2014年9月1日月曜日

第六世代機: 海軍版に人工知能搭載か





第六世代機に関心をお持ちの層は多いようですね。五月雨式にニュースが出てきますので都度ご紹介することにいたします。今回のソースは海軍協会なのでF/A-XXの視点が中心になっていることは勘弁ください。





Navy’s Next Fighter Likely to Feature Artificial Intelligence

By: Dave Majumdar
Published: August 28, 2014 3:56 PM
Updated: August 28, 2014 3:56 PM
Boeing concept for F/A-XX. Boeing Image
ボーイングのF/A-XXコンセプト . Boeing Image


ペンタゴンが企画中のボーイングF/A-18E/Fスーパーホーネットおよびロッキード・マーティンF-22ラプターの後継機種には人工知能が大幅に搭載されるようだ。
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  1. スーパーホーネット後継機となる海軍のF/A-XXは2030年ごろの配備を目指す。
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  1. 米空軍の次期戦闘機F-XはF/A-XXとは相当異なる機体になるが、両軍で共通部分の基本合意ができている。

  1. 「PNT(Positioning, Navigation and Timing 位置調整・航法・時限調整)や通信、ビッグデータ処理で海軍、空軍の合意ができた」と海軍関係者が述べている。

  1. ただし人工知能(AI)含む高度技術内容がどれだけ戦術戦闘機の任務達成に貢献するか不明だ。とはいえ、AIはF-22や同じロッキード・マーティンのF-35で搭載しているセンサー統合のコンセプトに通じパイロットにとってはなじみやすいかもしれない。

  1. ただし海軍、空軍ともに技術的に遠大な目標をもつものの、現実には相当の溝がある。
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  1. 海軍、空軍はシリコンヴァレーのハイテク産業の助けを借りて第六世代戦闘機を実現しようとしている。8月27日にマイク・ホステジ空軍大将Gen. Mike Hostage(航空戦闘軍団ACC司令官)が「イノベーションサミット」と称する会合をカリフォーニア州モフェットフィールドで開催している。ねらいは新規の発想を制空権確保に活用すること。.

  1. F/A-XXの初期性能説明文書 initial capabilities document (ICD) はペンタゴン内部の手続きで埋没している。海軍は新型戦闘機案の最終決定前で重要な工程となる代替手段分析 analysis of alternatives (AOA) を2015年に開始する。■



2014年8月31日日曜日

H27概算要求に見る日本の防衛力整備のポイント



世界の中で例外的に冷戦構造の残るこの地域内で日本が十分な防衛力を有し、安定を守ることは「軍国主義」でもなんでもありません。国民として防衛力の整備、それで何を目指すのかを見守る義務があるでしょう。本ブログではISRの意義、装備についてご紹介していますが、やっと日本でもISRが前面に出てくるようになってきましたね。うれしいことです。






Japanese Defense Ministry Requests 2.4% Budget Hike

Aug. 28, 2014 - 03:45AM   |  
By PAUL KALLENDER-UMEZU   |   Comments
More Muscle: A Japanese Atago-class guided missile destroyer sails in formation with US Navy and Japan Maritime Self Defense Force ships. Japan initially wants to add two of the destroyers.
あたご級誘導ミサイル駆逐艦が米海軍と併航している。日本はあたご級2隻を追加建造する (MC2 Adam Thomas/ / US Navy)
TOKYO — 日本は防衛力を整備し、近隣諸国が危険ににさらされれば援助の手を差し伸べるとの公約を着実に実現している。防衛予算規模を90年代のピーク時程度にもどそうとしている。
  1. 防衛省の2015年度概算要求は2.4%増の4.9兆円(472.5億ドル)で2000年代の減少傾向を反転させるもの。東アジアで不安定さが増していることを理由に防衛省は喫緊の課題は情報収集・監視・偵察能力(ISR)の向上、海上監視と弾道ミサイルへの対応を強調しつつ、南方島嶼部への侵攻を未然に防ぐこともとりあげている。

  1. 支出で最大規模は川崎P-1哨戒機20機を2018年度開始2021年までに調達(3,781億円)すること。二番目があたご級イージス駆逐艦2隻の追加で2020年度末までにイージス艦を8隻体制にする。

  1. 三番目が1,315億円でF-35A6機を航空自衛隊に調達する予算だ。なお、同機は今年度予算で4機分の調達予算を計上している。

  1. この4.9兆円は正面装備だけの金額で、次期政府専用機導入や事務経費、米軍再配備関連を含めると5.05兆円になる。

  1. 防衛を巡る思考の変化も反映しており、㍻26年度防衛白書では「高圧的な行動」と「力による現状変更の試み」を批判し、中国が昨年11月に一方的に東シナ海上空に防空識別圏を設定したことで警戒を高めている。

  1. 白書では北朝鮮を「域内のみならず国際社会にも大きな不安定要因」として、KN-08移動式大陸間弾道の名称をはじめて明記した。

  1. そこで防衛省は航空宇宙研究開発機構(JAXA)と連携して宇宙配備弾道ミサイル早期発見能力を整備するとし、今後打ち上げられるJAXAの光学偵察衛星に赤外線センサーの実験モデルを搭載する。

  1. 離島防衛と域内軍事活動の偵察でISR能力整備が最優先事項となり、防衛省はグローバルホークUAV3機を導入し空からの監視探知能力を拡充する他、中国海軍を監視する衛星群の整備提言を宇宙開発戦略本部から受けている。
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  1. 陸上兵力では小規模ながら揚陸戦能力の整備がはじまっており、空では83空を解体し、沖縄に9空を編成する。また303沿岸監視部隊を前方配備する。

  1. 航空自衛隊では主力戦闘機F-15の近代化、F-2の空戦能力向上努力を続けるが、F-35に過剰な期待をするあまり将来の戦闘機部隊整備が不足するのではないかとの指摘もある。日本戦略研究フォーラムの研究員は匿名を条件に、「日本はF-35に期待をしすぎており、F-35さえあれば航空自衛隊が制空権を確保できると考えている。たしかに制空権は軍事活動を成功裏に行なうための条件だが、現状の日本には戦闘機ギャップがあり、F-35が来るまでは日本周辺で航空優勢を維持するのは難しい」と語っている。

  1. ISRや宇宙配備ミサイル監視、さらにヘリコプター搭載用の新型対潜ソナーなど新規研究開発に着手しているが、日本の防衛予算は2003年の4.6兆円が2012年に4.6兆円となった一方で中国は4倍増としており、遅きに失したと指摘する向きもある。

  1. 太田文雄は海上自衛隊の退役海将で情報本部長も務めたが、予算増でも員不足のままと指摘し、中国が弾道ミサイル潜水艦を増備し抑止力を整備する琴への対応策を今から考えておく必要があると語っている。■



シンガポール空軍F-15SGの現況 シリアルナンバーで保有機数を推測する


ここまで秘密を守れるとはシンガポールはすごい国ですね。機体番号と資料からシンガポール運用する機数が判明しましたが、さぐりあてた著者にはご苦労様としかいいようがありません。なお、シンガポールもF-35の採用を検討していると言いますが、近隣諸国を見てもF-15SGで当面大丈夫なのではないでしょうか。

Singapore Quietly Expanding Fighter Force

By: Mike Yeo
Published: August 25, 2014 4:02 PM
Updated: August 25, 2014 4:02 PM
シンガポール共和国空軍所属のF-15SGイーグルがオーストラリアのダーウィン空軍基地から離陸。Pitch Black演習(2014年8月)に参加し、GBU-38共用直接攻撃爆弾(JDAM).を投下した。 Mike Yeo Photo

シンガポールが運用するボーイングF-15SGは公称24機だが、実は同型機を32機保有しており、さらに40機に増設する動きがあると判明した。

  1. マラッカ海峡と言う戦略的な立地条件のシンガポールは地域内安全保障で重要な役割を担い、合衆国とは安全保障、国防で密接な関係にある。

  1. 米国務省の国防交易管理局 Directorate of Defense Trade Controls から議会提出ずみの書類(2012年11月26日付)にシンガポールがF-15SGを8機追加発注しており、全24機になるとの記載があった。契約は直接商業販売 Direct Commercial Sales (DCS)でボーイングに発注されており、2011年末までに納入されている。そのうちの一機が2012年のシンガポール航空ショーに展示された。

  1. ショー会場でボーイングのF-15担当副社長(当時)ロジャー・ベサンセネス Roger Besancenez がF-15SGの最終納入は2012年第四四半期と明らかにしており、ボーイングからも同年にF-15が8機国名不詳の相手先に引き渡されたと発表していた。

  1. F-15SGには米空軍と同様のシリアル番号をボーイングの製造番号をもとに表示している。シンガポール空軍のF-15SGは一部マウンテンホーム空軍基地の428戦闘機飛行隊とともにパイロット訓練用に配備されている。その機体にはシリアル番号を尾翼にも記載しているが、シンガポール配備のF-14SGは4ケタで全く違う番号が表示されている。

  1. 2013年10月の写真では05-0025、05-0029 、05-0030 の番号を付けた機体がアイダホ州での演習に参加しているが、同年12月には05-0028、05-0032の機体がアリゾナ州でシンガポール陸空軍が共同で実施した実弾発射演習に参加している。

  1. 一方でシンガポール配備の機体では8331と8332の番号が製造番号を隠した形で視認されている。

  1. また8331の機体がオーストラリアで最近行われた演習に参加しているのをUSNI Newsは目撃している。その機体ではテープが一部はがれ末尾の「26」が確認できた。総合するとシンガポールはすでに32機のF-15SGを導入済みのようだ。
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  1. 8月5日から6日にかけボーイングは連邦航空局に対して8機分の民間機登録を抹消申請をしており、機体はF-15SGであると説明している。これが追加発注分だとするとシンガポールは国内にF-15SGの第二飛行隊を新設し、ノースロップF-5S/TタイガーII迎撃機と交代させるつもりなのだろう。

  1. シンガポールは軍事関連で秘匿の傾向が強く、F-15を何機保有しているのかさえ口外していない。ボーイングも口を閉ざしている。

  1. サウジアラビア向けF-15SAが引き渡されるまではF-15SAが最高性能のF-15のままで、レイセオン製AN/APG-63(v)3アクティブ電子スキャン方式レーダー、AIM-9Xサイドワインダーミサイル、AIM-120C高性能中距離空対空ミサイルで空中戦を、GBU-10/12ペイブウェーIIレーザー誘導爆弾とGBU-31/38/54共用直接攻撃弾(JDAM)を対地攻撃用に搭載する。またシンガポールはAGM-154共用スタンドオフ兵器も調達済みと広く信じられている。■

2014年8月30日土曜日

★★注目されるアイアンドームの迎撃実績 ミサイル防衛でさらに一歩先を進むイスラエル



なぜかイスラエルに関する報道では軍事面の分析が見られない日本ですが、アイアンドームが目論見通りの成績をあげたことで今後は大いに注目されるのではないでしょうか。パスレスチ側が一層追い詰められると今回のようにロケットといっても手製のお粗末な兵器を高価なシステムで迎撃するという経済学的には不合理な非対称戦になりそうですね。



Iron Dome Blunts 90% Of Enemy Rockets

Overall, Iron Dome missile deflection proves effective through 50 days of conflict
Sep 1, 2014Alon Ben David | Aviation Week & Space Technology
Credit: Zeev Stein
ガザ回廊を巡るイスラエル対パレスチナ抗争でアイアンドーム防空システムの成功事例があきらかになっている。合計735回の対ロケット、迫撃砲迎撃で90%近い成功率をあげている。
  1. ガザから発射されたロケット・迫撃弾は50日間で合計4,594発で、この内アイアンドームの迎撃失敗は70発にとどまる。アイアンドームの配備地区でイスラエル市民に死傷者は発生していない。この運用実績は米国で同システムの有効性を巡り疑問が出ているのと好対照だ。

  1. 「前例のない大きな戦略的成果になった」とイスラエル国防相モシェ・ヤーロン Israeli Defense Minister Moshe Ya’alon がAviation Weekに語っている。「アイアンドームはハマスの中長距離攻撃をほぼ無効にした」とイスラエル空軍高官も付け加える。「迎撃735回で数十名のイスラエル市民の生命を未然に守れた」

  1. イスラエルはガザ侵攻の前に人口集中地区にアイアンドーム6個部隊を配備した。さらにメーカーのラファエル高度防衛システムズ Rafael Advanced Defense Systems が完成直後の3個隊を納品していたので合計9隊で数千のミサイルに対応できた。さらに戦闘期間中に第10番目の装備も納品されたが操作員不足で稼働できなかった。

  1. パレスチナ側ではハマスとPIJ(パレスチナイスラム聖戦軍)が9,000発ものロケット弾をかきあつめており、そのうち1,000発は122-mmロケットで有効射程距離は 45 km、200発はM75 8インチロケット弾( 75 km)だった。その他の大多数は短距離弾。またシリア製の302-mmロケットR160(100 km以上)も持っていた。
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  1. ただしエジプトからガザに密輸された標準生産品は少数。エジプトではアブド-アル-ファタ・ア-シシ大統領Abd Al-Fatah A-Sisi,が権力を握った2013年7月以後にガザ密輸トンネルを多数破壊したので、パレスチナ戦闘員はロケット等を自らの手で製作することを迫られた。即席ロケット弾の精度は低く、軌道も不安定でアイアンドーム操作員も混乱させられた。

  1. ロケットは多数発射されているが、そのうち人口集中地区に脅威となったのは25%で、殆どの場合は飛来するロケットに照準を合わせた「タミール」迎撃ミサイルが一対一で発射された。ただし大都市部がロケットの標的となった場合には二発で対処させた。なお、タミールミサイルの価格は一発50千ドルである。

  1. アイアンドームは完全自動モードでも作動できるが、イスラエル空軍は手動とし、操作員が毎回数秒以内に迎撃判断を下すこととした。これが功を奏し、イスラエル国民の生活はほぼ正常どおりで推移した。ただし、操作員の一人の過誤でイスラエルへの国際航空路線が一日半使えなくなった事例が発生している。

  1. ハマスはベン・グリオン国際空港攻撃を狙っていた。7月22日にロケット一発が発射されたが、アイアンドーム操作員が探知し、迎撃しない選択をしたのは民間航空への影響を恐れての事だった。結局、このロケットは空港から1Km離れた地点に落下し、その後FAAは米系エアライン各社にイスラエル便の運航停止を命じた。

  1. これに対しイスラエルは欧米各国にロケット攻撃とアイアンドームによる迎撃で民間航空への影響は「無視できる範囲」と説明し、「イスラエル空軍の分析ではランダムに発射されたロケット弾が飛行中の航空機に命中する可能性は10億分の一」とイスラエル民間航空局(ICAA)のジオラ・ロム Giora Rom 局長が各国へ書簡を送付している。さらにベングリオン国際空への航空路をアイアンドームの稼働範囲から分離する調整も行っている。その結果、エアライン各社は36時間後にイスラエル便を再開した。ただし大韓航空は例外。

  1. アイアンドームの作動条件は民間航空の運航を前提としており、アイアンドームにより民間航空機が被弾する可能性はロケット弾の命中確率より低いという。

  1. パレスチナ側はイスラエル攻撃を続けたが、備蓄が低くなり標的をガザ近辺の農村に切り替えている。アイアンドームは配備されていないが、迎撃を試みている。

  1. アイアンドームの活躍でイスラエルの被害は最小限となったが、それでもアイアンドームは迎撃に失敗していると主張する向きがある。とくにマサチューセッツ工科大学の物理学者テッド・ポストルTed Postol は迎撃成功率は5%にすぎないとの研究結果を示している。

  1. 「ばかげだ主張です」と反論するのはイスラエルミサイル防衛機構 Missile Defense Organizationの前局長ウジ・ルービン Uzi Rubin だ。「もしそれが正しければ、4,000発ものロケットがイスラエルに発射されたのにアイアンドーム配備地区で死者がでていないのはおかしいでしょう。2006年のヒズボラ攻勢でもほぼ同数のロケットが発射されており、当時はアイアンドームがなく死者多数が出ています」

  1. 米議会もアイアンドームの効果を認め、225百万ドル追加支援を8月1日に承認している。この予算でアイアンドーム迎撃弾の追加調達ができ、これで米国による支出総額は13億ドルになった。

  1. ただしアイアンドームの効果が目立ちすぎて 負の影響も出そうだという。イスラエル国防関係者が言う。「これではイスラエルに被害が全然ない印象を与え、なぜイスラエルが戦闘に踏み切ったのか世界に説明できなくなる」■


2014年8月29日金曜日

インド首相訪日でUS-2の合意が成立するかが航空関係の注目ポイント


US-2では「輸出」を期待する日本と「共同生産」を求めるインドで温度差があるようで、議論好きのインドに日本がどこまで対応できるかがポイントになるでしょうね。その背景にはやはりUS-2の高価格があるのでしょうが、これまでの数十年の技術蓄積(戦前も入れれば80年以上?)と運用経験は簡単に安く提供できるものでもないでしょう。ともあれ、両国にとっても中国の影が大きな存在になっていることは間違いありません。

India-Japan Talks To Focus on Strategic Ties, Possible Aircraft Deal

Aug. 28, 2014 - 03:09PM   |  
By VIVEK RAGHUVANSHI   |   Comments
India and Japan will discuss the possible joint production of the Japanese company ShinMaywa's US-2 amphibious aircraft during Prime Minister Narendra Modi's Tokyo visit Aug. 30-Sept. 3.

NEW DELHI —インド首相ナレンドラ・モディ Narendra Modiの日本公式訪問では水陸両用機の共同生産はじめ両国の防衛協力の緊密化など戦略面で話し合われる見込み。
訪日は8月30日から開始し、モデイ首相は自ら訪日予定を一日延長している。20名ほどのインド産業界代表も同行するのはしインド新政権が日本との結びつきを重視しているあらわれとインド外務省関係者は解説する。
インドは日本はともに米国を入れた三カ国戦略協議の早期再開を提案している。日本政府が2009年以来議題に上っている同提案には慎重なのは中国への影響を懸念しているためだろうと同上関係者は言う。
これに対しインドは日米三カ国協議で中国の影響拡大を食い止めるねらいがある軍事専門家N.メータは言う。
訪日中に議題に上るのが新明和工業のUS-2長距離飛行艇の共同生産だろう。 4,500kmの航続距離を有するUS-2はインドの「戦略的権益」の保全に活用できるとインド国防省は見ている。
空軍関係者は同機をアンダマン・ニコバル諸島で運用すれば中国のインド洋沿海水域での作戦へのけん制が可能だと解説。
新型水陸両用機の導入に向けインド海軍と空軍からそれぞれ情報開示請求が2011年に発出されており、新明和工業、カナダのボンバルディア、ロシアのベリエフからそれぞ回答があった。しかし、モディ首相が今回の訪日期間中にUS-2共同生産の合意を取り付ければ、結局入札は行われないだろう。 ■

2014年8月28日木曜日

空で、海で、頻発するロシアとの対立は何を意味するのか 







Russia Playing Politics With Alleged Submarine Confrontations

By: Kyle Mizokami
Published: August 26, 2014 11:19 AM
Updated: August 26, 2014 11:19 AM
Oyashio-class submarine
おやしお級潜水艦

ロシア軍と日米欧の部隊で対立的な遭遇がこの数週間で増えている。ウクライナを巡りロシアと西側の関係が冷え込んできたのと歩調をあわせたようだ。

  1. 今月に入り、ロシア領付近くで日米の潜水艦にロシア対潜作戦が対応した事例をロシア報道が二件伝えている。水中対立は米ソの冷戦時代を想起させるものがあり、ソ連と米・同盟側は追跡劇を繰り返していた。

  1. ただ今回は背景が複雑化しており、。ロシアは国内問題として、その他各国はより大きな視点から取り上げている。

  1. ロシア国営メディアによれば8月7日に北海艦隊の対潜部隊が外国潜水艦をバレンツ海から追い出すのに成功したと伝えている。水上艦艇とイリューシンIl-38メイ対潜哨戒機で潜水艦を追尾したとする。潜水艦は米海軍のヴァージニア級攻撃潜水艦だったとしている。

  1. これに対してヨーロッパ軍司令部はこの出来事の発生自体を否定し、同海域に米海軍潜水艦はいなかったとする。

  1. この事件に加え、その一週間前に米空軍RC-135V/Wリヴァエットジョイント機がバルト海上空の国際空域でロシア機から妨害を受けており、ロシアから近隣諸国へのメッセージの意味があったようだ。つまりNATOに近づくポーランド、リトアニア、ラトビア、エストニアに対してロシア軍は欧州内の米軍を上回り、その気になれば米軍を排除できるぞ、との内容だ。

  1. 一方でロシア領土の反対側では先週に同様の事件が発生したとの報道が入ってきた。ロシアのビジネス新聞紙コメルサントKommersantがロシア国防省が対潜部隊によりロシア国境付近で日本のおやしお級潜水艦の哨戒行動を中止させたと述べたと伝えたのだ。

  1. 伝えられる発生地点は宗谷海峡(国際的にはラ・ペルーズ海峡 La Perouse Strait)だ。宗谷海峡はわずか巾43マイル、最大深度も60mで、日本の北海道とロシア領のサハリン島を隔てる。

  1. この宗谷海峡は日本の潜水艦部隊にとって重要な防御線となっており、冷戦時にはソ連による侵攻ルートの想定があり、有事には海上自衛隊の潜水艦数隻が配備され揚陸部隊を迎え撃つ場所だ。

  1. おやしお級はディーゼル攻撃潜水艦として最新鋭の部類に属し、AIP(大気非依存型推進力)を装備し、X型の船尾翼を有する。伝えられた艦は海上自衛隊の横須賀基地配属の可能性がある。
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  1. 8月27日のITAR-TASS通信によればロシア政府は水中対立は実は発生していなかったと異例の発表をしている。「ラ・ペルーズ海峡で日本潜水艦を探知したが、国際法に違反しておらず、ロシア側国境線を越境もしていない」とロシア幕僚本部が認めたという。

  1. この潜水艦がおやしお級で、X型船尾まで確認されていたことから、本当に事件が発生していたのであれば同艦が当時は浮上しており、存在を隠す意図がなかったことになる。これでなぜロシア政府がこの事件はバレンツ海事件とは異なると主張していたかがわかる。

  1. 事件発生時にはロシア軍地上部隊1,000名、武装輸送ヘリMi-8AMTSh 5機、軍用車両100台がロシアが占拠する千島列島で演習を行っていた。千島の南部四島はソ連が第二次大戦終了時に日本から奪取したままで、日本は領有権を主張しており、北方領土として返還をロシアに求めているが実現していない。今回の演習を日本は「到底受け入れられない」として抗議している。

  1. クリミア情勢の関連で日本も対ロシア制裁に加わっており、今回つたえらえる対立もロシアが千島列島南部を事項支配していることを暗に伝え、日本に対して強硬策に走らないよう求めているものだろう。

  1. 一連の事件ではそれ以上に強い背景理由はプーチン政権に対する暗いニュースからロシア国内の目をそらすことがあるのだろう。冷戦時とは違い、ロシア政府は西側報道に対して自らの見解を国民に伝えることが求められている。ロシア国営通報道機関とロシア政府の関係からプーチン政権はマイナスの側面を持つ報道に対する別の報道や出来事を広めることが可能だ。

  1. これに対してヴァージニア級と言われる潜水艦をバレンツ海から追い出した件でのプロパガンダには別のねらいがある。このニュースが出たのは8月9日土曜日で、週末はロシア国内ニュースが報道を占める。翌週の12日火曜日は原潜ミンスク沈没事故から14周年だ。ミンスクが乗組員118名全員と沈没したのがバレンツ海で、プーチン大統領による当時の救難活動が不適切と批判が起こっていた。

  1. そこで今回の追放劇を報じたロシアトゥデイ国営ニュース局は「NATO潜水艦は北極海付近で航法エラーを多数起こしており、米原子力潜水艦トレド(原文ママ)と衝突したことでクルスクが沈没したとのロシア海軍情報もある」と報じている。クルスク事故記念日もネットはロシアの実力を称賛する声であふれていた。

  1. 同様にマレーシア航空MH17便の撃墜事件はウクライナ分離派によるもので、ロシアも共謀したとされるが、ロシア軍がアメリカの国境侵犯を食い止めたことで影が薄くなっている。ロシア軍の実力を示すイベントを作ることでクリミア問題でロシアが露呈した愚劣さとあからさまな介入の報道に対して正の効果が生まれる。

  1. そこでロシアと米、NATO、日本の各軍と海を巡る対立は今後もプーチン政権が続く間は再発しそうだ。対立が海上戦闘につながる懸念が残る。しかし、皮肉にもこうした対立があることで西側はロシア軍の実力を知る機会が生まれ、長所短所を探り、ロシア製装備に関する技術情報も収集できるのだ。■

コメント ミンスク事件は当初から外国潜水艦のせいだとロシアは主張していましたね。どこの国でも外国による陰謀や嫌がらせを国内の意識高揚に使ってきた歴史があり、革命後さんざんいじめられたソ連では特に外国を警戒する意識が強かったのですが、ロシアになってもやはりそのままのようですね。


2014年8月27日水曜日

スコーピオン練習機型も提案するテキストロンエアランド社


何かとスコーピオンが注目されるのは明確にMarket-Inの思想を実現した機体であるためでしょう。新興国含む各国への採用が本命のようですが同機は決して途上国向けの機体ではなく、各国も空軍装備として合理的に同機を検討すべきなのではないでしょうか テキストロンエアランドは人道救難、国境監視含む多様なミッションが可能と宣伝しています。 www.scorpionjet.com


Textron AirLand Developing Scorpion Trainer Variant

Aug. 26, 2014 - 11:47AM   |  
By AARON MEHTA   |   
Textron AirLand is planning to develop a trainer variant of its Scorpion aircraft to compete for the US Air Force's T-X trainer replacement competition, as well as international markets.
テキストロンエアランドはスコーピオンを練習機に改造した機体を企画中で、米空軍のT-X競技に参加する意向のほか、海外販売を目指す。 (Textron AirLand)

CHICAGO —テキストロン・エアランドTextron AirLandはスコーピオンを改良し米空軍のT-X次期練習機の提案競争に参入する意向と分かった。同社は海外販売も視野に入れ、練習機需要を取り込みたい考えだ。なお、スコーピオンの成約例はまだない。
  1. テキストロン幹部が回答を避ける中で同社防衛事業開発担当副社長スティーブン・バーク Stephen Burke,regional vice president for military business development の発言が際立って明瞭かつ直接的だ。

  1. 「当社はT-Xに参加します」とDefense Newsに8月23日州軍協会の年次総会(シカゴ)で語っている。

  1. スコーピオンは情報収集監視偵察機能(ISR)に攻撃能力を付けた機体。昨年9月の発表以来、テキストロンはモジュラー構造を特徴だとして強調しており、バーク発言では練習機型を言及している。 「モジュラー構造により簡単に必要な性能に応じた機体に改造でき、T-Xの性能仕様にも対応可能です」

  1. 練習機型も双発、二枚尾翼と言うスコーピオンの基本設計を継承するが、主翼が短縮化され空力学的にも洗練されるほか、エンジン推力も増加する。「ISRミッションでは偵察時間が長い方がよいですね。でも一回2時間の訓練課程では性能と燃料消費率の関係がが違ってきます」(バーク)

  1. T-Xの性能要求は空軍から2016年後半に発表される見込みだ。それまではテキストロンとしてはまず練習機型を完成させて実際に飛行する予定。T-X競合の勝者はT-38練習機に代わる350機を製造することが認められるはずで、契約規模から数社が関心を寄せている。

  1. 練習機として既存機種三機がT-Xに名乗りをあげそうで、このうちBAEノースロップ・グラマンL-3シミュレーションロールスロイスが共同で設立したホーク高性能ジェット練習機システム以外に、ロッキード・マーティン韓国航空宇宙工業製T-50を、ジェネラルダイナミクスアレニア・アエルマッキと共同でT-100 を推している。

  1. ボーイングサーブとともに「完全新設計」の機体を作ると発表している。詳細は不明だが、両社はサーブ・グリペン戦闘機を原型にするものではないとしている。

  1. 「空軍はこのために全くの新型機を開発させようとは全く思っていません。そこで当社は既存機でも練習機の要求に合致していることを示すつもりです」

  1. 一方でテキストロンは同機の第一号顧客を探しているが、バークによれば真剣な商談が数件進行中といい、別の関係者も海外受注数件でローンチカスタマー複数が決まるとみている。

  1. フロスト&サリバンのアナリストであるマイケル・ブレイズMichael Blades, an analyst with Frost & Sullivanは練習機型でスコーピオンの販売はプラスとみている。モジュラー設計により基本機種を装備なしで販売すれば、米国の国際武器取引規則 International Traffic in Arms Regulations の規制を受けない。
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  1. またフロスト&サリバン作成の資料では練習機需要で今後も大きな伸びはないとしているので、コストが重要な要素だとする。テキストロンの説明ではスコーピオンの飛行時間当たりコストは$2,700でターボプロップ練習機T-6の$2,200に近い。「プロペラ機に近いところまでコストをさげられたら大きな利点になります。狙いどころは正しいとみています」(ブレイズ)

  1. バークも海外市場では同じ機体を練習用、軽攻撃用の両方に使う傾向があると指摘する。「軽攻撃機で練習用途にも使える機体だと強調しています。同じ機体で練習と攻撃の両方に使えれば、お買い得感があり、軽攻撃専用機はこちら、こっちは練習用専用機と売り込んできたやり方は変わりますね」「そこが市場のおいしい部分になり、事実、当社の狙いどころが正しいとのコメントが海外顧客から返っています」

  1. スコーピオンチームはテキストロンの広範な製品群も活用している。スコーピオン営業には同社のTRU Simulation部門によるシミュレーションも抱き合わせで提案し、同社のこれまでの整備分野の経験から有効な解決策も提供できるという。■

2014年8月26日火曜日

米陸軍の極超音速飛行試験機、打ち上げに失敗、空中破壊される


これもブラックプロジェクトなのでしょうが、実験に失敗したためあらためてその存在が表面に出てきました。極超音速飛行は課題が多いのですが、着実に開発が進んでいるようです。それにしてもなぜ陸軍が開発に絡むのでしょうか、空軍がやる気がないからでは。あるいは陸軍と言うのもフロントなのかもしれませんが。通常弾頭とはいえ、着弾すれば相当の運動エネルギーで目標を破壊するはずです。核の応酬を招かずに相手国の核施設を攻撃するというコンセプトなのでしょうね。

Army Hypersonic Test Vehicle Destroyed Following Failed Launch Test

By: Dave Majumdar
Published: August 25, 2014 5:41 PM
Updated: August 25, 2014 5:44 PM
Artist's concept of a hypersonic vehicle. DARPA Photo
極超音速飛翔体の想像図(2011). DARPA Photo


米陸軍の宇宙ミサイル防衛本部が通常型全世界即時攻撃兵器Conventional Prompt Global Strike (CPGS) のテストを本日実施したが、結果は予定通り運ばず、弾頭は空中爆破された。

国防総省は「陸軍が高性能極超音速兵器体系の試射をアラスカ州コーディアック打ち上げ施設から実施したが、異常事態によりテストは打ち上げ直後に打ち切られた。このことによる人的被害は一切発生していない」と声明文を発表した。


ペンタゴンによれば関係者が原因を調査中である。CPGSは通常兵器により地球上どの地点も一時間以内に攻撃する手段として開発中。

これまでは通常弾頭を搭載した大陸間弾道弾の開発が中心だったが、発射した場合核兵器攻撃と受け止められかねないことからペンタゴンは代替手段を模索していた。

「今回のテストは前回までの分と合わせ極超音速打ち上げ滑空技術のテータを収集し、長距離大気圏内飛行の性能を見極めるのが目的」と国防長官官房の報道官は伝えている。

「テストで得られたデータは国防総省により地上テストに活用され、モデル作成およびシミュレーションで極超音速飛行を実施したうえ、実施可能な通常型全世界即時攻撃兵器のコンセプトに応用する」

当初案ではトライデントII D5潜水艦発射型弾道ミサイルに通常弾頭を装着する予定だった。■



2014年8月25日月曜日

台湾:中国の圧力に直面しつつ模索するその国家戦略





Panel: Taiwan Facing Increasing Chinese Pressure

By: John Grady
Published: August 14, 2014 8:58 AM
Updated: August 14, 2014 8:58 AM
ROC Navy Kang Ding-class (Lafayette-class) frigate with S-70C helicopter. Taiwan Ministry of National Defense Photo
中華民国海軍フリゲート艦康定 Kang Ding級とS-70SヘリコプターTaiwan Ministry of National Defense Photo


1996年の台湾危機で中国は台湾近海にミサイルを発射したが、合衆国が空母打撃群2個を派遣して対応した。その後中国は海軍力を増強し「第一列島線」付近で影響力を増大させてきた。さらに2050年までにマリアナ諸島までを勢力圏に入れるべく原子力潜水艦や空母を建造するだろう。.

  1. 台湾の海上安全保障に関するフォーラムがヘリテージ財団主催で国連の中華人民共和国承認および米国の台湾関係法成立35周年の節目に開催された。

  1. ただし「台湾周辺の作戦には中国は原子力潜水艦は不要だ」というのは国防大学校バーナード・コール Bernard Cole (中国、太平洋地区の専門家)だ。

  1. ヘリテージ財団の主任研究員ディーン・チェン Dean Cheng, senior research fellow at the Heritage Foundation は「台湾への優先順位は中国軍部では高い」と作戦面で表現し、資源を海外に頼る台湾の海上封鎖の効果は高いと見ている。

  1. ただし中国は大型揚陸艦は建造していない(コール)。
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  1. コールによれば中国の金科玉条は「台湾の独立を認めない」ことで、国民党政権を追放した1949年から一貫して台湾に圧力をかけている。台湾は中国の接近拒否領域否定能力の向上に直面している。


  1. RAND研究所の上級政策アナリスト、コーテス・クーパーCortez Cooper によれば台湾は中国対抗策として地域内外交を展開しており、東シナ海平和構築の一環として漁業、領土、資源開発などの分野で緊張緩和をめざすとともに外部からの援助が到着するまでの自国防衛能力を拡充しようとしているという。

  1. 台湾が採択した戦略は「時間稼ぎが目標」であるが、チェンによれば中国は台湾の孤立化を一貫して狙っている。中国は台湾政府と外交関係を樹立する国家を懲罰対象としている。ハワード・マッケオン下院議員(共、カリフォーニア集、下院軍事委員会委員長)の東アジア訪問で、台湾を第一訪問先としたところ中国は急きょ予定されてた会談を一つ除き取り消ししている。

  1. 台湾の直近二政権は「国内問題を重視」する姿勢を示し、次回2016年総裁選挙では台湾独立を公約とする政党もある。台湾にとって頭の痛い安全保障上の問題は全志願兵制への移行、必要な防衛装備の選定、変化する環境の中で防衛指針をどう改変し、米国との共同運用を実現するかだとクーパーは指摘する。台湾は中国問題で「これまでとはちがうアプローチを採用する必要がある」とし、地域内紛争では中国とは「合同戦線」を張らないと域内各国に示すことがその例だという。


  1. クーパーは域内各国に対し中国からこれから台頭する大国は中国であり、米国は信頼に足るパートナーの座をすべりおりるかもしれないとメッセージが出ていると述べた。また米国が台湾、日本、フィリピンと結ぶ同盟関係は「冷戦思考の色彩を強めている」と中国は指摘している。「中国は自信を深めている」(クーパー)

  1. これに対しコールは1949年以来中国は毎回米国の意図を誤解してきたという。

  1. 中国は「マラッカのジレンマ」と呼ぶ事態でまさしく再度同じことを繰り返すかもしれないとコールは言う。マラッカのジレンマとは米国がマラッカ海峡から中国本土へ移動する原油輸送を阻止する能力を指している。現在の巨大タンカーでも同海域の移動は可能な船体サイズとなっているという。

  1. しかしチェンによれば中国も同海域はじめとする衝突点になりうる各地を重視しているという。1999年にベルグラードの中国大使館が爆撃された事件がその例だという。当時米国は爆撃は誤射と弁明しているが、中国はコソヴォでのNATOによる精密攻撃能力を理由に爆撃は故意であったと主張。「中国の視点は我々と異なる」

  1. チェンによれば中国は台湾に関しては米国に対するメッセージは一貫しており、台湾への武器売却の停止、偵察活動の中止、国家防衛権限法による台湾防衛の取り消しを求めている。「中国のたくらみに負けてはいけない」(クーパー)■



アメリカはISISを打破できるか 



ISISの勢力がここ数週間で急増しています。さらに米国を対象としたテロを計画している兆候があり、この数年間で最大の脅威となってきました。また、イラク、シリアという既存の国境区分けを否定していることでISISへの対応も地政学的に構築しなければならないようです。米国ではシリアも含めた現地への対応、しかもエスカレートしそうな規模での攻勢が必要との議論が出てきました。以下AFPが簡潔にまとめています



How can the US defeat IS jihadists?

Aug. 23, 2014 - 01:08PM   |  
By Agence France-Presse   |   Comments

WASHINGTON — バラク・オバマ大統領はイスラム国聖戦派を中東のみならず世界にとって「ガン」だとまで表現しているにもかかわらず、これまでは限定的な航空攻撃にとどまっている。
  1. 合衆国が真剣にイスラム国(IS)を打破するとしたら、外交、軍事でどんな手段が想定されるだろうか。
  2. オバマ大統領はイラク、シリアでの空爆を大幅に拡大し、西側諸国とアラブの同盟国に大義名分を共有させ現地軍の装備を強化して聖戦派に戦わせる必要があると専門家は見ている。
【軍事作戦はこうなる】
  1. イラク、シリア両国内のIS部隊に対し大規模航空攻撃が必要となり、地上戦はバグダッド中央政府、クルド人部隊、スンニ派部隊が展開するのがよいと司令官経験者たちは語る。
  2. ここ数週間で米軍が実施した空爆は数十回程度だが、IS壊滅には米軍の全力を投入する必要がある。おそらく数百機、数百回の空爆を連日実施することになる。
  3. 「空軍力を投入するのであれは集中豪雨のように投入しなければ意味がない、小雨ではだめだ」とデイブ・デプチュラ退役米空軍中将Dave Deptula, a retired US Air Force lieutenant general (アフガニスタンとイラクの航空作戦を統括、現ミッチェル航空宇宙研究所所長)は言う。
  4. 2001年のアフガニスタンで米軍機が空爆で、北部連盟が地上でそれぞれタリバンを追い出したのがこの構想の実際例、とデプチュラは言う。
  5. 航空攻撃を慎重に行うために特殊作戦部隊が必要だと主張するアナリストがいるが、デプチュラはハイテク機は地上部隊の援助無く目標を補足できるので地上部隊投入は不要と見る。
  6. 今回は強硬派でさえ地上部隊の大規模派兵を求めておらず、イラク・シリア両国の現地軍へ装備供与を拡大すべきと主張している。
  7. 安全保障補佐官補のベン・ローズDeputy National Security Advisor Ben Rhodes からは「当該国の住民にISILへ立ち向かわせることが長期戦略」との発言が出ており、イラク、クルド、スンニの各派の戦闘要員の活用を想定している。
【シリアでの軍事作戦なしでISを打倒できるか】
  1. その答えはノーだとマーティン・デンプシー統合参謀本部議長はじめ専門家、アナリストが言っている。
  2. シリアをISが聖域にするのは看過できないとデンプシー大将は言う。
  3. 米国が「正当防衛」の権利を行使しシリア国内のIS勢力を攻撃可能と主張する向きもある。根拠はシリア政府が国内数カ所で実効支配をすでに失っているためだ。
  4. ただし、その場合はシリア内戦に慎重な姿勢だった米政策を変更し、大量の武器をスンニ派(アサド政権とISに共に反抗中)に引き渡すことになる。
  5. この方向転換で米政府がシリアと和解に向かう可能性を見る向きがあるが、政府関係者はその選択肢はないと言っている。
【外交戦略で必要となるのは】
  1. 合衆国は今まで想定外と思われた同盟関係をヨーロッパ各国、サウジアラビア、イランと結ぶと見るアナリストは多い。イランにとってもIS聖戦派の打倒は目的になっている。
  2. 米国の決意の程を示すべく、オバマ大統領はIS打倒が目標だと公言する必要が出るだろう、というのはザルメイ・カリザッドZalmay Khalilzad 元在アフガニスタン、イラク大使である。
  3. 戦争にあきあきしているアメリカ国民に対しても今後の作戦の方向性とともになぜISが合衆国への直接の危険となるのかをオバマ大統領は示す必要がある。
  4. トルコに対してはシリア国境閉鎖によりIS部隊志願者の移動を阻止させ、また難民を抱えるヨルダンなど各国向け援助を増やす必要があるとアナリストは見る。
  5. 【スンニ派の役割】
  6. イラク国内のスンニ派は.シーア派優勢の中央政府から冷遇が8年間にわたっており、これがISを増長させた原因になっている。
  7. 米政府としてはハイダ・アル・アバディHaidar al-Abadiによる新政権がスンニ派も巻き込む挙国一致体制を期待しつつ国軍の改革も求めている。軍が実質上宗派構成になっているからだ。
  8. ただしイラク政府と西側がスンニ派各部族に対しIS過激派への戦闘に加わるよう説得できるかは不明だ。■