2020年7月6日月曜日

歴史に残らなかった機体19 カーティス・ライトXP-55アセンダー


歴史に残らなかった機体19

抜な形状のXP-55アセンダーには解決できない問題があった。

米陸軍は1939年に既存機種より速力とパイロット視界の双方で優れる機体の提案募集を航空機メーカーに求めた。同時に画期的かつ通例にとらわれない設計を許容すると明示し、カーティス-ライトはXP-55アセンダーでこれに答えた。

アセンダーはプロペラを後部に搭載する「プッシュ」型で通常の「プル」型機と異なっていた。さらにコックピットにプロペラ投棄用のレバーがつく点がユニークで、これはパイロットが機外脱出する際に使用した。

推進式の機体構造は既存機と比べ奇異な形状となった。エンジンが後部にあるため、課題は冷却だった。離陸前に長くタキシングするとエンジンのオーバーヒートが深刻となるのは明らかだった。


機体操縦性も問題だった。いきなり失速する特徴があり、制御をとりもどすのに相当の高度が必要だった。初飛行では10千フィートも降下しやっと制御可能となったほどだ。

同機は一種の全翼機と言える。主翼上には最小限の垂直翼をつけ、機体後部にも制御用に小さな垂直翼があったのみだ。

テストでは離陸に相当の滑走路長が必要と判明した。機首につけた小型カナード翼は離陸を助ける意図でつけたのだが。

方向舵はパイロット後方に格納し、機体制御が難しいため必要に応じ出入りさせた。

性能に目をみはるものはなかった。高速かつ操縦性がすぐれた機種は他に出現していた。ジェットエンジンの登場もあった。XP-55アセンダーがテスト中の1944年、ジェットエンジン搭載機これからの主力と認識されていた。

ターボプロップの性能も有望だったが、ジェットエンジンがターボプロップの性能を上回るのは確実だった。ターボプロップではマッハ1到達が困難だったが、ジェットエンジンはマッハ2まで出せる。XP-55のプロペラ推進は時代遅れになっていた。

XP-55アセンダーには光るものがなかったが機体形状には興味をそそるものがあった。ただし、飛行性能は別だ。量産しなくて良かったと言える。■

この記事は以下を再構成したものです。


July 4, 2020  Topic: Security  Blog Brand: The Reboot  Tags: MilitaryTechnologyWeaponsWarPlaneHistory

The XP-55 Ascender: This Crazy Looking Plane Had Problems


Caleb Larson holds a Master of Public Policy degree from the Willy Brandt School of Public Policy. He lives in Berlin and writes on U.S. and Russian foreign and defense policy, German politics, and culture.
Image: Wikipedia.

2020年7月5日日曜日

★PLAN艦艇の不合理な行動の原因は....いつまで各国は我慢できるのか

これではPLANは勝てないですね.....また今後も理屈に合わない艦艇・航空機の行動が頻出しそうです。いよいよ中共の存在そのものをなくしていかないといけない段階に入ってきました。
Chinese leader Xi Jinping aboard a PLA NAvy ship. Xinhua photo

国艦船や航空機がなぜ不合理なほどの対決姿勢を示すのか。「命令に従わない指揮官」の独断ではなく、政治統制委員がその答えだとの解説が出てきた。

人民解放軍海軍の艦艇に乗る統制委員の役割へ理解が不足している、短期の視点での中国の意図、また中国が長期に目指す目標を理解しようとすると統制委員が極めて重要な存在だとジェフ・ベンソン戦略国際研究所研究員が述べている。CSIS主催のイベント席上でのこと。艦長が頂点に立つ米国の指揮命令系統と全く違う構造で「党が望む成果はなにか」を考える結果、外国艦艇に自艦を危険なほど接近させたり航空機に嫌がらせをさせているという。

中国海軍における統制委員の役割を說明した“Party on the Bridge: Political Commissars in the Chinese Navy” の共著者Zi Yangは習近平主席が指揮官よりも「統制委員にわずかにバランスを移した」とし、潜水艦、水上艦艇、飛行隊であてはまり、党への忠誠を軍全体で維持する狙いがあると述べた。このため統制委員も配属先の軍事作戦に詳しくなる必要がある。ベトナムとの交戦時に艦長が病に倒れ統制委員が必要に迫られ指揮をとった事例があるという。

中国の軍事行動や戦略面では見過ごされがだが習近平は日常行動から党の実勢を強める方向を強調している。

指揮命令系統が複数存在する中国の軍事組織での決定方法を理解すべきで、全艦艇に艦長と統制委員が必ず乗るとZiは指摘。ベンソンは「指揮統制は統合されながら、権限は分担している」と加えた。

艦艇勤務で艦長と統制委員は「責任を明確に区分」しており、統制委員は人事が主で、艦長の勤務評定もし、軍と党の規律を守らせ、モラールを点検し、心理戦では艦長と同等の権限があるという。

意思決定では最低2名の党員を加えた艦上党委員会を通じ結論を出す必要がある。潜水艦の場合ではこの委員会が「対戦あるいは回避」、または「浮上または潜航」を決めるとZiは説明。ベンソンからは「リスク管理には常に統制委員が関与する」と付け加えた。

この方法だと作戦中の不必要な過ちを減らす一方で、急展開する緊急状況で決定に時間がかかる。ベンソンは「軍事面の作戦実行は指揮官任せだ」と追加した。

だが緊急事態を処理しても指揮官の決定内容は統制委員に評価されるとZiは述べた。

ベンソンはソ連でも複式の指揮命令系統を試みたものの断念したと指摘。作戦実施では「ソ連統制委員は指揮官の部下」だったという。

Ziから党への忠誠心を中国海軍で強調する動きに前例があると指摘が出た。1949年革命で共産党が政権の座についた時点で艦艇のほぼ全数は蒋介石率いる国民党軍から寝返った指揮官、乗員が運用していた。毛沢東は海軍創設時から「党への絶対的忠誠心の保証を求めた」のだという。

習近平体制の中国共産党は「ソ連の過ち」を避けるべく、軍内部の忠誠心を軽視することはないとベンソンは語った。■

この記事は以下を再構成したものです。

Political Commissars on Chinese Warships Play Crucial Role in Interactions With Foreign Vessels


July 3, 2020 3:49 PM

F-3が国内開発に切り替わり、実現可能性を冷ややかに見る米国

本はF-2後継機で米国との提携を選択すると思われていたが、航空自衛隊は再検討し、国産技術での開発に切り替えるようだ。

日本の防衛産業はかねてから国内主体の開発を主張していた。開発は数百億ドル規模で2030年代中頃までかかる。日本政府は英米両国と協議し米ロッキード・マーティンボーイング、英BAEシステムズの名前が浮上していた。

2020年3月時点では日本は米国と共同開発に向かうと見られていた。英国については、三カ国体制になると日米同盟での技術リードが守られないため、日本は英国を主要協力国としない選択に向かった。

「日本主体の開発とし、国際提携の可能性も残す」と防衛装備庁広報官がJane'sに今年初めに語っていた。

しかし、日本は西側同盟国の助けを借りず第6世代戦闘機開発を進める方向に転じた。F-2「4+世代」機の後継機種は「F-3」と呼称され、開発費用は400億ドルの試算だ。

第二次大戦後の日本で戦闘機の開発は2機種しかない。このうちF-1攻撃機には英ジャギュアの影響が見られ、F-2軽量多用途戦闘機はF-16ファイティング・ファルコンを原型とする。F-1は2006年に退役。

少なくとも次世代戦闘機開発が軌道に乗るまではF-2は現役に留まる。同機は1990年代に三菱重工業を主契約企業とし、ロッキード・マーティンを米側協力企業に開発された。

日本が新型機を単独開発すれば巨額の費用が発生する。F-3戦闘機の機体単価が185百万ドルになると、日本は開発費の償却のためにも戦闘機輸出を模索する可能性がある。ネット情報だが与党自民党が同機の輸出可能性で議論を開始している。■

この記事は以下を再構成したものです。

July 4, 2020  Topic: Technology  Region: Asia  Blog Brand: The Reboot  Tags: Sixth-Generation FighterJapanSecurityMilitaryF-35

Peter Suciu is a Michigan-based writer who has contributed to more than four dozen magazines, newspapers and websites. He is the author of several books on military headgear including A Gallery of Military Headdress, which is available on Amazon.com.

2020年7月4日土曜日

イラン核施設の大規模爆発はサイバー攻撃の成果?

Credit: ISI

ランの重要核技術施設が広範囲に破壊された。「運動性サイバー」兵器を使う実態不明の攻撃によるものと専門家が話している。

イスラエルは世界に対しイランが核爆弾製造の動きを止めていないことを証明しようとここ数週間注力している。これがイラン国内の核関連施設で「インシデント」が多発している理由とする専門家があり、また核開発に深く関連した同国パーチンParchin秘密施設で発生した大規模爆発の原因だという。

パーチンで7月3日金曜日に発生した大爆発は衛星写真でわかる。イラン当局は最初は爆発はパーチン軍事基地の「一般地区」でガス漏れが発生したためと説明していた。イラン軍は同基地で核弾頭用の高性能爆薬をテストしていた。

ガス貯蔵施設はコジール Khojir ミサイル施設内にある。今回の爆発は固体燃料式ロケットのメーカー、シャヒド・バケリ産業グループShahid Bakeri Industrial Groupに大きな打撃となると述べる専門家がいる。同地の大型産業施設は衛星写真で識別可能であり、ミサイル組み立てを行う場所であるらしい。

さらにイラン政府関係者ははナタンズNatanz 原子力発電所近くの建物に損傷の発生を認め、「事故」が発生したと述べた。重要な遠心分離施設に損害はなかったとも述べた。

イスラエルは秘密施設での大規模爆発との関連を否定している。

だが複数筋が爆発は「運動性サイバー」攻撃を「大規模勢力」が行ったことで発生したと見ている。

サイバー専門家は匿名を条件にサイバーは多様な使い方をされると述べている。たとえば、保安監視カメラ全部を止め保安要員が状況を把握できなくなるようにするという。

イスラエル専門家はイランで核開発が加速してきたのは武器禁輸がこのまま続くと核爆弾製造に必要な物資やシステムの入手が困難になるとイランが見ているからだという。

昨年、米国防情報局はイランが中東で最大規模の地下施設を運用しており、「弾道ミサイルの大部分の支援、開発、運用も担当している」と発表していた。

テヘラン近郊のミサイル基地で発生した前回の大爆発で革命防衛隊のミサイル部門トップ、ハッサン・テヘラニ・モガダムHassan Tehrani Moghaddam.が死亡している。イラン当局は当初はこれも事故と述べ、やはりイスラエルの関与が疑われていた。

イラン核施設への大規模サイバー攻撃は2010年に始まり、イスラエルと米国がスタクスネットを使った。

マーティン・イヴェジック(サイバー専門家)はスタクスネットの原型は2007年に使用されたが標的に到達しなかったとペーパーに記している。おそらく当時は情報収集が目的だったのだろう。その後、改修を加え諜報活動に投入され、マルウェアが作られたようだ。

イヴェジックによるとイラン関連で得た情報ではスタクスネットをイランのエアーキャップ式(つまりインターネット非接続)のナタンズ施設に2009年送り込んだ。「このためにイラン企業5社を感染させた。ナタンズに装備納入した企業だ。各社の技術員がラップトップをナタンズに接続すると、知らないうちにスタクスネットがダウンロードされ、施設内に拡散していった。こうした間接接続でスタクスネット開発陣はマルウェアを2010年にかけアップロードしコマンドを出していた。ただし、施設と直接の接続はしていない」

スタクスネットはマルウェアとして史上最大の予算をつぎ込んだといわれ、規模から見て国家の関与がなければ実行不可能だ。またイランのウラニウム濃縮施設内の器具だけを狙う精密すぎる攻撃を行った。

この攻撃で遠心分離機ローターが2方面で損傷を受けた。まず分離機が安全速度を超える加速を始めたと思うと、今度は安全域以下の速度へ減速された。マルウェアはその後数週間潜伏し同じことの繰返しで探知されないようにした。2回目は複雑な手順で圧力を限度以上に加えて、ローター部分がストレスを受けた。

サイバー兵器の利用が増えている国がふたつある。イランはイスラエル居住区へ流れる水の塩素含有率を高めようと4月にサイバー攻撃したとフィナンシャルタイムズが報じている。

イスラエル国家サイバー局の局長はこの攻撃は回避できたが、実行されていれば塩素や他の化学成分が水源に注入されていたと語る。また水道ポンプの安全装置が働き作動が停止すれば熱波の中で数千世帯が断水していたはずという。

匿名のイスラエル関係者はこの攻撃のあとで「予測不能リスクのシナリオ」が作成され、民間への攻撃の繰り返しに対応しているとフィナンシャルタイムに語っている。両国とも実害の発生を今のところは回避している。■

この記事は以下を再構成したものです。

Cyber Strike By Foreign Force Caused Iran Explosion: Israeli Experts

Iranian officials confirmed damage to a building built near the Natanz nuclear power plant today, saying an "accident" occurred. Israel has denied any connection to the huge explosion in the secret facility.

By   ARIE EGOZI

on July 02, 2020 at 2:32 PM

未だに戦力を誇るSu-27フランカーファミリーの見分け方



Su-27SM、Su-30SMはともに頑丈な機体で長期間供用に耐える。両機とも製造は安価にでき、性能は新型Su-35と比べても遜色ない。

ロシア戦闘機ではSu-35が最高性能機とされるが、ロシア空軍の機材は大多数が旧式各型だ。国際戦略研究所(IISS)の「2018年度版軍事力バランス」ではロシアは旧型フランカー220機近くを運行し、Su-35Sが70機なので3倍の規模だ。「旧型」フランカーと言っても多様な機種があり、Su-27原型以外に改修型SMの他、複座型もある。だが旧型フランカーは今でも威力があるのか。一部はSu-35Sの性能に匹敵するのだろうか。

まずIISSが50機あるとする初期フランカーとは1985年に供用開始したSu-27Sのことだ。その他、複座型Su-27UBが10機ある。各機のレーダーはあまりにも旧式で現在の戦闘機と比べ見劣りがする。

Su-27Sだけがセミアクティブレーダーホーミングミサイルを発射できるが、R-27ミサイルの飛翔中は機首を標的に向けたままにする必要がある。R-27ERは射程が伸び、中間誘導機能がつくものの同機は最新の空対空戦術で用いるアクテイブレーダーホーミングミサイルは使用できない。

ただし近接距離でのドッグファイトとなれば機体の頑丈さとヘルメット搭載視野表示装置、さらにR-73ミサイルが強みを発揮する。オフボアサイト対応可能な赤外線ミサイルロッキングは登場当初こそ革命的と言われたが、その後登場の米機にはAIM-9Xと共用ヘルメット搭載照準システム(JHMCS)がつき、Su-27Sより幅広い角度で敵機をロックアップし撃破できる。

フランカーで初めて多任務機になったのはSu-27SMで47機ある。近代化改修機材として2003年登場した。近代化は大部分がエイビオニクス改修で既存装備の性能を引き上げた。

地図機能が追加され、誘導空対空兵装にはKABレーザー誘導爆弾、Kh-29型ミサイルが加わった。アクティブレーダーホーミング方式のR-77ミサイルも導入された。エンジンを新型に切り替える近代化改修が2007年から始まっている。

改修によりSu-27SMは真の多任務機となり、低費用で応急しのぎの改修を行ったと言える。さらに本格的改修を行ったのがSu-27SM3で14機が供用中だ。同機は近代化に加え、SM3標準で作り込まれた機体で、中国用に想定していた機体から製造したと解説する向きがある。Su-27SM3はそれまで輸出用フランカーだけが使っていた技術多数を採用している。

Su-27SM3には強力なイルビスEレーダーが搭載され、Su-35Sと共通する。新型エンジンは推力を上げ、航続距離が伸びた。ハードポイントは追加して合計12点になった。機体剛性を高め3トンに及ぶ追加装備の運用を可能にした。

コックピットもSu-27SM3で大幅に近代化し、多機能ディスプレイ4面とし、Su-27各型の古臭いダイアル式計器盤と好対照だ。さらに新型通信装置で安全に通信できるようになった。

Su-27単座機の流れではSu-27SM3が最高性能の機体だ。ロシアにはさらに高性能の複座型Su-30があり、それはSu-30M2とSu-30SMだ。

Su-30各型はほぼSM3に匹敵する高性能戦闘機だ。空対地兵装を搭載し、MFDをコックピットに導入し、エンジンは改良型で推力偏向効果により一定の条件では操縦性がさらに高まった。Su-30でも兵装用ハードポイントが12箇所あるが、イルビス-Eレーダーは積まず、長距離交戦能力は劣る。

Su-35Sは無論、こうした機材と一線を画す機体で、推力偏向性能を高めたエンジン双発、イルビス-Eレーダー、新鋭コックピットがあり、ロシアの空対地兵器すべてを運用できる。

各型の近代改修には利点もある。Su-27SM3はSu-35よりずっと安価ながら事実上同じ水準の長距離戦闘能力を有する。Su-30はパイロット間で負担を分担し、対地攻撃に威力を発揮するだろう。

ひとつ問題なのは新設計のSu-30M2、SM、Su-27M3はフランカーの半分を占めるにすぎず、残る半分がSu-27S、SM、UBの各型で性能は相当落ちる。ただしこれも時間がかかるが解決に向かうだろう。新型Su-57の供用がはじまっているからだ。■

この記事は以下を再構成したものです

June 28, 2020  Topic: Security  Region: Europe  Blog Brand: The Reboot  



2020年7月2日木曜日

米海軍がめざす第6世代機NGADの開発進捗状況;画期的技術の成熟化を待つか、既存機の改修を進めるか

海軍は現行のF/A-18と交代する新型第6世代艦載戦闘機の実現をめざし、機体構造、照準システム、人工知能を応用したセンサー、新型兵装やエンジン技術の分析を進めている。

海軍がめざす新型機は次世代航空制圧機(NGAD)と呼ばれ、構想段階はすでに終わり、試作機製造段階にあり、2030年以降に姿を現すはずだ。

海軍関係者は現在の検討対象に「機体設計、高性能エンジン、推進手段、兵装、ミッションシステム各種、電子戦」があると述べている。

現在は既存技術の延長線として兵装、センサー、ステルスによる性能向上を目指しており、これから登場する技術には長い時間を確保する。

ここ数年の米海軍は初期性能分析から作業を進めてきた。海軍の2021年度予算要求ではF/A-18の生産数を落としNGAD予算を捻出するとUSNI Newsが2月に伝えており、興味をひかれる。記事ではスーパーホーネット削減で最大40億ドルを第六世代艦載機の実現にあてるとある。

今後は未確立技術の成熟化を睨んで第6世代戦闘機に関する決定が進むはずだ。その例が開発中の次世代ステルス技術でレーダー波探知を逃れる設定、塗料素材、熱特徴削減技術が急速に実戦に投入できる水準に達しつつある。

だが各技術が成熟化するまで第6世代機の正式開発を開始しないほうがいいのか、あるいはつなぎとして現行機改修を進めたほうがいいのか悩ましい問題になっている。

2016年に出た論文には現行システムの中に長期にわたり有望な成果が期待できるものがあるとあり、「F-35を航空戦に最適化した新型機種」、B-21、無人機を発進するC-130「母機」、「武器を満載した重武装機」を現行技術の応用で最適化できる例にあげていた。

こうした装備品に無人戦闘機、人工知能で強化したセンサーやこれまでにない有効距離の新型兵装を加え、人工知能、処理速度、ソフトウェアアップグレード他の段階的改善が可能となる。

こうしてみると性能改修がうまく行っている装備品と新規装備品だが実現まで10年近くかかるものとの差は実は大きくないことになる。

最初から性能改修を想定しステルス技術を織り込んだ例がB-21であり、海軍航空部門にも同じ考え方が応用できるだろうか。この手法なら真の意味で「ブレイクスルー」となる内容を追求する際のリスクや負担を軽減しつつ、予算や資源を解放し長期的にパラダイムを変化させる画期的な航空戦闘技術の実現に投入できるはずだ。

さらに現行のセンサー、エイビオニクス、兵装の各システムは人工知能への依存を高めており、アルゴリズム更新やアナリティクス技術さらに処理速度を変更すれば大幅な性能向上が実現する。こうしてみると全くの新型機が本当に必要になるとすれば、いつまでを想定すべきかが問われる。2030年代でいいのか。検討は今も続く。■

この記事は以下を再構成したものです。

June 27, 2020  Topic: Security  Region: Americas  Blog Brand: The Buzz  Tags: MilitaryTechnologyWeaponsWarNavy


Kris Osborn is the defense editor for the National Interest. Osborn previously served at the Pentagon as a Highly Qualified Expert with the Office of the Assistant Secretary of the Army—Acquisition, Logistics & Technology. Osborn has also worked as an anchor and on-air military specialist at national TV networks. He has appeared as a guest military expert on Fox News, MSNBC, The Military Channel, and The History Channel. He also has a Masters Degree in Comparative Literature from Columbia University. 

2020年7月1日水曜日

台湾領空への中国機進入相次ぐ。米軍がいなければ大変なことになる。日本はどう動くべきか。

中台で緊張が高まっていますが、日本も台湾だけの問題ではないと気づくべきでしょう。地政学というか視点をどこまで広げて考えられるかがポイントです。武漢ウィルスに気を取られてばかりでは流動的な安全保障環境についていけなくなりますね。

国軍用機がまたもや台湾領空を侵入し、情報収集や偵察を行った他、米偵察機の動向をつかもうとした。

中国政府がバックにつく環球時報は人民解放軍が台湾南西部の領空内に航空機を送ったのはこれで八回目と記している。記事ではミッション回数はっ増加中と堂々と述べ、訓練が目的であり、同時に対象空域内を飛ぶ米偵察機の監視もしているとある。

飛行回数増加は「台湾の軍事情報を収集し、米日両国が宮古海峡、バシー水路を経由して増援部隊派遣に動く可能性を牽制するのが目的」と記事にある。また中国軍の動きは台湾南西部の軍事基地の監視を目指しているとの書きぶりもある。記事では機種が示されていないが、J-10、J-11、Su-30の各戦闘機およびY-8「特殊任務機材」が飛来している。

中国機の飛来そのものには驚くべき要素はないが、米国が太平洋全域で飛行ミッションを強化し、偵察行動、各国との共同訓練を展開する中で中国がフライトを実施していることに要注意だ。米議会は太平洋における米軍活動を強化すべく予算増を急いでおり、下院軍事委員会の有力議員マック・ソーンベリー下院議員(共、テキサス)提出の構想にはインド太平洋構想の名称がつき、太平洋方面での米軍活動向けに60億ドルの増額を求めている。

緊張の高まりに火を注ぐように環球時報では中国が行った米軍事力のアジアにおけるプレゼンスの分析結果にふれ、米海軍は6割の艦船をアジアで運用し、陸軍は55%、海兵隊は3分の2だとする。「85千名とハイテク装備新型装備を大量に前方配備した米軍はアジア太平洋で絶対的な優位を維持している」とある。

戦略面で米中の軍事力構成と活動の強化ぶりを見ると冷戦時代の枠組みが想起される。両国で多大の経費が発生し、不安を駆り立てられそうだ。ただし、興味を惹かれるのは米軍の増強で域内の安全安定が強化されやすくなる皮肉な結果で、抑止力の強化としてとらえられるからだ。前方配備装備も実戦で使用しないために現地展開しているのだ。相互にディエスカレーションがのぞましいのはいうまでもないが、力による平和との考え方にも一定の利点があるのは明白だ。■

この記事は以下を再構成したものです。

June 27, 2020  Topic: Security  Region: Asia  Blog Brand: The Buzz  Tags: MilitaryTechnologyWeaponsWarChina

Kris Osborn is the new Defense Editor for the National Interest. Osborn previously served at the Pentagon as a Highly Qualified Expert with the Office of the Assistant Secretary of the Army—Acquisition, Logistics & Technology. Osborn has also worked as an anchor and on-air military specialist at national TV networks. He has appeared as a guest military expert on Fox News, MSNBC, The Military Channel, and The History Channel. He also has a Masters Degree in Comparative Literature from Columbia University.