2017年10月14日土曜日

☆SM-3でICBM迎撃は可能なのか、SM-6はどうか



ミサイル防衛にこれまで費やしてきた投資が真価を発揮する場面が本当にやってくるのか、興味津々というところですが、脅威は北朝鮮だけではないので、迎撃ミサイルも進化させていかねばなりません。日米の共同開発というのもこの国の皆さんはほとんど知らない話ではありませんか。米陸軍は今後ミサイル軍に変化していくのではないでしょうか

Aviation Week & Space Technology

Could SM-3 Interceptor Take On Intercontinental Ballistic Missiles?

SM-3迎撃ミサイルはICBMに有効に対応できるのか
As Pentagon adds dollars for missile defense, Raytheon pitches SM-3s as ICBM killers
ペンタゴンが追加予算をミサイル防衛に振り向ける中、レイセオンのICBMキラーとしてのSM-3売り込みに力が入る
Oct 10, 2017James Drew and Jen DiMascio | Aviation Week & Space Technology

  1. 北朝鮮が相次いで弾道ミサイルを発射し、ドナルド・トランプ大統領は8月にミサイル防衛に「数十億ドル」を投入すると述べた。
  2. 年末までに弾道ミサイル防衛体制の点検を完成する予定のペンタゴンは短期間で強化策の検討を求められている。大統領の力の入れ方による結果の第一段が姿を現しはじめている。議会は367百万ドルを他事業からかき集めミサイル防衛に投入する予算執行を承認した。
  3. この予算で移動式ミサイルへの対抗策を求めていく。とくに発射前に対応が肝要だ。このため戦闘機からのミサイル発射、艦船発射兵器または特殊部隊による攻撃まで検討する。またアラスカ州グリーリーにミサイル防衛サイロ20基を新設し、海上配備Xバンドレーダー改修やSM-3ブロック2A迎撃ミサイルの追加発射も行う。.
  4. このうちレイセオンがSM-3ミサイルの最新のブロック2Aバージョンに力を入れている。同ミサイルは日米共同開発で中距離・長距離弾道ミサイルを宇宙空間で破壊するのが目的で長距離ミサイル対応にも投入可能だ。
  5. 直径を21インチに拡大した同ミサイルは速力、射程距離、高高度性能が十分にあり、ICBM対応を狙う。ブロック2Aでは直撃破壊する運動性弾頭部分が大型化されており、光学シーカーは再設計迎撃体(RKV)の中心だ。2022年以降にアラスカの地上配備迎撃ミサイル(GBI)の旧型ミサイルと交代する。
  6. RKVを開発するのはボーイング中心のコンソーシアムでロッキード・マーティンやレイセオンもここに加わる。レイセオンによればソフトウェア修正をRKVに加えればSM-3ブロック2Aは十分にICBMに対応できる。
  7. 「RKVではアルゴリズムでセンサー性能の向上をめざしており、ソフトウェア、ファームウェアの問題にすぎません」とロンデル・ウィルソン(レイセオンの航空ミサイル防衛装備の主任エンジニア)は語る。「SM-3ブロック2Aでこれを実現し、ICBMキラーになります」
  8. SM-3ブロック2Aは米国が来年ポーランドで稼働開始するイージスアショアの中心装備となるレイセオンは同様の陸上施設がハワイの他米国本土の東西両海岸にも設けられミサイル攻撃に対する防衛の冗長性を実現するとみている
  9. SM-3ブロック2Aはテスト中ですでに初期生産に入っているレイセオンに対する主要サプライヤーが三菱重工業で第二段第三段ブースターとノーズコーンを生産している
  10. 同ミサイルは二回の飛翔試験に成功しており、2月には初の弾道ミサイル迎撃に成功した。だが二回目の迎撃テストは6月で失敗したのはUSSジョン・ポール・ジョーンズの乗員が誤ったボタンを押しミサイルが自爆したためだ。「ミサイルが原因でなかったと判明しています」(ウィルソン)
  11. レイセオンは大気圏内脅威にSM-6の活用を米陸軍に提案している。同ミサイルは米国で最長の飛翔距離を有する防空装備となり、イージス誘導ミサイル駆逐艦でも運用できるようになる。
  12. ディーン・ゲア(レイセオン陸上配備スタンダードミサイル事業部長)によればSM-6は対航空機、巡航ミサイルさらに艦船も標的にできるという。大気圏再突入ミサイルの弾頭部分も標的にでき、おとりが燃え尽きるのを待ってじっくりと本体を狙えるという。
  13. 「SM-3とSM-6には大いなる性能があり、陸上運用すればよいのではないかと考えるが自然でしょう。すでにイージスアショアとして存在しますが陸軍の既存装備との統合を実現すれば多層にわたる防衛体制が実現します」(ゲア)
  14. レイセオンはSM-6用発射装置で各種提案が出ており、M1120 HEMTT装備はロッキード・マーティンの高高度防空(Thaad)ミサイル防衛と共有できる。米陸軍の火器管制装備にはノースロップ・グラマンの統合ミサイル防衛戦闘指揮統制システムを採用している。
  15. レイセオンとしてはペンタゴンに同社の長距離レーダー装備も採用してもらいたいところで、ThaadシステムにはXバンドTPY-2、海軍向けに開発中のSPY-6対空対ミサイル防衛レーダーはSバンドを用いる。■

2017年10月13日金曜日

この謎の新型機はアヴェンジャーと関連があるのか


コメント:アヴァンジャーと似ているとは思えないのですけどね。別の意図があるのではないでしょうか。新しい機体が登場してくるのは航空業界の活性化につながりいいことですね。


Check Out Scaled Composites' New Exotic And Stealthy Test Aircraft

スケイルドコンポジッツから新型ステルス試験機が登場

A pair of the aircraft is destined for a undisclosed customer but the design sure looks a lot like a General Atomics' Avenger unmanned aircraft.

社名不明の顧客向けだが機体設計はジェネラルアトミックスのアヴェンジャー無人機に酷似
SCALED COMPOSITES
BY TYLER ROGOWAYOCTOBER 11, 2017

「開発最先端企業」と呼ばれる特化航空機設計企業すスケイルドコンポジッツScaled Compositesノースロップ・グラマン子会社)から新型有人テスト機が突如発表され、呼称はモデル401と控えめだ。
以下同社発表の報道資料から
「スケイルドコンポジッツが最新の実験機モデル401のロールアウトと初飛行をお知らせします。当社は顧客とともに二機を製作し、高性能低価格生産技術の実証に用い、機体を飛行技術調査用で業界並びに米国政府に提供します。二機は内容は同じ柄でプラット&ホイットニーJTD-15D-5Dエンジン推力3,045ポンドを一基搭載します。
「最高速度マッハ0.6で実用高度限界30千フィートで翼幅38フィート、全長も38フィートです。空虚重量40千ポンド最大離陸重量は8千ポンドで、最大三時間飛行が可能です。主任技術者アーロン・カセビアは『興奮している。スケイルドは実験機の最前線にあり今回その開発にたずさわれて幸運です。テストは今後も続けていきます』と語っており初飛行は一号機のテスト飛行開始を飾り、当社チームは今後も同機の性能限界を探っていきます。二号機も初飛行の準備中です」
機体はジェネラルアトミックスのアヴェンジャー/プレデターC無人戦闘航空機に酷似しているが機体寸法は半分に近い。そうなると同社が述べた顧客とはジェネラルアトミックスと思われるが確実なことはわからない。
GENERAL ATOMICS
Predator C/Avenger.

アヴェンジャーは国際商談があと一歩で制約しそうだ。インドが調達に前向きなためだ。同社はステルス性を一部省いて海軍の求める無人空母搭載給油機の競作に提案しているところだ。
有人機版を代理でテストに使えば無人機の実用性能を早く把握でき有利だ。言い換えれば有人機利用でテストを迅速に進め無人機だけの場合より早く技術開発できる。そうなるとジェネラルアトミックスはアヴェンジャー小型版をつくろうとしているのか。そのための有人代理機材なのか。
いいかえれば同機は低視認性機のテスト用なのかステルス性の中高度中程度滞空(MAME)の複製機でたまたまアヴェンジャーに似ているだけなのか。その他同社の機体がこれまでも同様にテスト用に投入されている。超小型のエアリーズと高高度飛行用のプロテウスだ。
同機の情報は入手次第公開していく。■
Contact the author: Tyler@thedrive.com
エアリーズ http://aviationintel.com/rutans-ares-emerges-from-paul-allens-hangar-at-kbfi/
プロテウスhttps://en.wikipedia.org/wiki/Scaled_Composites_Proteus

オーストラリアでF-35等の情報がハッキングされた


盗まれた企業の管理体制がずさんとはいえ、これだけ広範な情報をを系統的に盗むには国家支援が背後にあったと思わざるをえません。潜水艦技術をオーストラリアに渡さずに済んでよかったですね。


Top secret information about Australia’s military hacked

オーストラリア軍事情報がハッキングされた

AN INVESTIGATION into an Australian Defence Force hack has revealed almost anybody could have penetrated its securtiy due to a simple password fail.
オーストラリア国防軍関連のハッキング事件の捜査でパスワードの不備で誰でも侵入できる状態だったと判明
The F-35 Lightning, the Joint Strike Fighter.
The F-35 Lightning, the Joint Strike Fighter.Source:Supplied
Lisa Martin
OCTOBER 12, 20178:51AM

新型戦闘機、海軍艦艇、偵察機のトップシークレット情報がオーストラリア防衛契約企業から盗まれた。

サイバーセキュリティ担当国務相ダン・テハンが10月10日企業名不詳の契約企業がハッキングされたと認めた。

ハッカー集団は数か月にわたり機微情報をダウンロードし、オーストラリア軍用機、艦船、爆弾装備の情報を盗んでいた。

オーストラリア当局は該当企業の態勢を「ゆるすぎる」とし、事実以上誰でも社内ネットワークに侵入できたと評している。

ハッカー集団はまず同社のITヘルプデスクから12か月にわたり弱点を探ろうとしたが結局フロントドアから侵入している。

オーストラリア通信局(ASD)による捜査で同社がパスワードを変更していなかったと判明した。同社のウェブポータルに入る際の社内パスワードは「admin」でゲストのパスワードは「guest」のままだったという。

ASDは反攻の背後に外国の存在があったかを明らかにしていないが、テレビのメロドラマHome and Awayの登場人物にちなんでハッカーを「ALF」と呼んでいる。

ASDの緊急事態対応責任者ミッチェル・クラークは11日、ハッカー集団は航空宇宙技術の小規模企業、従業員50名程度を昨年7月に狙ったと述べている。同社は防衛契約では四次下請け企業だったという。

「侵入は広範囲かつ熾烈だった」とクラークは述べている。「F-35共用打撃戦闘機、C-130輸送機、P-8ポセイドン哨戒機、共用直接攻撃弾(JDAMスマート爆弾)他海軍艦艇数種が対象」クラークによれば漏えいした情報には新型海軍艦艇も含まれ、図面では艦長のすわる指令室の椅子もズームでわかり、航海図から1メートルの位置にあることもわかるという。

クラークは今回の漏えいは「ずさんな管理体制」が原因と述べる。同社にはIT担当は一名しかおらず、しかもその職務に短期間しかついていなかった。

オーストラリアサイバーセキュリティセンターの広報係からはASD職員が明らかにした情報の内容は民間経済上は機微性があるが機密情報ではないと述べている。「同社は国家安全保障ともむすびついた契約企業で今回漏えいした情報は民間では機微情報だが、極秘扱いではない」との声明を発表している。■

2017年10月12日木曜日

中国軍の装備開発状況をまとめた米調査委員会報告の抜粋


タイトルが内容とかい離していますが、米議会の調査部門はいい仕事をしていますね。議員がばらばらに調べるよりもプロのアナリスト部隊を抱えた方が効率がいいに決まっています。中国については米国も経験のしたことのない事態(ハイテク、サイバー、宇宙等)での対立を想定せねばならず決して楽しい仕事ではないのですが、避けて通れないでしょうね。一方で冷戦時の映画Red Dawn(ソ連が米国占領)のリメークをPLAを悪役にしたところ「自主的に」北朝鮮が米国を占領したとのプロットに変えた事例もあり、米国の自由を活用する中国の動きにはこれまで以上に厳しい目が寄せられていくでしょう。

 


World War III Deathmatch: China vs. America's Military (Who Wins?)


October 9, 2017


米中経済安全保障検討委員会U.S.-China Economic and Security Review Commissionが中国の高性能兵器開発に関する報告書をまとめている。
報告書は公開型式でオープンソースを使った評価を中国の特定兵器システムや技術分野に行うのが目的で、以下を重視しているようだ。
1.極超音速滑空体や超音速燃料ラムジェット搭載機も含む制御可能再突入体
2.高出力高周波兵器、高出力レーザー、粒子ビームによる衛星妨害を含む指向性エネルギー兵器
3.電磁レイルガン
4.対衛星兵器に加え宇宙空間での電子戦能力
5.無人装備、人工知能搭載兵器

報告書では中国の高性能兵器が米国にどんな意味を持つかさらに検討すべく、米国も対抗策や兵器開発の重要分野における対抗策で優位性を維持できるかを検討すべきとする。
米中軍事力整備競争
作業は議会関係者や政策立案部門に対し急速に進展中の中国の軍事近代化の内容を伝えることを使命とし、中国の次世代兵器体系整備の進展度に米国が懸念をいだいていることの裏返しでもある。一部報道では中国が極超音速兵器を開発中といわれ、実現すれば脅威の定義をひっくり返す効果が米水上艦艇など多方面に現れる。
中国が極超音速兵器の実験を行っていることは知られている。米空軍主任科学者ジェフリー・ザカリアス US Air Force Chief Scientist, Geoffrey ZachariasはScout Warriorに米国が極超音速兵器開発を加速化する必要について語っているのは中国の進展とペースを合わせる必要があると認識しているからだ。ザカリアスの説明では米側の努力は「階段を一段ずつ昇る」ようなもので極超音速飛行を実現してから極超音速兵器、極超音速無人機、最終的に再利用可能な極超音速機の開発を目指していると述べる。米国の目標は極超音速兵器の実用化を2020年代中頃、極超音速無人機を2030年代、再利用可能極超音速無人機は2040年代と目標を置いている。
さらに中国が対衛星兵器ASATのテストをしているへ国際社会の関心が高まっており、ペンタゴンや米空軍に衛星防護の戦略作りを急がせる圧力が増えて、センサー機能の冗長性やサイバー被害に対する強靭度を高めた指揮統制機能などで機能の維持が求められている。
中国の無人機開発、サイバー侵入行動さらに空母国産建造も米議会がこの報告書に関心を寄せざるを得ない背景理由だ。
さらに新型駆逐艦、揚陸艦、ステルス戦闘機、長距離兵器で中国の開発が進むのも米国には脅威と映るし、世界規模の作戦展開能力を整備しているのも同様だと同委員会はこれまでの報告書を通じ指摘している。
2016年版の委員会指摘内容は
2016年度版の米中経済安全保障検討委員会報告では中国が兵力投射能力を世界各地に展開する演習を行っていると指摘している。
報告書では中国が活発な軍事行動を示した例を列挙している。
- 2016年5月、人民解放軍空軍戦闘機編隊が危険な迎撃飛行を米軍EP-3にしかけてきたためEP-3は急降下し空中衝突を避けた
-  2013年、PLA海軍艦船が米誘導ミサイル巡洋艦カウペンスの進行方向を横切る操艦をしあっため巡洋艦は慌てて進路変更で衝突を避けた
- 2009年米海軍所属インペッカブルが海上民兵の小舟艇多数に南シナ海でいやがらせをうけた
- 2001年、PLA海軍戦闘機が米海軍EP-3偵察機と南シナ海上空で空中衝突した
さらに南シナ海の島しょ部に地対空ミサイルや戦闘機を配備したことと「航空排他圏」を一方的に宣言しているのも中国の挑発の近年の例だ。これに対し米軍はB-52爆撃機に上空飛行させ誇示したが、改めて中国の強硬な態度を浮き上がらせた。また中国の「陸地造成」と領有権主張が南シナ海で進み、米国も「航行の自由演習」で中国の主張に対抗している。
地球規模で兵力を展開することで中国が影響力を行使することに対して議会報告書は世界各地での中国演習の実施状況をまとめている。
- 2012年、中国は初の国連平和維持部隊として実戦部隊を南スーダンに送りPLA工兵隊医務部隊を護衛した。
- インド洋での展開として2014年初頭に中国水上艦艇が遠征訓練を行い、途中南シナ海を通過し、インド洋東端に到着してフィリピン海経由で帰国した。23日間の展開でPLA海軍は対潜、対空、電子の各戦闘訓練とともに補給活動を試した。
- アデン湾で海賊対策を続ける一方で中国は情報収集艦をインド洋に2012年派遣し、潜水艦四型式(原子力、通常動力双方)もインド洋に展開した。
2016年度版報告には中国の軍事近代化をとくに述べた章があり、艦船、兵器、航空機の改良や新造に頁を割いている。
米軍の世界的展開力に匹敵するだけの実力を中国が手に入れるには今後数年にわたる努力を怠れないとの指摘もある。
「各種作戦の支援、継続、防御のためPLAには大型揚陸艦、大型輸送機、兵站支援能力の整備に加え指揮統制能力の向上が欠かせない」
中国海軍
中国海軍の技術水準は米艦船より劣るものの、今後数十年以内に差は埋まるとみられる。中国が次世代ハイテク艦船や兵器等海軍装備の整備に向かっているためだ。
中国海軍の戦闘艦は2020年に351隻にする計画があり、地球規模での攻撃能力の整備を目指している、というのが報告書の指摘だ。
2014年度版報告では議会への提言として米海軍が建艦数を増やし太平洋地区でのプレゼンスを確保するのが望ましいとしたが、米海軍はすでにこの方向で作業を開始している。
ただしこの戦略への反対者は米海軍に空母11隻があるが中国の唯一の空母は空母運用航空戦力が劣ると指摘していている。それでも中国は国産空母の連続建造を開始しているが。
今後を展望すると2016年度版報告では「将来の中国空母は米空母と同様の艦容となりPLA海軍は艦載機に重装備を積み対艦、対地攻撃を行うだろう。DODは中国は15年以内に空母を5隻建造し、全6隻体制にするとみている」
委員会では中国が開発中の艦および兵装システムで米空母・水上部隊の活動で戦略構図が変わるとしている。
そこに加わるのが旅洋III級新型駆逐艦で今年就航するとみられる。同級は垂直発射式長距離対艦巡航ミサイルを運用し、HHQ-9対艦ミサイルは長距離射程が特徴だと委員会は指摘している。
同級は多用途駆逐艦として空母護衛にあたると見られ、米海軍が空母打撃群に駆逐艦を随行させているのと同じだ。
「排水量8千トンの旅洋III級はフェイズドアレイレーダーと長距離SAMで地域大の防空能力を実現する」と2016年度版報告が指摘する。
中国は空母運用に新型戦闘機をJ-15の名称で開発中だ。
揚陸強襲艦として中国は玉昭YUZHAO級LPDの建造を続けており、各艦800名ヘリコプター4機さらに装甲車両20台までを運送できる。
「玉昭級はエアクッション揚陸艇4隻も運用でき兵員を長距離展開できることからDODは中国海軍がこれまでより遠距離へ作戦展開する能力が実現したことに注目している」
さらに野心的な次世代揚陸強襲艦の建造を狙っている。「玉昭級を上回る規模の揚陸強襲艦の建造を目指し、飛行甲板でヘリコプター運用を狙う。081型は4隻から6隻の建造となり、兵員500名をヘリコプターで運ぶ強襲作戦用だ」とあるが米海軍の最新鋭ハイテク艦アメリカ級揚陸強襲艦の実力には及ばないと見る向きもある。
055型巡洋艦は対地攻撃ミサイル、レーザー、レイルガンを搭載すると報告書は指摘。
水上艦艇を補完するのが少なくとも60隻あるといわれるHOBEI紅稗型誘導ミサイル艇であり今後就役するJIANGDAO江島級軽フリゲート艦だ。
委員会は中国の軍事近代化で攻撃型潜水艦、核ミサイル潜水艦SSBNにも注意を喚起している。中国のSSBNはJL-2核ミサイルを搭載した哨戒に出ており、射程は4,500カイリに及ぶ。さらに長距離のJL-3の搭載をめざしていると報告書は指摘。
委員会が中国の軍事支出の総額を把握するのは困難と認めているが、2014年時点で1,310億ドルと見られ、対前年比12.2%増だった。この規模は米国防予算のほぼ六分の一だ。中国国防予算は1989年以来二けた増を続けており、2008年比で二倍になっている。
米議会には前下院軍事委員会シーパワー・兵力投射小委員会委員長だったランディ・フォーブス議員(共、ヴァージニア)のように米海軍拡張とともに中国に厳しい態度に出るべきと主張する向きがある。
中国空軍
米空軍の中国に対する航空優勢は急速に減少しており、中国の空軍力の近代化がそれだけ早いことを意味する。戦闘機、ミサイル、空対空装備、輸送機、ステルス機が目立つとペンタゴンはじめ関係者が見ている。
2014年版報告書の提言は外部審議会を設け米中軍事バランスの評価とともに米軍事構想と予算規模に関する提言を募れというものだった。2014年の時点であるが、報告書は詳細かつ洞察力に富んだ指摘を中国空軍の技術水準、進展、開発ぶりにあてていた。
委員会は報告書作成にあたり各種証言、他の報告書、分析内容の他各種オープンソース情報を活用した。
報告書によれば人民解放軍に配備されている作戦機は2,200機でうち600機が新鋭機材とされる。
「1990年代初頭の中国にはPLA空軍を短距離防空専用の存在から多用途部隊として兵力投射用の航空戦力に変貌させる構想があった」と報告書は述べている。
ステルス機について報告書はJ-20試作機の飛行について述べ、同機はアジア太平洋地区でずば抜けた高性能機と評している。中国はJ-31のテストも続けているが、その用途は依然不明だとしている。
瀋陽J-31ステルス戦闘機が珠海航空ショーに展示されたのは2014年であるが、同機が米F-35に匹敵する性能を秘めていると断言できる専門家は多い。
それでも米技術の優位性は急速に失われつつあると指摘し例として報告書では米中の戦闘機を比較した専門家の所見を引用し、20年前と今日を比較している。
1995年のハイテク米戦闘機F-15、F-16やF/A-18の優位性は中国のJ-6に対して圧倒的だった。しかし今日ではJ-10やJ-11はほぼF-15に匹敵する実力があると報告書は指摘。
しかもJ-10、J-11にとどまらず、中国にはロシア製Su-27やSu-35があり、さらに新型Su-35もロシアから購入する一歩手前だとする。
「Su-35は強力で高性能機で航続距離、燃料消費で大きな進歩を遂げている。これで中国は台湾海峡での航空優勢を確保しながらリバースエンジニアリングで同機の部品装備を自分のものにするだろう。とくに高性能レーダーとエンジンがねらいのはずで、今後の中国国産機に流用するはずだ」
ステルス技術、ハイテク機、高性能エイビオニクスに加え中国は空対空ミサイル技術でもこの15年で飛躍的な進歩を遂げたと報告書は指摘。
「2000年時点で中国戦闘機はすべて有視界範囲でしかミサイル運用できなかった。それが15年で高性能短距離中距離空対空ミサイルを実用化し、精密誘導弾は全天候衛星誘導方式で放射線追尾型ミサイルもあり、レーザー誘導爆弾も加わった。さらに長距離高性能航空機発射式対地攻撃巡航ミサイル、対艦巡航ミサイルもある」
報告書が注目するのはY-20新型戦略輸送機だ。テスト中だが米空軍のC-130の三倍の空輸能力を誇る。空中給油機に改装すれば空軍機の活動範囲が飛躍的に伸び、空中兵力投射能力がさらに遠距離で実現する。
現時点での中国には近代的な給油機はそろっておらず、機材も空中給油能力を前提にしていないものが多い。到達距離に限定が生まれている。
「PLA海軍の初の空母航空戦力が実戦化するまでに空中給油機で中国本土から離れた地点での運用能力確保が必要だ。現在は給油機として1950年代のH-6U給油機が12機あるに過ぎない。これでは作戦支援の継続は無理だ」
報告書ではロシア報道を引用しロシアが新型S-400地対空ミサイルの中国向け売却を承認したと指摘している。
「売却交渉は2012年以降続いていた。S-400で中国の防空範囲は現行の125から250マイルが倍増し、台湾全土もカバーできるほか、尖閣諸島や南シナ海一部も同様だ」
報告書ではカタログ情報だが中国の核兵器、長距離大陸間弾道ミサイルで運用中のDF-31、DF-31Aに加えDF-41の開発が始まっていると指摘。
道路移動式ICBMも運用中だが、DF-41は再突入体を10個搭載すると専門家はみている。■
This first appeared in Scout Warrior here.

米海軍向け無人給油機MQ-25の競争提案仕様が各社に開示された模様


これも無人機の話題です。(当ブログではドローンという言い方はしていません。もともとドローンを多用したのは当方が嫌うヒラリー・クリントンでしたので)ジェネラルアトミックスはプレデターのジェット化アヴェンジャーを原型に迅速に実現できる案を考えているようですね。ところで前回の記事にでX-47Bが旧称MQ-25aだったとのキャプションがありましたが本当なのでしょうか。海軍でも混乱があったのでしょうか。それにしてもスーパーホーネットの相当数を給油機に使って飛行時間を消費するのは本当にもったいないですね。


Navy Releases Final MQ-25 Stingray RFP; General Atomics Bid Revealed

米海軍がMQ-25スティングレイ最終仕様書を交付開始、ジェネラルアトミックス提案内容が公開されています


Artist’s Concept of the General Atomics MQ-25 Stingray. GA Image used with permission

 By: Sam LaGrone
October 10, 2017 5:51 PM


  1. 米海軍航空システムズ本部(NAVAIR)がこっそりと無人機MQ-25スティングレイ給油機の仕様を業界に伝えていたことをUSNI Newsがつかんだ。
  2. 海軍は先週にRFPをロッキード・マーティンボーイングノースロップ・グラマンジェネラルアトミックスの四社に渡し来年9月予定の契約交付に備えた対応をはじめたとNAVAIR広報官がUSNI Newsに伝えてくれた。
  3. 海軍はF/A-18E/Fスーパーホーネットに給油機の役割も与えて飛行時間を使っているが負担軽減のためにも無人給油機の早期投入を急ぎたいところだ。スーパーホーネットの二割から三割が空中給油ミッションに投入されている。
  4. 海軍はまだ新型無人機の最終目標を明らかにしていないが、基本要求では空母から500カイリ地点まで進出し15千ポンドの燃料補給を想定している。
  5. 「MQ-25は航空部隊の飛行距離を300から400マイル延長する。これで遠距離で相当の機数を展開できる」とエアボスのマイク・シューメーカー中将Air Boss Vice Adm. Mike Shoemakerは9月号のproceedings誌上で語っている。
  6. 現在のスーパーホーネットの有効戦闘半径は450マイルほどだがMQ-25はこれを700マイルに延長する。
  7. 先の四社のうち、ジェネラルアトミックスがまっさきに構想案を発表している。
MQ-25 model. USNI News Photo

  1. 同社の構想は主翼胴体尾翼で構成され同社のアヴェンジャーの特徴を共有しターボファンエンジン一基でV字型尾翼が特徴だ。同社からUSNI Newsが入手した構想図ではD-704標準型バディタンク給油システムを採用しているのがわかる。
  2. 同社もまだ手の内を明かしたくなく詳細は触れていないがGA案の特徴については別だ。同機には電気光学式ボールが同社のMQ-1プレデター、MQ-9リーパーUAVと同様に搭載されており、降着装置は機内に格納されるのはまるで懐かしいS-3ヴァイキング対潜哨戒機を思い起こすものがある。また飛行甲板上の取り回しを考え、飛行要員が示すジェスチャーを認識させる機能を考えていると現在はジェネラルアトミックス(GA)で働く退役少将テリー・クラフトretired Rear Adm. Terry KraftがUSNI Newsに説明してくれた。
  3. 空母運用に特化した機能以外にGAは将来の拡張性も確保している。
  4. 「将来の武装搭載案もあり、ISR能力の搭載も想定していますよ。海軍からレーダー搭載の可能性で打診もありましたが、レーダーは論理的な選択でしょうね。UAVはつまるところトラックなんですから」とクラフトは語っている。■

2017年10月11日水曜日

★★★真偽は?日本もUCAVを開発していた



日本にもブラック事業がある(あった)のでしょうか。映像公開したのは機密解除になったのか、事業がもっと先に進んでいるからでしょうか。各務原での目撃がないことから別の場所で秘密裏に開発されたのでしょうか。川崎重工関係者は口がさけても語れないと思いますが、事実なら日本もUAV-UCAVを開発していることがわかりますね。判断は読者の皆さんにおまかせします。


This is the combat drone Japan has been building in secret


これが秘密裏に開発していた日本の戦闘無人機だ


川崎重工ブースのビデオでUCAV試作機の飛行状況を写していた (Photo by Harold Hutchison)
By Harold HutchisonOct. 06, 05:10 AM

  1. 無人戦闘航空機、つまりUCAVはこれからの軍事航空のカギを握ると言われる。米国、ロシア、フランスが開発中と判明している。
  2. だが本誌We Are The Mighty (以下WATM)はこのたび日本も秘密裏にUCAV開発を進めていたことを知った。
  3. ワシントンで先ごろ開催された空軍関係のイベントでWATMは川崎重工業のブースでビデオ画像を見た。それは同社によるUCAV研究開発の様子で、画像内のUCAVはボーイングX-45やノースロップ・グラマンX-47に似ているようだった。
  4. 会場で詳しく聞こうとしたが、同社係員が日本政府の意向だとしてやんわりと断ってきた。翌日も別の係員はこの件は存じていないと答えてきた。
  5. 結局三番目に会った川崎重工の小林タクミ氏が「試験機で10年近く前のもの」とし、「防衛省予算による実験事業だった」と説明してくれた。同氏はさらにメールで「2008年ごろのプロジェクト」と述べている。
  6. WATMが当時空軍の筆頭参謀次長として情報監視偵察分野を担当し現在は航空宇宙研究にあたるミッチェル研究所の所長をしているデイブ・デプチュラ退役空軍中将に日本がUCAV開発をしていた事実を知っているか聞いたところ、即座に「知らない」との答えが返ってきた。
  7. このことから日本のUCAVは秘密のベールに隠されていたことがわかり、F-117ナイトホークなど米国のブラックプロジェクト並だったようだ。


川崎UCAVの別の画像。メリーランド州ナショナルハーバーで開催された2017 AirSpaceCyber expo会場にて。(Photo by Harold Hutchison)
  1. 秘密扱いの理由や川崎重厚がUCAVについて語りたくない理由が日本国憲法第九条なのは明らかで、「日本国民は国家主権としての戦争を永久放棄し、国際紛争の解決方法として戦力の利用や脅威は行わない」とし、さらに「陸海空戦力その他戦闘手段は保有しない」と述べている。
  2. この条項により日本はひゅうが級・いずも級軽空母を「ヘリコプター駆逐艦」と呼称している。イタリアのジュセッペ・ガリバルディは10,500トンとひゅうがの19千トンより小規模だが、空母としてAV-8B+ハリヤーを2011年のNATOによるリビア介入時に運用していた。
  3. では川崎のUCAVはこの制約にひっかかるのか。X-45やX-47に驚くほど似ていることから今日のUCAV技術により防空任務より攻撃能力を充実させる方向に進んでいることが想起される。.
  4. GlobalSecurity.orgによるデータベースによれば基本形X-47にはペイロード搭載能力がなかったがX-47Bには兵装庫ふたつで4,500ポンドの装備を搭載していた。計画だけに終わったX-47Cはさらに10,000ポンドまで拡大するはずだった。
  5. WATMは防衛省にも本件を照会したが返答がない。ワシントンの日本大使館からは回答があった。自衛隊がUCAVを保有したことがあるのかとの問に「自衛隊はUCAVの取得、運用を今のところ想定していない」ととのことだった。■

2017年10月10日火曜日

再び大規模戦力の衝突に備えようとする米陸軍の新指導方針


16年も小規模戦闘、対テロ作戦に忙殺されているうちに世界が変わってしまい、あわてて米陸軍が新環境に適応しようとしています。中国やロシアを相手にした大規模作戦を再び想定するわけですが、湾岸戦争のような圧倒的な戦勝を得るのは難しいと覚悟しているのでしょうか。

Army to Unveil New Major Land War "Operations" Doctrine

米陸軍が発表予定の新作戦方針は大規模会戦を想定

Scout Warrior - Oct 4, 10:53 PM



  1. 米陸軍はまもなく「FM3.0作戦」構想を発表し、将来の大規模機甲部隊の衝突に米軍と同等の戦力を有するロシア、中国を想定し陸軍の体制を整え、米軍の優位性を守る。
  2. 陸軍内で将来の脅威対象の検討が続いており、陸戦環境の変化を念頭に上層部は全地球単位の状況変化のため陸軍も運用構想を刷新する必要が生まれたと語っている。
  3. 新規の「作戦」構想は米陸軍協会年次総会の席上で発表される予定で、現行の「FM3.0完全版」を補足する。FMとは野戦マニュアルの略で数年前に初版が発表された。.
  4. 新編の著者によれば3.0の内容は大部分維持しつつ、一部を改定・追加したという。FM3.0が編纂されたのはロシアのウクライナ攻撃前であり、米陸軍はアフガニスタンにかかりきりで、南シナ海の緊張は表面化していなかった。リッチ・クリード大佐Col. Rich Creed(フォート・レヴンワース駐屯混成部隊指揮官)がScount Warrior独占インタビューに答えてくれた。
  5. 「陸軍は大規模戦闘でほぼ同格の敵と地域規模での作戦実施に備える必要がある。想定シナリオは以前とは大違いだ。過去の作戦構想から教訓と経験を抽出しているが、大規模陸戦実施にはしっかりした戦術と手順が必要だ。実情に応じ指導原則も変更していく」
  6. クリード大佐の説明では新規構想は2011年から2012年にかけて編纂された合同陸上作戦構想からの自然進化であり、冷戦時代の戦略構想「エアーランド航空ー陸上」バトルとして西ヨーロッパを守るため航空攻撃を陸上戦力を組みわせ実施する案も見直すという。
  7. 「エアーランドバトルはヨーロッパでの大規模陸上戦を想定しました。大国同士が大規模戦力で衝突する構想でした。現在でも米国は唯一の超大国ですが世界には大幅に戦力を向上させている勢力があります。いまや脅威の種類から作戦で一つだけの想定が許されない状況です」
  8. エアーランドバトルは米陸軍の大規模部隊を大規模空軍力の支援のもとフルダ峡谷経由で強襲させる構想だった。
  9. 別の米陸軍高官敵側が1990年代初頭の「砂漠の嵐」作戦の戦術、技術をつぶさに学ぶ中がScout Warriorに新「作戦」構想はどうしても必要だと語っている。
  10. 「砂漠の嵐で世界にエアーランドバトルの実情を示しました。それまでは想像の世界だったものを現実に見せてしまった。各国は米軍を研究している」
  11. クリードは新構想は将来と現在の脅威を想定したとし、北朝鮮、イラン、ロシア、中国の名をあげている。
  12. これから登場する「指導」原則ではゲリラやテロ戦闘員の脅威も国家単位、非国家勢力から今後も続くと想定しているが、強力な戦力を有する敵国相手のハイテク戦闘環境への対応を強調した内容になっている。
  13. 強力な敵国には空母、ステルス機、次世代戦車、極超音速兵器、無人機、長距離センサー、精密誘導技術もあり、米軍の側で戦術を適正に変えないと急速な変化に対応できなくなる。
  14. 例としてロシア、中国はともにステルス代後世代戦闘機、電子戦能力、防空体制を進化させており、以前より広範囲の周波数による長距離航空探知が可能になったと主張しており、長距離精密誘導兵器には米空母を900マイル先から狙えるDF-21D(中国)があり、米軍が従来のように自由活動できず、兵力投射も十分に行えない地点が生まれる新たな脅威を示している。
  15. 地上戦の新規構想では米陸軍は長距離陸上配備精密兵器を有する唯一の存在ではないことを前提にしている。JDAMやGPS誘導兵器は湾岸戦争時にすでにあったが、陸上配備の精密兵器として155㍉GPS誘導エクスキャリバーがあり30キロ先を狙える火砲がこの10年で登場している。精密誘導陸上火砲は他にも保有する国が現れている。
  16. さらに陸軍のGPS誘導ミサイル同時発射装備Guided Multiple Launch Rocket System (GMLRS) は70キロ先の敵軍を破壊できる最新装備であるが同様に敵国になりそうな勢力が同様の兵器を投入し始めている。
  17. 無人機では陸軍にシャドーやグレイ・イーグルがあるが、同様に多数国が類似装備を導入しており、高度脅威の高度技術が世界で生まれている。
  18. こうした高性能兵器の登場で新構想を練る必要が生まれ、新戦術や構想、戦略や戦闘方法を新たな作戦環境に適応させるのだ。その一環にジャミング戦術やセンサー機能の充実があり、サイバー攻撃や長距離精密兵器も拡充させる必要がある。
  19. 世界各地での脅威の高まりに呼応して米陸軍は新技術を盛り込んだ次世代装備の充実を図る一方で主要装備の性能向上も目指している。例としてエイブラムズ戦車、ストライカー装甲車、パラディン、ブラッドレー戦闘車両がある。エイブラムズではハイテク性能改修で、今後登場するロシアのT-14アルマータ戦車や中国の99式主力戦車を凌駕する存在になったと開発担当者は述べている。
  20. 米陸軍の現行教則である野戦教本3.0 では「全面対応」作戦として非国家勢力の脅威対抗も含めている。また「全政府対応でテロ対応、合同作戦、安定化作戦と合わせ将来に予想される進展に対応する」とある。
  21. 全面対応とは陸軍作戦に心理戦、人道援助作戦、非対称戦、訓練装備整備を含めるとともに同盟国との協調体制を維持しやあらゆる戦闘の可能性に備えることを意味する。
  22. イラク、アフガニスタンでの作戦が減少してきたため、米陸軍は訓練の主眼を機械化戦や大規模な直接対決に移し、これまで15年間を対ゲリラ戦に費やしてきた流れから脱しようとしている。ここでも新しい教導方針の注力点が見られる。
  23. これまでのFM3.0完全対応版でも最新の脅威として「ハイブリッド戦」などへの対応も盛り込まれているが相手国が整備中の装備がどこまでの内容になっているかまでは認識が十分でなく、米国装備と同等なのか優れているのかまで言及していない。
  24. ISISや国家支援を受けたテロ集団のハマスやヒズボラではテロ戦闘員特有の戦術に高性能兵器が加わり、高度センサーや監視ネットワークに加え、対戦車誘導ミサイルのような精密兵器も見られる。このように混在した脅威のため各種兵器や対テロ戦術を随時組み合わせるのが米陸軍が想定するシナリオの一部だ。
  25. 新教本では急進展を見せるペンタゴン戦略を「マルチドメイン」戦として取り込んでいる。これは敵戦術に新技術が加わってきたことで各軍横断的に多様な舞台での対応が必要との認識から生まれた構想だ。
  26. 主眼はサイバー、電子戦、精密兵器、宇宙空間、無人機、C4ISRの各ドメインにある。各分野での急速な進展により各装備横断的な接続による戦闘の重要性が浮かび上がっている。例として艦載F-18により陸上砲兵部隊が通常は不可能な長距離での目標捕捉情報を得ている。
  27. 「宇宙やサイバー作戦能力は地理条件とは無関係でむしろ無限の距離で作用する機能です。司令部はこのような作戦実施も考える必要があるのです」(クリード大佐)
  28. マルチドメイン戦の例に陸軍による海上戦対応があり、陸上配備ロケット砲で敵艦船の攻撃を想定している。陸軍が進めているのはペンタゴンの戦略装備整備室とともにATACMミサイルセンサーで海上移動する敵を有効に攻撃することだ。
  29. 構想が重要になるのは敵側が米軍の統合作戦を妨害あるいは分断摺る能力を整備してきたためだ。
  30. 背景にはジャミング戦術が各地で広がってきたこと、高性能センサーやサイバー攻撃さらに長距離精密攻撃兵器の普及がある。
  31. 大規模かつ全面的な陸上戦闘への関心は当然としても新構想では緊急対応にも言及しシナリオや戦略には武力を使わない場合もあるとクリード大佐が説明してくれた。■
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Author - Kris Osborn