2014年2月22日土曜日

米空軍の新型静止軌道衛星の狙いは衛星攻撃への抑止力か


USAF Space Chief Outs Classified Spy Sat Program

By Amy Butler abutler@aviationweek.com
Source: AWIN First
aviationweek.com February 21, 2014
Credit: NASA


米空軍が打ち上げる予定の二機の新型衛星は極秘とされていた宇宙空間上の状況認識把握衛星で地球静止軌道に今年中に送られるとウィリアム・シェルトン大将 Gen. William Shelton (空軍宇宙軍司令官)が明らかにした。
  1. 宇宙機は秘密裏に空軍とオービタルサイエンシズ Orbital Sciences がGASP(静止軌道宇宙状況把握衛星事業 Geosynchronous Space Situational Awareness Program)として開発してきたものだ。
  2. 第一陣の二機に続き2016年に次の二機が打ち上げられ、静止軌道上の監視衛星群の不足を埋めるとシェルトン大将が空軍協会主催シンポジウムで明らかにした。地球静止軌道上には商用衛星多数が常駐しているほか、国家安全保障上で重要な宇宙機として宇宙配備赤外線衛星システムSpace-Based Infrared System (Sbirs) が早期ミサイル発射探知用に、高性能極高周波Advanced Extremely High Frequency (AEHF)衛星群が核戦争でも確保可能な大統領用通信手段として投入されている。
  3. SbirsやAEHFに対して「安価な一撃」が打たれるとペンタゴン業務が大変なことになるとシェルトン大将は衛星攻撃の可能性を示した。.
  4. 今回打ち上げられるGSAP衛星2機は静止軌道ベルトの上下に配置され、電子光学センサーで対象部分の各衛星他の物体の情報を収集する。シンポジウムの席上で配布された空軍資料によれば各衛星は「正確な軌道追跡および特徴」を各衛星について把握できるという。
  5. 空軍が今回の新型衛星を開発した事実自体が政府が衛星の持つ脆弱性に懸念を持っていることのあらわれだ。GPS衛星群は現在でも簡単に妨害可能である。それは各衛星の信号が比較的小出力であるためだが、今以上の効果的な妨害工作が実施される可能性、さらに運動エネルギー攻撃を危惧している。
  6. シェルトン大将は新型衛星の費用、完成までの所要期間について明示を避けた。しかし、今年中に二機を同時にデルタIVで打ち上げて相対的に安価になるはずだ。打ち上げはケイプカナベラル空軍施設(フロリダ州)で行う。
  7. 今回の機密解除を政府が認めらた理由のひとつには宇宙空間で敵対行動をとろうとする勢力への抑止力を狙うものだと国防関係者は認める。同時にホワイトハウス筋によれば宇宙活動の透明性担保もあるという。静止軌道上で制御可能な衛星の状況は敵味方同時に探知可能だ。そのため、最小限の情報を開示することは透明性にもなるが、さらに今回の衛星が攻撃能力を有しているとの懸念をあらかじめ消しておく理由もあると国防関係者は認める。ただしGSAPはロシア、中国の見解では敵対する装備とみられ、宇宙空間の軍事利用をどう管理するかの国際議論を呼ぶ可能性もある。
  8. 該当衛星が搭載するペイロードは無線周波数センサーやジャマーとみられるが詳細は非公開。.
  9. GSAPは空軍が進める宇宙空間状況把握能力向上の一環で、中位地球周回軌道上には宇宙配備宇宙監視 Space-Based Space Surveillance (SBSS) 衛星一機  がすでに投入されている。これはボーイング/ボール航空宇宙が2010年に打ち上げたもので静止軌道を下から監視するものだ。
  10. GSAPが出てきたことで空軍がなぜSBSSの後継機を出していないかがわかる。ボーイングとボール航空宇宙 Ball Aerospaceはこれを求めているのだが、GSAP衛星群の方が柔軟性が高くSBSSよりも正確な情報提供ができるためだろう。ただし、関係者は両者の性能を公に比較していない。
  11. 配布資料によればGSAPは「鮮明かつ障害を受けない点で地球周回中の宇宙物体を監視でき、天候や大気条件の障害を受けず地上配備施設による監視よりも優れている」としている。また、「GEO SSAシステムが提供するデータは軌道位置の予測を正確に行い、静止軌道上の運用の知見を伸ばすことになるので、宇宙空間での運用が安全になり、衛星衝突といった事態を回避できる」とする。
  12. 空軍はクウェジェリン環礁に宇宙フェンス施設を新設するメーカー社名をまもなく発表するとみられる。またCバンドレーダーと電子光学式望遠鏡が米国内にあるが、オーストラリアにこれを移動させ南半球の監視区域を拡大する。中国は南半球軌道上に宇宙機打ち上げを続けている。
  13. なお、GSAP衛星群の運用は第50宇宙中隊 50th Space Wing (コロラド州種リーバー空軍基地内)が行う。■


2014年2月19日水曜日

中国が対日軍事作戦を「短期かつ熾烈に」実施する可能性


Navy Official: China Training for ‘Short Sharp War’ with Japan

By: USNI News Editor
Published: February 18, 2014 1:25 PM
Updated: February 18, 2014 1:26 PM
Chinese marines assault a beach during the Mission Action 2013 exercise. Xinhua Photo


中国はこれまで台湾進攻を想定した揚陸戦の訓練を重ねてきたが、ここにきて訓練の想定を拡大し、日本が実効支配する東シナ海も対象に加えていることが米太平洋艦隊(PACFLEET)の情報部門トップから明らかになった。昨年実施したMission Action 2013演習では人民解放軍の各軍が参加し、尖閣諸島の占拠を想定していたと、PACFLEETのジェイムズ・ファンネル大佐 Capt. James Fannell(情報幕僚次長)が発言。

  1. 「Mission Action 2013は各軍を巻き込んだ大規模演習でした」とファンネル大佐はWest 2014会議(カリフォーニア州サンディエゴ)の席上で2月13日に発言している。「PLAには新しい任務が与えられており、短期間ながら高密度の戦闘で東シナ海の日本勢力を壊滅する前に尖閣諸島あるいは琉球諸島の南方を占拠する、と中国学識経験者から発言が漏れています」
  2. 昨年は中国が軍事活動を活発化させ挑発的な軍事プレゼンスを南シナ海で展開した年であった。その中心は中国が各国と問題を抱える原因となっている領土拡大の主張を示すNine Dash Lineと通称される地帯をとりまくもの。
  3. 「合衆国政府も中国が南シナ海で示している行動パターンそのものが中国による同海域の制海権の主張を反映するものとして懸念しており、いわゆる9-ダッシュ線で囲まれる
  4. 各国の反対を無視していること、および全く説明のないままあるいは国際法の原則を無視していることを問題視している」(ファンネル)
  5. 同大佐はその後中国がこの十年間に各国に示した強硬策の内容に触れ、フィリピン海南方での戦闘訓練などは中国が「航行権の保全」を狙ったものと解説。
  6. 「その訓練の翌週に東シナ海で中国艦船が火器管制レーダーを海上自衛隊艦船に照射する事件が発生している。中国はその事実を一か月にわたり否定したあと、その事実を認めたが、両艦の距離は射程距離を超えていたので危険はなかったと釈明しているが、それで済む問題ではない」
  7. ファンネル大佐は新設された中国沿岸警備隊による準軍事行動にも注意を喚起している。
  8. 「南および東シナ海での緊張は中国沿岸警備隊が中国隣接国を刺激することで悪化の一途である」
  9. ファンネル大佐によれば中国は1.6百万ドルを南シナ海の監視地点の改善にあてているという。 港湾施設、航空基地、飲料水確保および監視システムがその対象だという。「一方で中国は他国による同様の活動を挑発的と非難し、脅威を与えることで対応しようとしている」
  10. ファンネルのこの中国評価は現在米国が対中軍事関係を強化しようとするのと対照的である。
  11. 当日は海軍の作戦、立案、戦略担当のジェイムズ・フォッゴ少将Rear Adm. James Foggo が米海軍関係者とPLANの Wu Shengli提督との会談が成功裏に終わったと紹介しており、米代表団もPLAN艦艇・潜水艦を訪問しているという。しかし、代表団が帰った直後に中国は問題になっている防空識別圏(ADIZ)を東シナ海上空に設定している。米国は同時に中国艦船の今年のリムパック演習に参加させようとしている。■


2014年2月15日土曜日

米海軍次期無人機UCLASSを空対空作戦に投入する可能性を検討中


Navy’s UCLASS Could Be Air to Air Fighter

By: Dave Majumdar
USNI News, February 13, 2014 7:35 AM
X-47B Unmanned Combat Air System Demonstrator (UCAS-D) on Nov. 9, 2013. US Navy


米海軍が進める無人空母運用型空中偵察攻撃機(UCLASS) は空対空任務も実施できるようになるのか。海軍の航空戦担当マイク・マナジール少将Rear Adm. Mike ManazirはUSNI Newsのインタビュー(昨年12月20日)にその可能性を示していた。
  1. マナジール少将はUCLASSの主用途を情報収集監視偵察(ISR)および攻撃任務とするものの、ミサイル搭載の可能性を検討していると発言していた。ミサイル発射母体とした場合、F/A-18E/FやF-35Cの空対空任務を補完する無人ウィングマンになるという。
  2. 「AMRAAM(高性能中距離空対空ミサイル)を搭載したトラックのような存在になります」とマナジールは言う。「無人トラックは有人機と一緒に飛行します」
  3. マナジールの想定するUCLASSの操作はノースロップ・グラマンE-2Dホークアイあるいはロッキード・マーティンF-35Cからの遠隔操作によるもの。この構想には利点が多いと空軍予備役大佐マイケル・ピエトゥルチャCol. Michael Pietrucha(F-15Eの兵装システムズ士官で無人機専門家)がUSNIにコメントしている。
  4. 「これは荒唐無稽な話ではありません。困難なのは航空機自身に判断能力や優先順位づけができないので、戦闘機の機能を持たせるには機内にシステムを搭載することなのです」
  5. その解決方法は状況判断など人間で行う機能を戦闘機パイロットに任せることだ。そこで有人機が目標を発見、追跡、照合し、敵機との交戦は無人機に任せる。
  6. 「この点では海軍が空軍より先行しています」とピエトゥルチャは指摘し、海軍統合火器管制対空戦闘(NIFC-CA) 構想はデータリンクを利用したネットワーク化で多数の友軍機が戦闘状況を共有するものだという。
  7. NIFC-CA構想では「センサー」役の機体が捕捉した敵目標を射程内にあれば、「射撃者」役の機体ならどれでもが攻撃できる。「この問題が解決できれば、ミサイル満載の無人機ウィングマンに目標を教えればよい」
  8. ただ無人機を空対空戦に投入すると不利な点も発生する。制空任務用の戦闘機としてロッキード・マーティンF-22ラプターやボーイングF-15Cイーグルは高高度飛行と超音速飛行と組み合わせてAMRAAMに与える運動エネルギーを最大限にしつつ、長距離から発射している。
  9. これに対しUCLASSは亜音速機の設定であり、AMRAAMに与えられるエネルギーはボーイングF/A-18ホーネット以下となり、発射してもミサイル速度と高度は低く制空戦闘機の水準は期待できない。
  10. だがこの不利な点は克服できないわけではない。実際のAMRRAM発射の事例の大部分は音速以下の速度と中高度で発生しているとピエトゥルチャは指摘する。さらに亜音速無人機に運動エネルギー上の利点が生まれる条件があるという。
  11. たとえば有人戦闘機が防御態勢に入り、90度で目標敵機と方向を変えることを想定すると、有人機ではミサイル発射のチャンスは少ない。「90度旋回をすれば運動エネルギーが無駄になりますが、無人機は目標に直接接近できます」
  12. 「その場合の運動学的エネルギーは有人機よりも優秀です。なぜなら発射したミサイルには旋回後の修正が必要ないからです。無人機ウィングマンは戦闘機特有の機種を敵機に向けたまま保持する必要がなく、センサーが捕捉しておけばよいのです」
  13. しかし複雑な機構のステルス無人機は非常に高価であり、消耗品扱いは許されないだろうとピエトゥルチャは見る。
  14. 無人機を空対空戦に投入することは必然的に機体を敵の攻撃にさらす危険が増えることを意味する。しかし、それ以上にパイロットが意図的に無人機を盾にして自機を守ろうとする可能性もある。「自分の生命は代わりがききませんからね」とピエトゥルチャは言う。「コックピット内部では抽象的な思考をする余裕はなく、わたしなら無人機を自由に飛行させ人間のウィングマンでは不可能な方法で危険な脅威に対応しようとするでしょうね」
  15. ピエトゥルチャはペンタゴンが超音速無人機で有人戦闘機を全廃する日は来ないと考える。
  16. その理由はコストであり、とくに推進系のコストが劇的に上昇しても実現できる性能は有人機に劣るためだという。超音速UCAVには高推力エンジン(非常に高価格)および抗力を低く抑える機体形状の中に相当の燃料を搭載する必要があり、結局有人戦闘機と同程度の価格になってしまうからだ。
  17. 「とても高価格の機体でも有人機より性能が低ければ価値がないでしょう。それでは予算の節約になりません」■

2014年2月14日金曜日

武器密輸の北朝鮮貨物船が罰金を現金で支払いパナマ運河通過


Panamanian Official: North Korea ‘Paid Fine in Cash’ to Free Secret Arms Ship

By: USNI News Editor
Published: February 10, 2014 9:25 AM
Updated: February 10, 2014 10:03 AM
2013年7月に北朝鮮貨物船内で発見されたキューバのMiG21戦闘機を検分するパナマ調査官 REUTERS Photo

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北朝鮮は旧式武器を満載したキューバ発北朝鮮船籍貨物船をパナマ運河を通過させるため罰金を支払ったと同運河関係者から判明した。

当初の罰金百万ドルは$693,333.10に軽減されたことが運河運営の責任者ホルヘ・キハノが語ったとAFP通信が伝えている。

「北朝鮮は現金で支払ったので、同船は通過を許された」とキハノは語っている。


7月には北朝鮮船籍貨物船清川Chong Chon Gangがパナマ運河を「240メートルトンの老朽防衛装備を搭載し、内容は対空ミサイル装備ヴォルガおよびペチョラ、部品に分解されたミサイル9発、MiG-21bis戦闘機2機、および同型機用エンジン15基、すべて20世紀中ごろ製作品として修理再生用にキューバ向けに」通過させようとしていたことが明らかになっている。
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パナマは1月に同船の船員32名を解放したが、船長、一等士官と「政治委員」は武器密輸容疑で投獄したままにしている。  


空母輸送機CODの次期機種選択に動く米海軍


Decision on New Carrier Supply Plane ‘About a Year Away’

By: USNI News Editor
Published: February 12, 2014 4:45 PM
Updated: February 12, 2014 4:45 PM
A C-2A Greyhound, takes off from the flight deck of the aircraft carrier USS Theodore Roosevelt (CVN-71). US Navy Photo


米海軍は空母部隊向けの補給貨物機の後継機種選定を「およそ一年後」に控えていることが海軍航空部門トップの発言でわかった。2月11日サンディエゴでのWest 2014のパネルディスカッション席上で。
  1. 現状ではC-2Aグレイハウンドが空母艦上輸送carrier onboard delivery (COD) に1960年代末から投入されており、現在運航中の機体は1980年代に調達されたもの。
  2. 「データの吟味中で、選択肢の検討を慎重に行っている」とデイビッド・バス中将(海軍航空部隊総監)Vice Adm. David Buss, commander Naval Air Forces,が発言した。
  3. 選択肢とはノースロップ・グラマンC-2の性能改修版の導入か、V-22ティルトローター機だという。
  4. C-2の長所は海軍が早期警戒機として使用中のE-2ホークアイとの共用性であり、V-22の場合では海兵隊のオスプレイとの共用性だ。オスプレイはすでに海軍艦艇向けに使用中。
  5. そこで海軍はV-22を空母補給用に投入した場合の妥当性を検討中だ。
  6. 「選択肢はまだあるが、決定まで一年ほどの段階です」.
  7. 次期CODで求められるのはF-135エンジン(F-35C用)を空母へ搬送できる能力だ。バス中将はこの点を真剣に検討しているという。「F-135の高出力部分は怪物といってよい大きさです。この部分をどうやって輸送するかを技術的にいろいろ検討しています」■

コメント:ここでもF-35が意外なストレスを与えていますね。

2014年2月11日火曜日

アジア太平洋地区でP-8輸出へ期待するボーイング


Boeing Eyes P-8 Exports

By Bill Sweetman william.sweetman@aviationweek.com
Source: AWIN First

aviationweek.com February 11, 2014
Credit: Boeing

「4ないし5カ国」がボーイングP-8Aポセイドン海上哨戒対潜(ASW)機に強い関心を示していると、同社の宇宙防衛部門副社長(ビジネス開発戦略担当)クリス・レイモンドChris Raymond, Boeing Defense, Space & Security vice-president for business development and strategyが明らかにした。「各国が真剣に技術面で関心を示しています」とレイモンドはシンガポール航空ショー前夜に語った。「各国は飛行距離と探査範囲を分析中で、運用中の艦艇と協同運用できるか、ライフサイクルコストも検討しています」

そのうち二三カ国がアジア太平洋地区だという。(残りの一カ国は英国である可能性が高い) 検討中の各国は現時点で固定翼方式のASW機材を運用していない。

ボーイングは同社がボンバルディアチャレンジャー605の機体を改装する新型海洋監視機材がP-8他のASW機材と補完関係にあると見ている。同社はP-8から上記海洋監視機材、キングエア改装のRamis(構成変更可能な複合センサー搭載機材)さらにスキャンイーグルほか無人機まで含む機種構成で情報収集・監視・偵察(ISR)を展開するファミリーの提案に動きつつある。■


コメント 固定翼ASW機材を持たないアジア太平洋諸国ですか、ベトナムやマレーシアがその候補でしょうか。お金があるのはシンガポールですが、はたしてどの国になるのでしょうか。楽しみです。

2014年2月10日月曜日

アジア各国の戦闘機整備が急展開中---日本、韓国、シンガポール等の最新状況



Fast-Changing Trends In Asia Fighter Market

By Bill Sweetman
Source: Aviation Week & Space Technology
aviaationweek.com February 03, 2014
Credit: USAF SSGT. William P. Coleman

韓国が一度選定に傾いたボーイングF-15SEサイレントイーグルを白紙に戻し、ロッキード・マーティンF-35A共用打撃戦闘機を選んだことで、ロッキードはアジア各国をJSFで席巻できると興奮気味だが、日本が同機を選定済みで、シンガポールもまもなく正式決定するものとみられる。その他の諸国も同じ流れになるかもしれないのは中国の脅威が増大していることに加え横並び意識のせいと言われる。.
  1. 現実はもう少し複雑で多くの要因が絡んでおり、武器取引と技術移転は動的な過程だ。韓国と日本の選定結果は共に両国の国家戦略が変化していることと米国との密接な関係が背景にある。また米国が同盟各国にJSF調達を強く求めているのも事実だ。では各国別に見てみよう
  2. 【日本】F-35Aの選択は強力な統合防空体制 integrated air defense semsyst (IADS)が整備された空域内の攻撃能力に重点を最初から念頭にF-4EJ改の後継機種を模索してきた結果だ。選定基準そのものが変化しているのは日本の防衛戦略の変化を表しており、中国は仮想敵国として、日本が実効支配する領土を奪わんと長期的に狙う国とみなしている。また、攻撃能力を強化し、戦後堅持してきた武器輸出の緩和を狙っている。.
  3. 日中の緊張増大は防空部隊の緊急出動回数が増えていることで明白だ。冷戦末期の航空自衛隊のスクランブル回数は年間800回超だったが、1995年から2005年までは年間200回程度で、2012年に567回に急増している。
  4. 航空自衛隊の戦闘機部隊は1960年代から常時三機種を稼働させてきた。機体数はほぼ一定を保ちながら、2020年台にはF-15と三菱F-2に加えステルスF-35が加わる見込みだ。
  5. 現有のF-15Jには赤外線探知追跡機能が付いているが、さらに性能改修したF-15MJにはAPG-63(V)1レーダー(機械式スキャン型としては最新型)を搭載し、三菱重工製AAM-5短距離空対空ミサイル(04式空対空誘導弾)の装着が始まる。AAM-5はドイツ・スウェーデン共同開発のIRIS-TやAAM-4B(アクティブ電子スキャン方式レーダーを搭載)と外形が類似している。
  6. 航空自衛隊はF-15のうち何機の性能改修を実施すべきの決断を求められている。機材の半数近くは1980年台前半に納入されており、性能改修の実施は高費用につく。
  7. 一方で侵攻部隊の接近阻止を主任務とするF-2部隊にもAAM-5、AAM-4、改良型AESAレーダーのJ/APG-2の装着で改良が加えられており、武装ではAIM-9サイドワインダーと日本製AIM-7スパローを搭載する。
  8. 予算10億ドルでE-767空中早期警戒管制機の改修、F-15とF-2の改良をすることで日本の防空対応能力はF-4飛行隊x2の退役があっても質的に向上する。F-35AはF-4の代替都の位置づけだがF-2の攻撃任務を一部補完し、F-2を防空任務に振り向けることが可能。もしF-15旧型機の改修を実施しない方針になれば、4飛行隊規模の新型機調達につながる。
  9. ただし円安でF-35調達の大日程への影響が危惧されており、予定42機の調達完了を2023年にずらすことになりそうだ。新型ヘリ護衛艦いずも(27,000トン)の完成でF-35Bで海軍航空兵力の整備に乗り出すとの観測があったが香田洋二海将(退役)元自衛艦隊司令官は1月にワシントンでこの見方を一蹴しており、そのような防衛力整備は他方面の装備調達を諦めなければ実現できず、中短期的には不可能だとした。
  10. 日本は三菱重工の高性能技術実証機 Advanced Technology Demonstrator-X (ATD-X) ステルス試作戦闘機にも予算をつけており、これまで10年近くの開発を続けてきた。実寸大のレーダー断面積測定はフランスで2005年に実施済みだ。技術開発筋によればATD-Xの初飛行は2014年度中に実施するという。つまり2015年3月までに、ということだ。
  11. 【韓国】 F-35小規模調達に国産機の性能改修を組み合わせる方向だ。国防調達庁の決定を覆す形で11月にF-35A導入を決定した同国だが、調達数は40機で納入は2018年以降になる。なお、調達費用は当初予定していたF-15SEなら60機を買う事ができた金額だ。
  12. 今回の選定の背景には韓国の軍事戦略の変化の影響がある。北朝鮮が機動性のあるミサイルを開発中とする証拠が増えてきた。これに対し韓国政府は「圧殺連鎖」で固定式強化陣地内の目標と移動可能な兵器の双方を破壊すると反応している。F-35Aの性能諸元はこの任務の想定に合致している。その際に念頭にあるのは湾岸戦争(1991年)の「スカッド狩り」がうまく行かなかった米同盟部隊のことだ。
  13. F-35A選定は「状況に応じた抑止力」で北朝鮮の核の脅威に対抗することで新たな米韓合意に先立つ形になった。これは先制攻撃でまず北朝鮮の核攻撃能力を減じて残存能力にはミサイル防衛で対応する戦略だ。
  14. F-16改修も実施し2030年代まで同機を稼働させる。韓国国防省はBAEシステムズと昨年12月に合意形成し134機あるF-16ブロック52機材にAESA技術によるレイセオン高性能戦闘レーダー、新型ミッション用コンピュータ、新型コックピット表示装置を装備する。改修済み一号機の納入は2018年だ。
  15. そもそもBAE選定は2012年だったが、一度白紙に戻されている。その理由はF-16を第三者が改修する初事例となったこと、また米空軍がロッキード・マーティンを選定し300機を対象に同様の性能改修 Combat Avionics Programmed Extension Suite (Capes) を発注していたからだ。同様の性能改修は台湾空軍のF-16にも予定されており、韓国他に提案されていた。米空軍がレーダー選定をロッキードに一任して同社は長年のパートナーであるノースロップ・グラマンを選んだのに対し、韓国はレイセオンを選定したので競争状態となった。
  16. BAEシステムズはフォートワース事業所で開発にあたり、F-16経験者を雇用する。同社はシステム統合ラボを建設中で大型ビジネスジェット機を飛行テストベッドとしてしんgなたシステムの性能確認をする。韓国空軍のF-16機材の第一陣が今年中に現地に到着し、改修作業を開始するが、フライトテストは2016年の予定だ。改修作業の本格作業は韓国国内で実施する。
  17. BAEシステムズは世界規模で1,000機の回収需要があると見ており、海外だけでは830機に期待する。同機の機体寿命は1万時間に延長されており、旧型機の改修の投資効果は十分あるという。
  18. そこでF-35Aに切り替えたことで国産ステルス戦闘機開発にも影響が出る。同機計画は韓国航空宇宙工業 Korea Aerospace Industries と国防技術開発庁Agency for Defense Development がKF-Xとして進めているもの。最新の予算では19百万ドルが計上されて、開発経費の上限を80億ドルとし、2025年に開発完了の条件をつけている。ただし同機の輸出には米国の承認が必要だ。開発には海外の提携先が必要となり、15%の費用負担を期待されている。
  19. 【シンガポール】 アジアで次にF-35を導入するのは同国だと言われ、とくに高速道路からの運用を想定してF-35Bに関心が高いという。想定場所の長さは8,000 ft.未満が多い。F-35Aでは滑走路長が足りず、JSF計画室長クリストファー・ボグデン中将は昨年4月にシンガポールによる同機選定は数ヶ月以内に実現見込みと発言していた。
  20. 同年にシンガポール国防相ン・エン・ヘン Defense Minister Ng Eng Hen がF-35購入を独に急ぐ必要なしと発言している。F-16後継機種としてF-35を真剣に検討しているのは事実だが、まず旧型機改修を実施するとしていた。米国防安全保障協力庁 U.S. Defense Security Cooperation Agency からはシンガポール保有のF-16のAESAレーダー換装他改修60機分の実施案が提示されており、同機の耐用年数を2030年代まで延長できるという。ただし改修に高い優先順位がつくかはシンガポールが潜水艦整備などで大型投資があることを考慮すべきだ。
  21. シンガポールは米空軍・ロッキードによるF-16改修業務Capesの有望対象国であるが、国防安全保障庁の発表内容は契約企業を明示せず、新型レーダーの調達元も示していない。このことは将来のCapes改修が不確実であることを示すものであり、2015年度米国防予算削減の対象になる可能性もある。
  22. 【インドネシアとマレーシア】両国はSu-27/30を運用中で、Su-35が代替機種として提案されている。両国は次期戦闘機で米、ロ、欧州の三方向から選定する可能性があり、すでにユーロファイター・タイフーンとボーイングの高性能型スーパー・ホーネットが昨年のマレーシア航空ショーで展示されている。
  23. 【タイ】 サーブのグリペンもアジアに足場を広げる可能性がある。新型JAS39Eがすでにブラジルで選定されており、競争力が高まっている。シンガポールF-16改修は単価40百万ドルとの見積だが、同程度の費用でJAS39CをJAS39E仕様にアップグレードできるという。
  24. サーブを現在使用中なのはタイで、グリペンとともにスウェーデン空軍で使用していたサーブ340AEWを整備する計画を推進中だ。2013年にはグリペン6機とAEW2号機が納入されており、サーブはマレーシアにグリペンC/Dをリースする案を提示しており、JAS39Eにアップグレードできるとする。
  25. 【その他アジア太平洋諸国・ロシア】戦闘機選定は流動的だ。1月にワシントンの戦略国際研究所が武器流通に関する会議を主催し、米国企業の市場シェアを下げそうな要因に焦点をあてた。米国製高性能機器ではなくても「実用上十分な」システム選択が可能であることが指摘されている。
  26. 席上では米国による独占が終われば各国は防衛の後ろ盾が米国しかないので深刻な脅威に直面するとの指摘がでた。つまり装備品の新しい供給源が現れれば米国製装備との相互運用性が低くなるというのだ。
  27. またロシアはマイクロエレクトロニクス分野の基礎が不足しているため「旧式技術で食いつないでいる」との指摘があったが、「ロシアのハイテク産業は国防分野に集中している」との指摘もあり、相反する傾向があることになる。長距離地対空ミサイルの輸出事例ではロシアの地位が卓越している。もうひとつはロシアと中国の関係改善の象徴がスホイSu-35戦闘機売却の商談だ。ロシアが再度同機を中国に販売することに前向きになったのは、瀋陽J-11として中国がSu-27を不正コピーした事実を乗り越えて、ロシアの技術開発が再度活性化してきた証であり、不正コピーのリスクを軽視できるようになったのかもしれない。■


2014年2月9日日曜日

宇宙依存度が高い米国防体制は中国との軍事衝突で脆弱性を示すのか 専門家の知見に耳を傾ける米下院



U.S. Dependence on Space Assets Could be a Liability in a Conflict with China

USNI News By: John Grady
Published: January 29, 2014 10:28 AM
Updated: January 29, 2014 10:28 AM
Launch of Atlas V MUOS-2, July 19, 2013
from Cape Canaveral AFS. US Navy Photo


米国は宇宙空間で「サイバー空間と同程度」の課題に直面していると下院審議会の委員長が中国の宇宙での進展を念頭に発言した。また宇宙で米中両国が「長期間にわたる競争」に入っていることを認めている。
  1. 下院軍事委員会海洋力・兵力投射小委員会委員長のランディ・フォーブス議員(共・ヴァージニア . Randy Forbes (R-Va.)からスティムソンセンターの研究員マイケル・クレポンsenior Stimson Center associate Michael Krepon に米国の弱点は何かとの質問が出た。クレプトンからは「事実を無視することはできません。衛星は探知されてしまいます」
  2. さらに軍用民生双方で「中国の宇宙依存度は米国よりも低い」ことが次の論点だとカーネギー国際平和財団の主任研究員アシュレイ・テリス Ashley Tellis, senior associate at the Carnegie Endowment for International Peace が指摘した。
  3. エアリスアナリティックス社長ロバート・バターワースRobert Butterworth, president of Aries Analytics Inc.,からは「高エネルギー兵器などを衛星に使った場合の効果は不明」と発言あり、中国はこの分野に資金を投入する可能性があるという。
  4. 中国が2007年に軌道上でテストを実施して以来、デブリ問題が注目を集めており、敵衛星の破壊は自国の軌道上の機材も危険になることが浮き彫りとなったが、中国は直撃による破壊方法から「ソフトキル」や「視力破壊」といった非対称形式のアプローチに切り替えているとテリスは発言している。
  5. 上記三名の専門家は合衆国による今より水準の高い「宇宙用状況認識」能力開発の必要性で同じ意見であり、各種の軌道高度においてこれを実現し、攻撃を早く探知し、攻撃を仕掛けたのが誰かを特定すべきだという。バターワースは軍事衝突の際には米国の指揮命令通信網は防御された衛星システム以外に防御のない衛星にも依存しているためこれが弱点となると指摘。
  6. クレポンは「この問題では大事なのは」攻撃の発生源だという。テリスも「軍事衝突でストレスを受けるシステムもあり、攻撃の属性をはっきりさせる」べきだが、短時間でこれを実現するのは困難だという。
  7. その問題意識でクレポンは各国は「米国は各国の措置に対応できる能力を保有して」おり、このために米国にどの国に対しても優越性があるという。
  8. 開戦となれば、損傷被害が大、あるいは性能を発揮できなくなった衛星の代替手段を迅速に利用可能にすることが課題だ。テリスは米国の衛星システムは性能重視のあまり機数が少なすぎるという。「代替衛星を軌道に乗せるには時間がかかりすぎます。現状では衛星製作と軌道への運搬に予算上の問題が発生しています」
  9. 今後の展望として、軍事宇宙予算が削減対象になっていることから、バターワースは「「すごい大金」が新機軸の性能実現に必要であり、今後も軍事技術上の優位性を維持するためには「設計を根本から見直す」必要があるという。
  10. 核抑止力なら潜在的の敵の目の前に配置できるが、クレポンは「宇宙抑止力は多くが暗示的な存在ですが、敵対行動が結果をすぐ生む点が違う」という。
  11. そこで各国間で条約は無理としても「行動規範」を作り、宇宙空間上の行為を規制し、中国軍部民間関係者と宇宙関連の対話を実現することをクレポンは提唱。これは冷戦時代に前例がある。中国では軍部と民生で宇宙利用を軍主導とするか外交効果を重視するかで路線対立が生じているとクレポンは指摘する。■


2014年2月8日土曜日

ソチ五輪で危機管理として第六艦隊から二隻を黒海に派遣



U.S. Warhships Enter Black Sea in Support of Sochi Winter Olympics

By: USNI News Editor
Published: February 5, 2014 10:31 AM
Updated: February 5, 2014 11:43 AM
U.S. 6th Fleet flagship USS Mount Whitney (LCC-20) in the Black Sea in 2013. US Navy Photo
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米海軍第六艦隊の二隻が黒海に入り、ソチ冬季オリンピック開催前から同海域に展開していると海軍が発表した。
海軍によると二隻のうち第六艦隊旗艦の指揮統制艦USSマウント・ホイットニー(LCC-20)は2月4日に同海域に到着しており、もう一隻オリバー・ハザード・ペリー級フリゲイトUSSテイラー(FFG-50)が水曜日に黒海入りしている。

「二隻は黒海で通常任務の一環として同盟各国との協力関係を強化すべく、訓練や相互運用にあたる」と海軍は発表。
その文書では明示していないものの、二隻はソチでテロ攻撃が発生した際に米市民の脱出用に用いられる。
ロシアは保安体制を段階的に強化しており、イスラム過激派によるコーカサス地方の独立運動(チェチェン、ダゲスタンなど)を警戒している。

USS Taylor (FFG-50) departs Naval Station Mayport in 2014. US Navy Photo



2014年2月5日水曜日

20年の法律論争が結局物納で決着したA-12開発中止問題はF-35の今後にどんな影響を与えるのでしょうか



A-12 Avenger Suit Reconciled, At Last

By Jen DiMascio
Source: Aviation Week & Space Technology
aviationweek.com February 03, 2014
Credit: U.S. Navy Concept

開発中止からほぼ20年が経過しても調停が不調に終わっていた中、米政府がやっと総額4億ドル相当をジェネラルダイナミクスとボーイングから受け取ることで、海軍のA-12アヴェンジャーII(総額48億ドル)取り消しで紛糾していた対立が解決することになった。
  1. 今回の示談規模は政府としては当初目指していた訴訟内容の数分の1規模。政府は損害賠償として13億ドル(2014年価値で22億ドル)を要求していた。その根拠は結局実現しなかった艦載ステルス機に投じた経費相当で、今回の妥結額はいったんは合意形成されそうだった2003年の29億ドルよりはるかに小さい。
  2. 連邦請求裁判所 U.S. Court of Federal Claims が1月24日に棄却し、海軍と契約企業の求めに応じる形になった。昨年末には政府は両社と合意に達していた。
  3. 海軍はEA-18G2014年予算で承認ずみ21機とは別に三機を2016年めどでボーイングから受領する。ジェネラルダイナミクスは198百万ドル相当のクレジット枠を海軍に設定し、建造中のズムワルト級DDG-1000で使えるようにする。
  4. 「海軍航空史上で23年の長きにわたった事例を完結させようとしており、契約企業による物納の形で海軍の戦力増強につなげようとしている」と海軍長官レイ・メイバスNavy Secretary Ray Mabusが表明した。
  5. 「訴訟は長期化し難易度を増したが、海軍の予算数十億ドルの節約になった。当省は長年にわたる法務省の関与に感謝したい」
  6. 契約企業も安堵している。「ボーイングはこの長期訴訟が結末を迎えることをうれしく思います」と同社スポークスマンが電子メールで表明。「海軍、法務両省のご尽力で解決できたことに感謝しつつ、今回限りの措置を全関係者が受け入れたのはうれしい結果」としている。
  7. 紛争は1991年に始まり、ディック・チェイニー国防長官(当時)が48億ドル総額のステルス次期攻撃機開発を中止したことがきっかけ。同機はジェネラルダイナミクスとマクダネルダグラスの共同開発で後者がボーイングに吸収合併された。中止は契約社が価格と開発日程で要求水準に達していないと政府が判断したためだった。海軍は契約企業に13億ドルの国庫返納を求めていた。
  8. 主契約企業側は政府を訴え、政府こそ罰金を支払うべきと主張した。その理由は契約が解消されたのは「政府の都合」であり、成果が低いことではなかったため。案件は司法制度の中でさらに悪化し、最高裁案件になった。
  9. 1999年に案件は連邦請求裁判所に戻され、マイケル・マンキューソ Michael Mancuso (ジェネラルダイナミクスの最高財務責任者(当時))は「すぐに示談になる」と楽観的だった。実際にはそうならなかった。
  10. その14年後に解決の機会が再度訪れた。その時点で関係者は10年間にわたり巨額費用を法的手続きに投入していた。ペンタゴンは年間10百万ドルを訴訟費用として計上していたほどだ。契約企業側は29億ドル近くで手を打つつもりで、取引材料にヴァージニア級原子力潜水艦、共用直撃弾薬やF-18E/FやC-37で値引きを提示する構えだった。
  11. これが土壇場でペンタゴントップが拒絶されたとジョン・ヤングJohn Young が説明する。ヤングは海軍の調達部門トップとして妥協案を模索していた。ヤングによるとこれで機会が失われたという。
  12. 「裏交渉で結果が出ると思っていました。しかし残念なことに航空機まで含めた20億ドルの取引になってしまいました」(ヤング) ヤングはその後ペンタゴンの調達トップになった。「国防総省は今回取るに足らない金額で解決しています」
  13. 20年経過した2011年には最高裁が本事例を検討した。海軍の主張は契約企業は約束通りの仕事をしていないというもの。これに対し契約企業からは政府がステルス技術の情報を開示しなかったため効果が上がらなかったと反論。結局、最高裁は連邦請求裁判所に差し戻した、というのが経緯だ。
  14. 雪解けの兆候が出たのは昨年春で、オバマ政権から議会に対し、合意内容の実施許可を求めてきた。合意は国防予算案に盛り込まれ上記のような2014年国防予算承認法に盛り込まれたというのが今回の結末である。■


イスラエル向けV-22売却案件の内容が明らかになりました。


U.S. proposes to sell Bell Boeing V-22 Osprey tiltrotor aircraft, engines, and advanced airborne equipment to Israel in $1B FMS

avionics.intelligence.January 24, 2014

Executive Editor
WASHINGTON, 24 Jan. 2014..
イスラエル国防軍が特殊作戦、捜索救難用途でベル・ボーイングV-22オスプレイ・ティルトローター機を合計6機購入したいとの希望が表明され米国防安全保障協力庁が米議会に1月13日付けで概算11.3億ドルのイスラエル向け海外有償軍事援助(FMS)としてV-22BブロックC機材および関連機材、予備部品、訓練、兵站支援の売却案件として通告している。議会はその後二週間以内に異議を申し立てることができる。

同庁によればイスラエル政府が購入希望しているのはV-22BブロックC機材6機、ロールスロイスASE1107Cエンジン16基、AN/APR-39レーダー警告受信システム6基、AN/ALE-47機体防衛用ディスペンサー6基、AN/APX-123敵味方識別装置6基、AN/ARN-147超高周波(VHF)全方向距離(VOR)計器着陸装置(ILS)6基、多バンド無線機6基、AN/APN-194電波高度計6基、AN/ASN-163小型航空用GPS受信機6基、AN/AVS-9夜間暗視ゴーグル36個、共用ミッション立案システム、機体整備支援用機材、ソフトウェア、機体修理及び返却、機材フェリー移動、空中給油機便宜供与、予備交換部品、技術文書、人員訓練・訓練機材、米政府およびメーカーによる技術支援およびその他技術支援関連事項である。総額の試算は11.3億ドルになる。


ペンタゴンから議会に宛てた文書は以下のとおり
「合衆国はイスラエルの安全保障に責任を有し、米国の国益にとってもイスラエルを支援し、強力かつ即時性のある自衛能力の涵養及び維持することは重大な関心事である。今回の売却提案は上記目的と一致している

「今回提案のV-22売却はイスラエル国防軍の捜索救難ならびに特殊作戦の実施能力増大につながる。V-22Bは固定翼機では不可能な地帯に人員機材を輸送することが可能。イスラエル政府は同機が利用している技術を無理なく運用する事が可能。

「今回提案する機材売却を実施しても対象地の軍事均衡を崩すことは基本的にない。

「売却提案に関与する主契約社はベル及びボーイングであり、機材はテキサス州アマリロの両社合弁事業が完成させる。今回の提案に関し相殺契約は現時点では存在していない。

「売却を実施する場合、最高30回の米政府あるいは契約企業代表者のイスラエル出張が発生し、技術支援および進捗管理を行なう。

「提案中の売却が実施された場合に米国の国防即応体制への悪影響は発生しない。

「本売却通告は法律の求めるものであり、売却が成立していることを意味していない」■