2015年9月11日金曜日

☆★★T-X>ボーイング案の初公開が近づく、F-15仕様変更提案も



T-Xでボーイングがどんな設計をしているのかが注目です。ダークホースは運航費用を大幅に下げるスコーピオンだと思うのですが。一方、F-15の方はミサイルを大量に搭載して敵の数を減らす発想ですね。モデル末期で何か哀れさも感じさせるのですが、こちらのほうが注目かもしれません。来週まで待ちましょう。

Boeing To Provide First Glimpse of T-X at Conference

By Aaron Mehta10:04 p.m. EDT September 9, 2015

Aerospace Giant Also To Unveil New F-15 Configuration at Air Force Association


  1. ST. LOUIS — ボーイングは来週に開催される空軍協会年次総会でT-X次期練習機の概要を初公開するとみられるが、観覧は一部に限られる。
  2. 同社はT-X試作機のモデルをトレーラーで会場に持込む。設計はサーブとの共同作業。年次総会はメリーランド州ナショナルハーバーで開かれる。.
  3. あわせてF-15の新諸元も紹介するだろう。空対空兵装の搭載数を16発に増やす。
  4. T-Xを見ることができるのは招待者のみでボーイング関係者によると同社ブースで公開予定はないという。つまり同機の諸元はひきつづき固く秘匿されるということだ。
  5. 見ることを許される一人がアシュ・カーター国防長官でボーイングノセントルイス事業所で事業概要の説明を受けている。
  6. 設計案から漏れ伝わる内容が少なく、ボーイングは「完全新設計」で米空軍の要求に応じた練習機を作るとだけ言われている。
  7. 設計案はサーブのグリペン戦闘機の焼き直しではないとの関係者発言が出ている。ボーイングは今年末に新型練習機の初飛行が実現するとほのめかしているが、公式発言ではない。
  8. ボーイングのファントムワークスで開発戦略をひきいるスチュ・ヴォボリルは9日水曜日に報道陣に対しサーブとの連携は「驚異的な効果」を上げていると述べていた。
  9. T-Xは旧式化したT-38練習機の代替として350機を調達する事業で業界は真剣に反応している。ボーイング=サーブ連合以外にロッキード・マーティン韓国航空宇宙工業と組んでT-50で、ノースロップ・グラマンは新型機を、テキストロン・エアランドのスコーピオンの各機が争うものとみられる。.
  10. ジェネラル・ダイナミクスはT-100で参入予定だった。同機はイタリアのアレニア・アエルマッキのM-346練習機を原型とする構想だったが、今年3月に競合から降りると発表している。アレニアは現在も米側で主契約社候補を模索しており、競作に残る意図がある。
  11. 空軍協会総会の場を借りてボーイングはF-15戦闘機の新仕様を売り込む。
  12. これは空対空ミサイル16発を搭載するもので、現行型の2倍の搭載量となる。そのため新設計では燃料タンクの位置が変わる。.F-15新仕様の売り込みは意味がある。同機の生産ラインは2010年代末で閉鎖の予定だからだ。詳細は総会と併設の展示会で明らかになるだろう。会期は9月14日から16日まで。■


2015年9月10日木曜日

★英が導入するゼファー太陽光UAVはすごい



UK MoD To Acquire High-Flying Zephyr 8 UAVs

By Andrew Chuter1:22 p.m. EDT September 9, 2015
635773979768842483-DFN-UK-Zephyr(Photo: Airbus Space and Defence)
LONDON — 英国防省は太陽光発電で高高度飛行可能なUAVを3機をエアバスから調達する。
  1. ゼファー8はエアバス・ディフェンス・アンド・スペースが製造し高度約7万フィートで三ヶ月連続滞空する性能があり、軍当局は連続監視あるいは通信中継機能が衛星や有人機の数分の一の費用で実現する。
  2. 英軍は同機を作戦能力実証の一環として2機を同時飛行させると同社でゼファー事業開発を率いるスティーヴ・ホイットビーが報道陣に明らかにした。
  3. 同社は国防省と覚書を交わしており、商談の最終段階にあるという。
  4. エアバスは同機を高高度擬似衛星 High Altitude Pseudo-Satellites と呼称し、15ないし18ヶ月後に納入を完了する。英軍はすでにゼファーの小型版で飛行テストを実施済みだ。
  5. ゼファーは14日間の連続飛行記録があり、ホイットビーによると太陽光動力の他機より性能をはるかにしのぐ。
  6. ゼファー8は翼巾28メートルに太陽光電池を搭載しプロペラ2基を回転させるもので、来年夏に初飛行する。偵察あるいは通信用ペイロードは5キロ。だが同機を上回る大きさと性能のゼファー9の設計が始まっており、二年半後に飛行可能とエアバスは説明している。
  7. 英国防省はゼファーはISTAR機材の更新用に導入する。ホイットビーによれば国防安全保障分野での応用には英国以外も関心を示しているという。
  8. シンガポールと共同でゼファーの運用可能性を検討している。またゼファー用のレーダー開発も共同で検討している。ゼファーの通信能力に着目したドイツ軍・警察当局とも検討をしており、米国防総省他機関とも将来の活用方法を検討している。
  9. ゼファーの開発元は英企業QinetiQでエアバスが事業を買収した。■


2015年9月9日水曜日

★中国元級潜水艦の性能、運用思想を推測する



ソ連時代のように現代の中国装備を限られた情報から性能や運用想定を推測する仕事が重要になってきました。中国語の壁のため西側は情報に振り回されている観があります。日本でも似たようなものですが、文化的な近似性を活かして日本ならではの情報解析ができるといいですね。その場合に必要なのが下の著者のような深い専門知識に基づいた観測です。おそらくONI海軍情報部にもパイプがある著者と思われますが、論理的に展開していく様は非常に参考になりますね。それにしても日中がそれぞれ大型通常型潜水艦を整備しているのはヨーロッパからは理解できないでしょうね。

Essay: Inside the Design of China’s Yuan-class Submarine

By: Capt. Christopher P. Carlson, USN (Retired)
August 31, 2015 2:13 PM • Updated: August 31, 2015 5:39 PM

People's Liberation Army's Navy (PLAN) Yuan-class submarine.
人民解放軍海軍(PLAN)の元級潜水艦

伸張めざましい中国の潜水艦部隊は真剣な検証と議論にふさわしい対象だ。議論は政策決定者のみならず一般市民にも有益で、その際は健全な分析を元に正確な事実を議論すべきだ。ただ残念なことに英語による人民解放軍海軍(PLAN)報道ではその両方が欠けている。直近のUSNI Newsでもこの傾向が見られる。ヘンリー・ホルストはタイプ039A/B元級潜水艦は「対艦巡航ミサイル(ASCM)を搭載し、長時間潜姿を隠すことができ、アクセスが困難な浅海で潜むことができる」と書いている。

ホルストは元級が大気非依存型出力(AIP)を搭載し、長距離ASCM発射能力を有するので沿海部の浅海域作戦に適しているとする。タイプ039A/Bが優れた対艦戦用の潜水艦であることは著者も同意するが、上記記事のポイントはデータの読み間違いによる誤解だ。本稿では同記事の誤謬を検証し、タイプ039A/B元級潜水艦は実は深海作戦用でPLANの海洋戦略では本国に近い海域で積極防衛を実施する手段だと指摘する。また同艦は台湾の沿海部での作戦行動だけを考えたものではない。

艦の大きさは

タイプ039A/B元級潜水艦が小型で水深の浅い沿海部での作戦用なのかが論点である。その根拠として元級を日本のそうりゅう級と比較している。そうりゅう級もAIPを搭載するが、問題は元級がずっと小さい、としている点だ。

ホルストはそうりゅうの喫水を10.3メートルとしてるが疑わしい。潜水艦の喫水が船幅より長いときはデータを確かめたほうがよい。10.3メートルというのはそうりゅう級の船幅ではなく、同艦の最深部であり、竜骨から甲板までの垂直長である。喫水はこの最深部の一部だ。公開情報ではそうりゅうの喫水は8.5メートルで、同艦の写真を見ると8.3メートルとあり、公表さ数字にかなり近い。

同様にタイプ039A/B元級潜水艦の寸法も不正確だ。ただし、これは西側情報源がいつも不正確であることを反映しており、ホルストもこう言っている。「PLANの建艦技術陣は宋級と同じ寸法でAIPシステムを搭載させた」。 ホルストは元級の設計ではその大きさから代償も発生したというが、具体的に何かを示していない。PLANの建艦部門は必要なスペースの確保に成功したと言っているだけだ。この言い方では鋭さが欠けていると言わざるをえない。

潜水艦とはもともと小型で内部容積も限られる。大型推進機関を入れてもAIPの空間を確保できるほど事は簡単ではない。特に冷却酸素タンクは相当の空間を必要とし、潜航時間が長いとタンクも大きくなる。宋級にそれだけの容積がそもそもあれば、もっと小型になるはずだ。宋級の内部に利用していない空間があるとの証拠はない。タイプ039Gの画像を見ると本当に艦に余裕がないことがわかる。宋、元ともに二重船殻型式なので設計陣は燃料タンクが圧力船殻の外部タンクに積められているのだろう。元級はAIPを搭載するため大型化が必要になった。

Google Earthや手持ちカメラ写真からこのことがわかる。両方の級の潜水艦が横に停泊しているのを見れば、元の全長が宋級より長いのがわかる。タイプ039G宋級の艦幅が7.5メートルと狭いのはほぼ正しいといえる。さらに手持ち写真から元級は全長のみならず喫水も宋級より大であることが伺われる。

Soryu-class submarine, Hakuryu during a visit to Guam in 2013. Note the bow draft markings show the submarine’s draft is about 8.3 meters. US Navy Photo
そうりゅう級のはくりゅうがグアムへ2013年寄港した際の写真では艦首の喫水表示から同艦の喫水が8.3メートルだとわかる。US Navy Photo

中国潜水艦はロシア式のマーキングを採用しているため艦の外側に喫水表示がない。中国潜水艦では長い白線で浮上時の水線を表示し、喫水との差を0.2メートル刻みで示す。手持ち撮影写真からタイプ039A/Bでは海上およびドック内の例から全長を72メートルとは水線の全長だとわかる。元級の全長は各種解析から77.2メートルで、中国国内のウェブサイトが言う77.6メートルとほぼ一致する。同じように通常の浮上時の喫水は約6.7メートルで、これまで西側が言っていた5.5メートルより深い。

まとめると元級は通常動力潜水艦として大型で、そうりゅう級よりわずかに小さい程度だ。むしろPLANの別の通常型大型潜水艦であるロシア製プロジェクト636・キロ級と比較したほうがいいだろう。元級はキロ級よりわずかに大きい。本稿に出た潜水艦各級の物理的な大きさを下表にまとめた。キロ級とそうりゅう級のデータは公式発表をつかった。元級および宋級は上記の解析結果を使っている。

ホルストの主張と異なり、タイプ039A/B元級は決して小型潜水艦ではないことがわかる。PLAN保有の通常型潜水艦で最大級であり、そうりゅう級やキロ級と同様に水深が浅い海域では制御が難しい。仮に「沿岸警備用の潜水艦」(SSC)を整備するのならドイツのタイプ205や206級でいいはずだ。また北朝鮮にはSango級があり、それぞれ潜水時に500トンを上回らない大きさだ。

Type 039B Yuan-class submarine during rollout at the Jiangnan Shipyard on Changxing Island. Note the long white line in the draft markings, which designates the submarine’s normal surface waterline. Also note the low-frequency passive flank array just above the keel blocks.
タイプ039B元級潜水艦が江南造船所で完成している。喫水関連で長緯線に注意。通常浮上時の海水面を示している。また低周波パッシブアレイがブロックの上の側面に付いていることに注意。







プロジェクト636 Kilo
Type 039A/B Yuan
Type 039G Song
Soryu
全長
73.8 m
77.6 m 1)
74.9 m
84.0 m
全幅
9.9 m
8.4 m
7.5 m
9.1 m
喫水
6.6 m
6.7 m 2)
5.7 m 4)
8.3 m 5)
浮上時排水量
2,350 tons
2,725 tons 3)
1,727 tons
2,947 tons
潜水時排水量
3,125 tons
3,600 tons
2,286 tons
4,100 tons

注:
1) Type 039A/Bでしばしば引用される全長72メートルは水線長であり、艦の全体長ではない。
2) Type 039A/B の喫水は報じられる5.5メートルを上回りやや艦サイズが小さいType 039G 宋級とほぼ同じ。
3) 元級の潜水時、浮上時の排水量は中国語ウェブサイトが出典だが定義に混乱が見られる。浮上時排水量を2,300トントとするものが多いが、これには予備浮力50パーセント以上が含まれており、実際の数字ではない。推定浮上排水量は表中では予備浮力32パーセントで以前のタイプ035や039Gと合わせてある。
4) 伝えられるタイプ039Gの喫水5.3メートルは疑わしい。乾ドック入りした同艦の手持ち写真から5.7メートル近くあることがわかる。
5) そうりゅう級の喫水も8.5メートルあると伝えられているが、実際の写真を見ると艦首、艦尾の表示は8.3メートルに近いことがわかる。


浅水域の環境条件


非常に水深が浅い海域用の潜水艦での課題は艦の制御だけではない。ホルストがいみじくも沿岸部の音響特性は混沌とし困難だと指摘している。対潜部隊には元級がそんな場所に潜んでいれば探知は困難だろう。だが逆もまた真なのだ。

航行する船舶の出すノイズははるかに大きく、海底や水面で何度も反射して潜水艦のソナーに入る。元級には獲物を探知識別し追跡するのが極度に困難となり、潜望鏡を上げないと目標雷撃の解は得にくいはずだ。ただしそうすると探知される可能性も増える。そこで潜水艦は浅い海域で海底にへばりつくが水上のASW艦と同様に探知が困難になるのだ。だが宋級以降が浅海での運用を想定しているのであれば、なぜ低周波側面アレイが各艦に装着されているのか。

H/SQG-207の系列の水中聴音機が取り付けられており、長距離で大きなノイズを出す目標を探知するのが目的だ。低周波ノイズは音波吸収ロスも少なく、水中を長い距離移動できる。ただしこの種のアレイが効果を発揮するのは水深の深い部分で海底による干渉が少ない部分だ。H/SQG-207アレイが元級に搭載されているのは想定する作戦水域が深海でこのパッシブソナーが同艦の主要ソナー装備であることを示す。

PLAN潜水艦の兵装思想


PLAN潜水艦兵装についてのホルスト解説ではC-802 ASCM (対艦巡航ミサイル)が元級に搭載されているとの誤解が繰り返し出てくる。まずC-802 は潜水艦発射型ではない。もともとC-802とは輸出用の巡航ミサイル(射程120キロ)の呼称で、ホルストが言うような180キロの射程はない。またC-802がPLANに採用されたとの証拠もない。またこの型はPLAN潜水艦が搭載するYJ-82とは別のミサイルだ。YJ-82は固体燃料方式でYJ-8/8A型水上発射式ASCMが原型だ。YJ-82はカプセルに入ったまま発射される点で米パープーンと同様だ。YJ-8/8Aの有効射程は42キロにすぎないが、ブースターがないYJ-82は更に短く30から38キロ程度だろう。ここまで射程が短いと発射した時点で相手方に探知され、水面から出て高度10メートルになった時点でレーダーに探知される可能性が高い。つまり発射した潜水艦の位置も判明し、照準を合わせて対抗措置が実施されることになる。そのためPLANはYJ-18の実戦配備に期待している。同ミサイルの有効射程は220キロといわれる。

国防総省による議会向け2015年度報告ではYJ-18の射程を290nm (550km) としているのは誤植だ。SS-N-27Bシズラーより小さいミサイルが逆に2倍以上の射程を有するのは不可能だ。また2015年度版報告書では YJ-18AとYJ-62でも有効射程の記述が間違っているのは不正確なオープンソース情報を元にしているためだろう。

The YJ-82 is the submarine launched version of the solid-rocket propelled YJ-8/8A. CPMIEC
YJ-82は固体燃料ロケット式のYJ-8/8Aを潜水艦発射型にしたもの。
China Precision Machinery Import-Export Corporation Photo


さらに元級を「対艦巡航ミサイル搭載手段」とホルストは明記している。IHS Jane’sではASCM発射艦はすべて「G」表記としているが、同艦は巡航ミサイル運用を一義的に想定したものではない。米国の情報コミュニティ、NATO、それにロシアによる呼称では専用の発射管を有するものを誘導ミサイル潜水艦としている。このためタイプ093B あるいは095に垂直発射管があるのかで大論争が起こったが、魚雷よりも巡航ミサイル(対艦、対地攻撃両用)が主な兵装になったことのあらわれである。

もう1点興味をそそる点としてタイプ039A/B元級とタイプ039G宋級で搭載する兵装は同一なのにホルストは宋級に同じ兵装を搭載していると言及していない。タイプ039A/B元級のほうがASCM搭載艦として威力が大きいことには疑いがない。高いソナー能力とAIP搭載による柔軟な戦術運用力が理由だが、ASCMが二次的な兵装の扱いなのは搭載本数が少ないのが理由で、中国はロシアの戦術を真似て6本の魚雷発射管のうち2本にYU-6魚雷を自艦防御用に装填している。残り4本でYJ-18 ASCMを集中発射しても最新鋭艦船の防空体制の圧倒はできないだろう。YJ-18の速度はマッハ3だが、防空体制を圧倒する飽和攻撃にはもっと本数が必要だ。

まとめ


結論としてホルストは誤った戦術データと不正確な分析からタイプ039A/B元級潜水艦の設計思想を間違って解釈している。タイプ039A/B元級潜水艦は通常型としては大型艦であり、ロシアのキロ級および日本のそうりゅう級に匹敵する大きさがある。搭載ソナー装置は深海運用を想定し、長距離で敵船探知が可能だ。ただし垂直発射管がないため元級・宋級ともにASCMを運用する発射管に制約があり、ミサイル攻撃は同時に4本ないし5本どまりとなる。またYJ-82 ASCMの射程距離が短いことからタイプ039A/B元級潜水艦は15キロ地点からYU-6魚雷を使用することが多いはずだ。ただしYJ-18運用が始まっても魚雷室の大きさによる制約は残り、発射管数の制約はそのままだ。PLANはこの制約から将来の原子力潜水艦の設計では最初から16発ほどの垂直発射管を想定するだろう。

タイプ039A/B元級潜水艦の設計から同艦が近海の深水度運用を想定したもので、台湾航路もその視野に入っており、高性能ソナーとAIPで標的となる船舶を探知追跡攻撃するのが任務だろう。また今より高性能で長距離射程のASCMに換装しても魚雷攻撃が主になると見られる。
 
クリストファー・P ・カールソンはハープーン戦術ウォーゲームの共同考案者で、ベストセラー著作がある



イタリア製F-35が初飛行を実施しました


一足先に業務を開始しているイタリアのFACOから1号機が初飛行したというニュースです。この例によれば小牧にできるといわれる日本のFACOでも三菱重工がロッキードと共同運営することになるのでしょうか。保安体制が課題といわれるので、完成しても秘密のベールに覆われるのでしょう。F-35は50年以上も供用されるとのことなのでFACOの存在は大きいと思います。

F-35 Soars Over Italy, First Time Outside the US

By Tom Kington 12 p.m. EDT September 8, 2015
635772932101439971-Italy-F35-Main-Image-LM(Photo: Lockheed Martin)
ROME — 米国外で生産された初のF-35が9月7日にイタリア・カメリ空軍基地で初飛行した。同基地にJSF組み立て工場が設置されている。
  1. 機体はAL-1と呼称され、1時間22分の飛行をカメリ最終組立点検ライン施設(FACO)から行った。同施設はイタリア政府が所有し、アレニア・アエルマッキロッキード・マーティンが運用している。
  2. 同機は年末までにイタリア空軍に納入された後、大西洋を横断しルーク空軍基地(アリゾナ)でイタリア空軍パイロットの養成に使用される。
  3. カメリFACOは唯一の米国外施設で、ヨーロッパのJSF各機の保守点検業務でハブとなる。
  4. イタリアは90機導入を計画し、その1号機AL-1は3月にラインで完成し、エンジン始動が6月に開始されていた。
  5. 6月時点でロッキード・マーティン関係者は初飛行を10月上旬としていたが、一ヶ月早まった。
  6. イタリアはF-35A合計8機を発注ずみで、うち三機は低率初期生産ロット6号から調達し、LRIP 7からも3機、LRIP 8から2機となる。2020年までに38機を発注する。
  7. イタリア向けF-35Aで最初の6機がそろうのは2016年10月の予定。さらに2017年と18年に各4機が納入され、2019年には7機、2020年に13機となる。
  8. 2019年には生産ラインで初のオランダ向け機体が生産される。オランダは2020年に生産予定の計20機のうち8機を受領する。■

2015年9月8日火曜日

★イスラエル>F-35導入を周到に準備中 機体改装も視野へ B型導入も?



いつもながらイスラエルの論理、行動様式には感心しますが、すでにF-35に愛称をつけただけでなく、段階的に同機を導入することで交渉力をつけ、一方で国産装備との親和性を確保すべく改装も検討し、いざという際を想定して機体整備実施でのルール除外で予め合意を得ておく、さらにもっと大変な事態を想定してB型の導入も検討している...すごい。F-35によるイラン攻撃が起こらないといいのですが、イランの先制攻撃を受けた後の報復としてF-35をステルス性をかなぐり捨てても怒れる翼として使用する想定のようなので、来年以降に同機が実際にイスラエルに導入されれば中東で抑止力として働くでしょうね。では日本の場合はどうでしょうか。今後の進展に期待しましょう。しかしF-35を55年間も運用するとは想像しにくいですね。

Eyeing Iran, Israel Readies for Stealth Strike Fighter

By Barbara Opall - Rome 4:11 p.m. EDT September 5, 2015

TEL AVIV — イラン他の仮想敵を念頭に、強固な防空体制の突破を狙うイスラエルはF-35アディールAdir (ヘブライ語で強者の意味)ステルス戦闘機の導入(2017年)に備え準備を進めている。
  1. 最初の2機がイスラエルに到着するとイスラエル空軍(IAF)のゴールデン・イーグル飛行隊(ネゲヴ砂漠のネヴァティム空軍基地)に編入される。
  2. 2017年までに初期作戦能力(IOC)を獲得する想定で作業が同時に進行している。イスラエルは米政府支援でスムーズな運用開始を期待している。
  3. 「同機が実現するステルス性その他高性能は明らかだ」とIAF関係者がDefense Newsに語っている。これはイランが供与を受けると言われるロシア製S300などを使った高度の防空体制を前提にした質問への答え。
  4. 「敵に攻撃を加える可能性は十分にあり、かつ実現可能だ」とE少佐は語る。少佐はアディールプ・ロジェクトを統括し、F-35操縦パイロットにも選抜された。
  5. 「これまでできなかったことが今後は実施可能となる」と同少佐は語ってくれた。なお、保安上の理由で本名は伏せた。
  6. 「域内の心理状態も変わるだろう。邪魔を受けずに敵を攻撃できる。戦争の仕方が大きく変わることは敵も承知だろう」
  7. 現地及び米国内取材で関係者から主契約企業ロッキード・マーティンがイスラエル国営ラファエルと共同でイスラエル製の空対地兵器類を同機に搭載する作業を進めていることが判明した。
  8. 同様にロッキードはイスラエルが提案する主翼への外部タンク搭載で機体内部タンクの18,000ポンドの燃料を追加する案を検討中。
  9. 「外部に追加燃料を搭載した際の功罪を検討中」とロッキード・マーティン関係者がDefense Newsに語っている。「航空優越を確保した後ならステルス性を心配しなくてよい。そこで燃料タンクを追加できる。探知される心配がなくなるからだ」
  10. イスラエルの国防筋業界筋からはステルス性を維持しつつF-35用コンフォーマルタンクが欲しいとの声が出ている。探知の危険が少ないままで飛行距離を二倍以上にできるのなら検討価値は十分ある。
  11. 「コンフォーマルタンク開発で肝心のステルス性が犠牲になるのは困る」と上記IAF関係者は述べた。
  12. イスラエルはすでにF-35開発事業の要求事項である機体の維持はロッキード・マーティンが運営する指定施設のみで行い自国では重整備の実施しか許さない条項の除外適用を勝ち取っている。
  13. 現地の関係者によればアディール向け補給支援センターが飛行隊司令部のあるネヴァティム空軍基地内に立ち上がろうとしており、IAFはロッキード・マーティンの自律型補給支援システム(ALIS)へ無制限のアクセスを許されることになるという。ALISは世界規模で同機の運営を支援するネットワークで運用国に機体耐用年数の55年間で一貫した機体維持の立案、実行を可能とする仕組みだ。
  14. 「ALISはうまくできており、自動化されており、ロッキード・マーティンの思惑通り非常に効率良く費用対効果が高いはずだが、1点不満な点は自国内に敵のミサイルが飛んでこない国向けにできたシステムであることだ」と上記IAF関係者は述べた。
  15. 「ミサイルが国内に落ちてきたら、イスラエルにくる航空機も船舶も減る。だからイスラエルは自国で補給を戦時でも維持する独自方法を模索している」のだという。
  16. ロッキード・マーティンでF-35国際ビジネス開発にあたるスティーブ・オーヴァー部長はイスラエルには「自国内で軽整備を実施する能力は十分ある」とし、有事の場合を言及している。だが機体重整備やエンジン整備は共同開発室が運営し、同社が設けた設備で行う必要があり、「これは他の運用国と同じ」と述べた。
  17. 別の取材でオーヴァー部長は重整備の実施は厳重な保安体制の下で行うとし、監視措置を必要条件としていると語った。「機体を分解すれば秘密が白日のもとにさらされます。そのため作業は指定施設でのみ行うのです」
  18. ロッキード幹部はイスラエル独自で機体支援機能をさらに高い次元に引き上げる能力があると同国を評価しており、ソフトウェア全体が影響を受けない限り黙認する方針だ。同社は凍結滑走路を考慮して読jにドラッグシュートを装着するノルウェーの例をあげた。
  19. 「イスラエルには独自策の実施能力がありますが、機体設計全般や性能自体に影響が出る改装は関係国が事前合意しない限り実施できません」(オーヴァー)
  20. その一方、IAFは第一陣パイロットを米空軍ルーク空軍基地(アリゾナ)ヘ送り訓練を来年中頃までに開始する整備要員も米空軍の補給支援基地があるエグリン空軍基地(フロリダ)他米国内施設で実施する。
  21. 米政府はイスラエル向けF-35輸出を計75機承認しているがイスラエル政府が契約したのは33機だけだ。
  22. 当地の国防筋によればイスラエルは次の17機の成約を複数年度方式で完了させる意向で、2020年までを視野に入れている。ここまでの50機はF-35A仕様の想定。
  23. その後、米国政府が追加安全保障支援を提供する前提で、イスラエルはF-35Bを25機追加する可能性がある。短距離離陸垂直着陸方式の同型はイスラエルにとっては敵ミサイルが国内基地を攻撃する可能性を考えると説得力のある選択だ。
  24. 「最初の50機はA型で問題はない」と上記IAF関係者は言う。「75機全部を調達するのならSTOVL型も検討対象だ。ただし利点と不利な点があるが、オプションはいつも維持しておきたい」■


★★イスラエルがB-1を運用する可能性



熱血な共和党上院議員ですが、ややフライング気味では。イスラエルとしてはイランをこのまま放っておくことは考えていないのでしょうが、今はあまりにもタイミングがわるいですね。世界は交渉成立で世界は平和になると信じ込んでいます。大型バンカーバスター爆弾の運用もオプションでしょうが、当面は諜報活動に軸足を移すのではないでしょうか。B-1を供与されても投下目標と投下後の評価がなければ役に立ちませんね。背景にはオバマ大統領によるイラン交渉に不満を覚える向きがいるということがあるのでしょう。

US Senator Backs B-1 Bombers for Israel

By Barbara Opall-Rome4:53 p.m. EDT September 2, 2015
635768078915623855-DFN-Cotton
(Photo: Office of Sen. Tom Cotton)
TEL AVIV, Israel — イラン核交渉への議会承認の投票結果如何にかかわらずトム・コットン上院議員(共)は議会の大半はイスラエルの安全保障強化に賛成で、年間数十億ドルの追加援助やB-1が運用するバンカーバスター爆弾の供与も視野に入っているという。
  1. アーカンソー州の同議員は上院情報特別委員会の一員であり軍事委員会空陸兵力小委員会の委員長でもある。ベンジャミン・ネタニヤフ首相、モシェ・ヤーロン国防相とイスラエルの質的軍事優位性(QME)維持に必要な条件を話し合ってきたという。特にイラン交渉の代償で危険が増えていることに注意を喚起している。
  2. 「議員の大半はイスラエルのQME維持を全面支持している」と同議員はDefense Newsに語った。「今回の交渉成果はかならずボロを出す。なぜならイランは大規模核関連施設を温存できるようになり、イランの野望を食い止めるものが無いためだ」
  3. コットン議員はイスラエル向け海外軍事財政支援(FMF)を2018年度に失効する31億ドル規模より引き上げるよう働きかけるという。「もちろん戦略的評価次第だが、50億ドル程度がいいのではないか」
  4. コットン議員によればイスラエル向けFMFはエジプト向けおよびヨルダン王国向けとともにテロの横行する中東で安定と秩序を進める手段だという。
  5. 「イスラエル向け支援の増額は極めて合理的だと思う。ただしワシントンでは予算制約が大きいのは事実。FMFは予算赤字の要因にならない。原因は過剰支出と経済成長の鈍化だ。現政権の経済政策に欠陥がある。」
  6. イスラエルに総重量3万ポンドの貫徹式バンカーバスター爆弾およびその運搬手段を供与する件ではイスラエルからB-1Bの要望があれば議会は承認すべきだと述べた。
  7. 米国が爆撃機輸出を認可した例はないが、コットン議員はイスラエルはあくまで例外的存在で、域内で直面する多様な脅威を理由に上げる。
  8. 「B-52であれB-1であれ、イスラエル軍に機材拡充が必要だ。イスラエルから要望があれば前向きに対処したい」
  9. バラク・オバマ大統領が上院でイランとの核交渉結果の承認で支援を取り付ける中、コットン議員はイスラエルの安全保障を充実させる案は議会内でイラン交渉が承認されるのか待ってから進めると回答
  10. 「投票結果が出てからこの話題を議論する時間は十分ある。今は票の行方に全関心を向けているところだ」■


中国の新型UAVはリーパーそっくりだが中身は....


中国のハードウェアが西側装備と極めて類似することが多々ありますが、ソフトウェアの性能こそ西側がなんとしても死守すべき砦であることは明らかですね。

New China Drone: Looks Like A Reaper But…

By RICHARD WHITTLE on September 02, 2015 at 11:29 PM

rainbow5_55
WASHINGTON: 中国最新の無人機 Caihong-5 彩虹が北京軍事パレードに登場した。中国メディアは米国のMQ-9と比較している。リーパーは最大四発のヘルファイヤミサイルを搭載し、500ポンド精密誘導爆弾二発もあわせ最大の殺傷能力を有する。
  1. (軍事パレードの趣旨は抗日勝利70周年と中国は言うが、西側には第二次大戦終結のほうがわかりやすい。 日本の打倒への中国の貢献はわずかで、蒋介石は米国が供与した多量の資金と兵器を温存し連合国が日本を破った後で毛沢東率いる共産党の打破を狙っていたというのが事実だ。編集部注)
  2. 一般人が見れば2機は全く同じ機体に写るだろう。だが匿名が条件の専門家は彩虹5とリーパーの類似点は表面だけという。この専門家は極秘無人機開発に参画中で、公的に発言ができない。
  3. 彩虹5はレドーム付き機首と上向きV字尾翼がリーパーと似て、翼幅66フィートはアメリカ機と全く同寸である。中国メディアによれば彩虹5の最大離陸重量は6,000ポンドほどで、リーパーの1万500ポンドより相当低い、また北京版リーパーの最大ペイロードは900キログラム(1,984 lbs.) でMQ-9の外部搭載3,000 lbsおよび内部搭載 850 lbs に及びもつかない。リーパーは合計1,749キロを搭載でき、彩虹5の2倍近い。
MQ-9 Reaper heavily loaded
  1. 彩虹5の製造元・中国航天技集団China Aerospace Science and Technology Corporationは中国メディアに対し同機はミサイル6発を搭載し30時間滞空可能と紹介している。リーパーの通常の滞空時間が18から27時間なのでこれ自体はすごい。設計主任 Ou Zhongming 應仲明?によれば同機には「壁を突き抜ける強力なレーダーがあり、対テロ作戦に投入される無人機の役割を変えてしまうかもしれない」と述べている
  2. そうかもしれないが、実際に見てみるまで信用できない。「たしかにそういう性能があるという話はあちらからよく聞こえるが、完成度は低い」と感想を述べる専門家もいる。どちらにせよ、リーパーの「能力と同等のセンサーはあちら側にない」
  3. 外部ハードウェアのコピーは一部にすぎない。プレデターやリーパーが搭載するソフトウェアがコピーできれば中国に大きな一歩となる。このソフトウェアのおかげで地上操作員は地球の反対側にいながら追跡攻撃ができるのだ。これは衛星放送受信テレビの設定のように簡単なことではない。無人機の専門家を自称する向きでも米国が運用する遠隔分割操作方式 Remote Split Operations を支えるのが光ファイバーケーブルで機体制御とデータを信号に変え米本国からヨーロッパの衛星リンクを経由してプレデターやリーパーに届いている事実を理解する人は少ない。最大1.3秒の信号伝達の遅れが発生するのはこのためだ。
remote-split-operations-usaf.
  1. 中国がこの性能の重要性にどれだけ真剣に取り組んでいるかは不明だが、彩虹5の外観を見る限りでは「オリジナルにこだわっていないことは明白」とリーパー専門家は言う。■

対ISIS作戦にトルコ基地が果たす役割は大きい


これまでは地の利があるトルコが使えなかったのでISIS空爆作戦にも制限があったのですが、これでようやく効果を上げる作戦の実施が可能になりました。フランスも従来より一歩踏み込んだ作戦の実施を決めましたので、今後効果が期待できそうですね。

Turkish Bases Becoming Hubs in Anti-ISIS Campaign

By Burak Ege Bekdil 3:52 p.m. EDT September 7, 2015
RAF Mildenhall KC-135 refuels Aviano F-16s deploying toTurkey(Photo: Tech. Sgt. Krystie Martinez/Air Force)
ANKARA, Turkey — トルコ南部、南東部の空軍基地が有志連合によるイスラム過激派の攻撃拠点になっており、シリア・イラクへ出撃で多忙なハブになってきた。
トルコは最近になり米軍に自国基地の使用を許可し、そのうちインチリック空軍基地(トルコ南部)が特にシリア、トルコ国内に拠点を構えるISISへの空爆拠点として知られている。トルコも自国のジェット戦闘機で空爆に加わっている。.
米国はインチリックに第一波の戦闘機を6機8月10日から展開している。「規模は今後増えるだろう」とトルコ国防筋は見ている。
米・トルコ両軍は8月28日から29日にかけてはじめて共同空爆作戦を展開した。
トルコ上級外交筋によればカタールがまもなくトルコ国内基地からの空爆作戦に加わるという。カタール派遣飛行隊の規模についてこの筋は語らなかった。
アンカラの米大使ジョン・バスはISIS向け作戦で必要な限り米軍機はインチリック基地に残ると9月3日に発言。
一方でフランスもISIS作戦への合流を検討しているとルモンド紙が9月5日報道。フランスは現時点ではイラク国内のISIS作戦にのみ参入中。
「フランスがトルコ基地の利用に踏み切ればISIS対抗作戦の実効性がますことになる」と上記トルコ外交筋は述べている。■


2015年9月7日月曜日

北京軍事パレードで注目を集めた装備品はこれだ

これだけの軍事装備品を開発、導入していくのですから陸軍兵員30万名を削減して予算を確保していくのは当然でしょう。それを中国が平和を希求している証拠だと頓珍漢なコメントを出してくるのはおかしな話ですね。その中国がおそらく一番意識しているのが日本なので、今後両国はお互いの新型装備情報を鵜の目鷹の目で見つめていくことになるのでしょうね。次回パレードは4年後とのことなのでまた注目を集めるでしょう。

China showcases new weapon systems at 3 September parade

Richard D Fisher Jr, Washington, DC - IHS Jane's Defence Weekly
04 September 2015

YJ-12対艦巡航ミサイル: AP/PA

9月3日に行われた中国軍事パレードでは初めて公開された新型装備が多数登場した。

北京での軍事パレードは通算15回目だが、今回はPLAより兵員12千名、将官56名が参加し、その他17ヶ国も合計1,000名を派遣する規模になった。


パレードで展示された装備はPLAが実戦化しているものとみられる。以下各装備の概略を伝える。

戦略ミサイル

The DF-21D anti-ship ballistic missile was one of the key systems on show for the first time at China's 3 September military parade in Beijing. (AP/PA)
DF-21D対艦弾道ミサイル(AP/PA)

DF-21D

開発開始は1990年代初期とペンタゴンは見るが、中国航天国技集団(CASC)による東風DF-21Dの配備は2014年からだ。世界初の対艦弾道ミサイル(ASBM)であり、弾道部は制御可能で多様なセンサーで移動艦船への対応を可能にしているのだろう。PLAがDF-21Dによる攻撃を航空機・潜水艦が発射する対艦ミサイルと同時に行い、目標の防御態勢を圧倒する戦術を実施するものとみられる。

DF-16

第二砲兵隊が2011年初頭から運用中と見られるのがCASCのDF-16中距離弾道ミサイル(射程800キロから1,000キロ)で、今回のパレードで初めて公開された。DF-11A短距離弾道ミサイルの弾頭部を流用しつつ大型プースター採用で射程を伸ばし、高速飛翔により台湾が採用した米製ミサイル防衛をかわす。沖縄の在日米軍、自衛隊を攻撃可能。対レーザー防衛策を有する。

DF-26

CASC製で射程3,000キロから4,000キロのDF-26は中距離弾道ミサイルでこれも公式の場に現れるのは初めて。対艦攻撃能力もあると解説があった。

DF-5B

DF-5Bは多弾頭装着ミサイルでこれも公式の場での紹介は今回が初めてだ。射程は15,000キロといわれ、液体燃料式のICBMで2008年から配備されている。しかしペンタゴンは2015年版の中国関連報告ではじめて同ミサイルの存在を認めた。パレードではDF-5Bには同じCASCの長征-2C打ち上げロケットと同じ構造が使われていることが判明した。弾頭は3つと言われるが、大きさから言ってもっと多くの弾頭を搭載できるようだ。

Type 99A main battle tanks. (AP/PA)
Type 99A main battle tanks. (AP/PA)

陸上装備

T-99A 主力戦車

中国北方工業Norinco製T-99主力戦車の第三世代であるT-99Aの存在があきらかになったのは2011年。T-99A2とも呼ばれ、2014年の上海協力機構(SCO)による「平和ミッション」演習に参加している。特徴として砲塔部が鋭い線で構成され、第二世代複合材料と爆発反応装甲に第二世代レーザー対抗装置を採用している。自重50トンで125 mm自動安定式自動装填主砲を備え、中国報道では毎分8発発射でき、対戦車ミサイルも同時に発射できるとしている。デジタル通信装置を備えたT-99A戦車は信頼性がまだ想定水準に達していないと言われる。

ZBD-04A 歩兵戦闘車両

これも初公開となったNorinco製ZBD-04A歩兵戦闘車両(IFV)はZBD-04の改良型で、試作型は2007年からその姿を見られていた。PLAへの配備は2011年からと見られ、原型との違いは水陸両用機能を省いたことと装甲の追加だ。自重24トンカラ25トンと見られ、乗員3名で歩兵6名ないし7名を運ぶ。砲塔はロシア製BMP-3を原型とし、100mm 砲で対戦車ミサイルを発射する他、30mm自動砲も備える。
ATF-10 anti-tank missile systems being carried by modified ZBD-04A APCs. (AP/PA)
対戦車ミサイルを搭載したZBD-04A APCs. (AP/PA)

ATF-10対戦車ミサイル

これも初登場となったのがATF-10光ファイバー誘導式見通し線外 (NLOS) 方式の対戦車ミサイルだ。ZBD-04A装甲歩兵車両で8発を運ぶ。PLAがNLOS方式の対戦車ミサイルに多大の関心を持っていることが2011年に明らかになり、ATF-10も2014年の「平和ミッション」演習に登場している。射程は10キロといわれる。

PLZ-05自走砲

PLA配備は2008年と伝えられるがNorinco製PLZ-05自走砲は9月3日パレードで始めて公開された。ロシアの 2S19  MSTA の影響を受ける自重35トンのPLZ-05は半自動装填の155 mm 砲で毎分8発から10発を発射できる。新型WS-35航法衛星誘導弾も発射でき、射程は100 kmに及ぶという。

ZTL-09 IFVs. (AP/PA)
ZTL-09 IFVs. (AP/PA)

ZTL-09装甲兵員輸送車両

2009年から配備といわれるZTL-09はNorincoの8輪走行ZBD-09装甲兵員輸送車両に105 mm砲を搭載している。20トンをわずかに上回る重量で400ないし500馬力のディーゼルエンジンで推進する。

東風 Warrior 軽量戦闘車両

2011年に存在が確認された東風汽車製のWarriorは軽量戦闘車両でPLAと人民武装警察(PAP)に配備される。AMジェネラル製ハンビーに装甲をつけた格好で、パレードでは4x4仕様のPLA所属車両と6x6のPAP型が披露された。PAP仕様は8トンで最高速度は130キロに及ぶ。重機関銃あるいはPF-98歩兵支援ロケット砲を搭載することが知られている。

海軍関連

HHQ-10短距離対空ミサイル

旅遊FL-3000N/HHQ-10海軍用短距離防空ミサイルは2008年の珠海航空ショーに登場しているが、実際の配備は2011年に空母遼寧がはじめてだ。射程6ないし9キロの艦対空ミサイルで24から8セルの発射機に搭載される点は米国のRIM-116 Rolling Airframe Missile (RAM)に類似している。タイプ056海防艦への配備が2013年に確認されているが、大型発射機はタイプ052D駆逐艦に搭載されている。

YJ-12 対艦ミサイル

これも初登場となったのが南昌飛機製造のYJ-12ラムジェット推進式超音速空中発射対艦ミサイルだ。原型はYJ-91でロシアのズベズダKh-31をPLAが導入したことがきっかけだ。YJ-12の飛行速度はマッハ2.5から4の間といわれ、射程は400キロある。PLA海軍航空隊(PLANAF)H-6G爆撃機に二発搭載する。新型H-6Kだと6発搭載が可能で、有事には一度に100発を発射する飽和攻撃の構想がある。

航空機

J-11B戦闘用航空機

2007年に開発が完了したと伝えられる瀋陽航空機(SAC)のJ-11BはシアのスホイSu-27SKを大幅に変更した機体だ。重要な点は国産のWS-10ATaihang大坑ターボファンエンジンを搭載していること。大々的な開発とはうらはらにWS-10Aでそこそこに信頼性のあるエンジンは2009年以前は存在しなかった。J-11Bは洛陽PL-12 自己誘導型中距離空対空ミサイル(射程100キロ)を搭載し、PLA空軍およびPLANAF部隊に配属が始まっている。
A Y-9 transport and J-15 carrier-borne fighter aircraft. (AP/PA)
Y-9 輸送機と J-15 艦上戦闘機編隊(AP/PA)

J-15 艦上戦闘機

また初披露となったがSAC製J-15艦載戦闘機だ。ウクライナからスホイSu-33の試作型を利用してSACは2010年にJ-15として完成させた。2012年にJ-15が空母遼寧に初の拘束着艦をしたと報道している。エンジンはロシアのサトゥルンAL-31FNと大杭ターボファンで、性能はJ-11Bと同様問われるが、離陸時にスキージャンプ方式を取ることで航続距離は短くなっている。

H-6K 戦略爆撃機

西安航空機(XAC)のH-6K戦略爆撃機の試作型は2007年に初飛行していると言われるが配備は2011年から開始された。今回が初の飛行展示になった。西安はツポレフTu-16を大幅に改良しており、うちH-6Kはガラス窓の機首のかわりに大型レーダーと光学センサーを搭載している。エンジンはロシア製のソロヴィエフD-30-KP2ターボファンで飛行半径は3,000キロだという。主翼下パイロンに6発のミサイルを搭載し、うちCJ-10Kは射程1,500キロあり、YJ-12他多様な精密誘導爆弾を搭載する。
A KJ-200 AEW&C aircraft, left; a Y-8J, centre; and a Y-9JB, right. (AP/PA)
KJ-200 AEW&C機(左)とY-8J(中央)、Y-9JB(右). (AP/PA)

KJ-500 AEW&C.

これも初登場となったのが陝西飛機工業のKJ-500空中早期警戒管制 (AEW&C)でPLA空軍では2014年から稼働中といわれる。陝西の定評あるY-9の機体を使い、アクティブ電子スキャンアレイを搭載している。飛行時間が5時間と短いが、PLAには調達しやすい機体になっている

その他

次回パレードは2019年予定なので、開発中の装備の登場はそれまで待たないといけない。開発中装備にはDF-41大陸間弾道弾、成都航空機のJ-20第五世代戦闘機、XACのY-20大型輸送機がある。■