2015年7月7日火曜日

陸上自衛隊>米豪共同演習に初参加し、オーストラリアで


この件は陸上自衛隊も公表していないようです。(7月7日現在) 安全保障法制で国会が揺れる中で報道してもらいたくないのでしょうか。もしそんな内向きな姿勢があるとしたら嘆かわしいことですね。

Japan Joins US-Australia War Games Amid China Tensions

Agence France-Presse12:17 p.m. EDT July 5, 2015

SYDNEY — 7月5日に開始された恒例の米豪合同軍事演習に日本がはじめて参加している。
  1. 演習は「Talisman Sabre」の名称で二週間に渡りクィーンズランド州と北方特別地域にまたがり展開し、米豪から3万名が陸海空の作戦を実施する。
  2. 陸上自衛隊から40名が米軍部隊に加わり演習に参加する。またニュージーランドも500名を派遣する。
  3. 「とても重要な同盟関係だ」とトニー・アボット豪首相はUSSブルー・リッジ艦上で米豪関係を念頭に発言している。「重要な関係だが、今日では世界各地で多くの課題に直面している。とくに中東で」
  4. 今回の演習は六回目で中国が地域内で存在を増す中での実施になった。
  5. 中国は南シナ海で人工島や施設を建設し問題を起こしている他、東シナ海でも日本と尖閣諸島をめぐり対立している。
  6. シドニー大学で中国専門家のジョン・リーJohn Leeは「微妙なメッセージが色々なレベルで出ている。米国は同盟国と中国に対応するべく密接に連携している」と語った。「これまでより強圧的になっている中国と向きあう国には大きな問題で、中国が巨額の軍事費を投入して装備を強化し、南シナ海で特に主張を強めていることが問題だ」
  7. 中国は南シナ海での活動への米国からの批判を一蹴している。5月のシャングリラ対話の席上で、中国は主権を行使しているにすぎないと主張。
  8. 米国が展開中のアジアに「軸足」を移す外交政策へは中国が苛立ちを募らせており、米海兵隊はオーストラリア北部に定期的に駐留を開始している。そこで日本が演習に参加することを中国は不快に感じても意外には思わないはずだと専門家は指摘する。
  9. オーストラリアは日本との関係強化をこの数年間進めており、昨年7月にオーストラリアを公式訪問した安倍晋三首相をアボット首相は「とても身近な友人」と表現した。
  10. オーストラリア政府は日本からそうりゅう級潜水艦数隻の導入を検討しており、実現すれば米国製ウェポンシステムを搭載するとリーは見ている。
  11. 「日豪の安全保障協力関係は引き続き強化される」とアンドリュー・デイビス(オーストラリア戦略政策研究所主任国防アナリスト)は演習に日本が参加する意義を語った。
  12. 「かれこれ十年間にわたり続いてきたが、ここにきて勢いが増してきた。オーストラリアと日本はともに軍事面で協力できる可能性を模索している」.
  13. 同時に米国がこの地域で展開する戦略方針は中国の動きが表面化する前から変化を遂げており、二国間協力より多国間同盟関係を重視する方向に変化しているとデイビスは指摘する。
  14. オーストラリアの他の同盟国にはシンガポール、マレーシア、インド、ベトナム、フィリピンがあり、今回の演習には好意的な態度であり、日豪共同作戦でも同様だろうとリーは見ている。
  15. 「米国ならびに強力な同盟国へ中国に対応してほしいと見るが今回の演習を好意的に捉えると疑いがない」
  16. 日本の参画には国内政治状況も作用していると、ディーキン大学アジア安全保障問題を専門とするクレイグ・スナイダーは指摘する。安倍内閣は地域大の安全保障への関与を増やそうとしているからだ。■

2015年7月4日土曜日

★F-35>F-16に敗れた模擬空中戦結果を受けて米空軍主流派はこう見解を示している



本ブログはF-35に批判的な論調を展開していますが、前回のドッグファイト結果記事を掲載したところ相当の反響がありました。いただいたコメントはともに実施条件がおかしい、F-35の性能はそんなんじゃないとまるでメーカー広報のような論調でしたが、以下の新しいエントリーも空軍の見解を反映して同じ論調になっているのは実に興味深い点です。問題はF-22とペアで運用できるのは米空軍だけであり、その他各国はそんなぜいたくはできないこと、さらに実機の第一線配備がまだ実現していないことです。戦闘機に多額の投資をすることがほかの装備調達にどんなストレスを与えているのかが問題であり、2020年代にかけて西側の空軍力が実力ダウンにならないことを祈るばかりです。

F-16 Vs. F-35 In A Dogfight: JPO, Air Force Weigh In On Who’s Best

By COLIN CLARKon July 02, 2015 at 2:45 PM

F-35 and F-16
WASHINGTON: ステルス機の時代にドッグファイトは重要だろうか。F-16がF-35をドッグファイトで凌駕したらどうなるのか。初期型のF-35がF-16の後期型に対し優位に立てないとしたらどうなるか。
  1. そんな疑問に答えていこう。War Is Boringが問題の文書を入手した。F-35パイロットによるF-35対F-16のもぎ空中戦の初期評価内容だ。デイビッド・アックスDavid Axe のスクープだ。F-35のテストパイロットはF-16が殆どの場合でF-35を凌駕したと近接交戦の模様を伝えており、これは一般人がドッグファイトと呼ぶものだ。
  2. ただし事態はちょっと複雑だ。もちろんF-35パイロットがドッグファイトで負ければ大変だ。しかし、空軍や海兵隊のパイロットと話をしてみると、ハリヤー、F-18やF-16の操縦経験からF-35は優れた機体であると異口同音に話す。USSワスプ艦上でこの話が出た。USSエンタープライズの艦上でも同じで、ペンタゴン内部でもF-35とF-16を生産するフォートワースでも同じだ。
  3. 機体外部に兵装を搭載しないF-35が大型燃料タンクを外部に装着したF-16Dに対し優位にたてないとしたら皆どう言うだろうか。聞きたくもなるというものだ。F-35のステルス性能とセンサーは敵機を先に探知し、武装を敵機にロックして気づかれないうちに撃墜できる。
  4. 軍高官やパイロットからF-35が実戦でどんな活躍を示してくれるか期待が寄せられており、少なくとも半ダースのパイロットがF-35はF-18やハリヤー、F-16とは比べ物にならないと発言している。もし大規模戦闘が勃発した場合、最初の10日間でF-35がどんな動きをするかについてマイク・ホステジ大将(退役)(航空戦闘軍団司令官)はこう語っている。「開戦直後はグラウラー、F-16やF-15Eは戦場に送らない。代わりに第五世代機を送る」とし、同時にF-35はドッグファイト用には送らないとも発言。高性能統合防空システム(IADS)であるロシアのS-300やS-400の除去に向けられる初の米軍機だという。その後に進入し敵の戦闘機と近接戦闘をするのはF-22だ。
  5. 「F-35ではF-22と同等の速度、高度は無理だが、ステルス性ではF-22に勝る」とホステジは語っている。「F-35は敵地に侵入して地上目標を除去するのが役割だ」 事実、開戦初期ではF-22なら2機あれば実施できるミッションをF-35だと8機必要になる。
  6. F-35のレーダー断面積はF-22より相当小さいが、だからといってF-35がF-22より勝っているとはいえないとホステジは指摘。デスクに座ったままの将軍のコメントだろうとたかをくくる向きにはホステジはF-22のほかF-15とF-16のほぼ全部の型の操縦経験があると指摘しておこう。
  7. もうひとりはF-35の開発過程を内部から見守り、戦闘経験が豊かなデイブ・デプチュラ(空軍協会のミッチェル研究所所長)だ。デプチュラもF-15の操縦経験があり、イラクとアフガニスタンで合同任務部隊を指揮している。
  8. デプチュラは今回のテストパイロットの発言に対して「興味をそそるが、実際の作戦レベルになるとF-35が持つ大きな優位性とは関係がない話だ。つまり、低視認性、センサー性能、情報統合機能によりF-35は旧式機に対し相当の優位性を持つ」
  9. デプチュラは「F-35反対派は前世紀の空中戦にこだわっており、F-22やF-35が提供する情報面での優位性については理解できないのだろう」という。
  10. デプチュラはF-35やF-22で「戦闘機」の表現を軽視する。「これまで長年にわたり発言しており、今後も言い続けますが、第五世代機は戦闘機ではありません。『センサー搭載発射機』であり、各種の脅威に対応し、F(戦闘機)、B(爆撃機)、A(攻撃機) RC(偵察機) E(電子機) EA(電子攻撃機)、AWACSの機能を有する機体です」
  11. デプチュラはF-35一機で「従来型の機体数十機分の仕事ができ、従来機が数十機束になってもF-22やF-35一機ないし二機の仕事をこなせない」という。ドッグファイトは航空戦の必須条件ではないともいう。敵に発見される前に撃墜すればよい。「結論は、すべては情報だということです」
  12. これに対しF-35共同開発室は公式な声明を発表している。
  13. 「F-35の有する技術の狙いは、敵を発見し、発射し、長距離で撃墜することであり、目視のドッグファイトは除外している。F-35四機編隊でF-16四機編隊に交戦するシミュレーションを何回も行っているが、F-35が毎回勝利を収めているのは優れたセンサー、兵装、ステルスによるものだ」”
  14. そしてJPOからは今回のテスト機には最新のミッションシステムズソフトウェアが搭載されていないことに注意を喚起している。このソフトは相当の距離から敵を捕捉するものだが、テスト機には搭載されていないため、パイロットはヘルメットを介した旋回、標的、発射ができず、つど機体を目標に合わせる必要があった」
  15. 空軍少将ジェフリー・L・ハリジアンF-35統合室長の公式見解は簡素なものだ。「同機の操縦取り回しについて結論を出すのは時期尚早である。F-35は現在配備中の戦術戦闘機と操縦性において同等の性能を発揮できる設計だ。これによりF-16では生き残りが不可能な環境でも作戦を実施できる機体になっている。」 ホステジも実質的に同じことを昨年発言していた。では今回の結果から無難な結論はこんなところだろう。F-35はトップクラスのドッグファイト戦闘機ではない。なぜならもともとそのための設計ではないからだ。また敵を長距離から狙い撃破する設計で、敵がF-35を探知する前に撃破するのでドッグファイトは設計時に想定していない。■


2015年7月3日金曜日

★★ F-35A>F-16との模擬空中戦に負ける 防空任務を任せられるのか



F-35がF-16との空中戦に勝てなければ、その他国の新鋭戦闘機に接近空中戦で勝つ見込みは少ないということになりませんか。ドッグファイト向きでないので、とロッキードは弁明しているようですが、電子戦用途を想定する米海軍除き、すべての導入予定国はF-16等の更新機材として想定知るのではないでしょうか。つくづくこの機体に西側防空体制が振り回され、致命的な穴があかないことを祈らざるを得ません。

Controversy Flares Over F-35 Air Combat Report

Jul 2, 2015 Bill Sweetman | Aviation Week & Space Technology
ロッキード・マーティンF-35A供用打撃戦闘機(JSF)はF-16に基本戦闘機操縦性能で勝てなかった。演習で証明された。実機を操縦したパイロットのロッキード・マーティン向け報告書がリークされている。
  1. エネルギー機動性energy maneuverability (EM)、ピッチレート、飛行性のいずれも「直感的でなく好ましく思えなかった」ことが模擬空戦の大部分であてはまったためF-16に戦術的優位性が与えられ、F-16パイロットはミサイル、機関銃の双方でF-35を狙う位置につけた。またヘルメットが大型のためF-35のキャノピー内で後方視野が制限されたのも欠点だ。
  2. ロッキード・マーティンとJSF推進室が報告書の存在を認め、最初に War is Boringのホームページに掲載され、偽造ではないことがわかった。ただし、「今回のシナリオの解釈は誤解につながりかねない」と米空軍でF-35実戦化をすすめるジェフリー・ハリジアン少将 Maj. Gen. Jeffrey Harrigianは言い、結論を出すのは「時期尚早」だという。
  3. JSFの開発は1996年から続いており、これまで800億ドル超が投入されている。

  1. 報告書が言及しているテストミッションは1月14日に行われたエドワーズ空軍基地を離陸したロッキード・マーティン社主任テストパイロット、デイヴィッド・「ドク」・ネルソンが操縦したフライトのことだろう。これはすでにAW&STが4月に報じている。記事では模擬交戦で有利に立ったのはどちらの機種か論じていなかった。なおAviation Weekは作成者氏名が削除されてた報告書の写しを入手した。
  2. 基本性能から言ってJSFはF-16やF/A-18C/Dに対し格闘戦で優位になれないが、gや加速を瞬時に得られ、持続できる点で有利になっている。しかし、ロッキード・マーティンの幹部やパイロットからはセンサー融合機能、ステルス性、その他を勘案すればF-35は空戦で優位性を確立できると言明しており、「第四世代戦闘機」(この用語はロッキード・マーティンの造語)に対しその差は 400-600%に及ぶとしてきた。
  3. 1月のテストでF-35に対して優位に立ったF-16はブロック40のD型で、F-16の中では比較的性能が低い方で1987年から1994年にかけて納入されている。ブロック40は武装を強化して、ハブ・グラスレーダー断面積削減措置が施されている他、空虚重量が増えたが、ブロック50から導入された高性能エンジンは搭載していない。テスト機のF-16は370ガロンの外部燃料タンクを搭載していたため機体操縦は7gに制限されていた。
  4. ロッキード・マーティンからはテストに投入したAF-2は初期開発機体であり、ステルス塗装がないと説明があった。しかし 有視界交戦within-visual-range (WVR)にステルスは無関係であり、むしろ塗装膜のなき機体は軽量だったはずだ。またロッキード・マーティンはAF-2には「ヘルメットで旋回、照準し、敵機攻撃を機体の方向を変えずに可能にするソフトウェアが搭載されていなかった」と説明するが、好天の昼間ではこの機能はテストのF-16にもなかった。またテストではF-35はステルス性を発揮できていないが、機内に搭載する空対空ミサイルで高機動型はまだ使用できるものがないのが現状だ。
  5. 報告書ではF-35の飛行制御ソフトウェアに欠陥が見つかったと指摘している。ただし、ソフトウェアをいじっても高機動性の不足は解消できない。なぜなら機体がどの速度で飛んでいても、抗力と重量が加速、上昇、方向転換を決めるからだ。
  6. F-35の迎え角 angle-of-attack (AoA) の制限はF-16より大きい。これは通常なら有利になるが、ピッチレートの成約やEMが低いことが加わると実用性が低くなる。高いAoAを実現するまでに時間が相当かかり、エネルギー機動性が低いということはF-35は高速飛行での再加速が俊敏でないことを意味する。
  7. 飛行テストでは模擬空戦を17回行い、高度は18,000 から22,000 ft. の間、下限は10,000-ft. で速度は380 から440 kt表示速度だったと報告書は記載している。テストは「高AoAを実用上想定される反応操作に与え、AoAを上げるとともに操縦入力を過激に与える」ものだった。操縦パイロットはテストは「飛行条件を制限した通常テストでは得られないデータを得られた点で極めて効果的だった」と評している。
  8. 報告書ではまず「F-35Aの飛行特性でもっとも目立つのはエネルギー機動性の欠如だ」とあり、操縦パイロットはF-35Aの主翼はF-15Eより小さいことを指摘している。両機は機体重量はほぼ同じだが、推力は15,000 lb.もF-15が小さい。
  9. 「ピッチレートが充分でないためEM不足が悪化した」と操縦パイロットは報告している。エネルギーが連続して低下したため、パイロットは機首をあげようとした。F-35にはピッチレートの制約がなければ武器発射のチャンスはもっとあったはずだ。ピッチレートは空力特性よりも飛行原理による制約を受ける。攻撃、防御ともに期間銃の反応は鈍く、簡単に相手に見つかり対策を取られていると報告書にあり、飛行中のg 最高値は6.5gだった。F-35の機体は9gに耐える設計だ。
  10. 高AoAのフライトでF-16へ「攻勢に回る機会はわずか」だったという。F-16もロールとヨーでAoA制約はある。たとえば、フルラダーの入力を長く与えるとF-35は鋭いヨーを起こし、F-16は機首を横切り、ミサイル発射の好機が生まれると報告書は指摘。だがこの操縦で「エネルギーを失う覚悟」が必要で、機体は設定高度の下限に向かい、「敵が間違いを犯さない限り、撃墜されることを意味する」という。
  11. F-35は繊細な飛行制御システム (FCS) を搭載し、操縦桿やラダーの入力に対する反応を変更するのは機体が性能上限に向かい、AoAが低いあるいは高い状態で、角度が20から26度にある際だ。この範囲での空戦能力が最高だったと操縦パイロットは報告している。ただし、操縦は容易ではなく、飛行性が「直感的でなく、また楽でもなかった」ことと「横方向と飛行方向での反応で予想がつかないことがあった」ためだ。
  12. 操縦パイロットの所見ではFCSがAoAに応じて入力反応を調整してしまうことが問題だという。飛行テスト時にはAoAを設定し、特定の反応をパイロットは想定できるが、動的なフライトでは「AoAがどうのこうのというより敵機の動きに注意を集中し、機体反応は戸惑わせるものがあった」という。
  13. ある例では操縦パイロットがフルラダーを試みたがまったく効果が生まれず、そのため操縦桿に入力し、ラダーを踏むこむのと同じ効果を試みた。操縦パイロットは更に強くラダーを試み、「大変大きなヨー」を期待したが、FCSのスピン防止機能で即座に打ち消されてしまった。
  14. スピンできない飛行制御とピッチレートが低いことからF-35はF-16の銃撃から逃れることはできなかった。「銃撃への防御で有効策はなかった」と報告書は指摘している。例えば標準的な回避行動はピッチレートが低いことで有効に使えなかったため、パイロットは「圏外脱出行動を執らざるを得ず、簡単に追尾されていしまった」という。
  15. ヘルメット装着ディスプレイの大きさも問題になった。「敵機が目視出来る場合の位置確認にヘルメットが邪魔だった」と報告書にある。バイザー部分も視野の邪魔になることが数回あった。
  16. そこで報告書では対策を数点指摘している。例としてAoA制限の緩和とピッチレートがある。ともに迅速な移動や高AoAの実施を妨げている。これが実現すればF-35はF-16に対する操縦性魚の優位性を確保できる。また操縦パイロットからは「混合」飛行制御の枠を拡げ、戦闘時に飛行制御が変化しないようにするとともに、スピン制御よりももっとヨーをおこなえるようにすべきだとする。
  17. エネルギー機動性が足りないことの解決はもっと困難だ。最新世代戦闘機でのAoA制約が低いことを考えると、「F-35がスホイやタイフーンを相手にすると、簡単に餌食になる」と経験豊かな軍のパイロットが評している。「向こうのほうが旋回率で優れており(推力に余裕があるため)エネルギーの有効利用でも優れている」
  18. 報告書を見た別のパイロットがAviation Weekに語ってくれた。その全員が戦闘機メーカーと関係があるわけではない。全員が一様にエネルギー機動性の不足に驚いている。ブロック40のF-16に制約があり、機外タンク装着も「F-35に有利に働いたはずだ」とそのひとりは指摘し、有視界戦闘であればF-35のエンジンが強力で新型であり有利になっていたはずだという。
  19. 「F-35の実態に目を向けるべきでしょう」と別の海軍パイロットは指摘する。「同機は格闘戦向け軽量戦闘機ではない。F/A-18E/Fの初期生産でも同じことがあり、コードを数百万行書き換え、何度も改修を行っています。ただ今回はコードの書き換えはずっと容易になっているはずですが」
  20. 「誰が見ても俊敏な戦闘機ではない」と三番目のパイロットが語る。フライトテストで条件を変えたことが問題になっていると指摘し、パイロットの操縦時間が削られ、飛行訓練を別の低価格機やシミュレーターで代用すれば問題になるという。
  21. 今回の報告書漏洩でロッキード・マーティンは空戦時の操縦特性は重要ではないと主張している。「F-35が搭載する技術は交戦し、射撃し、敵を長距離から排除することが目的です。目視による『ドッグファイト』は必らずしも必要ではありません」 ただし、Aviation Week’の情報入手先の一つが指摘している。視界外での交戦は開戦初期には困難だろうという。あるいは交戦規則が長距離攻撃を制約するかもしれない。「F-35に対する有効な対策は思い切り接近すること」だという。■
なお、報告書の原文は下を参照してください。


2015年7月2日木曜日

★なぜISISは一向に弱体化せず、逆に強くなっているのか



最後の発言が救いで経済振興ができれば過激主義に走る必要も減るのはだれでも理解できます。問題はどうやって世界全体が繁栄できるのかであり、暴力の連鎖を止めることなのですが、残念ながら暴力が最高の解決手段であることにかわりなく、対ISIS(今やアルカイダも的とみなし撲滅を誓っている)作戦は今後10年単位の期間がかかるだろうというのがブログ主の悲観的な見方です。

Panel: ISIS ‘Stronger, Tougher and Smarter’ Than Expected

By: John Grady
June 29, 2015 1:46 PM

イラク第二の都市モスルの陥落から一年たったが、イラク・シリアのイスラム国(ISISあるいはISIL)は「今までより強く、打たれ強く、賢い」敵となり、米国の予想を超え、中核構成員を失い死傷者を多数出しても迅速な回復力を示している。

  1. 会場の戦略国際研究所(CSIS)でワシントン・ポストのデイビッド・イグナティウスDavid Ignatius は「ISISの作戦展開の価値観は超高速、一方米国は超低速」と評した。

  1. CIA元副長官スティーブン・カップスStephen Kappasからはテロリスト対策で「9.11以後の教訓を忘れている」米国には驚きを隠せないと発言があった。また米国には「以前はうまくいったのに今度は失敗する事を作る」能力があると評している。またISISはイラク、シリア両国ならびに北アフリカで「真空地帯すべてを埋め尽くした」とも発言。

  1. 「ISIS戦闘分子は生き残る決意が固く、実際に生き残っている」とカップスは評し、日本兵が数週間に及ぶ空襲や砲弾の雨を生き残り、海兵隊相手に太平洋各地でしぶとく戦った第二次大戦の例をあげた。

  1. また質疑応答の部ではカップスはイラク国内のスンニ派と米国の同盟国・協力国は今回の戦闘が「厳しい局面になろうとも米国は見放さない」と理解すべきだと回答。

  1. イグナティウスからは米戦略でイラクのヌーン・アル=マリキに首相職を降ろさせ、国際有志連合でイスラム過激主義の敗退を目指し、治安部隊を動員し、スンニ派を巻き込んだのは基本的に正しい戦略だったとの発言があった。

  1. 「現在の問題は事実だがこの戦略を否定するものではない」とし、地域内連携やイラク国内部隊の動員が例だとする。

  1. イグナティウスはオバマ大統領には「作戦の責任を取る人物が必要だ。ジョン・アレン(退役海兵隊大将)はその責をとったが、ホワイトハウスでは誰も取っていない」と評した。実際には国務省にポストが生まれ、中央軍を相手にスンニ派過激主義者を撃退したのはどちらか言い争っているという。

  1. カップスは「各国駐在大使に信を置く」とし、ライアン・クロッカー Ryan Crocker 元大使とデイヴィッド・ペトレアス将軍Gen. David Petraeus がイラクでともに戦い、目標を達成していると指摘。

  1. スンニ派の「地方部族は一度足らずとも」米国を助けているとカップスは指摘。ISISとの戦いに再度勝つことは8年前「に増して困難な仕事」になったという。「不信感はいったん生まれると急速に拡大する」

  1. ふたりともイラクが単一国家として存続できるか疑問に感じており、スンニ派が政府を信用しない限り無理だという。

  1. 逆にふたりとも米国が今後数年間のうちに大規模地上部隊を派兵するとは見ていないが、前線航空統制官の派遣、物資提供の拡大、訓練教官の増強はありうるという。

  1. 「訓練や支援とは大変難しい業務だ」とカップスは言い「一緒にいなければならない仕事」で小銃の使い方を体得させたからといって帰国できないのだという。

  1. ただ米国の関与が拡大していない理由についてイグナティウスは「イラクと聞くだけでアレルギー反応を示す国がひとつある。アメリカ国民よりも大統領のほうが拒絶反応を示している」

  1. 米国には現在もイラク国内に情報源があるが、シリアには少ない。事実は「敵のことが十分わかっていない」のだとイグナティウスは言う。

  1. カップスはイランまで含み多くのレベルで「交戦を確信しているCIA情報官は多い」という。ここにシリアも含み、バシャ・アル=アサドに権力の座を降りるか、カダフィのリビアのように野垂れ死にするかの選択しかないと説得できるシリア人がいるという。

  1. イグナティウスはイランQuds部隊がISISの攻撃下にあったイルビルに最初に到着していると指摘。イルビルはイランの代理をつとめるシーア派戦闘分子を抱えるイラクの都市だ。イランは現地にかけつけて「戦闘開始の能力』があることを見せつけ、チクリットやアンバール県でも同様だったが、それぞれスンニ派が優勢な地方で「完勝をおさめていない」と指摘している。

  1. カップスは「外国人戦闘員の数が2万人と言われるが、にわかに信じがたい」と発言。イラク戦争時にはアルカイダ系外国人戦闘員の推定数はISISの十分の一だったとする。
.
  1. 今の懸念は外国人戦闘員がそれぞれ帰国したらどうなるかという点だ。「みつけだすことができるだろうか」との疑問があり、安全保障と法執行の中間で迅速さが重要だという。

  1. 「対テロ作戦の有効な方法は『雇用創出』だ。国内、国外問わず」とカップスは言う。働き口があれば若者をつなぎとめISISのような過激集団に加わらないようになるというのだ。■


2015年7月1日水曜日

★韓国がエアバス給油機を採用、次の焦点は日本



次の焦点は日本だと、エアバス、ボーイング両社は見ているようです。KC-767を導入済みとはいえ、KC-46Aは別の機体と言っても良い存在なので、一からの商戦になるのではないでしょうか。米国装備中心の日本のため、エアバス採用は考えにくいと見る向きが多いと思いますが、逆に考えれば価格面でボーイングが譲歩すれば日本としてはよい買い物になるチャンスかもしれませんね。

South Korea Selects Airbus for $1.33B Tanker Contract

By Aaron Mehta and Agence France-Presse4:15 p.m. EDT June 30, 2015
FRANCE-EUROPE-DEFENCE-MILITARY(Photo: Pascal Pavani/AFP)
SEOUL and WASHINGTON — エアバスが総額13.3億ドルの商戦を勝ち取り、韓国に空中給油機を納入する。ボーイングは敗退した。
  1. 1.488兆ウォンでエアバス・ディフェンスアンドスペースはA3300MRTTを4機2019年までに韓国空軍に納入する。
  2. A330MRTTはA330-200旅客機の派生型でボーイングKC-46Aに競り勝ったと韓国政府が発表した。
  3. 韓国初の空中給油機をとなりジェット戦闘機はより多くの兵装を搭載して離陸できる。
  4. 韓国の国防調達計画庁によればエアバス提案が価格と性能さらに搭載量で高得点だった。
  5. 韓国の空軍装備調達ではこれまで圧倒的に米国製装備が多かったのは、米韓両国の密接なつながりが背景にあった。しかし欧州勢もエアバスはじめ一定の契約受注に成功している。
  6. たとえば2005年にはエアバス・ヘリコプターが輸送ヘリ「スリオン」で韓国航空宇宙工業(KAI)との提携関係を樹立しており、スリオン1号機は2009年に発表されている。
  7. 今年3月にはエアバス・ヘリコプターは16億ドルでこれもKAIと提携して300機以上の民生・軍用ヘリコプター生産の契約を調印している。
  8. KC-46で海外の買い手を探している中でのエアバス選定はボーイングには痛手だ。
  9. ボーイング広報からは選定結果に「失望」したが、「今後も韓国とのパートナーシップを維持する」と発表している。
  10. A330給油機型は海外市場ではボーイングより成約数が多い。韓国は英国、UAE、サウジアラビア、シンガポール、オーストラリアに続いて同機の運用国となる。インド、フランスでは契約はまだないが、同機導入に傾いている。
  11. エアバス、ボーイングの次の商戦の舞台は日本で、この国もずっと米国装備の導入実績が圧倒的だが、選定では価格が決め手になりそうだ。■


2015年6月30日火曜日

米海軍>無人システムズ開発に真剣へ 統括ポストを新設 


海軍の場合は無人システムというと、空、海上、海中の各次元があるのでそれぞれ異なる解決策が必要です。今回の人事は統括部門を特立させるもので、米海軍が真剣に無人兵器システムの開発にとりくんでいることを示すものです。ただし、いまだに結論が出ないUCLASS無人機(偵察なのか攻撃手段なのかで一向にコンセンサスが取れない、国防総省・議会も巻き込み、とりあえず議論は棚上げ)の例のように開発の目的をしっかり舵取りしないと開発が遅れる・どうでもいい装備が生まれる弊害が発生するので、N99室のお手並み拝見ということでしょうか。

Navy Names First Director of Unmanned Weapon Systems

By: Sam LaGrone
June 26, 2015 5:46 PM

Rear Adm. Robert Girrier, deputy commander of U.S. Pacific Fleet, addresses chief selects during a chief pinning ceremony at Hickam Officer's Club Lanai at Joint Base Pearl Harbor-Hickam on Sept. 16, 2015. US Navy Photo
新任兵曹長を前に講演するロバート・ギアイア少将(米太平洋艦隊副司令官)。パールハーバー合同基地内ヒッカム将校クラブにて。 US Navy Photo

米海軍の無人兵器システムズで初代部長の人事が発表された。海軍向けの将来無人装備で空中、海中で技術開発を進める職務である。

  1. ロバート・P・ギアイア少将(現太平洋艦隊副司令官、水上戦士官のキャリアが長い)が新設N99室長となる。この職位は海軍作戦部長付官房 (OPNAV) の幕僚相当となる。レイ・メイバス海軍長官が発表した。
  2. メイバス長官からは無人装備担当の海軍副長官(DASN)職を新設すると発表もあった。ただしDASN人事はまだ発表がない。


MQ-4C Triton unmanned aircraft system completes its inaugural cross-country ferry flight at Naval Air Station Patuxent River, Md. on Sept. 18, 2014. US Navy Photo
MQ-4Cトライトン無人機システムは初の米国横断フェリー飛行に成功し、パタクセントリヴァー航空基地(メリーランド州)に2014年9月18日に到着している。US Navy Photo
  1. N99室は海軍向け無人航空機(UAV)業務をOPNAV内N2/N6情報支配・ISR装備開発担当から引き継ぐことになりそうだ。これに対し水上、水中の無人装備は海軍内の複数部門が担当している。
  2. 新ポストは「すべての無人装備の開発の統合調整」を狙うものとメイバス長官は説明している。N99と未定のDASN新設は海軍がボーイングF/A-18E/F後継機F/A-XXを模索する中でのことで、F/A-XXでも一部無人機能が盛り込まれると見られ、議会からは海軍のUCLASS(無人艦載偵察攻撃機)構想についていろいろ詮索が入っている。
  3. UAV以外では海軍は大口径無人潜水艇 (UUV) を原子力潜水艦から運用することを目指している。
  4. ギアイア少将の職務範囲は今後明確になるはずだがOPNAV広報からはまだ照会への回答がない。
  5. ギアイア少将はPACFLTで二回勤務しており、他にロナルド・レーガン空母打撃群(CSG)の指揮官経験があり、ニミッツCSG、第15駆逐艦部隊(DESRON)、誘導ミサイル駆逐艦USSローズベルト(DDG-80)、掃海艦USSガーディアン(MCM-5)でそれぞれ指揮をとっている。
  6. ギアイア少将は兵学校1983年卒で共著した専門書は米海軍協会が出版している。■

2015年6月29日月曜日

米海軍>女性下士官の潜水艦勤務の開始へ


米海軍の潜水艦にこれまで女性士官はいましたが、下士官での女性乗組がはじまることになります。しかし水兵には悪ガキがいるもんですね。

First Female Enlisted Sailors to Serve Aboard Submarine USS Michigan Selected
By: Megan Eckstein
June 22, 2015 5:11 PM

Marines from the 3rd Marine Reconnaissance Battalion prepare to disembark the guided-missile submarine USS Michigan (SSGN-727) during a small boat exercise in Apra Harbor, Guam, on March 24, 2015. US Navy photo.
第三海兵偵察大隊の隊員が誘導ミサイル潜水艦USSミシガン(SSGN-727) から小型舟艇に乗り込もうとしている。アプラ湾(グアム)での演習中、2015年3月24日撮影 US Navy photo.

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米海軍は初の潜水艦勤務女性下士官38名の選抜を終えたと22日発表した。
  1. 先任下士官4名と一般下士官34名を志願者多数の中から海上勤務、陸上勤務の双方での項目で絞り込んだと海軍は発表。
  2. 「潜水艦勤務を志願した女性下士官がかくも多いことに喜びを隠せない」とチャールズ・リチャード少将(第10潜水艦部隊司令官兼潜水艦部隊下士官統括司令官)は声明文で感想を語った。
  3. 「潜水艦部隊にとっては興奮を巻き起こす話題であり、将来の潜水艦乗員を適性人材から選抜しようとしているだけになおさらだ」
  4. 医学検査をパスすれば女性乗組員は既定の訓練課程に入る。その一部にグロートン(ニューイングランド州)の下士官潜水艦乗員学校があり、合格すればオハイオ級誘導ミサイル潜水艦USSミシガン (SSGN-727)(母港 ワシントン州バンガー基地)に配属される。
  5. 38名は水兵としての実績や潜水艦乗組の動機、ミシガンで採用している乗組員2チーム制にともなう必要度、健康度などから選抜され、「勤務実績、実戦適用度、艦長推薦、海上勤務年数、身体即応度などから選定した」という。.
  6. 「ずばぬけた適性のある候補者がいたが、十分なポジションがなく採用できないものもいた」とロッド・ハットン大佐(潜水艦部隊下士官管理部副部長)は語っている。「そういった非の打ち所がない候補者は代替リストに載せ、助成乗組員を拡大する際に採用していく」
  7. 次回採用は来月にもあり、代替リストに載った候補者は再度志願することが可能。また第一回目公募に応募しなかったものも次回USSフロリダ(SSGN-729)(母港 ジョージア州キングスベイ)乗組に参加できる。
  8. 米海軍では潜水艦勤務の女性士官がおよそ50名おり、2010年に男性限定が破られている。ただし問題がないわけではなく、昨年はUSSワイオミング (SSBN-742) の乗組員がシャワーを浴びる女性士官を盗撮した事件が発覚している。
  9. 女性下士官がミシガンに乗り組むのは2016年になり、以後女性乗組員は2021年にかけ順次増えていく。■

2015年6月27日土曜日

★ 北朝鮮の次回衛星打ち上げは今年10月か

衛星打ち上げも北朝鮮向け制裁の一部として禁じられているはずですが、この国には決議など関係ないのですね。打ち上げを強行するとしたら国際社会はどう対応すべきでしょうか。


North Korea close to completing upgrades to Sohae launch site

Nick Hansen, Stanford, California and Karl Dewey, London - IHS Jane's Defence Weekly
24 June 2015
ソハエの打ち上げ台付近に新規施設が確認された。 (CNES 2015, Distribution Airbus DS / IHS)
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北朝鮮のソハエ宇宙センターで打ち上げ台改修工事が続いており、衛星打ち上げが近づいている模様だ。
  1. 北朝鮮の宇宙開発機構NADA(国家航空宇宙開発局)の科学研究開発副局長Paek Chang HoがAP通信取材に5月末に応じ、新型「地球観測衛星」を開発中と認めた。ただし打ち上げ手段、打ち上げ予定、打ち上げ場所については明らかにしていない。
  2. 北朝鮮は技術開発を重要な政治上の期日に関連付けるのが通例であることから10月の朝鮮労働党結成70周年に打ち上げの可能性があるとの観測が広がっている。
  3. ソハエは東倉里Tongchang-riとも呼ばれ北朝鮮西海岸で黄海に面する位置にあり、同国の宇宙関連施設のひとつである。もうひとつはトンハエ(舞水端里Musudan-ri)で日本海沿岸に位置している。
  4. このうちトンハエ施設の衛星画像(2015年6月6日撮影)では大きな動きが見られない。大型打ち上げ台、組立施設、連絡道路の建設は止まったままで、Unha-2 (銀河)用の打ち上げ台は2009年に使用されたあとモスボール保存されているようだ。
  5. トンハエで活動が見られないことからソハエが北朝鮮の宇宙施設で中心になったとの観測の裏付けがとれた。アナリスト陣は北朝鮮がソハエを優先したのはロケット破片が日本国内に落下する場合の政治的代償を最小化するためと見ている。
  6. ソハエの存在が明らかになったのは2012年で、その後2回の打ち上げがあったが、いずれも成功とは言いがたい。Unha-3の打ち上げ(2012年4月)は第一段で致命的な失敗となり、同年12月のUnha-3打ち上げは成功したが、ペイロードは正しい軌道に載っていない。このペイロードは小型衛星だった。
  7. 失敗にめげず、ソハエは第二期拡張工事中だ。これまではUnhaロケットにより衛星打ち上げをめざす試験場だったが、2013年以降は施設が改修され、多用な打ち上げ手段の運用が可能となっている。その中に大型SLV(衛星打ち上げ手段)があり、その姿はすでに2012年4月に平壌郊外の Sanum Dong (山陰洞)開発施設でモックアップが目撃されている。
  8. 2015年6月3日にソハエ施設を撮影した衛星画像では大規模建設工事がほぼ完了している。打ち上げ台まわりが8月にも片付けられると、2012年のUnha-3打ち上げ2回に使用された組立施設、検査施設の様子から次回打ち上げは10月予定ということがわかる。
  9. ソハエでの建設工事は以下の通り。
  • ガントリータワーの全高が引き上げられている。
  • 打ち上げ台につながる鉄道引き込み線。線路には4メートルx20メートル大のトンネルがあり、ロケット運搬が可能。
  • 三階建て建屋が打ち上げ台東側に建築され、組立施設と思われる。一番高い部分で長さ30メートル、奥行き20メートルあり、ガントリータワーに面している。また引き込み線側に幅10メートル、高さ5メートルの開口部がある。
  • 長さ30メートル、奥行き20メートルの三階建第一段搬送装置を作っている。線路で移動し、ガントリータワーから引き込み線トンネルまで、さらに組立施設まで移動させるためのもの。
  1. 改修工事でソハエ打ち上げ施設は大型ロケット対応が可能となるが、当面はUnha型SLVを念頭に運用される可能性が高い。北朝鮮は以前からUnhaはあと6回の打ち上げが予定されていると発表している。
  2. さらにソハエの地上活動を隠蔽する工事も続いている。たとえば鉄道支線を覆う施設工事は外部観察をやりにくくし、今後のSLV打ち上げ活動の予測を困難にさせるためだろう。■

2015年6月26日金曜日

★ ベルは新型ティルトローターV-280 ヴァラーを製造中 次世代多用途垂直離陸機需要を狙う



ここにきてヘリコプターの技術革新が具現化を始めています。これまでのヘリコプターの限界が破られる一方で膨大な数の既存機種の更新需要は大規模です。ただしいったんは競作に敗れた各社にも研究資金が回されているのはまだ次代の主流技術を絞り込めていないことのあらわれでしょう。

V-280 Valor: Bell Starts Building Joint Multi-Role Prototype

By RICHARD WHITTLE on June 19, 2015 at 4:00 AM
陸軍航空兵力の未来を形に示すメーカーfあらわれた。ベル・ヘリコプターの契約企業スピリット・エアロシステムズ(本社カンザス州ウィチタ)がV-280ヴァラーの試作1号機の複合材機体の組立作業を開始した。ヴァラーはベルの新型ティルトローター機だ。
  1. ヴァラーは洗練された形状で小型かつベル・ボーイングV-22オスプレイより陸軍用途に適合した設計になっている。両機種ともティルトローター機構を採用している。
  2. ヴァラーは技術実証機の役割を担うが、同社による提案であり生産が決定した事業ではない。ただしペンタゴンが従来型ヘリコプターの速度や航空機の滑走路長の壁を崩そうと補助を出して開発を進める技術事業のひとつである。V-280ともう一社の競合作はUH-60ブラックホークやAH-64アパッチの後継機種となり、機体重量3万ポンドほどで230ノット以上の速度で飛行して従来型より100ノットも高速になる。またハチドリのようにホバリングし、陸軍以外の部隊も欲しがる機体になろう。
  3. もう一つの実証機がシコルスキー・エアクラフトボーイングが共同開発したSB>1ディファイアントで、名称のSB>1とは「シコルスキーとボーイングの和は1より大」との意味だ。この実証機の原型はコリヤ-杯を受賞したX2テクノロジー実証機とその派生型S-97レイダーだ。ディファイアントはまだ設計段階でアクティブ振動制御、硬性同軸ローターと可変回転数式推進プロペラにより従来のヘリコプターの速度限界を打ち破ろうというものだ。
SB1 Sikorsky Boeing JMR Behind rocks_CURRENT_IMAGE_042715SB>1ディファイアントの想像図
  1. ヴァラー、ディファイアントはともに費用は陸軍主導の共用多用途技術実証機(JMRTD)事業が一部負担し、将来型垂直輸送機 (FVLの実現につなげようとする。FVLの目指すのは「垂直輸送機部隊を次世代の水準にもっていく」ことだと事業主管のダン・ベイリーがアメリカヘリコプター国際学会(AHS)で先月語っている。
  2. AHISのロビー活動にも助けられ、ベイリーは議会から14百万ドルの予算を獲得した。だがその半分は昨年の競作に敗れた企業に回っている。AVXエアクラフト(本社テキサス)は3.4百万ドルを得て同軸ヘリコプターに推進用ダクテッドファンをつける構想の研究を続けている。カレムエアクラフト(本社カリフォーニア)も4.1百万ドルを得てカレムが特許を所有する最適速度ティルトローター技術の熟成を続けている。同社の創設者エイブラハム・カレムはプレデター無人機を作った人。
  3. ベルおよびシコルスキー/ボーイングの実証機はともに2017年に初飛行するが、成功しても採用され生産に移る保証はない。ただし現状ではあまりに多くの機体が老朽化の一途にあることから後継機需要は相当あるといってよい。
  4. 「技術実証機は次世代軍用回転翼機を占う重要な存在で、今世紀通じ大きな存在となるだろう」とAHIS専務理事マイケル・ヒルシュバーグMichael Hirschbergは語る。
  5. JMRTDはFVLが目指す新型軍用機の4大目標の一歩にすぎない。4つとは、軽量、中型、大型、超大型の4つであり、どこからでも離発着でき、 高速飛行し、遠くに飛ぶ機体だ。
V280 fuselage assembly June 2015V-280 機体組立中
  1. それでもV-280の機体製造が進むと、回転翼機の歴史に新しい一ページが加わるる。ペンタゴンが前回純粋な垂直離着陸機の実証機に資金投入したのは1973年のことで、陸軍とNASAのエイムズ研究所がベルに契約交付し、小型ティルトローター機XV-15の製造をさせたときだ。
  2. V-280とSB>1の両機が飛行を開始すれば、ベル、シコルスキー/ボーイングは歴史の再来を期待するだろう。XV-15は1981年のパリ航空ショーで飛行展示しており、海軍長官(当時)ジョン・リーマンは海兵隊にCH-46シーナイト後継機種に選ばれていたヘリコプターを中止させ、ティルトローター機の開発を命じた。これがV-22になった。当初は嘲笑の的だったティルトローターは熟成し海兵隊、空軍特殊作戦軍団が使用中で、ここにまもなく海軍が加わる。V-22採用を見送った陸軍だけが純粋なヘリコプターのみを運用する部隊になる。新型機でこの状況を打破することが期待される。■