2021年4月4日日曜日

日本へのPLA軍事行動で抑止効果を生んでいる防衛装備を5つ選んでみた。(引用記事がやや古いので要注意です)安全保障論議は理念ではなく、現実を直視する必要があることがわかりますね。

 



 

 

 

中関係は2010年から悪化の一途だ。日本領海に侵入した中国漁民の逮捕を皮切りに両国で無人で無価値に映る尖閣諸島をめぐり不愉快な事態が続いている。

 

現時点では両国の沿岸警備隊が中心だが、年を追うごとに状況は悪化している。放置すれば些細な事件が軍事行動に一気に進む事態にもつながりかねない。今回は考えたくない事態が発生した場合、中国を慎重に対応させる威力を有する日本の防衛装備品5種類を紹介したい。

 

そうりゅう級ディーゼル電気推進潜水艦

 

そうりゅう級は攻撃型潜水艦として原子力潜水艦を除けば世界最高水準にある。潜航時の排水量4,100トン、水中速度が最高20ノットといわれ、スターリング大気非依存型推進でディーゼル電気推進方式潜水艦として最長の潜航時間を実現した。

 

艦首に魚雷発射管6門を備え、89式高速ホーミング魚雷およびサブ・ハープーンミサイルあわせ20本を搭載する。先制攻撃能力の実現に道が開けば、巡航ミサイルの搭載も期待される。

 

人民解放軍海軍潜水艦戦力の増強に対応すべく、2010年に日本は潜水艦部隊を従来の16隻から22隻に増強する方針を決定した。

 

戦後の日本は日本への侵攻で重要経路となる津軽、津島、関門、宗谷の各海峡に潜水艦を集中配備する方針をとってきた。これは冷戦時のなごりで、当時はソ連による侵攻を想定していた。これに対し、中国を意識した新方針では尖閣諸島、琉球諸島を念頭に、東シナ海や日本海に前方配備を考えているはずだ。

 

中国にとって日本潜水艦部隊が厄介な存在になるのは、対潜戦(ASW)が一貫して中国の弱点だからだ。中国は有事のASW実績がなく、技量装備ともに劣る。他方で日本は潜水艦運用を長年続け、潜水艦乗員の練度は高い水準で米海軍と同等になっている。

 

F-15J

 

航空自衛隊のF-15Jは制空戦闘機の中心的存在だ。三菱重工業が国内生産した同機には米F-15と軽微な違いがある。

 

米サイドワインダーに類似するAAM-5赤外線ホーミングミサイルを搭載し、さらにAAM-4B中距離レーダー誘導ミサイルではアクティブアレイレーダー方式のシーカーを採用した世界でも数少ない装備品となっている。中国に同種の装備品はなく、射程とロックオン機能がすぐれ、F-15Jは大きな優位性を中国機に発揮できる。

 

200機超が製造されたF-15Jだが製造後30年が経過し、中国の新世代軍用機への優位性を維持すべく、性能改修とともに電子対抗機能(三菱統合電子戦装備)の拡充を続け、前方監視赤外線探知追尾機能も実現した。

 

外国軍用機が日本領空に接近するとF-15Jがまず投入される。沖縄に基地を置く飛行隊のF-15J20機は尖閣諸島も活動範囲に入れており、与那国島へ分遣隊を常駐する案が検討されている。

 

機齢が高くなっているとはいえ、F-15Jは今も人民解放軍空軍(PLAAF)に手ごわい相手のままだ。F-15は強力な機材との評価を世界的に確立しており、104機撃墜し損失はゼロという実績がある。

 

あたご級誘導ミサイル駆逐艦

 

あたご級駆逐艦二隻は日本で最高水準の水上戦闘艦で各種任務をこなす能力を付与されている。満載排水量が1万トンのあたご級は第二次大戦時の巡洋艦に匹敵する。米国開発のイージス・レーダーシステムにより移動防空装備となり、航空機のみならず弾道ミサイル撃破にも対応する。

 

あたご級はMk.41垂直発射ミサイルサイロ96門を搭載し、SM-2対空ミサイル、SM-3弾道弾迎撃ミサイル、ASROC対潜ロケットを運用できる。対艦攻撃手段にはSSM-1B対艦ミサイル8発があり、米ハープーンとほぼ同等の装備だ。火砲として5インチ砲一門、ファランクス近接対応装備がある。さらに対潜戦にSH-60シーホークヘリコプター一機と73式対潜魚雷発射管6門で対応する。

 

あたご級は先行建造のこんごう級の発展形で、垂直発射装備は6セル増え、ヘリコプター格納庫が追加された。

 

あたご級性能向上が完了すれば、強力な防空装備となる。有事シナリオでは中国が短距離中距離弾道ミサイル多数を発射する予想があり、日米の水上艦艇、基地、防衛施設が標的となる。日本のイージス艦部隊が尖閣や琉球諸島に展開すれば強力な対空能力が実現する。SM-2ブロックIIIB対空ミサイルの射程は90カイリで、あたご級一隻で565平方カイリの空域に対応できる。

 

いずも級「多用途艦艇」

 

全長800フィート、満載排水量27千トンのいずも級ヘリコプター駆逐艦は戦後日本で最大の海軍艦艇となった。公式には「ヘリコプター空母型護衛艦」とされるいずもはジャパンマリンユナイテッドが横浜で建造した。姉妹艦かがも建造された。

 

いずも級は先行のひゅうが級より大きく、ともに空母形状となっている。いずもを海上自衛隊は多用途艦と呼び、全通飛行甲板と格納庫に最大14機のSH-60対潜ヘリコプターを搭載し、広範囲で対潜戦を実行できる。

 

また揚陸作戦にも投入可能だ。2013年の日米共同演習ドーン・ブリッツでJSひゅうがが洋上航空拠点となり、陸上自衛隊のCH-47チヌーク輸送ヘリ、AH-64アパッチ攻撃ヘリを運用した。有事にはいずもは西部方面隊の一個大隊を搭載し、ヘリコプターで移動させる。

 

日本が米海兵隊、英海軍に続きF-35Bを発注し、いずもで運用する予測がある。[訳注 本記事の執筆時点での話です]F-35Bはいずも級、ひゅうが級での運用が可能だが、相当の改装が必要となる。固定翼機運用に対応させ、飛行甲板を強化し、垂直着艦時に発生する高温に耐えるようにする。政治面でも課題となるが、尖閣・琉球地方の防衛に必要と判断されれば、実施に進むだろう。

 

中国がいずも級を警戒するのは多用途性に原因がある。ASW艦として中国潜水艦に対応し、揚陸艦として遠隔島しょ部に地上部隊を搬送し、さらに空母として少数ながらステルス第五世代戦闘爆撃機の移動基地となるためだ。


米軍部隊

 

他国軍がリストに載っていること自体が異例だが、日米相互安全保障協力条約により世界最強の軍事力が日本の背後に控える。

 

日中戦に米国が参戦するには一定条件が必要で、日本は攻撃で被害を受けてから米軍による支援を求めることとなる。ただし、いったん条約の定める条件がそろえば、米軍事機構すべてが日本防衛に投入できることとなる。

 

ここまで同盟国が献身的に対応するのは賞賛すべきことで、日米同盟は戦後期で最大の成功事例といってよい。ただし、日米同盟はソ連との全面戦争を想定し生まれたものであり、日本が領土問題をめぐり中国と対立する構図は想定していなかった。

 

日中対決に米国が参戦すれば、事態は一気に大規模戦闘になるのは確実だ。米中戦となれば日中間の対決など姿がかすむし、グローバル経済への影響は計り知れず、なんといっても核保有国同士の対決となる。領土をめぐる紛糾が悪化すれば日本としても防衛費のGDP1パーセント上限方針を撤廃し、米国が局地紛争に巻き込まれ一気に大規模戦にエスカレートする危険が現実になりかねない。■


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These 5 Weapons Would Help Japan Fight Off China


April 3, 2021  Topic: Japanese Military  Region: Asia  Blog Brand: The Reboot  Tags: JapanChinaMilitaryWeaponsWar

by Kyle Mizokami

 

Kyle Mizokami is a writer based in San Francisco who has appeared in The Diplomat, Foreign Policy, War is Boring and The Daily Beast. In 2009 he cofounded the defense and security blog Japan Security Watch. You can follow him on Twitter: @KyleMizokami.

Image: Wikimedia Commons


ウクライナ東部で不穏な動き。ロシア軍がウクライナ侵攻への準備を始めた模様。NATOも巻き込み、一気に情勢がエスカレーションするのか。

 Russian Military

 

 

 

シア、ウクライナ国境で緊張が高まっている。ウクライナ東部ドンバスで戦闘が激しくなっているためだ。

ロシアは部隊を国境地帯に集結させており、ドンバス内戦でかねてから出ていた疑問が再び強まっている。ロシアはウクライナ侵攻に踏み切るのだろうか。

 

ドンバス内戦は2014年に始まっている。ウクライナ国内の混乱を受けてロシア語を話すドンバス地方がドネツクおよびルハンスク人民共和国を独自に立ち上げ、ウクライナからの独立を宣言した。その後、数回にわたり休戦協定が結ばれたが、いずれも履行されていない。分離主義勢力はウクライナ軍の攻撃を受けてきた。さらに都市部でのゲリラ戦で民間人軍人数千名が命を落としている。一方で、ウクライナはトルコからバイラクタルTB2戦闘無人機の購入を決めている。

 

ロシアとウクライナはともに挑発行為だと非難合戦をしている中で、ドンバス地方での軍事行動がエスカレーションしそうだ。ロシアの兵力増強ではクレムリン報道官ドミトリ・ぺスコフが報道記者の懸念に対し、「わが法の対応は完全に前向きなもの」と繰り返しつつ、「ウクライナ軍の挑発が発生している。しかも大規模になっている」と述べた。

 

ロシアのプーチン大統領発言を反映し、セルゲイ・ラヴロフ外相がウクライナおよび西側諸国に警告を出した。「プーチン大統領の発言は今も有効だ。新たにドンバスで戦闘状態を発生させればウクライナ崩壊につながる」。これに対し北大西洋条約機構(NATO)は「ロシアによるゆさぶりは緊張緩和に向けた動きに逆行する」と懸念を表明した。ジョー・バイデン大統領はウクライナのヴロジミール・ゼレンスキ大統領と本日早朝に電話会談し、「ドンバス、クリミア両地方へのロシアによる侵攻行為が続く中、ウクライナの主権ならびに領土保全の護持に米国は確固たる支援」を確約した。

 

とはいえ、現状でロシアがウクライナ領土に大規模進軍を開始する兆候はない。すくなくとも先制攻撃はないようだ。ミンスク議定書によりドネツク、ルハンスクの両人民共和国のウクライナ統合に向けた政治面の手続きが決まって以降、ロシアはドンバス分離主義勢力を間接支援しつつ、ウクライナが武力で両地方を再統合する動きを示せば強力な軍事力の行使をいとわないと警告していた。いずれの側が先に攻勢をしかけたとしても、他方から同議定書違反を非難されることになり、ロシア、ウクライナともにこの外交リスクは避けたいところだ。

 

ロシアのドンバス対応戦略はウクライナが先に軍事行動を取るまで待つことにある。この記事の執筆時点でこの方針が変更された兆候はない。ロシアは部隊をウクライナへ移動させた場合に国際社会から受ける非難が激しくなることを承知しており、あくまでも先に行動されてからの報復作戦を誇示したまドンバスの危機状況は新たなエスカレーション段階に入りつつある。■

 

Is Russia Getting Ready to Invade Ukraine?

April 2, 2021  Topic: Russia Ukraine  Region: Europe  Blog Brand: The Buzz  Tags: Ukrainian ConflictUkraineDonbassRussiaNATOMilitary

by Mark Episkopos

 

Image: Reuters.

Mark Episkopos is the national security reporter for the National Interest


2021年4月2日金曜日

B-2スピリット爆撃機で極秘扱いのステルス性能技術を推理する。B-2を投入するシナリオはこうだ。

 



B-2は世界でも特異な機体で高度の機密のベールに覆われている。製造わずか21機で、翼幅170メートルの機体だが、大型鳥類程度にしか探知できないといわれる。エンジン4基で飛行するが大部分の赤外線装置は探知できない。


これだけの大きさの機体をどうやって探知不可能にしているのだろうか。


B-2のステルス性能はコンピュータテストの連続実施で生まれたもので、F-117やB-1もステルス機だが当時のコンピュータ能力は低く、技術陣が計算尺を手に設計した。


だがB-2の設計時点で、技術陣はスーパーコンピュータを利用し、滑らかな機体表面を実現し、レーダー探知を無効にした。それだけ機械加工の難易度が高まったがステルス性能を考えれば追加工数の価値ありと判断された。


B-2がレーダーに向かって飛行すると、レーダー波は90度反対方向に反射されて戻るので、レーダー操作員は手が出せない。


How the legendary B-2’s stealth actually works

B-2の夫婦パイロットの後方にある機体でエンジン空気取り入れ口がコックピットの左右についているのがわかる。

(Avery family courtesy photo)


だがエンジンが機体に取り付けられればステルス性能は損なわれる。そこで、技術陣は機体にエンジンを統合し、レーダー波が直接反射できないようにした。


ただし排気は面倒の種となる。赤外線痕跡で航空機は探知可能となる。ただし、かなり接近していないと難しい。そこで、B-2には可能な範囲の短距離で赤外線排出を拡散させる、または隠ぺいする技術を必要とした。


その技術は極秘扱いだが、排出口形状から推測はできる。熱排気を外気と混ぜ冷却してから排気することで排気温度を大気温とほぼ同じにする技術のようだ。


この機能により敵側のミサイルや戦闘機は対応が困難となる。ただし、いったん機体が見つかれば、戦闘機部隊は接近し撃墜を試みるはずだ。


だがB-2ではこの可能性も低い。きわめて静寂なため、スポーツイベント会場上空をB-2が飛行する中で普通に会話ができる。


通常の機体の場合は現場上空に到達する前から飛行音が聞こえるのが普通だ。音で機体の方向がわかる。だが、B-2の音響痕跡は小さく、飛行中の同機を見つけるのは大部分困難だ。


How the legendary B-2’s stealth actually works2018年のロイヤル国際エアタトゥーでRAFフェアフォード基地上空を飛行するB-2 (U.S. Air Force Tech. Sgt. Brian Kimball)

 

こうした機能を組み合わせB-2のレーダー探知は困難となり、低騒音で地上で気づかれにくく、熱排出が少ないため、防空部隊の対応が困難となる。


とはいえ、パイロットの技量と飛行計画が優れていることが必要だ。防衛側が低周波レーダー波を使い、高性能戦闘機でB-2を狩ることは高度の防空体制地区なら可能だ。だが、そこでB-2のステルス性能を助けるのが高水準の情報活動で、機体を比較的防空体制が弱い空域に移す。


これこそがB-2のミッションの重要部分であり、同機は表舞台に現れる爆撃機ではない。期待されるのは第一陣攻撃で地上防空体制を粉砕し、「ステルス性能が劣る」僚機に進入経路を開くことになる。このためRC-135等の偵察機が敵防空体制を解明することが必要だ。


だがB-2にはこれ以外の活用法がある。そのひとつが指揮命令所をおさめた防空壕の撃破で、これはイラク侵攻で実際に行われた。敵の防空ネットワーク機能をダウンさせるべく開戦初期に実施すると作戦立案が楽になる。


敵司令官が首都の集会に姿をあらわせば、防空網に穴をあけるまで待たず、B-2をそのまま進入させればよい。あるいは時間の余裕がなければB-1を派遣する。レーダー網への対処はそのあとでよい。


B-2が本領を発揮する場面となる。飛行時間当たり経費はその他機材を上回り、搭載爆弾もB-52やB-1より少ないものの、その他機材では不可能な攻撃ができるのは驚異のステルス性能があってこそだ。■


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How the legendary B-2's stealth actually works

Posted On April 01, 2021 03:42:00


2021年4月1日木曜日

北朝鮮のEMP攻撃にどこまで対応できるか。EMP攻撃は大量報復反撃を招くだけで、実施不能では。しかし、キ〇ガイの考えることは予測不能だろう。

 

 

 兵器で電磁パルス(EMP)を発生させるのは可能だが、戦闘形態としては効果が必ずしも高いわけではない。

EMPというと怖い響きがあるが、電力網を機能不全にできるのか議論の余地がある。また、核攻撃に踏み切れば、その国は米国により完全に破壊されることとなる。

 

北朝鮮が開発中の長距離大陸間弾道ミサイル、核弾頭をめぐり朝鮮半島で開戦となれば、通常兵器のみ投入の場合でも破滅的な結果が待っている。核兵器投入に踏み切れ場もっと悪い結果が生まれ、事態は最後の審判の日にまでエスカレートする。

 

大都市圏が核攻撃された場合の損害は周知の想定だが、戦術核兵器は軽視されがちだ。北朝鮮が米主導の侵攻作戦を食い止めようと戦術核兵器投入に踏み切った場合、核爆発でEMP効果が加わる。電子装置は防護措置がないとEMPにより深刻な損傷を受ける。米軍の作戦がネットワークや高性能センサー装備に依存する分だけ脆弱になる。

 

国防専門家や軍内部にはEMPによる損害予測で公言を差し控える傾向が強い。情報が極秘扱いのためもあるが、米国や同盟国でEMP効果への防護策のある装備が一部にとどまっているためだ。

 

「実際に発生するのか、発生しないのか、装備ごとで事情が異なる」とミッチェル研究所長デイヴィッド・デプチュラ空軍中将(退役)はThe National Interestに述べていた。「追加課題になる。EMP防護策に大金が必要だ。ここ25年間にわたりコスト削減が叫ばれているが、まだ優先順位は低いままだ」

 

戦略予算評価センター主任研究員のブライアン・クラークはもっと直接的な表現をしている。

 

「わが方の装備品でEMP対策は一部に限られる。旧式アナログ方式装備や冷戦時の装備は耐えられる」とThe National Interestに語った。

 

「大気圏高高度の核爆発でEMP効果が発生するかはっきりしていない。また北朝鮮がその実行に踏み切れば自らも影響を受けるのではないか」

 

戦略予算評価センターで航空戦力を専門とする研究員マーク・ガンジンガーはB-52パイロット経歴を有し、ペンタゴンはEMPのような非対称脅威を想定しているものの、真剣に対応するためには予算獲得が必要だとThe National Interestに述べた。

 

「ここ数十年にわたり、DoDは『ハイブリッド』脅威を振りかざす潜在的侵攻勢力が通常兵器、非通常兵器など非対称能力を組み合わせ運用する事態を恐れており、WMD(大量破壊兵器)もここに含まれる。

 

「DoDの各軍部隊、兵装システムの対応能力整備には予算が必要だ」

 

北朝鮮についてはガンジンガーはEMPで北朝鮮軍にも影響は免れないが、米軍のほうが脆弱ぶりを露呈するのは確実と述べている。

 

「北朝鮮が粗削りなEMP兵器を朝鮮半島で作動させれば、自軍も影響を受け、もっと影響が深刻なのが自らの指揮統制の基本機能だ」

 

高性能機能に依存が高い米軍のほうが影響を多く受けるのではとの問いに、ガンジンガーはそれは別の可能性だと答えた。

 

「可能性は高い、そうだね。ただし、この問題にはまりたくない。

 

「軍用装備に機能不全が発生し、ネットワークも適正に強化していないと影響を受ける。同盟国部隊にも影響が出ることを忘れてはいけない」

 

ただし、北朝鮮が核兵器で都市圏を攻撃しなくても、米軍や同盟国軍部隊の頭上でEMP爆発に踏み切れば、米国が核兵器で反撃するのは必至だ。

 

「超強力EMPで北米大陸の配電網が機能不全になって、大統領は『打つ手がない』と言い訳できるだろうか」と問うのはNonproliferation Review編集者のジョシュア・H・ポラックだ。

 

「そこまで言うとオーバーだ。1.4メガトン核爆弾がホノルル上空で爆発して見通し線内で街路灯数本が消えたが、EMP専門委員会の想定する最悪のシナリオが現実になれば、抑止力にどんな影響が生まれるか予測できない。核攻撃を受け大規模被害が発生したら、同様に破壊的な効果を生む反撃に踏み切るのが自然だろう」

 

いずれにせよ、米国が介入しピョンヤンの現体制を転覆させようとすれば、北朝鮮も自制を考えなくなるだろう。

 

「せっかくの核兵器を理論上のEMP効果の実験用に投入するとは考えにくい」とPloughshares Fundを主宰していた軍備管理専門家ジョセフ・クリンシオンがThe National Interestに述べていた。

 

「EMPはいかれた発想だ。敵が核兵器を投入すれば、核使用の閾値を超え、核兵器による反撃を招く。米軍指揮官が『単なる空中爆発だ。こちらも同様の形で対応しよう』などと言うはずがない。圧倒的かつ破壊的な核兵器攻撃で応対するはずだ。か細いEMP爆発にはならないだろう」■

 

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Are North Korean EMP Weapons a Real Threat or Huge Joke?

March 24, 2021  Topic: North Korea  Region: Asia  Blog Brand: The Reboot  Tags: EMPNorth KoreaMilitaryTechnologyWorldU.S.

by TNI Staff

 

Image: Wikipedia 


クアッドの戦略的意義を考える。NATOのアジア太平洋版ではないが、対中対応には冷戦時の考えが有効だ。


 

 

 

 

アッドは現時点では軍事同盟ではないものの、軍事外交手段により、

中国の領土主張や対外圧力へ対応できる。

 

インド太平洋地区の民主国家間の有志連合クアッドへ中国は不快感を隠そうとしない。「アジア版NATO」とか「ミニNATO」と呼び中国「封じ込め」に必死だというのだ。

 

中国がクアッドを北大西洋条約機構になぞらえるのは間違いとも言えない。クアッドのインド、オーストラリア、日本、米国は大西洋同盟に類似した行動を見せることがある。たとえば、この四か国の海軍部隊がアラビア海でマラバール演習を実施したところで、中国がインド洋進出を図っても協調して押し戻す姿勢を見せている。NATO加盟国の海軍部隊が共同行動でロシアの大西洋進出をけん制している。

 

だが、一つ違う点がある。クアッドは集団防衛条約にもとづく同盟ではなく、ゆるやかな集合にすぎない。NATOというより、第一次大戦前の英仏協商関係に近い。1904年に英仏両国はそれまでの植民地をめぐる対立を解消する一連の合意事項を取り交わした。両国はは共通脅威である帝政ドイツに対抗することとした。ウィルヘルムII皇帝は腹黒い外交手段を行使し既成秩序を破ろうとしていた。フランスの同盟国ロシアもその後加わり、「三国協商」に発展した。その結果、正式な同盟関係ではなく、連合として帝政ドイツ並びにその同盟国へ対決する1914年の第一次大戦につながった。戦前のヨーロッパの史実から現在の中国は心穏やかでいられないのだろう。圧倒的な戦力を整備すると対抗陣営は共同防衛体制を構築するという史実だ。

 

その結果、勝利をおさめるのはどちらか。

 

米国が1945年以来主導するNATO自体が異例の存在ともいえる。つなり、体制を粉砕した世界規模の戦闘の結果生まれた冷戦と呼ばれる戦略競合状況が長期化したことだ。第二次大戦の戦勝国は終戦後数カ月にして対立するようになった。鉄のカーテンがヨーロッパに広く降ろされ、米国はソ連拡張主義に対抗すべく非共産勢力の結集を目指した。

 

異例な点はこうだ。米軍は戦闘に疲弊した世界各地に展開し、平和の元で各国の復興を助けていた。同盟国が平時に米軍の駐留を認めたことは以前にはなかった。受入国やその国民には受け入れがたかった。米軍は征服者として進駐し、次の侵略を食い止める存在となった。こうした事実から冷戦時の同盟関係は形作られた。となると米国の封じ込め戦略は第二次大戦の産物だったことになる。

 

初代NATO事務局長イスメイ卿が同盟機構の存在意義を短くも正確に表現している。ロシア軍に侵攻させない、米軍は歓迎する、ドイツは抑える。米軍はすでに進駐しており、わざわざ歓迎される必要はなかった。このため各国政府も米軍の存在を要請するのが政治的に容易になった。ソ連を鉄のカーテンの向こうにとどめ、ドイツで軍国主義の再興を抑える。

 

米軍の存在が既成事実になったものの大幅な現状変更にはならなかった。あえて現状をかきまわそうとするより既存体制を守るほうが容易である。

 

類似した考え方がアジアにもあった。イスメイ卿の表現は米主導の各同盟関係の過去、現在、将来の評価に応用できる。これを使えばクアッドは長期にわたる同盟関係ではないことがわかる。米国はクアッドにおいて占領軍の役目ではない。敗戦により日本は米軍の占領下におかれた。日米安全保障同盟は二国間NATOでロシア、中国の侵攻を食い止めるのが主眼だ。

日本国内での米軍プレゼンスは相互に認め合う関係に進化している。日米の関係は互恵の同盟にまで変化しているのだ。

 

オーストラリアが米国に最も親密な友好国であることに疑問の余地はないが、同国が避けたいと考える危険につながりかねない米軍の長期駐留については慎重な姿勢だ。オーストラリア政府は米海兵隊急派部隊に北部ダーウィン港の利用を許し、現在ローテーション配備が続いている。とはいえ、同国での現状は冷戦時のヨーロッパや東アジアとは似てもにつかないものだ。

 

インドはどうか。全く違う。同国は冷戦時に非同盟主義を提唱し、米国とはとげしい関係となり、他方でソ連に親しさを感じつつ、他国との協調は一時的なものに過ぎないと考えてきた国だ。自主独立の気風がインドの戦略方針にも表れている。インドは自国をインド洋の無害覇権勢力とみなす。外部勢力による同盟機構への参加を良しとせず、自国内に外国軍が駐留するなど認められない。インドが戦略自立性を否定するのは極度の脅威が存在する場合に限られる。

 

クアッドはNATOではない。

 

クアッドは選択肢のひとつにすぎない。クアッド加盟国首脳が認めた場合の多国間作戦体制の基盤を敷くものだが、共同作戦への参加は任意である。マラバール演習のような機会を通じ各国の装備、手順、戦術、考え方に理解を深める。「相互運用」あるいは「互換性」も緊密な加盟国間で実現できる。平時だからこそ兵力の蓄積が可能だ。

 

では選択肢とは何か。ここでは中国の「封じ込め」概念が変化していることに留意すべきだ。封じ込めとは冷戦用語で、ジョージ・F・ケナンの有名なソ連体制の解明と共産体制の拡張志向への対応策の提示に源を発する。共産勢力を食い止めないとソ連等の各国に飲み込まれてしまうという恐れが背後にあった。

 

封じ込めとは政策であり戦略だった。政策としては現在の中国に適用できない。中国は巨大かつ野望にあふれ、強硬路線もとることがあるが、NATO結成時の1949年のソ連と異なる。他国政府を屈服させ共産化する意図は北京にないように見える。非共産陣営と経済でつながっており、これはソ連時代にはなかった現象だ。対中政策は別の形になる。

 

戦略としてみれば、特に軍事面さらに海軍戦略では、封じ込めはいかにも適した表現である。東アジアでこれが最も鮮明で、米軍部隊は今や島しょ部分での戦闘展開に備え変貌をとげようとしており、中国海軍空軍が海空で優勢確保するのを妨げようとしている。このアプローチは冷戦時の考え方そのものであり、当時の米国務長官ディーン・アチソンが第一列島線を米国の「太平洋防御の境界線」と呼んでいた。

 

同じアプローチはインド洋にもあてはまる。ただし、集中度は低く、視覚的にも低姿勢となる。インド洋港湾施設へのアクセスを中国に与えないことで中国の軍事進出を打射止めることが可能で、この実施の価値がある。クアッド加盟国は封じ込めの表現をそのまま使うことに慎重だが、それは理解できる。クアッドの存在意義を説明するにあたり、用語の正確な使用が必要だ。対中政策の説明にはリスクがつきものだ。ただしあえて軍事面でリスクをとるべきだ。

 

冷戦時の戦略を見直そう。しかも率直に。イスメイ卿は微笑むはずだ。■

 

Yes, the Quad Should Push Back on Chinese Aggression (Here’s How)

March 31, 2021  Topic: Great Power Competition  Region: Asia  Blog Brand: The Reboot  Tags: ChinaXi JinpingStrategyMilitaryNational Security

by James Holmes

 

James Holmes is J. C. Wylie Chair of Maritime Strategy at the Naval War College. His books have been named to the U.S. Navy, Marine Corps, and Indo-Pacific Command Professional Reading Lists. The views voiced here are his alone. This first appeared earlier and is being reposted due to reader interest.

Image: Reuters

 

2021年3月31日水曜日

スエズ運河巨大船事故で露呈。海上交通閉塞戦術が今日でも有効な点について、安全保障上の関心が必要だ。

 

 

大コンテナ船がスエズ運河を閉塞した今回の事件から海上交通の脆弱性があらためて示された。問題のエヴァー・ギヴィングは誤って通航をストップさせたようだが、軍事部門は今回のような通航封鎖が意図的に行われた場合を想定すべきだ。

 

「閉塞船」戦術には長い歴史がある。英軍は両大戦でこれを使い、南北戦争で北軍も採用した。歴史上では1,000年前の記録がある。古代の話だと笑っていられない。21世紀でも実施例がある。ロシアがウクライナ海軍をクリミアで2014年封鎖した事例だ。老朽船二隻を沈め港湾入り口をふさいだため、ウクライナ艦艇は外海に出られず、陸上から捕獲された。

 

世界各地の港湾で船舶は限られた水路を航行している。水路の幅は大型コンテナ船より狭い。攻撃勢力が船員を買収し意図的に沈没させる、座礁させる、狭い地点に衝突させればどうなるか。閉塞船を除去するのに数日、数週間要すれば、敵対側は軍事的に有利となり、優位性をそのまま維持できよう。動きの取れなくなった艦艇、潜水艦はミサイル攻撃の格好の標的となる。

 

こうした事態を回避するには船舶を交通難所に近づけなければよいが、巨大な民間船舶が通行量の多い水路を航行しており、時には軍港近くを常時移動しているのが現状だ。悪意ある動きの排除は困難だ。巨大船は停止するのも容易でない。今回スエズ運河をふさいだ船は20万トンだった。エンパイアステートビル並みの全長があり、フットボール競技場15個分の面積がある。このような一隻が狭い水路で固定施設に衝突する、別の船に衝突する、座礁する、あるいは爆発物を作動して自沈したら....

 

悪意ある行為でこの戦術を使えば、解除は困難になる。時限爆弾や仕掛け爆弾が船内いたるところにあればどうなるか。ひとつ爆発すれば別の爆弾探知に時間がかかり、解除作業は大幅に遅れる。貨物艙に電子妨害装置を隠せば、サルベージ作業の交信に障害が生まれる。船舶の制御系にマルウェアがあれば、各システムが障害を受ける。そこにミサイル攻撃があれば、問題船の除去はさらに遅れ、艦艇は軍港から出られないままとなる。

 

閉塞船戦術の効果をさらに高める新技術がある。2013年のRANDレポートは無人船舶による攻撃の可能性を指摘している。高い技術は不要だ。老朽船を使えばよい。自律運航技術が向上しており、海軍研究本部のロボット装備制御センシング制御アーキテクチャCARACaSは低コストで無人船舶を実現できる。船舶からセンサー情報や映像を衛星経由で送れば遠隔操作が可能となる。ただし、この場合は通信妨害で機能を阻害できるが、無人自律船舶は妨害手段に比較的強い。

 

この手段は米軍立案部門に費用対効果が高い選択肢となる。安価な老朽船舶で高額な潜水艦、水上艦の動きを止められる。すでに海軍は敵軍港近くを通行する民生海上運航の現状を観察しており、老朽船を実際に購入し CARACaSを装着して通航の難所近くに移動させる案を検討している。出動可能な敵潜水艦や水上艦の数を減らせば、米海軍の対応も容易になる。さらに開戦前なら、事故を装って犯行の意図を隠せる。

 

反対に米国は敵対勢力が閉塞船で米海軍艦艇、同盟国艦艇の動きを封じる戦術に警戒する必要がある。これは海軍だけの問題ではない。各軍の作戦は海上輸送に依存している。米陸軍が海軍以上の輸送船舶を保有しているのはその証左である。米軍は各地の港湾、水路を民生船舶と共有している。閉塞船攻撃を防ぐため、各軍は沿岸警備隊あわせ民間部門との連携を強め、障害物の早期除去能力を実現すべきだ。同様に海外でも連携を深めるべきだ。

 

今回の事件で巨大船一隻で運河通航を不能にし、貿易全般に大きな負担を発生できることが実感された。ロシアがクリミアで示したように老朽艦一隻で大きな効果が生まれる。海上交通のもろさに無人船舶の利用、電子戦術、サイバー攻撃が加われば、同様の戦術を採用する動きにつながり、効果はさらに拡大しかねない。■

 

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The Suez Grounding Was an Accident. The Next Blocked Chokepoint Might Not Be

GETTY IMAGES

Military planners must bear in mind the tactic of blockships.

BY SCOTT SAVITZ

SENIOR ENGINEER, RAND

MARCH 30, 2021 12:51 PM ET

 

Scott Savitz is a senior engineer at the nonprofit, nonpartisan RAND Corporation.