2015年3月24日火曜日

米空軍次期練習機T-Xの要求内容 久々の大型案件に各社しのぎをけずる


予算環境がきびしいので練習機として一定の数(350機)を調達しながら、拡張性もあらかじめ確保して練習機以外の用途も想定(仮想敵国部隊用機材とか軽攻撃任務?)したいのが米空軍の虫の良い考え方ですが、はたして都合の良い機材が選定できるのか。また採用後に大幅にコストが上がる要因がそもそも包含されていないのかとても心配です。裏には予算強制削減の影響で単一任務しかこなせない機材は非効率という強迫観念があるのではないかと思われます。なお、スコーピオンが採用になる可能性は低いですが、注目されてしかるべきだと思います

USAF Issues T-X Requirements

By Aaron Mehta12:09 p.m. EDT March 20, 2015

t-38(Photo: Tech. Sgt. Matthew Hannen/US Air Force)
WASHINGTON — 米空軍が次世代練習機T-Xの要求性能を公表した。
  1. 連邦政府ウェブサイトに3月18日掲載された内容から参入を計画中の5社は現行のT-38の後継機種となる高等練習機350機及び関連システムの採用を目指してしのぎをけずることになる。空軍への締め切りは5月10日。
  2. 本事業は「コスト曲線を曲げる」"Bending the Cost Curve" 構想をはじめて現実に移す第一弾となる。これは空軍長官デボラ・リー・ジェイムズDeborah Lee Jamesが進める調達改革の一環で大きな一歩となる。
  3. 文書には要求項目が100点以上あるが、空軍報道内容では重点は3つに絞られる。高G状態の保持、シミュレータ視覚効果の正確度・精度、機体の長期間稼働だ。
  4. その他として空中給油、T-38比較で10%の燃料消費率削減、最小離陸距離として8千フィート、高高度基地からの離陸の場合は追い風10ノットで7,400フィートとされる。
  5. 注目すべきはアグレッサー部隊用の「赤軍」要求はないことだ。空軍関係者は今後の検討課題だという。
  6. とは言え空軍がT-Xの性能拡張を想定していないわけではない。中でも「現設計でどこまで将来の性能改修に対応できるか」等の設問項目が関心を呼んでおり、主翼パイロン、レーダー、データリンク、機体防御で「現設計案で将来のシステム改修の妨げになるものがないか」との質問も関心を集めている。
  7. さる2月には空軍教育訓練軍団司令官のロビン・ランド大将Gen. Robin Randが次期練習機に性能拡張の余地があるかに関心ありと発言していた。「後悔するような買い物は避けたい。要求性能どおりなら新型機はあれこれ他の仕事もこなせるはず。将来の性能拡大の余地も残し、安価に実施すべきだ」
  8. 現行のT-38に代わる新型機をめぐり5社が競争する構図だが、うち2社は完全新型機でボーイング・「Saabチームおよびノースロップ・グラマン主導でBAEシステムズとL-3が参加する。
  9. これに対抗するのが既存機種をベースにした陣営で、ロッキード・マーティンは韓国航空宇宙工業のT-50を、ジェネラル・ダイナミクスとアレニア・アエルマッキはM-346を原型にした案で参画する。
  10. 読めないのがテキストロン・エアランドのスコーピオンだ。ISRと軽攻撃ミッション用の新型機の同機から、練習機型を派生型として作成するという。
  11. 空軍は研究開発費用として2016年度に11.4百万ドルを準備しているが、これは17年度は12.2百万ドル、さらに18年度には107.2百万ドルに跳ね上がり、19年度は262.8百万ドル、20年度は275.9百万ドルになる。
  12. 正式な契約交付は2017年秋の予定。■

2015年3月23日月曜日

★オスプレイ追加調達を日本に期待するベル



なるほど,MV-22だと一機で20名の移動が可能なので、現在は20名x17機=350名程度の輸送規模(最大です)を想定しているわけですね。オスプレイ部隊の輸送能力はコマンド部隊の侵入用途と考えればそんなに不足しているとは思えませんが。もっとも作戦に投入できる機材が全体の3分の一と一気に120名程度に落ちますので、確かに不足といえば不足ですが、きびしい財政状況の中で査定はどうなりますかね。また自衛隊に運用コンセプトから配備機材数を増やす要求を堂々とできるか今後が注目です。


Japan, Australia Could Add To Osprey Order Book

Mar 17, 2015Bradley Perrett Aerospace Daily & Defense Report

V-22: Rupa Haria
ベル・ヘリコプターは日本がMV-22オスプレイを追加調達すると期待している。日本は先行して17機の調達予算を計上している。
  1. オーストラリアも有望と同社は見ている。これはベル副社長(海外軍事営業担当)のリチャード・ハリスの発言。
  2. 日本が同機に期待するのは島嶼部分への兵員物資輸送の高速化だが、領土へ侵攻があった際の対応策という想定なので、17機では不足するはずと同社は見る。
  3. 日本には次期多用途ヘリ調達のUH-X事業があり、双発ヘリコプター150機を整備して島嶼部への輸送を強化するねらいがある。ただし想定する機体は総重量が5ないし6トンでオスプレイに比べるとペイロード、航続距離、飛行速度いずれも見劣りがする。
  4. 日本が想定する島嶼部分を公式に一度も明らかにしていないが、尖閣諸島であるのは明らかだ。
  5. オーストラリアには同種のミッションの想定はないが、業界筋によればMV-22なら同国の特殊部隊の効力を引き上げることが可能という。オーストラリア特殊部隊は同盟国との関係で同国が提供できる貢献の中核部分となる。ベルはオーストラリアの調達機数を10機と想定している。
  6. ただしオーストラリアのシンクタンク、オーストラリア戦略政策研究所は同国がすでにボーイングCH-47チヌークを供用中でアレニア・エアrマッキC-27スパータン軽輸送機を発注中のためオスプレイ導入の理由は薄弱と指摘している。■


2015年3月20日金曜日

★KC-46A 日本も導入か 



これまでKC-46Aの開発難航は対岸の火事だったのですが、本当に日本も同機を調達(KC-767の補完?)する予定になっていれば無関心ではいられなくなりますね。これまでは機内配線が仕様どおりでなかったとのことでしたが別の問題があるのかもしれません。

KC-46A First Flight Facing Delay

By Aaron Mehta5:31 p.m. EDT March 17, 2015
635622068257283888-k-122314-04-highres-2
(Photo: Paul Gordon/Boeing)
WASHINGTON — 開発中のKC-46Aペガサス空中給油機は初飛行予定が4月になっているが、開発責任者は「安心できない」と胸中を語っている。
  1. 同機開発を主管するデューク・リチャードソン准将Brig. Gen. Duke Richardsonは予定を第二四半期中のいつかと6月末までに変更したい意向だ。
  2. 「日程確定を避けています」と准将はクレディスイス・マッカリーズ共催の会合で発言した。「第二四半期中と言っておくのが安全でしょうね」
  3. KC-46Aは179機調達する予定だが、先行18機を2017年までに稼働させる調達契約では大幅な費用超過が発生しても空軍には追加負担が生じない。
  4. エンジニアリング、製造、開発チェック用(EMD)の機材は昨年12月に初飛行している。完全仕様のKC-46Aは4月に初飛行の予定だが遅れる公算が大となってきた。
  5. リチャードソンは日程が各種テストの実施でプレッシャーになっていると認め、EMD機材で確保していた6ヶ月の余裕期間はすでに消費ずみだという。
  6. 「非常に深刻に受け止めています。なんとか日程に余裕が生まれるようにがんばっているのですが」 工程表がきついため、本来なら初飛行も一日も早く実施したいのだが、その場合は給油機としての完成度を無視することになるか、その時点で要求通りの機体になっているかのいずれかだ。
  7. 「一刻も早く飛行させたい。飛行は安全に実施できると思うが、その時点で完全な機体になっていなくてもよい。安全に飛行できる機体であればまず飛ばせて、飛行性能のデータをそれから集めればよい」
  8. これに対して主契約社ボーイングの広報は同社が初飛行実施に向けて毎日努力しているとし、優秀なチームが奮闘している。準備出来しだい初飛行できる、と発言。
  9. ただしリチャードソンは明るい話題にも触れている。事業全体としては「非常に健全」で要求性能水準が変動していないことのメリットが生まれているという。
  10. また海外向け販売の可能性が二国にあると紹介。ひとつは韓国向けの直接販売で日本は有償軍事援助による導入を検討しているという。このうち韓国は5月にも選定に入ると見られ、日本のRFPが4月に出てるとリチャードソンは言う。■


2015年3月19日木曜日

★F/A-18E/F海外受注に最後の望みをかけるボーイングは 米国防航空産業基盤の弱体化の例なのか



かつて日本の産業政策は米国からさんざん攻撃されていましたが、今や国防関連航空産業の基盤を国防総省自らが保護する必要が有るのが現状というのはなんという皮肉でしょうか。スーパーホーネットは米海軍も希望しないのであれば、海外でそのまま販売できるとは思えないのですが。泣いても笑ってもあと数ヶ月で命運が決まるのでしょうね。

USN Hornet Push Reshapes Cost, Export Picture

By Christopher P. Cavas2:24 p.m. EDT March 15, 2015
Super Hornets(Photo: US Navy)
米海軍の需要と無関係に、ボーイングがスーパーホーネット生産を継続するとコスト問題が発生しても海外販売の可能性自体はあるとみられる。
  1. 米海軍関係者はF/A-18を二三十機追加する追加予算要求する想定を先週提示した。
  2. ただし「どこからその予算を確保するのか」と疑問を提示したのはキャピタルアルファパートナーズのバイロン・キャランで、強制削減関連の支出制限が蔓延する中でワシントンには同じ疑問を投げる向きが多い。
  3. 「これはボーイングの生産ラインを維持して共用打撃戦闘機が打ち切りになっても何か残るようにするにはどうしたらいいのか、という疑問への回答だ」と語るのは戦略予算評価センターの国防アナリスト、ジェリー・ヘンドリックスだ。言及しているのは海軍がF-35の680機調達を減らす決定をする可能性のことだが、海軍は激しくこれを否定している。
  4. 海外での戦闘機調達事業にスーパーホーネットが参入する可能性がある。デンマークは今夏にもF-16後継機を決定し、クウェートは数ヶ月以内に戦闘機選定案を公表する見込み。両国ともに調達規模は24機ないし36機程度と見られる。
  5. ベルギーやアラブ首長国連邦も戦闘機選定の初期段階にあり、カナダは現在もF/A-18を供用中だがF-35事業への参画をめぐり議論中だ。
  6. 産業面で見れば、ボーイングのセントルイス事業所で従業員1,200名がジェット戦闘機生産に関係している。またほぼ同数の社員が各地でその他支援業務に従事しているという。これが全国規模になると6万人規模、800社、全米44州に分布するという。
  7. 米海軍はボーイングの視点ではなくあくまでも海軍のニーズで決めるだろうが、ボーイングはあと一二年でもラインを維持したい。そのためボーイングはなんとしても海外案件の受注がほしいところだ。
  8. 米海軍発注の最後のF/A18-E/Fのひきわたしは2016年末以降だが、議会がEA-18G追加発注を認めれば2017年まで生産ラインは維持できる。オーストラリア向けグラウラー12機の生産もあるが、ボーイングは2016年から納入ペースを月3機から2機に落とす。
  9. ライン維持には月産2機がぎりぎりだという。むしろ生産数が上下することを避けたい、というのがボーイングの本音だ。
  10. 今夏中に新規受注機材用のサプライチェーンの取り扱い方針をボーイングは決めねばならない。発注は数ヶ月先行する必要があり、場合によっては一年前に発注する場合もある。
  11. その内で一番リードタイムが長いのがチタン製構造部材で、APG-79AESAレーダー(レイセオン製)も同様だという。
  12. 正式な受注前の機材部品はボーイングが全額費用負担する。グラウラーの場合はノースロップ・グラマン他電子部品メーカーに15機分発注済みだが、米海軍との正式契約は未締結のままだ。
  13. 航空産業の基盤を維持する問題もある。盛況時が過ぎて、メーカーの廃業、統廃合が進んでいる。大手はロッキード・マーティン、ボーイング、ノースロップ・グラマンのみというのが現状だ。
  14. そこで米空軍の長距離戦略爆撃機案件に大きな関心が寄せられているのが現状とヘンドリックスは指摘する。「今後、給油機、爆撃機、戦闘機の受注企業が決まり業界を撤退する企業が出るでしょう。そうなるとペンタゴンが介入して産業基盤保護に出るかもしれません」
  15. 「生き残れない企業が出ると考えると不安に駆られます。航空産業の基盤は海軍向け産業基盤よりも薄くなっています」
  16. ただこの問題に長い時間を掛ける余裕はない。タイミングが問題で、一度閉鎖したら元には戻せない。■


2015年3月18日水曜日

★ステルスの有効性はどこまで減じているのか 新型レーダー、赤外線探知装置の進歩に注意



ステルスの神話が急速に凋落してきた、との報告がこれまでもありましたが今回の記事はなんといっても技術的にその理由を説明しているのがすごいところです。(電子技術に詳しい方の精査をお願いしたいところです。)まさしく矛と盾の関係でしょうか。

New Radars, IRST Strengthen Stealth-Detection Claims

Counterstealth technologies near service worldwide

Mar 16, 2015 Bill Sweetman Aviation Week & Space Technology

ステルスが頼りにする低レーダー断面積(RCS)を中心のステルスへの対抗技術が世界で普及の様相を示してきた。複数の新技術が開発中であり、レーダー装置、赤外線探知追跡装置(IRST)のメーカー各社はステルス対抗技術が実用化の域に達したとし、米海軍はステルス技術そのものが挑戦を受けていることと公言している。
  1. こういった新装備は各種センサーを統合して目標の探知、追尾、識別のデータを自動的に融合し、ステルス機への交戦を実現するのが特徴だ。
NNRTの55Zh6M は複数レーダーを組み合わせ車両で移動が可能。単一ユニットとしての55Zh6UMEにはVHFおよびUHFアンテナを備え、配備される。 

.
  1. ステルスが部分的に超短波(VHF)レーダーで効果を失うのは電子物理の観点で説明できる。機密解除となった1985年のCIA報告書はソ連がステルス対抗技術の第一陣として新型VHFレーダーを開発し長波長の不利を補うと正しく予測していた。波長が長いと、機動性が失われ、解像度も低くなり、クラッター現象が生じやすくなる。ソ連は崩壊したが、ニツニー・ノヴォドロド無線技術研究所Nizhny-Novgorod Research Institute of Radio Engineering (NNIIRT)が開発した55Zh6UE Nebo-Uは1990年代に実戦化されており、ロシア初の三次元VHFレーダーになった。NNIIRTはその後、VHF方式のアクティブ電子スキャンアレイ(AESA)装置を試作している。
  2. VHF方式のAESAは55Zh6M Nebo-Mマルチバンドレーダーとして生産に入り、ロシア空軍向けに100セット以上が調達される。このNebo-M はトラック搭載レーダー3基(すべてAESA)、VHF方式RLM-M、Lバンド(UHF)方式のRLM-D、S(X)バンドのRLM-Sで構成。ロシア文献ではそれぞれ、メートル、デシメートル、センチメートル単位の周波数としている。各レーダーにOrientir 位置割り出し装置がつき、それぞれにGlonass衛星航法受信機を備え、無線あるいは優先で地上制御車両と連結する。
  3. VHFでは走査速度が遅くなる欠点がつきものだったが、RLM-Mは電子走査を機械式走査に重ねるてこれを解決。走査範囲は120度で連続追跡が可能。この範囲だと走査は事実上即座に可能で放射エネルギーを目標上に照射し続けることができる。VHFの利点を保ちながら、中国のDF-15短距離弾道ミサイルのRCSだとXバンドで0.002 m2、VHFだと0.6 m2 になるとNNIRTは説明。
  4. Nebo-Mではレーダー3つのデータを融合して確実に標的を撃破する。初期探知のVHFがUHFレーダーにキューを出すと、つぎにXバンドのRLM-Sにキューが出る。Onetirにより正確なアジマスデータが生まれ三種類の信号をひとつにした標的の姿が浮かび出てくる。
  5. もっと高周波のデータはVHFより正確度が高くなるので標的に集中させれば探知成功の可能性が高くなり、追尾でも同じだ。「停止凝視」モードでアンテナ回転を止め、レーダーを電子的に90度視野で走査させると標的に照射するエネルギー量は連続回転時の4倍になり、有効射程も4割増える。
  6. Saabの新型ジラフGiraffe 4A/8A SバンドレーダーはAESA技術や高性能処理機能で高バンドでも小型標的への対応が可能となった。モジュラー構成によりAESAの利点を最大限に活用し、信号・雑音の区別を可能とする。そのねらいはいかに「純粋度」を高めるか、つまり照射エネルギーを目標周波数に集中させることで極めて小さなドップラー変化でもとらえて移動中の標的を探知することにある。
  7. 処理技術の新動向には「多重仮説」追尾 “multiple hypothesis” trackingがあり、反響が弱くても繰り返し解析して追尾を認識するのか移動パターンから無視するかを峻別することができる。中国もロシアと同様の方法を模索しており、昨年の珠海航空ショーでその一端が明らかになった。大型VHF方式AESA装備JY-27A Skywatch-Vが出展され、ロシアのRLM-Mとほぼ同等とわかった。メーカーは中国電子科技集団公司 China Electronics Technology Corp. (CTEC)。またショーではこれと別のUHF方式AESAが二型式とSバンド方式パッシブ電子スキャンアレイレーダーYLC-2Vも展示されていた。

  1. 出展で中国がアクティブ、パッシブ両面で探知装備の整備を図っていることが判明した。またYLC-20の名称の広範囲指向性ワイドバンドパッシブ受信システムの存在が明らかになった。これはCETC製DWL-002と併用するものと思われる。DWL-002はパッシブ方式コーヒレントロケーション(PCL)方式の三セットをあわせたもので、チェコのERA製 Veraと類似している。これは信号入力の処理で時間差を利用して標的を追尾するものだ。またJY-50「パッシブ・レーダー」の図も展示されていたが、これはVHF帯を利用する。
  2. これまでのPCLは標的の出すアクティブ放射の利用が前提だった。だがPCLを他のパッシブ受信機にアクティブレーダーと組み合わせて接続すると防衛側はバイスタティックあるいはマルチスタティックでの探知が可能となり、低RCSのステルス技術の有効性を減らすことができる。RCS削減技術は通常レーダー(モノスタティック)を想定している。極度の後退角のついた前縁でレーダー信号を偏向させてもマルチスタティックレーダーなら探知可能なスパイクが発生する。
  3. 旧式かつ小型VHFレーダーに改良を加える供給元が少なくとも5社ある。チェコ共和国のレティア Retia 、ハンガリーのアルゼナル Arzenal 、ウクライナのアエロテクニカ Aerotechnicaおよびベラルーシとロシアの数社だ。中国海軍は最新式防空駆逐艦のタイプ52C旅洋II型、52D旅洋III型にVHFレーダーを搭載している。さらに新型のVHFレーダーが今後出現する055型駆逐艦に搭載されない保証はない。
  4. ステルス機が低周波レーダーやその他探知装備で危険にさらされていることは2013年以降、米軍高官なら認識している。米海軍作戦部長ジョナサン・グリナート大将は公の場でステルス機がA2D2に対応できるか疑わしいと発言しており、2014年1月には新しいアメリカの安全保障を考えるセンターが出した報告書で「最近の分析の一つでは低RCS機の探知技術で革命的な進展がある反面、ステルス性能で呼応した向上がない」と指摘していた。
  5. ボーイングはEA-18GグラウラーはVHF帯の妨害ができると宣伝しており、現行のALQ-99低バンドジャミングポッドを指している。さらに次世代ジャマーでは第二次性能向上が予定されている。ただしこの契約交付は2017年の予定で、初期作戦能力獲得は2024年になる。
  6. これと別の脅威は長波長の水平線超えOTHレーダーでオーストラリアが運用中のジンダレーOTHレーダーネットワーク(JORN)が典型例だ。ロシアにはレゾナンスRezonans-NEがあり、中国もOTHを運用中だ。ここでもデータ処理が精度と感度を上げる鍵となる。JORNではフェイズ5で処理能力を向上させようとしている。
  7. OTHの長波長レーダーはもともとステルスに強い。極端に長い波長は標的の物理的サイズに近くなる。通常のレーダー断面積削減技術はこのため無効となる。ジンダレーの設計者はB-2の探知も可能だと1980年代末の時点で公言しており、米空軍はこれを真剣に受け止めた。ただし当時の空軍はOTHの解像度がとても低いため迎撃の段取りは取れないと反論していた。ただし今日では低解像度もネットワーク化レーダー群の活用で緩和され、OTH-Bは高解像度センサー類にキューを出せるようになった。
  8. 米空軍はIRSTを活用しようとしている。先行する米海軍ではスーパーホーネットの中央燃料タンクに搭載するIRSTの初期定率生産が2月に承認された。韓国向けF-15KやシンガポールのF-15SGでも同様の装備が付いている。80年代のF-14D向けに開発されたIRSTが起源のこのサブシステムだ。.
  9. ペンタゴンの作戦テスト技術部門長は海軍装備の追尾性能に批判的だが、空軍もその性能にを素直に認めており、これまでIRSTを無視してきたことと対照的だ。空軍はF-16アグレッサー部隊にIRSTポッドを搭載し運用経験を有する。海軍が調達する第一期分IRSTはわずか60セットでその後改良型を10セット導入する。
  10. 西側でIRSTで知見を豊富に有するのはSelex-ES社でタイフーンのパイレートIRSTの契約企業である。またスカイワード-Gをグリペンに供給している。同社は低RCS標的の探知、追尾にIRSTで成功したと発表している。これは亜音速飛行中に機体表皮の摩擦とエンジンの熱放射や排気噴煙から成功したとする。グリナート提督はこの点を強調した発言を2月にワシントンでしており、「空中を高速度で移動する何かがあれば、大気の分子を乱し、排熱するはずで....探知可能なはずだ」と述べた。
  11. 探知技術が向上したからといってステルスの有効性が即座になくなるわけではない、というのが業界、政府関係者の多数意見だが、それでも将来のステルス技術要素の議論の根底にこの問題が影を落としている。米海軍の艦載無人偵察攻撃機構想ではステルス性をどこまで求めるのかで議論が続いているが、中心はA2ADの進展だ。長い間にわたり一般のみならず専門家にも見られるてきた各種低技術のどれを選択してもステルス性能で大きな差は生じないとの誤解がこれで終止符を打つことになる。■


2015年3月17日火曜日

米海軍の新戦略の概要が明らかになりました


現CNOグリナート提督の置き土産になりそうな海軍新戦略の概要が明らかになりました。全体としては攻撃力を重視する方向のようで、誠に健全な方向に思えます。


Winning The War Of Electrons: Inside The New Maritime Strategy

By SYDNEY J. FREEDBERG JR.on March 13, 2015 at 2:51 PM
WASHINGTON:.米海軍、海兵隊、沿岸警備隊が共同発表した新海洋戦略で強調しているのは危険度がましつつある世界で電子戦に勝利をおさめることの必要性だ。
  1. 「今回発表の文書では攻撃的な論調がめだち、米国の権益がからむ場所へのアクセスを確保する必要を強調している」と海兵隊総司令官ジョセフ・ダンフォード大将Gen. Joseph Dunford,が戦略国際問題研究所Center for Strategic and International Studiesで講演した。ただし対戦相手は従来を上回る高度装備を有しているはずで、これまで米軍が優位性を確保できていたサイバー空間や電子電磁の世界での優位性確保で真剣にならざるを得ない。
  2. 戦略案の表題は「21世紀のシーパワー確立のための協調的戦略」 “A Cooperative Strategy for 21st Century Seapower” と無難なものになっているが、明らかな違いが組み込まれている。2007年版と比較してみると、前回は脅威となりうる国名を明記していなかったが、今回は中国、ロシア、北朝鮮、イランを名指ししている。また伝統的な海軍の基本政策から脱却し、従来の艦隊任務(抑止、制海、兵力投射、海上保安)に加え、5番めの「全方位アクセス」 “all-domain access” を加えているのが特徴だ。
  3. 冷戦終結後の米軍各部隊は世界のあらゆる場所に移動することを当たり前にしてきた。だが潜在敵国のロシアや中国のみならずテロリスト集団さえも高度技術を入手しており、これが安全理に実施できなくなった。「接近阻止領域拒否(A2/AD)」への対抗手段の議論が続く中、新戦略構想ではこの課題を核抑止力とほぼ同等の重要問題に位置づけている。
  4. 「兵力投射が抑止のためにも必要だが、進出したい場所に移動ができなくなっている。洋上、水中、宇宙空間に加えサイバー含むすべての空間で効果をあげにくくなっている」と海軍作戦部長ジョナサン・グリナート大将も同じ講演で持論を述べている。「アクセスが確保できないと任務実施は不可能だ」
  5. 全方位アクセスを5番目の中核的ミッションに追加することは単なる言葉上のあやではない。「中核的任務はなにか」とウィリアム・マキキン少将Rear Adm. William McQuilkin が戦略案紹介の記者会見で発言している。「人員確保、訓練、装備の3つは法律の上でも軍の基本機能と定義付けられている」 全方位アクセスをここに加えることは「従来からの中核的機能と同等に扱うことになる」と少将は言う。
  6. ただしグリナート大将は2017年度予算案提出時点で現職にはとどまれず、今年末で作戦部長(CNO)の任期が切れ本人は退役するはずだ。だが、戦略案はグリナートが3年の任期中一貫して求めてきた構想、特に電子サイバー戦の拡充を形にして残すものだ。
  7. 「今回の戦略案でグリナート提督がCNOとして求めてきた方向性が制度化される。そこに新戦略の意義がある」と解説するのはブライアン・クラーク(退役海軍士官でグリナートの補佐を努め、戦略案作成に関与)だ。グリナートは「電子戦をその他従来の海軍作戦と同じ位置づけに引き上げようと骨を折った。統合EMスペクトラム作戦構想 Joint Concept for EM Spectrum Operations (JCEMSO)として国防総省の研究がはじまったことで機運が高まっており、EWやC4ISRも予算減少の中で重要性を高めている。だがなんといってもCNO本人がその先導役だ」
  8. 「この文書は本人の功績として記憶されるだろう」とランディ・フォーブス下院議員Rep. Randy Forbes(下院軍事委員会シーパワー小委員会委員長)も見る。「本人は主張だけにとどまらず、これから必要な兵装の検討に身を入れてきた。その一つが電子戦分野だ」
  9. 高性能装備を有する敵の打破が中心になれば、戦略案は高性能装備の整備に走ることになる。フォーブス議員は記者に戦略案では空母から運用するUCLASS無人機には戦闘能力が必要と語った。単なる偵察機にはさせないという。予算強制削減をめぐり、「歳入委員会がこの戦略案をこの週末に読み終えるとは思えない」というものの「この文書で関係者はなぜ今までの方向性を変える必要があるのか理解するはず」という。
  10. ただしクラークは議会への影響度に懐疑的だ。「この戦略案では高度装備中心を強調し、ロシア、中国と地政学的争いに勝てると主張しているが、地政学的傾向と構想上の必要点、装備能力が組み合わさっていない。これでは決定権を持つ人達にはどれを優先順位で高くしたらいいのか見えてこない。議会関係者は全体像を理解されていないままだ。『中国あるいはロシアがXをするから、当方にはYあるいはZの能力が必要だ』と説明しないと議会も優先順位がつけにくい」と解説する。
  11. 新戦略中の重要事項のでも最大のものは全方位アクセスの確保で海、空、宇宙、サイバー空間、電子電磁空間のすべてで行動の自由を確保する新構想だ。クラークによれば全方位アクセスこそ中核的任務の中心に位置すべき存在だという。
  12. 「海軍がいおうとしているのはアクセスこそ海軍機能の中心だということだ」
  13. 「海軍の戦略方針も大きく変化する」とクラークは続ける。「アクセス確保はこれまでも海軍の役割だったが、ここまで明確にまとめた例はない」 さらにソ連崩壊後はアクセスはわざわざ戦わなくても確保できると考えられてきた。しかし、今や「新戦略案で再びアクセス確保が中心に返り咲いた」という。
  14. 全方位アクセスの本質は何なのか。公文書の常として戦略案の記述は課題の列挙に終わっている。「全方位アクセスの実現には非常に多くの要素がからみあっているようだ」とクラークも認める。ただし各要素をつなぐのは電子だ。
  15. 戦略案では全方位アクセスを5つの観点で包括しており、すべてでサイバーあるいは電子戦が関係している。
Battlespace awareness 戦闘空間認識には「常時監視偵察」が物理的な空間だけでなくサイバー空間や電磁スペクトルでも必要だ。
Assured command and control 指揮命令機能の確保には米軍通信ネットワークが安全かつ高い信頼性で機能することが必要で敵の妨害やハッキングに対抗する必要がある。ダンフォード大将は海軍・海兵隊の使っている通信ネットワークでは分散作戦 dispersed operations の統合調整に適していないため新たな整備が必要と発言している。
Cyberspace operations サイバー空間内の作戦には攻撃、防衛両面の対処を含む。
Electromagnetic Maneuver Warfare 電子電磁操作戦とは海軍の新しいコンセプトで友軍の発信を隠し、敵を欺瞞あるいは妨害することだ。
Integrated fires 統合火器運用では高価だが在庫が限定されるミサイルを発射する代わりにジャミング、ハッキング、レーザー発射やレイルガンの使用で対応する
  1. 新兵器や新戦術の説明はあえて省かれているが、「今回の戦略案には非公開の付属文書が2ないし3つあり、世界的規模での作戦対応方針を述べている」とグリナートが発言している。非公表の戦略案について講演の席上で記者が質問してみたところ、グリナートは「まだコンセプト段階だが、これまでエアシーバトル構想で展開してきた内容を引き継いでいる」と答えてくれた。
  2. エアシーバトルが物議を呼んだのはハイテク、高密度長距離戦を空軍と海軍が高度な防衛体制を持つ敵国対象に実施する内容だったからだ。その後、海兵隊と陸軍も加わり、コンセプト名称はグローバルコモンズへのアクセス、作戦展開構想Joint Concept for Access and Maneuver in the Global Commonsと変更されている。ただし、その中心的問題提起は米軍に空、海、サイバー空間のいずれでも米国に挑戦できる能力を有する敵と戦うというもので、今回の新戦略でもこれを重視している。■

2015年3月3日火曜日

★ペンタゴンの電子戦構想で重要なグラウラー、しかしその生産ラインの維持は微妙



電子戦を実施するためのまともな機材がEA-18Gしかないというのが深刻な米軍の事情です。といっても他国でもこれだけの規模の電子戦機材をそろえたところはないので、まだましなのかもしれませんが。

Pentagon Launches Electronic Warfare Study: Growler Line At Stake

By SYDNEY J. FREEDBERG JR.on February 27, 2015 at 3:41 PM

EA-18G Growler EA-18G グラウラー
CAPITOL HILL: ペンタゴンは広範な電子戦の検討を開始し、EA-18GグラウラーとF-35各型を比較検討する。
  1. 「国防総省内で電子攻撃手段の全般に渡る検討を開始し、わが軍の作戦で必要な電磁戦環境を見極める」とジョナサン・グリーナート海軍大将が下院歳出委員会国防省委員会で発言した。
  2. 研究では個別の兵器システムの枠を超えてアメリカの電磁スペクトラム全体で統制能力を検分する。このスペクトラムにネットワーク、センサー、精密兵器すべてが依存している。
  3. グリナート大将は国防総省全体で見解を聞きたい、という。空軍には少数ながら高性能のEC-130Hコンパスコール機材があるが、多数は退役予定。陸軍、海兵隊には短距離戦術ジャマー装備があり、道路わきの爆弾装置を使えなくできる。だが防空体制の整った環境で生存できる機材を有するのは海軍だけだ。
  4. 2015年度予算要求で海軍はEA-18Gグラウラー追加18機発注を入れたが、議会は15機に査定した。2016年度予算案ではグラウラーは一機も要求していない。そうなると同機を製造するボーイングと議会としては海軍に追加発注の意図があるのか知りたいところだ。質問をグリナート大将と海軍長官レイ・メイバスにはぐらかされた報道陣も同様だろう。
  5. F-35共用打撃戦闘機の調達数を減らしF-18調達を増やすのかとの質問に対しグリナートは2020年代に「JSFとスーパーホーネットが何機必要になるのか査定中だ」と答えている。「この話題は長官とはまだ検討していない」と就任したばかりのアシュトン・カーター国防長官を指して発言したが、今年は調達なしとの記事が多く出ている。
  6. ではボーイングにグラウラー/ホーネットは不要と伝えるつもりなのか、と記者は直接尋ねて見た。「伝えることはしない、まずボスと話す」とグリナートは海軍長官の方を向いた。
Sydney J. Freedberg Jr. photo ジョナサン・グリナート大将とレイ・メイバス海軍長官
  1. メイバス長官は「F-18生産ラインはグラウラー15機が15年度予算で認められていおり2017年までは稼働する。ボーイングとは円滑な生産実施を検討している」と現有F-18の事後改修を追加発注する想定で、「海外採用があればラインは維持可能」と発言。
  2. だがスーパーホーネットの海外営業は精細を欠く。「かれこれ20年で採用はオーストラリア一カ国だけ」と指摘するのはリチャード・アボウラフィア Richard Aboulafia(Teal Group航空産業アナリスト)だ。(旧型F-18AからD型までを保有する国はあるが、これら各型の生産は終了している) 「理由の一つが機体価格」とアボウラフィアは指摘する。「F-15の水準に近づいているが性能ではF-15が航続距離、ペイロード、戦闘効率で優れている」 ボーイングは両機を生産するが「F-15導入に誘導するほうが容易」だとする。韓国、シンガポール、サウジアラビアを想定している。「F-35も圧力になっている。ユーロファイターもあり、ラファールもある」.
  3. 現在の米国発注分が2017年に終了したらボーイングの生産ラインはどうなるのか。「一年半以内になんらかの手を打たないと間に合わないだろう」とアボウラフィアは指摘。2017年に近づくと生産ライン維持がもっと高価になる。というのは部品サプライヤーにはすでに事業精算に動く向きがあるためだ。「今年後半なら楽だろうが、来年初めになれば負担増になり、2016年なら万事休すだね」.
  4. 海軍がF-18/EA-18ラインを確保すべく追加発注すれば国際競争で日程はさらにきつくなる。議会が海軍の希望を無視して追加発注を認める可能性もある。だが予算が厳しい中で可能性は少ない。
  5. 「自国で不要になった装備の海外販売は大変だ」と自らの経験を語るのはローレン・トンプソンLoren Thompson(国防産業アナリスト、コンサルタント)だ。さらに「予算制限がついたままで、もっと予算を投入するからスーパーホーネットを追加発注しろというのは他の装備を犠牲にするということになる」
  6. これまで識者はスーパーホーネット・グラウラーをF-35と比較してきた。三軍の中で海軍はJSF導入に一番消極的だが、ステルス性能の有効性が長期的にどうなるのか見極められないとし、グリナートはF-35の性能にはステルス以外もあると忍耐強く指摘している。
  7. 「ステルスだけでなく他にも重要な機能があります」とグリナートは小委員会で発言。「飛行距離が長く、空母運用でコレまでよりほぼ2倍になり、搭載する兵装は多くなり、探知用レーダーは空対空戦で威力を発揮し、他機・他艦とネットワーク形成も可能ですし、ジャミング以外に情報探知能力が向上しており情報提供できます。相当の進歩です」との発言はF-35を犠牲にしてスーパーホーネット、グラウラーの追加発注をしようという人物のものとは思えないほどだ。
  8. もし議会、海外顧客、F-35削減のいずれでもF-18生産ラインを維持できないとすると、今回の電子戦検討が重要になってくる。
  9. 研究は電子戦全般を対象した広範囲なものだが曖昧さなままだ。記者はペンタゴンにもっと詳細を教えてくれと求めているが、アボウラフィアに言わせれば研究はつきつめれば「各空母に搭載するジャマー機としてのグラウラーを増やすのかどうか」になるのだという。
  10. 電子戦の脅威と対抗手段がそれぞれ進歩する中で、海軍はグラウラーで新戦術を試している。パッシブセンサーを使い、常時発信を避ける。これまではジャマー機を2機飛行させていたが、三機必要になる。常時三機飛行させるには飛行隊の規模を拡大し空母に展開する必要が出る。現状はグラウラー5機を配備しているが、7機ないし8機が必要になる。空母飛行隊は合計10隊あるので各2機ないし3機追加配備で20機から30機の追加発注になる。ただしここには損耗用予備機は含まれていない。
  11. そうなると相当規模の調達になる。だが電子戦の優先順位は高くなりつつあり、海軍だけでなく国防総省全体で必要を痛感している。ペンタゴンの主任研究員アラン・シャファーAlan Shafferは米国が「電磁スペクトラム優位性」を喪失していると警句を鳴らす。この発言はボブ・ワーク副長官の提唱する「相殺戦略」と同じ論調だ。国防科学委員会は電子戦能力の維持拡充で年間20億ドルが不足していると把握している。グラウラーは米国電子戦の最先端手段であり、ペンタゴンの調査結果で増強が必要との結論が出る可能性が高い。予算環境が厳しい中でも調達の実現は大いに可能性があるのは確かだ。■


2015年2月26日木曜日

★★★レーザー技術の改良はミサイル防衛をどう変化させるか



レーザーで技術革新が進むと多額の費用が必要な迎撃ミサイルが不要となる可能性がありますが、これでは攻撃用ミサイルに多額の投資をしてきた中国やロシアは困った事態になりますね。オールマイティの技術はありえないので、コレまで蓄積してきたミサイル迎撃の体制が一夜にして無駄になるとは思えませんが、パラダイムチェンジがやってくるかもしれませんね。

Are Missile Defense Lasers On The Verge Of Reality?

By COLIN CLARKon February 18, 2015 at 5:36 PM

Afzal Rob LMCO laser fellowRob Afzal
CRYSTAL CITY:  三年以内にレーザー兵器の試作品で300キロワット級出力が実現する可能性があり、ミサイル防衛に革命的な変化が生まれるかもしれない。ロッキード・マーティンの技術陣が明らかにした。

300キロワット級では巡航ミサイルの撃破も可能となる。これは現在ペルシア湾で実地テスト中のレーザー兵器システム(LaWS)の10倍の威力となる。LaWSは短距離内なら低速飛行中の無人機を撃墜できる。
US Army photo陸軍の高エネルギーレーザー(HEL)実証車両
ロッキード・マーティンは米陸軍の高出力移動式レーザー実証High Energy Laser Mobile Demonstrator (HEL MD) の性能向上事業を受注しており、10キロワットを60キロワットに引き上げようとしている。納品は来年予定だが、ロッキードの主任研究員ロブ・アフザルRob Afzal は60キロワット超の実現を目指す。
「現状のシステムでも100まで行けると見ています」とアフザルは恒例のロッキードによる報道陣への説明会で発言。「ファイバー・レーザーでは300まで可能と考えていますが、300以上も可能という意見もあります」 さらに改良を加えれば「500キロワット超も可能でしょう」
現在は「予算が足りなくて100から150キロワットがせいぜいですが、技術的に制約があるわけではありません。二三年もすれば300も視野に入ってきます。ただし、予算手当が条件ですが」
「現時点でも100キロワット級のシステムは製造可能で、LCS(沿海戦闘艦)への搭載は可能です」(アフザル) (100kwだと短距離で巡航ミサイル撃墜が可能、無人機なら長距離で攻撃可能だと戦略予算評価センターは見ている) 「陸軍車両に搭載も可能です。大型機に搭載できます。戦闘機は現時点では搭載不可能です」
効率が30%から35%という光ファイバーレーザーの上限だが、300 kw出力の実現には1メガワットほどの電源が必要だ。対照的に従来のレーザー技術では効率10%が限界で、同じ1メガワット電源で得られるレーザーは100キロワットしかなかった。残りの900kwは余熱となり無駄になる。
そこでファイバーレーザーの小型化が出てくる。ファイバーはそれぞれ最大で10kwしか生まないが、ビームを合成して出力が増える。冷却はファイバー別に行い、過熱問題を防ぐ。この過熱現象がレーザー技術で障害だった。(一旦加熱すると熱除去が急激に困難となる)
US Navy photo海軍のレーザー兵器システム(LaWS)はペルシア湾に投入されている
海軍のLaWSは商用の切断用レーザー6本をつなぎあわせただけで、全部を同じ対象に集中させている。ロッキードの技術はこれより進歩しており、レーザー光線全部を単一コーヒレントビームにして長距離でも焦点合わせが正確だ。
「数百本のレーザーを合成する」のはプリズムで光が分解される虹と逆の作用だ。「スペクトラル光線合成」でレーザー複数を一つのビームにすることができる。
ロッキードはこのビーム合成技術をすでに30kw級レーザーで実証済みで、完全自社開発で実施したとアフザルは述べる。課題は出力増大で、陸軍が求める60 kwをまず実現し、その先を狙うという。■
CSBA graphic
目的別に必要なレーザー出力のちがい(Courtesy Center for Strategic & Budgetary Assessments)


2015年2月22日日曜日

シャルル・ド・ゴールがペルシア湾内に移動 ISIS空爆作戦まもなく開始か



French Carrier Enters Persian Gulf, ISIS Strike Missions Could Start Soon
By: Sam LaGrone
February 20, 2015 3:04 PM

French carrier Charles de Gaulle. US Navy Photo
French carrier Charles de Gaulle. US Navy Photo

フランスの原子力空母シャルル・ド・ゴールCharles de Gaulle (R91) がペルシア湾に入り、ISIS(ISIL)戦闘員への空爆ミッションをまもなく開始する。国防関係者が20日USNI Newsに伝えた。

同艦はホルムズ海峡を通過し、2月15日に湾内に移動した。すでに展開中のUSSカール・ヴィンソンCarl Vinson (CVN-70) に合流して空爆作戦の準備に入った。

フランス大統領フランソワ・オランドは風刺雑誌シャルリ・エブド襲撃事件の直後に空母派遣ミッションを公表している。「襲撃事件で我が国空母の展開が正当化される」

フランスは同艦派遣で米国と共同でシャマル作戦Operation Chammalを実施する。シャルル・ド・ゴールは任務部隊473旗艦として1月にツーロンを出港。フランス戦闘部隊にはこの他フォルバン級誘導ミサイル駆逐艦シュヴァリエ・パウルChevalier Paul(D621) や少なくとも1隻の原子力攻撃潜水艦、給油艦が加わっている。
.
Rear Adm. Eric Chaperon, commander, French Navy Task Force 473, left, and Rear Adm. Kevin Sweeney, Commander, Harry S. Truman Carrier Strike Group 10on the flight deck of the French aircraft carrier Charles de Gaulle (R9) in 2014. US Navy Photo
Rear Adm. Eric Chaperon, commander, French Navy Task Force 473, left, and Rear Adm. Kevin Sweeney, Commander, Harry S. Truman Carrier Strike Group 10on the flight deck of the French aircraft carrier Charles de Gaulle (R9) in 2014. US Navy Photo
.
英海軍タイプ23フリゲートHMSケント Kent (F78) が対潜戦(ASW)支援を提供する。
.
これまでのところフランスはISIS空爆に戦闘機10機とISR機材が投入されている。

Jane's Defense Weeklyはシャルル・ド・ゴールはダッソー・ラファールMの11F(飛行隊)とダッソー・シュペル・エタンダール・モデルニゼの17Fを搭載していると報じている。

.
ペルシア湾移動前にジブチで近接航空支援訓練と「戦術機体・乗員回収訓練および自国民避難訓練」をUSSイオージマ(LHD-7) 上の第24海兵遠征部隊 (MEU) と一緒に実施していることが米国防総省が発表している。■