2019年3月14日木曜日

JSM導入で大きく変わる日本の戦略戦術地図

JSM導入のニュースは昨日にお伝えしていますが、相当の関心を集めています。さらに詳しい分析が出ましたので追加でご紹介します。この通りならすごい装備品で大いに楽しみですが「平和主義」の皆さんが騒ぎ立てそうです。必要な情報は開示して「左巻き」の人でさえ文句が言えない形にしてスムーズな導入になるよう祈るばかりです


Japan Buying Joint Strike Missiles For Its F-35As Is A Much Bigger Deal Than It Sounds 日本が導入する共用打撃ミサイルのF-35A運用にはもっと大きな意味がある


It's the first land attack capable cruise missile Japan has bought, opening the door to a whole new set of tactical and strategic possibilities.

日本初の対地攻撃巡航ミサイルで全く新しい戦術戦略面の可能性を開く

BY TYLER ROGOWAYMARCH 13, 2019

U.S. AIR FORCE PHOTO BY CHRISTOP—U.S. AIR FORCE

ルウェイのコングスバーグ・ディフェンス&エアロスペースと日本防衛省が共用打撃ミサイル(JSM)の大量導入につながる契約を調印したと発表があった。巡航ミサイルJSMはF-35A機内に収まり、同時に対艦ミサイルを超えた軍事力を実現し、日本の軍事戦略の変貌の象徴にもなる。
JSMは海軍打撃ミサイル(NSM)が原型でレイセオンと共同開発したものだ。JSMは最大350マイルの射程で低高度の飛翔でその半分の射程を突破できる。500lb弾頭を搭載しGPS、INS、地形マッピング含む誘導装置を駆使し、GPSを遮断する環境も想定する。
JSMには画像化赤外線(IIR)シーカーがつき、高度に精密な最終ホーミング機能を備える。コングスバーグ・ディフェンスでは目標捕捉と最終ホーミング機能は次のように作動すると述べている。
「JSMには高度な目標捕捉のため自律型目標認識Autonomous Target Recognition (ATR) で赤外線画像シーカーを使用する。高性能の認識アルゴリズムにより標的艦船を識別し、非対象艦船の攻撃は回避できる。「白」と「赤」標的の識別は100パーセント可能だ。JSMのミッション計画システムには国家データベースを使い、標的対象のデータベースを備える。標的ライブラリのサブセットをJSMにダウンロードし発射する。データベース内の各標的には命中点に対応する弾頭信管特徴も準備する他、ミサイルの最終進入戦術といった識別上の特徴を整備する。発射に先立ち、最終戦術や命中点を点検あるいは修正も機内で可能だ。コングスバーグは利用国向けにソフトウェア一式を提供し標的ライブラリの整備方法を訓練する。」
RAYTHEON
JSMをF-35A機内に装着するとこうなる。

双方向データリンクでやりとりを終始行い、発射後は機体から進捗状況が把握でき、途中でミッション放棄したり別標的へ再照準も可能だ。
JSMは柔軟制御を念頭に開発され複雑地形でも飛翔経路を調整して途中での迎撃を避ける設計だ。F-35兵装庫での運用以外に他の戦術機材でも運用できる。
つまり柔軟性豊かで夢のような兵器が実現するわけだ。だが同ミサイルが対艦巡航ミサイルだけでなく陸上標的攻撃にも利用できることにもっと興味を引かれる。
言い方を変えよう。日本は高性能対地巡航ミサイルを最新鋭高性能機材から発射できるようになる。
USAF
エドワーズAFBのF-16CがJSMを主翼下に搭載している

日本は対地攻撃巡航ミサイルを配備してこなかった。憲法第九条違反と真剣に主張する向きがある。だが第九条解釈は日本国内で急速に変化している。これまでの受け身で内向きかつ自衛中心の姿勢から外に目を開き、対外的に積極な見方が強くなってきた。
その最大の象徴がいずも級空母を空母として運用する防衛省の姿勢で、もはや「ヘリコプター搭載駆逐艦」でなく、F-35B42機を飛行運用する。第二次大戦後の日本は固定翼機搭載の空母は就役させてこなかった。
RAYTHEON

日本にとって島しょ部防衛が一貫して懸念事項だった。対応策のひとつにスタンドオフミサイル攻撃で敵の水上部隊を狙うことがあり、一貫して高い優先順位がついてきた。だがこれまで巡航ミサイルの運用は海に限れれてきた。北朝鮮、中国、さらにロシアの脅威に対してスタンドオフ攻撃による陸上標的攻撃能力の必要性が痛感されているのは、接近阻止領域拒否として長距離防空体制の整備が進んできたためでもある。
JSMは発射機となるF-35Aと防空体制を突破する。日本が導入予定のF-35A105機でJSMと組合せて1,000マイル先の目標を空中給油無しで攻撃する能力がうまれ、うち750マイルをJSMはステルス低空突破する。2つの装備の組み合わせは理論上は日本領土から北京、香港、北朝鮮全土の攻撃が可能となるが、正確に言えば機体の戦闘行動半径600マイル以内で沿岸から150マイル以内の地点が標的になる。
JSMが最大効果を発揮するのが難易度が最高地点にある標的への攻撃で、「ブラウンウォーター」とも呼ばれる海と陸が交じる複雑な沿海地方がこれにあたる。ただし対艦攻撃だけに限ればF-35Aからのミサイル発射は相当有利になる。敵部隊まで探知されずに突破しピンポイントで艦船を攻撃すべく、高性能センサーやデータリンクで外部情報を利用する。そこでJSMを発射し艦船を撃破し、防空能力の高い駆逐艦巡洋艦さらに空母搭載機材も攻撃対象になる。
JSMは日本が導入するF-35Bにも搭載され、いずも級空母で供用される予定だ。そF-35Bでは機内兵装搭載力が限られるため外部搭載される。ただしF-35Bでも戦闘行動半径が450マイルあり、A型同様のセンサー融合機能がある。JSMによりB型の生存性が高まり、いずも級空母とF-35Bの組合せで全く異質の対艦攻撃能力とスタンドオフ対地攻撃能力が自衛隊部隊に生まれる。特にピンポイント攻撃で内陸部のレーダー施設を攻撃することが想定される。
同ミサイルは日本が運用中の他機種にも搭載されるはずで、とくに対艦攻撃ミッションが主な任務の三菱F-2がその最右翼だ。日本はASM-3対艦ミサイルを開発中だがJSMが最適の組み合わせになろう。
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F-2がなんやら重そうなまま帰ってきたり

超音速対艦ミサイルASM-3開発は後半にさしかかっており、F-2搭載を想定する。JSMより射程は短いがJSMのステルス亜音速性能とシナジー効果が期待される。
HUNINI/WIKICOMMONS
ASM-3.

また四発機のP-1哨戒機はAGM-84ハープーンが搭載されているが同機もJSM運用の候補になる。長距離飛行が得意の同機に複雑な地理環境の目標攻撃能力を付与し、同時に港湾内の艦船や陸上標的の攻撃能力も追加される。
RONNIE MACDONALD/WIKICOMMONS
P-1.

F-15JもJSM搭載で候補だ。日本がF-15へのスタンドオフ対地攻撃ミサイル導入に前向きであると前にも指摘したが、JSMで運用に柔軟性が生まれ、装備も共有化できる。F-15ではさらに長距離射程の兵装も使え、F-15の攻撃能力を高める効果も期待できる。
しかしなんと言っても日本が対地巡航ミサイル調達に踏み切るとのニュースは同国の戦略姿勢の変化を如実に示す象徴であり、今後の変化を占う材料だ。このあとにもっと航続距離の長いミサイルを導入するのか、空中発射式JASSM-ERが来るのか。多任務可能なブロックIVの戦術トマホーク・ミサイルをMK41垂直発射管を搭載した駆逐艦からあるいはイージス・アショアミサイル防衛施設で運用するのかで調達内容も変わってくる。VLS運用可能なJSMもある。日本が国産で対地巡航ミサイルを開発中という記事もあった
JSM導入を決断した日本ではこれらの実現可能性が以前より高まっている。■
Contact the author: Tyler@thedrive.com

中国がY-20をもとに派生機種を製作中か 今年中に姿を表わすのは給油機、早期警戒機か

中国の弱点にエンジンかありこれまでも苦悩する様子が伝えられていますが、WS-20というのは性能不足といわれているんですが。本命エンジンの搭載が始まる前に量産しているって計画経済の匂いもしますね。スペックを見るとY-20(Yは運輸の意味)はなかなかのものですが西側と違うエイビオニクスで実際に国際間輸送に耐えられるのでしょうか。


China's Y-20 large transport plane to spawn several variants: chief designer 中国のY-20大型輸送機から派生型が登場か

By Liu Xuanzun Source:Global Times Published: 2019/3/12 16:56:27



PLA空軍パラシュート部隊の兵員が中国中央部河南省で行われた演習で降下した。 May 8, 2018. Photo: eng.chinamil.com.cn

国の国産開発大型輸送機Y-20の主任設計者が同機原型の派生型の開発を進めていることを認め、軍事筋は派生型が2019年にも登場すると見ている。

「Y-20を原型の各種機体が生まれる」とY-20設計を率いた政治顧問Tang Changhongが述べたとChina Aviation Newsが伝えている。

ただTangは派生型の姿や機能に触れていない。

他方で軍事専門家の間にはY-20派生型として空中給油機や早期警戒機を開発中との指摘が2018年から出ている。

Feng Wei人民代表会議メンバーにしてY-20パイロットは「Y-20が今年別の姿で登場すればすばらしい。人々を失望させることはない」と述べたとニュースポータルvos.comが3月5日伝えている。

匿名の軍事専門家はGlobal Timesに3月12日今年中に複数のY-20派生型が登場すると述べている。

離陸最大重量が200トンのY-20は燃料その他の搭載量で今までの国産機より優れており、航続距離が長いため、給油機や早期警戒機の母機としてふさわしいと上記専門家は指摘し、その他にも移動病院や電子戦機材の可能性もあるという。

Y-20は現在はロシア製エンジンを搭載するが2019年中に国産WS-20に換装されると同専門家は述べている。

Y-20の人民解放軍空軍での供用は2016年始まっている。

「Y-20は量産段階に入っており、軍での訓練は計画どおり順調に推移しています」(Tang)■



Posted in: SOCIETY,MILITARY,HIGHLIGHT REPORTS

参考)Y-20と日本のC-2の比較


Y-20
C-2
最大離陸重量
220トン
141トン
最大搭載量
66トン
36トン
最大航続距離
40t/7,800km
36t/4,500km
巡航速度
マッハ0.75

陸自の次期攻撃ヘリコプター調達でいよいよ動きが出るか

なるほどアパッチで後味の悪い経験をしたスバルは最初から攻撃ヘリ製造にはタッチしないということですか。運用システムとして考えると完成機輸入がメリットが大きいと思いますが皆さんはどう思いますか。


Aerospace Daily & Defense Report

Japanese Attack Helicopter Program Lives 日本の攻撃ヘリ調達事業は死んでいない



Mar 4, 2019Bradley Perrett | Aerospace Daily & Defense Report
AH-1S: Japanese Ministry of Defense


本の防衛省が攻撃ヘリコプター調達で2019年に動きを示しそうだ。ただしこの案件は昨年12月公表の中期防衛力整備計画に盛り込まれていない。業界筋が明らかにした。
陸上自衛隊が調達は待ったなしとするのはベルAH-1Sコブラの最古機材の更新時期が迫り、供用期間が残り少ないためと業界筋は解説。さらにAH-1Sの戦闘能力は2020年代には疑わしくなるという別の筋もある。
防衛省は提案要求を今年中にも出すと見られ、次期攻撃ヘリコプター New Attack Helicopter (NAH)として30機ないし50機の調達となるだろうと業界筋が述べた。
防衛省、陸自には中期防から外された同ヘリの調達では道がふたつあると業界筋は述べる。ひとつは別事業の未達予算の活用でこれは前例がある。もうひとつは次期中期防まで待つことだ。
NAH受注を狙うのは以下の六社で、その提案内容は幅広い。
エアバスはH-Forceモジュラーシステム構想を提示し同社のヘリコプターならどれでも応用可能とする。ベルはAH-1Zヴァイパー、ボーイングはAH-64Dアパッチ、川崎重工業はOH-1観測ヘリコプターの改修型、レオナルドはAW249(開発中)、三菱重工業はシコースキーUH-60の武装型を提示しそうだ。
これまでどおりなら30機の現地生産になるだろうが、ロッキード・マーティンF-35ライトニングで完成機輸入方式を昨年選択している。調達予算を他事業から確保するのなら完成機輸入が価格面で有利だが国内生産となれば政界や関係者が予算確保に走るかもしれない。
政界の支援が川崎、三菱両社の提案を後押しするだろうが、艦上運用ではヴァイパーの専用設計が他の候補より優位など他の要素もある。
陸自にはコブラが56機あり、1979年から21年にわたり富士重工(スバル)が生産した90機の残存機体だ。ここ数ヶ月で59機あったものが減少している。

2019年3月13日水曜日

★F-35用に日本がJSMミサイルを世界に先駆けて採用

慎重な日本がまっさきに採用したのはJSMが唯一のF-35機内搭載可能な対艦対地ミサイルであるからでしょう。それだけF-35による抑止力の整備がまったなしということですか。日本が量産開始前の装備品を導入するのは異例かもしれません。

KONGSBERG awarded JSM Joint Strike Missile contract with Japan

コングスバーグがJSM共用打撃ミサイルを日本から受注

11.03.2019




ングスバーグディフェンス&エアロスペースASは日本政府よりJSM(共用打撃ミサイル)を同国F-35の装備として受注した。


JSMは2008年に開発開始し実証段階を経て2018年に完成した。


「今回の受注は国際市場への突破口として重要で、ノルウェイ国防研究機関および国内産業含むノルウェイ関係機関間の協力の重要性をあらため示した」と同社CEOGeir Håøyが述べた。
JSMはF-35機内搭載可能な唯一の長距離対艦、対地ミサイルである。

「F-35運用国からJSMへの関心が高まる中でコングスバーグがこの度日本から選定されたのは非常に誇らしい。JSM事業で大きな一歩となり、量産段階に入る」とコングスバーグディフェンス&スペースAS社長 Eirik Lieが述べている。

コングスバーグ、日本政府共に今回の契約金額、調達量を明らかにしていない。■

T-Xは軽攻撃機、アグレッサー機材にも転用したいとする米空軍ACC司令官

ひとつわからないのはT-XがいまもT-Xと呼ばれている点で、採択されればすぐにでも呼称がつくのですが、いまだにT-Xのままですね。軽攻撃機としては当方はスコーピオンに期待していましたが未だ鳴かず飛ばずですね。ボーイングT-Xがその任務もこなせるのか、これから注目しましょう。


US Air Force’s new trainer jet could become its next light-attack or aggressor aircraft 米空軍の新型練習機は軽攻撃機、アグレッサー機材に発展する可能性を秘めている


By: Valerie Insinna    


ボーイング-サーブのT-X提案が空軍のT-X競作で2018年9月に勝ち残った (John Parker/Boeing)



空軍のT-Xには練習機以外に、アグレッサー機材や軽攻撃ミッションにも転用の可能性があると航空戦闘軍団司令官が3月7日述べた。
T-X練習機の調達は供用50年に及ぶT-38の交替が主眼であり、これが最優先事項であるのは変わりはないが、空軍は別用途の検討もしており今後の調達に反映されようと、マイク・ホームズ大将が空軍協会シンポジウムで語った。
「同機の軽戦闘機型を想像してほしい。訓練で敵機役をさせてもいい」
「非公式レベルで別型式の要求性能を検討させている。いつ公式になるかはいろいろな要素次第だ」とし、予算が念頭にあると付け加えた。
では空軍はどんなT-X発展形を想定しているのだろうか。


軽攻撃機構想
空軍は軽攻撃機に転用する道筋を明らかにしていないが、上層部によればターボプロップ機材の性能を超える物が欲しいという。T-Xあるいは別の低コスト機に期待しているとホームズ大将は述べたが、2020年度っ国防予算の詳細が未公表のいまは詳細を話してくれなかった。
「同機やT-X競作の各機のサイズと飛行経費今後の実証の対象だ」
2017年の軽攻撃機試験第一ラウンドで空軍は軽戦闘機を試していた。テキストロンのスコーピオンだがターボプロップ機のA-29やAT-6を合格とし同機を避けた。
スコーピオンにはターボプロップ機にない性能として速力や操縦性さらに機内兵装庫がありプラグアンドプレイ式でセンサー搭載が可能だ。AT-6やA-29の有利な点はふたつで、購入価格が安く製造ラインがすでに存在していることで、スコーピオンは未だ採用国はない。
ボーイングのT-Xはこうした課題にそのまま答えていない。ひとつにはT-Xでは350機調達を前提に生産ライン立ち上げコストを想定し単価を引き下げている。
ホームズ大将はボーイングが同社のブラックダイヤモンド生産方式をT-X設計段階から使用していると説明。ブラックダイヤモンドとは大幅な生産コスト削減のため新しい製造技術を同社の民生部門から流用する。
「機体の共通化で量産効果が生まれ、単価が下がり供用を長く維持できるだろう」(ホームズ)
ただし非武装のT-Xは決して安い買い物にならず、各国に売り込むのなら負担可能な価格に抑える必要がある。


アグレッサー部隊用機材
米空軍は空戦訓練で敵機役となる「レッドエア」機材の新規調達を今年にも公募する予定だが、要求性能は高くなる見込みでアグレッサー機材に新型機が必要になりそうだ。
T-Xで各社が採用をめぐりしのぎを削っているころ、空軍はT-Xのアグレッサー機転用は真剣に見ていなかた。だが契約が交付されると、新型機で要求性能を実現できるか検討しはじめたとホームズは明かした。
航空戦闘軍団司令官はWar on the Rocksの1月記事で深掘りした意見を表明している。T-XはT-38タロン後継機の位置づけだがタロンを飛ばすのは1950年代の戦闘機を操縦するのと大差なく、同機で体得できるのは基礎戦術だけだとしていた。
T-Xは飛行性能とセンサー機能が充実し現在の第一線戦闘機に近く、ホームズ大将はF-15、F-16、 F-22、 F-35の操縦訓練にT-Xが活用できると期待する。
「敵機役として訓練に活用できる」のではないかと記していた。

「T-Xの低運航コストを活かせば敵機役として活躍の余地は伸びるのではないか。第四世代機の半分程度、第5世代機の5分の一という水準なのでパイロット訓練を増やすか、低コストで実施できるはず」とホームズは寄稿している。

2019年3月12日火曜日

トランプ政権の北朝鮮政策が変化、完全非核化からWMD廃止へ拡大、緊張増加は不可避か



The Trump Administration North Korea Policy Isn’t Engagement. It’s Demanding Kim’s Total Surrender  

トランプ政権の北朝鮮政策は金正恩の完全降伏をめざしている

The seeds of the next North Korea crisis are being sown as we speak.
こうしているうちにも次の北朝鮮危機の種がまかれている
March 11, 2019  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: North KoreaMilitaryTechnologyWorldTrumpSteve BiegunDPRK


ティーブ・ビーガン特別代表がカーネギー財団主催のカンファレンスで講演するのを聞きながら、朝鮮情勢ウォッチャーにわずか数週間前に感銘を与えてきた同人に何が起こったのか不思議でならなかった。北朝鮮には外交手段とともにアクションにはアクションを重視するわれわれは非核化だけでなく北朝鮮関係を新時代に移行することが重要と見るが、.ビーガン発言こそ願ったり叶ったりの内容だったのだ。
以下ビーガンがスタンフォード大で行った講演の引用で、交戦やむなしとする朝鮮事情通の多くが賞賛した内容だ。
「これまで北朝鮮には両国首脳部が昨夏シンガポール共同声明で述べた目標全てを同時あるいは並行して希求する準備があると伝え、朝鮮国民の明るい未来を企画しつつ制裁解除で新たな機会が生まれ、朝鮮半島の平和を達成できるので、北朝鮮にも同様に行動してもらい、完全かつ検証可能な非核化の実現を目指すと述べてきたのだ」
われわれはトランプ政権の対応が軟化したと感じていた。シンガポール宣言の四本柱すべてを「同時かつ並行で」希求する選択に走ると受け止めてきた。声明文はあくまでアクションにはアクションで対応するアプローチにより朝鮮戦争終結宣言、連絡事務所設置を政治的観点で進めると見ていた。
だが現政権は姿勢を変えたようだ。ハノイサミット後に何があったのか知る由もないが、米国は明らかにゴールポストを動かした。具体的には以下3つの変化が朝鮮半島の緊張緩和状態に終止符をうち、緊張再開の種となりそうだ。
アクションにはアクションの段階は終わった 米朝両国は段階的非核化をめざすはずだったが、制裁措置の完全解除は完全非核化が条件でそれまでは意味ある譲歩を前提としていた。ステップバイステップ方式とも呼ばれ、双方でなにかを得るべく別のものを断念することでめざすゴールに到達するとしていた。北朝鮮に核放棄を合意させるとしたら論理的にはこの方法しかないとされてきた。
ビーガン講演を聞くとこれは実現性ゼロとわかる。「非核化は漸増的には進めない」とし、「大統領はこの方針を明確にしており米政府はこの点で完全一致している」と述べたのは交渉に終止符を打つことを意味し、事態はさらに悪化することになる。
ハノイで米交渉団は制裁完全解除の見返りに完全非核化を金正恩に求め、これ以外の選択肢を示さなかった 現政権の全員が金がこれを飲むと見ていたとすれば不可解だ。ワシントンでは平壌が寧辺核施設の部分的廃止で国連制裁措置で一番痛い内容の解除を求めてくるとわかっていたはずだ。寧辺施設全部の解体という提案が破綻したが、そもそもこれならトランプがシンガポールに行った理由がなくなるのではないか。
非核化の意味に北朝鮮の大量破壊兵器(WMD)全部の廃止が加わった 現政権は北朝鮮の核開発停止だけで満足しないことが明らかで、核分裂物質全部の除去、弾頭すべての破壊を目指している。さらにトランプ政権は生物化学兵器の全備蓄ならびに製造原料全部の廃棄を求めている。
これでどう変わるのか。金委員長の立場で考えてみよう。ワシントンから降伏を迫らるのと同じ要求が来れば、米国による政権転覆を抑止できると思い整備してきたWMDをみすみす放棄するだろうか。外交とはギブアンドテイクを最大の見せ場で示すことであり、一方が命令する状況では機能しない。
さらに北朝鮮には「最大の圧力」でも無傷に近い弾頭がある。たしかに経済成長は止まり、逆に縮小に向かっているが制裁措置の抜け穴も判明しており、もっと厳しい状況でも生き残りを図る技を平壌が習得済みなのは明らかだ。
現時点の根本課題とは圧力を受けたと感じ金が衛星打ち上げに走るかどうかだ。あるいは長距離ミサイルを発射し信念を示すか。トランプとしては気に入らない状況だろう。■

Harry J. Kazianis is director of Korean Studies at the Center for the National Interest. Follow him on Twitter @Grecianformula.