2023年1月12日木曜日

CSISによる米中戦シミュレーション:西側はかろうじて台湾防衛に成功するものの、大きな代償を払う。だから、こうした事態を防ぐため抑止力整備が必要だ。

台湾をめぐる米中軍事衝突が発生した場合のCSISシミュレーションで悲惨な姿が見えてきた

 


国は死傷者何千人を出すが、最終的には勝利する。これはで、2026年に中国が台湾へ水陸両用侵攻を試みるシナリオでのウォーゲーム24回試行の結論だ。

 ウォーゲームは、民間や軍の意思決定者が戦略を試す一般的な方法だ。多くの場合、高度に機密化されており、その結論、方法論、前提が公に詳しく説明されることはない。

 しかし、台湾がワシントンと北京の間の大きな争点として浮上してきたため、CSISはその結果と方法論を公表するという異例の措置をとった。

 CSISが発表した演習の要約には、「機密扱いウォーゲームは国民に透明でない」と書かれている。「適切な分析がなければ、公開討論が成立しない 」と。

 スミス・リチャードソン財団より資金提供を受けた今回のウォーゲームは、多様な参加者とともに、各種シナリオを検討した。ウォーゲームのルールは、理論的な兵器性能を含む歴史的データと研究に基づいたもの。

 北京が軍備を増強し、自治領である台湾を強制的に中国本土に統合させようとしているため、米国の議員、当局者、オブザーバーは、インド太平洋での軍事衝突への懸念を強めている。国防総省は新国防戦略で中国を「ペースメーカー」の課題に挙げた。しかし、台湾をめぐる戦争で米軍がどのように戦うのかは、これまで不明であった。

 国防総省によるウォーゲームは政策に影響を与え、軍事戦略を形成するもので、高解像度画像や米軍、同盟国、敵国の装備に関する機密情報などの情報評価や非公開データを利用する。しかし、CSIS報告書では、機密扱いのウォーゲームの「仮定と結果さえも一般には不透明」と指摘している。

 ミッチェル航空宇宙研究所の所長であり、ウォーゲームに参加した退役米空軍中将デビッド・A・デプチュラretired USAF Lt. Gen. David A. Deptulaは、「おそらく最も重要なことは、今回のウォーゲームを公開で行ったことだ」と述べた。「このゲームでは、通常、機密事項として扱われるため、議論されることのない結果について、開かれた議論と対話が可能になった」と述べた。

 24回繰り返されたゲームでは、両軍の消耗が激しく、米軍の水上艦や航空機が大量に失われ、長距離精密誘導弾がすぐに枯渇する悲痛な結果が示された。日本に駐留する米軍を攻撃すれば、日本は即座に紛争に巻き込まれる。

 「ほとんどのシナリオで、米国/台湾/日本は中国による通常型の水陸両用侵攻を撃退し、台湾の自治を維持した。しかし、防衛には高いコストがかかる」と、著者のマーク・カンシアン、マシュー・カンシアン、エリック・ヘギンボサムMark Cancian, Matthew Cancian, and Eric HeginbothamはCSIS報告書に記している。「米国と同盟国は、何十隻もの艦船、何百機もの航空機、そして何万人もの軍人を失った。台湾は経済的な打撃を受けた。さらに、この大きな損失は、長年にわたって米国の世界的な地位を損なう結果を生んだ」。

 2022年のピューリサーチセンターの世論調査によると、アメリカ人の86%が中国の軍事力を「やや深刻」または「非常に深刻」な問題ととらえている。台湾と中国の緊張関係についても82パーセントが同様に感じている。

 しかし、中国との紛争がどのような事態を招くか、米国に流血と財産の犠牲をもたらす可能性があるかについては、一般にはほとんど知られていない。

 「空母打撃群が太平洋に沈むような損失を、米国は国家として受け入れる準備ができているのだろうか。私たちは長い間、国家としてそのような損失に直面する必要はなかった」。新アメリカ安全保障センターのゲームラボの責任者で、今回のウォーゲームに参加したベッカ・ワッサーBecca Wasserは、次のように語ってる。「インド太平洋で効果的に抑止するためには、最悪のシナリオに備える必要があり、そのためには、今、変化を起こす必要がある」。

 CSIS報告書によると、アメリカは、AGM-158C長距離対艦ミサイル(LRASM)のような長距離精密兵器の供給に早急に対処し、より分散した空軍基地での運用に備え、航空機用シェルターを強化し、爆撃機戦力を強化しなければならない、などの提言が見られる。

 「準備不足のままで、国民が目を覚ますには損失が必要であり、できれば修正する時間が欲しい」とデプチュラは述べた。

さらにワッサーはこう言った。「戦争が起こってほしいからではなく、戦争が起こらないようにするため、戦争を演じようとしている」。■

 

 

CSIS Simulation Offers a Rare Look at US-China Clash over Taiwan and the World of Wargaming | Air & Space Forces Magazine

Jan. 9, 2023 | By Chris Gordon

 


2023年1月11日水曜日

米国が開発中の極超音速機3型式は21世紀の空に再びスピードの威力を復権させる



開情報によれば、米国で少なくとも2機(おそらく3機)の極超音速機が秘密裏に開発中であることが明らかになってきた。こうしたプラットフォームが実用化されれば、アメリカが中国やロシアに一貫して負けているとされてきた極超音速兵器競争に終止符を打つことが約束される。

しかし、最も驚くべきことは、再利用可能な極超音速航空機を飛行させるアイデアは今回が初めてではないことだ。ソビエトのスプートニク衛星が軌道に乗る前から、アメリカは有人極超音速爆撃機を開発していた。



X-20 ダイナソアの実物大モックアップ。. (U.S. Air Force photo)


1957年10月のスプートニク発射を前に、ボーイング(ペーパークリップ作戦で渡米したドイツ人技術者も参加)は、極超音速爆撃機「X-20ダイナソア」開発を開始した。ロケットで打ち上げ、ブースターから分離し、リフティングボディ形状を利用し大気圏をバウンドし、マッハ18以上の速度で膨大な距離を移動する(大気圏外での速度をマッハ数で表すことは必ずしも適切ではない)機体だった。

 この頃、ノースアメリカンの有人ロケット極超音速機X-15も実験を開始しており、1959年に無動力で初飛行した。


発射機から引き離されるノースアメリカンX-15。X-15は、1959年から1968年にかけ飛行したロケットエンジン搭載の極超音速機である。 (U.S. Air Force photo)



1960年、空軍はた新型宇宙爆撃機のパイロット選びに着手し、第一陣として30歳の海軍テストパイロットで航空技術者のニール・アームストロングが選ばれた。アームストロングは1962年4月にX-15を操縦した後、X-20プログラムから完全に離れ、新設のNASAでさらに高い速度と高度を追求することになった。そして、4年後に打ち上げられるジェミニ8号の指揮を執り、その3年後に人類初の月面着陸を果たした。

 X-20ダイナソアの最初のモックアップは、全長35.5フィート、翼幅20.4フィートだった。同計画は当時の技術水準で実現可能だった。だがコストがダイナソアの消滅を招いた。


X-20計画で選ばれた宇宙飛行士たち。. (U.S. Air Force photo)



「U-2のようなブラック計画として進めていれば、実現したかもしれない」と、元空軍歴史部長のリチャード・ハリオン博士は言う。同プログラムは、最終的に1963年12月10日に棚上げされ、NASAのジェミニ計画により多くの資金を振り向けることが優先された。


最新鋭ミサイルもコストが制約条件だ


X-20は、現代の極超音速兵器より半世紀ほど古い計画だが、現代の兵器と共通する部分も多くある。実際、ロケットで上空に運ばれた後、無動力で極超音速で地球に降下するX-20は、ロシアや中国が実用化しているブーストグライド兵器や、中国が2021年に実験したフラクショナル・オービタル・ボマーダメント・システムを組み合わせたものと見ることができる。

 そして、X-20と同様に、最新の極超音速システムが直面する最も大きな制限は、高マッハ飛行に特有の大規模な工学的ハードルより、課題を克服するための膨大なコストだ。米国は最近、開発中の極超音速ミサイルのコストが1基あたり1億600万ドルに上る可能性があると評価した。つまり、マッハ5以上のミサイルは1回しか使えない兵器なので、新品のF-35Aよりも数百万ドル高くつく可能性があるということだ。

 このようなコストは、極超音速ミサイルの潜在的な用途を大幅に制限し、ロシアと中国がこれまでに開発した極超音速ミサイルが抑止力カテゴリーに分類される理由にもなっている。抑止力兵器とは、核弾頭ICBMのようなシステムで、主に迫り来る脅威として使用されるる。抑止力の真価は、その使用というより、使用の脅威の中にある。



例えば、ロシアの核ミサイル「アバンガルド」は、アメリカの防空能力に関係なく、核弾頭をアメリカ本土に確実に到達させる。中国のDF-ZFは、太平洋上にあるアメリカの航空母艦を脅かすため開発された。いずれも使えば必ず大規模な戦争になるので、外交交渉でそれぞれの国の大鉈(おおなた)を振るうためのものである。

 つまり、極超音速兵器は単発で使うには膨大なコストがかかるため、大半の作戦では非現実的となる。しかし、再利用可能な極超音速プラットフォームがあれば、低コスト軍需品を同等の速度で輸送できるため、コスト面での価値提案を劇的に変化させることができる。

 現在、国防総省の資金援助を受け活発に開発が行われている極超音速機計画が2つ、そしてまだ確定していないものの、実は最も成熟していると思われる3つ目が公表されている。



極超音速機(1) メイヘム


(オリジナルのボーイング社提供の写真をAlex Hollingsが加工)


最初に紹介するのは、空軍研究本部の「メイヘム」プログラムだ。同計画は、現在国防総省が資金を調達中の極超音速プログラム70以上の中で、世間の注目を浴びることなくひっそりと行われていた。しかし、高速ミサイルの実用化を目指す取り組みと異なり、メイヘムは、単一用途のミサイルよりはるかに価値のあるものを目指している。

 メイヘムの焦点は、極超音速飛行の聖杯を開発することにある。「既存システムより大積載量を長距離にわたって」推進することができる複合サイクルターボファン・スクラムジェット推進システムで、通常の航空機と同様に離着陸できる。

 空軍は、2028年10月15日までに試験を完了することを目標に、メイヘムに攻撃作戦(兵器の運搬)および情報、監視、偵察任務を与えることを要求している。2022年12月、空軍はバージニア州に本社を置くレイドスLeidosに、メイヘムの継続的な開発のため3億3400万ドルを授与した。

 「このプログラムは、標準化ペイロードインターフェースでミッションを複数実行できる、より大型スの空気呼吸式極超音速システムを提供することに焦点を当て、重要な技術的進歩と将来の能力を提供する」と空軍の契約発表に書かれている。

 スクラムジェット(超音速ラムジェット)は新しい技術ではなく、何十年も前からテストされているが、現在までのところ、スクラムジェットをミサイルや航空機に搭載して運用するのに成功した国はない。スクラムジェットを通過する空気は超音速で流れるため、点火が非常に難しく、ハリケーンの中でマッチに火をつけるようなものだと言われる。


NASAによるスクラムジェット解説図。


「スクラムジェットは、まだ未熟な技術です」。テキサス大学サンアントニオ校の極超音速・航空宇宙工学のDee Howard寄付教授、Chris Combs博士は、Sandboxx Newsに次のように語っている。「正しく機能させるのは本当に難しく、起動不能、燃料混合、火炎保持など、未解明の基本的な問題があります」。

 しかし、スクラムジェット運転を成功させた実績はある。米国では2004年にマッハ9.64に達したNASAのX-43Aや、2013年にボーイングのX-51ウェーバライダーなど、スクラムジェット技術実証機で繰り返し成功を収めてきた。最近では、レイセオンロッキード・マーティンが、DARPAのHypersonic Air-breathing Weapon Concept(HAWC)ミサイルプログラムでスクラムジェットのテストを行い、ロッキードがX-51のスクラムジェットによる最長継続飛行記録を破るなど、成功を収めている。

 しかし、スクラムジェットを実用化するだけでは、再利用可能な極超音速航空機の動力源として十分ではない。スクラムジェットは低速では効率的に機能せず、停止状態では機能しないため、これらの推進システムは離陸と加速のために別システムに依存しなければならない。

「ラム/スクラムジェットの問題は、超音速の流れがないと機能しないことです」とCombsは説明する。「ロケットは、ゼロから軌道上速度へ到達できますが、酸化剤を積まなければならないので、相対的に効率が悪くなります。だから、難しい問題なんです」。

 しかし、自力で離着陸可能な飛行機を作るためメイヘムはスクラムジェットと、ターボファンエンジンを組み合わせる。

 メイヘムは、ターボファンで離陸・加速し、おそらくマッハ2を超える速度で飛行する。スクラムジェットが機能するのに十分な速度で飛行すると、気流はターボファンをバイパスし直接スクラムジェットに供給され、航空機はマッハ5を超え、潜在的にはマッハ10をはるかに超える速度まで加速されることになる。


極超音速機(2) ダークホース

極超音速機「ダークホース」。 (Hermeus)


アトランタに拠点を置くハーミウスHermeusが、米軍向けに再利用可能な極超音速航空機ダークホースDarkhorseの実用化を目指しているのが、もうひとつの公開プログラムだ。

 Sandboxx Newsでは、世界初の再利用可能な空気呼吸式極超音速航空機だけでなく、他の注目すべき防衛努力の何分の一かのコストで、ハーミウスが実用化に向け驚異的な進歩を遂げていることは承知している。2021年、ハーミウは米空軍から極超音速推進システムの開発継続に6000万ドルの契約を獲得し、2022年には防衛大手レイセオンが同社に未公表の金額を投資してこれに続いた。

 ハーミウスは、ダークホースの詳細をほとんど明らかにしていないが、いくつかの点については断言できる。極超音速飛行で、メイヘムと異なるアプローチをとり、複合サイクルエンジンにスクラムジェットの代わりにラムジェットを採用している。これにより、極超音速飛行に伴うエンジニアリングの頭痛の種を減らすだけでなく、コストを劇的に削減できる。


極超音速航空機Darkhorseの飛行中のイメージ図。(ヘルメス社) (Hermeus)


 ハーミウスの最高製品責任者兼創業者Mike Smaydaは、Sandboxx Newsに電子メールで次のように語った。「会社設立の柱の1つは、部品やサブシステムレベルで極超音速機を製造できるほど技術が成熟してきたことでした。最大の技術的課題は、任務を遂行するのに十分な効率性を持つシステムに、すべてをまとめ上げることです」。

 ラムジェットはスクラムジェットと非常によく似た機能を持つが、ジェット噴射口内に内部体(ディフューザーと呼ばれることもある)を使用し、流入する空気を亜音速まで減速させ、点火を簡単にする。


ラムジェットの解説図 (Wikimedia Commons)


12月、ハーミウスはプラット&ホイットニーのF100ターボファンを、F-15イーグルに搭載するキメラChimera エンジンのベースとして使用することを発表した。

 2022年、ハーミウスはキメラエンジンがターボファンからラムジェット出力に移行する様子を風洞で実証した。このパワープラントは、今年後半に飛行予定の同社のクオーターホース技術実証機に使用される。キメラはクォーターホースに搭載されるが、ハーミウスはさらに大型で強力なエンジンをダークホースに搭載する予定だ。

 ラムジェットを使うということは、ダークホースの速度はマッハ6以下、つまり時速約4,600マイルに制限される可能性が高い。また、極超音速で弾薬を発射すること自体、膨大な技術的課題を伴うため、極超音速の速度が高くなると、プラットフォームの積載量が制限される可能性がある。

 取材でHermeusはダークホース機を武装する計画をあからさまに示したわけではなく、国防総省のニーズを推測させないよう注意していました。しかし、シューフォードはセンサーノードを搭載する可能性を示唆し、何らかのペイロードを搭載することはすでに視野に入っているようだ。

 Hermeusは、極超音速機Darkhorseを2025年に完全公開する意向という。



極超音速機(3) SR-72SR-72 Lockheed Martin render



メイヘムとダークホースはどちらも秘密主義的とはいえ、共に公に開示された取り組みだ。しかし、リストの3番目の航空機であるロッキード・マーティンのSR-72は、そうではない。このような航空機を論じること自体が「もしも」の領域に近づくかもしれませんが、ブラック予算の幕の後ろに運用可能なプラットフォームが隠されているのではないかと疑うに足る十分な理由がある。

 ロッキード・マーティンは、伝説のSR-71ブラックバードの極超音速後継機を実戦投入する取り組みについて、2013年にプラットフォームのウェブサイトを立ち上げたときから非常にオープンだった。年が経つにつれ、ロッキードはSR-72のウェブサイトを更新し続け、このプログラムへの関心を高め、2015年にはポピュラーサイエンスがカバーストーリーにするまでになった。



Popular Science, June 2015.


 2年後の2017年、Aviation Weekは、カリフォーニア州パームデールにある米空軍のプラント42の近く、それもロッキード・マーティンの伝説的なスカンクワークス本社と同じ場所を飛行する、乗員なしのSR-72技術実証機が目撃されたとの目撃談を報じた。

 Aviation Weekは当時、ロッキード・マーティン社の航空部門担当副社長であるオーランド・カルヴァーリョにコンタクトを取った。

 「具体的な内容には言及できませんが、カリフォーニア州パームデールのSkunk Worksチームは、スピードへの取り組みを倍増させているとだけ言わせてください」と彼は2017年にAviation Weekに語っていた。

 「ハイパーソニックスはステルスのようなものです。破壊的な技術であり、各種プラットフォームがブラックバードの2~3倍の速度で移動できるようになります...セキュリティ分類ガイダンスでは、速度がマッハ5以上であるとしか言えません」と述べていた。

 2018年初頭までに、ロッキード・マーティン関係者はイベントで公然とSR-72について語り、それが既存のプラットフォームであるだけでなく...すでに試験飛行を行ったものであるかのように議論していた。発言で最も注目すべきは、ロッキード・マーティンの戦略・顧客要求担当副社長ジャック・オバニオンが、フロリダで開催されたアメリカ航空宇宙学会のイベントで発した言葉だろう。


Lockheed Martin’s SR-72 page prior to being purged from their website.


 「デジタル変革がなければ、そこにある航空機は作れなかった」と、オバニオンは2018年、SR-72のレンダリングの前に立ち、聴衆に語りかけた。

 「エンジンそのものを作ることはできませんでした。5年前なら、溶けてスラグになっていただろう。しかし今は、エンジン自体の素材に信じられないほど洗練された冷却システムを組み込んだエンジンをデジタルプリントし、そのエンジンが日常運用のために何度も発射されても耐えられるようにできます」。

 後日、ブルームバーグから発言を追及されたオバニヨンは、こう言った。

「この航空機は極超音速でも機敏に動き、確実なエンジン始動が可能です」と彼はBloombergに語った。

 2022年、『トップガン』が公開され、ロッキード社のスカンク・ワークスで実際に製造された「ダークスター」と呼ばれる架空の極超音速機が登場した。映画の製作総指揮者であるジェリー・ブラッカイマーへのインタビューの中で、Sandboxx Newsは、中国がこのプラットフォームをよりよく見るためスパイ衛星の方向を変え、それが実際の航空機であるという明白な前提で話を進めた。

 運用面では、SR-72は空軍のメイヘムとよく似た働きをするとされ、複合サイクルターボファンスクラムジェットエンジンを使用する。2018年、ロッキード・マーティンはSR-72のウェブページで、まさにそのようなシステムでエアロジェット・ロケットダインと協働していると述べている。(興味深いことに、ロッキード・マーティンはその後、このエンジンメーカーを44億ドルで買収しようとしたが、規制上の障害で最終的に失敗に終わった)。

 しかし、その後、状況は一変した。

 2018年3月1日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が、以来、現代の極超音速兵器競争の発端とされる演説を行った。プーチンは演説で、ロシアはすでに極超音速ミサイルを1基実用化し、2基目がすぐ後に控えていると主張し、その真偽は議論の余地があるが、米国がkぉの脅しを真剣に受け止めたことは明らかだ。

 その直後、ロッキード・マーティン社は自社のウェブサイトからSR-72計画に関するあらゆる記述を削除し、米国が外国の競争相手と同等以上の極超音速能力を得るために努力を重ね始めたのと同じように、この計画は再び暗黒地帯に追いやられることになった。

 SR-72は単なる噂に過ぎないが、マッハ5を達成できるかもしれない噂の1つである。



米国の極超音速機が実用配備するのはいつになるのか

『トップガン マーベリック』に登場した極超音速機 "ダークスター"。. (Image courtesy of the U.S. Air Force)


 Hermeusは2025年にDarkhorseを正式発表する意向で、空軍研究本部は2029年にメイヘムプログラムのテストを完了させる意向だ。ロッキード・マーティンのSR-72については、すでに飛行しているかもしれないし、飛行していないかもしれない。

 しかし、正確な日付はともかく、極超音速機の導入は極超音速兵器競争における極めて重要な瞬間となる。極超音速は、第三次世界大戦以外の用途には高価すぎて使えない絶妙な抑止力の領域から抜け出し、マッハ5以上の能力がアメリカの通常作戦部隊に正面から位置づけられることになるのだ。

 極超音速機を弾薬運搬に使用すれば、米国は高価な極超音速兵器の開発を制限し、より低コストの既存の弾薬を世界のどこにでも同じ緊急性で運搬できる高速航空機を配備できるようになる。また、極超音速のスピードと機動性のおかげで、かつてのSR-71と同じように、最新の統合防空システムを打ち負かせるだろう。


ロッキード・マーティンによるSR-72のレンダリング画像


 しかし、これらのプラットフォームが米軍に提供できる価値は、兵器運搬だけではない。衛星のカバー範囲が限られたエリアでの情報収集など、必要不可欠な高速運用の手段としても機能する。

 Hermeusのシュフォードは、Sandboxx Newsに次のように語った。「戦略的な競争や、敵対する相手と近距離にいる場合、長距離を素早くカバーする必要があり、ターゲットを素早く見たり、通信ノードがダウンしたときにネットワークを再構築する必要があります。素早く現地に到着し、新しい通信ノードを落とすことができるようになる」。

 20世紀の大部分を通じて、空は音速の2倍から3倍で空を横切ることができるホットロッドが支配してきたが、ステルス革命でそれをすべて変えた - 腕力よりも低観測性を優先させ、動作速度を下げた。しかし、21世紀は、スピードが復権し、ステルスが脚光を浴びそうだ。■


The secretive race to field America's first hypersonic aircraft - Sandboxx

Alex Hollings | January 9, 2023



Feature image courtesy of Hermeus

 

Alex Hollings

Alex Hollings is a writer, dad, and Marine veteran who specializes in foreign policy and defense technology analysis. He holds a master’s degree in Communications from Southern New Hampshire University, as well as a bachelor’s degree in Corporate and Organizational Communications from Framingham State University.

 

2023年1月10日火曜日

ウクライナへ供与される西側装甲車両各型を比較。M2ブラッドレイ、マーダー、AMX-10RC

 


Officier communication du 4e RCh via Wikimedia



 

ウクライナが西側から入手した装甲車各型を整理してみよう

 

 

 

クライナの国際パートナーは、より重い西側装甲車を送ることを望んでおり、その扉がついに開かれたようだ。ウクライナ軍は、フランスからAMX-10RC重装甲車、ドイツからマーダー歩兵戦闘車、そして米国からブラッドレイ戦闘車を受け取ることが決まっている。

 米国防総省は本日、ウクライナへの大規模な軍事支援の一環として、M2A2-ODSブラッドレー50両と、チューブ発射式光学追跡ワイヤ誘導(TOW)対戦車ミサイル500発、25mm弾薬25万を送ると正式に発表した。国防総省報道官パトリック・ライダー空軍准将は昨日、ブラッドレーがこのパッケージに含まれることを確認していたが、それ以上の詳細は明らかにしなかった。

 

アメリカ陸軍M2ブラッドレー歩兵戦闘車。 U.S. Army

 

また、昨日、ドイツは、ベルリンで数ヶ月間検討されていたマーダーをウクライナに送る計画を確認した。ドイツのオラフ・ショルツ首相は、これまでウクライナ軍にマーダーやレオパードI・II主力戦車を送ることに反対していたが、これは表向き、ロシア政府がどんな反応を示すかについて懸念があったためだ。

 水曜日、フランス政府はAMX-10RCがウクライナに向かうと発表した。

 それ以前は、ウクライナの国際パートナーはソ連時代の戦車や重装甲車両しか送っていない。では、このユニークな3種類の新型車について紹介しよう。

 

フランスのAMX-10RC

 ウクライナが受領するAMX-10RCは、どのような車種かは不明だが、6x6装甲車で、3車種の中で最軽量だが、主砲系が最も重武装である。

 1970年代に開発されたオリジナル版の重量は約17.4トン、改良路での最高速度は約53マイル/時。水陸両用車でもあり、ハイドロジェットで水上を時速4.5マイルで走行できる。

 

フランス国内での訓練で撮影されたAMX-10RC。. Davric via Wikimedia

 

 

その後、アップアーマー型が導入され、全備重量は18.3トンに増加し、遊泳能力も失われた。両型とも乗員は4名、武装は同じで、高火力弾と対戦車弾を発射可能な105mm主砲と同軸の7.62x51mm機関銃を全横転可能な砲塔に装備する。砲塔上部には7.62x51mmまたは50口径の機関銃を追加搭載できる。この設計の興味深い点は、調整可能なサスペンションシステムで、これにより乗員は砲塔の射界外にある目標に主砲を向けることができる。

 2000年代に入り、フランス陸軍はネクスター社に依頼し、残存する256両のAMX-10RCをAMX-10RCRに改修した。サスペンションとドライブトレインの改良、新しいデジタル戦場管理システム、最新の通信設備、新しい自己防衛用スモークグレネードランチャーなど、完全なパッケージが提供された。

 RCRのため新しい追加装甲パッケージが開発され、ロケット推進擲弾筒と同様の軽歩兵対戦車兵器を撃退する設計のスラットスクリーンを特徴とするSEPARと呼ばれるものが含まれている。RCRの基本構成は19トンだが、SEPARアップリケ装甲を装着すると24トンまで増加する。

 フランスがウクライナに送る予定のAMX-10RCの種類や、納入前に紛争時の特定の要求を満たすため、あるいは特定の機密システムを取り除くために、その構成がさらに変更されるかどうかは明らかでない。また、AMX-10RCの主砲は、現在ウクライナで使用中の兵器システムにはない、独特の105mm弾薬を発射することも特筆に値する。昨年ウクライナ軍が受領したスロベニア製M-55S戦車に搭載されている英国設計の105mm砲は、別の弾種を発射する。

 

ドイツのマーダー1

ドイツのマーダー1は、1960年代から正式に開発が始まった重装甲車だ。当初は重量約32.18トン、最高速度約47マイル/時であった。

 初期型は、上部砲塔に20mm自動砲と同軸の7.62x51mm機関砲を搭載した。後期型では、ウクライナが既に制式採用したミラン対戦車ミサイルランチャーと、車体後部の遠隔操作式マウントに7.62x51mm機関銃を追加装備できる。

 歩兵戦闘車であるマーダーは、4人の乗員と5人の追加兵士で運用する設計で、乗員のうち1人はこの部隊のメンバーでもあり、降車地点に到着した後に降車する想定だった。

 その後、マーダー1の改良型が開発された。マーダー1A3は重量が約38.58トンで、旧型に比べ装甲の追加やサスペンション改良などが行われており、主に火器管制室や通信室の改良が行われている。1A4型は新型無線機を搭載し、1A5型は装甲を強化し、重量は41.2トンに増加した。最新の1A5A1型では、MELLS対戦車ミサイルランチャーや先進センサーなど、さらに実質的なアップグレードが行われている。

 ウクライナは、新型の1A5と1A5A1がドイツ軍で現在も活躍していることから、旧型を導入する可能性が高いようだ。ドイツの防衛関連企業ラインメタルは、マーダー1A3を250台ほど保有している。

 

アメリカのM2ブラッドレー

ブラッドレー戦闘車両は、非常に大まかに言えば、マーダー1号と形や機能が似る。1970年代に開発されたブラッドレー初期型は、重量が25トン強で、路上を時速41マイルで走ることができた。上部の完全旋回式砲塔には25mm自動小銃と7.62x51mmが搭載され、さらにTOWミサイルの亜種用の2連ランチャーを備えた。

 ブラッドレーはもともと歩兵戦闘車と重武装・装甲偵察車として設計された。ブラッドレー歩兵戦闘車両はM2、騎兵戦闘車両はM3と呼ばれた。外観はほぼ同じで、一部のビジョンブロックと発射口の配置が異なるだけで、内部の装備も異なる。どちらも乗員は3名だが、M2の内部は兵員を最大6名搭載でき、M3はより少数の騎兵偵察員やその他の弾薬・装備品を搭載するスペースがある。

 1980年代のアップグレードプログラムから、ブラッドレーのA1とA2というバリエーションが生まれ、現在ではオリジナルバージョンをA0sと呼ぶこともある。A1は改良型TOW IIミサイルの発射と消火システム、A2は爆発性反応装甲(ERA)搭載などの装甲強化、エンジンやサスペンションなどの改良が施された。その結果、A2では重量は32トンにまで増加した。

 1991年の砂漠の嵐作戦(ODS)でクウェートとイラクでブラッドレーを使用した経験から、この作戦にちなんだアップグレードパッケージが開発された。M2A2-ODSとM3A2-ODSは、当時最新の熱感知ビジョンシステムを含むセンサーとネットワークの大幅な改良と、対戦車ミサイルに対し赤外線対抗システムが追加された。

 

戦場への影響

ウクライナ当局が数ヶ月前から繰り返し要求してきた西側戦車ではないが、同国の東部と南部でロシアの敵に対し前進を続ける同国軍にとって、各重装甲車は間違いなく利益となる。3種類とも導入以来、世界各地の紛争で採用され、戦闘実績がある。ウクライナでは、戦車をはじめとする重装甲車は、対戦車ミサイルなどの脅威の前に旧式化したという議論が再燃しているが、依然として双方で重要な役割を担っている。

 AMX-10RCは105mm砲を、ブラッドレーはTOWミサイルを搭載し、敵戦車と正面から戦うには適していないが、移動式の対戦車プラットフォームとして、射撃と狙撃の併用は可能である。ウクライナ軍はすでに、アメリカから供給されたハンヴィー搭載のランチャーからTOWを採用している。マーダー1がミランなど対戦車ミサイルを装備すれば、この役割にも使えるだろう。

 「砂漠の嵐」作戦では、ブラッドレーが25mm主砲でソ連製の旧式戦車も撃破できることを実証した。しかし、その性能が劣化ウラン弾を使用した徹甲弾の使用に直結していたかどうかは不明だ。

 AMX-10RC、マーダー1、ブラッドレーの武器は、軽装甲車や非装甲車、要塞などの構造物、ハードカバーや開けた場所にいる敵軍など、さまざまなターゲットに対して有効である。もちろん、ブラッドレーとマーダー1は歩兵戦闘車として、前進する歩兵の保護と火力支援に主な役割を果たすことも可能である。

 また、夜間視力と熱視力は、ウクライナの既存の重装甲車両の多くに搭載されているものよりもはるかに優れている。ブラッドレーのセンサーは、A2-ODSのような古いタイプでも、ウクライナで使用されている旧ソ連設計のタイプに比べ、最近のアップグレードパッケージでも特に高度なものとなっている。このため、日没後も戦闘を続ける能力が明らかに限られているロシア地上軍に対して、特に有効な車両となる可能性がある。

 これらの能力は、クリミア半島を占領している強固なロシア軍に対する大規模作戦を目前に控えたウクライナ軍にとって、いずれも貴重なものとなるだろう。

 

次は戦車か?

AMX-10RC、マーダー1、ブラッドレーは、能力面でも訓練や後方支援などの維持面でも、戦車より一段低いクラスの車両である。ウクライナ軍が各車両の運用・整備に習熟すれば、ウクライナの国際パートナーから、なぜ西側戦車を譲渡できないのかを説明することが難しくなりそうだ。

 「戦車の問題は、さまざまな面で適切な能力があるかが核心で、メンテナンスと維持管理はその一つです」。国防総省のローラ・クーパー副次官補(ロシア、ウクライナ、ユーラシア担当)は、今日の記者会見で、新支援策について次のように述べた。「ブラッドレーは、保守や維持ができる能力があれば、特に重要な装備となる」。「ブラッドレーは訓練なしには機能しない。だから我々は、装備、訓練、(これらの車両を)維持・管理する能力を提供する」。

 また、「ウクライナは戦車を必要としています。オランダと提携して、すでに戦場に到着しているT-72戦車を多数改修したのもそのためだ」とも述べた。「エイブラムス戦車は燃料を大量消費する上に、メンテナンスが非常に困難であることも知っている。だから、戦車の性能の幅を広く見たうえで、ウクライナを支援できるところを見極めたい」とも語っている。

 

ウクライナのT-72A戦車。これまで、戦車に関しては、米国政府とその国際的パートナーは、ウクライナがすでに慣れ親しんでいるT-72の亜種のようなソビエト設計を送ることに重点を置いてきた。. Ukraine Defense Ministry

 

The War Zoneでは、2022年9月にアメリカの国防高官が、ウクライナにアメリカの戦車を送る可能性は「テーブルの上にある」と述べ、燃料を大量消費し、メンテナンスが必要な設計など、エイブラムスの亜種をウクライナに送るメリットとデメリットを探ってみた。これらの問題は、エイブラムスが現代の戦車が一般的に使用するディーゼルエンジンではなく、ガスタービン推進システムを使用していることに起因している。

 昨日、ウォールストリート・ジャーナル紙は、ポーランド政府が、無名のポーランド上級外交官を引用して、ディーゼルエンジンを搭載したドイツ製レオパルド2主力戦車の在庫の一部をウクライナに譲渡することを検討している、と報じた。本日、フィンランドの政治家2人も、ウクライナ軍にレオパルド2の一部を提供することを求めた。また、デンマークの政府高官もレオパルド2の供与に前向きであると伝えられている。

 しかし、このような供与にはベルリン当局の承認が必要で、ドイツはウクライナ軍への戦車供与にはまだ消極的なようである。ドイツの与党・社会民主党の報道官、ウォルフガング・ヘルミヒは最近、マーダー1を「防御的」な装甲車と表現し、レオパルド2は「攻撃的」であり、エスカレートのリスクがあると述べたとされる。

 しかし、ブラッドレーやAMX-10RC、マーダー1の供与は、米国やその同盟国協力国がウクライナ側に提供する兵器システムをの範囲がますます広がっていることを示す最新事例である。ウクライナに対する対外軍事援助の規模や範囲は今後も変化する可能性があるが、米国、フランス、ドイツが大型装甲sh両の派遣を決定したことは、戦場に大きな影響を与える可能性のある重要な進展である。■

 

 

Meet All The Heavily Armored Western Combat Vehicles Ukraine Is Getting

 

BYJOSEPH TREVITHICK|PUBLISHED JAN 6, 2023 6:51 PM

THE WAR ZONE


中国のグレーゾーン戦略に米海軍はこう対抗する----ホームズ教授解説

 

地中海(2022年8月24日)ニミッツ級空母USSハリー・S・トルーマン(CVN75)の飛行甲板で、攻撃戦闘飛行隊(VFA)211の「ファイティングチェックメイト」所属のF/A-18Eスーパーホーネットが発艦準備中。ハリー・S・トルーマン空母打撃群は、米国、同盟国協力国の利益を守るために米第6艦隊の米海軍欧州作戦地域に定期配備中。(U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 3rd Class Jack Hoppe).

 

海軍協会の「海上反乱プロジェクト」の最新エントリー「南シナ海で砲撃せずに勝つ」“Winning without Gunsmoke in the South China Sea,”は、米海兵隊統合中間軍能力局のウェンデル・レインバックとエリック・ダックワース Wendell Leimbach and Eric Duckworthによる成果だ。このオフィスは極めて重要な仕事をしている。ゲームや分析によって、米国とその同盟国協力国には、中国の「グレーゾーン」戦略を打破する手段を明らかにしている。

 米国は、中国が海洋法に反し南シナ海領有権を主張するのを黙って見ているしかない。あるいは、発砲し侵略の責めを負わせることもできる。海洋法は、銃やミサイルで撃ちまくる以外の手段を求めている。それゆえ、受動的黙認と熱い戦争の間の「中間的な武力行使能力」が必要だ。

 リーバック=ダックワース両名は、米軍の文官がグレーゾーン作戦に適用する用語について、一見些細だが本質的な変化を報告している。ごく最近まで、この不透明な領域で効果的に活動する方法を見つけようとする努力は、「非殺傷兵器」の名目で行われていた。しかし、武器とは道具であり、能力ではない。国防総省の定義によれば、能力とは「特定の条件と性能のレベルにおいて、あるタスクを完了し、ある行動方針を実行する能力」である。言い換えれば、何かをする能力である。

 ウィジェット(道具)から戦術、作戦、戦略へと焦点を移したのは賢明な判断であった。

 この場合、必要な能力とは、中国による東南アジアの漁民、沿岸警備隊、海軍への虐待に、暴力に訴えず対応し、萎縮させる能力である。中国の漁船団、海上民兵、沿岸警備隊は日常的に、「排他的経済水域」(EEZ)で東南アジアの近隣諸国が天然資源を採取するのを阻止している。排他的経済水域とは、一般的に沖合200海里の保護区では、沿岸国が単独使用を保証している。

 中国は近隣諸国のEEZに艦船を配備し、国際法の下で同胞のはずのアジア各国の権利を奪っている。その主張を裏付けるため非軍事的な海上サービスを利用し、無法行為から逃れている。だからといって、中国が地域紛争で武力行使を控えるとは限らない。中国の船員は常に武力を行使しているが、あからさまな武力行使は控えている。つまり、銃撃はしていない。例えば、漁船を大量に押し寄せさせ、取り締まりを困難にしている。中国沿岸警備隊は、東南アジアの沿岸警備隊や海軍をも凌駕し、広大な作戦の展望を開いている。

 中級戦力を配備すれば、米国とその地域の当事者は、開戦の敷居を低くし対立をエスカレートしやすくし、中国のグレーゾーン能力に対抗できる。事実上、中国にあえて先に引き金を引かせ、捕食者としての姿をさらすこともできるし、習近平が非強制的な海洋外交にデスケーリングするよう仕向けることもできる。

 現在、武器から能力への用語変更にもかかわらず、武器とセンサーは依然として不可欠な道具である。共著者ふたりは、小型ボートのプロペラに付着して膨張し推進力を妨げる「合成スライム」、電子機器を妨害したり船舶エンジンを停止させるマイクロ波指向性エネルギーシステム、視力を低下させたり光学系を妨害するレーザーなど、斬新で時には狂気じみた技術を列挙している。

 こうした技術革新は喜ばしいが、使いこなすには、グレーゾーン競争の現場に誰かがいなければならない。世界最高の性能でも、使わなければ意味がない。米国の政治家や軍人は、グレーゾーンで中国との競争を意識的戦略的に選択しなければならない。それは、南シナ海に米海軍、海兵隊、沿岸警備隊の船員、船舶、航空機を常駐させることだ。言い換えれば、これまでのように、たまに現れては艦船を走らせるやり方はやめるということである。常駐する中国に争いの場を譲ることになるからだ。

 競争しなければ勝てないし、競争するためには現場にいなければならない。行こう、そして残ろう。■

 

How the U.S. Navy Can Compete with China in the Gray-Zone - 19FortyFive

ByJames Holmes

 

James Holmes is J. C. Wylie Chair of Maritime Strategy at the Naval War College and a Nonresident Fellow at the University of Georgia School of Public and International Affairs. The views voiced here are his alone.

In this article:China, featured, South China Sea, U.S. Military, U.S. Navy