2019年7月10日水曜日

B-21初号機の製造が極秘のうちに進行中の模様

U.S. Air Force Builds First B-21 Raider 'Test' Stealth Bomber

 米空軍がB-21レイダー一号機を「テスト」機として製造を開始
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空軍が新型B-21レイダー爆撃機の「テスト」用一号機を製造中である。今後登場する最も高性能な防空装備を突破し敵領土内の重要標的を破壊しつつ姿を探知されることのない機体だ。

「テスト機の製造過程とともに初飛行用の関連ソフトウェアの進展に注目している」と空軍参謀総長デイヴィッド・ゴールドフェイン大将がミッチェル研究所主催のイベントで語った。

初飛行時期ならびに調達の詳細について全く情報がない。事業は秘密のまま進行している。敵にわざわざ情報を与えて有利なスタートを切らす必要はない。とはいえ、新型機が今までと全く違うステルス性能を備えることは確かなようだ。

重要な設計審査を終え、同機の技術面、仕様、兵装を検討した空軍は技術製造設計段階つまり兵装を含む各種システムの製造段階に履いて散る。

初号機の製造で各種サブシステム、エイビオニクス、兵装統合、テスコ機そのもの製造が当然ながら進行し、いよいよ外形を表す。ステルス機の製造には最初から微妙な技術の組み合わせが必要だ。ステルスは・あたかもある技術が言ったように設計の最初から「作り込む」必要がある。ボルト一本から、機体の曲線、主翼や兵装に至るまで個別の特性で作りレーダー断面積の最小化を実現する。ステルス機の外見には鋭い角度や突起構造他レーダー荷姿を晒す特徴が皆無である。ことに爆撃機では完全に水平に広がる構造として垂直面で機体が広がっていない。これにより電磁信号としてのレーダーで実機の構造が把握できなくあんる。外見はなめらかで曲線を備えるが機体をつなぎ合わせる部分は皆無で、兵装は機内搭載し、アンテナやセンサーは機体の一部として最初から埋め込まれるので機体の非探知性を最小限にできる。

高周波探知レーダーに探知されないだけでなく低周波レーダーに対してもステルス性を発揮する狙いがある。B-21ミッションは強力な防空体制を突破して侵入し、標的を捕捉破壊し、敵に知られることなく戦地を脱出することにある。またB-2やB-21のステルス爆撃機はエンジンを機体に一体化することで熱放出を減らし各種方法により排気も制御する。ステルス機の熱制御の目標は機体温度を周囲の大気温と同じにして熱センサーでの識別を逃れることにある。

ステルスの成功はひとえに外部皮膜に用いる素材の組み合わせにかかっている。正確な混合比率は機密事項だがレーダー吸収材と呼ばれ、レーダーの電子信号を跳ね返さない性質がある。うまく設定すればステルス機はレーダー上で鳥や昆虫程度の大きさにしか識別できないという。

ロシアや中国製の防空装備に新技術が採用去れていることを横目に新型ステルス技術の模索が続いてきた。B-2でも運用が困難になる事態が想定されている。コンピュータ処理速度の向上、デジタルネットワーク技術、標的捕捉能力の向上で防空網でステルス機の探知もさほど難しくない課題になってきた。ただしB-21はこうした課題を念頭にステルスの新世代として敵防空網突破を今後数十年に渡り実施可能な機体にする。

ロシア製のS-300やS-400対空ミサイルはデジタル技術で「ノード」を形成し追尾標的データを共有する。防空体制では更に高性能な指揮命令機能を応用し広範囲の周波数帯で敵機探知が可能となっている。こうした展開でB-2の任務遂行の一部が困難となってきたが、裏返せば現行及び将来の防空体制ならB-21も安心でいられなくなる。

ステルス機運用として電子戦(EW)「ジャミング」防衛構想もあり悪天候を逆手に取ってその他ステルス性能が劣る機材とペアにして敵防空体制に穴を開けるのだ。

EWは大きな役割を果たしそうだ。これから登場するハードウェア各種はソフトウェア・アップデートで新しい脅威に対抗できる。その例にまだ出現していないが各種周波数の組合せやレーダー探知距離の拡大がある。

こうした技術要素は今後の戦場での脅威を念頭にした総意のあらわれだ。B-21は敵地に突破侵入可能な唯一の機材になりそうだ。スタンドオフ兵器が敵防空体制の打破でも有効な手段になりつつあり、近距離ならピンポイント攻撃も可能だ。移動式防空装備は簡単に位置を変えることができ、EW機能を有する新型装備も今後登場すると見られる。

このため空軍で兵装開発にあたる上級関係者のコンセンサスとしてB-21にはアップグレード可能な設計となっている。その他、新型ソフトウェア、センサー、兵装、コンピュータ、エイビオニクスが今後登場し使用可能となる。

空軍上層部はB-21は「あらゆる標的を攻撃可能、世界いかなる場所も任意の時間で攻撃できる」機体になるという。

「F-117やB-2の設計時に利用できたコンピュータ能力は現在とくらべるとまったくとるにたらない」とミッチェル研究所は指摘している。「必要なのはステルスだ」

ゴールドフェイン大将も「この機体で高い自信を維持できる」と述べている。■
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Osborn previously served at the Pentagon as a Highly Qualified Expert with the Office of the Assistant Secretary of the Army - Acquisition, Logistics& Technology. Osborn has also worked as an anchor and on-air military specialist at national TV networks. He has a Masters Degree in Comparative Literature from Columbia University.

2019年7月9日火曜日

英「テンペスト」開発にスウェーデンが正式に参加することに

Sweden to join British ‘Tempest’ next-gen fighter push 

スウェーデンが英国の「テンペスト」次世代戦闘機開発に加わる

By: Andrew Chuter    

国の進める第六世代戦闘機「テンペスト」にスウェーデンが初の国際共同開発国となる。
両国政府と民間産業界から7月19日よりRAFフェフォード基地で開催の王立国際航空タトゥー(RIAT)の会場で発表される見込みだ。
英政府は昨年のファンボロー航空ショーでテンペスト開発事業を発表した。同プロジェクトは新型戦闘航空機開発として注目を集めており、英国防航空産業界にも高度技術の維持で役立つ。
保守党政権は20億ポンドの予算を確保し開発初期段階を実施すると確約しており、BAEシステムズロールスロイスMBDA(ミサイル)レオナルドの英国事業部の主導で進めようとしている。
ただ英政府は一貫してテンペスト開発には海外共同開発国の参加が不可欠と主張し、資金、技術に加え実需に期待している。
ロンドンのシンクタンク国際戦略研究所の軍事航空アナリスト、ダグ・バリーはスウェーデンの参加で産業力以外にもプラス効果が期待できるとする。
Saabは高性能軍用機の製造能力がありますが、スウェーデンほどの規模の国では単独開発は巨額になり、コスト競争力と受注可能性を重視したのでしょう」.
またスウェーデンの軍事性能要求は英国と同様だとも指摘している。「ロシアの動きがスウェーデンの玄関脇で激しくなってきており、2040年時点の性能要求を同国は真剣に考えてると、グリペンを上回る大きさの機体が必要と結論づけたのだろう」
スウェーデン、日本、イタリア、トルコが2035年頃の初飛行を予定する同機事業の共同開発国になる可能性を秘めている。
英政府の国防安全保障関連輸出促進機関の局長マーク・ゴールドサックはパリ航空ショーで報道陣に英国が10数カ国と共同開発の協議をしていると明らかにしていた。
ジェット戦闘機分野での英国とスウェーデンの二国間協力は初めてというわけではない。
BAEはブリティッシュエアロスペースの旧社名時代にSaabのグリペン初期型の製造と販売を助けていた。
当時の同社はSaab株式35%を保有していたが2004年に売却している。
Saabは現在最新の単発ジェット戦闘機グリペンEを営業中でスウェーデンとブラジルの採用を決めている。E型の初号機は今年後半にスウェーデン空軍に納入されテスト評価を受ける。
BAEはユーロファイターの相手先のエアバス、レオナルドとタイフーン最新型を国内外に向け生産中だ。
英国はタイフーン後継機を2040年ごろに稼働させたいとする。
ひとつ英国、スウェーデンで障害になりそうな課題がある。輸出制限の違いで、戦闘機他防衛装備輸出でスウェーデンは現時点で英国より厳格な制限を課している。
バリーによれば輸出認可が「両国間で問題になる可能性があり、フランスとドイツ間の輸出ルールの違いに匹敵する」という。
テンペスト事業ではフランス、ドイツの参加に失敗した経緯があい、両国は将来型戦闘航空システム(FCAS)開発を共同ですすめようとしている。スペインも加わり、エアバスとダッソーの主導で進めていく。
一部産業筋には英国も最終的にFCASに合流するとの見方もある。
スウェーデンも一時FCAS参加で協議していたが、SaabのCEOハカン・ブスヘは仏独共同事業に参画すると見られていたが、「英国との協議のほうが中身が深く真剣だ....一緒に良い仕事ができるのではないか」と報道陣に語っていた。■

コメント 労働党政権が選挙で敗れればテンペストも絵に描いた餅になってしまうのでは。しかし、戦闘機システムは一国のみでは開発しにくい時代になってきましたね。日本の参加は?でしょう。

2019年7月8日月曜日

期待できそうな次期潜水艦29SSの性能について


Stealth Suprise: Is Japan's New Submarine a Game Changer? 驚異のステルス 日本の新型潜水艦は画期的な存在になるのか 

July 5, 2019  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: Japanese NavySubmarinesStealthMilitaryChina

2019年6月、三菱重工業が日本の次期潜水艦29SS「新型3000トン潜水艦」を発表した。
公表資料によれば29SSは開発期間が2025年から2028年の3カ年で部隊編入は2031年とある。初号艦の試験開発用となりそうで建造費は760億円でだ。
海上自衛隊は潜水艦部隊を22隻体制に拡充する予定で試験艦一隻、練習艦2隻が別に加わる。実勢増加は中国の潜水艦部隊が70隻程度あり、原子力攻撃型や弾道ミサイル潜水艦含め充実する現状への対応のようだ。
この実現にむけ日本の2019年度防衛予算に7隻残るおやしお級ディーゼル電気推進潜水艦の耐用年数延長が盛り込まれた。同級は1990年代に就航している。
一方で川崎重工業がそうりゅう級潜水艦の12号艦を建造中で、あと3隻を川崎、三菱が建造する。初期型そうりゅう級各艦とのちがいは最終建造艦の大気非依存型推進をリチウムイオン電池(LIBs)に切替え軽量化かつ高出力性能を実現している。
29SSの想像図を潜水艦アナリストH.I.サットンのサイトから下に転載した。日本国内でも新型潜水艦で搭載する技術の予測記事が出ている。https://grandfleet.info/military-trivia/japanese_submarine_new_3000/

より流線型に
29SSはそうりゅう級の発展形でX字形潜舵で操縦性と信頼性を増した設計を継承するようだ。艦首に傾斜角がつきテイルセイル(司令塔)は後方に移動し艦体と一体化する。
改良は流体力学効果の向上が目的のようで、結果として音響面でステルスとなり抵抗を減らしつつ速力と後続距離が増える。「流動床構造で振動とショックを減らす」ことで29SSは静粛性が増すだろう。
ポンプジェット推進.
29SSの推進方式は従来型のプロペラの代わりに大重量ポンプジェットを採用するようだ。ポンプジェットはノイズを生むキャビテーションを発生させないし、高速で静音移動できる。ある筋によれば「13枚羽」のポンプジェットはそうりゅうの7枚羽プロペラより20デシベルも静かになるという。
ただしポンプジェットは高速性能の原子力推進艦に採用するのが通常で米海軍ではヴァージニア級、ロシアはボーレイ級SSBNで採用している。ディーゼル電気推進艦では高速移動で電池を使い切ることはきわめてまれだ。
そうなるとポンプジェット採用で29SSは高速巡航速度を従来より持続する実現する狙いがあると思われる。
高性能新型ソナー
日本は高性能一体型ソナーの開発も進めている。29SSの艦首ソナーは長距離探知に特化して、浅海域沿海部に最適化しているといわれる。特に後者は朝鮮半島沖合の岩だらけの海底地形を考慮しているのだろう。北朝鮮は小型潜航艇多数を運用し探知を逃れるつもりだ。
29SSの艦側面の聴音アレイに光ファイバーソナーを採用し「音波による音の発生ではなく光の干渉作用を探知できる」といわれる。この形のソナーは電磁発信の探知にも効果をしめすはずだ。
その他曳航式ソナーアレイで長距離かつ全方向追尾をし、反転創作ソナーアレイ、ブロードバンド送信アレイも装備する。
各種ソナーの搭載で合成ソナー図が同艦の新型戦闘システムで実現し、標的の移動分析以外に発射解も示せるようになる。
新型魚雷
現時点で29SSの戦闘装備では情報がないが、魚雷発射管は最低でも6本だろう。
.ただし2012年に日本は「高速長距離長時間航行可能」な新型魚雷G-RX 6の開発を開始し標準装備の89式魚雷の後継型式とする。有線誘導も可能な新型システムは水素酸素組み合わせ式の推進機構でステルスとし、おとりと本当の標的をソナーで区別し、弾頭の爆発時間調整により深海、浅海それぞれの交戦に応じた効果を実現する。部隊配備は2030年の想定だ。
29SSに垂直発射セルでのミサイル運用の兆しは見えない。潜水艦にUGM-84ハープーンを魚雷発射管から運用することがあるが、垂直発射セルがあれば連続発射が可能で敵防空体制の圧倒が可能となる。
リチウムイオン電池、新型ディーゼルエンジン、「高性能シュノーケル」
29SSでは大容量リチウムイオン電池(LIB)の搭載を前提の設計となる。潜水艦ブログのピーター・クローツの試算だが新型艦は連続10日間の潜行巡航移動が可能となるという。
ただしスターリング方式AIP搭載の中止で失うものも出る。
LIBsにより艦運用に柔軟度がまし、電池性能を駆使すればディーゼルエンジンを止め原子力潜水艦以上の静粛性が生まれる。
だがLIBのみに依存する潜水艦がバッテリー電源を使い切ると、浮上するかシュノーケルで空気を取り入れディーゼルエンジンで走行する必要がある。この間は脆弱になる。AIP搭載潜水艦は低速なら数週間潜航できるし、原子力推進潜水艦は高速のまま無限に潜航できる。
日本の潜水艦のパトロール範囲は母港から近い場合が多く、この欠点は受容可能なのかもしれない。だが29SSでは浮上に近い位置にとどまる時間を最小限にすべく「より小型で静粛かつ強力な」「シュノーケル発電方式」で空気取り入れと発電の効果を上げるようだ。 
日本ではシュノーケル改良にそうりゅう級で取り組んでいた。LIBは充電時間が短いが29SS搭載の電池容量が大きいがシュノーケル改良でそうりゅう級の公称100分という充電時間をどこまで短縮できるかが課題だ。
.LIBとAIPの組合わせは技術的に可能であり、日本は燃料電池方式のAIPも検討したといわれる。これはそうりゅう級搭載のスターリング方式AIPより静粛性、長時間運転が可能となるのだが、防衛省は開発費用の高騰と長期化につながると判断した。
29SSでは川崎重工製12V25/31S新型長ストローク型ディーゼルエンジンを搭載し発電容量が25%増える。
.前述のコーツは高性能LIB搭載潜水艦でも中国やロシアの原子力推進潜水艦と立ち向かうのは難しいと見る。「LIBを搭載しても日豪の潜水艦では10日おきに騒々しいディーゼルエンジンの稼働が必要となり、その位置を探知されてしまう」
日本では原子力推進方式の実現は可能だが高価につく。韓国は法的制約の中で原子力推進艦の実現を目指すようだが、日本では原子力技術は政治的にも微妙な問題だ。
.今のところ日本は高価にならず高性能の通常型潜水艦の整備を目指している。西太平洋の潜在的勢力の海軍力の増強を鑑みれば海上自衛隊の潜水艦部隊が今以上のステルス性と状況把握能力の向上で対抗する必要があるのは疑いない。■

Kyle Mizokami is a writer based in San Francisco who has appeared in The Diplomat, Foreign Policy, War is Boring and The Daily Beast. In 2009 he co-founded the defense and security blog Japan Security Watch.

2019年7月6日土曜日

中国のミサイル発射は対艦弾道ミサイルの初の発射だった

China's Reported Anti-Ship Ballistic Missile Test In The South China Sea Is A Big Deal

The test fits within a larger trend of increasingly provocative Chinese efforts to assert their authority in the disputed region.

IMAGINECHINA VIA AP IMAGES

国が少なくとも一発の対艦弾道ミサイル発射テストを実施し、各国の思惑が交錯する南シナ海にしたとの報道が出た。真実なら中国軍がこの地区を標的にミサイル発射した初の事例であり、それ以上に中国の過激なまでの太平洋での権力拡大をさらにエスカレートさせることになりそうだ。
NBCニュースが、匿名米関係者の談として最初に報道したのが2019年7月1日のことだった。NBCの取材源はミサイルの種類を言及せず、最終的にどんな標的に命中したかも触れていない。中国政府、米国政府いずれも試射の事実を公式に認めていないが、先週末に実施したようだ。中国は航空関係者向けにNOTAMを南シナ海で二地点を対象に発出して、ミサイル発射と軍事演習について注意喚起していた。NOTAMの有効期限は6月30日から7月1日を有効期限としていた。
NOTAMのひとつが海南島からパラセル諸島まで広範な海域を指定していた。北にはスプラトリー諸島があり、中国が実効支配するウッディ島も範囲に含まれていた。この位置関係から中国軍はミサイルを本土から発射し、ミサイルが飛翔に失敗しても海中落下するよう設定したようだ。
人民解放軍のロケット軍(PLARF)には機動性を備え空母など大型艦を十分標的にできると言われる弾道ミサイルがすくなくとも二種類ある。DF-21D中距離弾道ミサイル(MRBM)とDF-26中間距離弾道ミサイル(IRBM)だ。
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2018年4月に民間衛星画像の解析からこれまで知られていなかった基地が海南島にあるとの指摘があり、今回のNBC報道や公表ずみNOTAMの内容とも合致する。DF-21ないしDF-26は海南島から発射すればスプラトリー諸島まで十分到達可能だ。中国は短距離射程の対艦ミサイルを別に開発中だがこれでは中国本土から発射しても南シナ海への到達は不可能だ。
中国がDF-21DあるいはDF-26をスプラトリー諸島付近に本当に発射したのであれはPLARFが海上目標にミサイルを初めて発射したことになる。中国はゴビ砂漠に空母大の目標をつくりミサイルを発射している。
今回の試射が単純にミサイルを中国本土から発射して南シナ海まで到達させられる能力を示すものであった可能性はある。これでも重要なデータが入手でき今後より実践的な標的を狙うのではないか。
GOOGLE EARTH VIA THE FEDERATION OF AMERICAN SCIENTISTS
ゴビ砂漠に作られた空母大の標的には大型ミサイル数発の命中した跡が認められる。
今回の試射は2019年1月にPLARFのDF-26部隊が短時間でゴビ砂漠及びチベット高原に展開し米海軍のアーレイ・バーク級駆逐艦USSマッキャンベルがスプラトリー諸島を通過した際に対応したことの延長線上に有るようだ。その時点で中国は敵艦艇には安全な場所から弾道ミサイルで対応する能力が有ることを示したかったのだ。実際には弾道ミサイルは一発も発射していないが。
今回のミサイル発射は同様に米海軍と海上自衛隊が南シナ海で2019年6月に実施した戦闘演習に対抗したものであった可能性もある。今回はニミッツ級空母USSロナルド・レーガン打撃群に日本の「ヘリコプター駆逐艦」JSいずもが加わった。
2018年に日本側はいずも級は当初から空母能力を想定して建造したことを初めて認め、F-35B共用打撃戦闘機の運用に対応させると発表した。中国は日本の防衛力整備に一貫して批判的で現行憲法の改正で自衛隊が現状を超えた軍事活動を実施することにも強く反対している。
JMSDF
USSロナルド・レーガンがJSいずもと南シナ海で2019年6月に共同訓練を展開した。

2019年3月にフィリピンに寄港した米海軍強襲揚陸艦USSワスプは、異例なまでのF-35で兵力搭載していた。ワスプはその後スカボロー礁沖合に進出し、中国とフィリピンが領有権を争う場所だ。
スカボロー礁は中国が目指す「戦略三角形」の一部で中国の領有権主張にとり重要だ。残りはウッディ島が北に位置し、スプラトリー諸島が南にある。中国は2014年から南シナ海で大規模な造成工事を展開し人工拠点づくりを続けてきた。
同時に中国は地対空ミサイルや沿岸部に対艦ミサイル他軍事装備を各拠点に持ち込んでおり、広い意味の接近阻止領域拒否体制を構築している。
GOOGLE MAPS
中国の南シナ海における「戦略三角形」、すなわちパラセル諸島のウッディ島(北西)、スカボロー礁(南東)、スプラトリー諸島(南)を示す地図.
南シナ海の標的に対艦弾道ミサイルを本土から発射できれば中国に新しい防御体制が生まれる。更に内陸部に移動させれば敵の一次攻撃から逃れる可能性も増える。
対艦弾道ミサイルが対艦巡航ミサイルによる防衛網に加われば、敵側に防御が困難となる。弾道ミサイルの探知発見は迎撃にまして困難で低空飛行する空気吸い込み式巡航ミサイルへの対応と大きく異なる。
中国が大型艦を想定した標的に命中させる技術を実証した事自体に大きな意味があるが、信頼性は別の話だ。同様に人民解放軍に艦艇を発見するセンサーと通信ネットワークがありPLARFが数百数千マイルの彼方からミサイルの照準をあわせられるのかも不明だ。
とはいえ2019年6月のミサイル試験は今年早々のDF-26演習とともにPLAがこの能力開発を依然進めていることを如実に示している。中国が空中発射式弾道ミサイル開発に関心を示しているとの報道もあり、実現すれば弾力的運用につながり、南シナ海での領有権をはばかることなく中国は主張していくだろう
DOD
スプラトリー諸島に点在する中国の人工防衛拠点

さらに中国軍が戦力を同地域近辺で整備するのと並行して海洋警備活動を強化していることに注意が必要で、中国が主張する海域を遥かに超えた場所で公船、民間船舶がパトロールを展開している。2018年9月には052C旅游II級駆逐艦蘭州が米海軍アーレイ・バーク級駆逐艦USSデカターとスプラトリー諸島で衝突寸前になった。
米中両国は貿易戦争で動きが取れない状態だが、台湾を巡っても両国の緊張が高まっている。G-20サミットが日本で開催されたがドナルド・トランプ大統領と習近平主席は関税追加を棚上げし交渉を再開することで合意した。トランプは中国通信家電大手のフウァエイへの制裁緩和にさえ言及し、二国間の貿易問題での緊張案件となっていただけに意義深い。
だがPLARFが南シナ海へミサイル発射したとすると、経済面で緊張が緩和しようが、南シナ海で広がる自国権益を撤回するつもりが中国にないことが明確だ。■
Contact the author: joe@thedrive.com

2019年7月3日水曜日

グローバルホーク撃墜後もISR活動は続けると強気の米軍だが、非ステルス無人機による飛行には限界があるのではないか


Drone Shoot-Down Won’t Stop U.S. Patrols Near Iran


by David Axe 
July 1, 2019  Topic: Security  Region: Middle East  Blog Brand: The Buzz  Tags: IranMilitaryTechnologyWorld


ランが米海軍所属のグローバルホーク偵察無人機をホルムズ海峡上空で2019年6月20日に撃墜したが、米軍は戦略的に重要な同海峡付近の監視偵察を止めるわけにはいかないと関係者が口をそろえて述べている
空軍退役中将デイビッド・デプチュラは空軍協会のミッチェル研究所長を務めており自分だったらグローバルホークを「全く同じ飛行経路に」追加投入するとAir Forceマガジンに述べている。「恐れおののいてはだめだ」という。
ノースロップは2008年から広域海洋監視偵察実証機(BAMS-D)をグローバルホークを原型に4機生産した。米海軍はうち2機をアラブ首長国連邦に展開し、完全仕様のMQ-4C海軍用機材の2019年からの納入に備えていた。
BAMS-Dは最大65千フィートを飛行し大半の防空装備では手が出ない空域を飛ぶが亜音速でステルス性が欠如しているため強力な地対空ミサイルの前に餌食となる。イラン軍はブクM1移動式SAMの一種でBAMS-Dを撃墜したと主張している。イランにはこの他S-300防空装備もある。
空軍参謀総長デイヴィッド・ゴールドフェイン大将はおなじくAir Force誌に、米軍機材は今後もペルシア湾のパトロールを継続すると2019年6月26日に述べている。
「必要な場所への飛行は続ける。必要とあればあらゆるシナリオを実施する」とゴールドフェインは述べている。「国際空域ならいかなる場所でも同じ主張をする。全世界が共有するグローバルコモンズは今後も守る。必要ならいかなる場所で活動する」
デプチュラはペンタゴンは「戦闘機、爆撃機、ISR機材と高度脅威空域での活用を念頭に開発されてきた旧思想下の装備」は近代化が避けて通れないと指摘。
「航空優勢が確立している空域でしか活動できない性能はこれまでは当たり前と見られてきたが今回の撃墜で二流国の軍事力でもこうなることが判明した」(デプチュラ)
米軍には極秘機材もあるがこれを除けば低速、非ステルスの有人無人機に情報収集開始偵察(ISR)任務を大幅に依存している。こうしたISR機材はイラン、中国、ロシアの防空体制の近代化の前に脆弱になっている。
米空軍のU-2有人スパイ機、RC-135有人電子偵察機、E-3有人レーダー機材、RQ-4、MQ-9の各無人機、ここに海軍のMQ-4やP-8哨戒機を加えると数百機が軍事用語では「非突破」機材つまり全てハイエンド防空体制の前に無力だ。
敵防空網を突破可能な米ISR機材には亜音速RQ-170とRQ-180の両ステルス無人機が少数あるのみと判明している。有人機材で唯一突破可能だったSR-71は1990年代後半に空軍から退役している。
空軍もこの問題は意識しているようで2018年末に新ISR戦略を発表し、残存性の高い機材の必要性を訴えていた。
「ISR機材の構成でバランスをとり、高度の脅威環境への対応できる能力が必要だ」とダッシュ・ジェイムソン中将が米空軍のISR担当参謀次席として述べていた。「将来はマルチドメインでマルチ情報収集の世界になるので、政府と民間業界が連携して新しい情報収集のインフラを作る。それは復元力があり、一貫性があり敵領空への侵入が可能となり、紛争時に各種の選択肢を提供してくれるはずだ」
生存性への懸念から空軍は2018年中頃に70億ドル規模のE-8対地監視機の後継有人機の模索を中止している。そこで大型で低速の非ステルス機のかわりに空軍は高性能戦場管理システムと呼ぶ機能を消耗品扱いの無人機や超音速ステルス戦闘機に実現させる。
2019年初頭にワシントンDCのシンクタンク戦略予算評価センターが空軍に提案しており、内容は偵察飛行隊を現状の40隊から33に削減し、旧型非ステルス機材を新型突破可能ISR120機に置き換えるもので大部分が無人機だった。■

David Axe serves as Defense Editor of the National Interest. He is the author of the graphic novels  War Fix, War Is Boring and Machete Squad.

2019年7月1日月曜日

イラン攻撃を睨んだF-22の中東展開ほか米中央軍の最新状況


U.S. Air Force Stealth F-22 Raptors Are Now In Position To Attack Iran

米空軍F-22ラプターがイラン攻撃可能な位置に配備された
by David Axe 
June 29, 2019  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: QatarF-22MilitaryTechnologyWorldStealthAir Force

空軍が2019年6月27日、F-22ラプターステルス戦闘機部隊をはじめてカタールに展開しイランとの衝突に備えた戦力増強の一部とした。
米空軍はカタールに何機移動したか述べていないが、「FF」のテイルコードの機体12機を視認したとのカメラマン報告がある。FFはラングレー空軍基地(ヴァージニア)の第一戦闘航空団を意味する。
アラブ首長国連邦に今年4月から展開済みのF-35とともにF-22が投入可能となる。
ラプターはUAEからペルシア湾上空を飛行しシリア、イラクへ展開したことがある。だが2019年3月に発生した即応体制危機で全機を一旦米本国へ戻していた。
F-22は2005年に実戦化したが平均稼働率はやっと5割といったところで米戦闘機機材中で最低を記録している。複雑な機内システムやレーダー波吸収塗料のデリケートな取扱のため大掛かりな整備を必要としている。
ハリケーン・ミッチェルもあった。2018年10月の暴風雨でティンダル空軍基地のあるフロリダは大被害を受けた。ティンダルに飛行隊2個55機のF-22が展開していたが暴風雨前に移動できたラプターは38機にとどまり、残る17機はハンガー内に残り一部に損傷が発生した。
全部で187機のF-22ではジム・マティス前国防長官が求めた即応体制8割の目標が達成できていない。.
マティスは空軍、海軍、海兵隊のF-15、F-16、F/A-18、F-22、F-35の各飛行隊にミッション実行可能状態80%を2019年9月末までに達成するよう求めた。
2019年3月に当時の空軍長官ヘザー・ウィルソンからF-22で目標実現が困難との注意喚起が出た。三ヶ月後にヒース・コリンズ准将(空軍の戦闘機爆撃機の運用担当責任者)がこの事実を公表した。
即応体制に疑問が残るもののF-22は配備を確実にこなしてきた。第三航空団はアラスカでの演習で2019年3月に配備中の48機中24機とE-3レーダー機材、C-17輸送機を迅速に発進させている。
エルメンドーフ空軍基地で「エレファントウォーク」が見られた。演習では前方配備能力や圧倒的な戦闘空軍力の展開能力を実証した。
カタール配備のF-22はイラン攻撃可能な位置にある。ペンタゴンは2019年のタンカー数隻への攻撃はイランの関与と断言している。2019年6月19日にイラン軍が海軍の偵察無人機をホルムズ海峡上空で撃墜した。
トランプ大統領は報復のため空爆とミサイル攻撃を命じたが突如取り消した。大統領としてはイラン攻撃の可能性は残しておきたかったのだろう。トランプはFox Businessでのインタビューで「このまま長くは続かない。断言できる」と述べていた。「地上部隊の投入は言及していない。百万名も部隊派遣はないが何かは起こる。まもなくだろう」
すでに大規模な部隊展開が短期間のうちに進んでいる。2019年3月にB-52爆撃機4機がカタールに派遣され現地でF-35等の部隊に加わった。
F-35はイラクで戦闘任務に投入されている。B-52はイラン付近で示威飛行を行っている。トランプ大統領からイラン攻撃の命令が下ればB-52は巡航ミサイルを安全な距離から発射し、F-35は近距離でGPS誘導、レーサー誘導爆弾を投下するだろう。.B-2ステルス爆撃機はミズーリ州から大西洋横断し空爆作戦に投入されるはずだ。.
空母USSエイブラハム・リンカンは2019年6月26日時点でペルシア湾にあり護衛に巡洋艦一隻、駆逐艦4隻を伴っている。リンカン搭載のF/A-18E/F40機がイラン空爆に加わるとしてもステルス性がないためイラン防衛軍に位置を露呈するだろう。
リンカン戦闘群の護衛艦艇はトマホーク巡航ミサイルを搭載している。トランプはこれまで2回シリアの化学兵器生産施設に限定ミサイル攻撃を命じたが、毎回水上艦からの発射だった。
イランも米空爆に無防備な状態ではなく、海軍無人機撃墜ですでに能力を実証している。イラン軍と革命防衛隊の民兵組織はロシア製のS-200、S-300対空ミサイルを運用し、戦闘機には1970年代に米国から取得したF-14を近代化した機材も含む。

F-22にシリア、イラクと同様の任務をイランで実行させた場合、他の機材向けに防御態勢をしきながらGPS誘導爆弾で敵防空体制に穴を開けるのが役目となろう。■