2022年3月6日日曜日

B-21レイダーが初飛行前の準備に入った。今年中のロールアウト、初飛行をめざす。調達規模は145機に拡大。

A rendering of the B-21 Raider stealth bomber.

USAF

 

空軍が開発中の次世代爆撃機B-21レイダーが初飛行に近づき、一号機が校正試験に入ったとの報道が出ている。校正は飛行前テストとして必要で、飛行荷重に機体が耐えらるかを検分する。

 

 

校正作業に入ったのはB-21が完成しているためだ。空軍は機体に主翼、降着装置がつき、「爆撃機らしくなった」と述べている。

 

USAF/PHILIPPE ALÈS-WIKICOMMONS

A digital rendering of how the B-21 may look.

 

発言は空軍迅速性能実現室長のランドール・ウォルデン Randall Waldenのもので、Air Force Magazineが伝えたものだ。

 

ウォルデンは荷重校正試験について「極めて通常のもの」とし、機体構造が「想定条件に耐えるか」を見ているという。

 

校正試験用の機体がノースロップ・グラマンの製造施設がある空軍42プラント(カリフォーニア・パームデイル)で完成した実機なのかはわからない。同施設では他に5機が製造中と判明している。

 

Aviation Weekにノースロップ・グラマンはB-21の初号機が「生産ラインを離れ、公式地上試験に投入されている。当社による事業実施の効率と速度を如実に示すもの」と伝えてきた。

 

同機を巡っては高度の保安体制が取られており、B-21初号機のシリアルナンバーはおろか、非公式名称も不明のままだ。ただ、ウォルデンは校正試験は初飛行機材が対象になるのは確実と述べている。

 

初飛行予定も不明だが、ウォルデンは全体日程にCOVID-19パンデミックの影響は大きくないと述べている。同時に、ノースロップ・グラマンは「画期的な事業実行とデジタルエンジニアリング」で時間短縮効果が生まれたとしている。

 

そうなるとB-21のデビューがいよいよ近づいているのは間違いないだろう。

 

U.S. AIR FORCE

B-21 concept art.

 

期待が集まるロールアウトは華々しいものになるとウォルデンは認め、「歴史的なイベント」となり「政府高官、報道陣」が招待されるとした。日程は未定だが、今年中と見られ、初飛行が直後に控える。ロールアウトが終われば、少なくとも外観がわかる。

 

B-21で判明している僅かな情報は公式発表が主で、今年初めにグローバル打撃軍団(AFGSC)の戦略立案担当ジェイソン・R・アーマゴスト少将Maj. Gen. Jason R. Armagostが以下述べていた。「B-21は敵地侵攻に投入され、接近阻止領域拒否をかいくぐる両用任務対応の機体となる」。最後の部分は核・非核対応を指す。

 

ロールアウトまでにエンジン含む機内各システムに入力を与え、低・高速タキシーテストも行うはずで、その後初飛行となる。場所はエドワーズ空軍基地付近のパームデイルになると見られ、飛行テストも同地で展開する。

 

B-21合計6機が存在しているか、製造中だとわかっているが、技術製造開発(EMD)段階で合計何機が製造されるかは不明だ。とはいえ、B-2でも同様の段階で6機が製造されていた。

 

空軍公表の計画では少なくとも145機のB-21を調達し、近代化改修型B-52と爆撃機部隊を構成するとある。

 

第一線部隊にB-21を相当数配備するまで時間がかかるが、米空軍が同機の登場でカウントダウンに入ったのは確実だ。■

 

First B-21 Raider Is Now Undergoing Calibration Tests As Official Rollout Approaches

The first B-21 now “really looks like a bomber” and after calibration tests, the bomber’s systems can be fired up.

BY THOMAS NEWDICK MARCH 3, 2022


 

開戦を防げなかったが米国はプーチンの動きを正確に予測していた。米情報機関の優秀な成果を認めよう。

  

 

政策立案者の情報への反応(注意を払うだけでは不十分で、それを信じて行動することも含む)が、情報内容と同様に重要である。

 

シアのウクライナ侵攻で目立つ特徴の一つに、バイデン政権が強く、明確に、かつ公然と予測していたことがある。バイデン大統領はじめ政府の評価は、あまりにも明確であったため、ロシアが開戦に踏み切らなかったらオオカミ少年になっていただろう。もちろん、戦争回避が西側の目的だった。

 

 

ロシアが侵攻するはずがない、プーチン大統領は武力示威で目的を達成するだけ、という専門家、評論家、コメンテーター多数の予測と、政権の姿勢が正反対だった。誤って予測した人たちは、謝罪の必要はない。(例外は、ソ連の指導者ニキータ・フルシチョフの曾孫にあたるニュースクールのニーナ・フルシチョワNina Khrushcheva教授で、「かなり恥ずかしい」と認めた)。また、「ロシアの侵攻はない」とのヨーロッパの通説に反して、政権が正しく予測したことも事実である。

 

外部から見て、政府内部での分析を評価する際に、今回の米国情報の成功で一つ注意すべき点は、プーチンの意思決定で正確な順序が分からないことだ。プーチンの対ウクライナ武力行使での考えは、バイデン政権の想定以上に条件付きのものであり、開戦決定が、米国はじめとする西側諸国の危機対応の影響を受けていた可能性がある。バイデン政権への批判勢力は、次のような議論の展開を期待している。戦争が起きるぞと大声で繰り返す予測しても、プーチンには侵略者のレッテルを付いており、失うものは何もない、という主張だ。

 

しかし、プーチンは今回の侵略により、経済制裁の大幅強化で、失うものが多くなった。さらに侵攻を正当化するプーチンの手の込んだ偽歴史的言説などの証拠をみれば、まさに米国政府が言うように、侵略が前もって計画されていたのがわかる。プーチンは、旧ソ連邦スラブ地域への長年の思いに基づき行動し、各地を再統一し、聖ウラジーミルの再来になろうとしているのである。

 

となると米国情報機関と政策立案者の評価は的を得ていたといってよい。今回の事例から、情報と政策に関し2つの一般的な見解が導き出される。

 

まず、今回の事案で、あらためて情報機関の成功・失敗に国民や政治が非対称的な反応を示すことがわかる。戦争、革命、核実験など、海外で異例な事態が起こり、米国政府が予測していなかった場合、世論調査は「情報の失策」と断じる反応が多く出る。あるいは、そのバリエーションとして、情報機関が仕事をしなかった、政策立案者が情報機関の意見を聞かなかった、という疑問が投げかけられる。今日、一部例外はあるが、ロシアの動きの予測に成功したという話は皆無に近い。

 

今回の事例が、次回の「情報の失敗」騒ぎの際に思い出されるかどうか興味深いところだ。おそらく、それはない。失敗や失敗と思われる事態が発生した後のお決まりのパターンは、根本的な制度的問題に帰することで、事案の固有事情はおざなりとなる。

 

もう一つ、仮に情報が完璧で、政策立案者が情報に注意深く耳を傾け、受け入れていても、米国が最善の努力をしたとしても、不測の事態を防ぐことは不可能だ。今回のバイデン政権の積極的な情報公開は、プーチンの意図を先取りし明らかにすることで、軍事計画の実行を複雑にし、回避を狙う戦術であった。最終的に侵略を防げなかったが、この戦術は試す価値があった。暴露することで、ロシアの計画を複雑にし、実行を思いとどまらせる可能性もあった。

 

今回の事例は、1967年の中東戦争でリンドン・ジョンソン大統領に米情報機関が開戦の可能性とイスラエルが短期で勝利するとの優れた分析を提供した事例を想起させる。CIA長官リチャード・ヘルムズは、この成功でジョンソン大統領政権で国家安全保障上の意思決定の場に座ることが許されたといわれる。しかし、ジョンソンの努力にもかかわらず、イスラエルは開戦に踏み切った。

 

今月のロシアとウクライナの状況は、1967年にジョンソンが直面した場合と似ている。

 

政策立案者の情報への反応(情報に注意を払うだけでなく、信じ、それに基づいて行動することを含む)は、常に情報内容と同様それ以上に重要だ。バイデンが攻撃に関し公に予測を繰り返す大胆な行動に出たことは、驚くべきことである。また、バイデンの前任者が、ロシアの違反行為に関し、自国の情報機関よりプーチンを信じると公言したのと大きな対照を示している。■

 

 

The Shot That Was Called: Intelligence and the Russian Invasion of Ukraine | The National Interest

by Paul R. Pillar

February 25, 2022  Topic: Russia-Ukraine War  Region: Europe  Blog Brand: Paul Pillar  Tags: Ukraine CrisisUkraineRussiaNATOIntelligenceVladimir Putin

 

Paul Pillar retired in 2005 from a twenty-eight-year career in the U.S. intelligence community, in which his last position was National Intelligence Officer for the Near East and South Asia. Earlier he served in a variety of analytical and managerial positions, including as chief of analytic units at the CIA covering portions of the Near East, the Persian Gulf, and South Asia. Professor Pillar also served in the National Intelligence Council as one of the original members of its Analytic Group. He is also a Contributing Editor for this publication.

Image: Wikimedia Commons.


ウクライナ戦、3月5日のまとめ。ロシア空軍機多数が撃墜された。プーチンは根拠ない発言を続けている。市民退避の安全回廊が機能していないなど。

 A screen shot from a video reportedly showing a shootdown of a Russian Mi-24/35 Hind helicopter flying over Ukraine.

SCREEN CAPTURE VIA TWITTER

 

戦後10日目となったが、ウクライナ上空で雌雄が決まらないままだ。その中でロシアが機材喪失を急増させたのが目立つ。ウクライナの軍、一般市民は抵抗し続けており、ロシアは主要都市包囲を強めている。3月5日の最新動向を見てみよう。

 

The Latest

POSTED: 1:30 PM EST—

 

ロシア軍が機材複数を喪失したのは確かだ。固定翼機、ヘリコプター、無人機多数をこの一日で撃墜されている。Oryx blogはオープンソース情報からロシアはSu-30SMフランカー1、Su-34フルバック2、Su-25フロッグフット2、Mi-24/Mi-35ハインド2、Mi-8ヒップ2、オリアン無人機1を喪失したとする。ロシアはウクライナ上空で多大な犠牲を強いられているようだ。

 

 

こうした撃墜の様子がオンラインで流出している。

 

未確認情報だが、撃墜されたSu-34の一機のパイロットはシリアで戦闘に従事していたという。このパイロットは脱出に成功し、ウクライナに身柄拘束されている。

 

ウクライナがロシア機材を撃墜した方法は明らかになっていないが、肩のせ発射式対空ミサイル、別名携帯型防空装備 (MANPADS)の存在が大きい。オンライン上で出回っている映像ではハインド攻撃ヘリコプターを MANPADSで撃墜する様子がわかる。ウクライナの元大統領ペトロ・ポロシェンコPetro Poroshenkoもビデオでウクライナ軍兵士がSu-30SMをMANPADSイグラで撃墜するのを伝えた。

 

 MANPADSには米製スティンガーもあり、ウクライナ向け発送で重要な装備品となっている。3月4日金曜日だけで各国の輸送機14機がウクライナ国境付近に着陸し軍事支援物資を運んできたとニューヨーク・タイムズが伝えている。

 

本日もキーフ西方の都市イルピンIrpinの住民退避を守るウクライナ軍がMANPADSを携行していた。

 

今週初めの交渉でロシアはイルピンを脱出する一般市民の安全回廊を認め、ウォノワハVolnovakha、マリウポルMariupolでも認めるとした。ウクライナはロシアが停戦の約束を破ったと非難し、マリウポルで避難ができなくなったとした。ロシアの攻撃でイルピンの鉄道も寸断され、市民は徒歩移動を迫られている。

 

クレムリンはマリウポル市当局が市民の退避を妨害し人間の盾として利用していると根拠なく非難している。英国筋の評価ではウクライナ国内でロシアが展開する無差別攻撃への批判をそらす狙いでの発言としている。

 

ウクライナ各地で戦闘が続いている。今週の交渉は休戦の道筋を示せなかった。ロシア軍に制圧された各地で抵抗運動、不服従運動が相次いで入るとの報道が増えており、南部ケルソンKherson、メリトポルMelitopolは無慈悲な弾圧も覚悟の上で抵抗している。

 

イスラエル首相ナフタリ・ベネットNaftali Bennettがモスクワでプーチンと会談し、ウクライナ事態を話題にしたとの報道がある。ウクライナがベネット首相に仲裁役を要請しているとの報道もある。

 

金曜日午前にプーチンのテレビ中継でロシアのエアライン各社の客室乗務員に会見する様子が伝えられた。各社は厳しい国際制裁の影響を受けている。プーチンは制裁措置はロシアへの宣戦布告と同じだと発言した。その関連でロシア国内に戒厳令を布く予定はないとし、NATO含む国際機関がウクライナ上空を飛行禁止地区に指定すれば戦闘当事者とすると述べた。前日にNATOは正式にウクライナの引く禁止空域扱いのウクライナ要請を却下した。

 

また、プーチンはウクライナが核兵器開発を目指しているとの根拠ない主張を繰り返した。クレムリンはウクライナ侵攻が必要となった理由と主張している。■

 

The Russian Air Force Just Had A Terrible Day Over Ukraine


The Russian Air Force Just Had A Terrible Day Over Ukraine

Russia looks to have lost multiple combat jets, helicopters, and a drone in just the past day or so.

BY JOSEPH TREVITHICK MARCH 5, 2022

 


2022年3月5日土曜日

ウクライナ戦争 3月4日(9日目)の状況、NATOが飛行禁止区域設定を拒否。ロシア軍の進度は相変わらず鈍い。民間人死傷者が増加。

 

 

 

クライナ侵攻開始が9日目となり、ロシアは国境付近に配置していた全戦力の投入に向け、動き続けている。この間、ロシア軍の首都キーフに向けた前進が予想に反し遅々として進んでいない。NATOは、ウクライナ当局からの飛行禁止区域設定の要請を正式に拒否し、紛争は主要都市での戦闘を中心に長期化し、その結果、民間人の犠牲が増加してきた。2週目に入った戦闘の現状は、以下の最新情報で十分にご理解いただけるだろう。

 

POSTED: 12:15 PM EST—

イェンス・ストルテンベルグNATO事務総長は、本日未明、ベルギーのブリュッセルにある同盟本部での記者会見で、ウクライナ上空に飛行禁止区域を設定しない決定を明らかにした。ヴォロディミル・ゼレンスキー大統領含むウクライナ当局は、飛行禁止区域設定を繰り返し要求してきたが、繰り返し拒否されている。

 

「NATOは紛争の当事者ではないし、エスカレートしてウクライナから広がらないようにする責任がある」とストルテンベルグは述べた。「NATOは絶望的な状況を理解しするものの、飛行禁止区域を設定すれば、より多くの国々とより多くの苦しみを伴う本格的な戦争がヨーロッパで展開するとも考えている」。

 

 

NATOがウクライナ上空を飛行禁止区域とすれば、同盟はロシア軍機撃墜の意志を示し、自軍機への地上の防空脅威へ行動を明確に求められる。ここに、ロシアとNATO加盟国間の深刻な紛争を引き起こす危険性がある。このような戦争は、核兵器の使用や、ヨーロッパ他の地域の荒廃につながる恐れがある。

 

米国政府はロシア軍は制空権を獲得できておらず、ウクライナ軍は空中戦闘能力と防空能力を維持しているとの評価を変えていない。米国防総省高官によれば、ロシア軍は現在、空軍基地や防空関連施設に向け弾道ミサイルや巡航ミサイル500発以上を発射している。

 

一方、ウクライナ側は、、能力維持で負担を感じていることを公の場で明らかにしており、軍事援助に戦闘機や地対空ミサイルシステムの追加を求める声が上がっている。最近、EU加盟国からソ連時代の戦闘機をウクライナ空軍に移管する可能性が浮上したものの、現在はほぼ消えたようである。

 

米国はじめNATO加盟国や欧州各国の武器など軍事援助は、ウクライナに流れ続けている。米軍によると、戦闘機のような高価な装備ではなく、ウクライナ軍ですぐに使えるシステムに援助の重点が置かれている。米軍によると、ロシア軍が輸送を妨害しようとした形跡は今のところない。

 

航空優勢と無関係に、ロシア軍はキーフ等主要都市に前進している。他部隊が迂回したように見えるため、部隊は人口密集地を包囲している形になった。

 

米国防総省高官によると、キーフ北部の大規模なロシア軍輸送隊は依然停滞したままだ。先頭部隊への攻撃と橋の破壊が、この部隊の前進を妨げていると米軍は評価している。ロシア軍は現在もさまざまな攻撃を加えている。

 

 

ウクライナ東部のハルキフ市、北部のチェルニヒフ市などの人口密集地も、ロシア軍に包囲され、砲撃を受けている。米国政府は、クレムリンが主張する南部の都市ケルソンがロシア支配下にあるかどうかについて肯定も否定もせず、アゾフ海の港湾都市マリウポルはまだ陥落していないとした。

 

欧州最大のウクライナのザポリジャーZaporizhzhia 原子力発電所をどちらが支配しているか米軍は自信を持って評価できず、事態が懸念されるとした。施設周辺の戦闘で前日に火災が発生したが、その後幸いにも鎮火し、放射能漏れの兆候はない。隣接するエネルゴダール Energodarもロシア軍が占領したかどうかは不明。

 

米軍によると、黒海沿岸のオデッサ付近でロシアの海軍活動が報告されているものの、揚陸強襲攻撃が迫る明確な兆候は引き続き見られない。国防総省高官は、クリミアから陸路で進攻する部隊と連携しての揚陸作戦は、十分にあり得ると述べた。

 

これと別に、ロシアのウクライナ侵攻に反対する欧州の結束度合いを示すものとして、NATOは現在、同盟非加盟のスウェーデンやフィンランドと日常的に協議している。本日の飛行禁止区域の協議には、スウェーデンとフィンランド両国の代表が出席した。

 

NATO Officially Rejects Appeals For Ukraine No-Fly Zone

A no-fly zone over Ukraine would require NATO to be willing to shoot down Russian aircraft, presenting a real risk of sparking a wider conflict.

BY JOSEPH TREVITHICK MARCH 4, 2022



ロシア侵攻でやはり大損害を受けていたAn-225の惨状。世界最大の巨人機は文字通り夢に帰した。

 

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AN-225 destoryed Hostomel airport

YOUTUBE SCREENCAP

 


(メディア関係者の皆様へ。当ブログではロシア語発音由来のキエフではなく、ウクライナ発音に近いキーフを採用しています。また、An225という機材は存在しないのでご注意ください。)

 

否が心配されていた世界唯一のアントノフAn-225ムリーヤ(夢)の状況を示す画像が出てきた。ひどい。

 

 

巨人機はほぼ全壊で、機首、主翼、エンジンが大きく損傷している。機体後部は損傷がないようだが、実態は不明だ。数日前の衛星画像では尾部は無事で、ホストメル空港Hostomel Airportの巨大格納庫の下に隠れていたことがわかったのが唯一の朗報だ。

 

TWITTER SCREENCAP

 

同空港にアントノフエアラインズは拠点を置いていたが、ロシアの侵攻で戦闘の舞台になってしまい、戦いは先週を通じ展開した。その過程で空港施設や機材が大被害を受け、ムリーヤも例外ではなかった。同空港はキーフ近郊で北西に位置する。

 

PLANET LABS

ホストメル空港の衛星画像 February 28th, 2022.

 

ウクライナがロシアを撃退したら、同機で無傷な部分を使い、An-225の未完成胴体と組み合わせることになるのか、まさに「夢」である。

 

機体、建築物や艦船は再生あるいは更新できる。だが今回の戦闘による被害の拡大、なかんずく死亡者の増大は真の悲劇だ。生命はとりかえしがきかない。

 

だからといって、貴重な航空機が本来起こるはずがなかった無意味な戦争で喪失されたことに怒りを悲しみを覚えないわけには行かないのである。

 

This Is Our First Tragic Look At All That's Left Of Ukraine's Giant An-225 Cargo jet

 

The entire front of what was the world's largest operational aircraft is totally destroyed and its wings and engines are badly damaged. 

BY TYLER ROGOWAY MARCH 4, 2022


2022年3月4日金曜日

ロシアのウクライナ侵攻は統合抑止では防げなかった。台湾が心配だ。バイデン政権は軍事力での抑止効果を強化すべきとの意見が米議会に出ている。

 

M1エイブラムス主力戦車含む装備や車両をドイツのグラーフェンヴェール訓練場に事前配備装備から運び、ジョージア州フォートスチュワートからドイツへ展開する第3歩兵師団第1機甲旅団戦闘チームに支給する。(Maj. Allan Laggui/U.S. Army)

シアによるウクライナ侵攻は、台湾の武装強化の重要性を米軍と議会指導者に示すものと発言した下院議員が3月3日公聴会に現れた。

ウィスコンシン州選出のマイク・ギャラガー共和党議員Rep. Mike Gallagherは、米国と同盟国協力国が全体で取り組む「統合抑止」コンセプトがロシアに対し有効だったか、中国に対し機能するか疑問を呈した。

「今回は統合抑止の最初のテストで、現実のテストで、そして失敗した。我々は学ぶ必要がある」とギャラガー議員は下院軍事委員会公聴会でロシアについて発言した。

統合抑止はバイデン政権で重要な焦点となっている。全領域における統合的な軍事脅威、国務省、財務省、国土安全保障省など連邦政府全体が実施する制裁、外交交渉、金融措置、さらに世界各地の同盟国協力国の力を結集して、侵略が始まる前に抑止する構想だ。

国防次官(政策担当)のコリン・カールColin Kahlは昨年、このコンセプトは「われわれが行うほぼすべてに影響を与える」と述べた。「統合とは、通常兵器、核兵器、サイバー、宇宙、情報など、領域を超えての統合、という意味」と述べた。「また、競争や潜在的な紛争の舞台を越えて統合され、高強度戦からグレーゾーンまで、紛争のスペクトラムを越えて統合する」

カールは、ロシアがウクライナやジョージアのような非NATO諸国を奪う、中国が台湾を奪うシナリオに言及し、米国の政策の鍵として統合抑止力の必要性を説いている。

「潜在的な敵対勢力が考えている迅速な既成事実づくりのシナリオを否定できる能力と概念が国防総省に必要だ」

しかし、ギャラガー議員は公聴会で、現在の政策が非軍事手段に重点を置きすぎているのと主張した。

「偏った意見かもしれないが、抑止力発揮には、プーチンや習近平のような人物に有効なハードパワーが必要だ。抑止したい。私たちはNATOへの侵攻が発生してから対処したくない。台湾をめぐる紛争に対処したくない」。

「ただし、統合抑止がハードパワーへの投資を削すための煙幕であり、10年後やその先まで待っても実用化されない技術や、同盟国、ダボス会議や国連での発言がハードパワーの代わりになると信じているなら、抑止の失敗は続く」と発言した。

ギャラガー議員は無人システムなどの将来技術の資金を確保するために、海軍水上艦艇を縮小する計画を批判していた。

同議員はプーチンの「進路に」投入するハードパワーの内容について言及を避けたが、ロシアの侵攻が現実のものとなった今、ウクライナに追加の兵器を持ち込むことが困難になったと嘆いた。

「今回の教訓は、別の舞台、つまりインド太平洋軍である。教訓は、台湾をどのように武装させておくべきだったかという点だ。問題になってからでは支援増強は難しくなる」とギャラガー議員は述べた。

「我々は、中国を抑止する過程にある。だが制裁の脅威や国務省報道官の厳しい言葉のツイートでは、習近平を抑止できない」

また公聴会では、サウスカロライナ州の共和党議員ジョー・ウィルソンRep. Joe Wilsonが、ウクライナの主要な港湾都市オデッサに向かうロシア海軍への懸念に言及した。黒海に入れないが、ウクライナ第三の都市の安全を守るため、米海軍にできることはないのかと質問した。

トルコは、地中海と黒海をつなぐ海峡2つを支配しており、本拠地に帰るロシア軍艦を含むすべての軍艦に海峡通航を閉じる決定をしている。

海軍作戦副部長ウィリアム・レッシャー大将Adm. William Lescherは公聴会で、黒海の標的を攻撃したり都市の防衛では海軍装備が黒海に展開する必要はないと述べた。

「これまで実施した整備により、戦闘指揮官に複数海域から必要な効果をもたらす機会が実現している」と、同提督は米欧州軍について語った。

レッシャー大将は、トルコが海峡封鎖の決定を下したことについて、「米海軍、統合軍、政府全体による統合抑止が非常にうまく現れており、同盟国やパートナーを通じて行われている」と評価した。また閉鎖は、明らかに、ロシア艦艇の黒海展開能力に影響を及ぼしていると述べた。■

Congressman argues US deterrence strategy failed to protect Ukraine and could fail Taiwan too

By Megan Eckstein

 Mar 4

https://www.defensenews.com/congress/2022/03/03/congressman-argues-us-deterrence-strategy-failed-to-protect-ukraine-and-could-fail-taiwan-too/

 

 

 

 

南シナ海へ水没したF-35Cの回収に成功。中国ロシアの手に渡らず安堵する米海軍。事故原因調査と並行し機密漏洩で内部処分も進む。

 F-35C_RECOVERED_SOUTH_CHINA_SEA

U.S. NAVY

 

海軍は、今年初めに空母カール・ヴィンソン(CVN-70)の着艦事故で喪失したF-35C共用打撃戦闘機を南シナ海で回収に成功した。同機は深度約12,400フィートから引き上げられた。

機体は米第7艦隊の任務部隊75(潜水・サルベージ)と海軍海洋システム本部(NAVSEA)のサルベージ・潜水監督官(SUPSALV)により回収された。合同チームは、民間潜水支援工事船(DSCV)「ピカソ」に乗船した。同船は2月23日に沖縄を出港し、墜落現場に向かっていた。

 

海上保安庁発行の告知から、引揚げ作業地点はフィリピン・ルソン島の西方約170マイルだった可能性がある。海軍は詳細な場所を発表していない。

 

回収作業には、CURV-21(Cable-controlled Undersea Recovery Vehicle 21)と呼ぶ通常は海底調査に使用するテザー式の遠隔操作船(ROV)が使用された。CURV-21は、ソナーやカメラを搭載し対象物の位置を特定が可能で、今回は事故機に専リグとリフトラインを取り付けた。

 

艤装品とリフトラインで固定したF-35Cは、船内クレーンのフックで海上に吊り上げられ、ピカソに移送された。第7艦隊の公開写真では、機体は保護用のプラスチックに包まれ輸送されているようだ。

 

タスクフォース75責任者であるガレス・ヒーリー大佐Capt. Gareth Healyは、「迅速かつ有効な指揮・統制・通信機能、機敏なロジスティクス、有機的なセキュリティ、タスクフォースの専門性を選択した」「最終的に、慎重に事件発生から37日で回収作業を行えた。この問題のユニークな特性とNAVSEAのユニークな技術力で達成可能なスケジュールにできた」と述べている。

 

海軍は、事故機の残骸は今後、「調査のため軍事施設に運ばれ、本国輸送の可能性を評価する」と発表した。

 

残骸の大部分が回収されていなかったことがわかり、国防総省や共用打撃戦闘機のコミュニティは安堵するだろう。残骸の一部または全部が敵対する国(中国かロシア)により調査されたり、墜落現場から持ち出される可能性が非常に高かった。

 

「我々はF-35の価値を、あらゆる点で留意している」と、事故直後に国防総省のジョン・カービーJohn Kirby報道官は述べた。「さらに機体回収では、安全を第一に考えつつ、国家安全保障上の利益を考慮して行う」

 

昨年11月に空母HMSクイーン・エリザベスで離陸時の事故で地中海に沈んだ英国空軍F-35Bステルス機を浮上させる作業と同様のパターンで回収されたようだ。

 

今回のF-35Cは、着艦時に飛行甲板後部に衝突し、その後、転覆して着水した。パイロット含む7名が負傷したが、パイロットは脱出後、水中から救出された。

 

F-35Cは空母の4本のアレスティング・ワイヤーをすべて引きちぎり、甲板上に破片を散乱させたが、ヴィンソンの飛行業務はわずか45分以内に再開された。

 

ただし墜落直後に、水中の事故機の写真と、艦内のアイランドカメラ室が撮影した動画2点がSNSにアップされるという驚くべき手順違反が発生した。海軍はその後、すべて本物であると確認した。

 

海軍は、こうした機密漏洩がなぜ起こった原因を究明したいとはずだ。海軍士官1名と上級下士官4名を戒告処分にしており、これらの者は裁判によらない処分を受ける見込みである。同時に、海軍は墜落事故の原因究明を続けており、期待されていた海軍F-35Cによる最初の作戦行動に影を落としている。

 

Navy's Crashed F-35C Recovered From The Bottom Of The South China Sea

Recovery of the jet after its carrier landing mishap allays fears that it could have fallen into the wrong hands.

BY THOMAS NEWDICK MARCH 3, 2022