2025年4月4日金曜日

SM-6ミサイルが極超音速兵器への迎撃能力を実証する段階に近づいてきた(The War Zone) ― SM-6で能力拡大が進んでいるようです。さらにここに来て何故か日本がSM-6生産での協力を米側に提示しているようです

  

高機動性の極超音速兵器による脅威の高まりに対処するため、米軍にとってSM-6はもっとも手近な選択肢だ

The U.S. Missile Defense Agency has simulated a successful intercept of a mock advanced hypersonic missile by a Standard Missile-6 (SM-6) as it works up to attempt the real thing.

MDA

国ミサイル防衛庁(MDA)は、実戦に向けた訓練の一環として、スタンダードミサイル6(SM-6)による模擬的な先進極超音速ミサイルの迎撃に成功した。今回のテストではSM-6は発射されなかったが、実物大の標的を使用し、極超音速弾道追跡宇宙センサー(HBTSS)衛星と、アーレイ・バーク級駆逐艦(最新バージョンのイージス戦闘システム搭載)を投入した。

MDAは、米海軍およびロッキード・マーチンと協力し、月曜日、SM-6極超音速ミサイル防衛模擬実験(別名:FTX-40、愛称:ステラ・バンシー)を実施した。FTX-40の実射は、ハワイ州カウアイ島の太平洋ミサイル実験場の太平洋沿岸および上空で行われました。

SM-6ミサイルの発射の様子。米海軍


アーレイ・バーク級駆逐艦「USS ピンクリー(DDG 91)」は、最新のイージスソフトウェアベースラインに組み込まれたシーベースターミナル(SBT)インクリメント3能力を使い、先進的な機動性を持つ極超音速標的の探知、追跡、模擬交戦能力を実証したとMDAのプレスリリースが伝えている。「追跡演習には、標的に対する改良型スタンダードミサイル(SM)6の模擬発射、および極超音速標的車両(HTV)1を先端に装着した空中発射の中距離弾道ミサイル(MRBM)が含まれていました。この標的は、さまざまな極超音速の脅威をテストし、撃破できるように設計されています」。

USS ピンクリーはまた、新型の Surface Electronic Warfare Improvement Program (SEWIP) Block III 搭載を完了した初のアーレイ・バーク級駆逐艦で SEWIP Block III が提供する新たな機能に加え、その統合により艦船の物理的構造に劇的な変化が生まれた。MDAは、FTX-40 に電子戦システム一式が組み込まれているとは明示的に述べていない。

USS ピンクリー米海軍

MDAが公開したビデオと写真には、HTV-1の放出前のテストターゲットのみが写っている。ターゲットは空中でも発射され、これは米国のミサイル防衛テストで使用される大型模擬弾道ミサイルでは一般的です。これらの発射には米空軍のC-17輸送機が使用された。

パラシュートで降下するテストターゲット。

MDA主ロケットモーター点火後のテストターゲット。MDA

HTV-1/MRBMの組み合わせに関する説明は、ミサイルのようなブースターを使用して最適な速度と高度に到達し、その後切り離す、いわゆる無動力極超音速ブースト・グライド・ビークルに一致している。その後、不規則な操縦が可能なグライド・ビークルは、極超音速で標的に向かって比較的浅い大気圏飛行経路を進み、通常、マッハ5以上の速度で飛行する。この速度、操縦性、飛行経路の組み合わせは、迎撃を試みる場合だけでなく、探知や追跡においても防衛側にとって大きな課題となる。ここで重要なのは、多くの従来の弾道ミサイルや、特定のタイプが放出可能な個別の再突入機も、極超音速に達することだ。しかし、それらは大幅に異なる軌道を描き、操縦性は劣る。

従来の弾道ミサイルと極超音速ブースト・グライド車両の軌道の違いを非常に大まかに示した図。空気呼吸式極超音速巡航ミサイルも描かれている。GAO(米政府監査院)

これらを踏まえて、MDAのリリースには「FTX-40は、極超音速および弾道追跡宇宙センサー(HBTSS)の実証衛星によるデータ収集の機会も提供した」と付け加えられている。HBTSSの最初の2基のプロトタイプ衛星、L3Harris製とノースロップ・グラマン製の衛星は、2024年2月に軌道に投入された。MDAは、FTX-40でデータ収集を行った衛星がどちらの企業によるものかは明言していない。

MDAは以前、以下の動画を公開しており、そこではFTX-40テストに関与したとされる資産、コマンドおよび制御ネットワーク、将来のグライドフェーズインターセプター(GPI)が、実際の極超音速ミサイル防衛シナリオにおいてどのように連携するのかについて、比較的詳細な説明が提供されていた。

また、ロッキード・マーチンの別のプレスリリースでは、模擬SM-6ミサイルが、今後登場するブロックIAUの派生型であることが明確に示されている。国防総省のテスト・評価局(DOT&E)によると、ブロックIAUの「U」は「アップグレード」を意味し、「陳腐化問題を緩和するための誘導セクション電子ユニットの更新であり、ミサイルへの更新の組み込みを意図している」。スタンダードミサイル2(SM-2)ブロックIIICミサイルは、SM-6ブロックIAと同じ誘導部を備えており、同様のアップグレードが施される予定だ。アップグレードされたミサイルはSM-2ブロックIIICUとして知られることになる。

MDAの発表によると、「FTX-40は、MDAが開発した新しいテスト標的のリスク低減飛行として、また極超音速標的に対するイージス・ベースラインのデータ収集の機会として重要な役割を果たした。今回の演習は、改良型SM-6を使用したMRBM HTV-1標的の迎撃演習の基礎となるものだ。今回のテストは、イージス・ウェポン・システム43(FTM-43)飛行試験として知られる。「FTX-40は、昨年実施され、アーレイ・バーク級駆逐艦がSM-6を使用して飛行終期段階にある中距離弾道ミサイル(MRBM)目標を検出、追跡、交戦、迎撃する能力を実証したSBT Increment 3飛行試験実験であるFTM-32の成功を基にしていた」と発表文は続く。

FTM-32では、SM-6 Dual II ソフトウェア・アップグレード(SWUP)ミサイルが使用された。SM-6 Dual IおよびDual IIは、既存のブロックIシリーズの派生型で、弾道ミサイル防衛に最適化された構成だ。SM-6ブロックI/IAは、弾道モードで使用される場合、固定翼機や巡航ミサイルなどの従来の防空上の脅威に対する能力だけでなく、海上および陸上の表面目標に対する能力も実証している。

レイセオンの生産ラインで製造中のブロックIシリーズSM-6ミサイル。 ・レイセオン

SM-6のブロックIB改良型は、本体が完全に再設計され、より大型の新型ロケットモーターを搭載する予定で、現在開発中である。

既存のSM-6ファミリーは、現在戦闘で実証済みで、弾道ミサイルに対するものも含む。これは、イエメンのフーシ派武装勢力に対する紅海周辺での継続中の作戦の結果である。

MDAと海軍は、少なくとも2021年以来、極超音速の脅威に対するSM-6の能力を明確に実証する方向で取り組んできた。SM-6の極超音速ミサイル防衛テストは、以前は2024会計年度に実施される予定だったが、昨年9月30日に終了した同会計年度には実施されなかったようだ。

2022年、海軍中将ジョン・ヒル(当時MDA長官)はSM-6シリーズは「米国唯一の極超音速防衛能力」であり、現行のバリエーションは「初期段階の能力」を提供していると述べた。既存のSM-6ブロックI/IAは、飛行の終末期における高度な機動性を持つ極超音速の脅威に対してのみ関連能力を有していると理解されている。

ノースロップ・グラマンは現在、MDA(ミサイル防衛)のために、飛来するブースト・グライド車両に対するより広範な迎撃領域を提供する前述のGPIを開発中である。これに対し、SM-6は、カバーできる地理的領域や使用可能な迎撃ウィンドウにおそらく制限があり、より限定的な極超音速迎撃能力への道筋を示すものである。この能力は、特定の極超音速の脅威から、友好国の水上艦艇や陸上の近隣資産を守るために特に有用である可能性がある。

極超音速による脅威の規模と範囲は、世界的に拡大し続けている。 特に中国、ロシア、北朝鮮が活発に動いており、イランも少なくともこの種の能力を獲得したいという野望を表明している。 昨年、ロシアは新型の中距離弾道ミサイル「オレシニク(Oreshnik)」を公式に初公開した。クレムリンは、ウクライナへの攻撃で、「極超音速技術」を組み込んだと述べている。

極超音速ミサイル防衛能力の向上は、ドナルド・トランプ大統領が掲げる新たなミサイル防衛構想「ゴールデン・ドーム」の目標のひとつとして特に注目されている。

「弾道ミサイル、極超音速ミサイル、巡航ミサイル、その他の先進的な空中攻撃による攻撃の脅威は、米国が直面する最も壊滅的な脅威であり続ける」と、1月に発表された当初の「アイアンドーム」に関する大統領令は宣言している。「過去40年間、次世代戦略兵器による脅威は弱まるどころか、むしろ、同等の能力を持つ敵国やそれに近い国々による次世代の運搬システムや自国の統合防空ミサイル防衛能力の開発により、より深刻かつ複雑なものとなっている。

「機動性が高い極超音速ミサイルを撃破する能力は、危険度を増す脅威からわが国とわが軍を守るため不可欠です」と、MDAのトップ、ヒース・コリンズ空軍中将は、FTX-40に関する発表に添えられた声明で述べた。「イージス兵器システムは次世代の統合防空・ミサイル防衛システムにおいて重要な役割を果たすことになる。そして、本日のテストは、海軍と協力し我が国の極超音速対応能力を向上させる上で、重要な成果を実証した」。

FTX-40が成功裏に完了したことで、MDAとそのパートナーは、代表的な先進的な極超音速の脅威に対するSM-6の実力を試すテストに一歩近づいた。■

SM-6 Missile Closer To Proving Hypersonic Weapon Intercept Capability After Aegis Destroyer Test

The SM-6 is the U.S. military's most immediate option for tackling growing threats posed by advanced maneuvering hypersonic weapons.

Joseph Trevithick

https://www.twz.com/air/sm-6-missile-closer-to-proving-hypersonic-weapon-intercept-capability-after-aegis-destroyer-test


フーシ派が米海軍空母を狙い続ける理由(National Security Journal)―超大型空母を攻撃できるのは誰か

 

ATLANTIC OCEAN (Oct. 29, 2019) USS Gerald R. Ford (CVN 78) conducts high-speed turns in the Atlantic Ocean. Ford is at sea conducting sea trials following the in port portion of its 15 month post-shakedown availability. (U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 3rd Class Connor Loessin).ATLANTIC OCEAN(2019年10月29日)大西洋で高速旋回を行うUSSジェラルド・R・フォード(CVN 78)。フォードは15ヶ月のシェイクダウン後、海上で海上試験を行っていた。(米海軍撮影:コナー・ローシン3等通信兵)


ーシの攻撃が最近失敗したことは、空母の高度な防衛システムを浮き彫りにしている。 空母トルーマンの存在は、重要な航路を守り、戦略的に重要な地域の安定を維持するという米国のコミットメントを強調している。

 アメリカ海軍は、11隻のスーパーキャリアと9隻のヘリコプターキャリアまたは水陸両用強襲揚陸艦からなる艦隊を保有している。合計20隻の空母は次に近い国である中国の3隻の空母と3隻のヘリコプター空母をはるかに上回っている。


Amphibious assault ship USS Makin Island (LHD 8) and aircraft carrier USS Nimitz (CVN 68) perform expeditionary strike force (ESF) operations, Feb. 15, 2023 in the South China Sea. Nimitz Carrier Strike Group (NIMCSG) and amphibious assault ship USS Makin Island (LHD 8) with embarked 13th Marine Expeditionary Unit are conducting joint ESF operations, representing unique high-end war fighting capabilities, maritime superiority, and power projection, demonstrating the U.S. commitment to our allies and partners in the Indo-Pacific region. (U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 3rd Class Kendra Helmbrecht).

2023年2月15日、南シナ海で遠征打撃部隊(ESF)の作戦を行う水陸両用強襲揚陸艦USSマキン・アイランド(LHD8)と空母USSニミッツ(CVN68)。ニミッツ空母打撃群(NIMCSG)と第13海兵遠征隊を乗せた水陸両用強襲揚陸艦マキンアイランドは、独自のハイエンドの戦争戦闘能力、海上優勢、戦力投射を示す合同ESF作戦を実施し、インド太平洋地域の同盟国やパートナーに対する米国のコミットメントを示している。(米海軍撮影:ケンドラ・ヘルムブレヒト3等通信兵)


 USSハリー・S・トルーマン(CVN-75)は9隻目の原子力空母で、ニミッツ級では8隻目。第33代大統領にちなんで命名されたこの艦は、ニューポート・ニューズ造船が1993年11月29日、45億ドルを投じて起工した。

 1996年9月7日、艦のスポンサーである故大統領の娘マーガレット・トルーマン・ダニエルが命名し、9月13日に進水した。

 CVN-75は大西洋艦隊に属し、大西洋海軍航空部隊司令官の下にある。

 大西洋海軍航空部隊司令官(COMNAVAIRLANT)は、米国東海岸を拠点とする6隻の原子力空母、54個飛行隊、1,200機の航空機、43,000人の将校、下士官、文民の責任を負う。

 即応性、作戦の卓越性、相互運用性、安全性、効率的な資源調達に重点を置き、適切な人員、適切な訓練と装備を備えた、戦闘可能で持続可能な海軍航空部隊を提供している。


USSハリー・S・トルーマン

ビル・クリントン大統領は1998年7月25日、バージニア州ノーフォーク海軍基地で2万人が出席した式典でCVN-75を就役させた。クリントン大統領は式典の中で、トルーマン大統領の「責任はここにある」という有名な言葉を翻案し、世界唯一の超大国である米国は「責任は米国にあると言い続けなければならない」と述べた。

 USSハリーS.トルーマンは全長1,000フィート以上あり、世界で最も長い船の一つだ。飛行甲板は約4.5エーカーの広さがあり、離着陸や整備など、さまざまな航空機の運用に十分なスペースを提供している。 この巨大な空母の速力は約30ノット。

 艦の大きさは、居住区や食堂から医療センターや修理工場に至るまで、人員や装備の小さな都市を支えることを可能にする。この巨大な空母の規模により、USSハリー・S・トルーマンは展開中も独立して機能し、必要な資源はすべて艦上で利用できるため、空母は任務遂行能力を維持できる。

 艦運用には約3000人があたり、航行から発電まで、艦のさまざまなシステムの運用と保守を担当している。残りの2,000人は航空団に所属し、パイロット、サポートスタッフ、航空機整備チームなどが、空母の艦隊の任務遂行能力を維持している。

 イランの代理勢力であるフーシ派が同艦の空母打撃群にミサイルを撃ち込んでいる。

 空母からの攻撃機は、数日間にわたりフーシ派の拠点やミサイル発射基地を空爆している。


紅海の航路を守る

フーシ派は、イランの親玉と同様、中東の最小公倍数にアピールするために愚かな主張をしている。教養ある人々は、彼らの自慢が純粋なBBSであることを知っているのがほとんだ。

 フーシ派はUSSエイブラハム・リンカン(CVN-72)を追い払ったと主張し、アメリカに対する「勝利」を誇った。また、イランの主人のように、自分たちは手が出せないという誤った信念に苦しんでいる。  非武装の商船にミサイルを発射しても米空母へのミサイル発射はまた別の話だ。トランプ大統領はこれまで比較的抑制的な対応をしてきた。

 フーシ派は、リンカンの次にUSSハリー・S・トルーマンを標的にしようとしている(失敗している)。

 CENTCOMによれば、「空母打撃群は、旗艦ニミッツ級空母USSハリー・S・トルーマン(CVN75)、9個航空中隊で構成した空母航空団(CVW)1、空母打撃群(CSG)8、CVW-1、駆逐隊(DESRON)28のスタッフ、タイコンデロガ級誘導ミサイル巡洋艦USSゲティスバーグ(CG64)、2隻のアーレイ・バーク級誘導ミサイル駆逐艦USSスタウト(DDG55)とUSSジェイソン・ダナム(DDG109)で構成されている」。


Nimitz-Class Aircraft Carrier210924-N-JW440-1055 SOUTH CHINA SEA (2021年9月24日)。 海軍唯一の前方展開空母USSロナルド・レーガン(CVN76)が南シナ海を通過した。 レーガンはタスクフォース70/空母打撃群5司令部に所属し、自由で開かれたインド太平洋を支援するためのアンダーウェイ作戦を実施していた。 (米海軍撮影:ラワド・マダナット1等通信兵)


フーシ派はUSSハリー・トルーマンへの2回の攻撃を主張したが、米戦闘機はミサイル1発とドローン11機の迎撃に成功し、被害を防いだ。国防総省は迎撃を確認したが、フーシのミサイルの精度は"無能"として退けた。

 アメリカは、フーシの司令部と無人機施設を標的にした精密攻撃で応戦し、さらなる攻撃はイランに直接責任を負わせると警告した。これまでのところ、イランは沈黙を守っているが、USSトルーマンに巡航ミサイルを撃ち込むほど戦術的に間抜けなことができるだろうか?

 イスラエルが10月下旬にイランで行った大規模空爆から何も学んでいないのだとしたら、とんでもないことになる。

 米中央軍(CENTCOM)の司令官マイケル・エリック・クリラ大将は、1月中旬に紅海で作戦行動中のUSSハリー・S・トルーマン(CVN75)を訪問した。

 「USSハリー・S・トルーマン空母打撃群は、米海軍の力強さ、戦力投射、そして戦闘力を体現している。この地域における空母打撃群の存在は、パートナーや同盟国とともに、海洋安全保障を確保し、地域の安定に対する脅威を抑止するという我々のコミットメントを強化するものです。私は、この地域の平和、安全、安定を支援しながら、我が国と国益のために尽くしてくれている人たちの卓越した仕事に感銘を受けています」とクリラ大将は語った。



Why the Houthis Keep Targeting U.S. Navy Aircraft Carriers

By

Steve Balestrieri

https://nationalsecurityjournal.org/why-the-houthis-keep-targeting-u-s-navy-aircraft-carriers/


著者について

スティーブ・バレストリエリは19FortyFiveの国家安全保障コラムニスト。 米陸軍特殊部隊の下士官および准尉として勤務。19FortyFiveへの執筆に加え、PatsFans.comでNFLを担当し、Pro Football Writers of America(PFWA)のメンバーでもある。 彼の記事は多くの軍事専門誌で定期的に紹介されている。



軍用水素電池ドローンが実用化に近づいてきた(Defense One) ― 画期的な長距離ドローンなど常識を破る兵器がこれにより生まれそうです



水素電池を巡る新たなパートナーシップから、長距離ドローンが戦場に姿を現しそうだ


ローンが戦争の本質を変え続ける中、航続距離とパワーの制限が戦場で成否を分けている。 イスラエルに拠点を置くドローン会社ヘブンドローンズHevenDronesと米国の製造会社マックインダストリーズは、水素燃料電池を動力源とするドローンの共同生産に取り組んでいる。

 ヘブンドローンズのCEOベンジオン・レヴィンソンBenzion Levinsonは本紙取材に対し、「両社で毎月1,000機、最終的には1日1,000機のドローンを生産したい」と語った。 より長期的な目標は、10ポンドの機体を搭載できる同社のH2D250ドローンや、その他の製品の需要次第である。

 将来的にはドローンのサイズを大きくする可能性もある。 「スケールの設計図ができ、多くの自動化が可能になれば、あとはどの程度の大きさにしたいか、どの程度のスピードでスケールアップしたいかということになります」とレビンソンは語った。

 水素燃料電池を動力源とするドローンの実験は、NASAが1994年に試作したヘリオスを皮切りに、米国で数十年前から行われている。 海軍研究本部も関連研究と実験に投資している。

 水素燃料電池は、特に防衛目的のドローンで従来のリチウムイオンバッテリーより大きな利点があると、アーカンソー工科大学の機械工学准教授セイエド・ホセイニは言う。彼の研究室では、水素燃料のドローンが従来のドローンの3倍から5倍長く飛行できることを示す実験を行った。"つまり、再充電(燃料補給)なしで、より長いミッションにわたってデータを収集し、分析し、行動することができる"。

 より長い航続距離と、無人機自体に搭載された高度な自律性ソフトウェアを実行するためのより多くのオンボードパワーは、電磁戦の攻撃に対して脆弱な通信チャネルを介して指示を送信する人間のオペレータの必要性を低減する。

 GPSに依存しないナビゲーション実験を含む自律性の向上は、ヘブン社にとって大きな焦点であり、ロシアの電磁戦能力で武装したヒズボラ派に対するイスラエル軍を同社が支援した経験も追い風になっているとレビンソンは述べた。

 ウクライナとロシアの無人機使用の専門家である海軍分析センターのサミュエル・ベンデットは、本誌に次のように語った。「無人機が遠くまで飛べば飛ぶほど、敵の兵站や補給線を混乱させ、接触線から遠く離れた後方にある指揮統制施設を攻撃できる可能性が高まります」。

 これが、ロシアとウクライナの戦争で、双方が常に新しいタイプのドローンを開発し、互いを凌駕し合う、一種の生きた実験室となっている理由の一つだ。

 太平洋で広大な距離の作戦を実施する選択肢を探る米軍には、光ファイバードローンは実現不可能であり、ウクライナで活躍している短時間のドローンも適していない。内燃エンジンを搭載した無人機は長く飛行できるが、熱シグネチャーがあるため発見されやすく、迎撃されやすい。水素燃料電池バッテリーで電気モーターを駆動するドローンでは、シグネチャーはずっと小さくなる。

 「水素のタンクに少量、約1ポンドの水素を燃料電池に入れ、発電します。 「飛行時間は約10時間で、約100マイルです」。

 HevenDronesはまた、離島基地に配備できる水素補給ステーションを開発し、脆弱な補給線に頼る必要性を減らせる、と彼は言う。「どこにいても、海兵隊員でこれを持っているなら、これを持っていくんだろう? 実質的に何もないところから、24時間いつでも水素を作ることができる」。

 しかし、水素燃料電池ドローンを米国で広く普及させるには、他にも課題があるとホセイニは言う。 その大きなものは、中国に支配されている材料と部品のサプライチェーンだ。

 「レアアース、炭素繊維、リチウムイオンバッテリー、一部の電子機器など重要な素材を米国はいまだに中国に依存したままだ。 中国との地政学的対立は、水素ベースのドローンのサプライチェーンを混乱させ、防衛用途を制限する可能性がある。中国からの輸入品への依存を減らし、軍事用ドローンの生産を確保するためには、国内のサプライチェーンへの投資が必要です」と彼は言う。

 こうした懸念は、ヘブンドローンズとマッハの新たなパートナーシップの目標である、ドローンだけでなく、サブシステムやその他の重要な部品の米国ベースのサプライチェーンをさらに発展させることにつながる。「両社は、サプライチェーンが利用できないこと、サプライチェーンのコントロール、価格設定に重点を置いています」とレビンソンは言う。「それが一緒にやっていることの核心的な側面です」。■


Military hydrogen-cell drones poised for big takeoff

A new partnership presents a moment for scaling up new, longer-range hydrogen-cell drones for warfare.

BY PATRICK TUCKER

SCIENCE & TECHNOLOGY EDITOR

MARCH 19, 2025

https://www.defenseone.com/technology/2025/03/military-hydrogen-cell-drones-poised-big-takeoff/403873/?oref=d1-homepage-river


2025年4月3日木曜日

ホワイトハウス発表 2025年4月2日相互関税を発表したトランプ大統領のスピーチ全文―安全保障を総合的に俯瞰した言及もあり、内容は理路整然としていると思います。現状を変更したくない向きが反発しているのでしょう

 


相互関税により輸入を規制し、

米国の貿易赤字に大きくかつ恒常的に寄与する

貿易慣行を是正する大統領令


2025年4月2日


合衆国憲法および法律により大統領として与えられた権限に基づき、国際緊急経済権限法(50 U.S.C. 1701 et seq.)(IEEPA)、 国家緊急事態法(50 U.S.C. 1601 et seq.)(NEA)、改正1974年通商法第604条(19 U.S.C. 2483)、合衆国法典第3編第301条に基づき、 


私、ドナルド・J・トランプは、アメリカ合衆国大統領として、二国間貿易関係における互恵性の欠如、異なる関税率および非関税障壁、そして米国の貿易相手国の国内賃金および消費を抑制する経済政策など、根本的な状況が、米国の年間貿易赤字の累積および持続によって示されているように、米国の国家安全保障および経済にとって異常かつ特別な脅威となっていると判断する。その脅威は、その原因の全部または実質的な部分が、主要貿易パートナーの国内経済政策および世界貿易システムにおける構造的不均衡という、米国以外の場所にある。私はここに、この脅威に関して国家緊急事態を宣言する。


2025年1月20日、私は「アメリカ第一貿易政策に関する大統領覚書」に署名し、我が国の財の貿易赤字が大きくかつ恒常的となっていることの原因を調査し、赤字に起因する経済および国家安全保障への影響とリスクを調査すること、および他国によるあらゆる不公正な貿易慣行の検証と特定を行うよう、政権に指示した。 2025年2月13日、私は「相互貿易と関税」と題する大統領覚書に署名し、貿易相手国の非相互貿易慣行のさらなる調査を指示し、非相互貿易慣行と貿易赤字の関係を指摘した。2025年4月1日、私はかかる調査の最終結果を受け取り、本日、それらの結果に基づいて行動を起こす。 


米国の貿易赤字が恒常的かつ巨額であることにより、製造基盤が空洞化し、国内の製造能力を拡大する能力が阻害され、重要なサプライチェーンが弱体化し、国防産業基盤が外国の敵対勢力に依存する状況が生じている。米国の貿易赤字が恒常的かつ巨額であるのは、二国間貿易関係における互恵性の欠如が主な原因である。この状況は、米国の製造業者が外国市場で製品を販売することを困難にする、異なる関税率や非関税障壁が証明されている。また、米国の主要貿易パートナーの経済政策が、国内の賃金や消費を抑え込み、米国の輸出品への需要を抑制する一方、自国製品の国際市場における競争力を人為的に高めているという点でも証明されている。 このような状況が、今回の命令で緩和し解決しようとする国家の緊急事態を生み出している。


1934年から数十年にわたり、米国の通商政策は互恵主義の原則に基づいて組織されてきた。連邦議会は大統領に対し、まず二国間貿易協定を通じて、その後は世界貿易システムの支援の下で、主要貿易相手国から互恵的な関税引き下げを確保するよう指示した。1934年から1945年の間、行政部門は互恵的な関税引き下げを目的とした32の二国間互恵貿易協定を交渉し、署名した。 1947年から1994年にかけては、参加国が8回の交渉ラウンドを行い、関税貿易一般協定(GATT)と、その後の7回の関税削減ラウンドが実施された。


しかしながら、互恵主義の原則を掲げながらも、米国と貿易相手国との貿易関係は、特に近年、著しく不均衡なものとなっている。 戦後の国際経済システムは、3つの誤った前提に基づいていた。第1に、米国が関税および非関税障壁の自由化を世界に先駆けて実施すれば、他の国々もそれに追随するだろうというもの。第2に、そのような自由化は最終的に、米国の貿易相手国の経済収斂を促し、米国のシェアに収斂する形で国内消費が増加するというもの。その結果、第3に、米国は大きな恒常的な貿易赤字を抱えることはないだろうというもの。


この枠組みにより、相互主義をもたらすことも、米国の国内消費に比べて外国経済の国内消費を一般的に増加させることもないような出来事、合意、約束が動き出した。そして、それらの出来事が、世界貿易システムの特性として、米国の財貿易赤字を毎年大きくかつ恒常的に生み出すこととなった。


簡単に言えば、世界貿易機関(WTO)加盟国は最恵国待遇(MFN)に基づいて関税率を拘束し、WTO加盟国すべてに最良の関税率を提供することに合意したものの、同様に低い水準で関税率を拘束することや、互恵的な関税率を適用することには合意しなかった。 その結果、WTOによると、米国の最恵国(MFN)向け関税率は単純平均で3.3%と世界で最も低い水準にある一方で、ブラジル(11.2%)、中国(7.5%)、欧州連合(EU)(5%)、インド(17%)、ベトナム(9.4%)など、米国の主要貿易相手国の多くは、単純平均最恵国(MFN)関税率がはるかに高い水準にある。 


さらに、これら国の平均最恵国待遇関税率は、特定製品に適用される関税率における経済間の格差をはるかに大きく覆い隠している。例えば、米国は乗用車(内燃機関搭載)の輸入品に2.5%の関税を課しているが、欧州連合(10%)、インド(70%)、中国(15%)は同じ製品にはるかに高い関税を課している。 ネットワークスイッチおよびルーターに関しては、米国は0%の関税を課しているが、同様の製品に対してはインド(10%)の方が高い税率を課している。ブラジル(18%)とインドネシア(30%)は、米国(2.5%)よりも高い税率をエタノールに課している。 もみ米については、米国の最恵国待遇関税率は2.7%(従価税換算)であるのに対し、インド(80%)、マレーシア(40%)、トルコ(平均31%)ではそれ以上の税率が課せられている。りんごは無税で米国に輸入されているが、トルコ(60.3%)やインド(50%)ではそうではない。


同様に、非関税障壁も米国の製造業者に世界の市場への相互アクセスを奪っている。 2025年外国貿易障壁に関する国家貿易評価報告書(NTE)では、米国の輸出品に対する世界での数多くの非関税障壁が貿易相手国ごとに詳細に説明されている。これらの障壁には、輸入障壁やライセンス制限、通関障壁や貿易円滑化の欠陥、貿易の技術的障壁(例えば、不必要な貿易制限的な基準、適合性評価手続き、または技術規制)、 安全目標の達成に寄与することなく貿易を不必要に制限する衛生植物検疫措置、不適切な特許、著作権、企業秘密、商標制度および知的財産権の不適切な行使、差別的なライセンス要件または規制基準、国境を越えたデータフローの障壁およびデジタル製品の貿易に影響を与える差別的慣行、投資障壁、補助金、反競争的慣行、国内の国営企業を優遇する差別、労働および環境基準の保護における政府の怠慢、贈収賄、汚職などである。


さらに、非関税障壁には、為替慣行や付加価値税など、国内の経済政策や慣行、およびそれに関連する市場の歪みにより、国内消費が抑制され、米国向け輸出を促進していることも含まれる。この互恵性の欠如により、米国の国内総生産(GDP)に占める消費の割合が約68パーセントであるのに対し、アイルランド(27パーセント)、シンガポール(31パーセント)、中国(39パーセント)、韓国(49パーセント)、ドイツ(50パーセント)などはるかに低くなっている事実でも明らかである。


同時に、これらの不均衡の是正に向けた米国による取り組みは行き詰まっている。貿易相手国は、関税交渉の新ラウンドや非関税障壁の是正に向けた取り組みなど、多国間および複数国間での解決策を繰り返し阻止してきた。同時に、米国経済が輸入に対して不均衡なほど開放されているため、米国の貿易相手国は二国間貿易交渉の場で米国の輸出品に互恵的な待遇を与えるインセンティブをほとんど持っていない。


こうした構造的な非対称性により、米国の貿易赤字は大きく、かつ長年にわたって続いている。米国が二国間貿易で時折黒字を計上している国々についても、米国輸出品に対する関税や非関税障壁が累積的に積み重なることで、そうした障壁がなければ計上できたはずの黒字額を下回る可能性がある。こうした不均衡を放置することは、米国の国内生産に影響を及ぼすため、今日の経済および地政学的な環境下では持続可能ではない。国内での生産能力は、国家および経済の安全保障の基盤である。


2017年の私の最初の政権も、2022年のバイデン政権も、米国の国家安全保障にとって国内製造業の拡大が極めて重要であることを認識していた。2023年の国連データによると、世界の製造業生産高に占める米国の製造業生産高の割合は17.4%で、2001年のピーク時の28.4%から減少している。


長年にわたる米国の製造業生産高の持続的な減少により、米国の製造能力は低下している。自動車、造船、製薬、テクノロジー製品、工作機械、基礎金属や加工金属といった特定の先進工業分野では、強靭で回復力のある国内製造能力を維持する必要性が特に切実である。なぜなら、いったん競合他社がこれらの分野で十分な世界市場シェアを獲得してしまうと、米国の生産能力は恒久的に弱体化したままとなる可能性があるからである。 また、国防産業分野における製造能力の規模拡大は、国内外における米国の権益を守るため必要となる国防用資材や装備を製造するため不可欠である。 


事実として、米国は他国に軍事装備を多数供給してきたため、米国の軍事備蓄は米国の国防上の利益に見合うにはあまりにも少ない。さらに、米国の防衛関連企業は、バイオ製造、バッテリー、マイクロエレクトロニクスなど、さまざまな重要な分野において、新しい高度な製造技術を開発する必要がある。米国が自国民と国土、さらに同盟国やパートナー国を守るため効果がある安全保障の傘を維持したいのであれば、主要な投入物資を輸入に過度に頼ることなく、これらの製品を製造するための大規模な上流製造から製品生産までのエコシステムを構築する必要がある。


また、外国の生産者への依存度が高まったことで、米国のサプライチェーンが地政学的な混乱や供給ショックに対して脆弱になり、米国の経済安全保障が損なわれることにもなっている。近年、この点における米国経済の脆弱性は、アメリカ人が必需品へのアクセスに困難をきたした新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック時や、その後フーシ派が中東で貨物船への攻撃を開始した際にも露呈した。


米国の製造能力の低下は、製造業の雇用喪失など、他の方法でも米国経済を脅かしている。1997年から2024年にかけて、米国では約500万名相当の製造業の雇用機会が失われ、製造業の雇用は史上最大規模で減少した。 さらに、製造業の雇用減少の多くは特定地域に集中していた。これらの地域では、製造業の雇用減少が家族形成率の低下や、オピオイド乱用など他の社会的な傾向の増加につながり、米国経済に深刻な影響を与えている。


米国の競争力の将来は、こうした傾向を覆すことができるかどうかにかかっている。現在、米国の製造業は国内総生産(GDP)の11%を占めるに過ぎないが、米国の生産性向上では35%、輸出の60%を占めている。重要なのは、米国の製造業が米国におけるイノベーションの主な原動力であり、特許の55%、研究開発(R&D)費の70%を占めていることだ。 米国の多国籍企業による中国での研究開発費は、2003年から2017年の間に毎年平均13.6%の割合で増加しているのに対し、米国での研究開発費は同期間中に毎年平均5%の割合でしか増加していないという事実が、製造業とイノベーションの強い結びつきを証明している。 さらに、製造業の雇用1件につき、他の関連産業で7~12件の新規雇用が創出されており、経済の構築・維持に貢献している。


製造製品を生産しない国は、国家安全保障に必要な産業基盤を維持できないのと同様に、自国の食料を生産できない国も長期的に存続することはできない。 2013年2月12日付の大統領政策指令21(重要インフラのセキュリティと回復力)では、食糧と農業を「重要インフラ部門」と指定した。これは、食糧と農業が「米国にとって極めて重要であり、その機能不全や破壊は...安全保障、国家経済の安全保障、国民の公衆衛生や安全、またはこれらの問題の組み合わせに深刻な影響を及ぼす」とみなされる部門のひとつであるためである。 さらに、当時私が退任した時点での米国は農産物貿易で黒字を計上していたが、今日ではその黒字は消滅している。貿易相手国が課した数々の新たな非関税障壁により、農産物貿易は年間490億ドルの赤字に転落すると予測されている。以上の理由により、私はここに宣言し、命令する。


第1項 国家緊急事態 米国大統領として、私の最も重要な責務は、国家および国民の安全保障を確保することである。 


私は、米国の貿易赤字が毎年大きくかつ持続的に拡大している状況を踏まえ、国家緊急事態を宣言した。この貿易赤字は過去5年間だけで40%以上拡大し、2024年には1兆2000億ドルに達している。 この貿易赤字は、貿易関係における非対称性を反映しており、特に米国の製造業および防衛産業基盤の国内生産能力の衰退に寄与している。こうした非対称性は、米国の生産者の輸出能力にも影響を与え、結果的に生産意欲にも影響を及ぼしている。


具体的には、このような不均衡には、外国の貿易相手国間の非互恵的な関税率の差だけでなく、外国の貿易相手国による非関税障壁の広範な使用も含まれ、米国の輸出品の競争力を低下させると同時に、自国の商品競争力を人為的に高めている。 これらの非関税障壁には、貿易に対する技術的障壁、科学的根拠のない衛生植物検疫規則、不十分な知的財産権の保護、国内消費の抑制(賃金抑制など)、労働、環境、その他の規制基準や保護の弱さ、汚職などが含まれる。 米国と貿易相手国の関税率が同程度であっても、非関税障壁により、著しい不均衡が生じている。


これら不均衡の累積的影響により、国内生産者から外国企業へ資源が移転し、国内製造業者の事業拡大の機会が減少し、ひいては製造業の雇用喪失、製造能力の低下、防衛産業部門を含む産業基盤の衰退につながっている。 同時に、外国企業は生産規模の拡大、技術革新への再投資、グローバル経済における競争で有利な立場にあり、米国の経済および国家安全保障を損なう結果となっている。 


また、米国の貿易赤字が恒常的に巨額に上っている結果として、重要かつ先進的な特定産業分野で国内製造能力が十分でないことも、米国経済のサプライチェーンが混乱に陥った際に回復力が弱いため、米国の経済および国家安全保障を損なう結果となっている。 最後に、米国の貿易赤字が恒常的に巨額に上り、それに伴い産業能力が低下していることは、軍事的な即応性を損なっている。この脆弱性は、米国への輸入の流れを再均衡化するための迅速な是正措置によってのみ是正することができる。軍事的な即応性や国家安全保障体制への影響は、海外での武力紛争が近年増加していることから、特に深刻である。 私は、官民が協力し、米国の国際経済上の立場を強化するため必要な努力を行うよう求める。 


第2項 相互関税政策  すべての貿易相手国からのすべての輸入品に追加の従価税を課すことにより、世界貿易の流れを再調整することが米国の政策である。ただし、本命令に別段の規定がある場合はこの限りではない。すべての貿易相手国からのすべての輸入品に対する追加の従価税は10パーセントから開始し、その後まもなく、本命令の附属書Iに列挙された貿易相手国については、本命令の附属書Iに定められた税率で追加の従価税が増加するこれらの追加の従価税は、上述の根本的条件が満たされ、解決され、または緩和されたと私が判断するまで適用される。  


第3条 実施  (a) 本命令に別段の規定がある場合を除き、米国関税地域に輸入されるすべての物品は、法律に従い、追加の従価税率10%の関税が課される。この関税率は、2025年4月5日東部夏時間午前12時1分以降に消費を目的として輸入申告された、または消費を目的として倉庫から引き取られた商品に適用される。ただし、2025年4月5日東部夏時間午前12時1分前に積出港で船積みされ、最終輸送手段で輸送中の商品は、 2025年4月5日東部夏時間午前12時01分以前に積出港で船積みされ、最終輸送手段で輸送中の物品、および2025年4月5日東部夏時間午前12時01分以降に消費目的で輸入された物品、または消費目的で倉庫から引き取られた物品は、追加関税の対象とはならない。さらに、本命令に別段の規定がある場合を除き、2025年4月9日東部夏時間午前12時1分に、本命令の附属書Iに列挙された貿易相手国からのすべての物品は、法律に従い、本命令の附属書Iに指定された国別従価税率に従うものとする。 ただし、2025年4月9日東部夏時間午前12時1分以降に消費のために輸入申告されるか、または消費のために倉庫から引き出される物品については、この関税率が適用される。ただし、2025年4月9日東部夏時間午前12時1分前に積出港で船積みされ、最終輸送手段で輸送中の物品については、 2025年4月9日東部夏時間午前12時01分以前に積出港で船積みされ、最終輸送手段で輸送中の物品、および2025年4月9日東部夏時間午前12時01分以降に消費目的で輸入された物品、または消費目的で倉庫から引き取られた物品は、本命令の附属書Iに定める国別従価税率の対象とならない。 国別従価税率は、以下に規定する場合を除き、現行のすべての米国通商協定の条件に従って輸入されるすべての品目に適用される。


(b) 本命令の附属書IIに列挙されている以下の品目は、法律に準拠し、本命令に基づく従価税率の対象とはならない。 (i) 50 U.S.C. 1702(b)に包含されるすべての品目、(ii) 1962年通商拡大法第232条に基づき課される関税の対象となる鉄鋼およびアルミニウムのすべての品目および派生物、ならびに2018年3月8日付布告9704(米国へのアルミニウムの輸入調整)、 改正2018年3月8日付布告第9705号(米国への鉄鋼輸入の調整)、改正2020年1月24日付布告第9980号(米国への派生アルミニウム製品および派生鉄鋼製品の輸入の調整)、 2025年2月10日付布告第10895号(米国へのアルミニウムの輸入調整)および2025年2月10日付布告第10896号(米国への鉄鋼の輸入調整); (iii) 1962年通商拡大法第232条に基づき課される追加関税の対象となるすべての自動車および自動車部品(改正済み)で、2025年3月26日付布告第10908号(米国への自動車および自動車部品の輸入調整)で宣言されたもの。 (iv) 銅、医薬品、 半導体、木材製品、特定の重要な鉱物、エネルギーおよびエネルギー製品を含む。 (v) 米国の統合関税スケジュール(HTSUS)の第2列に定められた税率が適用される貿易相手国からのすべての物品。 (vi) 1962年通商拡大法第232条に基づく今後の措置により関税の対象となる可能性のあるすべての物品。


(c) 本命令で定める関税率は、下記本項の(d)および(e)に規定する場合を除き、当該輸入品に適用されるその他の関税、手数料、税金、徴収金、または料金に加えて課される。


(d) カナダからの物品に関しては、2025年2月1日付の大統領令14193(「北部国境における違法薬物の流入への対応のための関税賦課」)に従い、北部国境における違法薬物の流入に起因する国家緊急事態に対処するために、特定の物品に追加関税を課している。2025年2月3日付の大統領令14197(北の国境における状況の進展)および2025年3月2日付の大統領令14231(北の国境における違法薬物の流入に対処するための関税の改正)により改正された、  メキシコからの輸入品に関しては、2025年2月1日付の大統領令14194(南部国境の状況に対処するための関税賦課)に従い、南部国境を越えた違法薬物と不法移民の流れに起因する国家緊急事態に対処するため、特定の品目に追加関税を課している。2025年2月3日付の大統領令14198(南部国境の状況の進展)および2025年3月2日付の大統領令14227(南部国境の状況に対処するための関税の改正)により改正された、  これらの国境緊急関税措置の結果、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)に関連するHTSUS第98章第XXIII部および第99章第XXII部に規定されるあらゆる処理を含む、HTSUSの一般注釈11の条件に基づくカナダまたはメキシコのすべての商品は、引き続きこれらの優遇条件で米国市場に参入する資格がある。ただし、USMCAに基づく原産地規則を満たさないカナダまたはメキシコからのすべての品目には、現在、25%の追加の従価税が課されており、カナダから輸入されるエネルギーまたはエネルギー資源、およびUSMCAに基づく原産地規則を満たさないカリ肥料には、現在、10%の低い追加の従価税が課されている。 


(e) 本命令の規定に基づきカナダまたはメキシコから輸入される物品に対する従価税率は、本項(d)に記載されている現行命令で規定されている従価税率に加えて適用されないものとする。 本項(d)で特定された当該命令が終了または停止された場合、USMCAに基づく原産地規則を満たすカナダおよびメキシコの品目はすべて追加の従価税の対象とはならないが、USMCAに基づく原産地規則を満たさない品目は12パーセントの従価税の対象となる。 ただし、カナダおよびメキシコから輸入される物品に対するこれらの従価税率は、エネルギーまたはエネルギー資源、カリ、または実質的に米国で完成された物品の一部または構成部品であるUSMCAに基づく免税措置の対象となる物品には適用されない。


(f) さらに一般的に、本命令で定める従価税率は、対象物品の非米国産材料のみに適用される。ただし、対象物品の価値の少なくとも20パーセントが米国原産である場合に限る。本項の目的上、「米国原産」とは、米国で完全に生産された、または実質的に加工された部品に起因する物品の価値を指す。 米国税関・国境警備局(CBP)は、法律で認められている範囲において、輸入品目に関する情報および書類の収集を要求する権限を有し、これには、CBPが当該品目の米国製コンテンツの価値を確定および検証し、また当該品目が米国で実質的に完成されたものであるかどうかを確定および検証するために必要な、申告書類の提出が含まれる。


(g) 対象物品は、19 CFR 146.43で定義されている「国内ステータス」で輸入が認められるものを除き、本命令第2条で規定されている関税が課され、2025年4月9日午前12時1分(東部夏時間)以降に外国貿易地域に搬入される場合、 2025年4月9日東部夏時間午前12時1分以降に外国貿易地域に搬入されるものは、19 CFR 146.41に定義される「特恵外国」として受け入れられなければならない。


(h) 19 U.S.C. 1321(a)(2)(A)-(B)に基づく免税のデミニマス規定は、本項(a)に記述される物品に対して引き続き適用されるものとする。 19 U.S.C. 1321(a)(2)(C)に基づく免税のデミニマス条項は、本項(a)で記述された物品について、商務長官が大統領に、本項に従って免税の対象となる物品について関税を完全に迅速に処理し徴収する適切なシステムが整っている旨を通知するまでは、引き続き利用可能とする。 かかる通知後、本条(a)項に記述された物品については、合衆国法律集第19編第1321条(a)(2)(C)に基づく免税の最低限の取り扱いは適用されないものとする。 


(i) 2025年4月2日付の大統領令(低価値輸入品に適用される中華人民共和国における合成オピオイドのサプライチェーンに関する関税のさらなる改正)は、中国からの低価値輸入品には影響せず、対象品目に関するすべての関税および手数料は、必要かつ詳細に規定されているとおりに徴収されるものとする。


(j) 積み替えおよび回避のリスクを低減するため、中国製品に対して本命令またはその後継命令により課されるすべての従価税関税率は、香港特別行政区およびマカオ特別行政区の製品にも等しく適用される。


(k) 本命令に記述される関税率を確立するため、HTSUSは本命令の附属書に記述される通りに修正される。 これらの修正は、本命令の附属書に定める日付をもって発効する。

(l) 本命令に特に記載がない限り、外国貿易相手国との貿易に関するこれまでの大統領布告、行政命令、またはその他の大統領指令または指針で、本命令の指示と矛盾するものは、本命令を完全に実施するために必要な範囲で、ここに終了、停止、または修正される。


第4条 修正権限  (a) 商務長官および米国通商代表は、国務長官、財務長官、国土安全保障長官、経済政策担当大統領補佐官、通商・製造担当上級顧問、国家安全保障問題担当大統領補佐官と協議した上、必要であれば、本措置が上述の緊急事態の解決に効果的でない場合、追加措置を大統領に勧告するものとする。米国の貿易相手国による全体的な貿易赤字の増加や、米国の経済および国家安全保障上の利益を脅かすような非互恵的な貿易取り決めの最近の拡大など、 

(b) 貿易相手国が米国の輸出品に対する輸入関税またはその他の措置により、この措置に対して米国に報復する場合には、私はこの措置の有効性を確保するために、この命令により課される関税の範囲を拡大または拡大するようHTSUSをさらに修正することができる。


(c) 貿易相手国が非互恵的な貿易協定を是正するため重要な措置を講じ、経済および国家安全保障の問題について米国と十分に足並みを揃える場合、私はHTSUSをさらに修正し、本命令に基づき課される関税の範囲を縮小または制限することができる。


(d) 米国の製造能力および生産高が引き続き悪化する場合、私はHTSUSをさらに修正し、本命令に基づく関税を引き上げることができる。


第5条 実施権限   商務長官および米国通商代表は、国務長官、財務長官、国土安全保障長官、大統領経済政策補佐官、通商・製造問題担当上級顧問、国家安全保障問題担当大統領補佐官、および国際貿易委員会委員長と協議の上、本命令を実施するため必要となる場合、IEEPAにより大統領に付与されたすべての権限を行使することが認められる。 各執行部局および機関は、その権限内で、本命令を実施するためあらゆる適切な措置を講じなければならない。


第6条 報告要件  米国通商代表は、国務長官、財務長官、商務長官、国土安全保障長官、経済政策担当大統領補佐官、通商製造担当上級顧問、および国家安全保障問題担当大統領補佐官と協議の上、 本命令で宣言された国家緊急事態に関して、NEA(50 U.S.C. 1641(c))の第401条(c)およびIEEPA(50 U.S.C. 1703(c))の第204条(c)に準拠した、定期的および最終的な報告書を議会に提出する権限をここに付与する。


第7条 一般規定。

 (a) 本命令のいかなる規定も、以下のものを損なう、あるいはその他の影響を与えるものと解釈されてはならない。

(i) 法律により行政省庁、機関、またはその長官に与えられた権限、あるいは

(ii) 予算、行政、または立法に関する提案に関する行政管理予算局局長の職務。

(b) 本命令は、適用される法律に準拠し、かつ、歳出予算の確保を条件として実施されるものとする。

(c) 本命令は、いかなる者に対しても、合衆国、その省庁、機関、事業体、その役員、職員、代理人、またはその他の人物に対して、法律上または衡平法上、強制可能な実体上または手続上の権利または利益を創設することを意図するものではなく、また創設するものでもない。


ドナルド・J・トランプ

ホワイトハウス、

2025年4月2日。



https://www.whitehouse.gov/presidential-actions/2025/04/regulating-imports-with-a-reciprocal-tariff-to-rectify-trade-practices-that-contribute-to-large-and-persistent-annual-united-states-goods-trade-deficits/