2013年7月3日水曜日

米海軍の次期艦載機材選びに考慮すべき要因 F-35Cは本当に必要なのか

                              

Defining U.S. Navy TacAir Choices

By Bill Sweetman
Source: Aviation Week & Space Technology
aviationweek.com June 24, 2013
Credit: JSF Program Office



米海軍が将来の航空機構成で決断を迫られている。現行のF/A-18E/F スーパーホーネット、EA-18Gグラウラーの戦術航空機構成をF-35Cに円滑に移行させつつ新開発の空母運用型偵察攻撃UAVを購入する資金を確保できるのか。


F- 35Cの更なる遅延にも手を打つ必要がある。同機はまだ空母着艦能力を実証していないが、着艦フックの設計変更をし2014年に公試に臨む。海軍は初期作 戦能力は暫定的なブロック3Iソフトウェアでは獲得できないとし、ブロック3Fの利用開始を待つこととしたため、開発日程管理のリスクが増えている。 2015年に最小限のF-35B/Cを購入し(引渡しは2017年)、2016年は18機、2017年は28機と順次増やして、2018年以降は40機を 調達する。


一 方でスーパーホーネット購入予定は2014年になく、21機のEA-18Gで組立てラインを維持する。今後の海外販売の動向で生産活動は左右されそうで、 オーストラリアからのEA-18G12機発注が一番確実だが、その他ブラジル、デンマーク、アラブ首長国の動きも目が離せない。海外発注数が増えれば、海 軍にとってF-35のIOC時期確定までのオプションが有効になる。


ボーイングジェネラルエレクトリックよ り高性能版スーパーホーネットの提案があり、F-35Cとの比較で類似点がかなりあることがわかる。F-35の長所はステルス性が高いこと、2,000- lb.級爆弾を2発搭載してステルスモードが可能だという点だが、ボーイングはレーダー断面積削減と電子戦システムで生存性は十分あり、しかもF-35C より安価と主張している。


も ともとF-35Cはスーパーホーネットやグラウラーとの交代を想定していないし、F-35C開発が予定通り進展すれば同機の本格生産は2032年まで続 く。つまりその年がF/A-18 後継機の引渡しが最短で開始する年になる。ただ海軍はスーパーホーネット、グラウラーの耐用年数を延長すべく作業中で、2035年までの供用を実現しよう としている。F/A-18E/F 各機の実飛行時間累計は設計上の6,000時間の3割に相当、と海軍は発表しているが、耐用年数延長で低リスクで9,000 時間実現が目標。


耐 用年数延長には空母運用方法を変更し自動着艦、飛行誘導技術をX-47B無人戦闘航空機システムの実証結果を流用すれば可能だ。共用精密接近着艦システム Joint Precision Approach and Landing System (Jpals) の空母搭載が予定され、期待が高まっている。F/A-18に搭載された同システムの実験ではタッチダウンで縦方向10-12-ft. 横方向 9-in.の着艦精度を実証した。


自 動スロットル制御、飛行制御システムを搭載した機体での自動着艦そのものは米海軍にとって目新しい技術ではない。ただ現状では米海軍の自動着艦システムは レーダーを使用するもので空母の位置を誤って伝え、一機ずつしか誘導できないのが制約条件になっている。これに対してGPS応用のJplasは短距離狭帯 域のデータリンクを使う。


自動着艦は機体寿命に重要な要素で、着艦発艦はきびしいストレスを機体に与えるので耐用年数を短くしてしまうのだ。X-47Bの初の空母発艦を5月に実施し たことから、海軍首脳部から自動着艦への関心が再度高まり、高精度誘導を有人機にも提供し、空母着艦訓練回数を減らし、着艦フックの使用を減らすことが期 待される。現状ではパイロットの技能維持のため訓練を実施している。


そうなるとスーパーホーネット、グラウラーの退役予定は2035年より先になる。これによりジェネラルエレクトリックの新型エンジン提案およびボーイングの 一体型燃料タンクとステルス性能向上策への注目を高めそうで、耐用年数が増えれば投資効果も高まり、同時に運用条件が厳しくなるからだ。ALQ-99ジャ ミングポッドや外部燃料タンクを搭載して大重量高抗力の条件で日常的に運用されているグラウラーでは一体型燃料タンクと出力増の恩恵を受けるはずだ。


海軍は米空軍からの依頼で各種のミッションをこなしているが、両軍で思想の差が浮き出ている。海軍作戦部長ジョナサン・グリーナート大将は米海軍協会紀要 U.S. Naval Institute's Proceedings magazine に昨夏掲載された論評記事に注目している。ステルスの真価に疑いを提起した記事だった。本当に重要なのはペイロードの活用で既存機種の性能を追加することだ。


海軍の対水上艦戦 anti-surface warfare (ASuW) 技術の開発でこの傾向は明らかで、センサー類に加えいわゆる「ネット運用可能」兵装 “net-enabled” weapons がここに含まれ、目標探知と命中に他のセンサーを利用するミサイルを想定している。ただしこれは通信が確立されている場合で有効な技術だ。レイセオン製高性能空中センサー Advanced Airborne Sensor のレーダーが新型ボーイングP-8A海洋パトロール機に搭載されており、海上目標の探知、分類、識別を離れた地点から行い、ネット利用可能兵装にデータを提供する。


新しいASuW兵装には空中あるいは海中発射のボーイングのハープーン、スタンドオフ長距離陸上攻撃ミサイルの後継型もある。その候補となるのがレイセオンの共用スタンドオフ長距離兵器 Joint Standoff Weapon-Extended Range だ。長期的には海軍と国防高等プロジェクト研究庁で共同開発する長距離対艦ミサイル構想があり、ロッキードのAGM-158共用空対地スタンドオフミサイ ルを開発しようというものだが、シーカーはパッシブ方式高周波センサー技術と画像処理赤外線端末センサーを組み合わせている。このセンサーの公試が 2012年5月にはじまっており、今夏には実弾発射試験を開始する。


こういったスタンドオフ兵器ではステルス機の投入は必要なく、発射したあとの兵装はレーダーを使用せずに目標に接近できるので、敵の対空システムの犠牲になる可能性が減る。■




参考 F-35Cと高性能版スーパーホーネットの比較表

F-35C
Advanced Super Hornet
初期作戦能力獲得予想年
2019
2018
2012年度ドル換算取得コスト
$115 million
$88-92 million
機体構成
Clean
CFTs / Weapon Pod
ステルス度
High
Moderate
電子戦有効範囲
Forward aspect X-band
All-round, multi-band
デコイ牽引
No
Yes
作戦空虚重量
34,800 lb.
32,650 lb.
内部搭載燃料
19,750 lb.
18,450 lb.
内部搭載兵装重量
4,700 lb.
2,700 lb.
推定離陸重量
61,000 lb.
55,000 lb.
最大推力(通常)
27,000 /43,000 lb.
29,500 /44,000 lb.
最大推力(緊急時)
NA
35,400 / 52,800 lb.
翼面積(総合計)
680 sq. ft.
500 sq. ft.
翼面積(正味)
376 sq. ft.
400 sq. ft.
推力(通常)、重量比
0.44 / 0.70
0.54 / 0.80
推力(緊急時)、重量比
NA
0.63 / 0.96
翼面荷重(総合計、正味)
90 / 162 lb. / sq. ft.
110 / 138 lb. / sq. ft.
搭載燃料の機体最大離陸重量比率
0.32
0.34
最高速度(マッハ)
1.6
1.6
加速性能 Mach 0.8–1.2
greater than 100 sec.
less than 50 sec.
最大G
7.5
7.5



2013年7月2日火曜日

速報 韓国F-X選定不調に終わる

South Korea Extends Bidding On $7.3 Billion Fighter: Media

By Reuters
aviationweek.com July 01, 2013

韓国では総額73億ドルの次期主力戦闘機第二回入札が成立しなかった。第二回目の入札は先週金曜日に締め切られ三社が参加したが、各社の提示価格は想定額より上だったと国内報道が伝えている。

今回の入札は6月18日に公示され、合計60機の機体を2017年から21年にかけて輸入調達するもの。これまですべての開札結果が予算想定額を上回っている。

ロッキード・マーティンF-35A、ボーイングF-15SE、EADSユーロファイター・タイフーンが採用を目指し競っている。

「今回の入札は終了し、次回は7月2日より手続きを再開する」と国防装備調達庁 Defense Acquisition Program Administration (DAPA) スポークスマンが発表している。韓国版F-Xは韓国の歴史上最大規模の兵器輸入案件となる。■

2013年7月1日月曜日

フィリピン海軍施設を米海軍と海上自衛隊が使用する可能性

米海軍協会のウェブサイトでロイター報道を引用する形で大変重要なフィリピン発のメッセージが見つかりましたのでお知らせします。

Philippines Exploring Allowing U.S. and Japan More Use of Bases

By: USNI News Editor
                         Thursday, June 27, 2013
                                                 
USS Enterprise (CVN-65) at Subic Bay in 1993. US Navy Photo



フィリピン政府は米国及び日本向けにスービックベイ元米海軍基地含む国内基地の提供を検討していることが同国国防関係者へのロイター取材で判明した。

米軍は1992年にフィリピンから撤退している。フィリピンは元基地の整備を準備中だという。

報道によるとフィリピン海軍は230百万ドルで基地整備を行い、中国の南シナ海進出へ対抗すべくベニグノ・アキノ大統領に整備案を提出する。基地整備案は比議会が総額18億ドルの軍近代化法案を通過させたことによるもの。

「基地整備案がアキノ政権下で成立する可能性は高い。なぜなら現政権は軍装備近代化を強力に支持しているからだ」と同国国防関係者は匿名でロイターに発言している。「政権破軍の要求を理解してくれており、もっと重要なのは我が国が直面している現状を理解していることだ」

ただし国防長官ヴォルテール・ガズミンDefense Secretary Voltaire Gazmin はこの報道に関し最終決定ではないと論評している。同長官によると政府が米国及び日本によるフィリピン国内の軍事施設利用の便宜供与を拡大する案を検討中であることは事実だという。

「基地使用の合意が成立すれば米国から装備品が国内に到着する」と長官は小野寺五典防衛相の訪比記者会見で発言。「米国以外にも日本にも基地提供する。日本は戦略的パートナーとの認識であり、現在の手続きで進める」

フィリピン海軍は米沿岸警備隊が使用していたハミルトン級カッター一隻をBRP Ramon Alcaraz (PF-16) と改称し受領している。

コ メント どうもガズミン長官発言は日本の報道では黙殺されているようです。フィリピンが中国との緊張から現実的な政策に戻ってきたのは大切なことで、日本 の戦略的思考、行動が試されるでしょうが、例によって「平和思考」の人たちは過剰反応するのでしょうね。すでに平和維持活動で飛行する航空自衛隊C- 130は同国を必要な中継地としており、練習航海でも寄港は通常のこと、さらに経済面でも日本はEPA協定を同国とすでに締結しており、おおきな絆を維持 しているところです。同国が日本に期待するものが大きいのも容易に理解出来ますね。

2013年6月30日日曜日

ロッキードの考える次期米海軍向け無人艦載機Uclass像

U.S. Navy Is Cautious On Carrier-Launched UAV

By Graham Warwick
Source: Aviation Week & Space Technology

aviationweek.com June 24, 2013

Graham Warwick Washington

米海軍が無人機運用で慎重なのには理由がある。ジェネラルダイナミックスマクダネルダグラスA-12の失敗、ロッキード・マーティンF-35Cの遅延を経て、海軍は計画が実現することを第一にしており、そのため初の空母運用無人機では中庸な性能にとどめ、リスクを最小限にしようとしている。

無人戦闘航空機システム実証 Unmanned Combat Air System Demonstration (UCAS-D) に続く無人空母発進空中偵察打撃機構想 Unmanned Carrier-Launched Airborne Surveillance and Strike (Uclass) は端的に言えば運用能力を徐々に向上させる技術開発である。

当初海軍はUclass提案各社に予算を提供する予定だった。ボーイングジェネラルアトミックスエアロノーティカルシステムズGeneral Atomics Aeronautical Systems (GA-ASI)、ロッキード・マーティン、ノースロップ・グラマンの各社で初期設計審査 preliminary design reviews (PDR) までは各社案が残る。これにより海軍は各機の性能とリスクの理解を深めたうえで次の技術開発echnology development (TD) 段階に進む。

「ま だマイルストーンAも達成していませんが、海軍は性能開発要求文書capabilities development document [CDD]を発出しており、通常はこれがマイルストーンBの内容なのですがね」(ロッキードのスカンクワークスでUclass開発責任者を務めるボブ・ル ズォウスキ Bob Ruszkowski, Uclass capture manager for Lockheed Martin Skunk Works.

「海軍はCDDの段階まで相当の時間を使っています。この三年間は業界も海軍に情報提供をしCDDの内容取りまとめに協力して来ました。海軍からも業界にインパクト規模の評価を求めて来ました」

現 時点で業界はPDR段階の性能要求内提案の公募を待ち、とりまとめには9ヶ月はかかると見ている。その後海軍は「航空部」としてUclassの設計、製 造、テスト、配備に至るメーカー一社を絞り込む。これと並行し「地上部」としてUclass用の飛行制御システム開発を進める。このシステムはMQ-4C トライトン、MQ-8B/Cファイヤスカウト他海軍のUAV各機と共通使用するもの。

「2013年度国防予算ではUclassはメーカー選考の前にPDRを完了することを明確に定めている、とルズォウスキは説明する。「選定の前に技術の成熟度を確認することが海軍に求められています」

Uclassには長距離飛行と偵察監視ミッションを主とし、攻撃は250-lbの小規模能力のみ想定してる。搭載機器の中心は電子光学・赤外線・レーザー方式のセンサーで、情報収集機材も同時に搭載して、ロッキードEP-3E部隊に交替させる予定。

海軍が期待するのは空母から離れた場所で24時間毎日監視飛行を維持することだ。入札予定社は性能要求の詳細はまだ検討していないが、空母運用の発着艦のサイクルから「最低でも12時間の連続飛行性能が必要だろう」(ルズォウスキ)と考えている。

機 体生存性については制空権がない空域で運用する想定も含み検討する。「ロッキード・マーティンは機体性能を運用開始後に発展できる提案をします。ステルス 性も後日追加できますが、運用当初からすべての性能を有する必要はありません。当社提案で海軍はトライトンが使えない地域ではステルス、排気制御、非探知 性の機体を投入できるようになります」(ルズォウスキ)

ロッ キード提案は完全新設計、無尾翼の全翼機で同社の50年に渡る無人機製造の知見を反映し、RQ-170センティネル設計も反映したものになるとルズォウス キは語る。「当社は艦載機は作ったことはありませんが、実証済み技術を駆使すればリスクを抑えることが可能です。海軍の求める開発日程も十分満足させられ るでしょう」

ノー スロップはX-47B UCAS-D実証で一歩先を行き、GA-ASIもプレデターCアヴェ ンジャーで先行しているがロッキードが完全新型機設計を選ぶことで不利にはならないとルズォウスキは見る。「海軍航空システムズ本部は空母運用性能を厳格にテストするので、近道は存在しません」

海 軍の予定はTD段階末期で初期性能を有するUclassを4ないし6機空母に搭載した飛行小隊をひとつ編成すること。「当初の供用開始後にも追加性能開発 がありますのでハイブリッド開発と理解しています」(ルズォウスキ)運用開始は契約公布から3-6年後で2020年よりは前になる。予測に幅があるのは海 軍から詳細な説明がまだないため(ルズォウスキ)だ。

厳しい予算環境も考慮して最初の運用部隊はテスト用機材で編成することになりそうだ。「耐用年数の要求水準は相当長くなるでしょう。X-48Bはあくまでもテスト用機材で耐用年数も短く想定されています」(ルズォウスキ)■


2013年6月29日土曜日

注目が集まる海洋パトロール機需要



Prime, Subcontractors Eye Maritime Patrol Market

By Amy Butler
Source: Aviation Week & Space Technology
aviationweek.com June 24, 2013
Amy Butler Le Bourget
経済情勢を反映し国防予算削減が続く中で例外的に成長が期待される分野がある。海洋監視パトロールであり、これまでとは違う業界地図が生まれるかもしれない。

  1. 航空宇宙業界ではこの分野の仕事を得ようと各種の方法論がとられており、国防アナリストの試算では今後10年間で800億ドルの市場になる。自国予算が干上がる中で、海外に活路を見出そうとしているのが米国、欧州、中東の各社だ。

  1. 海 上交通路、海賊対策、そして対潜作戦、演習の実施が多くの国で課題になっている。そこで機体・装備品のメーカー各社は広範な需要を生むこの市場に参入を 図っている。ただし市場はシンガポールや台湾のような高度な顧客からブルネイのように小国で限られた資源しかない国まで多岐にわたる。

  1. そ こで浮上してきたのが二つの方法論だ。機体メーカーは情報収集機材を搭載した機材の売り込みに力を入れており、同時に機材整備も売り込む。これとは別に搭 載機器メーカーはより柔軟な選択肢を提供して、顧客国の現有機材の活用を訴える。これにより、各国に財政的な利点が生まれ、インフラ整備の遅れ・技能不足 を補い、新型機投入よりメリットがあるとしている。

  1. ヨーロッパではタレスThales ダッソーエイビエーション Dassault Aviation がフランスのアトランティーク2海洋監視機の改修作業を開始しようというところだ。同機は現在マリで展開中の軍事作戦を支援に投入中。

  1. タレスが提案しているのがアマスコス Amascos 洋上ミッションシステムで、技術は成熟しているという。2004年にトルコ沿岸警備隊・海軍とCASA C295輸送機に搭載する契約が結ばれている。これとは別にメルテム3 Meltem 3 としてタレスはアレニア・エアロマッキ Alenia Aermacchi ATR-72への搭載用に機材を供給している。

  1. 米国ではレイセオン RaytheonL-3コミュニケーションズ L-3 Communications シエラネヴァダSierra Nevada Corp. の各社が顧客国の既存機材改修、専用機材への低価格機材搭載の双方を提供している。

  1. 完成機メーカーのボーイングロッキード・マーティンノースロップ・グラマンエンブラエルボンバルディアの各社は機体と装備品をまとめた解決策の提供を求められている。「この市場は各メーカーが専用機材を投入してもう飽和状態だ」と業界筋は見ている。

  1. ボーイング737原形のP-8哨戒機が完全装備のグローバルスタンダードになりつつある。ただし、高価であるが。これとは対照的にボーイングから小型、カタパルト発進式のスキャンイーグル無人機 ScanEagle を固定翼機を購入できない国向けに提案している。同機は八カ国で運用中で、英国向け販売成功をボーイングから先週発表している。
  2. クリス・レイモンド(ボーイング国防宇宙安全保障部門のビジネス開発・戦略担当副社長)Chris Raymond, vice president of business development and strategy for Boeing Defense, Space and Security によると情報収集・監視機材の市場は洋上監視哨戒機も入れると「ちょっと込み合っている」という。

  1. ビジネスジェット機のメーカーであるエンブラエルやボンバルディアは大手米国メーカーとそっくり同じ形で機体に装備品を統合して顧客国に提示している。■

2013年6月28日金曜日

一足先に受領するイスラエル向けF-35Iの概要とイスラエル空軍の期待

   
   
   

Israel Will Be First Partner Nation To Fly F-35s

By David Eshel
Source: AWIN First
aviationweek.com June 26, 2013
Credit: Lockheed Martin

F-35統合打撃戦闘機購入契約こそ遅れたがイスラエルは導入を決定したほかの8カ国に先駆け同機運用を実施する。

「イスラエルが米国以外では初のF-35運用国になります」とロッキード・マーティンでF-35総合調整・営業開発を担当するスティーブ・オブライエンSteve O’Bryan 副社長はパリ航空ショーで明らかにした。最初の飛行隊は2018年に初期作戦能力を獲得する予定。
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「F-35導入各国向けにそれぞれ異なる機種となりますが、後日最新版にアップデートできます、ただし利用可能となった後で」とオブライエンは言うが、つまり各国用に製作して引き渡すということだ。

「各 国別に特定の性能を開発中で発注国の同意があればその内容をその他国にも公開できます。たとえばノルウェー向けの対艦ミサイル運用ソフトウェアはノル ウェー専用になっていますが、ノルウェーが該当ミサイルを海外販売しようとすれば公開可能となります。同じように高性能の電子戦装備、データリンクや個別 のソフトウェアをイスラエル空軍向けに開発していますが、現状ではイスラエル専用の仕様になっています」

イスラエルの要求機能は機体性能に完全統合され、ステルス特性を犠牲にせずに同国仕様にあわせてあるという。

イスラエル空軍パイロットがエグリン空軍基地でF-35A訓練を開始するのは2016年初頭の予定だ。一号機がイスラエル空軍に納入されるのは2017年になるという。

イ スラエル空軍向け19機は低率初期生産(LRIP)のロット8から10で生産する。同空軍の発注は5ヵ年で27.5億ドル。追加発注が2018年に次の 5ヵ年計画として期待される。本格生産に入れば生産量が増えて単価も85百万ドル(その時点のドル価値で)を下回る期待がある。

追 加発注の支払いをめぐり米政府と交渉が始まっている。イスラエルは米国から支払保証の合意を取り付け、一部はイスラエル向けに確保済みの海外軍事販売予算 を活用したいと考えている。仮にイスラエルの希望通りの内容が承認されれば、イスラエルは金利分だけの負担で追加発注を確保でき、二番目の戦闘機小隊を迅 速に編成できるようになる。

「機 体とともにAIM-9X短距離空対空ミサイル、レイセオンのAIM-120AMRAAM視程外発射可能対空ミサイルBeyond Visual Range (BVR) AAM をイスラエルは受領する予定です。」とオブライエンは加える。F-35はレイセオンAIM-9Xを主翼下に搭載し、ステルス性を犠牲にしているが、それは 現行のブロック1ミサイルが機体内に搭載できないからだ。この欠点はブロックIIで改善予定だ。
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に もかかわらずF-35の搭載兵装で理想的なのはAMRAAMミサイルで「最初に探知、最初に発射、最初に撃墜」戦略効果を最大限にする選択だ。次世代の BVR-AAMではアクティブ、パッシブ双方の探知方式が使えるので、迎撃範囲は100 kmを超える。このためラファエルのパイソンVミサイルは同機に搭載しなくてもよいとの意見が生まれている。次世代モデルのパイソンVIは最初から同機搭 載の設計だが、イスラエル空軍によるとスタナー Stunner 改良型あるいは新型AAM搭載の可否を決めるという。

F- 35は航空戦闘を「ネットワーク形成」で全情報を全機と共有して実施する仕様だ。さらにハリス製の多機能高性能データリンク Multi-Function Advanced Data-Link (MADL) の端末装置を支援機に搭載し、情報共有をさらに広げ、F-35各機が利用できるデータを最新にできる。また、F-35はリンク-16仕様の接続能力がある が、衛星リンクも加えて、安全かつ探知されにくい通信を長距離で行うことができるはずだ。
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ロッ キード・マーティンは2012年8月に海軍航空システムズ本部から206百万ドルの契約を受けており、イスラエル製システムをF-35Aに利用する技術開 発を行っている。これとは別にロッキード・マーティンは450百万ドルで電子戦 (EW) 装備の高性能化およびイスラエル開発のシステムをF-35に統合する作業を2016年に開始する。

「イ スラエル空軍にとってF-35の利点は単なる高性能や特定の兵装の運用ではなく、戦闘空間の状況把握能力であり、長距離から目標を識別、補足する能力であ り、先制攻撃で敵を無力化できることです」と説明するのはイスラエル空軍参謀総長ハジ・トポランスキ准将Brig. Gen. Hagi Topolansk だ。「この性能は新鋭戦闘機や高性能SAMを相手に効果を見せます。F-35には性能上の制約がありますが、現時点で想定されるいかなる脅威にも対応して 勝利を収めることが可能です。戦闘空間の状況把握は単機でも可能でスタンドオフ距離から目標を攻撃できますので、いかなる敵に対しても質的優位性を当面は 保持できるでしょう」

イスラエル向けF-35Iでは調達交渉中から同国から数々の要求事項があり、基本形F-35Aのすべてのシステムにイスラエル空軍の想定する運用条件への適合を求めてきた。このため追加作業が必要となっている。

「F- 35Iにはわが国独自のネットワーク機能、兵装および電子戦装備をつけ、スパイスSpice 自律型EO誘導兵器もここに含みます。同時にAIM-9X2空対空ミサイルを搭載する初のイスラエル空軍機となります。さらに将来型の空対空ミサイル開発 を進めます。F-35の性能で航空戦は新しい次元に入ります」(トポランスキ准将)
.
F-35の性能上の利点は長距離ミッションが機体内搭載兵装で実施できることで、現有のF-16やF-15よりも加速性能がよく、高速飛行を維持できることであり、この点で敵の各機種よりも有利だ。

ロッキード・マーティンはさらに航続距離を伸ばすためイスラエルの画期的なアイデイアを検討中だ。着脱式燃料タンクの利用があり、エルビットシステムズサイクロン Elbit Systems Cyclone が開発中。発想としてはF-22向けの着脱式燃料タンクと似ており、各425ガロンを搭載し、主翼から分離するパイロンを使い、落下後は完全なステルス性 を回復できる。合計900ガロンの燃料追加でF-35Iの作戦半径は大幅に延長でき、イスラエル空軍は空中給油なしで同機を通常作戦半径の外に送り出すこ とができる。■

2013年6月27日木曜日

アジア軍拡が武器取引の「爆発」を誘発する

Asia Driving 'Explosion' In Global Arms Trade: Study

By Reuters

aviationweek.com June 25, 2013

アジア各国の軍備拡大がこのまま続けば2021年に米国の防衛支出を上回る勢いで、武器取引の「爆発状態」に火を注いでいるとの研究結果が出た。

全 世界の武器取引規模は2008年から2012年で30%増735億ドルで、経済不況にもかかわらず成長が続く背景に中国の輸出急増、インドはじめとする各 国の旺盛な需要、があり2020年までに倍増の勢いだ、と国防安全保障専門のコンサルタント機関 IHS Jane’s が発表した。

「予算は東に中心を移しており、世界の武器取引は競争状態になっている。これは世界最大の取引規模で爆発状態である」と同社幹部は国防調達案件合計34千事例を分析してまとめている。

米国が国防支出で最大の地位を保っていたが、予算削減ならびにアフガニスタン撤退で、2021年の世界シェアは30パーセントとなり、アジア合計の31%より低くなる。

アジア太平洋地区の国防支出は35%増加し5,010億ドルに今後8年間で成長する。一方、米国の国防支出は28%減4,720億ドルになる。

「西 側防衛大手メーカーには輸出か規模縮小かの選択しか残されていません。ただし、後者では自らの存続を絶つ可能性も出てきます。一方で東側の需要は諸刃の剣 で、米国の軍事的地位を危うくする結果を生むでしょう」(Guy Anderson, senior principal analyst at IHS Jane’s)

中国の軍事支増加に近隣諸国は警戒しており、日本はじめ無人島嶼をめぐる緊張を深めている。

日 本はインドや韓国と並び防衛装備メーカー各社が熱く期待する市場であり、ロッキード・マーティンボーイングBAEシステムズの各社が戦闘機他装備品を 販売し、予算削減での本国業務の縮小を補完できないかと期待する。ただし、売り込みには対象国の防衛産業への投資が必要となることがある。たとえばイン ドはフランスのダッソーエイビエーションと120億ドルで126機のラファール購入を取り決めたが、50%の工程はインド国内企業に与える希望だ。

中国の国防予算は2021年までに64%増加し2,070億ドルになる見込み。インドは同時期に54%増、インドネシアは113%増の予測だ。

各国とも自国の産業基盤整備をねらっており、戦闘機、航空母艦の国産化をすすめれば、10年以内に西側装備と遜色ない製品輸出が可能となるかもしれず、これが現在の支出ブームの結果とIHS Jane’sは分析している。■