2016年3月25日金曜日

★F-35は2070年まで供用と決定



2070年に皆さんはおいくつになっていますか。むしろF-35をそこまで運用することの方がショックですが、機体を維持するためのインフラや投資を考えるとその計算が成り立つのでしょうかね。全事業費は120億ドルともいわれますが数字が大きすぎてよくわかりません。またこれから半世紀後のドル価値も予測不可能でしょう。後の世代につけをまわす不良債権にならなければいいのですが、皆さんはどうお考えでしょうか。今や日本も他人ごとではないのですよね。
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F-35 Will Fly Until 2070 — Six Years Longer Than Planned

Lara Seligman, Defense News7:34 p.m. EDT March 24, 2016

WASHINGTON — F-35共用打撃戦闘機の就役期間は2070年までとこれまでの想定より6年延長される。
  1. F-35共同開発室JPO室長のクリストファー・ボグデン中将が3月24日ペンタゴンで記者団に米空軍、海軍、海兵隊でF-35飛行時間を合計1.6百万時間増やすと発表した。このうち空軍の増加分は1.3百万と最多だ。空軍向けF-35Aが2070年まで飛行することになる。
  2. 延長で運用支援(O&S) 分450億ドルが2015年の見積もりに上乗せされ、これまで2ないし4パーセント減る見込みだったO&Sの節減効果が帳消しになる。延長しなかった場合にはライフサイクルでのO&S費用は2014年予測より220億ドル減っていたはずとボグデン中将は述べた。2014年から2015にかけてのO&S費用のは230億ドル増加し総額6,208億ドルと見積もられている。
  3. ペンタゴンがまとめた主要装備調達報告書Selected Acquisition Report, SARによればF-35調達の全期間コストは2014年予測の3,910億ドルが3,790億ドル(ただし報告書作成年のドル換算)に減るとしていた。
  4. SAR報告書は編集時点のドルで換算するのに対し、JPOは基準年の2012年ドル価格を使っている。
  5. 2014年度のSARとの比較では空軍向けF-35Aでは基準年ドル換算で一機当たり1.8百万ドル低下、海軍向けC型では1百万ドル下がっているとボグデンは述べ今後も増産効果と生産コスト削減で費用圧縮が続くとボグデンは述べた。
  6. SARによれば3,241億ドルだった機体関連費用が3,184億ドルに下がっており、プラット&ホイットニーのF135エンジン関連で9.5%の削減が実現し、670億ドルから606億ドルになった。
  7. SAR最新版では基準年換算でも研究開発テスト評価RDT&Eで300百万ドルの増加を試算しているとボグデン中将は述べたが、この増加分には「真水の」RDT&E費用分は入っていないという。むしろJPOが調達勘定からRDT&E勘定に予算を移したことが反映されているのだとの説明だ。このため「実質的に全く影響はなし」とし、同額分が調達勘定で減っているからだとする。RDT&E費用の実態は2014年から2015年にかけて増加していることは同中将も認めた。
  8. 「今年は実質費用が実質的に増加する」とボグデン中将は報道陣に伝えた。「これまで大変な歴史のあった事業としては大きな問題ではないだろう」■


博物館j展示機から部品取り? ここまで米軍の装備状況は悪化しているのか


ここまで状況がひどくなっている原因は財政の健全化のため無理やり予算を削減したことなのですが、オバマ政権が残した課題を次の政権がどうかじ取りするのか、2020年代まで危険な時代が続きそうです。
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Marines Scrounge Yorktown Museum F-18 For Spare Parts; How Bad Is It?

By COLIN CLARK on March 23, 2016 at 6:24 PM

F/A-18D Aboard USS Yorktown MuseumUSSヨークタウン博物館で展示中のF/A-18A Credit: Patriots Point Naval & Maritime Museum
CAPITOL HILL: 米国の兵器各種で老朽化が進んでいることに下院共和党議員の間に当惑が広がっている。新型装備の数はかなり減っており、訓練費用が不足し15年間もの長きにわたり戦闘が続く中、米軍兵士がそのうちに究極の対価を支払う事態になりそうだ。
下院軍事委員会委員長マック・ソーンベリー議員が海兵隊のボーフォート航空基地で見聞した事例が昨日アシュ・カーター国防長官と統合参謀本部議長ジョー・ダンフォード大将を招いた公聴会で明らかになった。
公聴会では博物館展示の機体から部品取りが行われたとだけ紹介された。記者が裏を取るため聞きまわったところ海兵隊ボーフォート航空基地所属のF/A-18で必要な部品は生産が終了しており、在庫がなかった。基地内の展示機体をチェックし、該当部品を見つけようとしたが、だめだった。USSヨークタウン空母博物館を訪問した中佐が同じ型式の機体が展示されているのを見つけ甲板に展示中のA型機体から部品を取り外した。当日はコックピット開放日で子供も機体に触れることができた。部品を持って帰ったが、残念なことに作動しなかった。
だが委員会は驚くべき内容の事例を紹介している。「即応態勢問題が軍全体で発生していることの象徴だ」と委員会スタッフは記者に語っている。ソーンベリー委員長はこの問題を公聴会で取り上げた。
「軍の関係者から以下直接聞き取った:
  • 博物館展示機体から部品を取り出し、海外派遣に間に合わせようとした(上の例)
  • アリゾナの機体保管所から機体を呼び戻し、任務飛行の準備を間に合わせた
  • 必要飛行時間下限に満たないパイロットでさらに訓練飛行時間が敵側より低くなっている
  • 次世代の隊員に必要な訓練や指導ができる経験者が不足し、連日の長時間勤務に耐えられなくなっていること
  • ペンや清掃用紙タオルのような基本必需品を自ら購入している隊員がいる。正規手順だと入手に三四か月かかるため
「海兵隊航空部隊が訓練のみならず任務でも要求水準に到達していない。陸軍の三分の一は準備態勢が不足している」とソーンベリー議員は発言した。「空軍の戦闘部隊で即応体制ができているのは半分以下だ。ハイエンドの戦闘についてである、との指摘があり、我が国の歴史上でここまで規模が縮小し、戦闘準備の劣化があらゆる作戦で見られたことはない、との証言がある。各軍でこの指摘は共通しており、憂慮せざるを得ない」
これに対して統合参謀本部議長ダンフォード大将から議員の主張する準備態勢は確かに問題であるが、2017年度予算で適正な対応が可能と指摘が出た。議会が作り出した「不安定な財政環境」に「作戦テンポがけた外れに高くなったこと」が組み合わさったことが即応体制の不足を招いているという。
では解決にいつまでかかるのだろうか。ダンフォード大将は暗い見通しを示した。陸海空軍、海兵隊が迅速な維持管理、訓練、近代化を実現できるのは2020年度ごろだという。ではコソボ紛争からずっと戦闘を展開中の空軍はどうなるか。ハイエンド戦に十分な対応ができるようになるのは2028年度になるという。
その間の予算措置で老朽化する機体をだましだまし飛ばすことになるが、これで作戦展開のニーズに本当に答えることになるのだろうか。■


2016年3月23日水曜日

米比基地利用協定の中身に注目



南シナ海のご当地フィリピンで米軍が再び基地利用できるようになったという話題です。当面は空軍基地のネットワークを整備しながら、本命の海軍施設の供用開始まではまだ相当時間がかかりそうですが、1991年に反米感情の高まりから米軍基地を放逐したフィリピンがやっとここまで来たのかというお話です。中国は過敏な反応を示すでしょう。
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Analysis: New U.S.-Philippine Basing Deal Heavy on Air Power, Light on Naval Support

By: Armando J. Heredia
March 22, 2016 12:25 PM


先週末に米フィリピン両国が第六回二国間安全保障対話をワシントンDCで実施した。今回は高度防衛協力協定 (EDCA) で初の具体的成果が表れた。米国が太平洋再配備の一環として部隊をローテーション配備したり事前集積拠点として利用できる基地五か所が発表された。
  1. このうち4か所が空軍基地で、ルソン島のバサ、パラワン島のアントニオ・バウティスタ、セブのマクタン-ベニト-エブエン、ミンダナオのルンビアの各基地だ。首都マニラ郊外のフォート・マグサイサイは唯一の地上部隊用施設となる。
  2. この発表を見ると興味深い可能性が見えてくる。バサはフィリピン空軍戦術攻撃飛行隊の拠点であり、米空軍の航空戦闘軍団飛行隊を収容する余地が大きい。マクタンはフィリピン諸島の中央部に位置し、フィリピン空軍の輸送隊が拠点としている。また基地は国際空港に併設されており、港湾とも近い。ルンビアは反乱勢力が活動するミンダナオにあるが、直近の戦闘が発生した地点にほど近く、フィリピン空軍の第15攻撃飛行隊の基地となっており、この数年間反乱勢力への対地攻撃を実施している。
  3. 同飛行隊はフィリピンで初めて精密誘導攻撃を実施しており、ペイヴウェイ爆弾をアブサヤフ反乱勢力に投下している。これは米空軍が技術指導しており、今後の展開の前例となった。アントニオ・バウティスタ基地はパラワン島にあり、スプラトリー諸島に近い。フォート・マグサイサイはこれまでの米比軍事交流でおなじみの基地だ。
  4. 基地利用案は恒例のバリカタン(肩を並べた協力)演習の際に発表された。
  5. 同演習では今後各基地の利用で大きく前進するだろう。今のところ、各基地の整備に予算を確保する必要があり、部隊の展開はまだ実行できない。一部には冷戦時の米軍駐留に戻るとの批判もあるが、各基地はフィリピン基地であり、米軍は兵員を交代で配備し、施設を建設し、物資を事前集積するがあくまでもフィリピン側が管轄する範囲内であり、かつてのスービック海軍基地やクラーク空軍基地のような米軍が完全に管理運用するのとは異なる。
  6. この違いの意味は大きい。また今後の整備も必要で、例えば基地運営のモデルはまだ未完成だ。どちらが指揮統制すべきなのか、米軍が一方的に基地から発進できるのか。さらに状況を複雑にするのが中国の脅威だ。もしEDCA指定基地の米軍が攻撃を受ければフィリピンが直接攻撃を受けたことになり、運用上米軍部隊への攻撃と事前集積装備への攻撃を区別することは不可能だ。
USS Enterprise (CVN-65) at Subic Bay in 1993. US Navy Photo
USS Enterprise (CVN-65) at Subic Bay in 1993. US Navy Photo

  1. EDCAの背景には米軍のアジア再展開があるが、各基地は同時に人道援助災害救難(HA/DR)活動の支援にも活用できる。マクタン-ベニトエブエン基地は国内中央部にあり、この数年同地区は強力な台風に相次いで襲われているので、救援物資の輸送用の大型機の受け入れには最適な立地といえる。
  2. ただし今回の発表で目立つのは海軍関係の基地が入っていないことだ。この地域の海洋安全保障上の課題で中心となる不安定さは空軍だけでは根本原因を解決できない。海軍のプレゼンスがどうしても必要だ。ではスービック他がどうしてリストにに入っていないのか。
  3. まずスービックは1991年の米軍撤退後は経済輸出地帯に変換されており、工業地帯として民間産業用に利用されている。2015年中頃にやっとフィリピン国防省が輸出地帯公社から認可を受けて15年間の期限付きで旧海軍基地部分の利用が可能となった。
  4. そうなると基地再整備はまだこれからとなり、第七艦隊艦船の受け入れは拡張工事が完了してから可能となる。ベニグノ・アキノ大統領は今年夏に退陣し、整備事業の決定は次期政権に任される。
  5. 5月予定の大統領選挙の結果次第で事態は複雑になる。有力候補の一部には親中国姿勢を示すものもあり、米国務省、国防総省の政策立案部門は動向を注視している。■


2016年3月22日火曜日

MiG-35初期生産機体が今年中にフライトテストを開始


MiG-35 pre-production batch to start flight tests soon

Nikolai Novichkov, Moscow - IHS Jane's Defence Weekly
17 March 2016

RSK MiGはまもなく量産前のMiG-35複数機をロシア空軍へ引き渡し、フライトテストを開始させる。. Source: IHS/Patrick Allen



新型駆逐艦ズムワルトが引渡し前の海上公試へ出港!



Zumwalt Destroyer Leaves Bath Iron Works for Builder’s Trials

March 21, 2016 12:36 PM

Destroyer Zumwalt (DDG-1000) is underway on Dec. 7, 2015. US Navy Photo
Destroyer Zumwalt (DDG-1000) is underway on Dec. 7, 2015. US Navy Photo

誘導ミサイル駆逐艦ズムワルト (DDG-1000) は3月21日に建造元による最終海上公試に出港し、来月の米海軍向け引き渡しに備える。海軍報道官がUSNI Newsに伝えてきた。
  1. 同艦はジェネラルダイナミクスのバスアイアンワークス(BIW)造船所(メイン州)を離れ、ケネベック川を下り大西洋に向かった。
  2. 「DDG-1000は本日メインを出発し、建造元海上公試で中核システムや技術内容の実証を行う。主なものに高性能誘導モーター (AIM)、統合推進方式 (IPS)、操艦補助システム等がある」と報道官発出の声明文は説明。
  3. 「各システムの試験以外に海軍と業者が合同で行う引き渡し時公試前の各種確認作業、乗員の習熟、正式認証に向けた乗員訓練があり、本年10月15日の就役に向け重要な一歩となる」同艦は昨年12月に初出航し短期間の海上公試を行っている。
  4. 海軍には4月に引き渡され、カリフォーニアへの回航に先立ち船体機械電気各システム (HM&E) を完成させる。西海岸で戦闘装備とセンサー類を搭載する。
  5. ズムワルト級ではガスタービンエンジンとディーゼル発電機で複雑な艦内配電を行うのが特徴で予定より長時間かけて建造試験が行われ、引き渡しも遅れた。
  6. BIWは同級3隻を総額220億ドルで建造する。またアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦の追加建造もあり、海軍はズムワルトの戦闘装備艤装をサンディエゴで実施することで造船所の作業スペースを確保するとUSNI Newsは見ている。■

2016年3月12日土曜日

速報 北朝鮮潜水艦が日本海で行方不明、沈没か



U.S. Official: North Korean Submarine is Missing, Presumed Sunk

By: Sam LaGrone
March 11, 2016 4:00 PM • Updated: March 11, 2016 5:12 PM

Kim Jong Un in the conning tower of what appears to be a Project 633 diesel submarine. KCNA Photo
633級ディーゼル推進潜水艦の司令塔に乗る金正恩  KCNA Photo

This post was updated with additional information on the North Korean submarine force.


北朝鮮海軍の潜水艦一隻が行方不明中で沈没したらしいと米政府関係者がUSNI Newsに11日伝えている。

  1. 種別不明の同艦は北朝鮮沿岸で数日間にわたり作戦中に所在が分からなくなった。
  2. 「先週から行方不明で沈没したとみている」と同関係者はUSNI Newsに述べた。同関係者は同艦で何があったのか詳しく述べていないが、追跡捕捉の方法を明かせないためだろう。
  3. 別の関係者も情報を提供してくれた。米政府関係者はいずれも沈没地点を明らかにしていないが、USNI Newsは北朝鮮が日本海側に有する潜水艦基地二か所の近辺と理解している。ジョンズホプキンス大学米韓研究所のジョー・バーミュデスの情報提供によれば北朝鮮の主要潜水艦基地は東海岸にあるが、別に小型潜水艦運用に小規模施設が三か所あるという。
  4. 北朝鮮が運用中の潜水艦は大小合わせ70隻あり、数名が乗り組む小型潜水艇から40名ほどで運用する大型艦まである。2000年以降北朝鮮は潜水艦の近代化を図っている。
  5. バーミュデスによれば各艦は「そこそこの性能」があり、民生用装備を軍用に転用しているという。しかし「整備で大きな問題があり、保守管理水準は東アジア各国海軍より相当低い」と指摘する。
  6. 北朝鮮は潜水艦部隊で韓国に脅威を与えようとし、攻撃型潜水艦を多数集結して韓国に示威をかけたこともある。艦の大部分は旧式ロシア製で性能は低いが、韓国海軍の対潜能力整備は遅れている。2010年に韓国海軍の海防艦天安 Cheonan が北朝鮮の小型潜航艇が発射した魚雷で沈没し、乗組員46名が命を落としている。■


2016年3月11日金曜日

主張: 核運用爆撃機は抑止力維持で今後も有効 近代化を進めるべき


LRS-Bへの風当たりが強く、空軍関係者から以下の寄稿があったようです。抑止力のおおきな構造要素としての爆撃機の運用能力の維持向上が必要との主張です。
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Why Bombers Are Key to Nuke Modernization; Think Russia, North Korea, China

By ADAM LOWTHER and CHRIS WINKLEPLECK on March 09, 2016 at 3:15 PM

B-2 with B-61 other weapons
B-2 with B-61 and other weapons
核兵器の改修事業に反対する向きは大統領選挙の行方に気をもんでいる。長距離スタンドオフ巡航ミサイル (LRSO) や核爆弾B61Mod12の耐用年数延長はじめ拡充事業を阻止する望みが消えつつあるためだ。核兵器の廃絶や段階的縮小を願う向きには残念だがオバマ大統領は核兵器改修を推進しており、2010年の新START条約の成立で共和党の支持を取り付けた際の約束を守っている。ロシア、中国、北朝鮮が一層活発な動きを示しておりオバマ政権は核兵器の近代化改修を継続している。
  1. ここに予算を投じることは税金の無駄使いではない。逆に核抑止力の維持で中心的な役割を果たす。爆撃機部隊がLRSOや B-61 Mod 12を搭載すれば、核兵器改修が目に見える効果を上げるのが一番よくわかるだろう。
  2. ここ三年で二回も米国は北朝鮮の危機エスカレーションに対してB-2やB-52による示威活動で対抗している。2012年12月に北朝鮮が長距離ロケット発射をした際、2013年2月12日に核実験を行った際だ。
  3. 当時、米韓合同演習の実施が迫り、北朝鮮は演習を核戦争準備ととらえ威嚇しつつ、1953年休戦協定は無効とまで言い切った。緊張が高まる中、B-2ステルス爆撃機2機が米本土から発進し韓国上空を飛行し、演習用爆弾を韓国内演習地に投下した。韓国空軍戦闘機の護衛つきで爆撃機は演習に参加し、緊張は緩和したが、一時的にすぎなかった。
  4. 金正恩生誕の二日前に北朝鮮が水爆実験した際には太平洋軍 (PACOM) がB-52一機を韓国に派遣した。
  5. 抑止効果は一回で完了するものではなく、正しい手段で事態がエスカレートし開戦にならないように日常から維持すべきものだ。このため、空軍がB-52やB-2を韓国へ派遣したのであり、各機が最新型の核巡航ミサイルや高精度の核爆弾を搭載していると敵側に知らせる必要がある。
  6. これが理解できなければ抑止ミッションは成功しない。PACOM司令官ハリー・ハリス大将がいみじくも言っている。「米側同盟国の韓国、日本へのコミットメントで米国に不動の決意があると示すとともに米本土防衛でも妥協の余地なしと伝えることだ」
  7. もっと大きな外交メッセージとしては米国が有するいかなる脅威にも対応する能力、意思を伝えている。北朝鮮と米国の関係が極めて複雑なため、何にもまして北朝鮮には米国が核兵器の行使を真剣に考えており、韓国防衛に責務を有していると理解させる必要がある。
  8. 核兵器の近代化とともに核運用可能な爆撃機の投入は北朝鮮に対してこちら側の能力・意思を伝えるだけでなく、その他国に対しても米国の言葉の重みを感じさせることにつながる。
  9. 爆撃機による核兵器ミッションというと都市破壊や大量殺戮の印象が強いが、このイメージがあるからこそ米国は間違いのない抑止力を確実に確保できるのだ。爆撃機は核の三本柱のひとつであり、敵対勢力にアメリカの意図を明瞭に伝えるがICBMや潜水艦発射ミサイルでは期待できない効果だ。近代化改修があってこそ大きな威力を発揮できるのであり、米国の発出するメッセージに重みがつく。
  10. 核兵器近代化や爆撃機部隊の存続に反対する向きは核運用爆撃機や兵器の近代化あるいは新型導入は不要と主張するが、厳然たる事実はかわらない。三本柱でアメリカの意思をこれだけ目に見える形で伝えられる手段は他にはない。北朝鮮がこちらの意思を試すことに執念を燃やす現状で爆撃機部隊に高性能核兵器を搭載しないでおけるだろうか。
著者クリス・ウィンクルプレック少佐は第608航空作戦センター勤務。またアダム・ロウサーは空軍工科大学高度核抑止力研究校の理事。著者の見解は米空軍、米国防総省、米国政府の公式見解や方針を必ずしも反映するものではない。


2016年3月10日木曜日

ペンタゴンのブラック予算は680億ドル規模か


予算が厳しいと言いながら、かなり潤沢な金額がブラックの世界にはあるようですが、今後の画期的な装備の実現につながれば安いものではないでしょうか。情報機関の影がついてまわりますが、知られているCIA,NSA,NRO以外にも別機関があるようですね。
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Classified Pentagon Programs Will Cost $68 Billion In 2017

Pentagon’s secret budget remains robust
Mar 9, 2016 Bill Sweetman | Aviation Week & Space Technology - Defense Technology Edition
ボーイングX-37Bが記録樹立となったミッションから旗艦した。同機は米空軍が手掛けた「ブラックからグレイ」の典型例だが、予算は情報関連費目で負担したと思われる。Credit: U.S. Air Force

ペンタゴンの「ブラック予算」とは公式には存在をしないことになっており、公表書類には出てこない事業への支出を意味する。2017年度には総額680億ドルと国防予算の12パーセント相当になることがAviation Weekの分析で判明した。この金額はフランス、ロシア、英国の国防予算に相当する規模である。
  1. 極秘予算は研究開発、調達、作戦、保守管理予算項目に潜り込ませてあり、研究開発では総額225億ドルのうち三分の一近く、調達業務207億ドルで約19パーセントが秘匿扱いになっている。合算するとブラック関連の調達予算は24パーセント相当になるが、冷戦末期は17パーセントだった。
  2. 極秘事業にはB-21長距離打撃爆撃機LRS-Bや長距離スタンドオフミサイル(空中発射巡航ミサイル更新装備)は含まない。こうした装備は全体像や技術面は秘密扱いだが、関連予算は公開されている。
  3. すでに存在が明らかになっているブラック事業にノースロップ・グラマンRQ-180情報収集監視偵察(ISR)UAVがある。この予算は空軍の正式なR&D、調達の各費目に入っている。長く続いている空軍調達予算費目に「ミサイル調達」となっているものがあり、画像収集衛星や信号情報収集宇宙機として国家偵察局(NRO)向けの装備と推定され10.6億ドルが計上されている。その他小規模事業で公開予算では存在が確認できないものがある。例としてジェネラルアトミックス・エアロノーティカルシステムズのプレデターC(アヴェンジャー)として空軍で呼ばれるUAVがある。
  4. 最大規模になっているのが空軍が「その他調達」とだけ記しているもので、ここに小型弾薬からISR地上走行装備などすべてを含め2017年は186億ドルになっている。
  5. それに次ぐのは国防全般に及ぶ秘密作戦・保守管理事業157億ドルだ。上と合わせ二項目だけで秘密予算の半分近くの規模になる。
  6. ブラック予算では空軍向けが最大だ。空軍の極秘R&Dは海軍陸軍合わせた開発費の二倍規模で陸軍、海軍向け極秘開発費用は20百万ドル未満だ。
  7. ただしブラック予算の分析はかなり面倒だ。情報部門(IC)を主に構成するCIA、国家安全保障局、NROの予算の大部分は空軍予算に潜り込ませてある。空軍内部では「ブルー」予算と「非ブルー」予算を区別しており、後者がIC向け予算を指す。両者の差額の大部分が調達(216億ドル)とR&D(85億ドル)だと予算書でわかる。
  8. ただし非ブルーのR&Dは空軍が示す極秘R&D総額より46億ドル少なくなっており、IC向けとは別の大型R&D案件が空軍にあることがわかる。ややこしいのはNRO向け宇宙機の設計開発支援は空軍事業の一部になっていることだ。その他にも有人、無人双方のISR機材がCIA所属になっているが、実際の開発、調達、運用は空軍がおこなっている。このやりかたが60年以上も続いており、CIAはMQ-9リーパーUAVに加えおそらくプレデターCも保有している。RQ-170センティネルやRQ-180の各UAVも少なくとも一部は「非ブルー」予算だろう。
  9. 極秘予算で今後の方向性のヒントはペンタゴン内部に少なくとも二か所の「ブラックからグレイへ変換させる」部局があることだ。空軍の迅速戦力整備室(RCO)は2003年4月発足し、RQ-170とX-37Bを手がけたほか、RQ-180にも関係している公算が高い。B-21爆撃機事業も担当している。
  10. RCO方式でアシュ・カーター国防長官が戦略戦力整備室(SCO)を2012年に作った。その目的は「既存装備を改良して迅速にイノベーション効果を生む」ことと長官は説明している。SCOは「現在最古の機材をもとにした重武装機arsenal plane」の開発元であり、ロッキード・マーティンF-22やF-35に同行させ「巨大弾倉」を実現する構想だ。SCOは海軍、陸軍の大口径火砲で運用可能な超高速発射弾の実証も手掛ける。■

2016年3月9日水曜日

★中国の見解:南シナ海で品格ある行動をとるべきは米国である



公平を期すため、中国の見解をお伝えしますが、皆さんは一読してどうお考えになりますか。全く反対の世界ではこう見えるのかということでしょうか。この論説の筆者は世界の情報に通じ論理的に訓練された方だと思いますがその背後には情報を与えらない諸々の人民があり、容易に情報操作が可能なら、また自説の展開を自信たっぷりと世界に発信する国家に説得が可能でしょうか。力による解決しかないのでしょうか。それにしても日本も英語で堂々と主張を伝える必要がありますね。本ブログの作者など喜んで無給でもそんな作業に従事したいのですが。
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Comment: U.S. should conduct itself with dignity in South China Sea

Source: China Military OnlineEditor: Zhang Tao
2016-03-08 16:370

BEIJING, March 8 (ChinaMil) -- 米軍は空母打撃群を南シナ海へ派遣するという強硬策に出たが、3月5日に同部隊が「これまでにない形で」中国艦船により「包囲された」と主張している。
  1. この発表を聞けば米軍が軍事力を誇示し南シナ海で緊張を作り出す真の意図で怪訝に感じる向きがあろう。またこのような行動による悪影響へも懸念が生まれる。
  2. 第一に、「航行の自由」とは南シナ海で騒ぎを起こす米軍の言い訳に過ぎない。
  3. 米報道によれば米太平洋艦隊報道官が3月3日に「米軍艦艇、航空機はかねてから西太平洋全域で作戦を実施している。南シナ海も含み数十年にわたり活動してきた」と発言している。
  4. このこと自体が南シナ海では航行の自由はこれまで問題ではなかったことの証明であり、米軍艦は他国の軍艦・商船と同様に何ら障害を受けずに長年にわたり同海域を航行している。
  5. 昨年10月、今年1月と米軍のUSSラッセン、USSカーティス・ウィルバーがそれぞれ中国の南沙諸島および西沙諸島の水域に中国政府の許可なく進入しておきながら「航行の自由」原則の保護措置だと主張した。
  6. このような行動は中国の主権と安全保障へ深刻な脅威であり、域内の平和安定を損なった。また国際法がうたう「航行の自由」の濫用であり、偽善と弱い者いじめという米国の本質をさらけ出したものだ。
  7. 二番目に、米軍は南シナ海で波を立て中国を封じ込めることで自国による支配を維持しようとしている。
  8. 南シナ海問題で米国は中国の自国主権防衛努力を「西太平洋の支配」を求めるものと主張し、中国が支配権を確立すれば、米国の全世界的覇権への挑戦になるとしている。
  9. したがって一部米国人が海上紛争を利用して中国封じ込めを主張している。米国のNavy Times報道では米軍「小艦隊」で「中国に対抗させ」るとしており、ここでも力の示威および南シナ海で波を立てることが真の目的だと露呈している。
  10. 三番目に、南シナ海での米軍の軍事冒険行動が地域内緊張の根本原因である。
  11. 太平洋軍司令官ハリー・ハリスは中国による南シナ海の「軍事拠点化」を議会公聴会で非難し、米海軍は今後も該当水域での巡視活動を継続すると述べている。
  12. ハリスは3月2日にニューデリーで一部国に「弱小国をいじめ強圧的に服従を求めようとしている」と国名を挙げずに発言したが、米軍のいわゆる「航行の自由」作戦と南シナ海での大規模な軍事力誇示が緊張を生み出しているのが実態である。
  13. 中国が駐留する諸島、環礁の沖合へ軍艦を派遣することで、両国の海軍・空軍部隊は近接距離で接触しており、ひとたび何かあれば事件につながる。一方で米軍の冒険主義によりフィリピンのような国が中国への挑発行為に自信をつけており、域内の安全安定で阻害要因になっている。
  14. さらに一部報道によればホワイトハウスは米軍が南シナ海で行っている軍事冒険行動を逐一把握していないという。
  15. 米空母が南シナ海に侵入したとの報道もまず軍が発表したが、ホワイトハウス報道官はその後の報道記者会見でUSSジョン・C・ステニスが南シナ海を航行するのは通常の空母活動の一環であり、「航行の自由」作戦ではないと述べている。このことから米軍と政権側に見解の不一致があるのがわかる。
  16. 最後に米軍が南シナ海の中国へのすべての挑発行動と示威活動を停止するよう希望し、両国間の相互信頼がこれ以上傷つかないよう望むばかりだ。
  17. 米国は中国と協調することで相違点を乗り越え、戦略的な判断ミスを回避すべきである。南シナ海問題を巡り再び米国が歴史的な戦略誤判断を繰り返すことがないよう希望する。
(本稿の執筆者上級大佐張軍社Zhang Junsheは人民解放軍海軍軍事学術研究所の研究員である。


★米海軍>SM-6が対艦ミサイルに転用できることを実証



少ない予算で状況の変化に対応すべく既存兵装に手を加え多用途対応させていこうという米海軍の現実的な工夫です。攻撃力を再度重視せざるを得ないのは新しい情勢評価に基づいているのでしょう。それにしてもスタンダードミサイルというのは使い勝手の良い装備のようです。
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Anti-Aircraft Missile Sinks Ship: Navy SM-6

By SYDNEY J. FREEDBERG JR.on March 07, 2016 at 4:41 PM

Wikimedia Commons
実験では除籍ずみフリゲート艦USSルーベン・ジェイムズの撃沈に成功した。
超音速SM-6スタンダードミサイルが海上試験で標的艦に命中し、同艦は沈没した。退役ずみフリゲート艦ルーベン・ジェイムズがハワイ沖で1月に沈没していたことが本日明らかになった。試験は米海軍は分散撃滅威力構想Distributed Lethalityで進める攻撃力再建策の一環として実施された。対空防御用のミサイルを攻撃用に用途変更するというのはペンタゴンがめざす最小追加費用で既存装備を別用途に充てる動きに呼応する。
  1. ソ連崩壊(1991年)以降の米海軍は敵艦隊との戦闘から陸上攻撃に中心を移した。空母打撃群の防空や弾道ミサイル防衛も優先順位が高い任務になった。そのため、駆逐艦、巡洋艦はトマホーク陸上攻撃ミサイルや防御用のスタンダードミサイルを多数搭載し、対艦兵器搭載の余地がどんどん減った。さらに現在利用できる艦ミサイルはハープーンのみで、新型ロシア製兵器やそのコピー中国装備に性能が見劣りしている。ロシア海軍の再登場や中国海軍の台頭で対艦兵力の不足が痛感されてきた。
  2. SM-6はレイセオンのスタンダードミサイルファミリーの最新型だ。原型のSM-2対空ミサイルには水上艦対応モードもついていたが、より強力なSM-6が対水上艦で威力を発揮したのはこれが初めてだ。派生型SM-3は大気圏外弾道ミサイル迎撃用に開発されている。SM-6も弾道ミサイル迎撃に成功しており、多様な可能性を証明している。
  3. SM-6は対艦ミサイル、弾道ミサイル迎撃手段としては理想的な手段ではないが各種用途に投入できれば柔軟な戦闘運用が可能になる。海軍はトマホーク改良型のテストで海上では移動艦船、陸上では固定目標にそれぞれ対応できるか試している。トマホークはSM-6より遅いため撃墜される可能性もあるが、対艦トマホークは有効射程が長く補完効果を示せる。両方の兵装で対艦攻撃能力が手に入れば、海軍艦船は陸上攻撃、対艦攻撃、対空・ミサイル戦すべてに対応できる。しかも二種類のミサイルだけで。これだけで相当の火力増となりミサイルの有効活用につながる。
  4. 柔軟運用への動きはもう一つあり、協調型交戦能力 Cooperative Engagement Capabilityと呼ばれ見通し線外の目標に対し他艦あるいは航空機のレーダーデータをもとに攻撃を加える構想だ。同じ1月にUSSジョン・ポール・ジョーンズがUSSグリドレイからのデータで記録破りの長距離から標的5個の撃墜に成功していたことも今回明らかになった。
  5. 海軍が最終的に目指す分散型撃滅威力構想では、敵がこちらの空母攻撃をする前に艦隊の各艦がもつ威力を無視できなくさせるのが狙いだ。また敵位置を探知した艦が一隻でも艦隊の全火力を集中投入させる。この威力で敵への抑止力が期待できる。■


2016年3月8日火曜日

★米空軍>B-21主要装備生産にあたる7社を公表



Pratt & Whitney, BAE Among Major B-21 Contractors

Lara Seligman, Defense News 5:44 p.m. EST March 7, 2016
WASHINGTON —米空軍はノースロップ・グラマンが進める次世代爆撃機B-21の大手契約企業7社を公表した。このうちエンジン製作はプラットアンドホイットニーと判明した。
  1. 空軍長官デボラ・リー・ジェイムズが報道陣に大手契約企業リストを3月7日にペンタゴンで見せた。予想通り、エンジンはプラットアンドホイットニーで同社コネティカット州イーストハートフォード工場が生産する。B-2エンジンのF118はGEエイヴィエーションが担当していたので新しい展開となった。
  2. 残る6社はBAEシステムズGKNエアロスペース(ミズーリ州セントルイス)、ジャニッキインダストリーズ(ワシントン州)、オービタルATK(ユタ州、オハイオ州)、ロックウェルコリンズ(アイオワ州)、スピリットエアロシステムズ(カンザス州)で「機体構造またはミッションシステムズ」にあたる。
  3. ただしジェイムズ長官は各社がどこを担当するか明らかにしていない。
  4. 空軍が企業名を公表することにした背景に透明性を上げて多額の予算を必要な同機開発へ支持をとりつけるのが目的があるとジェイムズ長官も認める。B-21にはその他事業やペンタゴン案件との中で予算確保する難題が待っており、とくに議会との関係が重要だ。今月初めには有力議員のジョン・マケイン上院軍事委員会委員長が同機事業を阻止する意向を発表していた。
  5. 「B-2はあまりにも長い間秘密扱いのままで詳細情報の多くが秘匿扱いになったままだった」とジェイムズ長官は述べた。「B-21ではそれを改め、より透明性を今後も示していく」■


2016年3月7日月曜日

★ これはもったいない、財政事情でせっかくのステルス形状を犠牲にするDDG-1000ズムワルト級の改装



背に腹は代えられないとはいえ、せっかく狙った効果が中途半端になれば安物買いの銭失いになりかねません。水上艦でどこまでステルスが実現するかという問いに同艦は画期的な歴史の一ページとなるはずだったのですが。米海軍はまだステルス性ありと突っぱねているようですが、忸怩たる思いがあるのでしょうね。



New External DDG-1000 Mast Reduces Ship’s Stealth From Original Design

By: Sam LaGrone
March 3, 2016 12:10 PMUpdated: March 3, 2016 1:42 PM

ddg_1000_mast

The starboard view Zumwalt DDG-1000 from a Dec. 7, 2016 underway. US Navy Image

センサー装備の追加装備で次世代駆逐艦ズムワルト (DDG-1000) のステルス性能が当初想定より劣化すると判明した。

  1. 海軍発表の予想図ではズムワルト級三隻は当初デッキハウスに組み込む予定だったセンサー各種をデックハウス前方のマストに装着するほか、デックハウス側面左右にその他センサーを付ける。
  2. この変更でデックハウスが狙った効果が一部犠牲になる。当初は複合材デックハウスは敵レーダーによる探知を防止するねらいがあった。当初センサー用アンテナ類はステルス機と同様に表面から突出しないよう整形されていた。
An artists rendering of Zumwalt's original design prior to the Nunn-McCurdy restructure showing the original sensor configuration on the deckhouse.
当初の完成予想図ではセンサー類はデッキハウスに統合されている。
  1. 今回外部にアンテナが突出する形になったのは重量軽減と費用節約のためと海軍海上システムズ司令部NAVSEAがUSNI Newsに述べている。
  2. NAVSEAによる説明ではズムワルト級は変更後も海軍の求めるステルス性を発揮できるという。
  3. 「変更後のDDG-1000上部構造物は性能および重量面で改善され費用増かを抑える効果がある。変更によりマスト一本がデッキハウス前方に加わり、UHF、VHF、データリンクの通信系と風速センサーをマストに集約する」という。
  4. 「変更により各艦は三隻とも性能面の向上をしつつ、費用高騰を抑え、重量軽減も実現するが、中核性能要求(KPP)たるレーダー断面積(RCS)の水準は満足できる範囲になる」

DDG-1000ズムワルトの右舷、2015年12月7日撮影。US Navy Image
  1. RCSはステルス性能の指標で、低いほどレーダーに映りにくい。ロッキード・マーティンF-22ラプターのRCSは角度によるが「ビー玉」程度といわれる。
  2. 当初の設計案ではRCSはもっと小さかったが、費用面を考慮して海軍はRCSを犠牲にして費用を抑える判断をした、とブライアン・クラーク(戦略予算評価センター(CSBA)の海軍アナリスト)は見ている。
  3. ただし変更後の形状でも海軍がDDG-1000に求めた水準は最低限で実現するとクラークは解説している。
  4. 複数筋からマスト採用への変更は性能水準を切り下げた結果であり、この背景に2010年のナン-マカーディ立法による見直し、つまり当初想定より単価が25パーセント以上増加した場合に国防総省が事業を見直す必要が課せられたことであるとの指摘がある。DoDが当初の7隻建造を3隻に削減したのも単価上昇を生んだ。
  5. ナン-マカーディ立法により海軍は性能水準を下げており、Sバンド大型探査レーダーは装備を断念している。また57mm砲は30mmに変更されている。
  6. 一番艦ズムワルトはジェネラルダイナミクスのバスアイアンワークス造船所による公試のあと今年後半に海軍へ引き渡し、サンディエゴで戦闘装備の搭載を完成させる。■