2014年11月25日火曜日

★★A2/ADへの対抗は発想の変換で:米海軍に新思考を求める攻撃能力の拡充 



確かに攻撃が最大の防御なので、大量の中国ミサイルへの対応と言う悪夢は避けたいというのが米海軍の本音でしょうね。レーザーやレイルガンとなると莫大な電力が必要ですので、ズムワルト級で試すオール電化艦や今後の核融合に期待するのでしょうか。BMD一本槍と言う日本もそろそろ考え直す時に来ているのかもしれませんね。ただし、日本国内に陸上イージスを配置するのはとてもリスクがありますので、西太平洋の第一線で守りに着くイージス艦には相当の役割が今後も期待されます。いかにもアメリカ人好みの発想ですね。しかし、ハープーンやASROCなどまだ旧式の装備が相当残っている、あるいはその間に更新してこなかった報いがでそうですね。一方で既存ミサイルの改装など現実的なアプローチも垣間見え、ここらが現在の国防予算環境を意識した点なのでしょうか。

47 Seconds From Hell: A Challenge To Navy Doctrine

By SYDNEY J. FREEDBERG JR.on November 21, 2014 at 4:29 AM

CSBA graphic
WASHINGTON: 巡航ミサイルがこちらに向かってくる。どこで迎撃するか、200マイル先だろうか、それとも35マイル未満の地点?
  1. 200マイル以上の地点と答えたあなたは現在の米海軍と同じ思考だ。海軍は数十年かけて高性能ミサイル防衛体制を構築してきた。だがブライアン・クラークBryan Clarkはこれは間違っているという。クラークは12か月前まで米海軍トップ将官の補佐官だった。.
  2. SM-6のような高価格長距離大型迎撃ミサイルを少数調達するのは「間違った自信」につながるとクラークは警告し、中国のように装備が潤沢な敵は安上がりなミサイルを連続発射し、当方の貴重な高性能兵器を消耗させるだけだいう。逆に長距離攻撃ミサイルで敵の発射前に粉砕すれば良い。防御はなるべく軽装備で近距離とし、シースパロウのような安価な装備をと電子ジャミング能力を整備する、弾薬切れの発生しないレーザー装備の導入も必要だ。
The USS John Paul Jones test-fires an SM-6 in June
USSジョン・ポール・ジョーンズがSM-6の試射に成功。本年6月
  1. これは海軍の考え方を一変しそうな内容で、敵のミサイルをあえて艦隊の35マイルまで接近させるのだ。中国のYJ-12のような巡航ミサイルの最高速度を当てはめてみた。クラークに試算結果を見せたところ、確認してくれた。マッハ3.5の巡航ミサイルだと30カイリを47秒で飛来してくる。
  2. 「不安要因は高まる一方」とクラークは認める。「だが、現在の防空体制は誤った自信観をうむだけだ」
  3. 飛来するミサイルを数百マイル先で迎撃できるが、次の発射に時間がかかるので、短距離射程の迎撃ミサイルを連続発射し、これにはスタンダードミサイル、シースパロウ、ローリングエアフレイムと各種のミサイルがあり、最後はファランクス近接防空システム (CIWS)のガトリング銃でもれなく弾丸をばらまいて防御する。イージス艦の垂直発射システム(VLS)で長距離射程迎撃ミサイルを100発運用できるが101発目のミサイルが飛来してくるだろう。
  4. 最新鋭の巡航ミサイルだと100発で合計300百万ドルかかるが、イージス駆逐艦は1,500百万ドルで、その護衛対象の航空母艦は6,000百万ドルを軽く超える。ここには艦載機は入っていない。金回りの悪い北朝鮮やヒズボラではミサイル100発をかき集めるのは困難だろうが、資金が豊かなイランや中国なら安上がりのミサイル多数を高価な艦船に向けて一日中でも発射できるだろう。
  5. 優れた攻撃能力が優秀な防衛手段になるとは限らない。小型、低価格、短距離の迎撃手段を中心にすれば、防衛装備をもっと搭載でき、飛来するミサイルを多数撃破できる。重要なのは、そもそも発射してくる敵を止めることだ。ここに米海軍の直面する本当の問題点がある。なぜなら海軍の対艦ミサイルはロシア、中国、さらにインドと比べても相当に射程距離が短くなっているからだ。
CSBA graphic
米海軍の対艦ミサイルはロシア、中国、インドの装備に有効射程が大幅に見劣りしている。

  1. クラークの考える戦略案は水上艦艇の役割を逆転させ、現在の防御中心から「攻撃的海上支配」に変える。これは単にミサイルだけの問題ではない。
  2. 現時点で米海軍は貴重なイージス艦18隻を弾道ミサイル防衛の任務につけており、ヨーロッパ地域、ペルシア湾、アジアへ派遣している。政治的に各艦には高い優先順位がついている。しかしクラークはこれは無駄使いと考え、建艦予算の一部を削っても、陸上配備のミサイル防衛体制を拡充すべきと考える。なぜ15億ドルのイージス艦を派遣するのか。570百万ドルの陸上イージスでも同じ効果が得られる、というのである。
Lockheed Martin graphic
陸上配備イージスシステムの概念図
  1. クラーク構想で攻撃に主眼を置き、各艦の戦闘力を引き上げる。イージス駆逐艦・巡洋艦には防御用のかわりに攻撃用ミサイルを搭載し、沿海戦闘艦の砲塔を外し小型VLSをつけ、イージス艦の防空任務、護衛任務を代行させる。また攻撃支援も行わせる。現時点で名前のついていない共用高速艇Joint High Speed Vessel (JHSV)や海上前進基地(旧揚陸艦)Afloat Forward Staging Base (AFSB) にもLCSでの防御ミッションを担当させる。LCSの機雷掃海装備やレイルガンを搭載すれば艦隊防御が可能となる。
  2. 以上の大部分は海軍の現実の施策の延長線上にある。海軍作戦部長ジョナサン・グリナート大将はかつてクラークの上司でもあり、イージス巡洋艦・駆逐艦を高度の脅威環境である西太平洋に専念させるべく一部任務を補助艦艇にまかせる方策を求めてきた。海軍はJHSVやレイルガンの試作を行う一方、AFSBには低出力レーザーを搭載した。ただし補助艦艇を新型兵器の作戦運用に供する発想はクラーク以外にない。沿海戦闘艦についてはチャック・ヘイゲル国防長官が海軍に仕様再検討を命じており、武装を強力にし生存性が高くなった次代艦となるはずだ。時間と費用の観点から現在のLCSを原型とした艦になるだろう。また射程65マイルのハープーンしかない海軍だが、ロッキード・マーティンに新型長距離対艦ミサイルLong-Range Anti-Ship Missile (LRASM)の製作をさせようとしている。
An artist's depiction of a Lockheed Martin LRASM (Long-Range Anti-Ship Missile) hurtling towards its target.
ロッキード・マーティンのLRASM(長距離対艦ミサイル)の想像図
  1. ただしクラークは一部修正を提言している。たとえばLRASMは空中発射型大型弾頭(1,000ポンド)から発展させるべきで、射程も300マイルと控えめにすべきとする。弾頭を軽量化すれば燃料をその分多くつめるとクラークは主張し、射程1,000マイルとしてもハイテク敵艦に相当の打撃を与えられる。電子装備による防御を主とする今日の艦艇は冷戦時より脆弱な構造になっているからだ。射程1,000マイルのLRASMなら内陸部の目標も攻撃可能で、誘導方式が正確なら陸上海上ともに目標を破壊できる。これが実現すれば海軍には選択の幅が広がり、おそらく次世代陸上攻撃兵器Next-Generation Land-Attack Weapon (NGLAW)の企画は不要となる。
  2. そこでレイセオン製スタンダード・ミサイルだが、海軍は能力向上に巨額の予算を投じ、敵ミサイル迎撃を期待しているが、クラークは同ミサイルを攻撃手段に転じられないかという。一定の射程で空中、海上あるいは陸上の目標を攻撃できる。SM-2には実は対水上艦モードもついているがほとんど見過ごされているとし、最新版SM-6でGPS誘導がつくと、地上攻撃にも転用できるとする。ただし、クラークはここにとどまらない。スタンダードミサイルを敵航空機、艦船、陸上のミサイル施設を標的に敵の発射前に攻撃すべきとする。また改造して対潜水艦用にも使えると主張。現在主力のASROCは射程12カイリだが、転用すれば一気に10倍の有効射程が得られる。弾道ミサイル防衛用のSM-3については各艦への搭載数を緊急用ごく少数に限るべきだとする。
Navy photo
Evolved Sea Sparrow Missile (ESSM) launching
  1. では防御はどうするか。まず発展型シースパロウミサイルEvolved Sea Sparrow Missile (ESSM)があり、これもレイセオン製品で米海軍はスタンダードミサイルの補助としか見ていないが、NATO各国の海軍では主力防御手段として採用している。ESSMにも対艦攻撃モードがあり、攻撃、防衛双方に活用できるとクラークは指摘。ただし、主目的はあくまでも防御手段である。単価1.3百万ドルとSM-6の三分の一で大きさも四分の一しかないので各艦に防御用以上の本数を搭載できる。.
  2. このシースパロウを補助するのがジャマー装置だ。クラークが着目するのは水上艦電子戦能力向上事業 Surface Electronic Warfare Improvement Program (SEWIP)の「ブロックIII」で2017年めどで実用化となるもの。「この装備がきっかけとなり今回の構想をまとめた」とクラークも言っている。ジャミング能力は大幅に向上するが、現在の指導原則では「使用することはない」というのは有効射程は30カイリに限定されるためだ。ただし、30カイリになれば飛来するミサイルに電子戦が実施でき、目標を外せば迎撃は不要になる。
Experimental Navy laser
実験用海軍レーザー兵器
  1. 近未来にはレーザー兵器と電磁式レイルガンが登場する。レーザー光線は光の速度という利点があるが、2020年代想定の技術でも有効射程は10カイリにしかならないとクラークはいい、スパロウやSEWIPの補助手段だという。レイルガンは対照的に射程100カイリを超えるが、発射弾頭の速度は光には負けるし、ミサイルのように進路変更もできないので、高速移動目標の攻撃には30カイリ離れると不向きだ。クラークの提言ではイージス艦の5インチ砲を300+キロワット級のレーザーに置き換えるべきとするが、技術の成熟化が前提だ。レイルガンの作動には大量の電気が必要で、JHSVを改装して搭載することになるという。
  2. 各種兵装はコンピュータ化した防御ネットワーク下で作動させる。人間の能力では高速目標を認知できないためだ。クラーク構想では飛来するミサイルに対し各種防御手段を同時に使うが、現在は一つずつの手段を使い、そのあとで別の手段を使う発想だ。現時点はミサイルを遠距離で撃破することを目標しているが、クラーク構想では長距離打撃手段でミサイル発射前の航空機、艦船、陸上施設を攻撃する。
  3. いささか未来的な攻撃手段が多い観があるが、攻撃に重点を置く構想は以前にあった。クラークが支持する「撃つなら矢でなく射手を」と言う考え方は1980年代からあり、当時の米海軍はロシアが発射する大量のミサイル全部の迎撃は不可能と考え、発想を変えミサイルを搭載する爆撃機の攻撃を狙った。だがソ連が崩壊し海軍は制海権を付与の条件と考えるようになってしまった。
  4. 「海軍は1990年代に海上支配の概念は旧式と切り捨てしまいました」とクラークは述べる。「その後は兵力投射能力を発展させ、攻撃機、陸上砲撃能力を整備し、旧来の制海任務を衰退させてしまったのです。その証拠に PACOM (太平洋軍)から2008年に緊急要請が出て、中国に対抗すべく長距離対艦兵器が必要とし、今になってやっと実効性のある解決方法が出ようかという実態です」
  5. 「水上部隊畑の海軍関係者が構想に反応してくれた」とクラークは言う。海軍上層部もたくさんのミサイルを発射してくる敵に対して防衛一本では不利であると理解しているという。クラークの報告書中の提言の多くはグリナート提督の私的なシンクタンク、司令官直属アクショングループCommander’s Action Group (CAG)に本人が属している間に生まれた発想をまとめたものだ。
Rep. Randy Forbes
ランディ・フォーブス下院議員
  1. クラーク報告は議会でも話題になっており、とくに下院海上権力小委員会委員長ランディ・フォーブスが高く評価していることに注目が必要だ。「ブライアン・クラークの最新報告書は優れた内容」とフォーブス議員は声明を発表。(ただし、クラークとはイージス巡洋艦近代化改装案で見解が対立) 「今回の報告書は一般に受け入れられる考え方をちりばめており、現時点で発生している問題の核心の解決手段の枠組みを示している」
  2. 「敵ミサイルとわが方の艦船防衛のコスト効果を改善する方法を求めていきたいし、同時にもっと強力な攻撃能力、長距離火力を巡洋艦、駆逐艦のみならず小型艦艇に搭載する画期的な方法もあるはずだ。この報告書が提起する課題は海軍と議会双方で検討する価値がある」(フォーブス)
  3. 下院小委員会の委員長の発言としてこれは単なる願望ではなだろう。今後のアクションを予告する発言だ。■



2014年11月24日月曜日

★米空軍:ジェット燃料転換で民生燃料の需給にも影響



あまり知られていませんでしたが、軍用ジェット燃料と言うスペックがあったのですね。今回の改革で民生仕様のジェット燃料が使えるようになったので、供給元も利用側(とくに空軍)もハッピーと言う話ですが、逆に言えばなぜ今までわざわざ微小添加物入りの軍用燃料があったのか不思議です。同じエンジンを軍民両方で使うケースはいままでもあったのにね。


US Air Force Completes Jet Fuel Conversion; Impacts Entire Jet Fuel Market

By JARED ANDERSONon November 19, 2014 at 12:26 PM

F-16 Flies Over New York City
米空軍がすべての基地施設の燃料対応を軍規格から民生用規格に切り替えた。これで、年間燃料支出を数百万ドル節約でき、空軍はこれまでより多くの燃料供給業者から調達が可能となった。

  1. DLA(国防兵站局)が今回切り替えに踏み切ったのは軍が作戦効率を上げて諸経費を削減する必要があったためだと業界筋がBreaking Energyに語っている。
  2. 「JP-8燃料生成が必要なくなるのがカギで、各精油所は民間規格の製品出荷を増やすことができます。また軍の需要に呼応する精油所が増えるので、DLAは供給先を増やして、購入価格を引き下げることができますね。不要となる精油所内の施設は別用途に使えます」
  3. 「また民間規格への切り替えでジェット燃料の調達が楽になる」と空軍大佐カーメン・ゴイエット Col. Carmen Goyette(空軍石油局司令官)が声明で発表した。「軍規格燃料は米国の年間233億ガロンの燃料生産のわずか7%にしか相当せず、これまで競争原理が働かなかった」
  4. 燃料添加物とは:航空燃料で燃焼効率をあげて、望ましくない効果を発生させないため、あるいは航空機の個別条件により添加物を加えることがある。ただしその量はPPM単位である。(シェルによる追加情報)
  5. この結果JP-8は供給網では別扱いとなり、単価が上がり、比較的少量の需要にもかかわらず補給上で別の扱いを受けていた。
  6. 「JP-8を精製し流通させようとすると専用貯蔵施設が必要で、供給業者にはこのため軍用燃料の取扱いを避ける動きが出ていた」とDLAのケビン・エイヘム Kevin Ahern (大量石油製品部長)は語る。「Jet A燃料に添加物を加えるものへ切り替わったことで、競争が発生し、価格は今後下がっていくでしょう」
  7. 米軍の中でも空軍が一番多く燃料を消費しており、その差は大きく開いており、空軍の燃料調達予算は各軍の中で最大規模だ。
jet graph1
2008年度から2014年度にかけてのエネルギー需要見込み(青:空軍、灰:海軍、緑:陸軍)Source: DOD Fiscal Year 2012 Operational Energy Annual Report
  1. JP-8を供給してきた各社は特別扱いを理由とした特別価格を維持できず、その差損を民間規格燃料をもっと多く販売することで相殺すると言われている。さらに民間でJet A需要が伸びても価格を押し上げる効果はないと見られている。その理由としてJP-8供給がJet Aに切り替わり、全体としての供給量が増えるからだという。
  2. JP8切り替え作業は2009年に米空軍の四基地で始まっており、この10月29日にライト・パターソン空軍基地(オハイオ州)で完了したが、予定の2017年を前倒ししたもの。
  3. 今回は軍を代表する形で空軍が動いたが、ジェット燃料市場全体に影響が出そうだ。
  4. 「軍規格燃料の生産が必要なくなれば、ジェット燃料市場全体がこれまでよりも効率よく動くことになりそうです」(上記専門家)■


2014年11月23日日曜日

F-35新価格:A型95百万ドル、B型102百万ドル、C型116百万ドル


なるほど、ロッキードが言うようにこれから量産効果が出て価格が下がってくるというのですが、エンジンは含まない機体価格なので注意が必要ですし、これから出てくる開発期間中の不具合を改善すると都度価格に跳ね返ったり、一部国が発注を減らそうとしていたり、当の米国も変更の動きがちらほらしている中でその通りに行くのでしょうかね。また、日本には為替変動の影響もあります。円安は当面変わらないでしょうから、どちらにせよ日本には高い買い物になりますね。高いといえば、海軍仕様のC型がかなり割高になっていますね。

New F-35 Prices: A: $95M; B: $102M; C: $116M

By COLIN CLARKon November 21, 2014 at 5:01 PM

f-35cproduction
WASHINGTON: ロッキードと米政府が本日総額47億ドルのF-35低率初期生産ロット8の契約に調印した。
その内容は「ロッキード・マーティン株式会社、ロッキード・マーティン・エアロノーティクス株式会社(テキサス州フォートワース)は総額$4,123,746,486の新契約で以前に交付ずみ固定価格による報奨金付き確定契約(N00019-13-C-0008) を修正し、低率初期生産 (LRIP) ロットVIIIとしてF-35ライントニングII 合計43機を生産する。契約には500百万ドルの事前調達を含むものとする」とある。
読者各位はご存知と思うが、この契約で43機を生産し、29機が合衆国向け、14機が海外向けだ。機体平均単価(エンジンは別契約)は「LRIP7契約より3.5%低く、当初のLRIP1と比較すれば57%減」と統合打撃戦闘機開発室が発表している。
機体価格ではロッキードでJSF担当の部長 Lorraine Martinが昨年12月に約束しているが、2019年までにF-35Aを現在のドル価値で75百万ドルにするのが目標だ。実現すれば「現在の第四世代戦闘機より安価になる」
米国向けの機体は19機が空軍向けF-35A、6機が海兵隊向けF-35B、4機が海軍のF-35Cだ。イスラエルは2機、日本は4機、それぞれF-35Aを初めて受け取る。ノルウェーにはF-35A2機、英国はF-35Bを4機受領する。全機が予定通り引き渡されるとF-35は合計200機が8カ国で飛ぶことになる。
F-35 graphic
米政府は契約内容の一部を公表している。ロッキードは契約金額を超過する場合は100%自社負担する。また政府と同社は契約金額を下回った分は折半するが、政府に2割、ロッキードが8割受け取る。
これとは別にロッキードは別途決める性能諸元を達成すると追加支払いを受けることになっている。■


2014年11月22日土曜日

★日本:オスプレイ、グローバルホーク、E-2Dの導入へ





オスプレイに未だに原子力発電所と同じようなアレルギー反応を示す人がいますが、どういう人種なのでしょうか。佐賀県が同機運用で前向きな反応を示しているのは心強いですね。また、グローバルホーク導入もやっと実現するわけですが、日本の防衛航空も無人機の正式運用で新しい時代に入るわけですね。E-2Dは尖閣を念頭に置いた南方の海上監視なのでしょうが、タイミングさえあえばグローバルホークの海軍型トライトンの採用の方が望ましいと思います。(同機はまだ開発段階)とまれ、ISR機材の強化が進むことは健全な方向性です。あとは情報を解析する人的資源の強化でしょうかね。

Japan Officially Selects Osprey, Global Hawk, E-2D

Nov. 21, 2014 - 02:22PM   |  
By AARON MEHTA   |   Comments

Osprey showcased in mainland Japan
阿部首相がMV-22Bオスプレイのコックピットを百里基地で視察している。航空自衛隊の航空観閲式にて。 2014年10月26日。 (Staff Sgt. Warren Peace/ / US Marine Corps)

A US Marine Corps MV-22 Osprey sits on the flight deck of the Japanese destroyer Hyuga during exercises in June 2013.

米海兵隊所属のMV-22が海上自衛隊のヘリコプター駆逐艦ひゅうがの飛行甲板に着艦した。2013年6月の演習時。 / U.S. Navy
WASHINGTON — 日本はV-22オスプレイ導入を正式に決定した。あわせてグローバルホーク無人偵察機とE-2Dホークアイ空中指揮統制機も導入する。
  1. オスプレイの導入は中期防で17機導入がうたわれており想定ずみだったが、安倍内閣には政治的な影響を与えるかも知れない。

  1. オスプレイ選定は防衛省が21日金曜日にウェブで発表した。競合機種はなかった模様。

  1. ベル・ボーイング製のV-22ティルトローター機は多用途輸送用で戦闘部隊24名、内部貨物20,000ポンドあるいは外部に 15,000 ポンドを輸送できる。主に使用しているのは米海兵隊で、MV-22として360機を世界各地で運用する。米空軍には特殊作戦部隊用にCV-22が32機配備されている。

  1. ボーイング広報からはキャロライン・ハッチソンが文書でベル・ボーイングチームは日本による機種選定を「光栄に」思い、米政府と共同で合意内容で盛り込まれた有償海外軍事援助(販売)の実施に全力をあげると発表。

  1. 日本ではオスプレイは危険な機体として大きな騒動となっている。たしかに同機の開発初期段階で数件の事故が発生している。津波対策の演習にオスプレイが投入されたところ、抗議グループがかけつけたほどだ。

  1. 10月に海兵隊は日本国内でオスプレイを公開し、安倍首相も駆けつけた。「日本ではMV-22をめぐり多くの疑問が提示されています」と海兵隊少佐ジュセッペ・スタベイル(第一海兵隊航空部隊)はプレスリリースで述ている。「首相には同機の性能と安全性を説明申し上げました」

  1. 海軍広報ビリーレイ・ブラウンからは日本向け有償海外軍事援助の手続きを進めるとの発表があった。「日本がV-22選定に動いたのは同機が要求性能を有していることの証明です。初のティルトローター量産機となったV-22は各種任務で十分な性能を発揮しています。今後も米国政府と日本間の長期同盟関係の支援に貢献してきます」と声明発表している。

  1. 両国合意の成立のタイミング次第で日本はV-22の最初あるいは二番目の海外使用国になる。イスラエルが同機導入を検討しているからだが、バラク・オバマ大統領とベンジャミン・ネタニヤフ首相の対立により案件成立が危うくなっている。

  1. オスプレイ以外に二機種が日本の防衛を補強する。

  1. 防衛省はかねてから高高度飛行可能なISR機材を求めており、グローバルホークを選定した。同機はノースロップ・グラマン製で米空軍が運用中。選定ではジェネラルアトミックスのガーディアンERが選外となった。

  1. ノースロップは指揮統制機材としてE-2Dホークアイ選定も勝ち取った。ここではボーイングの737AEW&C案が敗退している。

  1. 日本は中国が好戦的態度を示す中で監視機材の強化を図っており、日中両国は尖閣諸島をめぐり冷戦状態と言ってよい状態にある。 ■


☆☆ 日本:着々と進む次期戦闘機F-3の設計コンセプト固め



次期戦闘機の開発は大型プロジェクトですが、一方で複数の機種開発は不可能なので現実的な想定も必要です。数をそろえることはできないので、どうしても一機で多様な性能を期待することでプロジェクトが破綻する可能性はないでしょうか。あるいはあれもこれも詰め込む八方美人型になると機体が大型化しかねませんね。ここは時間をかけてもちゃんとあるべき姿のコンセプトを技術研究本部主導のプロジェクトチームに期待したいところです。


Japan Prepares Designs For Its Next Fighter

Japan is looking at a big, long-range fighter to defeat superior numbers
Nov 21, 2014
Bradley Perrett | Aviation Week & Space Technology

25DMUはF-3を目指し防衛技術研究本部(TRDI)が各年更新している研究結果の最新版だ。 TRDI

速度より飛行距離が重要と日本の戦闘機開発陣は次期戦闘機の性能検討中に発見した。数で圧倒する相手と戦う方法を検討する日本は目標データを共有し、高性能大型ミサイルを機内に搭載し、戦闘空域を脱出しながらでもミサイル誘導を行なう事が次期戦闘機で必要と強調している。
  1. この研究成果は今後4年以内に作成する実寸大機体の開発に役立つ。日本は国際共同開発の選択肢も残しており、これは財務省には気に入られる構想だろうが、防衛省として結局日本の意思がわずかしか通らない形の協力になるのを警戒している。飛行速度より距離を優先する日本独自の要求のため、結局は独自開発になるのではないか。.
  2. 防衛省技術研究本部(TRDI)がIHIと共同で驚くほど強力なターボファンエンジンの基礎開発を行っており、双発の次期戦闘機に搭載され、2030年頃にF-3として第一線に投入される。TRDIは機体構造の研究ではおそらく三菱重工業の支援を受けている。三菱重工は機体製造を担当し、三菱電機が電子機器を担当する。
  3. 研究は三菱重工製F-2の後継機開発のオプションを狙うものと防衛省は説明する。平成30年度が開発の決定で最終段階だと防衛省はAviation Weekに回答している。
  4. 共同開発の可能性として米空軍と海軍が構想中のロッキード・マーティンF-35の後継機種があるが、防衛省によれば共同化開発の前提として「F-2退役の最終年までに開発が完了できるかを見極める」という。明らかにF-35で発生した大幅な遅延が念頭にある。
  5. 平成22年度からおよそ1,200億円がF-3の初期検討に投入されており、平成27年度に412億円が概算要求されている。i3の名称でTRDIと民間産業界は次期戦闘機で鍵となる技術要素を準備中で、ATD-Xステルス実証機の技術の延長線上に位置づける。ATD-Xは今年度中に初飛行する。
  6. さらに142億円が平成27年度にF-3向けエンジン開発に要求されており、機体より先にエンジン開発がまとまる見込みだ。推力は33,000 lb.とされ、少なくとも初期開発段階ではこのままの規模で想定されていくだろう。
  7. 同エンジンの燃焼器、高圧圧縮機、高圧タービンがテスト中だ。タービンの評価は来年度中にまとまる。低圧圧縮機と低圧タービンの試作機は平成29年度にテストされる。試作エンジンの運転は平成30年の想定だ。
  8. エンジン開発の課題は超高温1,800C (3,272F) の実現であり、エンジン全体の寸法をどこまで小さくできるかだ。後者は機体の前面の面積を縮小するため。スーパークルーズ可能な戦闘機をめざしているようだ。
  9. ただし本当に機体を製造するかは別の問題だ。日本は自国の安全がどんどん中国の台頭と好戦的態度で脅かされていると感じる一方、大型ステルス戦闘機を開発すると数百億ドル規模の事業となることを理解している。
  10. 「新型戦闘機開発費用はこの時点で決定できません」と防衛省は回答しており、航空自衛隊にはF-2が90機あるが、その後継機の機数はまだ決めていないとする。また次期戦闘機の想定性能諸元はまだ公開されていない。
  11. TRDIは今月に入りセミナーを開催しその席上で今後の戦闘機開発の方向性を示した。
  12. TRDIは2011年から2013年まで毎年l別にコンセプトを発表しており、それぞれ23DMU、24DMU、25DMUと呼称されている。数字は元号の年数でDMUはデジタルモックアップの略である。ただし各モデルの構造を見る限りではスーパークルーズは前提となっていない。
  13. 設計陣はステルス性とその他性能のバランスをとることに相当苦労しているようだが、一貫して尾翼を廃止する課題はとりあげていないようで、機体寸法の想定も異なっており、最新版は大型化しているが、それでもエンジン推力を考慮するとまだ控えめなようだ。推力33,000 lb. の双発だとロッキード・マーティンF-22ラプターの大きさに近づく。だがひょっとするとエンジンがこれより小さくなる可能性もある。
  14. 2014年版の機体コンセプトは未公表だが、昨年のTRDIによる作業は25DMUとして完成している。大型機内ミサイル格納庫があり、高アスペクト比としては異例な大型主翼で25DMUが航続距離を重視していることがうかがえる。そこで今年の26DMUは大きく変化する可能性がある。25DMUは26MDUとの比較評価対象となるため、まだ有効であり、あわせて日本は最終仕様の決定に向かっているようだ。
  15. 2011年度設計案と23DMUはどこかATD-Xの拡大版のようだ。ステルス機の特徴として空気取り入れ口をくねらせてエンジンを覆うのはレーダーエネルギーの反射を抑える効果がある。23DMUの尾翼は四枚構造で、外側に向けて伸びている。
  16. 機体内部の並列兵装庫は「中距離ミサイル」4発を格納可能だろう。TRDIによる図では非常に大きなサイズのミサイルで、中距離以上の飛行距離を狙うもののようだ。ロンドンの国際戦略研究所のダグラス・バリーによればTRDI公表の図面中のミサイルにはラムジェット推進の空気取り入れ口が全て描かれており、単なるロケット推進の兵器ではないようだ、という。またTRDI公開の各設計案では共通して胴体側部に短距離ミサイルが左右に合計2発搭載されている。また大型パッシブ無線受信機のアレイも左右にあり、機首レーダーの補助なのだろう。赤外線センサーがコックピット下と前方に付いている。
  17. 23DMUでは機体の奥行きが大きく、レーダー反射用の側面も大きいが、24DMUで機体を平坦にしようとしている。エンジンを外側に取り付け、直線ダクトでつなげたことで、エンジン前方の円形バフルでレーダー放射エネルギーの拡散をねらう。中距離ミサイル4発を前後二組のタンデム配置で搭載する設計だ。V字尾翼はノースロップYF-23試作機と同様の配置で安定板二枚がついていた。
  18. 24DMUが完成したことでTRDIは変更点が交戦時に有効なのかをシミュレーションで確認したところ、23DMUに対してミサイルの発射回数が13%増え、一方で敵にミサイル発射を許す機会が3分の1に減ることが判明した。TRDIは公開セミナーでは回数ではなく、棒グラフでの説明にとどめている。23MDUに手を入れ後退角を変えたが結果は中間にとどまっていた。「後退角を変更してもレーダー断面積への変化はわずかしかない」

  1. 次はダクトの形状を25DMUを参考に戻し、側面は23DMUより位置を下げる。エンジンは再び内側に戻し、中距離ミサイル6発をダクトの下に配置できる空間を確保する。ダクトは上方、内側に曲げられる。追加装備のミサイルは機体サイズと費用を犠牲にしても圧倒的な数の威力に頼る仮想敵国に対峙する想定の日本には必要だとバリーは認める。
  2. それとは別に四枚構造の尾翼表面構成が25DMUで復活しているが、尾翼自体には相当の角度がつき、23DMUより短くなっている。また水平尾翼は下向きの角度がついているが、おそらくこれは尾部の垂直部分を形成するためのものだろう。
  3. 翼幅とアスペクト比は大きく増やされている。特に後者は24DMUの3.2-3.3が3.8-3.9になっているとラフな図面から推察される。F-35Aのアスペクト比は2.4で、ボーイングF-15が3.0だ。TRDIが公開した図面が縮尺通りなら、翼幅が25DMUで2割増えていることになる。主翼の変更は明らかに航続距離の延長が目的で、揚力抗力比を変更するとともに燃料搭載量を増やすのだろう。胴体は大きくしているようで、ここでも燃料搭載量が増えている。TRDIも航続距離が長くなっているのを認めるが、具体的な数字は示していない。速度、加速性が犠牲になっているはずだが、25MDUはすくなくとも1割機体が大型化しているように見える。この背景には極限まで高性能にしても空中戦に決定的な優位性は得られず、むしろ航続距離の方が大きい要素となるとの研究結果があり、あきらかに現場待機時間の長さが日本の戦略条件で優先されているのが分かる。■


2014年11月21日金曜日

中国の核兵力拡充に注意が必要


百万単位のアメリカ市民の生命を奪うとの下の中国記事はどこか正常さを欠いていますが、50年以上もアメリカの核抑止力の下で重圧を受けてきた中国としてはこれでお返しだ、との気持ちもあるのでしょうか。まるで50年代の冷戦時を思わせるレトリックですが、核抑止力の下での平和と言う構図はなかなか変わりそうもありませんね。中国が想定しているのは飽和攻撃で、地球環境の破壊など全く意に介していないようなので、日米が進めるBMDは北朝鮮には有効でも中国ミサイルに対応できるでしょうか。大きな疑問です。

US Report: China's Nukes Getting Bigger and Better

Nov. 19, 2014 - 03:45AM   |  
By WENDELL MINNICK   |   Comments

A Chinese media depiction of the potential destructive effect of a MIRV-capable ICBM on Los Angeles.
中国メディアでMIRV搭載ICBMでロサンジェルスを攻撃した際の被害想定が掲載されている。

TAIPEI, TAIWAN — 議会による調査報告書で中国の核兵器とミサイル近代化の進展で暗い予測が出てきた。

  1. 報告書は11月19日に中国経済安全保障検討委員会により公表されたもので、その中で中国は合衆国が西太平洋に展開する全部隊、軍事施設をすべて攻撃する能力を今後10年で獲得するとしている。
  2. また中国は合衆国が運用する国家安全保障関連衛星の攻撃を各種方法で実施するようになる。運動エネルギー、レーザー、電子ジャミングおよび捕獲の各手段。報告書では今後5年から10年以内に合衆国の衛星がことごとく脅威にさらされるという。中国がねらうのは武力衝突時に合衆国の情報優位性を否定し、必要なら衛星を破壊する能力だという。
  3. 中国は宇宙戦実施能力の整備で戦略的抑止力を高め、合衆国・同盟国に「中国に軍事干渉をできなく」する効果も期待しているのだという。
  4. 報告書では中国の核兵器運用能力の増大が不気味だとする。今後5年間で中国の核兵力は急増し、近代化され、中国の軍事・外交政策で選択肢を広げる効果としてあらわれるとし、「合衆国の抑止力そのものを弱体化させる可能性があり、特に日本関連でこれが予想される」
  5. 次の3から5年で中国の核兵器はさらに威力をまし、生存性をたかめた道路移動式各ミサイルを追加配備するだろうとする。原子力弾道ミサイル潜水艦5隻は各12発の水中発射式大陸間弾道ミサイルを搭載し、各ミサイルには多弾頭独自目標設定可能ミサイル (MIRV)を装着可能だ。
  6. ペンタゴンからは中国核兵力はわずか50発ないし75発のICBMしかなく、今後15年で合衆国まで到達可能なミサイルが100発になるとの予測が2013年に出ていた。しかし今回の報告では中国の核兵器整備はもっと大規模で貯蔵量も予想より大きい可能性があるとの専門家評価を紹介している。
  7. 中国の海洋配備型核抑止力の配備は2007年に3隻の晋級 Jin-class 弾道ミサイル原潜の就役ではじまった。さらに2020年までに2隻が追加されるとみられる。
  8. 晋級の搭載するJL-2ミサイルは初期作戦能力を獲得したようで、「中国が初めて実用的な海軍用核抑止力を入手した」。JL-2の射程は4,598 マイルで「中国近海からアラスカを攻撃可能、日本南方の海域から発射すればアラスカ、ハワイを攻撃可能で、ハワイ西方から米本土西海岸を攻撃できる。ハワイ東方からなら米本土各州を攻撃射程範囲に収める」という。
  9. また道路移動式各弾道ミサイルの増加にも注意が必要だ。このうちDF-31が2006年に実用化している。2007年にはさらに性能を上げたDF-31Aが投入された。道路移動式のため発射時間は短縮され、位置を探知が一層困難で攻撃できない。「DF-31の射程距離は少なくとも6,959マイルあり、米本土の大部分を攻撃可能」。
  10. さらに新型の道路移動型ICBMがDF-41だ。配備は2015年の予測だが、MIRV10発を搭載し、射程は7,456マイルと見られ、「米本土各地を攻撃可能」。中国はDF-5とDF-31AをMIRV対応に改造し、「合衆国の弾道ミサイル防衛網を突破して主要都市、軍事施設をMIRVで攻撃するだろう」。
  11. 報告書では中国国内メディアが掲載したMIRV対応ICBMでロサンジェルスを攻撃した際の破壊予測を引用している。原典は環球時報2013年10月13日号で「中国が合衆国に対する水中戦略核抑止力を初めて獲得」と題の記事だった。
  12. 記事ではロサンジェルスの地図を載せ、JL-2による核攻撃を想定している。「20発の核弾頭による放射能が風で拡散され、数千キロメートルの汚染地帯を生み出す」としていた。
  13. 記事では半径746マイルから870マイル内で屋外にいる住民が全員死亡するとしている。「中国の百万トンTNT換算小型核弾頭技術を搭載した12発のJL-2核ミサイルが一隻の晋級原潜から発射されれば、5百万人から12百万人の生命が奪われ、抑止効果は明白だ」としていた。
  14. また中西部の人口密度が低いことから、最大の破壊効果を期待するには西海岸の大都市シアトル、ロサンジェルス、サンフランシスコ、サンディエゴを目標とするのが最適としている。 ■

2014年11月20日木曜日

★スコーピオンの初の顧客はUAEになるのか




UAE Negotiating Possible Scorpion Purchase

Nov. 2, 2014 - 03:45AM   |  
By AARON MEHTA and AWAD MUSTAFA   |   Comments

Sources say the UAE is in serious talks about becoming an early customer of the Textron AirLand Scorpion jet.
消息筋によればUAEがテキストロン・エアランドのスコーピオン購入を真剣に検討し商談中だという。 (Darin LaCrone / Textron AirLand)

WASHINGTON AND DUBAI — アラブ首長国連合はテキストロン・エアランドと同社の新型スコーピオンジェット機の導入を巡り商談中であると複数筋が伝えている。
  1. また成約まではいかないが、商談内容を知る関係者からは商談は進行中で、同国のトップ級とテキストロンCEOも話をしている模様だ。.
  2. 「UAEがスコーピオンに関心を示し、テキストロンシステムズのCEOエレン・ロード Ellen Lord が現地を訪問しUAE空軍関係者と数回協議している、と内部事情に詳しい米政府関係者が明かしている。
  3. スコーピオン営業推進チームはテキストロン・エアランド社内に設置され、テキストロン・システムズには所属していないが、業界筋によればロードが数回訪問した際には同機の話題も含まれているという。
  4. スコーピオンはISR機でありながら攻撃能力も備えている。2013年9月に発表された際には業界内で懐疑的な意見が強かったが、低コストとモジュラー構造により一般に流通している装備を使い、複合材を使用する利点もあるという。
  5. 米政府関係者と業界筋によればUAEがスコーピオンに目を付ける理由はまずアル・フルサンAl Fursan航空展示アクロバティック飛行隊(現在はアレニア・アエルマッキMB-339を使用中)向けだという。
  6. アクロバット飛行はテキストロンが想定したミッションではないが、業界筋によればアル・フルサン向けに導入すればその後の関係拡大の一歩となるという。
  7. UAEがアレニア・アエルマッキM-346を練習機に選定したのは2009年で、48機導入を決めた。取引にUAV売却も含めたため、技術移転規則にひっかかり商談が中断した経緯がある。現在までこの商談の方向性は双方から発表されていない。
  8. 8月になり、スコーピオンチームからDefense Newsに対し練習機専用型を開発中との話がでた。双発、尾翼2枚の構造はそのままで主翼を短くし、エンジン推力も増やすとの説明だった。
  9. スコーピオン導入で実際に飛行時間あたり費用がどう変化するかは不明だが、推定値の段階でISR/練習機型はM-346に対し十分な魅力があるとされる。
  10. テクストロン商談を後押ししそうなのがUAE国営製造会社 Strata Manufacturingで複合材胴体部分で同機製造に加わる。
  11. 「経済効果が重要な要素です。国営企業は同機の諸元を見て何機製造できるか試算するでしょうし、UAEは航空機製造に参入したいと希望していましたからね」(業界筋)
  12. テクストロン関係者は国営企業の親会社ムバダラ航空宇宙 Mubadala Aerospaceに同機の技術諸元を説明ずみという。
  13. ただし両社の提携は一筋縄ではいかないようだ。
  14. かねてからUAEには同機のローンチカスタマーになることに抵抗があった。これは今も同じで、同上業界筋によれば同国は正式購入の前にテクストロンが別の顧客を見つけるよう期待しているという。だが、具体的な購入先は浮上していない。テクストロンはアジアに大きな商機があると見ている。
  15. 業界筋によれば同社はすでにマレーシア、ブルネイ、フィリピン、インドネシア、バーレーン、カタール、サウジアラビアの各国と意見交換を行っているとし、このうちマレーシアとブルネイが実現度が一番高い。
  16. UAEが求める練習機仕様を実際に作ると、追加技術分析が必要となり、正式合意はまだ先ではないか、というのが同上技術筋の見方だ。
  17. 「あと18ヶ月しないと無理で、ひょっとすると2年になるかも。2016年というところでしょうか。それでもテクストロンが受注すること地見ています」
  18. UAEから見解は得られず、テクストロン広報も直接の言及を避けた。「当社の方針は将来の案件について一切のコメントをしないというものですが、スコーピオンに対する各国の関心は強いものがあり、今も増えていますので、ローンチカスタマー候補の国があると言えます」
  19. 同社は広報を巧みに展開し同機への関心を高めてきたが、2013年9月に突如公開するまでは秘密を守ってきた。
  20. だが、同機を広く各地に移動させ、ファーンボロショーや空軍協会年次総会で実機を公開したが、確定受注はまだないままだ。
  21. ただ同社は米国での営業も忘れていない。その中にはスコーピオンを練習機に改修し、米空軍のT-X次期練習機として採用を狙う案もある。それでも同社は最初の顧客は海外と見ている。
  22. Defense News取材で7月に語った同社顧問ホイット・ピーターズ(元空軍長官)Whit Peters は同機の営業の狙いを示していた。
  23. 「ISRに加えて、攻撃能力の実施を狙う空軍は各地に見られます。ただし、現実的に各国は支払い可能な機体価格と安全な運航を求めています」 ■


2014年11月19日水曜日

ヘイゲル長官が明らかにした重点技術分野 第三相殺戦略で優位性の維持できるか




オフセットとは相殺というよりは優位性確保ということでしょうか。かつて通産省はじめとする日本の官民一体の産業政策を非難していた米国が今やなりふりかまわず同じ方向に向かっているのは歴史の皮肉なのでしょうか。

Hagel Launches ‘Offset Strategy,’ Lists Key Technologies

By SYDNEY J. FREEDBERG JR.on November 15, 2014 at 9:37 PM

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REAGAN LIBRARY: 準備期間数か月を経て、チャック・ヘイゲル国防長官から「相殺戦略」“Offset Strategy” が正式に発表された。ヘイゲル長官はレーガン国防フォーラムでの講演で、優位性がおびやかされている米国の技術水準を今後どう維持するのかを具体的に述べたものの、重要な点で詳細は語らなかった。
  1. 「相殺」の意味は軍と産業界でチームを組み、技術上のブレイクスルーを求め合衆国が潜在敵国に対し優位性を保つことにある。アイゼンハワー大統領時代の「ニュールック」では核兵器がこの役割を果たし、物量で勝るソ連に対抗した。スマート兵器、ステルス、センサー類、コンピューター・ネットワークが1970年代の「相殺」の中心的存在だった。核兵器やスマート兵器が世界的に拡散普及したことで、米国は脅威に直面している。ではヘイゲルのいう「三番目の相殺戦略」の核心は何か。
  2. 長大なリストはないものの、ペンタゴン内部で続く悩ましい議論から次の技術がペンタゴンの縮小気味の予算で優先順位が与えられる分野であるとヘイゲル講演で明らかになった。ロボット、自律システムズ、縮小化、ビッグデータ、高度生産技術として3-Dプリントが含まれている。では、これらに優先順位を与える意味は何か。
  3. 「ロボットと自律システムズ」とは同じ意味だ。戦闘に投入される機械を無人化するだけでなく状況判断、自ら決定することができるようになる。プレデター無人機や爆発処理ロボットのような遠隔有人操作は不要となる。究極的にはコンピューターが殺害対象を選択すれば、倫理・法律・プログラミンング双方で課題となる。だが現在の遠隔操作式システムでは相当の人的監督が必要で、人件費が上がる中、軍はこのまま続けることができないし、通信をたえず維持しておく必要があり、敵勢力がジャミングやハッキング技術を磨く中でこれも軍として保証ができない。
  4. 縮小化はどうか。大型の軍装備から人体を取り外し、生命維持装備や防護対策を取り除けば、残りはかなり小型化かつ安価にできる。この流れを最大限に活用すれば、すべての部品を小型化できるはずだ。究極的には小型、使い捨ての自律兵器の「大群」を実現することになり、誘導ミサイル(魚雷)と無人機の交配となるのではないか。
  5. ビッグデータはすっかり定着した感があるが、軍は民間よりはるかにこの分野に詳しい。NSAによる通信傍受、プレデターが動画を撮影する等で、問題はデータの海におぼれずに賢く解析する能力だ。画面に目をこらす若い下士官に大きく依存している現状が軍にあるが、このままでは人体の限界に達してしまいそうだ。民間の「ビッグデータ」解析技術を投入すれば少なくとも情報収集データを人間の手を介さずに選別できるはずだ。問題の兆候や異常状況を人間に選別させるのはいかにも時間効率が悪い。
  6. 高度生産技術とはあやふやなことばであるが、ヘイゲルは3Dプリンター技術を取り上げている。従来はすべてを一度設計してから量産を数か年続けるのが常だった。3Dプリンターならいつでもすばやく試作し新技術を取り込む、既存技術を改造したり、と状況に対応が可能だ。縮小化した自律的軍事装備にはうってつけの技術であり、ミニ無人機をミッションごとに必要な数だけ調達できる。各艦艇や地上部隊に3Dプリンターを積めば予備部品は必要な時に調達できる長距離の補給線の制約から解放される。
  7. リストに入っていないものにサイバー安全保障があり、この分野の予算は増加しているが、ヘイゲル長官はすでに十分な注目度があると思って割愛したのか。また電子戦もサイバーのややセクシーさを欠く隣接分野としてこれまで20年間にわたり無視されてきたがここにきて国防トップ数名の講演で再度注目されている。同じように極超音速、水中戦、長距離打撃も優先順位が高くつけられる分野のはずだ。しかし、長官自身が具体的な技術分野を口にしたことの意味は大きく、講演に出ていない技術が無視されることはありえない。
  8. ヘイゲルが強調したかったのはなるべく多くの実現可能なアイディアを可能な限り広い範囲の情報源から入手するため網を広くしておこうということだ。今日のイノベーションの多くが「従来からの国防企業」以外から生まれていることを長官は承知しており、「民間セクターの提案には積極的に耳を傾け、企業、大学を問わず国防総省の常連企業以外を歓迎する」と発言している。このことは短期的には国防総省が「政府の内外を問わず頭脳明晰な才能を招き、白紙から今後3年5年でDoDが開発すべき技術分野やシステムを分析したい」
  9. 各分野への投資活動は「長期研究開発企画事業」 “Long-Range Research and Development Planning Program”と分類される。この名称は1970年代の相殺事業で生まれたものだ。事業全体を統括する最高機関が「高性能抑止力審議会」“Advanced Capability and Deterrence Panel” で長官官房、情報部門、各軍、統合参謀本部、研究開発や調達分野のトップレベルを集める。そのとりまとめ役は国防副長官ボブ・ワークで、強引なやり方と遠慮のなさで知られる技術通であり、以前の勤務先である新しいアメリカの安全保障を考えるセンターthe Center for a New American Securityがロボット工学と3Dプリンターを特に強く求めていた。
  10. ヘイゲルの「国防イノベーション構想」では技術がすべてではない。フランク・ケン―ドル副長官がすすめる調達手続きの改革Better Buying Powerの第三版BBP 3.0ではイノベーション誘発に主眼を置くとの発言がある。同時に作戦方法の一新、新しい作戦概念、軍事教育の刷新、中核指導層をどう育成するか、を考えるという。しかし、各話題もまだ抽象的だ。個別具体的に高度技術の内容を取り扱う必要があるのは否めない。■