2022年2月10日木曜日

PLANの055型レンハイ型大型駆逐艦の実力とは。大型艦に強力な装備を搭載した手強い存在なのか、それとも....?

 米海軍は055型を巡洋艦と認識していますが、PLANは一貫して駆逐艦と呼んでいます。

 

055型レンハイ級巡洋艦のVLS二基は、米海軍のMk41VLSより大型だ。

 

055型レンハイ級は多くの点で中国海軍PLANによる米海軍イージス巡洋艦への対抗策だ。大型重装備の同級各艦は中国空母の護衛を任務とする。新たに入手した情報から同級の建造物が続いているようだ。


 

8隻完成ずみの055型レンハイ級巡洋艦が存在感を増している。PLAN保有の水上戦闘艦中で最大の戦力を有するは疑う余地なく、新情報として2隻が大連で建造中だと判明した。

 

055型初号艦は南昌(101)で2017年6月進水し、その後7隻が大連、上海で建造された。排水量13千トンと現在建造中の水上戦闘艦として世界最大だ。米イージス巡洋艦より約25パーセントほど大きい。

 

20年前の中国艦艇は西側、ロシア双方に大きく遅れを取っていた。米国がイージス搭載防空駆逐艦の建造を進める中で、中国艦は短距離ミサイルしか搭載していなかった。だが055型の登場で米海軍タイコンデロガ級イージス巡洋艦に匹敵する艦が生まれた。

 

米海軍のイージス戦闘システムの中核は強力なAN/SPY-1パッシブ電子スキャンアレイ(PESA)レーダーだ。大型のフェイズドアレイで、各艦に4基搭載し全方向を監視する。これに高度自動化と統合機能を組み合わせ、優秀な状況認識能力が実現する。これまで中国の装備品は数十年遅れている観があった。

 

大連で艦艇二隻の建造が始まっている。分析したところ055型巡洋艦二隻のようだ。

 

これが2000年代になると変化し、中国艦艇が一気に近代化した。そのひとつが052C型ルーヤンII級で中国版のイージス駆逐艦とされる。052型は052D型ルーヤンIIIに発展し、346Aフェイズドアレイレーダーを搭載した。AN/SPY-1と異なり、これはアクティブ電子スキャンアレイ(AESA)だ。

 

055型には346B型の最新装備が搭載されている。イージスと実戦でどんな違いがあるのかは非公表だ。ただ明らかなのは中国製装備品が成熟度を上げており、確実に改良されていることだ。中国部隊にも同様の状況認識能力が実現していると考えてよい。

 

重武装


高性能レーダーに組み合わされる垂直発射管システム(VLS)が各種兵装を運用できる。対空ミサイルに加え、対潜、対地攻撃用だ。055型のVLSはタイコンデロガの122より少ない112だが、セルは大型になっている。ただし兵装装てん方法が異なる。この違いは技術の差というより運用方法と優先順位の違いだろう。

 

防空装備はきわめて類似している。中国のHHQ-9ミサイルにはロシアS-300の影響が色濃く、米スタンダードミサイルと似た役割を想定している。米海軍ではESSM短距離防空ミサイルも搭載しており、VLSセルに短時間で装てん可能だ。中国055型にはこれに匹敵する装備はないと思われるが、かわりに24連装のHHQ-10短距離装備がつく。米中ともに近接対空装備CIWSを搭載する。

 

また中国のYu-8対潜ミサイルはおおむね米海軍のVL-ASROCに近い。

 

狙いが違う

 

中国艦では対水上艦戦に重点を置いている。このためYJ-18長距離超音速対艦ミサイルを搭載している。同ミサイルと比較するとタイコンデロガ級のハープーンはいかにも小型で旧式に映る。ハープーンは最大8発搭載するが、055型はもっと多くのYJ-18を積める。

 

一方でタイコンデロガ級はトマホーク対地攻撃巡航ミサイル(LACM)を搭載する。055型もLACMとしてYJ-18を利用するようだ。中国には巡航ミサイルを多数そろえており、055型にLACM運用能力がないとは考えにくい。

 

そして兵装面で大きな違いは対弾道ミサイル(ABM)能力だ。米イージス艦はRIM-161(SM-3)ミサイルで中距離弾道ミサイルの迎撃が可能だが、中国艦にはこれに匹敵する装備は導入していないようだ。

 

中国独自の装備として055型で対艦弾道ミサイル(ASBM)を将来導入するとの予想がある。この場合は大型といえども現行VLSの改装が必要となろう。

 

米巡洋艦は一世代前の設計


米中の巡洋艦で最大の違いは艦齢だ。055型は外観、設計思想で一世代新しい。055型の傾斜つき構造とクリーンな艦橋まわりはタイコンデロガ級の角ばった外観と対照的だ。ただ外観だけで戦闘艦の能力は比較できない。とはいえ、米艦が長期にわたり供用されていることは明白だ。

 

タイコンデロガ級は40年近く供用され、退役があと数年というところになってきた。一番古いUSSバンカーヒルの退役は来年の予定だ。各艦には、巡洋艦の後継艦はない。かわりにアーレイ・バーク級駆逐艦の最新仕様艦が想定される。

 

アーレイ・バーク級の最新版フライトIIIはタイコンデロガ級より新しいものの、055型と比較すれば基本設計が1980年代と古い。かつ、艦容は中国艦より小さく、VLSセル数も少ない。もちろんそれだけで米駆逐艦が055型に劣るわけではない。多くの面で両艦は近い存在だ。

 

重要なのは、艦設計を比較しての議論があることだ。20年前は比較対照がなかった。今や、中国艦艇は、そのような議論を成立させるだけの威容を示している。

 

問題は現在大連で建造中の最新055型が先に建造された8隻と異なるのかだ。ASBMはじめ新装備を搭載する可能性は十分ある。■

 

 

Bigger Than A US Navy AEGIS Cruiser: China Is Building More Type-055s - Naval News

H I Sutton  12 Jan 2022


2022年2月8日火曜日

防衛省がすすめる高出力マイクロ波(HPM)兵器開発に注目。ミサイル、無人機への新たな対抗手段になる期待。制約となるSWaPとは?

  


Image of Chinese J-20 stealth fighter which could be soon armed with laser weapons.

 

 

アジアで殺人光線開発レースが始まったのか。日本はマイクロ波兵器開発に乗り出す。アジアの空が強力なエナジーいっぱいになりそうだ。

 

本の防衛省が高出力マイクロ波(HPM)兵器の完全開発に乗り出すと読売新聞が報じている。中国にはJ-20ステルス戦闘機用にレーザー兵器を開発中との記事が出た。

 

 

読売新聞は「防衛省は高出力マイクロ波(HPM)兵器の全面開発を開始し、無人機の無力化をめざす。令和4年度より開始する」との日本政府関係者発言を伝えている。

 

「防衛省は5年以内に試作型を完成させるとし、次年度予算に72億円(62.5百万ドル)を計上した」

 

米、中、ロシア各国もレーザー、マイクロ波含む指向性エナジー兵器開発に取り組んでいる。運動性エナジー兵器のミサイルや火砲より安価な選択肢となり、無人機やミサイルの迎撃に期待がある。爆発物搭載の小型無人機の大群が飛来すれば、運動性兵器では発射弾がすぐ底をつき、数で圧倒される。

 

マイクロ波兵器なら「光速で標的に照射し、高精度で命中する。飽和攻撃に対応しながら、低コストかつ発射回数に制限がない。電力消費が唯一の制約だ」(読売新聞)

 

だが、指向性エナジー兵器には制約がある。雨天や霧など天候条件で出力や有効射程が下がる。外形寸法、重量、電源(SWaP)が指向性エナジー兵器の実現を困難にしている。

 

とはいえ、HPMでのミサイル防衛で突破口が開けば、周辺国のミサイル脅威にさらされる日本に朗報だ。北朝鮮は定期的に弾道ミサイルを日本近海に打ち込んでおり、第二次朝鮮戦争となれば日本が標的になるのは確実だ。中国は膨大な弾道ミサイルを保有し、尖閣諸島をめぐる武力衝突で日本に向け発射してもおかしくない。中国の侵攻を受けた台湾を日本が支援しても同様の展開が予想される。

 

HPMは日本のミサイル防衛体制の補強にも役立つ。読売新聞は「HPM兵器によりイージス艦のSM-3、地上のPAC-3誘導ミサイルによる現在の二段ミサイル防衛に補完効果が生まれる」と述べている。

 

だが興味を引くのはアジアの指向性エナジー兵器開発競争だ。中国政府が後ろにつく環境時報は先月、J-20ステルス戦闘機がレーザー兵器を搭載するとの記事を出した。だが、サウスチャイナモーニングポスト紙の記事では「中国は最先端戦闘機にハイテク兵器搭載を目論み、レーザーあるいは粒子ビームを想定するものの、エンジン出力の不足が足かせになる」とある。■

 

Here Come the 'Death Rays': Japan is Building Microwave Weapons - 19FortyFive

 

ByMichael PeckPublished23 mins agoHere Come the 'Death Rays': Japan is Building Microwave Weapons - 19FortyFive

A seasoned defense and national security writer and expert, Michael Peck is a contributing writer for Forbes Magazine. His work has appeared in Foreign Policy Magazine, Defense News, The National Interest, and other publications. He can be found on Twitter and Linkedin.

 


2022年2月7日月曜日

米国は台湾を防衛できるのか。ペンタゴンを取り巻く4つの課題を解決すれば強力な米軍が再出現するが...時間はあるのか。翻って日本のMoDはここまでの改革をやり遂げる覚悟があるのか。

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VAN CHOLAKOV/SHUTTERSTOCK

 

 

米軍は台湾を防衛できるのか。

4つの課題が立ちふさがる。

 

国政界で台湾防衛関連の議論が激しさを増し、米国が台湾防衛にいつ、なぜ関わる必要があるのか、任務実施にどんな障害があるのか点検が進んでいる。予算編成で国家安全保障に高い優先順位をつけているか。米軍の装備近代化は順調に進んでいるか、中国への優位性を維持しているのか。

 

こうした疑問を考え込む余裕はない。

 

中国の対台湾観は23百万人が暮らす民主政体の島しょ部、中央の意向に反逆する地方省で北京が支配統制すべき場所だ。1979年台湾関係法で米国に台湾防衛の義務はないが、曖昧な言い回しで米国はそのための実力を維持すべしとある。

 

米国にとって台湾は放置できないことは明らかだ。中国が台湾を制圧すれば、PRCの前方基地が本土から150マイル先に出現し、中国機やミサイルが日本やオーストラリアといった米同盟国の重要貿易通商路にそれだけ近づくことになる。

 

台湾を手中に収めれば、強固な技術基盤も中国のものとなる。PRCはマイクロエレクトロニクスに不可欠な半導体産業基盤を自由にできる。

 

米中経済安全保障検討委員会による最新の年次報告が米議会に提出されたのは2021年11月のことで、それによれば中国の軍事力整備が続き、「戦略環境は根本的に変化した」とし、台湾海峡をめぐる軍事抑止力は弱体化し、米国の地位も後退している。

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台湾をめぐり、中国との対決という最大の危機的状況が数年で現実になる兆候がある。

 

阻害要因

 

そのとおり、台湾が米国にとって重要で、中国の実力が着々と整備されているのなら、中国が行動開始する時が近づいているのなら、米国が台湾から求められれば防衛に当たる実力があるのかを聞きたくなる。米軍の実力はこの任務を成功に導けるのだろうか。

 

端的に言えば、実現不可能だ。

 

なぜかといえば米軍への障壁が4つあるからだ。

 

まず、現政権は防衛に優先順位をおいていない。2022年度予算要求にこれが現れている。

 

次に、年間予算の歳出認可手続きが遅れており、国防場面で購買力が低下し、出動体制の整備が遅れ、優位性の実現もそれだけ遅れている。

 

3番目に防衛の定義が拡大し、国防関連の資源と関心度が非国防関連の優先事項に流れている。

 

4番目に、現在の仕組みとルールでは新鋭戦力のテスト、調達、導入が迅速に展開できない。

 

こうした障壁を作っているのは政権、議会、国防総省だ。逆に言えば、解決可能なはずだ。

 

国防が優先政策になっていない

 

予算管理局(OMB)発表の2021年4月時点での各省庁の2022年度上位政策事項を見ると、国防は明らかに優先順位が低い。OMB資料には国防の文言もない。国内関係支出は16%増なのに対し、国防分野はインフレ率にも及ばない有様で、同文書作成時点のインフレは今よりずっと低かった。

 

2022年度の行政府による予算要求が5月末に予定されており、国防への関心度の低さがあらためて目立つことになりそうだ。ホワイトハウスの予算総括でも軍事力について具体的言及はない。

 

バイデン政権は7,150億ドルもの国防総省(DoD)予算を編成したがインフレに対応していない。急上昇する物価に対し、国防予算は失速気味で、新規事業に必要な予算投入ができず、国防力の実効性が犠牲となっている。

 

これがなぜ問題になるのか。

 

2000年以降のDoD支出実績では作戦実行・装備整備(O&M)の規模は新装備調達費用の二倍になっている。装備品が老朽化すればO&M経費はどんどん上昇する。実際に米軍装備品は急速に老朽化している。空軍機材の平均機齢は31年で一部は60年だ。海軍艦艇の大部分は同型艦の建造が終わリ久しい艦だ。さらに空母では2020年に保守整備燃料補給や重整備で半数が出動できなかった。

 

対照的に人民解放軍海軍は今や世界最大規模の艦隊となったとペンタゴンは認め、核戦力整備も加速していると議会向け年次報告で認めている。さらに中国が極超音速ミサイル発射テストを実行したのは「スプートニクに迫る衝撃」だったとしている。

 

国防支出増加分の実態

 

民主党主体の議会でも国家安全保障関連予算を軽視したことを自覚している。2022年度国防予算認可法ではDoD予算を予算要求に対し250億ドル3%分上乗せした。この歳出は決定されておらず、2022年度予算の最優先事項は不明だが、上院も予算を230億ドル追加する提案をしている。議会がこうして予算増を認めているのはここ数年にわたり国防予算を非国防関連に流用してきた罪の意識がある証拠だろう。とはいえ、国防支出を増やす必要を認めつつあるのは明らかだ。

 

大枠が決まれば、現行部隊の出動体制維持にまわし、新型装備も徐々に投入可能となる。また、研究開発試験評価 (RDT&E) が成果を発揮してくるだろう。

 

2023年度予算では国防予算の実質増を求め、グローバル大国として米国は一度に複数の地域で事態に対応可能となる。

 

継続決議を廃止せよ

 

二番目に年間歳出承認手続きの遅れが購買力を低下させ、結果として競争力維持を危うくしている。

 

DoDは継続決議(CR)が2022年2月18日まで効力をゆしている中で動いている。CRとは前年度の予算手当と優先事項を新年度に継続させ、議会が年間予算支出で合意できず政府機能が停止するのを避けるのが目的だ。現在のCRが終了するとDoDは12年に渡り予算編成上の成約を受けてきたことになる。

 

CRの結果は高く付き、国家安全保障にも傷跡を残した。CR措置が長くなるほど被害は拡大する。議会証言もあったが、CRの負の影響は予算要求にも影を落としている。

 

ロイド・オースティン国防長官は2022年度通年でのCR措置について「大規模かつ修復不能な負の影響が両党合意の優先政策に広く発生する」と述べていた。

 

国防総省による技術革新上の優先事項としてサイバー、人工知能、極超音速技術があるがことごとく進展が遅延せざるを得ない。巨額予算を本来あるべき相手方の脅威への対応や変わりつつある国家安全保障環境へに対応に向けられなくない、結果として中国と比較しての米国の優位性を後退させ、技術革新や近代化を遅らせ、出動体制を低下させ、結果として国民に外を及ぼす。同時に敵勢力は安堵し、同盟国は真鍮穏やかにならず、本来必要のないストレスが我が方にかかってくる。

 

現在のCRについて2021年12月2日に議会で討議があり、議員からは年間全部を対象とする予算編成の重要性を訴える声が出た。年次予算歳出案を通過させることが「最も基本的な憲政上の責任」だとの意見があった。民間産業側もCRがもたらす破壊的効果について意見具申しており、議会もこれを記録に残した。だがCRが国家安全保障に悪影響が出るとの声は明確に出ているにも関わらず、さらに歳出の認可が議会の基本的な責任であるにも関わらず、議場での議論は両党がそれぞれ相手を非難することに費やされ、するべき仕事が進展していないのは誰の責任なのかを追求している。

 

他方で時間が経過しており、十分かつ適切な予算を執行できなければ国家戦略や台湾防衛に必要となる軍事力が発揮できない。

 

この二番目の障壁に対する解決策は単純だ。議会は責任を発揮し年間歳出案を遅延なく通過させ、毎年のように継続決議に依存しなくても良くすることだ。

 

国家安全保障の定義とは

 

3番目に非国防支出項目が国防予算に引き続き計上されており、むしろ増えているのは定義づけが拡大したためで、予算資源と管理の力点が非国防関連事項に流れている。

 

一般国民はDoD予算はどんどん増えており、軍事装備品や作戦遂行へ予算を使っていると考えているだろう。実はこれは誤りだ。長年に渡り、国防予算に軍事力整備と無関係、国家安全保障と無関係の事業予算が組み込まれている。

 

バイデン政権は「国家安全保障」の意味を再定義しようとしている。非軍事予算支出をさらに多く国防予算に組み入れ、ただでさえ減少気味の国防上の重要事項関連で事態を複雑にし、予算形状そのものを不確かにし、台湾防衛の実行を成功裏に遂行する米国の力を分散させてしまいかねない。国防長官の考える統合抑止力構想では国家防衛戦略の書き直しを狙い、ハードパワーや軍事力への服従を更に進めて外交政策を裏から支えたいというものだ。

 

DoDへ新たな任務が下るたびに統括し、立案し、執行し、評価報告をする。ここに人的、組織的注意度が集まるが、あるべき本来の任務である戦闘に備え、戦争に勝つことがおろそかになる。

 

例をあげよう。DoDは国防保険事業に新規艦艇建造費を上回る規模の支出をしている。100億ドル以上を使っているが、戦術戦闘車両調達費より多い。また環境回復や学校運営に使う予算はマイクロエレクトロニクスと宇宙打ち上げ経費の合計より大きい。

 

この障壁での解決策は国家安全保障の再定義であり、DoD予算を軍事力関連に集中することを米国の優先事項とすべきだ。優先度が低い項目は廃止あるいは他省庁予算に移管すれば本来あるべき軍の即応体制が回復し、装備近代化や作戦実施の予算へ回す余裕が生まれる。当然ながら台湾問題への対処も含まれる。

 

時間の重要性

 

四番目に、染み付いた規則や工程では新型軍事装備品のテスト調達導入が進まない。

 

米国は中国はじめ米安全保障を脅かす相手と対抗する必要に迫られている。前述の通り、DoDへの各種制約のため自由に動ける余地が減り、予算面にもしわ寄せが来ているとはいえ、同省には可能な限り経済合理的な予算執行が必要だ。ここで障害となるのは官僚主義を助長する誘因、リスクを回避し、イノベーション、俊敏性、スピードは二の次にする傾向だ。従来型のビジネス制度で意思疎通が滞っていることもある。また創造的変革を進めず、むしろ忌避する傾向もある。

 

新技術の統合・実用化に将来の戦場の運命がかかる。残念ながら、技術系企業はDoDとの協業が困難と感じている。国防への応用に技術ソリューションは理想的なのに、新規企業の多くが政府向け業務に入ってこない、あるいは早々に退散している。DoDは先端技術企業へアクセスを提供し、戦闘力の維持向上に各社の技術が意味があることを明示すべきだろう。

 

未来コンセプトの軍事作戦を対応可能なプログラミングガイダンスに落とし込むと従来からのライフサイクルに対応した予算措置を断念することになる。これまでは技術とは研究開発から始まり、テスト評価で調達の可否を決め、作戦投入し保守整備するというゆっくりした動きだった。これと逆に予算計上は迅速に行い必要な技術ソリューションを入手し、コンセプトから実戦配備まで短時間で行うことになる。このアプローチでDoDの統括機能管理機能を再評価することになる。

 

一見すると巨大規模の変革が第4の障壁を崩し、DoDの運用を近代化し、進化するイノベーションを前提とした調達方法を採用する必要がある。このためにリーダーシップ、省内価値観の変化、さらに柔軟かつ状況に応じ変更可能な予算構造が必要だ。後者では開発・テスト・配備の流れを迅速かつ反復しておこなえるようにする。

 

近代化のため進化型を採用するチャンスを逃さず活用するべく、ペンタゴンには以下3つが求められる。

 

まず、進化型開発プロセスの本質はオープンエンドであり、予算計上は安定した進展とすべきだ。逆に言えば、歳出にあたっては各軍戦闘司令機能のニーズに予算をつけるべきだ。

 

二番目に、情報時代の軍事力にふさわしい計量可能なビジネスシステムとすべきだ。これは開発の継続に応じ、効果の高い統括能力を実現するためでもある。高度アナリティクス技術は当初DoDの財務監査のサポート用に開発されたものだが、完全実施すればこのニーズに対応できそうだ。

 

3番目に、議会の支援を受け、戦 略 計 画 ・プ ロ グ ラ ム 作 成 ・ 予算 管 理 ・執行 シ ス テ ム(PPBE) のプロセスをさらに進め、この十年で進んだ調達改革に対応させ、迅速かつ反応性の良い活透明な予算計上を特定の開発段階や年度と紐付けせず、実現すべきだ。ここに来て採択されたNDAA条項ではこの課題を担当する委員会が発足する事になっており、うまく編成すれば、どの事業が想定どおりなのかそうでないのかを峻別しながら、どの変化が一番良い効果を上げるのかが明らかになる。

 

結語

 

台湾防衛の立案では上記4つの障壁を解決する必要がある。

 

適正な予算手当が米軍の優先事項の実現に不可欠だ。国防予算はインフレを考慮し、支払うべき金額は増えるが、競争力維持に必要な近代化を実現する必要がある。

 

議会は優先事項を念頭に憲政上の基本責任をしっかり執行し、年次歳出法案を成立させるべきだ。国防上の優先事項を前にして善意を頼りにしたり、相互に非難し合う余裕はない。

 

国防はあくまでも中核機能へ焦点を当てるべきで、抑止し、備え、戦勝することが第一のはずだ。政権や議会は非国防関連支出を国防予算から外し、この国が安全保障に使う規模を明確にしつつ、連邦政府の優先事項はその他省庁との関連で実現していくべきだ。

 

最後になるが、DoDは議会とともに立案、プログラム作成、予算作業、さらに世界最高の戦闘力の維持向上を実現すべく、過去のしがらみを断ち切るべきだ。

 

上記4つの障壁が消えれば、米国はこれからの対応すべてを成功裏に行う力を急速に拡大でき、もちろん台湾防衛も可能となる。■

 

Is the US Military Ready to Defend Taiwan? | The National Interest

by Elaine McCusker Emily Coletta

February 6, 2022  Topic: Taiwan  Region: Asia Pacific  Tags: TaiwanChinaPeople's Liberation ArmyMilitaryTaiwan Relations ActU.S. Military

Any defense of Taiwan planning must fix four barriers to succeed. 

 

Elaine McCusker is a senior fellow at the American Enterprise Institute (AEI). She is a former Acting Under Secretary of Defense (Comptroller). 

Emily Coletta is a project coordinator and research assistant at AEI.

Image: Flickr


2022年2月6日日曜日

3Dプリント技術で潜水艦用部品調達を狙う米海軍。コロンビア級SSBNの建造本格化で年間3隻建造体制となれば、サプライチェーンに負担が増えるための画期的解決策になるか。

  

攻撃型潜水艦USSシカゴがパールハーバーの中間整備施設で作業を受けている (Dave Amodo/U.S. Navy)

 

要不可欠なコロンビア級弾道ミサイル潜水艦建造計画で想定される最大リスクに産業基盤へのしわ寄せがある。

 

積層造形技術による製造方式、つまり3Dプリント技術がその解決方法になる。

 

 

米海軍は部品需要に対応できない供給業者は積層造形技術企業と組ませ、部品を24時間体制で供給させたいとしている。狙いは潜水艦の産業基盤で最も弱い鋳造、鍛造、艤装品にある。

 

戦略潜水艦整備室主管のマット・サーモンMatt Sermonはこの方法で対象企業、なかには唯一の製造業者となっている企業もあり、に現在の受注分をこなすのにさえプレッシャーを感じているところでさらなる増産を無理なく行うことにあると説明。

 

現在の産業基盤でヴァージニア級攻撃型潜水艦二隻を建造しているが、そこにコロンビア級SSBN一隻が加わり、稼働中の潜水艦整備作業も行うことになる。

 

ただ、ブロックVヴァージニア級一号艦の建造は始まっており、艦中央部にヴァージニア・ペイロード・モジュールを加えるため建造工数が約25%増える。またコロンビア級2号艦の発注は2024年で2026年から毎年一隻で建造となるので、建造元、供給業者の業務量が急増する。海軍はSSBN1隻、SSN2隻の毎年調達を「1プラス2」と呼ぶ。

 

部品発注量が減らないのであれば、「積層造形技術で部品を作れば、1プラス2となっても対応できる」とサーモンは言う。

 

海軍では潜水艦用各部品を認証している。サーモンはこれにかわり、高品質素材や工程を積層造形に使うべきとする。

 

だが、海軍は以前も同じ方法で苦労している。航空機関連で積層造影技術が提唱され、非重要部品のプリント許可を求めてきたが、海軍は許可しなかった。空母USSジョン・C・ステニス艦上に初の高度製造ラボを設置したが、レーザースキャンと積層製造ツールで打撃群艦艇用部品を製造したのであって、航空機用部品は手掛けていない。

 

潜水艦用の積層造影技術応用部品も航空機用と同様にリスクがあり、潜水艦、航空機ともに厳しい安全基準で乗員の安全を守っている。だがサーモンによれば、技術部門が議論に加わっており、技術保証が次の検討対象になるという。海軍海洋システムズ本部の技術兵站部が推進室に同行し、積層造影技術応用のベストプラクティスの現場を視察した。

 

「積層造影技術により元の素材を上回る結果が得られる」とし、「複雑かつ微細な製造だが、根本から状況を変える可能性を秘めている。非破壊検査のやり方を変える必要もある。出来上がりが悪いからではなく、製造法が全く異なるからで、根本の理解が必要となる」

 

プリント部品を潜水艦に応用する動きは昨年11月に海軍が供用中潜水艦に初めて搭載する方針を発表したことで始まったとサーモンは説明。

 

同推進室では対象部品を6から10点選定し、リスト作成では「トラブルの多い部品」で必要な時に入手困難となるのが常の部品を想定したという。

 

部品メーカーへの仕事がなくなるわけではない。むしろ、技術力があるメーカーが3Dプリント応用をサポートする、技術力が無いメーカーはこの限りではないとサーモンは発言。積層造影製造の技術力がないメーカーには実施可能な別業務を与えるという。

 

サーモンからは積層造影製造の利点が次のように説明された。まず、1プラス2時代で製造能力不足を解消できる。部品不足で建造や修理が滞る事態を回避できる。

 

長期的に同技術の応用部品で認証が下りれば、海軍は業界とともに次世代SSN(X)への応用を想定し、建造費用を削減しつつ、現在より優れた部品、残存性に優れた部品の実現へ道を開くとする。■

 

Navy looks to 3D printing for submarine parts to ease burden on strained industrial base

By Megan Eckstein

 Feb 5, 01:06 AM