2013年10月4日金曜日

米陸軍向け次期汎用ヘリ競作にカレムが可変速度式ティルトローター機で参入

Karem Unveils Variable-Speed Tiltrotor For U.S. Army JMR Demo

By Graham Warwick graham.warwick@aviationweek.com
Source: AWIN First
aviatonweek.com October 02, 2013
Credit: Karem Aircraft
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カレムエアクラフト Karem Aircraft が米陸軍の求める多用途回転翼機 Joint Multi Role 構想にティルトローター機で参画する。共用多用途機技術実証の第一段階契約を交付された。
  1. JMRとは陸軍が企画中の将来型垂直離陸輸送機Future Vertical Lift (FVL)の一部でまず中型機を開発し、現行のシコルスキーUH-60ブラックホーク多用途ヘリの後継機とし、その後ボーイングAH-64 アパッチ攻撃ヘリの後継機種とさせる構想で、実現を2030年代中ごろとしている。
  2. 陸軍の航空ミサイル研究開発技術司令部が技術投資契約 technology investment agreements (TIAs) をAVXエアクラフトベル・ヘリコプター、カレム、シコルシキー・ボーイング合同事業体とそれぞれ締結している。
  3. JMR構想に参入するカレムはTR36TD実証機を最適速度制御型optimum-speed tiltrotor (OSTR) のティルトローター機として設計中で、同機は直径36フィートの可変速度ローター二基を既存のターボシャフトエンジンで駆動させる。
  4. これに対してベルは「第三世代型テイルトローター機V-280ヴァラーの設計をしており、AVXは同軸ローターを抱くテッドファンと組み合わせたヘリコプターを開発中、さらにシコルスキーは同軸固定ローターと推進用プロペラを組み合わせた機構の機体を開発する。
  5. JMRの技術実証は巡航速度最低 230 kt.wを求めており、これは通常型ヘリコプターより50%早い。カレムによるとTR36D生産型は水平飛行で 360 kt.が可能だという。ベルV-289の巡航速度は280-kt.でAVXとシコルスキー・ボーイングは各230 kt.をめざしている。
  6. 四社に交付済みのTIAでは9ヶ月以内に一次設計完了を求め、その後陸軍が各設計を審査し、二社に機体製造させ2017年に実証機の初飛行を実現させるもの
  7. カレムによれば可変速度式OSTR機で実現する長所に機体重量、駆動機構、空力特性、推進効率に加え高速度があるという。TS36TDには「十分な」ホバリング性能、上昇率、操縦性、飛行距離で他の垂直離着陸機よりも優れた性能が実現すると同社は説明。
  8. またOSTRは機構の複雑度を減らし、安全性で優れ、保守点検を簡略化し、総費用を下げることが可能という。
  9. 数々の発明で知られるエイブ・カレム Abe Karem はプレデター無人機の原形を設計したほか、(現在はボーイングの)A180ハミングバード長時間飛行可能無人ヘリコプターで速度最適化ローターを採用している。2004年に起業したのが現在のカレムエアクラフト社。
  10. 2005年から2010年にかけてカレムは200,000 lb. 超の各種OSTR仕様を陸軍の共用大型ヘリ開発資金により検討している。そのうちTR75は直径75フィートの可変速度式ローター複数を使い、ロッキード・マーティンが共同参画して陸軍向け大型ヘリ開発を進めていたが、同計画が資金不足で棚上げになっている。
  11. 同社は自社資金で民間向けOSTR種を90席のエアロコミューター AeroCommuter と180席ノエアロトレインAeroTrain の二機開発中だ。■

2013年10月3日木曜日

トム・クランシー急逝

   
Tom Clancy Dies at 66
By: US Naval Institute Staff
                        
Wednesday, October 2, 2013
                                                 

テクノスリラー小説の生みの親にして米海軍協会が始めて刊行した小説の著者が火曜日死去した。
  1. トム・クランシーがバルティモアの病院で死去したと、クランシーのかつてのリサーチャー、共著者ジョン・グレシャム John Gresham がUSNIニュースに2日明らかにした。享年66歳。
  2. 「五六年前にトムは心臓発作に襲われ、バイパス手術を受けていた」とグレシャムは説明。「今回は発作の再発ではないだろう」
  3. クランシーは保険代理店をメリーランド州カルヴェント郡で営む傍ら、軍事史、特に技術面で精通するようになった。保険の顧客には原子力潜水艦で艦長を務めたあと、カルヴェントクリフ原子力発電所に勤務するものが多く、保険を勧誘しながら元艦長たちの知識から海軍艦船内で原子炉が作動する原理を学び、米海軍の原子力ミサイル潜水艦に弾道弾を搭載する意義を理解するに至った。また冷戦たけなわでもありソ連の軍事施設の知識も蓄えていった。
  4. クランシーが米海軍協会 U.S. Naval Institute との関係を作ったのは保険営業をしながら同協会紀要 Proceedings 編集者フレッド・レインボウFred Rainbowに投稿原稿を送ったのがきっかけだった。
  5. 「はじめて顔合わせをした際はクランシーは編集部に電話をかけてきて編集者に手渡ししたい投稿があると言っていた」とレインボウは回想する。
  6. 編集部はクランシーとの面会に抵抗があったが、数回にわたり電話が入り結局招きいれ、投稿へ通常の謝礼を支払っている。
  7. 「その小切手は結局現金化されていません。クランシーのオフィスで額に入れて保存してあるのです。著作物で支払いを受けたのははじめてだったのですね」(レインボウ)
  8. 次にクランシーは紀要に二回目の投稿をする。海軍のホーバークラフト艇から核ミサイルを発射する提案だった。「三番目が『レッドオクトーバーを追えThe Hunt for Red October』でした」
  9. レッドオクトーバーはソ連のミサイル潜水艦で艦長が米国への亡命を企て巧妙に策略を立てるというスリラー小説だった。出版した海軍協会出版会はこれまで小説の類は刊行した前例がなかったが、この駆け出し小説家にチャンスを与えることとした。
  10. 同書は1984年に出版され、好意的な書評を得た。しかし、本当に評判となったのは当時の大統領ロナルド・レーガンが同書を手にしている写真が出回ってからだ。感想を聞かれたレーガンが「一度読み始めたら止まらないunputdown-able」うえに「完璧な冒険談perfect yarn」と答えている。
  11. 同書は1990年に映画化され、ショーン・コネリーがソ連艦長マルコ・ラミウスを、アレック・ボールドウィンがジャック・ライアンを演じ、ライアンはその後のクランシー作品で繰り返し登場する人物になる。映画ではライアンが冒頭に海軍協会紀要(対潜水艦戦特集)をスーツケースにしまい、ジッパーを閉じるシーンがある。
  12. クランシー作品の成功でスティーブン・クーンツの『イントルーダーのフライト Flight of the Intruder』(映画題名は『イントル-ダー怒りの翼』)が1986年に出版され、これも成功作となった。
  13. 「テクノスリラーという分野を築きクランシーは出版界を変貌させました」と評価するのは海軍協会出版の「世界の艦船ガイド」著者のエリック・ウエルセイムEric Wertheimだ。「アメリカ人の軍事観そのものを変えたといっていいでしょう。アメリカ国民を軍につなげる大きな力を発揮したのです」■


2013年10月2日水曜日

ドイツ・フランスがA400M合同訓練の実施で合意

       

延々と開発に手間取っていたA400M戦略輸送機ですがやっとフランス空軍に一号機が納入されました。また、独仏での同機合同訓練はやがて合同運用につながるでしょう。欧州ではかつての列強が今や共同運用をするほどの一体化を実現していますが、翻って東アジア(西太平洋)で日本は孤高の存在ですね。欧州並みになるのにあと何年かかるのでしょうかね。

Germany, France To Embark On Joint A400M Training

By Anthony Osborne
Source: Aerospace Daily & Defense Report
aviationweek,com October 01, 2013
Credit: Airbus

フランス、ドイツ両国の空軍がエアバスA400輸送機の合同訓練で合意した。

9月30日にエアバスがフランス空軍向けA400M1号機引き渡しており、両国空軍は合同整備要員訓練をドイツのヴンストルフ基地で2015年夏から実施すると発表した。一方、乗員訓練、兵站ミッション訓練も実施される。戦術ミッション想定の乗員訓練はA400M訓練センター(フランス、オルレアン空軍基地)で2014年から行い、ドイツ空軍要員向けは2018年から開始となる。

両国は同輸送機導入でこれまで以上の相互運用、業務標準化を模索しており、フランス国防調達庁DGAによると欧州空輸司令部European Air Transport Command (EATC) 下の国際部会で、「運用手順を定め、合同訓練内容を開発する」作業が進んでいるという。

英国もフランス空軍と提携関係を樹立しており、英空軍要員がオルレアンでA400M各国向け就役作業チームMultinational Entry into Service Team (MEST) に派遣されている。フランス空軍は逆に英国に要員を派遣しロッキードC-130J操縦でグラスコックピット体験を積ませている。

仏独共同のA400M訓練はオルレアンでフランス空軍参謀総長デニス・メルシエ将軍 Gen. Denis Mercier とドイツ空軍参謀総長カール・ムリナー将軍Gen. Karl Müllnerが署名した。

両国はすでにユーロコプターEC665タイガー攻撃ヘリのパイロット、技術要員訓練を合同で実施している。
             
   
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2013年10月1日火曜日

航空自衛隊E-767の性能改修に向けた動き

Japan eyes $950 million upgrade to E-767 fleet


Flightglobal September 30,2013

日本がボーイングE-767 の性能向上で情報開示を請求している。これは同国が運用する空中早期警戒機4機の改修作業950百万ドル相当にむけたもの。
  1. 米国防安全保障協力庁 (DSCA) がウェブ上で明らかにしたもので、日本向けミッションコンピュータ性能改修 mission computing upgrade (MCU) として電子支援システムを4系統、AN/UPX-40新世代敵味方識別装置 Next Generation Identify Friend or Foe (NGIFF) を8基、同じく8基のレイセオン製AN/APX-119敵味方識別トランスポンダーおよびレイセオン製KIV-77暗号化コンピュータ4基を搭載する。
  2. 主契約社はボーイング統合防衛システムズで、米国の海外軍事販売(FMS) 制度を利用する。
  3. 「その他として支援試験装置の提供、予備修理部品、人員訓練、訓練機材、技術文書、米政府および契約企業による技術支援、機材据付・点検など関連分野でのサポートが含まれる」とDSCAは説明。
  4. 今回の改修で日本のAEW&C能力だけでなく、米軍との共同作戦能力も向上する。■


2013年9月30日月曜日

連邦予算がピンチ ペンタゴンも影響を免れることはできません

米国の連邦政府が予算がなくなり機能停止になりそうな状況ですが、国防総省関係はさらに深刻なようです。こんなことで世界の平和は守れるのでしょうか。なお以下の米海軍協会ニュースは現地時間月曜日午前時点での報道です。

Government Shutdown: The Basics

By: John Grady
                        
U.S. Naval Institute USNI News,
Monday, September 30, 2013
                                                 

上院部会がペンタゴンの求めた基地閉鎖追加を却下した。カインでは負担可能な健康診療法案をさらに一年先送りする決議をしようとしており、同法案関連の医療機器への課税を認めなかったことで今週中にも連邦政府の部分的な機能停止が現実のものになる可能性が高まってきた。本日午後にも上院も同法案を否決する見込み。
  1. そうなるとおよそ40万人の連邦政府公務員が議会で何らかの合意形成ができオバマ大統領による署名による支出法案の成立に目処がつくまで無給状態で自宅待機扱いとなる。今週末は政府幹部が休日返上で誰を自宅待機扱いにするか、どの機能が継続可能かを見極めようとしていた。
  2. 政府機能が停止になりそうとなり、ペンタゴンの監督官ロバート・ヘイルRobert Haleから悪いニュースが発表された。州軍を維持支援する民間作業員と予備部隊には火曜日にも職場に来なくても良いとの知らせを受けそうだという。
  3. ただし同日に制服を着て出勤する各位も身なりをきちんとしておいたほうが良さそうだ。仮に議会が支出法案合意を10月7日期限までに形成できないと、現役軍人および民間作業員は給与支払いがあてにできなくなる。予備役兵員の支払い条件はさらに悪く、支払日はばらばらになりそうだとヘイルは言う。
  4. 機能停止になる前に国防総省には影響が出るとヘイルは続ける。「みんな給料の支払いが遅れることを心配して各自の役割に気を使っていない」
  5. 政府機能が停止した場合、戦没者の家族は遺族年金の受取は法案が成立するまで期待できなくなる。陸軍報道官によればアーリントン国立墓地は閉鎖されることなく、戦没者の埋葬等は平常通り行うという。退役軍人墓地も予算が前倒しで確保されていることから政府機能の停止と無関係だという。
  6. ヘイルによれば昇進検討委員会も同様に開催見送りとなるという。
  7. アフガニスタンはじめ各地での軍事作戦は「人命の安全および財産の保護に必要」と判断されるものは継続される。配属命令、移動命令は影響を受けない。その他一時的な出張旅行は承認されない。ただしアフガニスタンへの、あるいはアフガニスタンからの移動は承認受ければ可能。入隊勧誘は継続され、入隊事務所はそのまま業務を継続する。
  8. 先週金曜日の段階でヘイルは民間人作業員の半分を自宅待機の対象にし、基地内売店から艦載機訓練飛行まですべてを中止することを検討中と明かしている。ただし、現時点で地中海付近を航行中の艦船は対象ではない。
  9. 前回は2011年12月に同様な状況があり、その際の経験から国防総省ウェブサイトはポーツマスや真珠湾の海軍工廠と並んで支出法案の承認が遅れ政府予算が底をつきそうで業務停止が間近いと伝えている。
  10. 同様にアフガニスタンから機材を搬送することは一時的に中止になるとヘイルは示している。ただどこまで閉鎖が広がるかは「先が見えない」とし、南西アジアから米本土までの軍事輸送についてもヘイルはくりかえし、「現地司令官などがこの問題を検討中」と表現している。
  11. 閉鎖に関連し、基本的な業務である食事提供、フィットネスセンター、託児施設その他は閉鎖の対象外と国防総省は発表している。ただし、どこが開いていてどこが閉まっているのかを個別に見ていく必要があり、全国軍人家族連合会 National Military Families Association はウェブサイトで閉鎖情報を提供しているので参照されたい。先に電話で確認して閉鎖していなくてもサービス提供に通常より時間がかかることは覚悟すべきだ。
  12. ヘイルは今回の閉鎖の恐れで国防総省勤務の民間人従業員の士気が相当下がっていることを気にかけ、今年の夏も延べ60万人が6日間の自宅待機を経験しており、二年間に渡り昇給が止められ、人員整理が進んでいることを憂慮する。今回も自宅待機になれば「民間人従業員がさらに士気を低下することなる」と見る。
  13. ただし今からの自宅待機措置が今夏の待機と違う理由について、ヘイルは今回は予算削減や予算流用のための自宅待機ではなく、勤務を継続できる、できない人員の判別により決定されることを強調。
  14. さらに自宅待機を命じられた職員が待機期間中の給与を受け取る保証はない。1990年代に議会は自宅待機職員への給与支払いを遡及で認める決議をしたが。
  15. 議会が打開策を見つけても、赤字幅の上限を緩和する合意ができ、予算執行がふたたび柔軟にできるようになっても、あるいは予算ではなく支出決議が成立しても、ヘイルは国防総省に勤務する民間人・軍人に明るい未来は保証されていないと見ており、「人員削減や強制的な除隊がこれから数ヶ月のうちに起こるだろう」という。
  16. 国防契約企業は予算が底をつく前に締結済みの契約で作業を継続でき、実際業務を続けるだろう。ヘイルによれば今後は新規契約あるいは契約延長は執行を認められないことになるという。■

2013年9月29日日曜日

日曜日はちょっとのんびりと すごい現代戦シミュレーターゲームのレビューをどうぞ

このブログではじめてゲームを紹介します。中に出てくるHarpoonは絶版のようですが、海軍ゲームのシミュレーターとしてすごいソフトでした。今回の新ソフトはどうでしょうか。

Game Review: ‘Command’ is A Worthy Successor to Harpoon

By: Kyle Mizokami                    
US Naval Institute, Tuesday, September 24, 2013                                                 
Command: Modern Air/Naval Operations


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PCゲームソフトで知的な訓練に使えそうなものは本当に少ない。ゲームではともすれば現実を大幅に誇張するか完全なファンタジーの世界にこもりがちだ。ここにその例外となるソフトが現れた。“Command: Modern Air/Naval Operations” (「コマンド」)であり、「硬派」なシミュレーションソフトとして近代の海空戦のすべての局面を忠実に再現するものだ。かつてのHarpoon(「ハープーン」)シリーズの後継者になる可能性が十分あり、コマンドはゲーム愛好家のみならず軍、政府、研究者にも現代戦のシミュレータとして十分通用する内容だ。


「コマンド」は海空戦の様相を1950年から2016年の範囲で再現するもので、登場する艦船、潜水艦、航空機、兵装は実際のものをモデルとしている。再現しているのは対潜作戦、タイ水上艦作戦、対空戦、機雷戦(空中投下含む)、電子戦、海賊取り締まり作戦、警戒行動、強襲作戦、核兵器、衛星、無人機と近代戦の全容をカバーしている。


また、艦対艦交戦から戦略核兵器による応酬まで範囲が広い。艦船航空機は個別でも集団でも操作可能で、部隊数も数千まで広がる。(ただしゲームに使うコンピュータの性能に依存) シナリオでは24時間から36時間の範囲でリアルタイムで操作可能だ。一時中断や時間を早くすることも可能。各部隊が配置につくまでは加速させておいてから、索敵してからリアルタイムに切り替えることができる。


ゲーム内の地図はグーグルマップのような三次元表示で、地図データはスペースシャトルがレーダー観測した立体地形データShuttle Radar Topography Missionを利用している。最大ズームでは地球全体が俯瞰でき、最小レベルでは数百メートル単位で表示する。この切替で地域紛争や長距離ご創作戦、核戦争のように同時に複数の地点で発生する想定のシナリオが有効に使える。また、港湾、空軍基地、戦略目標をk別に表示して、実存する地下司令部、精製工場などを目標に設定することができる。


「コマンド」のすごいところは艦船、航空機、ミサイルその他兵装のデータベースが充実しているところで、これが全部再現されている。データベースがどこまで充実しているかというと、ファイヤスカウト、ズムワルト級駆逐艦、中国の空母「遼寧」までが入っていることでわかる。このデータベースはプレイ中にいつでも参照でき、電子支援手段により接触した敵の正体をデータベースが教えてくれる。
 


ゲームではシナリオ数本が入っており、朝鮮半島での軍事衝突、NATO対ワルシャワ条約軍の北海での衝突、1982年のフォークランド紛争からもっと現代的な南シナ海での軍事緊張まで様々だ。各シナリオはプレイ時間も複雑度も異なり、プレイヤー自身がシナリオを自由に作ることも可能。そのためシナリオビルダーが付属しており、データベース参照しマップ上で確認できる。この機能を使ってすでにシナリオを公開する動きがゲーム愛好家の中で始まっている。


その中でエアシーバトルの再現が可能だろう。アメリカ軍と同盟国側の防衛網を韓国、日本、グアムで再現し、さらに太平、の小島や空軍基地、海軍基地、ペイトリオットミサイル迎撃部隊に至るまで再現できる。同様に中国沿海部の防衛体制も再現できる。これで中国との戦闘状態を想定し、実際にそれが発生した場合をシミュレートできる。



これ以外に非正規戦や特殊作戦を再現できる。海賊や地上ではテロリストから地上の建物、車両までシミュレートできるのだ。また、地上部隊の動きや空中降下による部隊移動、ボートやSEAL用の車両・ヘリコプターを利用できる。ただし地上戦のシミュレーションは限定付きで中心はあくまでも海空戦の再現だ。また核兵器は戦術級、戦略級双方が利用できる。たとえば核爆雷、核対潜ロケット、またオハイオ級原潜によるトライデントD-5発射をシミュレートできる。


兵站活動や物資補給も再現しており、弾薬では個別の砲、ミサイル発射まで見る事ができる。空中給油機も利用でき、艦船には海上補給もできる他、空軍基地や空母は航空機作戦を支援するのは現実どおりで、発進から回収、再補給、燃料補給以外に機体掩体壕まで再現する。


ゲームをプレイすると急速に学習することが可能だが、一度内容がわかればプレイヤーは大部隊をうまく利用することができるようになる。チュートリアルシナリオが三本付属しており、それぞれ水上戦、潜水艦作戦、空中作戦で基本を学ぶことんができる。例えば水上戦ではアーレー・バーク級駆逐艦が対艦ミサイル防衛手段を展開し、 Mk-45 127mm 砲を発射し、トマホーク巡航ミサイルを敵の弾薬庫に向けて発射し、ロメオ級潜水艦をSH-60シーホーク・ヘリで攻撃し、ナヌチカ級ミサイル海防艦にハープーンミサイルで対抗する、という具合だ。




「コマンド」はウィンドウズの他のゲームよりも玄人向けの内容だ。ゲーム操作画面では目を引き付ける新奇性はなく、インターフェイスも洗練されているとはいいがたい。しかし、その反面、現代戦を詳細に再現している点では他に例がない。ゲームをプレイすれば画面が格好よくないなど気にならなくなるはずだ。


「コマンド」は娯楽用途以外に訓練用に、さらに新しい作戦構想の有益性を検証することにも使えるソフトだ。充実したデータベースとマップを利用してどんなシナリオでも再現できる。


「コマンド」はゲーマーから政府関係者まで広い範囲で受け入れられ、政府では今後の非公開作戦内容も検証することに使うかもしれない。近代戦シミュレーションでは決定版になる可能性がある。「コマンド」はウィンドウズ向けに9月24日発売開始予定。


コメント どうですか。プレイしたくなりましたか。まだアマゾンでは販売していないようですが、発行元からダウンロードできるようです。注記 Harpoonはお試し版を US Naval Instituteからダウンロードできるようです。



2013年9月27日金曜日

F-35第六、第七ロット生産契約まもなく妥結か 日本向け機体生産日程含む

F-35の次回生産ロット別契約についてエイビエーションウィークが以下速報で伝えています。

Pentagon Aims To Finalize Lockheed F-35 Contract Within Days

By Reuters
aviationweek.com September 26, 2013
Credit: SSgt Nicholas Egebrecht/U.S. Air Force
ペンタゴンはF-35生産の第六、第七バッチの契約を数日以内にロッキードと締結する見込み、と総額3,920億ドルの同機計画を扱う副主任が明らかにした。
  1. ランディ・マー海軍少将 Rear Admiral Randy Mahr はF-35でナンバー2の高官で二つだけ問題が未解決だが解決は近日中とした。ただし未解決問題が何かは明らかにしていない。
  2. 同少将は今回は計71機生産合意形成は前回より短期間で形成できたとしつつ、ペンタゴンの希望よりは時間がかかったという。
  3. ロッキードとペンタゴンは7月30日に基本合意ができたと発表しているが、詳細は一ヶ月以内に詰めるとしていた。
  4. 合意内容では第六バッチで36機を生産し、各機の価格は前回のロットより4%下がるとし、第七バッチでは35機とし、ここでも4%の価格低下となるとしている。
  5. 両方で総額70億ドルになると業界筋は見ている。
  6. ロッキードとペンタゴンは第八バッチの基本合意に来年早々までに到達したいと希望している。
  7. ロッキードのスポークスマンは第八バッチは45機生産となる見込みと発言。うち16機は英国、イタリア、ノルウェー、日本、イスラエル向けだという。■

防衛装備の海外販売に熱を入れるペンタゴンの狙いは国内産業基盤維持および調達費用高騰の防止にある

Pentagon Pushes More Foreign Sales Of U.S. Goods

By Michael Bruno
Source: Aviation Week & Space Technology
aviationweek.com September 16, 2013
Credit: NIDS/NATO Media Library

アメリカ経営学の第一人者ピーター・ドラッカーは「ビジネスの本質は顧客を獲得し、維持すること」と表現した。国防総省はその言葉を真剣に受け止めているようだ。
  1. 強制予算執行削減はこのまま続きそうな観測で、国防関係者は輸出を前例のない水準まで引き上げようとしている。時間がかかる海外軍事販売 (FMS)では我慢できなくなり、海外バイヤーを米国製武器装備の販売に直接巻き込む傾向が強くなってきた。.
  2. 「近代装備は一層高価格になっており、長期間にわたる開発の負担が大変だ。これは米国以外でも同じ」と国防安全保障協力庁 Defense Security Cooperation Agency (DSCA)副長官リチャード・ジェネイルRichard Genaille, Jrが発言。いわんとしているのは開発調達コストを多くの海外諸国に負担させることだ。
  3. その好例が9カ国が参加する共用打撃戦闘機(JSF)でハイエンド装備は概して調達数が小規模になる、とジェネイルは発言。一方で、世界各地の開発途上国・新興国ではローエンド技術が訴求力を有している。
  4. そこでDSCAの対策のひとつに複数国向けにLOA要望承諾書を一括発行することで、従来は各国別にLOAを提示してきた。「多国向けLOAがあれば、同時に複数国が署名し、特定の製品を共同購入が可能となり、従来の二国間ベースより安価かつ容易に導入する道が開ける」(ジェネイル)
  5. JSFより成功している事例にNATOの戦略空輸能力手段調達計画でボーイングC-17グローブマスターIIIが計3機導入された件がある。各機はハンガリーのパパ空軍基地Papa AB に駐留し、10カ国が共同運航している。加盟国のアフガニスタン撤退時はこの制度を有効に活用した。.
  6. ハイディ・グラント空軍副次官(国際担当) Heidi Grant, deputy undersecretary of the Air Force によると空軍は空中給油分野で国際コンソーシアム体制の構築を目指し、NATOC-17の例を参考にしたいという。一方で空軍はFMSの対象となる可能性がある各国で導入希望が高い共通した15種類の兵器・システムを抽出しており、今後はその販売実現を重点的に進めることにし、従来のFMSを最初から案件成立していくプロセスを取りやめる。
  7. DSCAはFMS総額4,000億ドル相当の各種案件の成約を期待し、年間平均410億ドルの取引規模になる。「毎年410億ドルの新規案件で生まれる資金流入は国内の産業基盤を維持し、わが国自身の国防調達コストを下げることにつながる」(ジェネイル)
  8. オバマ政権が打ち出した輸出拡大策は国防総省による海外販売が頼りで、FMSでの販売が成立しないと国内の技術職技能職の数百万人分が雇用不安になるとジェネイルは試算し、逆に米国向けの調達価格が2割から3割値上がりするという。
  9. 一方で米国はすでに通常型戦争を行う能力を喪失したと危惧する向きもある。「武器調達・支援費用に軍の人件費も加えるとインフレーション率を上回る上昇をしており、当面この傾向がおさまりそうもない」と見るアナリストもいる。
  10. F-35、V-22やオハイオミサイル原潜の後継艦のような新型兵器は高性能だがインフレ率を加算してみると前の世代の兵器より高価になる。敵側の攻撃手段は防衛対象装備の数分の一の価格だと同アナリストは指摘し、「米国の国防産業企業の売り上げよりも少ないGDPの国が発射した」無誘導の初歩的なミサイルや中国のDF-21D対艦弾道ミサイルから防衛するために巨額の費用がかかる。■