2021年1月3日日曜日

2021年の米軍③米海軍 水上艦艇、潜水艦、航空機、ミサイルの動向。2021年は大きな変化の開始年になりそうだ。

 

 

2021年度の米各軍の展望を見るシリーズ、今回は米海軍です。海軍は大幅な戦力増強をめざしましたが、355隻体制の追求は高価格と無人艦艇など新技術への注力のため実を結ばず、新構想では艦艇数は減らし、無人装備を大きく伸ばすことに軸足を移しています

まとめ

  • 2021年度の海軍現役人員は5,300名増で347,800名体制となる。艦艇数は306隻に増加するが中身は沿海域戦闘艦(LCS)が多く加わるため。海軍は引き続き艦艇増強をめざす。

  • 355隻体制の実現は実施不可能となった。経費増が原因。大型艦、高額艦艇を重視する姿勢に批判が集まってお理、特に空母が批判の的だ。無人艦艇や水中装備が十分でないというのだ。

  • 海軍単独で実行可能な構想が出てこないとわかるとエスパー国防長官が引き継いだ。

  • 10月7日にエスパー長官は「500+」隻将来像を「常時対応可能で回復力にとみ優位性ある戦闘部隊」と表現した。

  • 空母はじめ大型水上艦 (LSCs) を削減し、無人艦艇、潜水艦追加建造、小型水上艦の建造費用に当てる他、小型揚陸艦を新たに建造する。ただし、詳細の多くは不明で現実的にはトランプ大統領による2022年度予算提案に盛り込む必要がある。

  • 将来の艦隊像で海軍は国防長官と異なる解釈をしているようだ。

  • 建造価格が課題だ。新しい艦隊構成は355隻で変わりがない。エスパーは海軍に対し内部財源を見つけ、国防総省を横断的にさがすように指示した。

  • 海軍航空部隊は有人機が中心で、水上艦水中艦部門と対象的だ。

  • 海軍が隻数にこだわるのは危機対応で海軍への要望が高いためもあり、同盟国協力国との関与度も高い中で域内対立が続いていることもある。

2021 年度の米海軍兵力

新規募集、任期延長が好調で現役隊員規模は予算上より高くなる。

海軍の人員規模は増減を繰り返し、2002年度が383千名と最高、2012年が318千名で最低となった。ただし、人員数は順調に増えたものの、9/11前の水準にまだ届かない。乗組員の規模は艦艇数にほぼ追随しているのが図2でわかる。

現役隊員数は成長を続け、2025年度に349,100名になる予測だが、従来の予測と異なり、ここで頭打ちなる。

海軍予備役は長期的に減少傾向で、その他軍の予備役とは異なる。2014年以降はおおよそ安定しているが、2025年度の海軍予備役は58千名まで縮小する。長期減少傾向は海軍予備艦艇、予備機材の廃止が原因で、引き続き残る装備は補給支援用が中心となる。

文民は1,700名増となる。海軍もDoD同様に文民の役割が即応体制維持に重要と見ており、施設運営や保守管理面での役割を期待している。

 

2021年度以降の艦隊規模

艦艇数は縮小傾向が続いていたが、ここに来て新規建造艦が編入し増加に転じている。なかでも沿海域戦闘艦 (LCSs) とDDG-51級駆逐艦の存在が大きい。2020年度末時点の297隻が2021年度末には306隻となる。

艦艇数が減ったのは大型高価格艦艇を調達してきたためだ。トン数でみると今日の艦隊規模は1988年の54%相当とわかる。DDG-51フライトIIAは排水量9,700トンで1980年代のチャールズ・F・アダムズ級の二倍、第二次大戦時のフレッチャー級駆逐艦の四倍程度だ。DDG-51は第二次大戦時の巡洋艦の大きさで、このサイズにより兵力が強化されている反面、大量確保できない。

 

艦艇動員の要望が一向に減らない

 

運用中の艦艇数は平均100隻程度とこの30年間で変化はないが、海軍保有の艦艇数は減っている。冷戦終結後にヨーロッパへの出動波形視されてきたがここに来て需要が増えている。中央軍は空母部隊のプレゼンスを引き続き求めている。大西洋方面の対応として第二艦隊司令部がノーフォークに再発足した。

現行の艦艇数では各地域司令部の要望の半分しか満たせないと海軍は主張している。また各地域の要望が投入可能な艦艇規模を超えることがある。

このため海軍の規模が任務に対し過小との懸念が生まれ、規模拡張の動きが出ている。

他方で国防戦略方針(NDS)は大国間戦闘に焦点を当てており、ハイエンド装備に特化し、戦力拡張は二の次とし日常レベルへの対応は減らすと記述している。

 

355隻態勢の挫折

トランプが大統領選挙候補時に350隻体制を主張し、2016年に当選したことを受け、海軍は早速兵力評価を行い、355隻整備を目標に据えた。

2014年の目標308隻に対し、355隻目標では、潜水艦(18隻増)、大型水上艦 (LSCs) (16隻増)が目立った。既存で実証済み艦設計を中心とし、新規艦は当面採用しないとあった。その狙いは短時間での建造であり、開発に伴うリスクや遅延を避けることにあった。

355隻目標は大統領議会双方が支持した。

ただし、355隻目標は頓挫した。理由に戦略と予算がある。戦略面では無人艦艇を想定せず、大型で高価格の艦艇ばかりに注目し、西太平洋想定の分散作戦戦略と一致していなかった。

もう一つが予算だ。2020年度の30年間建艦案では毎年203億ドル支出が2024年度まで続き、2024年度の先は260億ドルから280億ドルを必要とした。だが議会予算局(CBO) は年間310億ドル必要と算出し議会調査局も同意見だ。

海軍は艦隊規模と予算のギャップを埋めるため既存艦艇の供用期間を5年ないし19年延長して対応する検討をした。これまでは予算を浮かすため艦艇を早期退役し、新型艦建造を進めており、搭載兵装が旧式化する懸念もあった。さらに供用期間の延長にも予算が必要だ。

2019年秋から2020年冬にかけ海軍は2021年度の30年間建艦案の作成を試みるも失敗した。制約条件が多すぎた。

  • 海軍が予算増を狙うと他軍がすぐ反発する

  • 無人艦他も隻数計上に含める変更を海軍が提起したが、議会は海軍艦艇数を減らす口実と警戒している

  • 海軍から355隻目標の変更提案があったが、原案は大統領承認を受けており変更は簡単ではない

  • そこで別方面で予算節約し、建艦に流用する提案をしたが実施は容易でないとわかった

実行可能な解決策が見つからず、海軍の官僚的対応を批判したエスパー長官が戦力整備案を肩代わりすることになった。

エスパー長官による戦力評価

DODは2020年夏に案を発表するとしていたが、数回に渡り延期し、議会で懸念が広がった。最終的に10月7日にエスパー長官より将来の艦艇戦力像が発表され、「2045年の戦闘部隊」の表題で大筋のみに触れたが、詳細は触れず、口頭発表の裏付け文書は出ていない。

エスパー長官は海軍内部から情報を入手し、ハドソン研究所の報告書も参照した。

エスパー長官は500+隻規模を想定し、有人無人艦艇を含めた。また「2035年より前に355隻体制を実現する」とした。

エスパー長官は経費を示しておらず、追加財源が必要と認めているが、レーガン時代並の建艦費用を求めている。予算は他軍から確保するのではなく、海軍内部およびDOD諸経費の節約で確保する。

CSISはこの構想で年間285億ドルが必要と試算した。(小型艦や改修費まで含めれば306億ドル)想定規模の建造数となると短期的にこれ以上となる可能性がある。小型かつ安価艦艇の調達で発生する節約効果も隻数増加で打ち消される。

この変化が姿を現すまで数十年かかる。更にまだ構想段階に過ぎない。2022年度予算に反映し5カ年計画に取り入れる工程が控える。ホワイトハウスが同構想を支持しても、次年度予算提案に採択する必要がある。

下表は長官の見解や報道内容からまとめた。「2021年度以降の艦隊像」で艦種別の説明とともにエスパー提案の内容をまとめた。

2021年度以降の艦隊像

将来の艦隊像の理解は2021年度予算要求からスタートすべきだ。大統領の予算要求では21年度に建造する艦はわずか7隻となっている。コロンビア級潜水艦1、SS-774潜水艦1、DDG-51級駆逐艦2、FFG(X)フリゲート艦1、大型強襲揚陸艦1、補助艦艇1である。通例で議会が法案可決までに追加する可能性はあり、潜水艦追加が最も可能性が高いが、2021年度予算は例年より建艦予算が低水準だ。

ここまで低水準になっている理由として海軍の建艦予算勘定が2020年の240億ドルから2021年度に199億ドルに削減されていることがある。この理由として核兵器関連予算の管轄がDODからエナジー省に移管された際に海軍関連予算が削減されたことがある。

5カ年計画では年間平均の建艦数は8.4隻とあり、2020年度予測の11隻から下がっている。

 

表3で建艦構想と供用期間のちがいで艦艇数を試算している。今後の建艦ペースは変化するとしても試算から目標の達成可能性が見えてくる。

試算から355隻は実現しないことがわかる。300隻も無理だ。供用期間を延長しても336隻に達しない。供用開始後30年から35年で艦艇を退役させるのは搭載兵装が旧式化するためもあり、供用期間延長で意味のある戦力維持が可能か疑問も残る。35年供用と仮定すると355隻達成には毎年10.1隻の新規建造が必要だ。

朗報もある。コロンビア級SSBN及び新型FFG(X)を除くと建艦事業は連続実施されており、大きな問題も発生していない。(フォード級空母で弾薬運搬用昇降機が作動する前提)このため海軍は2000年代のフォード級空母、LCSs、DDG-1000級で直面した建艦事業の管理能力を問われる事態は回避できそうだ。

ただしこの安定も新型艦種の調達がはじまれば保証できなくなる。

近未来のリスク要因は艦艇を大量に早期退役させ予算を確保し、新型艦を少数建造する場合だ。この場合は最悪の状況が想定できる。高コストで隻数が少数となることである。

 

無人艦艇

無人艦艇からはじめるのは艦隊にとって重要だからではない。試験段階を卒業した装備は皆無で、新規の戦力になるからであり、将来の艦隊像で無人運用技術が中心になるからである。

無人艦艇は水上、水中含め各種が存在し、構想段階から実用化一歩手前の試作型まで多様だ。ただし、制式採用で一定数建造する仕様は皆無だ。無人艦艇を今後どう運用するか、ネットワークで対応できるか、無人水上艦(USVs) をどこに配備するかすべてが未解決だ。

海軍は大国間戦闘を想定し、無人艦艇・装備各種に攻撃力を与えることで脆弱性を回避する構想だ。無人艦艇・装備は有人装備では危険すぎる、あるいは単調すぎる任務を肩代わりし、有人艦は危険度が低いあるいはストレスが低い地点に配備できる。

海軍の目指す無人艦艇・装備に三種類を想定する。①大型USV ②中型USV ③特大型水中艦 だ。表4で調達案を示した。予算確保は従来と異なり、あくまでも迅速調達をめざす。通常の建艦勘定の対象装備は皆無で、RDT&E予算が使われるのはあくまでも試験艦であるためだ。その他調達勘定でも予算がついているのはセンサーとしてであり、兵装としてではない。

無人装備が正規事業になっておらず、予算も正式化されていないのはエスパー構想で大規模予算投入するとあるのと不一致だ。海軍関係者は無人装備が具体的に予算計上されるのは2022年度予算以降とする。

 

大型艦(1,000−2,000トンの海防艦サイズ)はセンサー機能とともに攻撃機能を有する。中型艦(500トンの警備艦程度)は試作段階でセンサーのみ搭載するが、事実上は消耗品扱いの偵察機材として攻撃艦に情報を渡すのが役目だ。無人艦配備でLSCsの需要が減ることに注意されたい。

議会は無人装備構想を支持するものの、中核技術が成熟する前に調達する海軍の姿勢には懐疑的だ。

USVsはサイズで制約がつく。大型艦は複雑すぎるリスクがあり、遠隔運用が不安だ。小型艦は沿岸あるいは港湾内では適度だが、外洋での運用には不適となる。

無人艦で成約になるのはこれと別に非戦闘任務の実施ができないことで、同盟国友邦国との共同作戦や人道援助任務のほかグレイゾーン対応もできない。

図9が海軍で計画中の水中無人装備 (UUVs)を示す。こみいった議論の余裕がないが、要点は水中装備は有人潜水艦の補完であり、代用にならないことだ。このため導入は容易である。装備の多くが小型で魚雷型の偵察装備だ。

大規模な装備が特大型水中機(XLUUV)で50トンの小型潜航艇でモジュラー式ペイロードベイで多様なミッションをこなす。追加調達が2023年度から始まるが、その他調達勘定での調達で、通常の建艦勘定ではない。

 
空母

空母部隊の規模が海軍戦力の構造と予算を以下2つの意味で決定する。空母と護衛艦艇で建艦費用の大部分が使われており、空母に航空機を配備すれば航空部門の予算が必要だ。

議会は作戦投入可能空母を最低11隻要求している。2016年の海軍戦力構造評価は12隻を目標としたが、実現はほぼ不可能なのは空母建造に必要なリードタイムが理由だ。

エスパー長官は8隻から11隻と幅をもたせたが、数は下方になるとした。報道では長官スタッフが9隻を推挙したとある。ただし、作戦部長ギルディ海軍大将は「スーパー空母の規模に変更はない」としており、国防長官と海軍で見解に違いが生じている。

空母批判が根強いのは高コストと脆弱性が原因だ。専門家の多くが大型空母を過去の遺物と見ている。下院軍事委員会は「大型空母一隻の予算を無人航空機多数に流用すべきだ」と提起していた。

ただし危機対応や域内紛争で空母が目に見える形の効果を示していることには支持の声が多い。議会の後押しもあり、空母建造元ハンティントンインガルス工業がきわめて好条件を出したため、海軍は2019年1月に空母二隻の調達に踏み切った。同時に二隻調達すれば空母建造費用を10年近く固定する効果が生まれる。

大型原子力空母の建造継続に組織内、政治、産業界の要望があり、海軍はくりかえし旧型艦の早期退役を提案しており、供用期間延長の動きはないが、今後も同じ提案をくりかえしそうだ。ただし、議会はUSSジョージ・ワシントン (CVN-74) 、USSハリー・トルーマン(CVN-75)の提案を却下するや海軍は早々に引き下がっていた。旧型艦を処分して新型艦を調達する構想は正当化できない。さらにこの方式は空母調達の高額化を進めることになる。供用期間途中で一年運用を延長するほうが新型艦建造で得られる一年よりずっと安価だ。

図10で5年おきに原子力空母建造を継続した場合を想定している。(5年とは海軍用語の『中央値』である。予算は8年間分あるためだ)だがニミッツ級空母三隻を退役させるのが前提だ。議会がこれを拒否した場合、空母部隊は2020年度水準でとどまる。海軍は建艦間隔を伸ばす提案も可能だが、空母推進派は建造減速に反対してきた経緯がある。

「軽」空母構想 大型CVNより小型の空母構想はずっと残っている。最近ではRANDの研究で軽空母の選択肢が有望とされている。ジョン・マケイン上院議員も2017年にアメリカ級ヘリコプター強襲揚陸艦(LHA)をもとにした小型空母を提案していた。2019年にトーマス・モドリー次官補(当時)が130億ドルかかるフォード級は「維持不可能」とし、小型空母の選択肢を提示していた。

エスパーの将来海軍構想では軽空母を最大6隻そろえ、CVNスーパー空母の補完にあてる。USSアメリカを「モデル」とする。CSISの分析では軽空母はヘリコプター空母の改修で実現でき、新規建造は不要としている。現時点でヘリコプター空母は11隻あり、揚陸作戦に対応しているが、飛行甲板はF-35Bには十分な広さがあり、戦略思考家はかねてから空母への転用案を提案しており、兵力投射や制海任務に投入できるとの意見が出ていた。

海軍作戦部長ギルディ大将が軽空母を「将来の航空戦闘艦」と述べ混乱に輪をかけた。同大将は2045年時点の前提で専門設計の艦としてエスパー長官が想定の近未来艦と全く異なる構想だった。

 

大型水上戦闘艦

大型水上戦闘艦(LSCs)とは駆逐艦・巡洋艦を指す。これまで艦隊の中心となってきた艦種だ。ただし、表8で示したように無人艦艇の導入でlSCは小規模になっていく可能性がある。海軍水上戦部長も「将来の戦力混成では小型水上艦・無人艦の比率が増える」と断言しているほどだ。エスパー構想はLSCsに言及していないが、その他筋は80隻から90隻程度になると見ている。355隻目標ではLSCsを104隻としており相当下がるが、現行の隻数と大差はない。

DDG-51駆逐艦: 順調に推移しており、これまで85隻の予算がつき配備されている。2010年以降の建造艦では弾道ミサイル防衛機能が搭載されている。最新版がフライトIII仕様でAN/SPY-6レーダーで防空・ミサイル防衛機能が強化されている。

2018年4月にDDG-51級の供用期間を45年に延長する方針が発表された。従来より5-10年の延長で355隻態勢に必要な隻数を確保するねらいがあった。ただし、最初に建造のDDG-51級4隻は改修せず退役させるとの発表が最近あり、供用期間延長そのものに疑問の声も出ている。

2020年度案では2021年度から25年度にかけ13隻を調達するとあり、85隻体制の維持に十分といえる。2021年度案では同時期の調達がいきなり9隻になっている。海軍は同級駆逐艦の総数を目標水準になるまで建造を減速するらしい。

DDG-1000ズムワルト級駆逐艦: 三隻あるステルス、ハイテク大型駆逐艦(排水量14,500トンはタイコンデロガ級巡洋艦をしのぎ、第一次大戦前の戦艦に匹敵する)は問題を解決できていない。32隻調達の原案が2000年代に3隻に減らされ、コストは47%上昇した。初号艦の引き渡しが2020年に引き伸ばされたのは技術問題の山積が原因だった。残る二隻も引き渡しされたものの配備できる状態にない。さらに同艦の存在意義とされた155㍉砲も長距離弾の取りやめで無用の装備になっている。

CG-47巡洋艦近代化改修: 海軍から11隻ある巡洋艦で7隻のみ近代化改修する案が出ている。昨年は11隻が対象だった。議会は戦闘艦数が減ると懸念し、同級の退役案を繰り返し却下している。エスパー構想ではLSC増強の発想はなく、同級巡洋艦は全隻廃止する前提のようだ。

次世代LSC: 次世代LSCとして「DDG Next」の建造案が出ているが、かなり先の話で現時点では流動的だ。予測ではCG-47級は近代化改修なしで退役させ、DDG-51級の供用期間延長は実施しない。予測内容はエスパー構想より大規模で発注済み艦艇が今後編入されるが目標とする水準には到達しないとする。退役艦艇が増えるためだ。

 

小型水上戦闘艦

小型水上戦闘艦 (SSCs) とはフリゲート、LCS、掃海艦をさす。小型で巡洋艦、駆逐艦より能力は限定されるが、費用は半分程度で済む。

冷戦時のSSCsには船団護衛の任務があった。冷戦終結でこれがなくなるとSSCsは一気に存在意義を失った。だが大国間競合の時代になり、再び関心を寄せられている。敵が長距離展開し、米国の海上交通路を脅かす可能性があるためだ。SSCsは分散型戦力を目指す海軍の方針でも有用な存在で敵防衛ラインの内側で作戦展開できる。浅海域の南シナ海でも運用可能で、さらに艦隊規模を増やす効果もあり、海軍は世界階各地でプレゼンスを展開できる。

エスパー長官の将来構想ではSSCsを現行の52隻から60ないし70隻に増やすとある。中身はLCSsと新型フリゲート艦だ。

LCSsには掃海機能モジュールもあり、供用数をふやしているが、掃海艦のMCM-1アヴェンジャー級は段階的廃止で2024年にゼロとなる。この後継艦がLCSsとなる。

LCSsは毎年2-3隻が加わる。だたし、LCSsの性能は失望を招いており、建造は終了する。海軍は今後は改修無しで最初期の4隻を退役させる案を提示している。

LCSの後釜が新型フリゲートFFG(X)で多任務をこなすが、LCSは単任務艦である。一号艦建造予算は2020年度に認可を受け、2021年度に二号艦予算がついた。今後の導入を加速化しながらリスク低減すべく、LCSの知見を活用し、提案では既存設計の活用が求められた。フィンカンティエリ/マリネッテマリンの共同事業案が採択されたが原設計がヨーロッパというのは極めて異例で海軍が迅速建造とリスク低減を以下に求めているかの証拠である。

2020年度建艦案ではFFG(X)を2021年度から29年度まで毎年二隻調達するとあった。だが2021年度の五か年計画では2021年度22年度に各一隻、その後毎年二隻に変更された。供用開始の規模が縮小されているが新型艦種の導入で発生する問題を考慮すれば堅実な案といえる。

段階的建造導入で技術リスクは減るが、建造費用上昇のリスクは残る。CBOは建造単価は海軍試算より40%増えると見ており、ここが今後の課題だろう。

 

揚陸艦

揚陸艦整備が昨年は大きく中断された。海軍は海兵隊と大型艦38隻を目標とし、ヘリコプター強襲揚陸ドック型(LHAs/LHDs)、ドック型上陸用艦艇 (LPDs)、ドック型上陸艦 (LSDs)を整備してきた。目標設定の根拠として海兵遠征旅団二個に各17隻、プラス10%余裕分を運用するとあった。

海兵隊総監バーガー大将がこの方針を否定した。同大将は大型揚陸艦は大国間戦闘で脆弱な標的になるとし、古典的な揚陸作戦の実施はNDSの想定では困難と見た。南シナ海で9カイリ沖合から大量の装備で部隊を上陸させるのは非現実的と見たのである。

かわりに小型揚陸艦艇による分散型作戦実施を大将が提案し、1隻を喪失しても決定的な損害にならないとした。これは従来の考え方を逆転させるもので、大型艦で海兵隊を一気に運ぶのが効率面で優れているとし、高価格や装備数限定には目をつむってきた。

海軍は海兵隊と協議し、小型揚陸艦をとりあえず「軽揚陸艦」と呼び、28隻から30隻を建造する案を2023年度予算に盛り込むとした。各艦は乗組員30名程度で70名の海兵隊員を搬送する小型艦で第二次大戦時の歩兵上陸艇(LCI)と同程度となるが、デソート級戦車揚陸艦(LST)より小型となる。

図13で今後の揚陸艦部隊の動向を示し、当面の海軍の建艦案から2023年度に3隻、24年度に6隻、25年度に10隻、26年度に9隻を想定している。この予想ではLHAs/LHDsの6隻を揚陸艦部隊から空母部隊に編入させる前提としている。これで揚陸艦の規模は目標水準に収まる。

2021年度予算では大型揚陸艦の調達はまだ続く。LPDフライトII1隻を購入し、今後は二年毎に1隻を調達する。

大型ヘリコプター空母のLHA-6級は五カ年計画に残っており、次は2023年度に建造の予定がある。議会は2020年度に1隻分の先行調達資金を予算化したが、国境の壁建設に流用された。エスパー構想ではアメリカ級ヘリ空母が航空作戦に最適化可能とある。

LHA最大6隻が軽空母に改装されれば、将来の揚陸艦部隊の陣容は現在と相当変わるはずだ。

 

攻撃型潜水艦

攻撃型潜水艦(SSNs) に戦略専門家の強い支持が集まるのは戦力とともにステルス性が大国間戦闘で有益だからだ。次期政権でも潜水艦に支持が寄せられるのは確実だ。ただし潜水艦の建造単価は現在レートで33億ドルと高額装備で増産は容易ではない。

エスパー長官の目標は70から80隻とこれまでの66隻目標を上回る。長官は最高優先対象とする。

直近の攻撃型潜水艦戦力は安定している。隻数は50台のまま、新規建造は年2隻を継続する。これが2021年度に中断し、1隻になる。DODからエナジー省に20億ドルが移管され核兵器近代化に使われるためだ。ただし、議会はそのまま見過ごせず、下院の国防予算認可法案では二隻目建造を復活させるとあり、上院も同じ意見で予算を追加投入する考えだ。

ただ長期的に見ると問題は残る。2020年代末に戦力が低下し、2030年代初期にかけロサンジェルス級各艦が退役し、42隻の底をつく。エスパー長官は旧型艦の供用期間延長を提案したが海軍は新型艦調達のため旧型艦を早期退役させたいとする。

この潜水艦不足が発生する時期にロシア、中国の潜水艦が戦力を拡大し、活発になる。オハイオ級SSGNの退役が2020年代後半に始まると水中攻撃力が大幅に減少し、さらに隻数不足が輪をかけるが、新型ヴァージニア級のミサイル運用能力がヴァージニアペイロードモジュールの導入で不足分を補う効果が生まれる。

解決策として潜水艦建造をふやせばよいのだが、二隻平行建造だけで建艦勘定と産業基盤双方に相当のプレッシャーになっている。2020年度の三十年間建造案は攻撃型SSNあるいは弾道ミサイルSSBN潜水艦を年間三隻建造するとしていたが、海軍は必要な資金を準備しないのが常だった。エスパー案ではヴァージニア級三隻を建造し、SSBNは可能となれば早期建造としているが、産業基盤に十分な予算とリードタイムが与えられないとこれだけの建造は実現しない。

エスパー構想では2022年度23年度に追加建造を行うとあり、SSN年間三隻は2026年に達成するとある。予算認可から引き渡しまで6年かかる。2038年度には年間二隻建造に戻し、総隻数を一定に保つ。旧型艦は10年間の供用期間延長を実施するとある。

図中の点線が問題の所在を表している。海軍は急激な隻数低下を緩和したいのだが建造はすぐにできない。可能なのは目標水準に早く到達できるよう年間建造数を増やすことだけだ。

 

弾道ミサイル潜水艦

 

コロンビア級SSBN建造は現行オハイオ級の後継艦として計画通り推移している。2021年度予算では一号艦が承認された。高優先順位事業であり、議会両派の支持があり、日程上の遅れはなく、今後の建艦計画の変更でも何ら影響は受けないはずだ。エスパー構想も12隻整備目標はそのままとなっている。

予算規模は相当のもので、2021年度が44億ドル(調達40億ドル、RDT&Eに4億ドル)で20年度からほぼ倍増している。総額1千億ドルの同事業は長期事業というより直近の事業だ。

CBOはコスト試算に疑問を呈しており、トンあたりコストは海軍の数字より高いとする。CBO試算は海軍より7億ドル、10%高い。検査院も同様にDODのコスト試算を疑問視している。今の所海軍は試算結果を変更していない。

コスト増になれば建造計画全体に影響が波及し、将来の戦力構造にも影響が出かねない。

 

海軍航空戦力の近代化と将来の海軍飛行隊

米海軍は完璧な軍の姿になっている。艦艇、海兵隊、航空部隊がそろっているからだ。海軍航空部隊が空母の打撃能力そのものを構成するが、米海軍の中核兵装装備となる航空機は他国海軍部隊より大きな役割を果たしている。

2021年度に海軍航空部門(海軍と海兵隊)は合計121機の調達を求めており、20年度の163機から減少する。海軍航空隊は総じて良好な状態にあり、戦力維持に必要な機数の調達が続いている。これは朗報だ。

悪いニュースは現時点の期待数を維持するため将来は機材調達を増やす必要があることで、現行機材の維持管理が高価となり、無人機 (UAVs)の配備が遅れていることだ。

 

2021年度分調達

これまで海軍航空部門は完成したシステムを予測可能な経費と日程計画で調達してきた。ここで大きな例外はF-35だが。

特筆すべきはF-18生産がほぼ40年で終了することで昨年の案では、2024年度まで調達を想定していた。F-35生産はF-18生産終了の穴を埋めるだけ規模とならない。F-18調達が終了するのは運用する空母が少なくなるためもある。次世代戦闘機の開発が始まっているが、調達は2030年代にならないと始まらない予想だ。

別の課題に調達機数の減少がある。2020年度予算では5カ年計画の年間平均調達機数を130機としていた。2021年度では107機になっている。

その結果、海軍が調達規模を増やさないと機材規模が縮小する、あるいは老朽化が進む結果が生まれる。

 

機材規模維持の高コスト

 

海軍航空戦力の長期的な健全性に立ちはだかるのは、海兵隊、空軍と共通しており、機材維持の高コストだ。上図で示したように海軍航空戦力の調達費用は2000年代初期化から50%増加しているが対象機材数は逆に減っている。

機体の新世代は旧世代より高コストになる傾向がある。E-2Cは2021年度ドル価格で単価1.16億ドルだったが、新型E-2Dはレーダー性能を向上させ、指揮統制連絡リンクで高性能となったが単価は同じ2021年度ドル価格で2.27億ドルだ。

 

UAV配備が遅れ気味。トライトン、MQ-25

2021年度の海軍向け大型UAV調達はゼロで、空軍も同じくゼロと両軍で共通した問題になっているが、海軍のUAV保有数の58機(MQ-8およびMQ-4)は空軍の340機から大きく離されている。有人機を優先した海軍の姿勢があるとともに無人機装備への関心の低さもある。無人水上水中装備には大胆な導入姿勢を示す海軍だが無人航空機には及び腰のようだ。

エスパー長官は艦艇建造案をめぐるスピーチで海軍航空戦力に関し興味深い指摘をしている。将来の艦隊には無人艦載機を「戦闘機、給油機、早期警戒機、電子攻撃機とあらゆる種類で揃える」と述べ、海軍はUAVに支援任務しか想定していなかったので大きな一歩といえる。

エスパー長官の積極姿勢があるとはいえ、海軍無人機の未来は決して明るくない。MQ-8CファイヤースカウトはB型から大幅改修されているが、いまだに性能が弟子切れておらず、試験部門は「作戦運用不適」と判定した。

MQ-4Cトライトン長距離監視偵察UAVは空軍向けRQ-4グローバルホークの派生型で2020年度に生産開始したが、2023年まで生産が一時停止している。海軍は年間二機調達の想定だったので打撃だ。同機試作型が2019年6月にイランにより撃墜され関心を集めていた。

MQ-25は初の艦載無人機となり、2017年に海軍は給油機として一部ISR機能を付与すると発表し、攻撃任務は想定していないとした。同機開発は順調に進んでおり、2023年度に調達を開始する。しかし、同機事業が物議を醸したのは本来なら攻撃任務の正面煮立つべき機材を支援ミッションにまわしたためだ。エスパー長官発言がこの問題を加熱化した。

弾薬類は戦略の一環だ。射程と精度が問題

海軍の戦闘力で問題なのは従来装備を域内戦や敵領土近くでの作戦を想定して整備してきたこtだ。艦船の性能は高いが大型で数が少ない。戦術航空機は航続距離が極めて短い。そこで課題となるのは他軍とも共通するが、既存装備を敵の強力な防衛圏内でどう活用するかだ。

その解決策の一つが既存装備で長距離精密弾を運用することで、艦艇と航空機双方を想定している。これで危険地帯から遠ざかったまま戦闘に加われる。このため海軍は「攻撃用ミサイル戦略」を立案した。詳細は極秘だが、戦略案では現行装備品を使用しながら戦力を増加させるとともに新兵器開発を進めるはずだ。

2021年度予算は弾薬類の高レベル調達を想定している。特筆すべき動きは以下のとおりだ。

  • 艦艇では最新版の戦術トマホークブロックIV、水平線超えミサイル双方をLCSに導入する

  • 航空機では長距離対艦ミサイルLRASMを導入する。これは空軍向けJASSMの派生型である。共用スタンドオフミサイル射程拡大版 (JSOW-ER)も導入する。

  • 長期的視野で10億ドルを通常型迅速打撃(CPS)兵器開発に投入する。これは極超音速ミサイルである。また攻撃型水上艦戦(OASuW)性能向上型2のミサイル、次世代対地攻撃兵器も開発する

  • 予算では小直径爆弾IIの調達は削減する。中東地区で効果不足が露呈していた。同様にLCSの対水上戦ミサイルモジュール調達が削減されるのはLCS調達そのものが減らされ、ミサイル各種の運用方法が変化したため■

この記事は以下を再構成したものです。翻訳は人力で行っており、誤訳や不適当な表現は翻訳者によるものです。

US Military Forces in FY 2021: Navy

November 9, 2020

DOWNLOAD THE REPORT

Mark Cancian (Colonel, USMCR, ret.) is a senior adviser with the International Security Program at the Center for Strategic and International Studies in Washington, D.C.

This report is made possible by general support to CSIS. No direct sponsorship contributed to this report.

This report is produced by the Center for Strategic and International Studies (CSIS), a private, tax-exempt institution focusing on international public policy issues. Its research is nonpartisan and nonproprietary. CSIS does not take specific policy positions. Accordingly, all views, positions, and conclusions expressed in this publication should be understood to be solely those of the author(s).

© 2020 by the Center for Strategic and International Studies. All rights reserved.


2021年1月2日土曜日

新春クイズ 中国国防省報道官の発言に嘘がいくつ隠れているでしょうか。ここまで異なる見方をする中国は「異質」な勢力と見られても仕方ないですね。

  注 以下は新華社配信の英字記事をそのまま日本語に訳したものです。文字色以外に手は加えてありません。

南シナ海の西沙諸島(パラセル諸島)。 June 1, 2011. [Photo/Xinhua]


シナ海を大国の軍艦が遊弋する戦場にしてはならない、と国防省報道官Tan Kefei上級大佐が12月31日報道会見で発言した。


中国の台頭を脅威としたはNATOが今月発表した見解に同報道官は触れた。英海軍も2021年に新鋭空母HMSクイーンエリザベス打撃群を南シナ海展開すると発表している。「根拠なき観測偽りの非難が報告書に見られるが断固反対する」と大佐は述べ、「中国は防衛が趣旨の国防方針を堅持し、安全保障に関し協調総合共有の姿勢を保つ」とした。


「中国の国防力整備開発は一貫して世界規模の平和維持に貢献している。中国軍は世界の平和と安定を常に支持してきた


「各方面が偏見を捨て合理的に中国、中国軍事力整備を眺めるよう期待する」「南シナ海を大国の戦場にしてはならず、ましてや軍艦が遊弋する海にしてはならない


中国とASEAN各国の努力により南シナ海の状況は総体として安定している。一部外国勢力が本国から数千キロ離れた海域に軍艦を派遣し、力を誇示し不穏な状況を作っていることこそ南シナ海の『軍事化』の背景だ


「中国軍は主権の防御のため必要措置を取り、域内の開発や平和安定の防御でも同様の措置をとる」と述べた。


この記事は以下を再構成したものです。



NATO report on China's rise a threat is baseless, false: National Defense Ministry

http://english.chinamil.com.cn/view/2020-12/31/content_9961383.htmSource

Xinhuanet

Editor

Huang Panyue

Time

2020-12-31 23:05:29


米海軍がAIP搭載通常型潜水艦を有望視しない理由。原子力潜水艦、原子力空母などハイエンド装備中心の運用思想は大丈夫か。

 

 

気非依存推進方式(AIP)潜水艦(SSPs)が急速に普及してきた。この技術で通常型潜水艦も外部空気を取り入れず運用可能となり、原子力潜水艦 (SSNs) の独壇場だった水中戦の様相が一変する可能性があらわれ、小型通常型潜水艦が注目を集めている。小型で安価な装備品として敵の高価格艦を撃破できれば戦略上の意味が出てくる。では米国もSSPsに予算投入すべきだろうか。答えはノーだろう。

AIP技術の誕生 一部国でAIPは20世紀から試行された。一番古いのは第二次大戦時のドイツ、ソ連だが作戦上意味のある艦は実現していない。終戦で英国、米国、ソ連がドイツの研究成果を入手し試験艦を建造したが、原子力推進のほうが有望と写った。

 

 

2000年代に入り、技術の進展で実用に耐えるAIPが実現し、フランス、日本、ドイツ、スウェーデン、中国がSSPs建造に踏み切った。一部は輸出され世界各地で採用されている。


技術上の特徴 SSPsは浮上せずバッテリー充電が可能で、潜航時間が伸び、敵探知を逃れる。以下の三方式が主流だ。

①クローズドサイクル蒸気タービン方式 フランス建造の潜水艦で採用しているのがクローズドサイクル蒸気タービン方式で原子力潜水艦の発電方式を模し、酸素とエタノールを混合する。フランスはこの方式をMESMAと呼び、発電容量が大量になるが複雑となり、効率は劣る。

②スターリングサイクル スターリングサイクルエンジンではディーゼルでエンジン内に密閉した液体を熱し、ピストンを動かし発電する。排気は海中に排出する。フランス方式より効率は高く、機構も単純で日本、スウェーデン、中国が採用している。

③燃料電池 燃料電池方式がAIPで最高峰だろう。燃料電池は水素、酸素で発電し、可動部品は皆無といってよい。排出物は最小で最大の発電が可能かつ極めて静粛だ。ドイツが燃料電池技術でリードし、フランス、ロシア、インドが追いつこうとしている。


調達の傾向 AIPですばらしいことは既存艦に後付けで搭載可能なことだ。ドイツはこの方法で209型を改修し、ロシアもキロ級で実施したとの報道がある。スウェーデンは4隻を改修し、日本も一隻で実施している。潜水艦戦力の増強策として後付け改修は費用対効果が優れる。

 ただし、新規建造SSPsへの関心のほうが高い。ドイツは輸出用SSPを4形式そろえ、新規建造209型にもAIPを導入した。スウェーデンにはAIP艦3形式があり、日本の大型艦そうりゅう級もSSPだ。フランスのスコルペヌ級、アゴスタ90B型(パキスタン向け)、カルヴァリ級(インド向け)も同様だ。スペインの新鋭S-80級もSSPで、ポルトガルには小型トリデンテ級がある。ロシアはラーダ級で手こずっているが、次のディーゼル電気推進艦アムール級もSSPsとなる。中国の041型(元級)14隻にAIPが搭載され、さらに5隻が建造中だ。


戦闘効果は SSPsは一定条件ならSSNsを上回る性能を発揮する。長時間潜航性能と超静粛性を生かした待ち伏せ攻撃が可能だ。ただし、これは優れた情報収集能力が前提。また短中距離なら敵部隊の監視偵察任務に投入できる。浅海域など小型艦に有利な条件なら原子力潜水艦に対し相当の威力を発揮できる。


米国はどうすべきか では米国もSSPsを建造すべきだろうか。米国ではディーゼル電気推進艦の建造は1959年以降皆無だ。原子力潜水艦建造のノウハウを流用できるが、未知の内容があるはずだ。燃料電池技術で米国は先を走っているので米国が同技術を採用する可能性がある。

 ただし米海軍の視点はグローバルで、米本土から離れた海域での戦闘を想定する。SSPsは原子力潜水艦より航続距離が劣るので近くに基地が必要となる。さらに予算に厳しい米海軍は人員増ができず、ハイエンド高機能艦艇を少数運用するほうが組織上有利となる。

 SSPsに予算を投じる前に無人潜水機を投入する将来の潜水艦戦シナリオを米海軍は検討すべきだろう。自律、半自律運用の無人潜水艇にはSSPs同様の可能性があり、あえて新型潜水艦建造に費用を投じる合理性がない。

 結論としてSSPsが大型艦の脅威となるのは一定の条件下である。だからといって米海軍が通常型潜水艦建造に対応する必要はない。通常型では米海軍の潜水艦作戦の多くが実行できず、今後登場する新技術でSSPsの優位性に陰りが現れる可能性もある。

 

この記事は以下を再構成したものです。一時は米海軍も通常型潜水艦を建造する、日米で共同運用する案もありましたが、落ち着く先としては日米の潜水艦部隊で役割分担することでしょうかね。UUVが今後の鍵でしょう。UUVで中国の数の優位性を打ち破るという方向でしょうか。

 

Could the Navy Make Use of Conventional Stealth Submarines?

December 31, 2020  Topic: Technology  Region: Americas  Blog Brand: The Reboot  Tags: SubmarinesSubsU.S. NavyAir IndependentMilitaryTechnologyBoomer

by Robert Farley 

 

Robert Farley, a frequent contributor to TNI, is author of The Battleship Book. This first appeared in October 2018.

Image: Reuters

1月のイランによる不穏な動きを牽制する米軍部隊の動きに注目。1月3日ソレイマニ殺害から一周年。

 A U.S. Air Force B-52H Stratofortress from Minot Air Force Base.

 

米空軍B-52Hストラトフォートレス(ノースダコタ州マイノット基地)がKC-135ストラトタンカーから米中央軍管轄区域上空で空中給油を受けた。Wednesday, Dec. 30, 2020. (Senior Airman Roslyn Ward/U.S. Air Force via AP)



空軍戦略爆撃機がペルシア湾上空を12月30日に飛行し、12月で二回目の展開となった。力の誇示で米国はじめ中東同盟国へのイランの攻撃を抑止する狙いがある。


今回のB-52二機による飛行は、イランが数日以内にも米国等の攻撃準備に入ったとされる中での対応と匿名米軍高官は解説した。


B-52編隊はノースダコタのマイノット空軍基地を離陸し、周回飛行し帰投した。イランが2020年1月3日のカセム・ソレイマニ司令官殺害の報復軍事行動に踏み切る事態を米国は危惧している。当時は殺害の5日後にイランはイラク国内基地を弾道ミサイル攻撃し、およそ100名の米軍人が脳震盪を訴えた。


緊張をさらに高めたのがイラン支援を受けたシーア派戦闘員が在バクダッド米国大使館を先週ロケット弾攻撃したことで、死傷者は発生しなかったがトランプ大統領はツイッターでイランに以下警告した。


「イランに忠告する。米国人が一人でも死亡すれば、イランの責任である。よく考えることだ」


エスカレーションで大規模戦に発展する可能性があるため、米国はイランを抑止することとした。双方の戦略をさらに複雑にするのがワシントンの政権移行で、次期政権がイランには新しい対応を模索する可能性がある。バイデンは米国を2015年核合意に復帰させるとしている。


今回の爆撃機飛行について米中央軍は防御的な対応と説明している。

「米国は戦闘態勢を中央軍管轄地区で維持しており、いかなる敵対勢力も抑止する。また米国あるいはその権益を攻撃する動きがあれば即座に対応できる態勢にある」とあり、イランを名指しで呼んではいない。


この発表に先立ち、匿名の米軍高官は米情報機関がイランによる「相当の脅威」の兆候をつかんでおり、ソレイマニ殺害一周年にイラク国内の米関係施設へのロケット攻撃を行う計画があるという。


イラク駐留米軍は2,500名に縮小中でトランプ大統領は1月15日までの実施を求めている。米国は同時にイランが「より複雑な」攻撃を中東各地の米国関連施設に対し計画中との兆候を掴んでおり、ソレイマニ殺害後でもっとも深刻な事態だと米軍高官は述べている。イランの高性能兵器がイラクへ搬送されており、シーア派指導者がイランのクッズ部隊関係者と会見したと同高官は説明。ソレイマニが司令官だった部隊だ。


また同高官は経済面の目標にイランが注目しているとも語り、2019年9月のサウジアラビアの石油精製施設へのミサイル・無人機攻撃に言及した。イランは当時関与を否定したが米国はイランを攻撃の主犯として非難した。


米軍はここに来てイランの動きを抑止する各種動きを展開しており、イランを挑発することは念頭になく、また指示設けていないと公式に説明している。


先週は米海軍の誘導ミサイル潜水艦一隻がホルムズ海峡を通過している。ルイジアナのバークスデイル空軍基地からB-52が二機ペルシア湾上空を飛行し、米軍は「プレゼンス」ミッションであり、攻撃ミッションではないと説明していた。こうした動きは米国が同地域を重要視しているあらわれであり、今週再びB-52が投入されたわけだ。


イランとの緊張を高めた事件として11月のモーセン・ファクリザデ殺害事件がある。西側はファクリザデを制裁対象の核兵器開発の中心と認識していた。イランは殺害をイスラエルによるものと非難したが、米国は米国関連施設へのイラン報復攻撃を懸念していた。■


この記事は以下を再構成したものです。


US Bomber Mission over Persian Gulf Aimed at Cautioning Iran

The Associated Press | By Robert Burns 30 Dec 2020

This article was written by ROBERT BURNS from The Associated Press and was legally licensed through the Industry Dive publisher network. Please direct all licensing questions to legal@industrydive.com.

Related Topics: Military Headlines Global Hot Spots Iran Air Force Topics


2020年12月31日木曜日

2020年を振り返る。恒例の人気記事のベスト10です。

 今年もあと数時間となりました。恒例の人気記事のリストです。

まず、今年は10月を境に読者数が圧倒的に増えており、リストも9月までと10月以降の二部構成とします。

第一部 1月から9月末まで

第10位 主張 武漢コロナウィルスは中国共産党体制崩壊の始まりになる 1729

第9位 台湾海峡上空で、台湾機がPRC機を追い払う。その前に米海軍機が台湾島を南北縦断飛行していた 1949 6月

第8位 Ottoのセレラ 500Lは航空業界を一変させる画期的な小型機になる。軍用型も有望。(T1T2共通記事) 2152

第7位 F-3は第6世代戦闘機としてこんな機体になる。2550

第6位 F-3はF-35とこう併用される。2020年、高まるNGFへの期待 2348 

第5位 F-3は国内開発へ舵を切った 2500 4月

第4位 超音速飛行に制限がついたF-35C....問題の山はいつ解決される? 2810 5月

第3位 スホイを勝手にコピーして生まれた中国のJ-15は欠陥艦載機だ 2828 6月

第2位 いずもを正規空母に改装しF-35C運用を可能にしたらどうなるか大胆に想像 2926

第1位 動き始めたReforge構想、まず訓練用F-22の用途変更、しかし各機種でトラブル続出 5186 6月

数字は本日現在のPVです。こうやって見るとF-3へのご関心の高さがわかります。広げると戦闘機ということですね。その意味で8位は異色ですが、一位の米空軍の新運用方針についてにも多大なご関心をいただきました。一方で全く伸びなかった記事のひとつが

金正恩死亡で中国はどう動くのかを予測! 345 5月

で金正恩が死んだというのはガセネタとされているようですね。北朝鮮ではいまもときどき元気な姿が公開され、生きていることになっていますが、同様に同国ではコロナウィルス患者もいないことになっています。李雪主夫人が一切姿を見せていないことも憶測を呼んでいますが、金正恩が生きていない少なくとも脳死になっている可能性は排除できないと思います。同様にここに来て習近平の入院説も飛び交い何かと忙しい東アジア方面です。


第二部 10月以降

こちらは第一位から。

第1位 歴史に残らなかった機体 番外編 あなたの知らない機体 5560 11月

第2位 エンジン換装だけじゃない。B-52はここまで性能向上し、2050年代まで供用される。 4351 10月

第3位 台湾がついに潜水艦国産建造に乗り出した。8隻建造し、2025年に一番艦を就役させる。日本は傍観しているだけでいいのでしょうか。4003 11月

第4位 当選近づく?トランプ集会の上空を万全の態勢で守るNORAD 3724 10月 

第5位 F-15EXの納入に備える米空軍。一方、日本向けF-15JSIはEXの機能ほぼ全部を搭載する構想と判明。ただし、フライバイワイヤを除く。 3363 11月

第6位 低地球周回軌道で一時間以内で世界いかなる場所にも貨物人員を送り届ける....米陸軍がこの構想を実現しようとしている 3286 11月

第7位 中国がカンボジアに海軍基地を確保する動き。札びらで横顔をたたく? アジア太平洋地区への影響は必至だ。 3199 10月

第8位 スイスがF-35A導入へ。スーパーホーネット、ペイトリオットミサイル含め160億ドルを支払う。 3132 10月

三ヶ月分ということでここで止めます。こちらではご関心の幅が広がっているのがわかりますね。特に駄作機が思ったよりも人気を博したのは驚きました。

ブログ開始当初は100PVになればヒットでしたが、いまや一夜で1000PVが普通になってきました。来年はどうしようかと考えています。一つに中国関係の記事を独立させるか、意外に人気がある陸軍装備関係の銃砲や車両をもっととりあげるとか....しかし主力は航空機材とします。みなさまもリクエストがあればお知らせください。


それでは良いお年を。今年の記事はこれでおしまいとします。





これでよくわかる 自衛隊の対艦ミサイル整備の道筋。中国海軍の防御能力を上回る新型ミサイルを順次投入し、抑止能力を高める。日本の軍事力整備を恐れる隣国は完全な誤解。

  イマイチわかりにくかった自衛隊の対艦ミサイル整備の全体像がよくわかります。

 

 

衛省は令和3年度予算で超音速対艦ミサイルASM-3Aの調達費用を計上したと2020年12月25日に発表した。一方でASM-3改を大量配備し、中国の海上兵力拡張に対抗する。同省は新型重要装備品選定結果の一部でさりげなくASM-3Aに触れている。

 

ASM-3 anti-ship missile on JASDF F-2 Fighter

岐阜基地所属のF-2戦闘機がASM-3を2発搭載している。February 2020. Picture by local photographer Takeru Sugiyama.

 

XASM-3 まず航空自衛隊のF-2戦闘機搭載を想定したXASM-3ミサイルの開発が2010年度に始まった。XASM-3は空中発射式対艦ミサイル(ASM)で固体ロケットブースターとラムジェットエンジンを採用しマッハ3超で飛翔するとした。射程200キロ(108カイリ)だった。

 

 

防衛省が発表したASM-3 (改)の運用構想では射程距離の拡大によりF-2は敵防空手段の有効範囲外からミサイル発射できるとする。

 

ASM-3(改) ただし、新鋭中国水上艦で防空性能の高まったため、ASM-3調達は中断し、ASM-3(改)開発を決めASM−3の有効射程を延長するとした。

 防衛省は三菱重工業にASM-3(改)の開発契約を89億円で2020年に交付した。ASM-3 (改)開発は令和2年度から7年度の予定。

 開発の経費と期間を下げるためASM-3と同じ本体とし、重量軽減で射程距離の延長を狙う。

 

 

ASM-3 anti-ship missile on JASDF F-2 Fighter

航空自衛隊岐阜基地のF-2に搭載されたXASM-3。February 2020. Picture by local photographer Takeru Sugiyama.

 

ASM-3A 今回発表のあったASM-3AはASM-3 (改)開発の知見を反映するとあるが詳細は不明だ。とはいえASM-3(改)の開発が今年はじまったばかりであり、有効射程は更に伸びると見られる。

  ASM-3 (改) 開発は ASM-3A 生産と並行で進むに。このためASM-3Aは中国対策のつなぎと考えてよい。

 

対艦ミサイル三種類を運用する航空自衛隊 航空自衛隊は対艦ミサイル新型三種類を運用する。

  • F-35に共用打撃ミサイル(JSM)

  • 改修版F-15J/DJ に長距離対艦ミサイル(LRASM)

  • F-2に長射程ASM-3A


 

ASM-3の試射.防衛装備庁.

 

各種ミサイルを運用する意味 自衛隊が各種対艦ミサイルを運用する理由として各ミサイルの特徴を活かした運用で敵防空体制を突破できることがある。たとえばJSMは海面すれすれを飛翔し敵レーダーでの探知が難しいものの、有効射程はミッションで異なるが100から300カイリと長くない。LRASMは432カイリと長射程だが飛翔は亜音速だ。ASM-3Aはマッハ3程度で敵防空網を突破するが有効射程がLRASMより短い。

 ただし、2種類あるいは全部を投入すれば、敵側は各ミサイルの特徴に応じた対応に追われ、防御態勢を強固にする必要にかられる。

 さらに陸上自衛隊向けに新型長射程ミサイル(2000キロ級といわれる)を防衛装備庁が開発中で極超音速対艦ミサイルあるいは高速滑空弾(HVGP) と呼ばれ、極超音速で高高度を飛翔する性能が加われば、対艦ミサイルが各種揃い、敵艦撃破の可能性が高まる。自衛隊は今後の中国海軍力の成長を念頭に対策を着実に打っている。■


この記事は以下を再構成したものです。日本にいながら防衛装備の開発状況が全体としてわからないのはおかいいですね。2021年は外国報道も使いわかりやすい情報提供に心がけたいです。


Japan to Field New ASM-3A Long Range Supersonic Anti-Ship Missile

Yoshihiro Inaba  30 Dec 2020

Story by Yoshihiro Inaba with additional reporting by Xavier Vavasseur


2020年12月30日水曜日

ドイツ軍がここまで弱体化したのは政治の責任だ。安全保障における軍の役割を軽視すればこうなる。日本も他山の石とすべき。

 

 

 

ルリンのドイツ政府は自国の安全確保も放棄したのだろうか。ドイツ軍の予算不足の状態には驚くしかない。ドイツ軍には戦車、航空機はまともに機能しない装備で一杯だ。

 

今日のドイツ軍は連邦軍と呼ばれ第二次大戦終結10年後に創設された。冷戦の緊張が高まり、東ドイツ、チェコスロバキア、ポーランドに駐屯するソ連軍のプレゼンスが西ドイツ国防軍の創設につながった。

 

連邦軍は世界有数の規模、装備に恵まれた軍に成長し、陸軍師団12個、戦闘機材数百機、水上艦艇、潜水艦を備えた。

 

冷戦が終結し、赤軍が東欧から撤退し欧州の安全保障環境に追い風が吹いた。東ドイツ国防軍と連邦軍が統合され国軍となった。艦艇、機材、装甲車両は75%削減され、国防予算はどんどん低下した。現在のドイツはGDP比1.2%を国防に費やし、NATOが求める2%と差が開いている。

 

 

連邦軍の即応体制の劣化を伝える記事多数が出ている。固定翼機、ヘリコプター、車両で運用中止多数が発生しているのは交換部品不足が原因で稼働率は50%を割る状況だった。

 

ドイツ軍の装備品には世界有数の威力を有するものがあるが、同時に直面する課題にも相当のものがある。以下、正常に作動すれば相当の威力を発揮するものの予算を十分受けていない、あるいは別の問題を抱える5例である。

 

ユーロファイター・タイフーン

英仏独伊西の5カ国が1980年代に共同開発したのが将来型ヨーロッパ戦闘機材FEFAで、これが1994年にユーロファイター・タイフーンになり、ドイツは2003年より導入した。

 

第4世代機ではユーロファイターはおそらく最強の存在だろう。機敏な操縦性、強力なエンジン、AESAレーダー、赤外線探索追尾センサー、AMRAAM、サイドワインダー両ミサイルを搭載する同機は手強い相手だ。対空対地攻撃能力はさらに進化し、非誘導爆弾、レーザー誘導爆弾、トーラス巡航ミサイルを搭載する。

 

ドイツは当初180機導入の計画だったが、2014年に一部キャンセルし、143機にした。2014年10月時点で飛行可能な機材は42機で残りは部品不足で地上に置かれていた。同時に搭乗員の年間飛行時間を半減する扱いにしたのは機体が不安定になる現象への対応だった。

 

ユーロファイター・トーネード

これも英伊独の共同開発で生まれた戦闘機で、低空高速で敵地侵入する構想のトーネードは世界最後の可変翼軍用機だ。ここでも冷戦終結で予算不足状況が続いている。

 

ルフトバフェはIDS(制圧深部侵入型),ECR(電子戦偵察型)を導入し、冷戦時はワルシャワ同盟側の標的特に航空施設の攻撃を任務とした。ドイツ再統一後のトーネードはコソボやアフガニスタン上空で偵察任務についた。

 

ドイツ空海軍で357機を導入したが、冷戦終結で削減され、2025年以降も供用の方針だが、予算不足のため2014年8月時点で89機中稼働可能機材は38機しかなかった。

 

レパードII主力戦車

1970年代にレパードIの後継としてクラウスマッフェイ重機械が開発したレパードIIはドイツ軍の主力戦車だ。戦後ドイツの戦術方針で速力と火力を最優先し、高機動戦車としてヨーロッパ戦場の状況変化に対応する装備品となった。初導入は1979年で、現在も稼働中だが、配備数があまりにも少ない。

 

最新のレパードIIA7は2030年代も視野に入れ、120mm滑腔砲の長砲身型、熱探知装置第3世代型、複合材防御の強化、補助動力だけで電子装置の運用が可能といった特徴を有する。

 

レパードII生産数は2,125両で戦車師団、機械化歩兵師団の12個には十分といえる。冷戦終結と国防予算削減でドイツは戦車部隊のほぼ9割を削減し、現在の連邦軍には225両しかない。

 

G36強襲小銃 

1990年代に連邦軍はヘッケラー&コッホG3小銃を廃止し、G36強襲小銃を導入した。NATO標準5.56ミリ銃弾、30発弾倉、統合光学照準を採用したG36でドイツ歩兵部隊の戦力は増強され軽量化が実現したはずだった。176千丁を調達した。

 

ところが連邦軍はアフガニスタンでG36の命中精度の劣化に気づく。G36は連続射撃で精度が下がる問題があるとわかったが、平時には現れない現象だった。それでもこの問題がなぜ早期に見つからなかったのか理解に苦しむ。

 

国防相ウルスラ・フォン・デア・ライエンは連邦軍は同小銃を用途廃止すると発表した。国防省はHK417強襲小銃600丁の調達を発表した。これもヘッケラー&コッホ製である。

 

371装甲擲弾大隊

装甲擲弾部隊とは連邦軍の機械化歩兵部隊のことでは900名編成の9個大隊に歩兵戦闘車両とMILAN・パンツァーファウスト3対戦車兵器を配備している。

 

この内マリエンブルグ駐屯の371装甲擲弾大隊が2014年にノルウェーでNATO演習に加わった。NATOの迅速展開部隊に指定の同大隊でピストル、暗視装置の不足が露呈した。MG3機関銃が不足し、箒を黒く塗り代用品にした。さらにもっと悪い事実がわかった。同大隊は他部隊から合計14,371点もの装備品を借用していたが、それでも一部装備品に不足があったという。

 

優先度が高いNATO部隊でも装備品14千点が不足というのは連邦軍の内部にある問題が深刻な証拠であり、同盟各国へのドイツの貢献度も疑問視される。■

 

この記事は2015年初掲載された以下を再構成したものです。NATOサミット開催にあわせ発表します。

 

Why Is Germany's Military Weak?

December 27, 2020  Topic: Security  Region: Europe  Blog Brand: The Reboot  Tags: GermanyMilitaryNATOGerman MilitaryRussia

by Kyle Mizokami

 

Kyle Mizokami is a defense and national security writer based in San Francisco who has appeared in The Diplomat, Foreign Policy, War is Boring and The Daily Beast. In 2009 he cofounded the defense and security blog Japan Security Watch. You can follow him on Twitter: @KyleMizokami. This first appeared earlier and is being reposted due to reader interest.