2017年6月13日火曜日

歴史残る機体12 ツボレフTu-95ベア




The Tu-95 Bear: The 60-Year-Old Russian Bomber America Still Chases All Over the World

Tu-95ベアは60年にわたりロシアが世界各地で運用する爆撃機

June 11, 2017


  1. 巨大なツボレフTu-95「ベア」ほど特徴のある機体は少ない。四発の同機はロシアが戦略爆撃機や海上哨戒機として供用中で、一角獣のような長い燃料補給管が特徴的でまるで太古の怪物のように見えるが事実第二次大戦直後に現れた機体なのだ。
  2. だが外観に惑わされてはいけない。登場以後60年ほどが経つTu-95は今でも供用中でこれだけのペイロードを有する機体がこれだけ長く長距離を飛行している例は少ない。Tu-95はロシアのB-52と言ってもよいが、ヨーロッパ、アジア、北米の各地で防空体制を試すことが多く、海洋上空の飛行も多い。

冷戦時の核爆撃機
  1. ベアが生まれた背景には第二次大戦後にソ連が米国に対抗して自前の戦略爆撃機部隊の整備を急いだことがある。ソ連は1950年に四発爆撃機で5千マイル飛行させ米国内の目標地点を爆弾12トンで攻撃する構想をまとめた。
  2. 当時のジェットエンジンは大量の燃料を短時間で燃やしていた。そこでアンドレイ・ツポレフ設計局はNK-12ターボプロップエンジン四発に二重反転プロペラの搭載を想定した。
  3. NK-12エンジンにプロペラ二つが取り付けれれ、それぞれ逆回転させてトルクを打ち消しながら高速力を引き出す。二重反転プロペラは効率こそ高いが製造整備は大変で、信じられないほどの騒音を出し、広く普及していない。Tu-95のエンジン音は潜水艦やジェット機から探知されたという。
  4. ただしTu-95のエンジンは効果を発揮している。時速500マイルと世界最速のプロペラ機だ。プロペラは直径18フィートで先端部は音速をわずかに上回る速度で回転する。またベアはプロペラ機ながら後退翼を搭載した数少ない例で高速飛行に寄与している。
  5. Tu-95の燃料搭載量はものすごく大きく、機内燃料だけで9千マイル飛行できる。後期生産型からは特徴的な空中給油用装置がつき、飛行距離はさらに伸びた。冷戦時には一回10時間の飛行につくことが多く、一部の機体ではほぼその倍飛ぶものもあらわれた。
  6. Tu-95の乗員は型式により6名から8名で、パイロット二名、航法士二名を中心に機銃操作やセンサー操作にあたった。当初のベアには23ミリ二門の砲塔が機体下部と尾部についた。敵戦闘機を排除する構想は長距離空対空ミサイル登場で意味がなくなり後期型は尾部を除き機銃を廃止した。(公平のため記すとB-52の尾部機銃で撃墜二例あるいは三例がヴィエトナム戦争時に記録されている)
  7. ベアの当初任務は明確だった。冷戦が本当の戦争になれば、ベア数十機を北極越えで送り込み、核爆弾を米国各地に投下するはずだった。途中多数がミサイルや防空戦闘機の餌食になるのは覚悟のうえで、数機が侵入に成功すればよいとしていた。
  8. これは映画「博士の異常な愛情」が描いた米空軍の戦闘実施構想をまねたものだったが、ソ連には核装備爆撃機を二十四時間空中待機させず、米国とは違っていた。
  9. Tu-95は核兵器実験にも使用された。Tu-95Vが世界最大の核兵器を1961年にセヴェルニ島に50メガトンの「爆弾の帝王」をパラシュートで落下させ地上4キロ地点で爆発したキノコ雲は40マイル先からも目視された。衝撃波でベアは高度を千メートル失ったがパイロットは機体制御を取り戻し帰還させた。乗員は生存の可能性は50パーセントしかないと事前説明を受けていた。

海洋上空の襲撃者として
  1. 1960年代に入るとソ連も戦略爆撃機で核爆弾を米国上空から重力落下させても装備の無駄使いと理解するに至る。これには防空装備の進歩と弾道ミサイルの費用対効果が向上したことがある。以後のTu-95には別の任務想定で開発が進んだ。
  2. 迎撃戦闘機に弱い爆撃機の特性から長距離巡航ミサイルの母機に転用することとした。Tu-95K型は大型Kh-20核巡航ミサイル(NATO名AS-3カンガルー)を搭載した。ミサイルの射程は300キロから600キロで形状は航空機から主翼を取ったように見えた。実はMiG-19の胴体を原型としたせいだった。
  3. もう一つミッションがベアに与えられた。米空母戦闘群の追尾であった。高性能センサーを使っても広大な海洋上で艦船を探知追尾するのは容易ではない。ただし、空母群の位置が判明すれば、陸上から爆撃機多数を向けて攻撃できた。ベアは海上を長時間飛行できるので米艦隊探知に最適と思われた。
  4. Tu-95RT海洋偵察機型が専用に製造された。海面探知レーダーを機体下部につみ、尾部銃座後方にガラス張り観測室も追加した。
  5. 有事の際に敵艦隊追尾は有益だが、同時に米海軍に空爆を受ける脆弱性の危険を心理的に与える意味もあった。米空母から戦闘機がスクランブル発進しベアを追い払うことがよくあった。ベアが米戦闘機と一緒に写る写真多数は冷戦時代の象徴だ。

Tu-95の各型
  1. その他試験実験用のベアもあり、Tu-85LALは原子炉を搭載、Tu-95KはMiG-19戦闘機を搭載し空中発進させる構想だった。
  2. 実際に生産されたその他の形式にTu-95MR写真偵察機、Tu-95K改良型とKM型があり、センサー性能を向上しKh-22ミサイルを発進させた。
  3. ソ連では対潜偵察機型をベアから開発しTu-142が生まれた。背景には新型ポラリス潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)への恐怖があった。Tu-142は洋上探査目標捕捉レーダー「ベルクート」(金鷲)で識別可を図った。また尾部ブームにMAD磁気異常探知機を搭載し、潜水艦探知に使う。Tu-142はストレッチされセンサー類を全部機内に搭載している。
  4. 冷戦中は米潜水艦の性能向上に呼応した改修を受けている。現在供用中のTu-142MZは高性能化したソノブイRGB-16、RGB-26を搭載し、エンジンも強化している。Tu-142が米潜水艦探知に成功する事例が多数あり、長時間にわたり追尾もしている。Tu-142MRでは二機がロシア潜水艦向け通信中継用に製造されている。
  5. ロシア海軍航空隊はTu-142を現在も15機運用中だ。うち一機がシリアで目撃されている。シリア反乱勢力なのか米艦隊なのかわからないが動きを探知しているのだろう。
  6. インド海軍にはTu-142MK-E型が8機あり、1988年から供用中だが、ゆくゆくはP-8Iポセイドンにバトンを渡す。
  7. ベアからロシア初のAWACS、Tu-126も生まれた。Tu-114旅客機は1959年にフルシチョフを乗せモスクワからニューヨークにノンストップ11時間で運んだ。ただし両型とも現在は運航されていない。
  8. Tu-142以外に現在運航中のTu-95はTu-95MS型50機余である。機体はTu-142が原型で巡航ミサイル発射母機としてKh-55(NATO名AS-15)を運用する。近年にさらに改修を受け、巡航ミサイル16発を運用できるようになった。また航法目標捕捉装備も更改された。Kh-55は各種型式があり、核・非核両用で射程は最大3,000キロ、最短300キロだ。
  9. Tu-95MSM型はKh-101を運用でき、核つきKh-102ステルスミサイルも発射できる。これは低高度を飛び、レーダー断面積も減らしている。射程は5,500キロといわれる。
  10. こうした恐ろしいペイロードがあるが、ベアの敵は機体寿命だ。2015年夏には短期ながら飛行停止した。二年で二機で事故があったためだ。
現況
  1. ペアは太平洋大西洋上空を今も飛んでいる。現時点の主要任務は他国付近を遊弋飛行することだ。
  2. Tu-95が英国沿岸付近を飛ぶところを見つかり、カリフォーニア州から50マイル西を飛び、アラスカ防空識別圏内に入り、日本の領空も侵犯している。そこまで接近して飛ぶのは迎撃態勢を挑発するためだ。他国の領空に入ることは普通はない。
  3. 冷戦期はこのパターンの飛行が普通だったが2007年にプーチンが復活させた。理屈の上では監視飛行だが真意はロシアが核兵器運用爆撃機をその気になれば各国の近くまで飛ばせると思い知らせることにある。
  4. 米RC-135スパイ機も中国やロシアの戦闘機を刺激するがRC-135は非武装だ。
  5. 無論、ベアはステルス性とは程遠く、最新の対空兵器を前に生き残ることはできないが、巡航ミサイルを搭載するベアは防空網のはるか手前でミサイル発射すればよい。
  6. 2015年11月にベアは供用開始後59年で初の戦闘を行った。ロシア国防省発表のビデオによれば巡航ミサイルを発射し、シリア反乱勢力の陣地を攻撃している。巡航ミサイルを発射したロシアは自国の軍事力を世界に見せつける意図があったと解釈された。
  7. ロシア軍にはもっと重装備で超音速飛行可能な爆撃機も別途あるが、長年稼働してきたベアは大型巡航ミサイルを搭載し太平洋大西洋で監視の目を光らせる任務に適合している。■
Sébastien Roblin holds a Master’s Degree in Conflict Resolution from Georgetown University and served as a university instructor for the Peace Corps in China. He has also worked in education, editing, and refugee resettlement in France and the United States. He currently writes on security and military history for War Is Boring.
Image: Creative Commons.


2017年6月11日日曜日

★★空母キティ・ホーク、ペリー級フリゲート艦の現役復帰案が浮上中



うーんこれはどうなんでしょう。モスボール係留中の劣化を克服し、新装備を搭載しても乗員が旧式艦の装備に習熟するのに時間がかかりその間にも供用期間が減ります。数合わせにしかならないのでは。ペリー級フリゲートは使い勝手はよさそうですが、VLS搭載の必要はないのでは。低水準の脅威環境なら十分現状でも対応できそうですね。LCS沿海域戦闘艦支持派にはフリゲート艦復帰は都合悪いでしょう。日本にはモスボール保存がないのでわかりませんが、たしかに米海軍はベトナム戦争、湾岸戦争にアイオワ級戦艦を復帰させていましたね。独特の技術水準を維持しているようです。


Last Stop for USS Kitty HawkMC3 KYLE D. GAHLAU—U.S. NAVY

US Navy Looking At Bringing Retired Carrier USS Kitty Hawk Out Of Mothballs

米海軍が退役空母USSキティー・ホークの現役復帰を検討か

Bringing back its last operational conventionally powered supercarrier would help the Navy make its 12 carrier fleet goal a reality.

最後の通常動力大型空母の復帰は海軍が求める空母12隻体制の実現の近道になるか

 BY TYLER ROGOWAY JUNE 8, 2017



  1. 米海軍が目標とする355隻体制の実現に向かう中で(現状は275隻)一つの方策は現役艦船の耐用年数を延長することである。さらにモスボール保存中の艦船を現役復帰させる案も検討している。その中で可能性が高いのが最後の通常動力大型空母USSキティー・ホーク(CV-63)だ。
  2. 海軍の海上システムズ司令部を率いるトーマス・ムーア中将は保存中艦船は大部分が復帰もままならない状態であるが、USSキティー・ホークは違うと述べている。「保存中の空母でキティー・ホークは真剣に検討対象となる艦だ。エンタープライズ退役の際は艦体が老朽化していた」
  3. たしかに空母一隻を現役復帰させるのは「空母ギャップ」を埋める有効な解決方法であり、トランプ大統領が求めるスーパー空母12隻体制実現への近道のように映る。現在の米海軍はスーパー空母10隻を運航中で、USSジェラルド・フォード(CVN-78)が就役に一番近い位置にあるとはいえ、目標の隻数にするには数年かかる見込みだ。
  4. キティー・ホーク現役復帰案はフロリダ州メイポート関係者には心地よく聞こえるかもしれない。同地はスーパー空母の同地配備再開を米海軍に長年求めてきた。同地施設は原子力空母の支援用に改修を受けておらず、USSジョン・F・ケネディ(CV-67)が2007年に退役後は常駐のスーパー空母がないままで地元経済にも打撃となっており、戦略的な穴にもなっていた。キティー・ホークが配備されれば大幅施設改修も必要なく理想的な母港になる。
  5. その他にも現役復帰の対象になる艦がある。まずタイコンデロガ級巡洋艦の初期建造5隻がデラウェア河に係留されたままだ。各艦はマーク41垂直発射管を搭載せず、二本式のマーク26ミサイル発射装置が搭載されている。だがこのまま予備艦艇としておくのは水上戦闘力を有効活用していないとよく言われる。ただしムーア中将は別の理由があると見ている。
  6. 各艦は現役の同級他艦と比べると旧式化が目立ち、艦隊で活躍中の各艦に近い実力に整備するには多額の予算が必要だ。それ以外に艦内の部品は流用のため撤去されている。「戦闘力の観点からするとこれらの艦は陳腐化著しい。現役復帰は多分ないだろう。ここ数年は部品取りに使われているのが現状だ」
BIGBIRD78/WIKICOMMONS
USSタイコンデロガ(CG-47)はフィラデルフィア海軍工廠で悲惨な状態で保管中だ。
  1. 旧式艦の再生では復帰コストと提供可能となる戦力をよく比較する必要がある。また機能がどこまで劣化しているのかを現役の最新艦と比較せざるを得ない。また仮に再復帰に予算を投じても果たしてあと何年供用可能かを見極める必要がある。
  2. そうなるとキティー・ホーク以外の復帰艦候補は下位の任務をこなす艦であり、巨額の技術投資が不要な艦となる。海軍にはモスボール保存中の補給支援艦の他にオリヴァー・ハザード・ペリー級誘導ミサイルフリゲート(FFG)がある。早すぎる退役が悔やまれた艦であり、各国に供与され大幅に受けた改修を同じく応用できるはずだ。例えばマーク41垂直発射装備の搭載やセンサー類、戦闘指揮システムのアップグレードが考えられる。
USN
ペルシア湾をパトロールするオリヴァー・ハザード・ペリー級フリゲート艦USSサッチ。2009年
  1. FFGでは有効に使える可能性を検討し、戦闘支援艦でも有効活用の可能性を見る。全体として保存艦艇の活用は限られるが、個別の艦の状況を見て決めていくという。
  2. ドナルド・トランプ大統領がこの構想を支持する可能性は十分ある。トランプには旧式でも改装を加えた機体を活用してきた経歴もある。選挙運動中にトランプはアイオワ級戦艦の復帰さえ言及していた。ただしこの案は以下に政治的に後押しがあっても実現は極めて可能性が低い。■
Contact the author: Tyler@thedrive.com



2017年6月10日土曜日

ルーク空軍基地のF-35Aが全機飛行停止措置に


これは変ですね。供用中のF-35Bではこのトラブルは聞こえてきませんし、5月に入ってから5機(にしか)発生していないというのはばらつきであり、部品製造レベルの品質管理が悪いためなのでしょうか。F-22の事例もありましたので原因究明が早くできるといいですね。

F-35s at Luke Air Force Base grounded after pilots suffered oxygen deprivation

ルーク空軍基地のF-35が飛行停止措置へ、酸素供給問題が発生。
By: Stephen Losey and Valerie Insinna, June 9, 2017 (Photo Credit: Air Force)
ルーク空軍基地(アリゾナ州)の第56戦闘機隊が6月9日にF-35AライトニングII戦闘機の飛行停止措置をとった。低酸素症が5月から計5件も発生したためだ。
  1. 米空軍は同日の報道発表でパイロット5名で低酸素症が先月から発生したと述べている。予備酸素が毎回稼働されパイロットは手順通り安全に着陸させている。
  2. 「安全な飛行運用に向け整備と運用を同調させるべく、当地でのF-35A飛行を停止することとした」と第56隊の指揮官ブルック・レオナード准将が報道資料で述べている。「空軍は今回の事象を深刻に受け止め、パイロットの安全と体調管理を最優先する。根本原因を調査するべく必要な措置を取る」
  3. F-35管理室JPOが技術、整備、航空医学の各専門家によるチームを立ち上げ、調査を開始する。現時点では機内の酸素発生装置(OBOGS)が故障したかは不明だ。                    
  4. 「F-35事業では多方面アプローチで機材で見られる生理現象を監視追跡しており、結果はウェポンシステム改善に使い、作戦時の戦術、技量、手順に応用する」とJPOは声明を発表。「進行中のJPO検討には政府関係機関と民間の技術、整備、航空宇宙生理学専門家がチームで対応している」
  5. 第56隊の広報係レベッカ・ヘイス少佐は飛行停止は今のところ一日のみと強調し、来週月曜日に再開するとしている。飛行停止の影響を受けるパイロットは49名ほどで当日は低酸素症の概略説明を受け先のパイロットがどう対処したかを学ぶ。航空医官からも症状の説明があり、現時点での分析内容を聞く。
  6. 56飛行隊はパイロット向けオープンフォーラムで懸念事項の解消に努める予定だ。
  7. ヘイス少佐はDefense Newsに対し今回の事態に遭遇したF-35Aは計5機で異なる飛行隊所属の機体だと説明している。事件遭遇のたび航空医学専門職が該当パイロットの生理学的データを集め、整備陣が機体からデータを回収している。情報の分析がまだ途中だがJPOチームに回し根本原因の把握に使うという。
  8. F-35Aではパリ航空ショーへの出発が今回の措置から一週間もしないうちに控えている。ロッキード・マーティン社パイロットが飛行展示する予定でヒル空軍基地所属の機体を使う。飛行展示は予定通り行うとロッキードの広報係マイク・レインは述べている。「予定は変更ありません。当社のパイロットにこの症状は出ていません」
  9. F-22ラプターでも酸素供給問題が発生しパイロット数名が低酸素症んいなったため空軍は同機を五か月間にわたり飛行停止したことが2011年にあった。2012年7月に空軍はF-22の低酸素症の原因はパイロットの生命維持ベストのバルブの締め付け不十分のため呼吸が制限されたと判明している。■

ISIS戦は新たな局面に入ったのか、無人機から攻撃を受けた米軍特殊部隊


イラク、シリアでは敵対勢力が空軍力を持たない前提で作戦を実施した来たため今回の無人機襲撃事例はショックでしょう。無人機を有効に活用すれば効果を上げるのも可能だと示しています。さらに無人機の製造元がイランであり、イランへの警戒をあらためて強める効果も生まれそうです。


U.S. F-15E Downs Iranian-Built Syrian Drone After Airstrike on U.S. Led Forces 米F-15Eがシリア無人機を撃墜したが、イラン製無人機は米軍主導の地上部隊を空爆していた

By Tom Demerly Jun 09 2017

 

  1. ストライクイーグルがシリアの無人機を撃墜したがその前に同無人機は反アサド地上部隊を攻撃していた。ストライクイーグルの撃墜例は湾岸戦争終結後二件目になった。
  2. 反アサド勢力のシリア軍を補佐中の米特殊部隊軍事顧問団がシリア政府に近い勢力が操作するイラン製シャヘド129型無人機の攻撃を受けた。6月8日に発生したと米陸軍が発表した。
  3. これに対し米空軍F-15Eストライクイーグルが同無人機を撃墜した。
  4. 現場はアル-タンフ、シリア南部でヨルダン国境に近い地点。アル-タンフには前線基地があり英米特殊部隊がISISに対抗するシリアゲリラ部隊マガウィル-アル-タウラ(「革命戦士部隊」)を援助している。同部隊はシリア地元の特殊作戦部隊で連合国勢力から訓練支援を受けながらアサド政権を相手に戦っている。
  5. 米軍はF-15Eストライクイーグル一機に無人機の探知撃破を命じた。米軍が敵対勢力による攻撃を空から受けるのはほぼ20年ではじめてで、ストライクイーグルが空対空戦で撃墜したのは1991年にイラクの武装ヘリコプターの撃墜事例以来二件目となった。
  6. 不朽の決意作戦の統合共同タスクフォース広報官ライアン・ディロン米陸軍大佐によればアサド政権所属の無人機が米顧問団とシリア革命戦隊を攻撃したが「連合軍部隊に被害は発生していない」
  7. 「政権側のUAVは米MQ-1プレデターに類似し、米空軍機が撃墜する前に搭載兵装の一部をISISに対抗する地上部隊の訓練支援にあたる連合軍人員の近くに投下した」との声明文を発表。「今回の撃墜の前に同日には連合軍が政権側テクニカル車両二台を破壊している。車両は武装衝突回避地帯内部に侵入し連合軍・提携勢力部隊の脅威となっていた」
  1. ペンタゴン担当記者タラ・コップは米軍機が無人機を撃墜したとツィッターで真っ先に報じた一人である。
  2. アル-タンフ周辺の34マイルにわたる地帯は「武装衝突回避地帯」として連合軍が設定している。緩衝地帯とし英米が支援する反アサド部隊の安全を図るのが目的だ。だが同地帯内部で事件数件が発生しており米軍による対応が必要とされてきた。6月6日火曜日には米海軍F/A-18ホーネットが爆弾四発を投下し推定10名の親アサド勢力戦闘員が死亡し、車両数台を破壊している。
  3. 親アサド勢力がイラン製シャヘド129無人機を近辺から操作した可能性がある。
  4. 注目されるのは、同地域での米陸上部隊がはじめて航空攻撃を受けたことだ。イラン製シャヘド129はヒズボラも2012年にイスラエル戦に投入している。イスラエルも無人機を撃墜していたが、テロ集団の運用能力が危険なエスカレーションをしたことが話題になっていた。■
イラン製シャヘド129武装無人機 (Iranian News Media)


北朝鮮空軍の米空母攻撃模擬演習は笑止千万だ




これは完全なプロパガンダでこんな形で米空母に打撃を与えようとは狂気の沙汰で、出撃した機体に帰還のチャンスはありません。一人100殺とは戦時中の日本見たいですが、要は精神力が物理的な軍事力に勝るということでしょうが開いた口がふさがらないですね。

北朝鮮軍用機が敵空母を模した標的を攻撃している。Source: Rodong Sinmun

North Korean air force practises striking aircraft carriers

北朝鮮が空母攻撃の航空演習を実施

  Gabriel Dominguez, London - IHS Jane's Defence Weekly
07 June 2017

北朝鮮空軍が敵空母群攻撃の演習を緊張が高まる中で実施した。
  1. これは朝鮮労働党の日刊紙労働新聞Rodong Sinmunが6月5日に掲載したもので米海軍空母二隻が海上自衛隊部隊と日本海で演習を行った直後に報道している。
  2. 同紙によれば最高指導者金正恩も立ち合っ多今回の演習は朝鮮人民軍空軍、防空軍合同の「戦闘飛行競技」の一環だという。
  3. 演習の日時は不明だが、同紙には北朝鮮軍機の写真数点が掲載され、中には標的に向けミサイル発射、爆弾投下する光景もある。
North Korean MiG-29s, Su-25s, MiG-23s, and MiG-21s were among the aircraft that took part in a drill that involved targeting simulated enemy aircraft carriers. (Rodong Sinmun)
北朝鮮のMiG-29, Su-25, MiG-23, MiG-21の各機が敵空母攻撃の模擬演習に参加している。(Rodong Sinmun)
  1. 写真ではMiG-29「フルクラム」、スホイSu-25「フロッグフット」、MiG-23「フロッガー」、MiG-21「フィッシュベッド」、MiG-19「ファーマー」、MiG-15「ファゴット」、An-2「コルト」、Mi-4「ハウンド」、MD500ヘリコプターも見られる。
North Korean Mi-4 helicopters and An-2 aircraft were among the platforms that took part in a drill that involved targeting simulated enemy aircraft carriers (Rodong Sinmun)
北朝鮮Mi-4ヘリコプターと An-2機も敵空母攻撃模擬演習に参加している。(Rodong Sinmun)
  1. 北朝鮮空軍司令官上級大将Kim Kwang-hyokの発言が同紙にあり、競技は「戦闘部隊将校全員が一人100殺の戦闘要員となりいかなる敵も打破できるよう訓練するものであり、空母と言えども恐れるに足らない」とある。
  2. 平壌からの報道発表は米海軍ロナルド・レーガン、カール・ヴィンソンの両空母戦闘打撃群が海上自衛隊と日本海で共同訓練を行った数日後に出てきた。
  3. またニミッツ空母打撃戦闘打撃群が6月1日に出港したとの報道の中で今回の発表が出た。米メディア複数によれば同CSGはアジア太平洋に向け出港し、北朝鮮への圧力を増やすのが目的と言われる。■

2017年6月9日金曜日

ミッドウェイ海戦75周年、中国軍事戦略家は戦史から何を得ているか


今年はミッドウェイ海戦から75周年の節目です。戦史から何を学ぶのか。日本では失敗の代名詞として細かい点にこだわる傾向があるようですが、中国は本質の戦略論で同じ事例を分析しているようです。米海軍大学校准教授が中国記事を読んで分析していますのでご紹介しましょう。

 

What Do China's Military Strategists Think of the Battle of Midway? 中国軍事戦略思考家はミッドウェイ海戦をどう理解しているか


China likely recognizes that once wars are started with America, even when militarily successful, they may be extremely difficult to end.
中国もいったんアメリカと交戦すれば、軍事的に成功しても戦争終結が極めて困難だとわかっているのだろうか

The National InterestLyle J. Goldstein June 4, 2017

  1. 1942年の6月に米海軍航空部隊は日本帝国海軍の主力空母4隻を海底に沈めて歴史の流れを変えた。勝因には戦略、暗号解読、急降下爆撃機の技量、訓練の蓄積、運のよさに加え少なからぬ勇気と犠牲が加わった。
  2. エドワード・「レム」・マッシー少佐の例を挙げよう。1930年の海軍兵学校卒でニューヨーク州出身の少佐は米海軍初の魚雷投下で命中を上げている。本人が率いる飛行隊が1942年2月にクウェジェリン礁付近で日本海軍に打撃を与えている。運命の6月4日朝に少佐は飛行隊を率いてミッドウェイ海戦の大きな局面となった空母飛龍攻撃に向かった。「僚機は隊長機が大きな火の玉になるのを見た」
  3. マッシー少佐はむき出しのコックピットに乗り乗機TBD(アヴェンジャー)から250フィート下に魚雷を投下したが、命中で発生した炎から逃げることができなかった。海戦の結果を知るものからすればアヴェンジャー隊の犠牲は無駄死にではないと言える。デヴァステーター艦爆隊に道を開き半年前の真珠湾攻撃の仇を返すしたからだ。
  4. 今日の世界では太平洋の対岸で中国がミッドウェイ海戦を真剣に研究している。北京が空母二号艦を進水させ三号艦建造に向かっていることからすれば驚くべきことでもないが中国の海軍専門誌「現代艦船」に長文記事が掲載されたのは興味深い。記事は「ミッドウェイ島への道」の表題で戦術、技術、勇敢さのいずれも取り上げず、かわりに極めて厳密に1942年春時点での日本海軍上層部にあった作戦立案の選択肢を分析している。ミッドウェイの奇跡を生んだ要因の中で中国の分析記事は「戦略洞察力」あるいは日本が軍事的に有利な位置を無駄使いした事実に着目している。
  5. 分析では日本が東南アジア各地を瞬く間に占領し、しかも驚くほど代償を払わずに達成したことから始まっている。簡単に勝利が手に入ったため「次をどうする」が真剣に問われた。1942年3月の日本海軍は二方面作戦を検討していたといわれる。南方からオーストラリアを攻略するか、北に向かいアリューシャン列島を陥落させるかだった。日本海軍の作戦を立案し真珠湾攻撃を考えた山本五十六大将はハワイ攻略の是非も検討させたといわれる。興味深いのは日本海軍はインド洋まで遠征してセイロン(スリランカ)を攻略していた点だ。分析が示しているのは東京のインド洋作戦は突飛な発想でないことだ。日本海軍がインドまで勢力を展開したことで英国は脅威を感じ、インド植民地で英国支配に抵抗する勢力を勇気づけるとともにドイツに好印象を与え、枢軸勢力が手をつなぎ石油豊富なペルシア湾をおさえる可能性が現実にあったからだ。
  6. オーストラリア侵攻は一度も真剣に日本は検討していないと記事分析は結論づけている。実施しすれば最低20万の兵員とともに限りある日本の船舶力の三分の一をつぎこむことになるからだ。日本陸軍には海軍を支援し各種作戦をアジア太平洋で展開することに全く関心がないことを中国側は指摘している。日本の地上部隊はシベリア制圧を想定していたためである。他方で海軍はハワイ占拠で米国最大の太平洋の軍事拠点を無効にし、米軍による日本本土攻撃の可能性も大きく減ると見ていたと記事では強調しており、陸軍の「主体性のなさ、非協力的態度」はあからさまで海軍を支援する作戦には及び腰だったとまとめている。
  7. 山本大将は真珠湾攻撃の立役者として後光がさすほどの存在であったが日本海軍上層部には12月7日の奇襲攻撃でハワイ燃料集積地攻撃を逸した大失敗、さらに艦船修理施設も攻撃しなかった点も見逃していなかったと記事は紹介。ただし一番の失策は米空母部隊をせん滅する機会を逃したことだった。ドゥーリットル空襲で日本本土が直接攻撃されたため、これらの失敗は日本海軍上層部で喫緊の課題と認識された。さらに日本の軍上層部は決戦は先送りできず今仕掛ける必要を感じていた。米国で空母11隻が建造中なのに日本では1隻しかなかったからだ。
  8. それでもミッドウェイ作戦に反対の意見の軍上層部もかなり多かった。中国の分析では反対派は上空援護が不十分、かつ米国が空中で主導権を握る可能性があることを根拠にしている。ミッドウェイ島自体は何ら資源のない土地だが同島を抑えることで太平洋中部の日本の海上活動を抑える効果がある。反対意見ではミッドウェイ島は小さく、防御も難しいが大部隊の駐屯も困難と指摘していた。だが中国分析では山本が例えミッドウェイ島占領に成功してもハワイ攻略作戦の実施は不可能と断念したとある。つまるところもし日本がハワイを占領すれば4千キロという大海原があれば米国と言えども日本が新たに獲得した拠点の奪回に部隊を集結させるのは困難になると見ていた。
  9. ただしここまで大胆な作戦の実施前に日本海軍は米空母部隊をせん滅する必要があり、このためにハワイを攻撃するおとり作戦で米空母を決戦に引きずり出そうとした。アメリカへの欺瞞として日本海軍は「米軍の注意を分散させる」作戦を打撃部隊四つを別行動させた。だが中国記事の分析では「作戦案が過剰なまで複雑」で各独立行動部隊にそれぞれを支援する能力がなかったとまとめている。記事は戦略方針の検討を重視し個別の戦いの進展では説明を省いている。ただ日本側の情報部門がUSSヨークタウンが珊瑚海海戦で損傷したものの迅速に修理され戦場に復帰するとは見ていなかったことを失策としている。中国記事では日本側戦力(空母4艦載機227)は米戦力(空母3艦載機234)に対して圧倒的に多いとはいえず、ミッドウェイは「過剰なリスク」になっていたと分析する。
  10. おそらく中国による評価で一番興味をひかれるのは文末の数行で日本の観点による戦争終結の話題だ。1942年春に日本が戦争で目指していたのはアメリカを「戦争終結の交渉の席につかせる」ことだった。皮肉なのは日本が勝利を収めればそれだけ米国が日本との和平交渉に応じる余地が減ることだ。この観点からいったん開戦すればどれだけ軍事勝利をおさめても戦争終結が極めて困難になるとわかる。
  11. この点をさらに深めて、一度アメリカを怒らせたり、恐喝すれば、米国は必要な犠牲を厭わず勝利のため負担も苦と思わない国であることを中国戦略思考家にも理解してもらいたい。中国側作戦立案部門には軍内部の競合関係がどれだけ危険かを本事例から学んでいるかもしれない。また民間商船が戦略予備部隊として必要だと認識し、戦略的な集中をさらすことの危険性(例スリランカ)と資源を中心的課題に収集する必要性も教訓となるはずだ。中国がミッドウェイ海戦分析から得る可能性のある教訓は日本の失敗はハワイ攻略に必要な軍事力を整備せず努力を集中しなかったことだ。地理条件は今も昔も変わらないので結論として核の時代である今日の中国戦略思考家が十分なまで高度に思考し同様の作戦を今日実施すれば即座に大惨事になるとわかっているとよい。■
Lyle J. Goldstein is an associate professor in the China Maritime Studies Institute (CMSI) at the U.S. Naval War College in Newport, Rhode Island. The opinions expressed in this analysis are his own and do not represent the official assessments of the U.S. Navy or any other agency of the U.S. government.



案の定、米有力議員が韓国THAAD凍結に非難の声を上げる


文在寅大統領はトランプ大統領との首脳会談を控えており、この件をどう説明するのか見ものです。法理よりも感情を優先するのは韓国特有の現象ですが、対外的には全く通用しません。韓国が虎の尾を踏んでしまった気がするのですが。米国も韓国の動向を理解できなくなりつつあるとすれば大変なことです。中国は裏でこの展開をほくそ笑んでいるでしょう。一番注視しているのは北朝鮮ですが。


U.S. Army soldiers install their missile defense system called Terminal High-Altitude Area Defense, or THAAD, at a golf course in Seongju, South Korea, on April 27, 2017. Shon Hyung-joo/Yonhap via AP
星州のゴルフ場内にTHAADを設置する米陸軍部隊。2017年4月27日撮影。Shon Hyung-joo/Yonhap via AP

US Lawmaker Chastises South Korea for Suspending THAAD
米議員が韓国のTHAAD凍結を厳しく批判

 POSTED BY: MATT COX JUNE 8, 2017

韓国政府がTHAADミサイル防衛装備の受領を遅らせていることに米上院議員が非難の声を発し、同国が10億ドルを投じる米国の動きを再考した理由を米陸軍上層部にも問いただした。
  1. 6月7日の上院歳出委員会の公聴会でリチャード・ダービン上院議員(民主イリノイ州)が「韓国国会がわが方の923百万ドル相当のミサイル防衛装備受領を決めかねている状況はここ数年間自分が危惧していた通りの展開だ」と発言。
  2. ダービン発言の同日に韓国大統領府からTHAAD展開は境影響調査が完了するまで凍結し、調査結果は一年以上後に出るとの発表があった。
  3. 「このTHAADミサイル防衛は中距離ミサイルを対象とし韓国国民の安全を守る意味があるのは明らか...にもかかわらず韓国国内で再度政治議論の対象になったことに困惑せざるを得ない」(ダービン)
  4. 同議員は陸軍長官代行ロバート・スピアおよび陸軍参謀総長マイク・マイリー大将に本件に関する説明とともに韓国政府が対米関係そのものを見直しているのかを問いただした。
  5. スピア長官代行は韓国指導層と話したことはないが「二国間関係は良好」と信じ、先行導入されたTHAAD二個隊は「展開済みで作戦行動可能」と答弁した。
  6. 韓国大統領府からは先行二個装備含む展開済み装備の撤去は求めていないと発表があった。発射装置とレーダーは星州地区に一晩のうちに搬入され、反対派は5月9日の大統領選挙前に慌てて手配したと批判していた。
  7. 大統領府は合わせて国防省が追加発射装備4基の搬入を秘密にしていた疑いの調査を開始し、環境インパクト調査対象から外れるよう陣地構築を小さく見せようとしたのではと疑っている。
  8. マイリー大将のダービン議員への回答では韓国とは連絡を保っているとし、「この事態の解決を目指します。設置場所で環境問題がからんでいると理解しています」「THAADは在韓米軍の防衛のみならず韓国全土の安全確保でどうしても必要です」とした。
  9. ダービン議員からは韓国大統領が提示している点は「意味が二つあり、環境問題とともに適正手続きの問題、つまりミサイル防衛装備の導入是非の議会審議が絡んでいる」との見解が示された。
  10. 一方で北朝鮮が短距離対艦巡航ミサイルと見られる数発を6月8日に発射したと韓国軍が発表しており、北朝鮮は引き続き米本土を射程に収める核ミサイル開発を進めている。
  11. 飛翔体数発は東海岸の元山から発射され約200キロ飛翔する中で最高高度は2キロだったと韓国の統合参謀本部が発表している。
  12. ミサイルの着弾地点は韓国と日本の中間海域で米空母USSカール・ヴィンソン、USSロナルド・レーガンの両空母打撃群が韓国海軍と共同訓練を数日前に終了した地点である。
  13. 「韓国側の理屈が理解できない」とダービン議員は述べた。「もし自分が韓国に暮らしていたら、ミサイル防衛手段はすべて導入してもらいたいと思うはずだ」■

6月8日北朝鮮が発射したミサイルの正体を推測する



今年4月15日の軍事パレードで北朝鮮が展示したロシアの3M24対艦ミサイルを元に北朝鮮が導入した装備。6月8日発射されたミサイルがこの同型の可能性がある。Source: KCNA

North Korea test-fires possible anti-ship missiles

北朝鮮が対艦ミサイル数発を発射した可能性がある

 Gabriel Dominguez, London and Neil Gibson, London - IHS Jane's Defence Weekly
08 June 2017

  1. 6月8日に北朝鮮が同国東海岸から対艦巡航ミサイルの一斉発射テストを行ったと韓国聯合通信が同国統合参謀本部(JCS)発表を引用して報道している。
  2. 「北朝鮮が種別不詳の飛翔体数発を東海(日本海)に向け発射し短距離対艦巡航ミサイルの可能性がある。発射地点は江原道元山市近郊」とJCSが発表し、飛翔距離は約200キロとした。
  3. JCS報道官Roh Jae-cheon大佐は報道陣にミサイルは北東方向に飛翔し最高高度2キロに達したと伝えている。発射時刻は現地時間06:18 で飛翔時間は数分とも述べている。
  4. CNNも大佐の発言を伝えており、「北朝鮮は各種ミサイルの運用能力とともに米海軍空母打撃群が合同演習を行う中で正確な艦船攻撃能力があると示したかったのだろう」と述べている。
  5. またCNNは四発発射と伝えている。
  6. 今回の発射で今年に入って北朝鮮のミサイル試射は11回になった。韓国の新大統領文在寅の就任後5回目のミサイル発射になった。
  7. 今回のミサイルは4月15日金日成生誕105周年記念パレードで目撃された対艦ミサイルと同型の可能性はある。
  8. 北朝鮮から最新の発射状況の写真が発表されておらず確認できていない。北朝鮮はミサイル発射の翌日に当日の写真を公表することが多い。■

2017年6月8日木曜日

これでいいのか、韓国がTHAAD展開を凍結


This handout photo taken on November 1, 2015 and received by the US Department of Defense/Missile Defense Agency shows a terminal High Altitude Area Defense (THAAD) interceptor being launched from a THAAD battery.THAADは5月から稼働可能になっている。 Image copyrightAFP/GETTY IMAGES

これはいかがなものでしょうか。自分が知らされていなかったからと装備展開に待ったをかけ、環境調査の名目で先送りにする。(一年後に撤去を主張するでしょう)中国の機嫌を取りながら国内世論の感情面も満足させる綱渡りに見えます。そもそも一年間も北朝鮮が待ってくれるのでしょうか。いかにも感情を重視する決定で、禍根を残しそうな「鶴の一声」だと思います

South Korea halts Thaad anti-missile system rollout

韓国がTHAADミサイル防衛装備の展開を凍結
 7 June 2017
韓国が物議をかもしたミサイル防衛装備の展開を一時停止し、韓国政府が環境影響調査を実施する
  1. THAADの稼働が一年先送りになる可能性が出てきた。
  2. 現地に到着したばかりの発射装置4基は展開されないと関係者が語っている。すでに設置済みの二基はそのままとなる。
  3. THAADは北朝鮮ミサイルからの韓国防衛が目的だが、国内と中国に批判が出ていた。
  4. 米国はすでにグアムとハワイに北朝鮮対応策として同装備を展開している。
  5. 大統領に新しく就任した文在寅の大統領府からは総合的環境調査が必要であり、結論が出るには一年かかると述べている。
  6. その間のTHAAD展開は凍結する。調査が不要とするだけの「十分な緊急性がない」ためだという。
  7. THAADの韓国内展開は前政権下で今年初めに始まっており、文大統領は「残念」と評していた。
  8. 今回の凍結決定は国防省がTHAAD関連情報を大統領に秘匿していたと非難された直後のことで、文大統領にTHAAD発射機4基の追加搬入の情報が軍から伝えられていなかったという。
  9. 国防省は米国との機密保護合意を順守する必要があったためと弁解している。
  10. 韓国国内の反対意見はTHAAD陣地が攻撃目標となり、近隣住民が危険にさらされるからというもの。中国は同装備の稼働で地域内安全保障のバランスが崩れると反対している。■



パイロットが語るレッドフラッグ演習の実態とF-35投入の意義



筆者はイタリア空軍でトーネードを飛ばしていたパイロットで、3,000時間の経験があるそうです。このたびThe Aviationist執筆陣に加わり今後が楽しみですね。

Red Flag Memories: Combat Pilot Explains How RF Has Evolved And Why The F-35 Is A Real Game Changer In Future Wars

レッドフラッグを回想して:戦闘機パイロットが演習内容の進化とともに将来の戦闘を根本的に変革するF-35の意義を説明
May 31 2017 -
By Alessandro "Gonzo" Olivares

 

  1. レッド・フラッグ(RF)は一部の批判筋が言うような「ジョーク」ではない。進化し続ける演習であり、最新シナリオを再現する場であり、第五世代機が成否のカギを握る。
  2. レッド・フラッグは世界有数の規模の空戦演習である。機材多数が投入される開戦直後10日間を再現している。友軍(青軍)が敵部隊(赤軍)に対決するシナリオでパイロットに実戦経験を与え技能を高める狙いがある。レッド・フラッグのモットーがうまくこれを表している。「戦いに備え訓練せよ、訓練は戦いだ」
  3. 筆者はRFに二回参加している。2002年にネリス空軍基地(ネヴァダ州)の「標準式」のRFと2010年はアラスカに飛び、レッド・フラッグ-アラスカを体験している。
  4. RFにはパイロットを現実シナリオに慣れさせるる効果があり、新戦術が生まれる場であり、テストされる場である。
  5. ネリスAFBから70機超の機体が離陸しているのは鮮明に覚えている。日替わりでテーマが代わり、地対空あるいは空対空、目標もROE交戦規則も変わる。RFは通常の大規模演習とは一線を画している。
  6. RF二回に参加したがシナリオは変化し続けていた。2002年の場合は念入りな準備があり、敵の位置やこちらにどう反応するか、脅威の場所等があらかじめ分かったうえで実施した。2010年には「国境線」シナリオで敵部隊が友軍の位置に混じっている場合や人口稠密地に入り込んだ場合を想定し、CDE(民間人巻き添え損害予測)が極めて重要となり、目標のVID(目視識別)やEOID(電子光学識別)が成否を握った。つまり8年でRFのシナリオが進化し、たえず変化していく「戦闘環境」に適合した形になった。
  7. 最近のRFはさらに変化を示している。
  8. 例としてRF17-1では2チームが戦闘状況ではなく「危機」想定で対峙している。シナリオで最新かつ高性能の脅威を想定しているので戦術面で変更が必要だけでなく、レベルを上げて「戦場情報管理」が重要になっている。これはF-35で実現できるかで論争を呼んだ部分だ。
  9. 今日のRFはパイロット、地上部隊、情報分析部門、サイバー宇宙部門の力を結集したテスト訓練作戦になっており、部隊はネリスからラスベガス北のネバダテスト訓練場にまで広がっている。
  10. 参加人員の目的はひとつ。一緒に作業し敵をFITS(見つけ、識別し、追尾して撃破する)することで多様な戦場状況で敵を攻撃することだ。これは実際に遭遇された場面を元に構築した筋書きで今後も発生するとみられる状況だ。これが最近のRFの中心であり、大きな変化の内容だ。
  11. RFでは敵役を20から25そろえる。機材のみならず地対空装備や移動目標や正体不明の装備もここに入る。これまでの固定的なシナリオが「動的」になりリアルタイムで「戦闘地帯」の調整が必要になっている。
  12. このため近年のRFシナリオの目標は各種戦闘力の融合に置いている。つまり、F-35が強固かつ「不詳の」敵地奥深くに侵入し、戦場の「全般統制」を提供する役目を担う。F-35や同様のセンサー融合機能がある機材は第4世代機を補完しながら情報を「プレイヤー」各機と共有しつつ自機の火力も提供する。
  13. ステルス性能を第五世代機の性能である情報管理能力と組わせるのがRFのミニ作戦演習で勝利を収める条件となる。
  14. 将来戦シナリオでは単一機能あるいは単一機材だけに頼っていては勝利はおぼつかないが、F-35は「戦闘環境」調整役として「戦いのやり方を根本から変える」存在であり、柔軟性、性能を新たに投入する以外に友軍の「残存性」を大幅に上げる存在だ。
  15. 「危機」状況では連合軍部隊は迅速に変化するシナリオに対応する必要がある。情報データを集め、管理し、提供するため RF 17-1 ではF-35が脅威の位置情報を集め、標的とし、必要な武装を(シミュレーションで)選択した。兵装すべてを使い果たしたF-35がそのまま現地にとどまり友軍機にライブで情報をLink-16で伝えた。
  16. ここに第五世代戦闘機の付加価値がある。敵目標を制圧しながら、味方の「旧式」機を助け空と戦場双方を制圧しておけるのだ。
  17. 戦闘機が攻撃任務をしながら戦術戦場統制を兼ねるの簡単な仕事ではない。ROE交戦規則やF-35と組むF-22の役割がどうであれ、20対1の撃墜率をアグレッサー部隊相手にあげたのは実に素晴らしい結果だといえよう。
  18. RF17-1を振り返ると(少なくともベテラン戦闘機パイロットからすれば)F-35が敵脅威上空を飛び、攻撃に成功しながら指揮統制任務をこなしつつ友軍機の攻撃を支援して傷一つなく帰還したのはすごいことだと思う。
  19. 筆者自身が参加した過去のレッドフラッグでは「通常」想定でかつ第五世代機は参加していなかった。ウィングマンとして筆者の役目はリーダーと一緒に目視を絶やさずにリーダーに追尾し空対空戦はリーダーにまかせながら無事TGT(目標)地点につけば、地形を利用して赤軍の探知を逃れることだった。わずか10年足らず前には友軍には高性能対空ミサイル陣地を攻撃できるF-35のような機材はなく、演習では長距離スタンドオフ兵器を装備した重度防衛拠点との交戦をシミュレートするに過ぎなかった。
  20. 新世代機の登場でこれが大きく変化した。第五世代機と飛ぶウィングマンは航空戦管理の役割を担い、戦場を「見る」ことができるが、F-15やF-16ではこれは不可能で、リーダー機がPGM精密誘導弾を地上に投下し、敵機と交戦する。
  21. 2002年には戦闘ではBVR視程外距離から距離を詰めてWVR視程内距離に入るのが大変だった。今日では敵もステルス戦闘機の所在を「推定で」知ることができるが、実際の位置はわからないし、どの方向に距離を詰めて標的に近づいたらいいかもわからないし、交戦にどうもちこむかもわからないのだ。
  22. まとめると第五世代戦闘機の真の付加価値は(RF実戦共に)情報提供能力であり、リアルタイムの戦場統制管理能力であり、動的なFITS(探知、識別、追尾、攻撃)で味方損耗と民間人巻き添え被害を防ぐことにある。■