2018年6月9日土曜日

北朝鮮侵攻作戦シナリオの最新検討内容から見えてくるもの

いよいよ迫った米朝首脳会談が吉と出るか凶と出るか世界が注視する中、シンクタンクRANDコーポレーションがウォーゲームで北朝鮮との開戦シナリオを検討し驚くべき結果がでました。しかしホテル代もなく、自国機材で会場移動もできない国がここまでこけおどしで各国をさんざん振り回したことの落とし前はどうつけたらよいと皆さんは思いますか。


A New Study Says a War with North Korea Could Be Hell (And Start a U.S.-China War) 北朝鮮との開戦になればこんな惨状になるとの新規検討内容が出た(米中開戦にもつながる可能性)


June 8, 2018


朝鮮と開戦になれば米軍は数々の問題に直面することがRANDコーポレーション実施の一連のウォーゲームで判明した。
北朝鮮へ進軍し金正恩の核兵器撲滅あるいはソウルを狙う砲兵陣地を制圧しようとすれば米軍韓国軍兵力を薄く延ばすだけではなく、中国の軍事介入のきっかけになりかねない。
今回のRAND研究では米軍特に発注元米陸軍の実戦能力に中心をおいた。北朝鮮の核兵器による脅威、北朝鮮通常戦力の実効力、北朝鮮外交による課題、さらに北朝鮮核兵器の制圧がどうなるかを北朝鮮体制崩壊、さらに国内が内戦状態になる場合を想定して検討している。
「北朝鮮各地に点在する核兵器を捜索制圧する兵力が足りませんしその他にも戦後処理あるいは政権崩壊シナリオでの各種ミッションでも人員不足です。さらに完全に任務を行うためには迅速に北朝鮮へ進軍する必要がありますが、これを行う能力がありません」とRAND研究員マイケル・マザーがNational Interestに語っている。
このうち核兵器について同報告では核兵器保有量が大きいため北朝鮮侵攻制圧が事実上不可能と指摘する。「5年から8年で北朝鮮がさらに核兵器製造に向かえば攻撃を受けても十分な核兵器を温存し、北朝鮮侵攻は画期的な核兵器対策手段が生まれない限り高くつく選択肢になる」とし、米政策の方向如何にかかわらず日本、韓国は北朝鮮による核報復攻撃の可能性により政策の幅を狭められる。
北朝鮮砲兵隊(1万門もの火砲があると伝えられる)でソウルが火の海になるとの脅威についてRANDでは空爆ないし砲撃により火砲をノックダウンする、または限定的国境線内侵攻作戦でケソン高地を制圧し火砲を破壊する作戦を検討した。空爆・砲撃攻撃では重度に防御された火砲の制圧に数週間かかる一方で地上侵攻は北朝鮮の核兵器投入のきっかけになりかねないとわかった。
大きな問題は限定的にせよ地上侵攻するには大規模兵力が必要なことで韓国陸軍二個軍団を想定している。また韓国がこの兵力を維持できるかも疑問だ。「今回のウォーゲームでは開戦後一週間で一個軍団が殲滅される犠牲が発生してやっと一か所から侵攻に成功という異例の結果になり、死傷者数万名ということになった」とRANDは記している。「これだけの死傷者規模となると韓国軍のその後の作戦に支障が出るはずで、南北統一やWMD拠点制圧が困難になる」
今回の結論はシナリオから得られたもので重装備防衛の狭い地点を攻撃しながら北朝鮮は化学兵器で防戦しており、ウォーゲーム関係者は「韓国軍は消耗してやっとケソン付近に侵攻するのがやっと」だと分かったのだとマザーは言う。「それでもROK(韓国)にはまだ余力が残りますが、防衛線制圧には足りません。大規模作戦の視点から見ればこれは高く評価できない内容です。個人的な感想ですが、ROKは平壌進軍の前に立ち往生してしまうと思います」
北朝鮮核兵器の制圧に関してはRANDは数種類のウォーゲームを実施しており、前提は金正恩死亡後に米軍が北朝鮮各地に進出し核兵器を確保するが、北朝鮮内部は内戦状態になっているというもの。だが毎回のゲームからわかったのは北朝鮮指導部の後継者は政治権力基盤として核兵器の掌握に動くはずで同時に核兵器を秘匿しようとすることだ。空軍力だけで全部を破壊しきれないのはイラクでのスカッド狩りの事例からもあきらかだ。
「米国・ROK両国が核兵器を捜索できなくするため北朝鮮は簡単に核や核物質を隠すことができるというのは驚き」とRANDでゲーミングを担当するステイシー・ペティジョンがNational Interestに感想を述べている。
金正恩体制を転覆すれば事が終わると信じる向きには今回のRAND報告書を見てもらいた。「毎回のウォーゲームで少なくとも一回は北朝鮮が核兵器を投入してきた。米国にとって北朝鮮核兵器制圧は限定ミッションとの観があるが、北朝鮮内勢力の役をしたウォーゲーム関係者は米国の介入は南北統一の前兆ととらえる傾向があり、北朝鮮国体への脅威と見ることがわかった。このことから体制保持の最終保証手段樽核兵器を使わないと敗戦するとの見方につながった」
さらに中国の問題が加わる。RANDウォーゲームでは中国軍が北朝鮮国内に侵攻し中国北朝鮮国境地帯を制圧したほか、北部の核関連施設も確保している。さらにケソン高地の砲兵部隊制圧で米韓地上部隊が展開すると中国国境への数少ない侵攻経路にもつながる。1950年に同じ状況が中国を刺激し中国軍が大量展開したが、同じ状況の再発可能性がある。
ただし、マザーは実際の展開は状況により大きく変わると釘をさす。「今回のゲームでの中国の動きから見えてきたのは中国政府は米朝対決からなるべく距離を置いておきたいと考えることです。中国としても影響力を増大させながら状況を追い求めていくはずなので重要な段階で自国の立場を弱める選択はしないはず。そこでもし北朝鮮がソウルを砲撃した場合にケソン高地制圧作戦の実施に移っても中国がおじけつくことはないはずです。ではこちらから先制攻撃し北朝鮮が反撃を迫られる状況の場合はどうなるでしょうか」■
Michael Peck is a contributing writer for the National Interest. He can be found on Twitter and Facebook.

Image: Flickr

2018年6月7日木曜日

F-35は現代によみがえったF-4になれるのか---ステルス機の想定する空戦とは

 


Could the F-35 Stealth Fighter Be the 'New' F-4 Phantom? F-35ステルス戦闘機は現代版F-4になれるか




June 2, 2018


矛盾する洞察が一般通念から生まれることがある。私たちは過去を忘れた挙句再び過去を繰り返す運命なのか。それとも次の戦争の姿を理解できずに前回の戦争のイメージで準備をするのが常なのか。

軍事戦略の視点では作戦上の経験から学ぶことがこれまでは重要とされ、将来の戦闘は過去と同じ形になるはずとされてきた。このことから米軍の三軍および少なくとも九か国が問題のある装備を大規模導入しようとしている。

多用途機材をめざしたF-35はその前に配備された第四世代機より鈍足かつ操縦性が劣る機材で、制空任務が主眼のF-22ラプター・ステルス戦闘機にも劣る。空対地攻撃に中心をおいたライトニングは機動性が優れた敵戦闘機に対して視程外距離beyond visual range (BVR)から空対空ミサイルで勝利を収める構想で視程内距離within-visual range (WVR)のドッグファイトは探知されやすく操縦性も劣るため避ける必要がある。

ただしこういうと米軍がF-4ファントムがヴィエトナム戦投入に期待した内容と同じように聞こえるという向きがあるはずだ。両機を比較するのは極めて自然なことだ。

F-4ファントムは強力なJ79ターボジェット双発の大型機でマッハ2を出し当時としては強力なレーダーを機首に搭載していた。武装は中距離AIM-7Dとスパローミサイルで単距離用にはAIM-9サイドワインダー、AIM-4Dファルコン熱追尾ミサイルがあった。

米空軍はファントムに数十マイル先で敵機を探知させ超音速移動しスパローミサイルを最大28マイル先で発射して撃墜する性能を期待していた。単距離のドッグファイル想定の訓練を行わなかったのはファントムが操縦性が優れた機体でなかったためだ。

言うまでもなく、米軍戦闘機が北ヴィエトナムのMiG-17やMiG-21と遭遇するとこの筋書き通りとならなかった。MiG-21は軽量でレーダーも低出力だったが、ソ連の軍事教義通りに地上管制官誘導で米軍機を迎撃した。また当時の米軍の交戦規定では敵機を正確に認識するまで攻撃できなかった。これは通常視程内に収めることを意味した。

米軍戦闘機部隊にも攻撃のチャンスがきたが故障しがちなファルコン、スパロー両ミサイルの撃墜成功率は1割未満だった。単距離用サイドワインダーはやや高いといっても15パーセントにすぎなかったが、有利な位置につけば熱追尾ミサイルをMiGにかますことができた。撃墜被撃墜率は2対1を割り込むまでになった。

米空軍、海軍はともにスパロー、サイドワインダーの改良型を使い、ファルコンは第一線から退けた。その後、機関砲装備のF-4Eファントムが投入されるとパイロットに近接距離戦で頼りになる選択肢が生まれた。他方で海軍はトップガンスクールを開設し海軍航空士に単距離ドッグファイトの技術を伝授した。これで海軍のファントムは空軍より撃墜率が高くなった。

新世代のF-15とF-16の製造にあたり設計部門は最初から機関砲を搭載し、操縦性とともに速度とエイビオニクスも引き上げてファントムの後継機に仕立てた。

今日のF-35は長距離ミサイル運用が前提で強力なレーダーを使う。速力は犠牲とされ(ライトニングの最高速力はマッハ1.6から1.8と相当低い)、小さなレーダー断面積で探知されにくくし、長距離センサーや兵装を運用する。このため空軍はF-35は近接戦ではSu-35に不利だと認めつつ、理論上ではSu-35を長距離で探知しミサイルを数十マイル先から発射して逃げることが可能だとする。

では将来の戦闘の姿はどうなるのか。ヴィエトナム上空の戦いと同じなのか全く違う様相になるのだろうか。

視程外距離で発射したミサイルで敵機撃墜の可能性はどのくらいあるのか

空対空ミサイルはヴィエトナム戦当時から相当の進歩した。当時のAIM-7Eのお粗末な実績と今日のAIM-120D、メテオ、R-77の各BVRミサイルの間では大きな差がある。

ただし今日のBVRミサイルテスト結果をみると命中率は高い(およそ5割)が、以前のミサイルのテスト中の実績と大差ない。もっと重要なのは新型BVRミサイルの射程距離が相当伸びているが、1970年以降の撃墜事例の大部分は視程内距離で短距離ミサイルや中距離ミサイルを使ったものだ。BVRの実戦成功事例の多くは訓練も装備も劣る敵相手のものでレーダー警報受信機の装備もなく飛来するミサイルに無防備な敵が大部分だった。今日の大国同士の戦闘でこの状況は期待できない。

ミサイルの公式最大射程は実戦で効果が生まれる距離より長くなっており、高速かつ敏捷に動く敵機相手を確実に撃墜できる距離も実際より長く宣伝されているのが事実だ。つまるところ標的機は飛来するミサイルをすり抜ける可能性がある。そうなるとAIM-120Dで110マイルの射程があるといってもF-35はもっと近くまで忍び寄って確実な撃墜をめざすのではないか。ここに重要な疑問が出てくる。

ステルス戦闘機はどこまで接近すれば探知されるのか。

ステルス戦闘機といっても完全に目に見えないわけではない。単に探知が難しいだけだ。そうなると敵のセンサーに見つかるまでどこまで接近できるのか。

まず、今日の新型戦闘機の多くで長距離赤外線探知追尾(IRST)装備や電子光学式センサーが搭載され、有効探知距離は50マイルないし100マイルとされる。もちろん設計部門はステルス機の熱放出特性を減らそうと知恵をこらしているが、ジェットエンジンから出る膨大な熱源にマスクをかけているに過ぎない。他方で熱追尾型ミサイルは短距離性能が多い。赤外線はステルス機のアキレス腱なのだ。

ステルス機探知には低帯域レーダーを使えばよい。これだとステルス機の大まかな位置をつかめるが兵器誘導用の精密さに欠ける。地上配備の低帯域レーダーがステルス機の存在を探知すれば高速戦闘機編隊が誘導されIRSTで接近できるはずだ。あるいはXバンドの照準レーダーは短距離で有効だろう。

このシナリオではステルス機が第四世代迎撃機に対し先に砲火を開く想定だが、数の上で敵が有利だ。F-35が第四世代戦闘機ほとんどより低速であることを考えると離脱にはリスクがある。他方でレーダー有効範囲から姿を消すのは容易なはずだ。

では短距離視程外対応ミサイルの時代にドッグファイトに意味があるのか。

米軍の軍事教義ではエネルギー(速力、高度)が操縦性より重要とする。高エネルギー状態の戦闘機は敵との交戦あるいは離脱でともに有利となり、飛来するミサイルもかわすことができるとされる。他方で細かく操縦すれば飛来するミサイルも回避できるが、逆にエネルギーを使い切り機体はその後の攻撃で格好の標的となる。

短距離兵器の威力が強力となり、ドッグファイト中の機体操縦性にさほど意味がなくなったと評価する向きがある。ここでは新技術二点が関係する。一つはヘルメット搭載の視野表示技術でパイロットは敵機をヘルメット上で示せばよい。もう一つが高度操縦性の高度視程外(HOBS)ミサイルで敵機方向に機体が向いていなくても発射できる装備だ。

最初に配備したのはロシアで米国はその後AIM-9Xミサイルとして採用しているが、敵より高い操縦性がなくても兵装を相手に発射できることになる。戦闘機が敵機に方向を向けると速力が加わりミサイルの相対飛行速度もあがるため命中の確率が上がるものだ。

新型短距離ミサイルの命中精度はWVR交戦の場合で8割から9割程度とみられる。つまり同様装備を備えた二機がそれぞれ相手機の存在を認識していれば両機が撃墜される可能性があることを示唆する。この事態を避けるべく、戦闘機パイロットはミサイルを長距離発射しても敵機に探知されずに接近する戦法をとるはずだ。

交戦規則は短距離交戦を困難にしているのか

ファントムがヴィエトナム上空で迫られた状況ではBVR対応ミサイルの利点が生かせず、むしろ交戦規則では肉眼確認を通例としていた。

これは民間旅客機を誤って撃墜することがないようにしたものであり、同時に両陣営の戦闘機が全面戦争一歩前のあやふやな状況で対峙しており、接近してやっと交戦許可が下りるの状態であった。たとえばシリアのSu-22が2017年に米海軍FA-18スーパーホーネットにより撃墜された事例やF-14トムキャットとリビアのSu-22、MiG-23がそれぞれ1981年と1989年に対峙した事例を思い起こしてもらいたい。

各事例でF-35が飛行禁止区域を哨戒中に敵意ある機体に接近すれば探知されステルス機の優位性も失うかもしれない。F-15やラファールのような第四世代機の方が高速で操縦性が高くこのようなシナリオで使い勝手がよい。もちろん旧式でも有効な第四世代機を投入し、F-35はあくまでも得意な深部侵攻用や情報収集用にに保存することでこの問題は解決できる。

つまるところ、ヴィエトナム事例を当てはめるとF-35の弱点が浮かび上がるが、ライトニングを制空任務に投入した場合の想定でもともと違う種類の技術を比較しても説明にならない。カギとなる性能は長距離IRSTの有効距離であり、ステルス機が発射するミサイルの射程距離やレーダーの性能内容は秘密のままとなっていることが多く比較が困難だ。■
Sébastien Roblin holds a master’s degree in conflict resolution from Georgetown University and served as a university instructor for the Peace Corps in China. He has also worked in education, editing and refugee resettlement in France and the United States. He currently writes on security and military history for War Is Boring.

Image: Department of Defense

2018年6月6日水曜日

日本向けE-2D三号機調達にゴーサイン

Japan signs for third Advanced Hawkeye

日本向けアドバンストホークアイ三号機の調達契約が成立


Gareth Jennings, London - IHS Jane's Defence Weekly
06 June 2018

  
Japan has now signed for three of the four E-2D Advanced Hawkeye AEW&C aircraft that it is expected to procure. Source: Northrop Grumman

本がノースロップ・グラマンE-2Dアドバンストホークアイ早期警戒統制機(AEW&C)の通算三号機調達契約に調印したと国防総省が6月5日に明らかにした。

機体単価153.2百万ドルで日本仕様のE-2Dを2020年3月までに納入する契約で、これより先に2015年11月、2016年7月に一号機二号機で同様の契約が成立している。日本は780百万ドルをE-2D調達事業に投入しており、一部はエンジニアリング及びインフラ関係の支出分だ。

防衛省は2014年にE-2Dを選定し、AEW&Cのニーズの一部にあてることとした。日本はすでに初期型のE-2CおよびボーイングE-767空中早期警戒機(AWACS)を導入済みだ。E-2Dが航空自衛隊で供用開始するとE-2C(13機)、E-767(4機)に加わる。■

米空軍OA-X軽攻撃機構想のめざすもの、ローエンド戦闘にはローエンド機材を

筆者一押しだった軽ジェット機スコーピオンは一次評価で落選ですか。OA-Xのめざす費用対効果では優秀だったのですが....F-22を無理やり投入したというのはゲイツ元長官がF-22ではアフガニスタン等の低甚度戦では無用の長物と発言して早々に調達を打ち切ったことへの腹いせだったのでしょうか。でも今から軽攻撃機を作っても今度は中ロといった互角の戦力を有する大国相手の作戦が中心となっており、やることが半周遅れですね。スコーピオンの芽がなくなりOA-Xにすっかり興味がなくなりました。

Aerospace Daily & Defense Report

Wilson: Leave High-End Fighters Out of Low-End Fights ローエンド戦闘にハイエンド戦闘機を投入するのはナンセンス(ウィルソン空軍長官)

May 30, 2018Jen DiMascio | Aerospace Daily & Defense Report

USAF

2017年11月、F-22ラプター編隊がアフガニスタンの麻薬工場を空爆した。だが空軍長官に言わせればこの攻撃は実施すべきでなかったことになる。

「何もハイエンドのステルス戦闘機で麻薬工場一か所を攻撃しなくてもいいのでは。コスト効果比が悪い攻撃の極致だ」とヘザー・ウィルソンは大西洋協議会の場で5月29日語った。

このため空軍は軽攻撃機実証を続けているのであり、目標は時間当たり$5,000-$10,000での作戦運用で、第五世代戦闘機ではこれが$30,000超となる。

空軍は軽攻撃機実証OA-XはホローマンAFB(ニューメキシコ州)で第二段階に入っており、シエラネヴァダ/エンブラエルA-29スーパートゥカーノ及びテキストロン・エイビエーションAT-6Bウルヴァリンの二機種についてセンサー、兵装運用、長期運用の可能性について比較検証を続けている。

ウィルソン長官は空軍としては短期間での兵装調達能力を証明しつつ、軽攻撃機をネットワーク上で中継地点にできると証明したいとする。

「この軽攻撃機にもネットワークを搭載し地上部隊や前線航空統制官とつなぎ、衛星や指揮命令機能と接続し、開戦開始から使用可能にするのです」とウィルソン長官は述べた。「ネットワークに価値があります。導入可能な価格で海外展開し同盟各国と共同作戦の実施が可能かテストしたい」

長官は同盟諸国が装備品調達を目指すなかで米国の輸出規制のため中国製の無人機や情報収集機導入に向かわざるを得ない場合があり、米製機材と翼を連ねていると指摘した。「同盟各国にとって良い結果を与えてあげる必要があるのではないか。この点で軽攻撃機は最初から輸出を視野に入れており、各国と共通装備を運用する想定」と述べた。

長官は軽攻撃機実証の狙いは空軍として兵装を迅速に導入する能力があることを示すことにあるとも述べている。空軍は秋にも実験段階を終え、半年後に調達契約を交付したいとしている。■

2018年6月5日火曜日

日本向け新型レーダー警報措置の製造に向かうレイセオン

要領を得ない記事で申し訳ないのですが、日本から最新式警報装置の導入希望が出たため、今回の措置になったようです。ではどの機種に搭載するのか、いつ導入されるのかは不明です。E-767あるいはE-2DなのかKC-767で支援機材の安全性を高めようというのか、よくわかりません。それに単なる受信機能だけではないようですね。ヒントAESAレーダーによる電子攻撃機能。機材のようには注目はされませんが、こうした地味な装備の驚くべき機能が今後の戦闘に大きな意味をもたらすのでしょう。


Japan buys radar warning receivers that adapt to new threats 日本が脅威対象に適応可能なレーダー警報受信機を導入


By: Daniel Cebul    

レイセオンのAN/ALR-69A(V)完全デジタルレーダー警報受信機により高度脅威環境でも乗員の安全が高まる (Osakabe Yasuo/U.S. Air Force)

イセオンが日本向けAN/ALR-69A(V) デジタルレーダー警報受信機(RWR)の製造を海外軍事販売制度を使い米空軍から受注したと国防総省が5月29日に発表した。
総額90百万ドルの契約には初の全デジタル方式RWRとレイセオンが呼ぶレーダーの製造、統合、試験評価、納入が含まれる。
だがこの受信機はどんな機能があるのか。
RWRとはレーダーが発する無線信号を探知し視認効果および音声効果で警告を出す装置だ。受信機はレーダー型式も識別でき、地上配備か空中にあるのかも区別できる。端的に言えばRWRは警察の取り締まり用レーダーに対抗してドライバーが使う探知機の発展形である。
レイセオンによればALR-69AはRWR技術の最新版だ。これまで不可能だった敵防空体制の制圧や各種機材搭載が容易になり、複雑な信号環境下での探知能力が向上している。
米空軍によるALR-69Aの779基発注について、レイセオンの電子戦システムズ副社長トラヴィス・スローカムは「ALR-69AでUSAFパイロットは状況把握ができ、今日そして将来の複雑な電子環境に対応できます」と述べている。
「当社は今後も受信機の性能向上を続け機械学習方式のモジュールを追加してシステムが自動的に新規脅威対象に対応できるようにします」
今回の契約は日本の要望に応えるもので、納入開始とともにレイセオンに51.5百万ドルが日本向けFMS勘定から支払われる。
ALR-69AはUSAFのC-130H、KC-46Aに搭載されており、F-16ファイティングファルコンへの導入がテスト中だ。

同装備の開発作業はカリフォーニア、ミシシッピ双方で進行中で2023年5月を目標に完了する。■

2018年6月4日月曜日

日本の空母実現への決意は本物だ

東シナ海のみならず南シナ海での兵力投射や海上交通路確保を考えると一定の航空戦力運用能力は必要で米国型の超大型空母はともかく日本のニーズに応じた空母整備は理にかなっていると思います。ただし、F-35Bが選択肢になるのか、またそうであっても運用の知見を整備するのはそう簡単なことではなく数年かかりますし、プラットフォームのいずも級も習作におわるかもしれません。自民党の動きには野党が自動的に反発していくでしょうが、日本が抑止力を整備して困る国と同じ思考をしているのは何ともおかしなことだと思います。一方で自衛隊の中途半端な姿を放置してきたつけがまわりそうで改憲がなかなか進まないままそれより早く現実の姿を思い知らされル事態が発生するのを恐れます。「あるべき姿」に国民の意見が集約する、あるいは民意を問う決断が必要なのではないでしょうか。


Japan Wants Aircraft Carriers Armed with F-35s (And It Could Happen Fast)日本はF-35搭載空母の実現を目指す(意外に早く実現しそうだ)


June 1, 2018

本の政権与党が日本も航空母艦運用を再開すべきと主張している。

5月25日、自民党が固定翼機運用を可能にする大型ヘリコプター駆逐艦改修を求める提言を発表したとの日本国内報道が流れた。「同党は早ければ今月末にも提言を政府に渡し、年末の防衛大綱並びに中期防衛計画改訂への反映を期待する」とある。

自民党からは今年三月にも提言で概要の発表があったばかりだ。その時点ではいずも級強襲揚陸艦二隻を「多用途防衛航空母艦」へ改装すべきとあった。これに対し党内から異論が出たのは第二次大戦時に日本が空母部隊を運用していた記憶を呼び起こすとし、表現は多用途「母艦」に変更となった。ただし、目指す姿には変更がない。

National Interestでは以前からいずも級ヘリコプター駆逐艦でのF-35B共用打撃戦闘機運用に向けた改装構想をお伝えしてきた。いずもが2013年に登場した段階でこの可能性は多くの専門家が指摘していた。一部には「偽りの空母」と評する向きさえあった。理由は想像に難くない。いずもの全長はほぼ250メートルで排水量は24千トンだ。これはその前に建造したひゅうが級のほぼ5割大きな艦容で、スペインやイタリアが保有する短距離離陸垂直離着陸 (STOVL) 型空母より大きいとの指摘もあった。いずも級には固定翼機運用格納庫もある。

にもかかわらず日本はそのような予測を一貫して否定してきた。昨年12月に日本がF-35B運用可能にするいずも級改修を検討中との報道が出ると、小野寺五典防衛相は(形ばかりの)否定声明を出した。「我が国の防衛姿勢について各種検討をしていますが、F-35B導入やいずも級護衛艦の改装について具体的検討はしておりません」と述べたと国内紙が伝えている。さらに「各種代替策の検討は常に必要」との発言もあったという。

否定したものの防衛省はいずも級の空母改装構想の検討内容をマリンユナイテッドに委託している。結果の一部が4月に公表され、予想通りカタパルト装着含む大幅手なおしせず改装の実現は可能とある。

ただしその実現には不明瞭さが残ると指摘する海上自衛隊OBがいる。朝日新聞への談話でその一人が「いずもの空母化案で内部コンセンサスができていたが大規模戦力の発艦能力は戦争放棄をうたう憲法第九条が禁じる戦力に当たるとの政府見解を海上自衛隊はおもんばかり案を公表してこなかった」と指摘している。

もちろん自民党提言はF-35B導入が前提だ。日本は今のところF-35Aのみを購入しているが、自民党提言ではいずも改装にあわせF-35B調達を求めている。F-35B導入を決めたのは今のところわずかで米海兵隊の他は英海軍、英空軍、イタリア海軍しかない。韓国、トルコもF-35Bへ関心を示しているのはそれぞれ強襲揚陸艦の空母化を目指すためだ。もし日本がいずもでF-35B運用の実現に踏み出せば、韓国、トルコへの影響は大きい。

今回の自民党提言には他にも議論の種となりそうな内容が含まれている。まずGDP1パーセントといの非公式制約の撤廃がある。自民党はNATO加盟国並みの2パーセントへの拡大を求めている。さらに提言では他国の軍事基地等の攻撃能力の実現と巡航ミサイル製造も求めている。ミサイルは攻撃手段とみなされ、専守防衛を是とする日本は攻撃能力を開発してこなかった。■

Zachary Keck (@ZacharyKeck) is a former managing editor of the National Interest.
Image: Wikimedia Commons

2018年6月3日日曜日

2030年に米国と中国が戦闘突入したらどうなるのか

 


Welcome to the U.S.-China War of 20302030年に米中が開戦したらこうなる



June 1, 2018

国(PRC)と米国が貿易戦争の一歩前にきたようだ。この戦争は両国経済だけでなくグローバル経済も大きく影響受けかねない。だが今のところ爆弾やミサイルの応酬にならないようだ。米中両国には対立の種が多数あるが、いずれも開戦の理由になっていない。
だが状況は10年間で変化する。今は可能性が薄く見える対立も時がたつと現実のものになる。中国の相対的国力が伸びればとるに足らない対立が大きく進展する事態に米国が直面することになる。一方で中国に機会が訪れる。米国の装備品調達サイクルから米軍の実力が低下する事態がやってくるからだ。
2030年の力のバランスならびに戦略地図は現在と大きく変っているだろう。では2030年に発生する米中両国間の戦争はどんな様相になるのか。
開戦の形は
対立の核心は今と同じだ。中国と米国は「トゥキディティスの罠」に落ちる。中国の国力がさらに伸びる一方、米国が世界秩序を支配する構図が続く。だが古代ギリシアでアテネの国力が伸びてスパルタが挑発されことがペロポネソス戦争につながったように、米中両国の対立は全世界を火に包む。PRCも米国もとるに足らない事象を理由に開戦に進むことはないはずだが。
米同盟各国に対する脅威は想像に難くない。日本、韓国、インド、台湾、フィリピンの各国だ。中国と各国の間の対立の種はすでに生れているが、実際に芽は出ないかもしれない。だがPRCと各国間の軍事衝突発生の場合、米国がいやおうなく巻き込まれるのはほぼ確実だ。インドとPRCの間の戦闘が最大のリスクで米国だけにとどまらずパキスタンやロシアまで巻き込まれる可能性がある。日中間の戦争も破滅的な結果になりかねない。今後戦略的な変化が発生する可能性として日韓関係があり軍事対立となれば中国や米国も関与せざるを得なくなる。
両軍はどんな軍事技術を展開するか
戦場がどこになるのかは紛争の原因で変わるが、予想に難くないのが東シナ海および南シナ海だ。両国とも空海双方の装備を投入を惜しまないはずだが、米陸軍、海兵隊は「マルチドメイン」戦闘で自らの役割を発揮するのに苦労するだろう。
今後12年間で軍事バランスは中国に傾く理由は多数ある。だが中国が必ずしも有利になるわけでもない。ただし人民解放軍海軍(PLAN)は米海軍(USN)を上回るペースで拡張しており、人民解放軍空軍(PLAAF)の装備近代化の進展は米空軍(USAF)をしのぐ。
ただし双方とも従来型軍事技術を大量投入するだろう。中国の空母は2030年には4隻になっているはずで、内訳は遼寧級STOBAR空母二隻と通常型CATOBAR空母が二隻だ。米国は強襲空母も含めれば空母数で上回り、戦力でも中国を凌駕するものの、中国は開戦初期では局所的に有利な展開をするはずだ。中国は全世界展開の必要がないため潜水艦、水上艦多数を一定海域に投入できるからだ。それでもUSNが有利とは言え、差はわずかしかない。
航空機に関しては米国の空軍、海軍、海兵隊はF-35を相当数展開しているはずだ。米空軍は現行の爆撃機各型に加えB-21レイダー・ステルス爆撃機を配備しているはずだ。中国はJ-10とJ-11を増備し、米F-15、F-16、F/A-18と互角に持ち込もうとするだろう。J-20も一定数稼働しているはずでPLAが導入を決めればJ-31も配備されているだろう。2030年にPLAAFが米航空戦力と同等水準になる見込みはないものの、ギャップは減り、国内基地、弾道ミサイル、巡航ミサイル、対空ミサイルが多数ある点が中国に有利となる。
2030年までに現れる最大の変化は無人装備の台頭で既存有人機と同時に投入されたり、有人機の座を奪う機材もあらわれるだろう。無人装備技術の革新は今後も急ピッチで進み近い将来に登場する高性能機の姿を想像するのは難しいが、空、水上、水中に活躍する無人機が広範な戦闘に投入され、有人装備を攻撃したり無人機同士の戦闘が発生するのではないか。無人装備は情報収集や通信の大規模システムの一部となり両陣営とも緒戦から妨害を試みるはずだ。
サイバー戦になるのか
中国と米国はともに社会、経済、軍事各方面で通信に大規模依存しそれだけサイバー接続に依存していることになる。いったん接続が断絶すれば破滅的な結果となる。だがサイバー戦専門家から米中両国がインターネット依存を高めているが実は接続の仕組みが強靭になっており妨害は受けにくくなっているとの指摘がある。類似例として20世紀のドイツ産業があり、連合国空爆で大被害を受けたが期待された崩壊は生れなかった。これは重複性を持たせた複雑な内部構造のためだった。これに対して緻密な構造でなかった日本経済へは海上封鎖と空爆が大被害を上げている。複雑性は弱点をカバーするのだが、経済体制がデジタル化されている今は攻撃は容易になっている。
だからといって戦争がサイバー領域に発展することにはならない。デジタル戦は民生部門より軍事部門が中心となろう。米中両国は情報収集と攻撃能力の接点をあぶりだし妨害を試み、敵の目をつぶそうとするだろうが、同時に敵の目を通じて状況を把握しようともするはずだ。サイバー攻撃と「リアルの」軍事作戦を統合調整することに成功した陣営が勝利するだろう。
どんな結末になるのか
米中戦が終結の姿については多数の著述があるが、2030年の戦役の具体的開戦理由が不明のままでは両陣営の動きを予想できない。2030年時点でも米国の産業基盤や政治決定能力を恒常的に脅かす通常兵力を中国が整備しているとはきわめて考えにくい。他方で米国が一方的にPRCを圧倒するシナリオも考えにくく、仮にそうなっても政治面での危機状態は永く残るはずだ。勝利は展開中の軍事力を先に破壊することにかかっており、効果的な強襲作戦か消耗戦のいずれかになろう。
封鎖作戦も決定打にならない。中国のエネルギー消費は2030年には今より増えているだろうが、この戦略的弱点を補強する動きも強まっているはずだ。ロシアからのパイプライン増設や代替エネルギー開発でPRCは米国との対決に耐える力を入手するだろう。トランプ政権による貿易戦争で世界経済に悪影響が発生しなくても対外貿易が弱体化すれば中国にとって最大の経済試練となる。
いずれにせよ2030年の米中戦争では慎重な外交が必要となり、戦闘は21世紀通じた対立の第一歩に過ぎなくなるのかもしれない。
結論
専門家多数が米国とソ連間の戦争は不可避とほぼ40年にわたり指摘してきた。いくつか危機があったが実際に大戦は発生しなかった。米中両国が再度武力衝突する可能性もないのかもれしれない。とはいえ両国間の軍事力バランスが今後どう変わっていくかを考えることに価値がありそうだし、双方にどんな機会が生まれるかも想定できる。幸運と腕に恵まれれば両国は2030年でも開戦を回避できるだろうが、両国の立案部門は戦闘勃発の可能性を真剣にとらえておく必要がありそうだ。■
Robert Farley, a frequent contributor to the National Interest, is author of The Battleship Book. He serves as a Senior Lecturer at the Patterson School of Diplomacy and International Commerce at the University of Kentucky. His work includes military doctrine, national security, and maritime affairs. He blogs at Lawyers, Guns and Money and Information Dissemination and The Diplomat.

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