2024年5月11日土曜日

米空軍の次期『終末の日』機改修用に大韓航空所有747-8を調達

 Sierra Nevada Corporation (SNC), which won the contract to build the U.S. Air Force’s highly specialized Survivable Airborne Operations Center (SAOC) aircraft last month, has acquired five Boeing 747-8s from Korean Air. The likelihood is that these will be converted as the successors to the Air Force’s aging 747-200-based E-4B Nightwatch ‘doomsday planes,’ although at this stage we still don’t know how many of the new SAOC aircraft will be fielded.

tjdarmstadt/Wikimedia Commons




大韓航空が保有する747-8型機5機を、E-4B後継機を製造するSNCに売却することを決定した


先月、米空軍のサバイバブル・エアボーン・オペレーション・センター(SAOC)機の製造改修を受注したシエラネバダ・コーポレーション(SNC)は、大韓航空からボーイング747-8を5機譲り受けた。各機は、空軍の老朽化した747-200ベースのE-4Bナイトウォッチ「ドゥームズデイ・プレーン」の後継機として改造されることは間違いなさそうだが、現段階では、SAOC機が何機実戦配備されるのか不明だ。

 ロイター通信によると、大韓航空は昨日の取引所への提出書類で、保有する5機をSNCに売却することを確認した。取引額は6億7,400万ドルで、大韓航空の航空機近代化計画の一部となる。大韓航空によると、機材譲渡は2025年9月に予定されている。


SNCが購入する具体的な機種を大韓航空は明らかにしなかったが、この件に詳しいとされる情報筋はロイターに、747-8であると語った。また、SNCにも確認を求めている。


大韓航空には現在9機の747-8があり、368席の3クラス構成で運航されている。このうち、HL7644は747として製造された最後の機体である。その他の候補機体については、最も古い機体が2015年8月に大韓航空に引き渡されている。そのため、これらの機体は入手可能な747の中では最も若い部類に入るが、それでも日常運航に伴う定期的な消耗は避けられないだろう。


現在のE-4Bのうち2機(E-4Aとして完成)は、もともと民間旅客機になる予定だったが、実際に就航することはなかった。航空会社が発注をキャンセルすると、国家緊急空中司令部(NECAP)プログラムの下で空軍向けに改造された。


当時お伝えしたように、SNCは4月27日、SAOCを開発する130億ドル以上の契約の交付先として発表された。現行のE-4Bに代わるこの航空機は、大統領他の高官が、あらゆる潜在的な事態のもとで、核攻撃の指揮を含む任務を遂行できるようにするために重要な役割を果たす。


SNCは、ボーイングが昨年契約を辞退した後、この契約を勝ち取るための議論の余地のない候補として浮上していた。


空軍は現在4機のE-4Bを運用しているが、以前から8機から10機のSAOCを取得する可能性が示唆されていた。


大韓航空の747-8がSNCに5機売却されたことから、将来のSAOCも5機となる可能性があるが、1機はスペアパーツ供給源として、あるいはエンジニアリングや製造開発資産としてのみ使用される可能性も残っている。


機体数が増えれば、中古機体の追加購入が必要となり、SAOC機がルッキング・グラスというニックネームを持つ戦略司令部の任務、あるいはその一部を担うことになった場合、必要になる可能性が高い。現在、この空軍の任務は、米海軍がボーイング707ベースのE-6Bマーキュリー機16機で運用している。各機は、アメリカの弾道ミサイル潜水艦と通信する「テイク・チャージ・アンド・ムーブ・アウト」の役割と、陸上ICBMと同様に通信し、遠隔操作で発射することもできる「ルッキング・グラス」の双方役割を担っている。海軍の代替機はC-130Jをベースとするが、ルッキング・グラス任務はない。

契約締結に先立ち、SNCはすでにオハイオ州デイトンの施設でこの機種の受け入れ準備を進めており、昨年8月には747-8専用のオーバーホール格納庫が完成した。


国防総省からの関連通知によると、SAOC航空機の開発および製造に関する契約は、エンジニアリングおよび製造開発機、関連地上システム、製造機、および暫定的な請負業者サポートの納入を含め、2036年7月までに完了する予定だ。


747-8の選択は、広く予想されていたもので、SAOCと新型VC-25Bエアフォース・ワンの間に共通性を持たせることにもなる。ボーイングは現在、廃業したロシアの航空会社用に製造された747-8の2機をVC-25Bに改造中である。大韓航空の747-8とは異なり、VC-25Bに選定された機体は、商業運航を予定していた航空会社に引き渡されることはなかった。


これまでのところ、SNCのSAOCの構成に関する詳細はほとんど明らかになっていないが、同社が契約獲得直後に公開したコンセプト・アートには、興味深い特徴がいくつか示されている。


最も重要なのは、高度で安全性の高い通信スイートの追加や、電磁パルスに対する機体強化などだ。SNCのコンセプト・アートによれば、新しい「終末の日機」は空中給油システムを保持する。


いったん実戦配備されれば、SAOCは国家司令部(NCA)の基本的な部分となり、大統領が世界のどこからでも核攻撃を開始できる、堅牢で生存可能な空中司令部を提供する。この機能は、大統領の海外訪問に同行しているE-4Bが現在担当している。国防長官も定期的にE-4Bを海外訪問に利用し、スタッフや報道陣と一緒に搭乗している。


空中指揮所機能が任務の中心かもしれないが、今日のE-4BのようなSAOCは他の役割も果たすことができる。その安全な通信と指揮機能は、大規模な自然災害の余波を含む、他の種類の軍事作戦や有事対応活動を指揮するためにも有用である。


大韓航空が複数のボーイング747-8をSNCに売却するというニュースは、空軍の「終末の日機」フリートを活性化させる以上に、SNCを軍事航空宇宙分野で大きなプレーヤーにする可能性を含んだプログラムにおける次の具体的な動きとなる。■



Former Korean Air 747s Slated To Become USAF Doomsday Planes

BYTHOMAS NEWDICK|PUBLISHED MAY 9, 2024 2:21 PM EDT

AIR




2024年5月10日金曜日

ウクライナを救えるか 米陸軍の155mm砲弾の増産がやっと軌道に乗ってきた。消耗戦の様相のウクライナではやはり数量が物を言う。

 


An ammo handler at Blue Grass Army Depot in Kentucky prepares 155mm projectile rounds for repalletization in 2022.

An ammo handler at Blue Grass Army Depot in Kentucky prepares 155mm projectile rounds for repalletization in 2022. U.S. ARMY / DORI WHIPPLE



月産10万発の砲弾生産の目標が見えてきたと米陸軍が発表



ロシアによるウクライナ侵攻以来、生産量を6倍に増加させるための新たな追加措置が発表された


陸軍は、ウクライナ支援法案の可決を受けて、155mm砲弾の月産量を3倍に増やす方向であると、副参謀長が本日述べた。

 ジェームス・ミンガス副参謀長は、シンクタンクCSIS主催のイベントで、「可決された追加措置により、来年夏までに10万発になるだろう」と語った。

 ミンガス大将によれば、これは陸軍工廠が今月生産すると予想される3万発の3倍以上であり、ロシアが2022年にウクライナへの全面侵攻を開始して以来、6倍に増加することになるという。

 陸軍関係者は、10万発の目標達成は、ウクライナ補正の前バージョンで要求された31億ドル次第だと述べている。

 陸軍は生産施設を拡大し、アーカンソー、カンザス、テキサスに新たな生産施設を計画していると、陸軍取得チーフのダグ・ブッシュは昨年述べている。砲弾はアメリカ政府が生産を管理する数少ない弾薬のひとつである。

 テキサス州の生産施設への投資により、「砲弾の処理能力と生産性が83%向上した」と、ジェネラル・ダイナミクスのフェベ・ノバコビッチCEOは水曜日の決算説明会で述べた。同社は、陸軍向けに大砲製造工場を運営している。

 この増強は、民間企業が管理しているヨーロッパの155ミリ砲製造とは対照的である。ウクライナに砲弾を発注する欧州政府は、欧州以外の顧客と競争しなければならず、製造業者に生産設備の拡張や改善を直接命令することはできない。

 1月、EUのジョゼップ・ボレル首席外交官は、3月までに100万発の155mm弾をウクライナに引き渡す目標を達成できないだろうと述べ、引き渡し予定時期を2024年末に再設定した。エストニア国防省の最高公務員であるクスティ・サルムによれば、ヨーロッパのメーカーに今日発注された弾丸は、ウクライナに届くまでに少なくとも1年かかるという。

 ウクライナのルステム・ウメロフ国防相は2月、ウクライナが1日あたり約2000発の砲弾を発射しているのに対し、ロシアはその3倍を発射していると述べた。ウクライナはNATO設計の155ミリと105ミリの砲弾、それにソ連設計の152ミリと122ミリの砲弾を混ぜて使っている。

 今月初め、欧州司令部のクリス・カボリ司令官は議会での証言で、ロシアは5対1の割合でウクライナを撃ちまかしており、米国の追加支援がないと、10対1の割合でウクライナを撃ち負かすだろうと述べた。

 砲弾は、ホワイトハウスが水曜日に発表した、ウクライナへの新たな10億ドルの各種軍事援助の一部となる。一発およそ3000ドルの155ミリ砲弾にどれだけの資金が投入されるかは明言されていない。しかし、仮に資金の4分の1が大砲に充てられるとすれば、約8万発の弾丸はウクライナの6週間分にすぎず、しかも発射数を下げた状態でしか持ちこたえられないことになる。■


The goal of 100K artillery shells per month is back in sight, Army says - Defense One


The new supplemental renews the push to boost production sixfold since Russia’s Ukraine invasion.

BY SAM SKOVE

STAFF WRITER

APRIL 24, 2024


2024年5月9日木曜日

10万ドル払っているF/A-18の交換部品が3Dプリント技術で300ドルに。

 


積層製造AM技術つまり3Dプリンターの機能がどんどん進んでいるようです。今回のThe War Zone記事ではそこにコールドスプレイ技術が加わり、これまで高価になる一方だった装備品の価格が一気に下がる可能性が現実になってきました。艦上や前線基地で可能なメニューには限界もあるようですが、今までの常識が崩れ落ちそうです。


161013-N-OI810-093 WATERS SURROUNDING THE KOREAN PENINSULA (Oct. 13, 2016) Petty Officer 1st Class (AW/SW) John Diwa, from Dededo, Guam, installs inboard and outboard bearings on a main tire mount of an F/A-18F Super Hornet, assigned to the "Diamondbacks" of Strike Fighter Squadron (VFA) 102, in the hangar bay of the Navy's only forward-deployed aircraft carrier, USS Ronald Reagan (CVN 76), during Exercise Invincible Spirit. Invincible Spirit is a bilateral exercise conducted with the Republic of Korea Navy in the waters near the Korean Peninsula, consisting of routine carrier strike group (CSG) operations in support of maritime counter-special operating forces and integrated maritime operations. USS Ronald Reagan is on patrol with CSG 5 supporting security and stability in the Indo-Asia-Pacific region. (U.S. Navy photo by Petty Officer 3rd Class (SW/AW) Nathan Burke/Released)

U.S. Navy photo by Petty Officer 3rd Class (SW/AW) Nathan Burke

アディティブ・マニュファクチャリングとコールドスプレイ技術は、海軍の装備維持に革命をもたらし、数百万ドルを節約できそうだ

ワシントンD.C.近郊で開催されたSea Air Space会議で、海軍航空システム本部(NAVAIR)の積層造形(AM)チームのプログラムマネージャー、セオドア・グロンダは、F/A-18E/Fスーパーホーネットの交換用タイヤは非常に高価であると聴衆に語った。

どのくらい?グロンダによれば、交換には1本で6桁近い費用がかかるという。タイヤがホイールと一緒に交換されるためでもある。海軍は実際に、交換用のスーパーホーネットのタイヤをアセンブリーとして購入し、タイヤとホイールのリムがすでに互いに組み合わされている状態で受け取る。タイヤとホイールのアッセンブリーには、それぞれおよそ100,000ドルかかる。

SINGAPORE STRAIT (July 6, 2017) U.S. Navy Aviation Electrician's Mate 2nd Class Lucas Mclean, left, from Arvada, Colo., U.S. Navy Aviation Electronics Technician 1st Class Mathew Webber, middle, from Riverside, Calif., and U.S. Navy Aviation Machinist's Mate 2nd Class Ivan Avila, from Corona, Calif., replace the tires on an F/A-18F Super Hornet from, the “Black Knights” of Strike Fighter Squadron (VFA) 154, aboard the aircraft carrier USS Nimitz (CVN 68), July 6, 2017, in the Singapore Strait. Nimitz is currently on deployment in the U.S. 7th Fleet area of operations. The U.S. Navy has patrolled the Indo-Asia Pacific routinely for more than 70 years promoting regional peace and security. (U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 3rd Class Weston A. Mohr)

SINGAPORE STRAIT (July 6, 2017) U.S. Navy Aviation Electrician's Mate 2nd Class Lucas Mclean, left, from Arvada, Colo., U.S. Navy Aviation Electronics Technician 1st Class Mathew Webber, middle, from Riverside, Calif., and U.S. Navy Aviation Machinist's Mate 2nd Class Ivan Avila, from Corona, Calif., replace the tires on an F/A-18F Super Hornet from, the “Black Knights” of Strike Fighter Squadron (VFA) 154, aboard the aircraft carrier USS Nimitz (CVN 68), July 6, 2017, in the Singapore Strait. (U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 3rd Class Weston A. Mohr) U.S. Navy personnel replace the tires on an F/A-18F Super Hornet aboard the aircraft carrier USS Nimitz (CVN 68), July 6, 2017. U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 3rd Class Weston A. Mohr

スーパーホーネットのような艦載機のホイールとタイヤが、で比較的短い寿命であることは間違いない。2019年以降、海軍のE/F部隊は、戦闘機の耐用時間を6,000時間から10,000時間に延ばす多段階の変更プログラムを順次実施している。その耐用年数の間に、スーパーホーネットは文字通り何千回もの着陸と離陸、空母からの拘束着艦とカタパルト発汗、地上基地からの離着陸の両方を行う。その過程で多くの車輪やタイヤを消費し、空母運用中は特に早く使い切る。

グロンダは、F/A-18E/Fはしばしば空母の甲板に激しく着艦するため、戦闘機の主脚ホイールのリムが楕円形になり、リムに取り付けられたタイヤが揺れると説明した。タイヤがぐらつくと、ホイールとタイヤのアセンブリは外され、廃棄されるという。

それは高くつく。「年間で166本のタイヤを廃棄していますが、1本あたり6桁の値段がします」とグロンダは聴衆に断言した。ボーイングによると、グッドイヤーミシュランがライノにゴムを供給している。本誌は各社にF/A-18/E/F用のタイヤ価格を尋ねたが、両社とも拒否した。メイン・ランディング・ギアのホイールは、ハネウェル・エアロスペース傘下のエアクラフト・ランディング・システムズが供給している。

仮に1アセンブリーあたり10万ドルと仮定すると、単純計算で、スーパーホーネットのホイールアセンブリー交換にかかる費用は年間1660万ドル程度になる。 

リムを修理してタイヤを再装着できれば、海軍のホイール/タイヤ代は大幅に下がるかもしれない。グロンダは、NAVAIRのAMチームが、固体コールドスプレー3Dプリンティング技術を使えばスーパーホーネットのリムを修理できる可能性に気づいたと説明した。

「リム修理で効果的な方法はありませんでした。これらのリムの80パーセントはコールドスプレー技術で修理可能であることに気付きました」。

コールドスプレイとは、標準的な3Dプリンティングに手を加えた付加製造プロセスである。簡単に言えば、小さな金属粒子をキャリアガス(通常は窒素またはヘリウム)と混合し、ノズルを通してマッハ2~3の速度まで加速させる。コールドスプレー修理では、粒子を部品に直接吹き付け、材料を追加して組み立て、強化するものだ。

Staff Sgt. Chynna Patterson, a 28th Maintenance Group additive manufacturing spray technician, and David Darling, the 28th MXG additive manufacturing site manager, wait for the VRC Raptor Cold Spray machine to heat up at Ellsworth Air Force Base, South Dakota, May 12, 2021.<em> U.S. Air Force photo by Airman 1st Class Quentin K. Marx</em>

Staff Sgt. Chynna Patterson, a 28th Maintenance Group additive manufacturing spray technician, and David Darling, the 28th MXG additive manufacturing site manager, wait for the VRC Raptor Cold Spray machine to heat up at Ellsworth Air Force Base, South Dakota, May 12, 2021. U.S. Air Force photo by Airman 1st Class Quentin K. Marx

「コールドスプレイ」という表現には少し語弊がある。使用される添加剤粒子は加熱されるが、融点の80%以下までしか加熱されないため、腐食しにくい。粒子は合体して固体になり、高強度で構造的に健全な結合を生む。一度塗布された新素材は、修理される部品の元の形状や公差に合うように修正される。このように、固体コールドスプレーは加法的であると同時に減法的なプロセスでもある。

空軍は2020年以降、積層造形にコールドスプレイ・プロセスを使用しており、航空機のヒンジから構造サポート、シャフト、着陸装置部品まで、あらゆるものを交換ではなく修理している。同軍は2021年、B-1Bのオーバーウイングフェアリングのスリップジョイントの修理に固体コールドスプレーを使用した。最近保管庫から引き出された退役ランサーの再生にこのプロセスが使われた可能性もある。   

NAVAIRは10年以上前から積層造形技術を応用し、2016年には初の飛行に不可欠な航空機部品であるV-22オスプレイのエンジンナセルの3Dプリントリンクとフィッティングアセンブリの製造に採用した。    

COVID-19の大流行によるサプライチェーンの問題により、海軍は2020年から積層造形への投資とその利用を加速せざるを得なくなった。現在、NAVAIRは、配備中の航空母艦を含む33カ所に96台の積層造形装置を導入している。

同司令部は、飛行に不可欠な部品の修理に各種3Dプリンターを使用している。2021年にNAVAIRは、Ultimaker S5 3Dプリンターを含む完全配備型3Dプリンティングシステムに、最高500万ドル相当の5年間のIDIQ契約を締結した。

この投資は、スーパーホーネットのタイヤ/ホイールアセンブリを含む、さまざまなプラットフォームや機器の種類で実を結ぶことになりそうだ。本誌の質問に対する電子メールでの回答で、グロンダはAMチームの「初期評価では、毎年(スクラップ/リサイクル)に出される166本の(ホイールリム/タイヤ)の80%以上が、このコールドスプレー技術で修理可能」と再確認されている。

さらに、コールドスプレイによる修理には2時間かかり、ホイール1本あたり300ドルかかるという。リムの修理とタイヤの再装着にかかる費用は、年間合計で約4万ドルになる。通例通りアセンブリーを交換するだけなら1,660万ドル(約16億円)かかるところを考えると、AM修理は何の問題もないように見える。現場や空母のような前方作戦拠点で採用される可能性があるAMは、さらに価値を高めている。

例えば、AMチームは最近、配備された航空母艦の光学着陸システムの新しいカプラ・フィッティングを迅速に提供した。カプラが摩耗しシステムは故障し、搭載航空機の一部が飛行できなくなっていた。連絡を受けてから、チームは3Dプリント用に小さな金具を再設計し、それをテストして承認を受け、カプラーのデータを電子的に艦船に送り、そこでプリントした。

とはいえ、海軍の戦闘機部隊がスーパーホーネットの修理を海上で行うことはない。グロンダによれば、コールドスプレイ・プロセスで使用される金属粉の環境要件のため、このような修理は現在のところ陸上の設備や整備施設でしか行えないという。

An F/A-18E/F Super Hornet from Strike Fighter Squadron (VFA) 103 takes off from <em>Nimitz</em> class aircraft carrier USS <em>George Washington</em>, December 8, 2023. <em>U.S. Navy Photo by Mass Communication Specialist 3rd Class August Clawson</em>

An F/A-18E/F Super Hornet from Strike Fighter Squadron (VFA) 103 takes off from Nimitz class aircraft carrier USS George Washington, December 8, 2023. U.S. Navy Photo by Mass Communication Specialist 3rd Class August Clawson

しかし、アディティブ・マニュファクチャリングと密接に関連した考え方は、NAVAIRと海軍全体でサプライチェーンの設計と展開を再考するよう促している、とグロンダは説明する。

「コールドスプレイは、供給システムにある品目を再評価するきっかけとなっています。これらの品目は、以前は修理/消費不可能とみなされていました。したがって、このプロセスを再評価することで、全体的な維持コストを削減し、その節約分を収穫し、より重要な国防総省の能力に再投資することができるのです」。

軍需品から部品、装備品に至るまで、国防総省が直面しているサプライチェーンの圧力は、予算の圧力や非効率性(単純なワッシャーの袋に9万ドルも支払う)と相まり、ハードウェアを修理し現地製造する、より革新的なアプローチを促進することが期待される。戦闘機1機種の年間1600万ドル以上の車輪/タイヤ代が5万ドル以下に削減できる可能性がある。■

Navy Pays $100K To Replace Each F/A-18 Tire, 3D Printed Repairs Cuts Cost To $300

BYERIC TEGLER|PUBLISHED MAY 7, 2024 4:06 PM EDT


ハーキュリーズ輸送機の水上運用構想が『棚上げ』に。米空軍特殊作戦司令部が公表。対中国戦を念頭に滑走路に依存しない輸送能力の確保が必要なのだが....

 


一時中断とありますが、実質的に中止でしょう。これでハーキュリーズの水上運用は実現しなくなったと見ています。US-2の視察までしたSOCOMは諦めず別のプロジェクトに向かうのでしょう。そういえば、巨大水上輸送機Liberty Lifter構想はどうなったのでしょう。


MC-130J amphibious

Concept art of an amphibious MC-130J design. (USAF)


SOCOM、水陸両用MC-130J構想を白紙に: 政府関係者


SOCOMは静水圧試験や風洞試験などのステップを実施したが、予算の関係で着水能力の実装は「一時中断」している


MC-130Jスーパーハーキュリーズ空輸機に着水装備を装備する空軍特殊作戦司令部(SOCOM)の計画は、予算の制約により頓挫したと、SOCOM関係者が5月7日火曜日語った。


同司令部は2021年に初めてMC-130J水陸両用機(MAC)コンセプトを発表し、水上での離着陸が可能な航空機を構想していた。

SOCOMと産業界チームは、着水能力の運用化について「技術的な深堀りを非常に成功させ......実に豊富な、データ主導のモデルを考え出した」と、SOCOMの固定翼プログラム担当執行官るT・ジャスティン・ブロンダー大佐は、タンパで開催されたSOFウィーク会議で語った。


静水圧試験や風洞試験などのステップを経て、ブロンダー大佐は、MC-130Jが着水・離水するために何が必要かをチームは理解していると述べた。「しかし、予算予測や実際の統合作業の費用対効果を考えると、関係者は現在、この能力の導入について「一時停止しているような」と彼は言う。


関係者は何年も前から着水能力を議論してきたが、実戦配備の時期については慎重だった。C-130の水陸両用化改修は、陸上飛行場への依存を減らし、より緊密で分散した作戦に移行しようとしている太平洋地域では、空軍に必要となる可能性がある。


ブロンダー大佐は、必要性が生じた場合、当局は水陸両用装備を展開する態勢にあると強調し、「要請あれば、確かに我々が展開できる能力だ」と述べた。


ブロンダー司令官は、MACの実証実験を行う計画はもはやないが、特殊作戦部隊が中東やアフリカの「より紛争のない環境」中心から、太平洋のより寛容でない環境に移行していく中で、「戦力を投射し、滑走路を独立させる」、より「費用対効果の高い」方法に、司令部は依然として関心を持っていると述べた。

空軍のウェブサイトによれば、今のところ、SOCOMはMC-130Jにシステムを統合し、ブロンダー氏が「タロンIII能力」と表現するような、敵地や拒否された領域で特殊作戦部隊や装備の潜入、脱出、補給を提供したMC-130Hコンバット・タロンIIプラットフォームの足跡をたどることができる航空機を与えることに焦点を当てている。最後のMC-130Hは2023年4月に退役した。

「これらのシステムが統合されれば、MC-130Jは「空軍特殊作戦司令部のために使用されていたタロンIIを進化させたような、真の......潜入・脱出プラットフォーム」となり、航空機を「紛争や拒否された環境において適切なものにする」とブロンダーは語った。

中国は、AG600と呼ばれる新しい大型水陸両用輸送機も開発している。この航空機が南シナ海における人民解放軍の人工前哨基地を支援するのに投入されそうだ。

米軍はそれ以外にも、特に中国との紛争など、将来起こりうる大規模な紛争を想定した場合、既設基地の脆弱性を懸念している。現在、従来の滑走路をほとんど、あるいはまったく必要としないさまざまな航空コンセプトに大きな関心が寄せられている。


ブロンダーによれば、SOCOMは国防高等研究計画局(DARPA)と緊密に協力し、高速垂直離着陸(VTOL)プラットフォームの実用化に取り組んでいる。SPRINT(Speed and Runway Independent Technologies)と呼ばれるこの取り組みを通じて、DARPAは400ノットを超える速度で巡航でき、十分な航続距離と輸送能力を持つシステムの実用化を目指している。


SPRINT用のXプレーンを設計する第一段階には4社が選ばれており、ブロンダーによれば、SOCOMは今年10年後半に予定されているプロトタイプ飛行に先立ち、このプログラムを注意深く追跡しているという。

4月30日、DARPAはボーイングの子会社オーロラ・フライト・サイエンシズに、SPRINTプログラムを進めるため2500万ドル弱の新規契約を発注した。


DARPAはプロトタイプを開発するために資金を使用することができるが、プラットフォームが生産に入るかどうかは、軍がプロジェクトを進めるよう説得できるかどうかにかかっている。■


https://breakingdefense.com/2024/05/socom-tables-amphibious-mc-130j-ambitions-official/


https://www.nationaldefensemagazine.org/articles/2024/5/8/socom-hits-pause-on-amphibious-mc-130j-effort


https://www.twz.com/air/c-130-float-plane-program-put-on-pause-by-special-operations-command


パリ夏のオリンピックは7月26日開幕。心配なテロの脅威に空前の厳戒態勢でパリがいっぱいになるが、テロリストの動向が懸念される

今年はオリンピックの年ですが、不穏な世界情勢を反映し、パリ大会は史上最高の警戒体制の中で開催されることになりそうです。自由を守るために、セキュリティが強化され、窮屈になる矛盾ですが仕方ないですね。リモート観戦するのが得策でしょう。1945の記事が開催に備える現地のセキュリティ体制を紹介しています。

2024 Paris Summer Olympics


2024年パリ夏季オリンピック: テロの脅威は現実


数千万人の観光客と世界のトップアスリートが集まるオリンピック期間中、一匹狼や組織的なテロ攻撃を警戒している。



2024年夏季オリンピックの最前線にあるテロの脅威: 夏季オリンピックは、世界中のアスリートが参加する世界有数のスポーツイベントである。今年はフランスのパリで開催される。


豊かな歴史を持つ穏やかな首都パリでは、イスラム過激派への懸念も高まっており、オリンピックに大きな影響を与えかねない。

フランス政府は、テロの可能性を防ぐため、世界的な波及や国内の社会経済的な問題ではなく、あらゆる予防策を講じ、治安上の不測の事態に備えている。


2024年夏季オリンピック

過激主義に対処し続けているフランスは、数千万人の観光客と世界のトップアスリートが集まるオリンピック期間中、一匹狼や組織的なテロ攻撃を警戒している。

 フランスは2015年11月のパリ同時多発テロ、シャルリー・エブド銃撃事件、コーシャ・マーケット包囲事件など、ISISの工作員やその信奉者によるテロ攻撃の標的となってきた。

 同国では現在、中東発の過激化に触発され、一匹狼による刺殺事件などの憎悪犯罪が増加している。フランス政府はあらゆる最悪の事態に備え、オリンピックを可能な限り確実に開催するため各種政策を打ち出している。


緊張と警戒が高まる中での不測の事態

開会式には、観客動員数を半分に減らすことも含まれており、これによってフランスの情報機関や地元警察、その他の部署は、リソースを拡大することなくイベントを監視できるようになる。『ポリティコ』誌によれば、フランス政府関係者にとって不運なことに、同国の治安組織はすでに疲弊しきっているという。

 3月28日付の『ル・モンド』紙は、フランスが海外の同盟国に対し、大会期間中に情報機関や治安部隊のメンバーを派遣し、疲弊した政府を支援するよう要請したと報じた。ポーランド軍参謀本部のジョアンナ・クレイシュミット報道官は、AFP通信に対し、夏季五輪のためにタスクフォースが指定されることを認めた。

 米国の警備会社と提携し、パリは顔認識などのハイテク監視システムを導入する。セーヌ川沿いでは、市外からの宿泊客や観光客、さらには市民までもが身元調査を受ける可能性がある。

 また、開会式の間、観光客は川岸への立ち入りが禁止される。これは、直接攻撃や自殺潜水などの武器になるドローンが攻撃に使われることを恐れてのことだ。

 ウクライナですでに見られたように、FPVドローンとも呼ばれる一人称視点ドローンは、戦争の様相を変え、世界的なテロの可能性もある。安価で簡単に入手できるドローンは、重要なインフラ、軍事設備、人員を効果的に破壊することができる。

 この物議を醸す措置により、今年の夏季オリンピックは世界史上最も厳しく、アトランタとミュンヘン大会以来最も懸念されるオリンピックとなる。


中東、アフリカ、ウクライナからの世界的波及

フランスがオリンピックを開催することは、さまざまな地域の緊張の高まりと結びついている。

 過激主義による脅威の高まりの発端のひとつは、フランスの旧植民地にまで及んでいる。そこでは過去20年間にわたり、残忍なイスラム主義者の反乱が北アフリカと中央アフリカを巻き込んできた。

 フランスの旧植民地内には、ロシアのハイブリッド戦争の特徴を備えた「クーデターベルト」が形成されている。フランスにはアフリカでの暗い過去があり、クレムリンの影響力はヨーロッパへの移民急増というドミノ効果で軍事政権を支えるのに役立った。

 クーデターベルトで存在感を増し、ヨーロッパでも数多くの攻撃を行っているISISは、オリンピックを復活の絶好のターゲットにしようとする可能性がある。

 もうひとつの大きな安全保障上の脅威は、ロシアによるサイバー攻撃、外国情報機関の侵入、あるいはハイブリッド戦争の可能性である。ロシアの対外諜報機関はすでに、英国、モンテネグロ、アルバニア、チェコといったNATO加盟国内部で、知名度の高い攻撃や作戦を実施している。

 フランスはここ数カ月、ウクライナ支援を非常に強化しており、エマニュエル・マクロン仏大統領は、戦争が悪化し続ければ、直接軍事介入する可能性を提案するまでに至っている。ロシアはフランスからのコメントや支援を厳しく受け止めており、ハイブリッド攻撃や直接攻撃の可能性を準備している。

 間違いなく、夏季大会にとって最大の脅威は、イスラエル・ハマス戦争の世界的な波及である。現在進行中の紛争は、世界的な注目を集め、抗議デモを引き起こし、フランスでは一匹狼による襲撃事件が発生している。

 10月7日の同時多発テロ以来、フランスでは刺傷事件や、最近ではパレスチナ人による復讐型の一匹狼的ヘイトクライムでユダヤ人女性が誘拐され性的暴行を受けるなど、複数のテロが起きている。フランス自体、ユダヤ人の人口が多く、反ユダヤ主義的な攻撃が増加するにつれて、すでに急速に減少している。

 観光客も多く訪れるパリでオリンピックが開催されれば、反ユダヤ主義的な脅威だけでなく、潜伏工作員や不満を抱く過激派イスラム教徒による攻撃も発生する可能性があり、フランス政府はその封じ込めに苦慮している。

 緊張の高まり、数々の脅威、絡み合う世界的な紛争、そしてすでに手薄になっている安全保障体制の中で、パリで開催される夏季オリンピックは、外国の敵対勢力や過激派グループが攻撃を企てるために最も注目する大会となり、フランスとその同盟国は、アトランタ爆弾テロ事件やミュンヘンの大虐殺のような事態を回避することを目指すだろう。■


Paris 2024 Summer Olympics: The Terrorism Threat Is Real - 19FortyFive

By

Julian McBride


2024年5月8日水曜日

ロシアはどこまで本気なのか。戦術核演習を展開し、英仏を恐喝する。長年にわたり外国から侵略されることを恐れるロシアの反動なのか。なんとも理解しがたいロシア人の心理。

 


ロシアから絶え間なく出てくる勇ましい発言、大言壮語は西側への恐怖から出ているのですね。西側による支援が再び強まろうとする中で、戦術核の運用演習を強行しようとしています。さらに、F-16がウクライナに搬入されようとしている中で、同機が核運用機なのでそれに応じた対応をするとまで発言してしまう。国内にはもっと強硬な意見も渦巻いており、ロシアの行方には不安な兆候しかありません。The War Zone記事からのご紹介です。


Iskander M Ukraine running lowRussian MOD


シアは、西側諸国からの挑発的な脅しに対抗するため、戦術核兵器の使用訓練の実施を発表した。この訓練は、ウクライナに対し、西側諸国が軍事支援を続けているため、核による対立のリスクが高まっているというクレムリンの警告を受けてのものである。

今日の声明でロシア国防省は、ウラジーミル・プーチン大統領が戦術核戦力の戦闘任務遂行能力をテストする演習を命じたと述べた。



「演習では、非戦略核兵器の準備と使用に関する一連の措置が実施される」と同省は述べた。

 同省は、訓練には海軍以外に、南軍管区の非公開のミサイルや航空部隊も参加すると付け加えた。南部軍管区には、ウクライナと国境を接するロシア地域と、占領されたウクライナ領土が含まれる。

 具体的にいつ、どこで訓練が行われるのかについては、"近日中 "以外の詳細は発表されていない。

 国防省によれば、演習はロシアの領土保全と主権を確保するシナリオで行われる。

 アメリカ政府はロシアが最大2000発の戦術核兵器を保有していると評価している。これらには、短距離弾道ミサイル、空中投下型重力爆弾、魚雷、砲弾を含むがこれらに限定されない、空、海、地上に発射されるさまざまな兵器が含まれる。重量が約1500ポンドを超えるロシアのすべての空対地ミサイルには、オプションで核弾頭が装備されており、一部の空対空ミサイルにもそのオプションがある。

 今日発表されたような演習は、戦術核戦力を維持するための定期的な(そして重要な)特徴であるが、特筆すべきは、その背景となる理由とともに、演習を公に宣言したことだ。

 先週クリミアにあるイスカンデルM短距離弾道ミサイル基地を標的にしたと噂されるウクライナの攻撃によりこの作戦が促された可能性があるとの指摘もある。同施設は、ウクライナに対してミサイルを発射するために使用されている、ウクライナはアメリカ製の陸軍戦術ミサイルシステム(ATACMS)の長距離バージョンで攻撃されたと言われている。

西側諸国のウクライナへの関与の危険性を訴える中で、ロシアは核兵器の危険性を頻繁に強調してきた。

 ロシア国防省によれば、この核演習は「ロシア連邦に対する西側のある当局者の挑発的な発言や脅しに対応するため」だという。

 国防省は名指しこそしていないが、これは先週のエマニュエル・マクロン仏大統領の、ウクライナへの軍隊派遣を否定しないとの発言に続くものだ。

 ロシア外務省は、今後の訓練に関する発表の中で、マクロン大統領を「無責任で軽率な発言に驚きを禁じ得ない」と非難し、「フランス外人部隊の傭兵がすでにウクライナに入っている」という根拠のない主張も行った。

 先週、マクロン大統領は、ロシアがウクライナの前線を大きく突破し、キーウが支援を要請した場合、少なくとも将来的に西側の軍隊をウクライナに派遣する可能性についてはオープンであると再び述べた。

 「私は何も排除していない。なぜなら、私たちは何も排除しない相手と対峙しているのだから」と、マクロンは『エコノミスト』誌との最近のインタビューでプーチンを引き合いに出して語った。「もはや何も持たず、侵略者である相手に対して、我々の行動の限界を定義することは、間違いなくためらいすぎた。「ウクライナに抵抗する手段を与えることだ。しかし、われわれの信頼性は、われわれが何をするのか、あるいは何をしないのかを完全に明らかにしないことによる抑止力にもかかっている。そうでなければ、自らを弱めることになる」とマクロンは付け加えた。

 ウクライナに軍隊を派遣するかどうかという問題については、戦略的に曖昧であるという慎重な一線を踏んでいるが、マクロンの発言は以前もクレムリンの怒りを買ったことがある。

 クレムリンのドミトリー・ペスコフ報道官は今日、記者団に対し、「彼らはウクライナに派兵する用意があり、そのつもりであるとさえ話していた。「これは全く新しいレベルの緊張激化だ。前例のないことであり、特別な注意と特別な措置が必要だ」とペスコフ報道官は付け加えた。

 フランスだけでなく、モスクワはウクライナ支援に関与しているイギリスとアメリカも非難している。

 イギリスのキャメロン外相は先週、イギリスから供給された武器がウクライナによってロシア国内の標的を攻撃するために使用されることに問題はないと述べた。

 2週間前、ジョー・バイデン大統領がウクライナへの610億ドルの支援策に署名し、アメリカはウクライナ戦争へのコミットメントを改めて表明した。

 モスクワにとって、ウクライナに対する西側の軍事支援が深まる兆しは、世界を2つの核保有国間の潜在的な対立へとさらに押しやることになる: ロシア対NATOである。

 プーチンは3月、ウクライナでロシアとNATOが直接衝突すれば、世界は「本格的な第三次世界大戦まであと一歩」となると主張した。

 ロシアの核兵器、特に戦術核戦力は、国内での議論に定期的に動員されており、強硬派はそのような核兵器がいつ、どのように使用されるかを規定した国の核ドクトリンを変更するようプーチンに要求している。

 ロシアの国営メディアもまた、核兵器に関連するレトリックを利用して戦争推進のメッセージを打ち出すチャンスに飛びついている。

 ロシアで最も有名な国営テレビのニュース番組のメイン司会者ドミトリー・キセリョフは、先月末に「我々はそれを使う!」というコーナーを担当した。彼は、西側諸国がウクライナに軍隊を派遣した場合、モスクワは核兵器を使用する用意があると述べた。「NATO諸国がロシアに戦略的敗北を与えるためにウクライナに軍隊を派遣するなら、我々はあらゆるものをどこにでも飛ばしてやる!」。とキセリョフは言った。

 これまで、プーチンは少なくとも公の場では核ドクトリンを修正したがらず、米政府高官もロシアの核態勢に大きな変化は見られないと言っている。

 しかし、ロシアが戦術核兵器を使用する基準値は、これまで考えられていたよりも大幅に低くなる可能性が指摘されている。今年2月に広く議論された報告書によれば、このような反応は、例えばロシア海軍が弾道ミサイル潜水艦の5分の1や巡洋艦3隻を失った場合に引き起こされる可能性があるという。The War Zoneは以前、ウクライナ紛争の核武装の可能性について複数の専門家にインタビューした。

 同時に、ロシアは隣国ベラルーシに戦術核を配備し始めている。昨年6月、プーチンは、戦術核兵器(空中投下型重力爆弾と理解されている)がロシアのクライアント国家ベラルーシに配備されたことを確認した。この動きはポーランドにNATO核兵器共有プログラムへの加盟を促すことになった。

 ロシアの核兵器ドクトリンの基本要素には、核兵器やその他の大量破壊兵器を使用した敵対国の攻撃への対応が含まれている。しかし、その使用は、ロシアに対する通常兵器による攻撃への対応にも及ぶ。

明らかに、さまざまな種類の演習はロシアの核態勢の基本的な部分であるが、今回は西側諸国の動向への具体的な反応として発表されたことは注目に値する。

 「私の印象では、これはウクライナとロシアに関する最近のマクロン大統領の発言に対して核で威圧しようとする明らかな試みである」と。NATO軍備管理・軍縮・核不拡散センターのウィリアム・アルベルク前所長は、『フィナンシャル・タイムズ』紙に語った。

 核兵器使用の可能性についてロシアが以前警告した後だけに、今回のの演習が西側諸国を威嚇し、ウクライナとその同盟国との間にくさびを打ち込むためのものであることは明らかだ。

 この種の警告は一般にロシアの聴衆には効果的だが、ウクライナの西側支援国は今のところ、この種の警告に臆していない。実際、NATOはこのような戦術はキエフを支援する支持を低下させるための「ハイブリッド活動」の一環と分類している。

 注目に値するのは、NATOが定期的に、複数加盟国が運用するさまざまな戦術ジェット機から米国のB61シリーズの核爆弾を使用する訓練を含む独自の戦術核攻撃演習を行っていることだ。これにはF-16バイパー戦闘機も含まれる。

 このことを念頭に置いて、「これらの機体が核と非核の両方の任務に使用できる二重用途機材である事実を無視できない」と、ロシア外務省はウクライナに引き渡されるF-16について今日の声明で述べた。「ウクライナに納入されるF-16がどのような改良型であろうと、われわれはそれを核兵器搭載可能な機体として扱う」。

 無論、ウクライナがF-16とともに核兵器を手に入れたり、核兵器にアクセスすることはない。ロシアのこの発言は、前述のベラルーシへの核兵器の前方配備や、その使用の可能性に関する同国軍との協力とは対照的である。

 プーチンは過去にも、ウクライナのロシア領を確実に維持するために「あらゆる手段を用いる」と述べていた。戦争の流れがロシアに傾きつつある現在、こうした発言は沈静化してきたようだ。

 しかし、ウクライナに対する西側の新たな支援は、数十億ドル規模の武器パッケージの追加として行われ、西側が供給する武器がロシアの標的に対して使用されるのを許容する兆候も出てきた。ロシアが新たに発表した戦術核兵器の訓練がどのような結果をもたらすにせよ、クレムリンが核戦力の使用を脅し、少なくとも欧米の紛争へのさらなる関与を思いとどまらせようとする最後の機会にはなりそうにない。■



Putin Orders Tactical Nuclear Drills In Response To Western “Threats”



BYTHOMAS NEWDICK|PUBLISHED MAY 6, 2024 8:12 PM EDT

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