2021年4月8日木曜日

F-15EX制式名称がイーグルIIへ。名称はともかく、同機の将来は明るい。一方で、米空軍はF-35Aの当初調達規模を断念する気配。戦闘機機材構成はますます混乱しそう。

 

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最低144機の調達が決まっているF-15EXは米空軍で最新鋭の機材となり、今後重要な役目が期待されている。

U.S. AIR FORCE / FACEBOOK SCREENCAP

 

米空軍向け最新型戦闘機のボーイングF-15EXの制式名称がイーグルIIになった。フロリダのエグリン空軍基地での受領式典で発表された。初号機引き渡しとしては地味な式典となったが、シリアルナンバー20-0001の機体は空軍の輝かしい戦闘機の伝統を体現し、名称は一部には失望となるが、疑いなく戦後戦闘機の比類なき実戦記録を実現してきた機体の伝統を引き継ぐものだ。

 

F-15EX初号機は3月10日に空軍に引き渡され、ボーイングのセントルイス工場からエグリンまでフェリーされた。現在は第40飛行試験隊がテスト中だ。新規製造F-15の空軍納入は17年ぶりとなった。

 

40TH FLIGHT TEST SQUADRON/PUBLIC DOMAIN

米空軍で供用中のイーグル各型をそろった。手前からF-15C/D、G-F-15E、F-15EX。

 

F-15EXの名称をThe War Zone がすっぱ抜いたのは2年半近く前のことだ。それ以降、同機の性能変更点などをお伝えしてきた。直近記事ではF-15EXで新型極超音速兵器運用も想定されているとあり、空軍戦力の質的変化を象徴している。

 

空軍は合計144機を調達し、旧型F-15C/Dイーグルに交代させる目論見を有する。さらに調達追加でF-15Eストライクイーグルの後継機にする構想もある。今回の制式名称発表のお披露目でデューク・Z・リチャードソン中将(空軍長官官房、自席軍代表)は調達技術平兵たん業務担当としてF-15C/D機材のおおよそ1割は機体構造問題のため飛行停止措置になっており、残る75パーセントの機体は想定寿命2万時間を超えていると述べ、F-15EXは最低でも50年間にわたり運用したいと述べた。F-15が来年に初飛行から半世紀を迎えることを考えるとこの意味は大きい。

 

制式名称がついたF-15EXはエグリン基地で飛行テストを続け、その後第一線部隊に配備される。テスト用二号機20-0002は製造が最終段階で、今月にも第85試験評価飛行隊に納入される。第40飛行試験飛行隊と85試験評価飛行隊は開発テストと運用テストを同時並行で実施する。さらに4機が2023年度末までに空軍へ引き渡される。

 

U.S. AIR FORCE/TECH. SGT. JOHN RAVEN

F-15EX初号機に第40飛行試験隊のマーキングがつき、エグリン基地に移動された。

 

その後、2014年にオレゴン州軍航空隊第173戦闘飛行隊へ引き渡しが始まる。同部隊はF-15C/Dを使う練習飛行隊だ。その翌年にオレゴン州軍142戦闘航空団が初の同機運用部隊になる。これは2025年度の予定だ。米本土防空任務の93パーセントは州軍各部隊が担当しており、現行のF-15C/D型をF-15EXあるいはF-35Aに更改する方針だが、機種構成の詳細は非公表だ。

 

ただ今後のF-15EXではエンジン選択が確定していない。初期生産分6機にはジェネラルエレクトリックF110-GE-129が搭載され、空軍は同エンジンまたはライバルのプラット&ホイットニーF100-PW-229のいずれかを選定する。

 

F-15EXの作戦体制整備への道筋がすんなりと進むのは有償海外援助用F-15で得たデータが活用できるからだ。そのうちカタール向けF-15QAが今回のF-15EXの原型だ。機体生存性はフルテストを実施せず、既存テストデータを使い予算を108百万ドル節約しつつテスト工程を加速化できる。

 

同機の生存性に必須のイーグル・パッシブ/アクティブ警報生存性装備(EPAWSS)のレーダー警報・電子戦装備一式は開発過程にあり、F-15Eに搭載され大規模演習シナリオでのテストに供されている。

 

米空軍がこれまで守ってきたF-35A1,700機調達の意欲を減らす中、F-15EXの将来は明るい。F-16の新規製造機材調達を堂々と口にする関係者も現れており、F-35A調達数削減も話題に上がり、一方で各種無人機の可能性に関心が集まっている。

 

機材構成ではF-35が中心と繰り返す発言が空軍にあるが、同機は「ハイエンド」機材である、というのが空軍参謀総長チャールズ・ブラウン大将の言葉で、費用対効果が優れる機材に調達可能性が開いている。その中にF-15EXがある。

 

一方で今回の制式名称のありふれた響きに関心が集まる。F-15イーグルに続いて、F-15Eがストライク・イーグルと呼称され、大幅改修を受け維持が決まったF-15C/Dの179機は非公式ながらゴールデン・イーグルと呼称された。そこにF-15EXが登場したのだが。

 

ボーイングはアドバンスト・イーグルを推し、新型F-15の販売拡大を図っており、F-15EXもこの流れで生まれた機体である。他方で末尾の「II」はF-35ライトニングII、空軍向け次期捜索救難ヘリコプターのジョリー・グリーンIIで見られる。さらにA-10サンダーボルトIIも過去の機体に敬意を表し命名された。F-16で実戦部隊がヴァイパーの名称をつけているように別名称が登場するかは時がたてばわかるだろう。

 

イーグルIIの名称がお気に召すかは別に同機の未来は有望なようだ。■

 

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The F-15EX Is Now Officially Named The Eagle II

With plans to buy at least 144 copies, the Air Force’s latest fighter is set to play a prominent role in the service’s future plans.

BY THOMAS NEWDICK APRIL 7, 2021

 


無人機が無人機を空中発進させ、回収する日が近づいている。XQ-58がこのたび小型無人機を空中発進させる実験に成功した。

 U.S. Air Force

 

 

XQ-58が小型無人機を機体兵装庫から発射し、米空軍は将来の戦闘形態で新しい一歩に踏み出した。

ステルス機形状のXQ-58Aヴァルキリー無人機が兵装庫からミニ無人機を発射し、無人機が無人機を運用する新しいチーム形成の突破口が開いた。チームの目標は協調型かつ自律運航可能な無人機からミニ無人機を発進させ、有人装備操作員とともに機能させることにある。今回成功したのは空軍研究本部で実施日は3月26日、場所はアリゾナ州ユマ実験場だった。ヴァルキリーの飛行テストとしては六回目で初めて兵装庫からミニ無人機を放出したと空軍が発表している。

 

ヴァルキリーが発進させたのはクレイトス製のALTIUS-600ミニ無人機で同機兵装庫を飛行中に開放したのは今回が初と空軍は説明。ヴァルキリーは追加テストポイントも達成し、従来のテストを上回る速力、高度を達成したとある。無人機で無人機を発進させる能力が実現したことの意味は大きく、空中発射でしかも空中回収可能な無人装備の運用は大きな進歩となる。

 

今回の実証から新しい可能性が戦術面で生まれる。無人機が無人機を空中発進させ、ミニ偵察装備として強固な敵空域や脅威対象に対応させる可能性が開けるからだ。小型サイズを武器に撃墜される可能性が低いだけでなく、小型無人機は攻撃手段にも転用できる。ヴァルキリーは有人機との組み合わせ運用で爆弾投下など武器運用も可能となっている。

 

今あるデータを見るとヴァルキリー(全長28フィート)は最高速度650mphでJDAM(精密誘導共用直接攻撃爆弾あるいは小直径爆弾を運用できるとある。

 

有人機無人機の組み合わせ運用で従来なかった運用が可能となった。ヴァルキリーは「忠実なるウィングマン」構想で開発されており、F-22やF-35といった有人機のコックピットから運用可能となる。前方の監視偵察への投入以外にミッション範囲を拡大するテストが行われており、敵地上空から爆弾投下する機能も実現するだろう。そこに最新テストでは有人機-無人機-無人機の多重チーム編成が実現し、敵地へさらに深部まで作戦範囲を拡大しながら、リアルタイムで敵映像を送り、標的データをネットワークで共有できるようになる。

 

空軍上層部はヴァルキリーのような新型装備で今までは不可能だった付加価値の実現を話題にしており、作戦効率を急激に引き上げる手段として期待している。

 

変革的性能実現及び戦略開発計画実験部門をまとめるクリス・リスティッチは「こうした実験を続けて今は実行不可能なミッションを支援していきたい。最新装備を有効活用する」と2020年度の空軍協会の席上で空軍研究本部のメディアイベントで述べていた。■


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Drones Launching Drones: The XQ-58 Valkyrie Just Tested a New Upgrade

 

April 7, 2021  Topic: U.S. Air Force  Region: Americas  Blog Brand: The Buzz  Tags: XQ-58DronesU.S. Air ForceXQ-58A ValkyrieMini-DronesMilitary

by Kris Osborn

 

Kris Osborn is the defense editor for the National Interest. Osborn previously served at the Pentagon as a Highly Qualified Expert with the Office of the Assistant Secretary of the Army—Acquisition, Logistics & Technology. Osborn has also worked as an anchor and on-air military specialist at national TV networks. He has appeared as a guest military expert on Fox News, MSNBC, The Military Channel, and The History Channel. He also has a Master’s Degree in Comparative Literature from Columbia University.

Image: Wikimedia.


2021年4月6日火曜日

注目の進展、中国とイランの戦略合意成立はどんな意味があるのか。計算高い両国のこと、思惑がそのまま実現するとは思えず、イランは核合意体制の再開を狙っているはず。

 


今回の合意により、米国主導の経済制裁から脱する機会が長期的にイランに生まれるはずだ。

 

  1. 中国とイランが戦略枠組み合意を調印し、25年の有効期間を想定している。一部観測筋にはこれで中東の構図が一変し、中国は米国に対抗し中東に足場を確保したとの見方がある。また、今回の合意によりイランはバイデン政権への立場を強め、核合意体制再開に展望が開けたとの見方もある。合意により長期的にみて、イランは経済、戦略両面で同国ににらみを利かす米国など各国の狙いから自由になり、そのため中東地区でのイラン影響力を抑え込むもくろみが効果を減ずることになりそうだ。

  2. 今回の合意内容は2016年から検討が進んでいたが、調印が遅れたのはイラン側に米イラン関係への悪影響とともにイラン核合意体制JCPOAにも影響が出て、制裁措置の解除が遠のくとの懸念があったためだ。ドナルド・トランプ前大統領が核合意体制から脱退し、以前より厳しい制裁措置を実行したが、バイデン政権も核合意体制復帰に躊躇し、あらたな経済戦略措置の選択肢が必要との機運が高まっている。

  3. 中国イラン合意の詳細内容は非公表だが、ニューヨークタイムズが昨年入手した18ページ草案と大きな違いはないと見られる。25年間にわたり中国が4,000億ドルを、金融、通信、港湾、鉄道、医療、情報技術等の各分野に投入する。見返りにイラン原油を大幅割引価格で輸入すると草案にあった。さらに、ニューヨークタイムズが正しければ、草案には軍事協力の拡大、兵装開発、情報共有の推進も盛り込まれている。

  4. これだけ大規模の願望が今後25年間にわたり実行に移されるかが注目される。というのは、中国イラン両国は複雑な対外圧力の影響をまぬがれることができないためである。中国にとって今回の合意事項は一帯一路の一環としてイランを同構想に組み込むことを意味する。また米国の独壇場とされる分野に食い込むことを躊躇しないとのメッセージを米国に対し中国は示せる。

  5. イランの観点では、米国による経済戦略包囲網から脱する効果が期待できる。ことにイラン米国間で核合意体制再開をめぐり微妙な駆け引きが続く中、どちらが先に妥協の姿勢を見せるか静視する状態なので今回の合意に意味が出てくる。米国の主張はイランがまずJCPOAで定めた核開発停止を実行すべきで、しかる後に米国は制裁措置の解除に踏み切る、というものだ。だが米議会内外に高まる圧力でバイデン政権は最初の一歩を踏み出すことが難しくなっている。イランは中国との戦略合意により対米交渉力が高まったとみており、経済・戦略面の選択肢が広がり、欧米の善意に頼る代償として現体制の存続を犠牲にしなくてもよくなったと見ている。

  6. ただし、中イラン関係がそのまま拡大する前には大きな制約が存在する。戦略問題特にインド太平洋地区をめぐり米国と緊張が高まる中で、中国は米国との経済関係で動きがとれなくなっており、経済権益を考慮すればイラン支援が全面的に行えなくなる場合も想定される。さらに中国は中東地区で米国と真正面から対立することに積極的になれない。対立が世界規模に拡大しかねず、とくに南シナ海問題への波及を恐れるからだ。さらに中国には湾岸地区で死活的経済権益がある。イランの敵対勢力のサウジアラビア及びアラブ首長国連邦は中国向け原油の大手供給国であり、中国としてはイランとの関係構築で大切な両国との関係を損ないたくないとの計算もある。今回の戦略合意調印式でテヘランを訪問した王偉外相がリヤド、アブダビにも足を伸ばしている事実に注目すべきだ。

  7. 最後に、イランはJCPOA再開により欧米諸国による経済制裁の解除を願望している。その後、各国と経済関係を樹立し、特に貿易、直接投資、技術移転を進め自国の経済再建を狙うからだ。中国資金の流入は長期的には石油収入減少につながり、西側との良好な関係による想定効果を犠牲にしてよいものではない。

  8. 中国、イランは二国間関係の強化で米国へ対抗をめざす。だが、こうした目論見には制約がついてまわり、長期にわたる戦略関係の実現は容易ではない。とはいえ、有効な結果を生むことは長期には可能であり、協力パターンの定着もあり得る。このためワシントンも今回の中国イラン合意内容を精査し、核合意体制から脱退した事実を改めて認識し、遅延なくまた無条件にJCPOAに復帰すべきである。■

 

The New China Challenge: A Game-Changing Strategic Agreement with Iran

April 3, 2021  Topic: Security  Region: Asia  Tags: IranChinaTradeSanctionsForeign Policy

by Mohammed Ayoob

 

Mohammed Ayoob is University Distinguished Professor Emeritus of International Relations, Michigan State University, and a senior fellow for the Center for Global Policy. His books include The Many Faces of Political Islam and, most recently, Will the Middle East Implode and editor of Assessing the War on Terror.


この兵器はなぜ期待外れに終わったのか➂ コンヴェアB-58は時代の変化に対応できなかっただけでなく、開発のシステム思考に問題があった。F-35に教訓は全く生かされず残念な結果が繰り返された。

 


 

 

ンヴェアのデルタ翼爆撃機ハスラーは一歩先を行く機体だった。

 

1956年11月11日、B-58ハスラー一号機が初飛行した。同機は実戦に投入されることはなかった。独特の形状で優雅な同機は高速飛行し核攻撃を行う想定で作られたが、ソ連の防空戦術の変更に対応して開発方針が変わったため経費が高騰し、自ら首をしめることになったが、もともとはB-47ストラトジェットの後継機の想定だった。

 

コンヴェアが開発したデルタ翼のハスラーは超音速爆撃機としてマッハ2.0飛行を実現しB-52ストラトフォートレス、ストラトジェットと一線を画す機体になった。

 

ハスラーは全長95.10フィート、翼幅56.9フィートと爆撃機としては小型機で、これに対しB-52は全長で64フィート、翼幅で128フィートも大きい。

 

ハスラーはスピードが命で、空軍はB53核爆弾(9メガトン)一発あるいはB43あるいはB61核爆弾4発をパイロンに搭載し、迎撃機が対応できない速力と高度でソ連や中国にダッシュ侵入する想定だった。

 

CIAは1964年に同機を迎撃可能な中国機はMiG-21フィッシュベッドのみで、かつ迎撃に成功する可能性は「わずか」と分析した。

 

これはすべてJ79-GE-5Aターボジェットエンジン4基各10,400 ポンド推力で実現したことだ。デルタ翼形状も高速飛行に寄与したが、抗力の発生により機体形状を再設計し、カーブのついた「コークボトル」となった。大型の燃料兵装ポッドを胴体下部に装着した。

 

発熱を抑えるべくコンヴェアはB-58の表面をハニカム構造のファイバーグラスのサンドイッチ構造でアルミ、スチールを一体化し、鋲の代わりに接着剤を使った。この技法がそののちの民生機にも応用されるはずだった。

 

ただし、ハスラーの小型形状がソ連領空進入の面で最大の欠点となった。空中給油なしだと航続距離はわずか1,740マイルとなった。このためハスラーはヨーロッパに配備し、同時に相当数の空中給油機も準備した。

 

航続距離の短さを空軍が懸念したと空軍大佐(退役)エリオット・V・コンヴァースIIIが著した冷戦時の回想録Rearming for the Cold War, 1945-1960にある。

 

戦略空軍のカーティス・ルメイ中将は同機が気に入らず、はやく戦略空軍から除去したかった。

 

同機の機構が複雑なことが状況を悪化させ、多額の費用が発生した。運航経費はB-52の三倍になり、対応が困難だった。機体再設計で「コークボトル」にしたことで開発が遅れ、経費も上昇した。

 

調達数も変更となった。空軍は116機で打ち切り、当初構想の三分の一規模になった。同機の高速飛行に呼応し航法、爆撃用にスペリーがAN/ASQ-42を開発したが、費用も高騰し、厄介な開発となった。

 

J79エンジンも難航した。ブレーキ、射出座席も開発がスムーズにいかなかった。「B-58は数々の速度記録を樹立したが、巨額の開発費用に見合わなかった」とコンヴァースは記している。

 

ハスラーの前途に立ちふさがった二つの事象が決定的となった。まず、ソ連の地対空ミサイル開発が進展し、1960年5月に高高度を飛行中のU-2スパイ機を撃墜するまでになった。この際に使われたS-75ドヴィナ(NATO名称SA-2ガイドライン)はB-58の実用最高高度の数千フィート上空までを有効射程に収めた。

 

対応策として低空飛行があったが、大気密度のため飛行速度が犠牲になる。ハスラーの設計目標に反することとなり、さらに低速度での機体制御が難しくなった。このため相当の機体を喪失した。

 

二番目の問題は米空軍が開発の各要素を同時進行で求めたことで、その後のF-35共用打撃戦闘機と類似している。

 

「システムとして最初から統合した形で構想し、原案をもとにすべての面でシステム形成をめざし、サブシステムや支援施設装備の投入、訓練内容も計画し、すべて同時並行で進めることをめざした」と上述のコンヴァースが述べている。

 

困ったことに一つに問題が発生すると全体の進捗に波及的な影響が生まれた。「B-58で些細な問題が見つかると、システム規模で再設計するか、問題が解決されるまで待つことを与儀なくされた。そのため開発が遅れ、せっかく準備した生産体制を破棄することになり、コストが上昇し、開発全体が遅れた」

 

これは遅延が何度も発生したF-35のようだ。空軍は同時進行開発によりステルス戦闘機は効率よく開発できるとしていたが、そうならず、現実はその反対となった。

 

B-58ハスラーは実戦を見ることなく、非核ミッション仕様にも改装されなかった。1970年1月に同機は用途廃止となった。空軍の核攻撃ミッションは低空飛行をするB-52、B-1、FB-111、ステルスB-2、弾道ミサイルにまかされた。

 

B-58の失敗体験が生かされず、革新的技術を応用する機体を同時進行で開発する危険性が画されてしまったといえる。■

 

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How the Beautiful B-58 Hustler Lost Its Chance at Life

April 4, 2021  Topic: B-58 Bomber  Blog Brand: The Reboot  Tags: B-58MilitaryTechnologyWorldBomber

by Joseph Trevithick

Image: Wikipedia.


2021年4月5日月曜日

2021年4月4日、遼寧空母打撃群が宮古海峡を通過していた。中国の空母打撃群整備は今後も進む。日本含め周辺国はどう対応すべきか。

 THE WAR ZONE

PLAN STRIKE GROUP

PLAN

 

  

国初の航空母艦遼寧が宮古海峡を4月4日に通過航行した。ソ連が建造し中国が改修した同空母は5隻を伴い、打撃群を構成している。

 

統合幕僚監部発表では以下の各艦が通航した。


052D型ルーヤン級駆逐艦2隻

055型レンハイ級ミサイル駆逐艦1隻

054A型ジャンカイ級IIフリゲート1隻

901型フーユー級高速戦闘支援艦1隻


JAPAN SELF DEFENSE FORCES

宮古海峡を通過した遼寧空母打撃群各艦の写真を日本が公表した。

 

加えて自衛隊は宮古海峡上空を飛行する陕西Y-9一機も探知し、迎撃した。中国は同型機を改装し、電子偵察機あるいは哨戒機として使用しており、相手国の艦船を探知し、対応体制に関する情報を収集しつつ、味方艦船の追尾方法も把握できる。

JSDF

The track of the Y-9.

JSDF

 

宮古海峡は狭いながら国際水域につながり、日本の排他的経済水域を通過することから重要な戦略的水路とみなされる。米空軍で中国関連の安全保障問題を専門とするベン・ローセンは「中国の戦略思考ではこうした水路は第一列島線の外へ部隊を移動するため死活的な意味があるとする」

 

今回の遼寧の航行は国際法上で問題はないが、武力を背景に強硬態度を強める中国の象徴であり、公海で空母打撃群を運用する技術に熟達してきた印にもなる。

 

Y-9に加え、台湾もY-8による領空進入を発表しており、国防部は台湾海峡上空を同機が飛行したとする。

TAIWAN MOD

空母打撃群の通航にあわせ中国はほぼ同時期にTY-8輸送機も飛行させた。

 

こうした挑発的な動きは前からある。遼寧はこれまでも宮古海峡を2020年4月に通航している。中国はCOVID-19のため同艦は行動できなくなっていたとしていた。

 

同空母の航行は南シナ海での対立が強まる中で実施去れた。3月22日フィリピンは200隻余り集合した中国漁船の撤収を求めた。その中に人民武装海上民兵部隊People’s Armed Forces Maritime Militia (PAFMM)所属の船舶数十隻が混じっていたとForeign Policyが暴露している。

 

この直近の南シナ海での進展も中国が繰り広げる強硬策の一環にすぎず、遼寧が熟達した空母打撃群として第一列島線を出ると、人民解放軍海軍のめざす大洋での作戦展開の夢の実現にまた近づく。

 

遼寧には国産建造したクローン姉妹艦山東があり、空母打撃群として日常的に投入できる状態になってきた。さらに三番目の空母003型の建造が上海で進んでおり、中国が兵力投射能力の整備をめざし空母部隊を整備しているのは明らかだ。■

 

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China's Liaoning Carrier Strike Group Passes Through Japan's Miyako Strait

China's ability to integrate its carriers with an increasingly advanced strike group continues to evolve, as does its blue water operations ambitions.

BY ADAM KEHOE APRIL 4, 2021