として艦体は音響タイルで覆い、艦内騒音の漏出が減るとともに敵のアクティブ・ソナーにも効果を発揮する。
  8. 推進方式でも注目を集める。浮上時13ノット、潜行時20ノットを出す。動力には川崎重工製12V 25Sディーゼルエンジン12基と東芝製タンデム配置電動モーター一式を利用する。静粛潜行にはスターリングV4-275R Mk大気非依存推進システムをスウェーデンのライセンスで搭載し、最大2ノットでの潜行中移動が可能だ。最終号艦ではリチウムイオン電池の搭載が噂されている。
  9. ただし、そうりゅう級も完璧とは言い難い。一つの問題がオーストラリア潜水艦調達競合で明らかになった。作戦航続距離が比較的短いことだ。6,100カイリという性能はもともとそうりゅう級が日本近海の防衛任務の想定であったためだ。
  10. オーストラリア向けそうりゅうはオーストラリアから台湾まで3,788マイルを移動する想定のため途中一回は燃料補給が必要となる。おそらく2回になっていただろう。オーストラリア向け商戦では乗員の快適度ならびに航続距離を延長するため全長を6メートルないし8メートル伸ばすことになっていた。ただしオーストラリア向け仕様改修は日本に逆効果だっただろう。
  11. 長距離ステルス性能、センサー性能、最新型魚雷やミサイルを組み合わせるとそうりゅう級は高性能ハンターキラーになる。ただし特化したハンターキラーでオーストラリアにとってはいささか取扱に困る艦となっていただろう。
  12. 後継艦の建造が今後数十年に渡り始まると見られるが、日本は無人水中潜行機の可能性を模索しており、水中通信や水中無線電力送電技術も検討いているのだ。そうりゅう級の後継艦がどんな形になるのか注目したい。■

Kyle Mizokami is a defense and national security writer based in San Francisco who has appeared in the Diplomat, Foreign Policy, War is Boring and the Daily Beast. In 2009 he cofounded the defense and security blog Japan Security Watch. You can follow him on Twitter: @KyleMizokami.
Image: Japan Maritime Self Defense Force submarine Hakuryu arrives at Joint Base Pearl Harbor-Hickam for a scheduled port visit. Wikimedia Commons/U.S. Navy