2016年10月24日月曜日

★歴史に残らなかった機体 その3 YF-23



後世から見ればF-22およびF-35の採択が伝統的な単座小型戦闘機の時代の最後を招いたといえるのかもしれません。確かにYF-23の方が未来的な機体だったようですが、採択されていれば戦闘機主義が温存されるだけの結果になっていたかも。筆者は戦闘機が頂点の空軍戦力構造や組織構造には疑問を感じています。皆さんはどう思われますか。


A Look at the Plane that Lost Out to the F-22

ROBERT FARLEY
Yesterday at 3:27 AM


  1. 高性能戦術戦闘機(ATF)競合選定は冷戦末期に実施され、驚異的な戦闘機設計が二案生まれた。結局、選定に残ったのはロッキード・マーティンF-22ラプターで21世紀初頭では最高性能の制空戦闘機であるといわれる。敗れたノースロップ・グラマンマクダネル・ダグラスYF-23は現在はトーランス(カリフォーニア)とデイトン(オハイオ)の両博物館を飾っている。
  2. ではペンタゴンはどのようにF-22を採択したのか。その影響はどうあらわれているのか。内情を知ることは不可能だが、供用中のF-22ラプターがペンタゴンの苦境を数回に渡り救ったのは確かだろう。
  3. ATF競作の背景には1980年台初頭にソ連がMiG-29とSu-27の新型機を投入し米空軍の「ハイローミックス」F-15/F-16に対抗する動きを示したことがある。ATFは米空軍の優位性を改めて確立し、特にステルスでソ連を一気に引き離す狙いがあった。
  4. そのためATF候補のいずれにせよ成功をおさめることが支配観念となった。選考途中でソ連は崩壊し、ヨーロッパ大手は同じ土俵(ステルス、スーパークルーズ、センサー融合)で競合せず、F-22またはF-23が21世紀最高の戦闘機になるのは確実だった。問題はどちらが投資対象として残るかだった。それぞれ有利な側面があった。YF-23はスーパークルーズ性能が抜きん出ており、ステルス性能もF-22を凌駕していた。F-22はより簡易な構造で設計は手堅いものがあったが、機動性が優れ、高性能ドッグファイターになっていた。
  5. F-22選定の背後に政治と行政の要素がからみあっていたのはデイヴ・マジュンダーの指摘通りだ。B-2とA-12の両案件でノースロップ、マクダネル・ダグラス両社に振り回されたペンタゴンはロッキードを優遇した。米海軍はF-23を忌避し大幅改修したF-22の海軍仕様に期待していた。つきつめればF-22(およびある程度までロシアの対抗策PAK-FA)はジェット時代の制空戦闘機の究極の姿といってよい。想定される空戦場面でいかなる敵も撃破しながらステルス特性を活かして危険な状況でも交戦(あるいは退避)が可能だ。
  6. ATF選定がソ連崩壊と機を一つにしていなければ、YF-23に採択の可能性が十分にあったはずだ。同機の特徴は高度な内容で十分な性能と投資価値があった。さらにF-23をF-22と並行して生産していれば米国防産業基盤の温存には効果が高かっただろう。ロッキード採択でボーイングとマクダネル・ダグラスの統合に繋がったのは明らかだ。
  7. YF-23ではF-22ラプターを悩ませた問題とは無縁だった。コスト超過もなく、技術問題もなく、ソフトウェア不具合やパイロットを死に追いやった吸気配給装備の問題もなかった。対テロ戦が拡大する中でロバート・ゲイツ国防長官(当時)はF-22生産を187機で打ち切ったが、問題が山積する中の決断だった。理解できる決定とは言え、米空軍は戦闘機の機数不足をF-35だけで補う必要に迫られた。
  8. YF-23の開発が順調だったなら(大きな仮定の話だが)、同機の供用開始時にさほど困難な状況は生まれていなかったろう。だがYF-23の方が革新的設計(つまり高リスク)で、期待単価がやや高かったため、、問題なく供用開始になっていたか疑わしい。その結果、生産が滞れば米空軍にはさらに少ない機数しか使えない状況になっていたかもしれない。
  9. YF-23には第六世代戦闘機と言って良い特徴があり、空軍が想定する「長距離戦闘機」としてB-21レイダー爆撃機の護衛に同行できる性能があった。V字尾翼は初期のコンピュータ解析で次世代戦闘機として採択されたと言われる。ボーイングが新型戦闘機を設計する際にF-23の経験則をひっぱりだしてくるのはまちがいないだろう。
  10. YF-23試作機のうち一機はオハイオ州デイトンにある米空軍博物館内の不採択機格納庫(旧研究開発ハンガー)に鎮座していた。同機の隣にはXB-70ヴァルキリーが展示されており、同博物館の目玉となっており、両機とも最近新たにオープンした四号棟へ移動し、今後も違う未来の一部となっていたかもしれない機体として来場者の注目をあつめるだろう。同時に米航空兵力の産業面、組織面での現実を表す象徴でもある。■

Robert Farley a frequent contributor to TNI, is author of The Battleship Book .He serves as a Senior Lecturer at the Patterson School of Diplomacy and International Commerce at the University of Kentucky. His work includes military doctrine, national security, and maritime affairs. He blogs at Lawyers, Guns and Money and Information Dissemination and The Diplomat


2016年10月23日日曜日

当ブログ読者の皆さんへ ご注意ください。

軍事情報センター が当ブログをYouTubeにコピーして画像を加えながら当方の文章をほぼそのままスクロール表示しています。

当方のブログも各種サイトの記事を極力そのままの形で独自に訳出していますが、文章の構成など手を加えている上に、必要なら当方のコメントを冒頭に載せています。


軍事情報センター はそんな構造も理解せず、独自にアップロードしているようですが、

F15 じゃなくて F-15 でしょ。

そんな基本も踏まえていない 軍事情報センター はどこか怪しい匂いがするので皆さんご注意ください。

★★US-2インド輸出案件>機体価格で日印合意形成の模様



本件は本邦ではまだ報道がないようですね。値下げまでして妥結したとなればインドの粘り勝ちですね。日本政府は新明和に補てん処置をするというのでしょうか。改めて政府が絡むと防衛装備の商談がまとまらないとの印象がこれでできてしまうと厄介です。

India Resolves US-2 Aircraft Price Issue With Japan

By: Vivek Raghuvanshi, October 20, 2016

NEW DELHI — 日本インド間で初の防衛装備移転となるUS-2案件で交渉が二年間空転していたが日本から価格面で譲歩しインド海軍向け12機調達が前進することになった。インド国防省の関係者が明らかにした。
  1. 「機体単価を当初の133百万ドルから113百万ドルへ一割以上値下げする提案が日本からあり、総額13.5億ドル相当の政府間取引は最終段階に入った」と上記関係者は匿名を条件に語った。
  2. インド首相ナレンドラ・モディは2014年の政権発足後、初の外遊先に日本を選びインド海軍向けに新明和US-2購入の希望を公表した。だが日本側が機体価格の値下げを拒み交渉は難航していた。
  3. 本件に関し現地日本大使館はコメントを出していない。
  4. インド海軍関係者はインド洋での活動に同機を一日も早く導入したいとの希望を表明している。「現行機材で実施不可能な洋上活動中の海軍艦艇向け補給物資輸送任務に投入したい」
  5. 退役インド海軍提督で現在は国防アナリストのアニル・ジェイ・シンはUS-2導入で「本国から最大1,100キロ離れた戦略的に脆弱な島しょ部での有事に迅速対応できる」と期待している。
  6. インド洋、太平洋での中国影響力を抑え込みたいインドは日本との連携を強化するルックイースト政策を掲げており、今回の調達は大きな意味がある。
  7. 「戦略重要性は決して誇張ではない。日本としても戦後初の軍事製品輸出になるのではないか。インド日本間の戦略関係が深化する象徴となり、地政学上もインド太平洋で大きな意味が生まれる」とシンは述べている。
  8. 日本は1967年以来堅持してきた武器禁輸措置を2014年に方針変換しており、インドがUS-2を導入すれば初の防衛装備輸出案件となる。
  9. インド海軍がUS-2を導入すれば中国が今年7月に世界最大の飛行艇AG600を製造に成功したと発表した中で大きな対抗策となる。
  10. 「インドがUS-2機を導入する可能性が明らかになるとAG600試作機製造の優先順位は引き上げている。中国も同機をインドと同様の用途に投入するようだ。インドがインド洋にてUS-2を運用するように中国がAG600を南シナ海で使えば軍事上戦略上の均衡につながる」と上記インド海軍関係者は述べている。
  11. 「日本政府は日印防衛協力を戦略パートナーシップの延長上にとらえており、US-2調達が日印間の防衛協力以上の戦略的つながりの構築につながる可能性がある」
  12. アンクル・グプタはアーンスト&ヤング・インドの防衛アナリストで今回の商談について「インドと日本は長期間にわたる協力を国土インフラ整備で維持してきた。今回US-2導入が目前となり両国関係は戦略レベルに引き上げられる。機体一部が国内生産になれば現地製造技術が向上する」と述べた。■


★★次期制空戦闘機の姿は大型化、性能向上で現在の戦闘機概念を覆えす可能性

これまでもシンクタンクの想定で戦闘機が大型化するとの考えが示されていますが、米空軍内部でも同じ論調が生まれているようです。実現すれば第一次大戦から続く小型機=敏捷な空の駆逐者とのイメージが大幅に変わる可能性がありますね。一方で給油機等の支援機材の脆弱性が表面化してきました。頭の痛い話です。



War Is BoringWe go to war so you don’t have to

The F-22 Raptor’s Successor Will Be Bigger and Faster Than a Typical Fighter

The U.S. Air Force wants a plane with more range and a heavier payload in the 2030s

by DAVE MAJUMDAR
米空軍の次世代制空戦闘機が初期検討中で17年1月から18ヶ月かけ代替手段検討(AOA)を開始し、2030年代以降の空を制する新型機の性能内容を煮詰めていく。
  1. 2035年にはステルスF-22は機齢30年、F-15Cは供用開始50年以上になる。
  2. まだ空軍は次期制空戦闘機の性能で方針を決定していないが、上記を考えると空軍が侵攻制空戦闘機(PCA)と想定する機体はF-22やF-15では対応不能な脅威内容に対応する性能となるはずだ。
  3. 「将来登場しているはずの脅威内容は理解できています」と航空戦闘軍団で制空戦闘機中核機能開発チームを率いるトム・コグリトー大佐はNational Interest取材で答えている。
  4. 「現有の性能や今後導入予定の性能でどう対応するのか、もしギャップがあればそのときどんな新性能を開発して対抗すべきか検討しています」
  5. コグリトー大佐の説明ではPCAは将来の「各種性能ファミリー」の一要素となり、制空任務はその一部にすぎない。その他必要な機能に基地運営、兵站活動、通信、情報収集監視偵察、指揮統制があり、各種機体・兵装を既存並び新規開発装備を取り混ぜ実現していく。
  6. 空軍では制空任務は運動性兵器以外に非運動効果として電子攻撃やサイバー戦も想定していると大佐は説明。
  7. 基地運用や兵站活動はともすれば軽視されがちだが、近代航空戦では重要な要素で特にロシアの復活や中国の軍事力拡大の中で基地が長距離精密攻撃の対象になってきたことが懸念されている。
  8. その中で中国は一連の巡航ミサイル、弾道ミサイルを開発済みで西太平洋の米軍基地が狙われている。ロシアも長距離攻撃用のカリブル-NKやKh-101ステルス長距離巡航ミサイルを保有しており、米軍の欧州や中東地区基地が脅威を受ける可能性がある。
  9. 「各地から作戦活動を展開する必要があるのは明らかで基地の安全が必須だ。そうなると必要な場所より遠隔地から活動する能力が必要になってくる」(大佐)
  10. 米空軍は空中給油機の安全確保でも構想固めをしている最中で、将来の制空任務実現に必須とみているためだ。ロシア、中国ともに給油機を標的にして米主導の航空作戦を崩すことをを狙って来るのは必至と見ている。
  11. ロシア、中国ともに長距離空対空ミサイルで重要機材を攻撃することを想定している中で、米空軍は長期的にステルス給油機を開発するとしているが、中短期的には緊急対策として脅威軽減が必至としている。
  12. そこで米軍の対抗策として機材の後続距離、滞空時間を延長する事があるが問題は戦闘機の機体寸法に伴う制約条件だ。
  13. 「戦闘機は小型なため滞空時間に制限があることになりがちだが、根本から見直しこの問題に取り組む」とコグリトー大佐は述べる。
  14. 戦闘機の航続距離、滞空時間での制約は実際の作戦面でも明らかになっている。
  15. その例に2011年のリビア作戦があり、防空装備が旧式化していたにもかかわらず作戦が困難を極めたのは距離のせいだった。将来の機材も現有機同様の性能なら運用上大きな問題が再来する。
  16. 「リビアは難題でした。距離そのものが課題でした。イタリアから発進してシドラ湾まで3時間の飛行で、シドラ湾自体は1,100マイルの長さがあります。防空体制が想定より劣ることがわかったとは言え、戦闘機の速度を考えると遠隔地の距離そのものが課題となりました」
  17. そこで給油機の性能要求もPCA研究の一環で空軍は行っている。
  18. 「PCA要求性能の検討の一部として給油機問題も取り上げることになります。長距離機材があれば給油機部隊も縮小できるという人がいますが、反対に小型機運用で小型給油機を多数運用すれば有利になることもあれば不利になるかもしれません」(大佐)
  19. 戦闘機には他の問題もある。小型なためペイロードが限定されがちだ。現有のF-22やF-35が搭載する機内兵装量は少なく、将来の航空戦で制約条件となる。
  20. 「三時間四時間と飛んでも爆弾二発ミサイル二発しか搭載できず、基地へ戻るのではいかにも効率が悪い。そこでまたもや距離の制約条件が猛威を振るいます。でなければもっと長距離を飛んでミンションに必要な量の兵装を搭載しなくては」(大佐)
  21. そこで制約条件の解決策として将来登場するPCA機は大幅に大型機とすることがある。長距離を飛び大量の兵装を搭載するのだ。
  22. この距離、滞空時間、ペイロードの要求とステルス、電子戦能力、速度、操縦性他をバランスさせる必要があるが、空軍の求める性能内容には矛盾する要素がある。大型ステルス機で大ペイロードを搭載し長距離飛行させつつ鋭敏な操縦性をもたせるのは現状では技術的に大きな課題だ。
  23. とは言え新技術として適応型サイクルエンジンの開発はジェネラル・エレクトリックおよびプラット&ホイットニーで進みつつあり、上記の矛盾する性能内容の実現に一役買うだろう。
  24. 「可変サイクルエンジンが実現すれば機体は相当変わってくるはず」と見るのはジェフ・マーティン(ジェネラル・エレクトリック、第六世代戦闘機エンジンを担当)だ。
ハリウッド映画さながらのノースロップ・グラマンの考える第六世代戦闘機の姿。Northrop Grumman capture
  1. ステルスがPCAでも一定の役割を与えられるのは必至だが空軍は次世代制空戦闘機用に電子戦装備に重点を置いているのも明らかだ。
  2. 「2030年代以降で残存するためには電子攻撃能力が必至」とコグリトー大佐は述べる。PCAがステルス、電子攻撃、速度、残存性を筒減するのは確実だ。「バランスが必要です。残存性を図る対策はたくさんありますが」(大佐)
  3. 米空軍ではその他に指向性エネルギー兵器のような興味をそそられる装備も検討しているが、レーザーの可能性は認めるつつ技術がまだそこまで追いついていない。どこかの段階で空軍は開発中技術の搭載を断念すべきかの決断を迫られそうだ
  4. 「そこが新技術で悩ましくも魅力を感じるってんです」とコグリトー大佐は述べる。「選択肢は多くあり、新技術には将来の機体に波及する効果も期待でき、機体寸法の制約を解決する新しい可能性があります」
  5. 米空軍がPCA開発に乗り出す決定をすれば機材は2030年代中頃に運用開始できるはずだ。
  6. ロシア、中国等の潜在敵性勢力の能力が向上している中で現有米軍装備が脅威にさらされることが増えている。そうなると究極的に米軍は新型制空戦闘機を開発し航空優勢を維持する必要がある。
  7. 「敵性勢力が装備、運用双方で実力を伸ばしており、こちらも進歩ているとは言え、空対空戦の有り様は大きく変わってしまったとの認識です」とコグリトー大佐は述べた。



2016年10月17日月曜日

★★★次期ステルス戦闘機で日本へ共同開発を持ちかけるロッキード




ヒューソン社長が小牧に来ていたのは知りませんでした。商売上手な同社のことですからこれからあの手この手と日本側に甘いことばをかけてくるのでしょうね。一方で三菱重工業も単独開発のリスクを考えると共同開発には一定のメリットがあると考えるはず。そうなるとボーイングが何を言ってくるかがポイントになりそうです。

Nikkei Asian Review

Lockheed proposes stealth fighter project with Mitsubishi Heavy

SAM NUSSEY, Nikkei staff writer
October 15, 2016 2:00 am JST

TOKYO -- ロッキード・マーティンが三菱重工業に新型ステルス戦闘機製造で共同開発提案していることが明らかになった。
「パートナーとなる三菱重工から情報開示の要望が8月にありすでに対応している」と同社社長マリリン・ヒューソンが日本航空宇宙展での取材に答えている。
Lockheed Martin President Marillyn Hewson

ロッキード・マーティンの回答は防衛省からの要望に対応したもので緊張高まる中で日本の防衛力を整備する方策を検討する一環と思われる。
日本は現有90機あるF-2の後継機として選択肢を3つ想定している。ひとつは国産開発だ。二番目はロッキード・マーティン含む海外メーカーとの共同開発、三番目が既存機種の調達だ。
防衛省の検討はまだ続いており、第二回目情報開示要請が来年3月までに出る見込みで、ヒューソンは「是非対応していきたい」とする。最終決定は2018年度内に行われる見込みだ。
ロッキードのライバルたるボーイングも三菱重工業と共同でF-2後継機開発を提案している。三菱重工業はすでに試験機を昨年初飛行させており自社単独開発の途も選択可能だ。
日本が調達するF-35合計42機はF-4の更改との位置づけだ。そのうち最初の四機はロッキードがテキサスで製造中で1号機は完成済みで9月23日にロールアウト式典が行われている。
残る38機は三菱重工が名古屋の最終組立点検施設(FACO)内で完成させる。この施設は米国以外には二箇所にしかない。「相当の作業量と技術移転が実現するので日本の防衛能力整備の継続に役立つはず」とヒューソンは語った。米国防総省は日本とオーストラリアをF-35ノアジア太平洋地区での整備拠点に選定ずみだ。
ヒューソンは名古屋近郊の同施設を訪問し、「当社社員が多数三菱側と肩を合わせて作業している生産現場を見られてよかった」と感想を述べている。■



2016年10月16日日曜日

★歴史に残らなかった機体 その2 F-15の海軍版シーイーグルはなぜ実現しなかったのか



The National Interest

The Sea Eagle: How America's F-15 Fighter Almost Became a Aircraft Carrier Jet

October 14, 2016

  1. 1980年代、90年代に米軍の航空戦力のシンボルとなる強力な機種は空軍のF-15制空戦闘機と海軍のF-14可変翼戦闘機で後者は映画トップガンで魅力的に描かれていた。
  2. だが事情が変わっていれば映画でトム・クルーズが操縦した機体F-15イーグルになっていたかもしれない。
  3. 米海軍はF-15の空母運用型をF-15Nまたの名を「シーイーグル」として検討していた。1971年のことでデニス・ジェンキンスの著作「マクダネル・ダグラスF-15イーグル、究極の大型戦闘機」で解説がある。
  4. シーイーグルには機体改修が必要だった。たとえば折りたたみ式主翼や着陸装置の強化だ。だがマクダネル・ダグラスの立場は「推力重量比や視界の優秀性でF-15は空母運用に最適化されていたはず」とジェンキンスは著している。
  5. 1970年代初頭にマクダネル・ダグラス(現ボーイング)は機体売り込みのチャンスがあった。F-14は1974年に導入されたがトラブルが多く、プラット&ホイットニーTF30エンジンの出力不足が批判の的となっていた。機体価格でも1988年ドル価値でF-14は38百万ドルだったが、空軍仕様F-15Aは28百万ドルだった。
  6. F-15NはF-14を速度、操縦性双方で上回り機体価格も安く実現できていたはずだ。だが艦載型は重量が3,000ポンド増えていただろう。さらにF-15Nでは当初サイドワインダーとスパローの空対空ミサイルと機関砲を搭載するはずだったが、海軍がソ連爆撃機の迎撃に期待していた長距離AIM-54フェニックスミサイルは搭載の想定がなかった。
  7. 海軍の戦闘機研究で別の課題も浮上した。F-15にフェニックスミサイルとAN/AWG-9長距離レーダーを搭載すると機体重量はF-15Aより10千ポンドも増え、トムキャットの性能より劣ることになる。マクダネルとフェニックスのメーカー、ヒューズはF-15(N-PHX)を考え出し、フェニックスミサイルはそのままでレーダーを空軍向けAN/APG-63の高性能版ですまそうとした。
  8. 上院の小委員会で海軍版F-15の審議が1973年3月に始まった。「その時点でF-14は問題だらけで、小委員会は代替策を求め、低コスト版(つまり装備を取り外した)F-14、F-15N、改修型F-4を検討した」とジェンキンスは著している。「イーグルトン上院議員がF-14とF-15の空中実証を提案したが結局これは実現しなかった」
  9. 結局のところ海軍はトムキャットを使いまわす方向に落ち着いた。だがシーイーグルはそこで終わったわけではない。上院公聴会から「第四海軍戦闘機研究部会が発足し、ここからF/A-18Aが生まれたのだ」(ジェンキンス)
  10. シーイーグルは有効な効果を実現していただろうか。現在のF-35にも通じる問題が見えてくる。一部で性能を犠牲にする必要があるのだ。事実、F-14は失敗に終わったF-111海軍空軍共用戦闘機構想から生まれている。F-15をF-14同様の空母運用迎撃機にするためには相当の設計変更が必要で海軍版F-15はF-14や通常のF-15より性能が劣る機体になっていただろう。
  11. そこで現実問題につながる。空軍と海軍は要求内容が異なるのが通例だ。1970年代に空軍は協力で高い操縦性を備えたドッグファイターでF-4ファントムがベトナム戦でMiG戦闘機に味合わされた苦労の再発は避けようとしていた。皮肉なことに空軍は一時期F-106迎撃戦闘機の後継機にF-14を検討していた。
  12. だが海軍が求める迎撃戦闘機はソ連爆撃機や対艦ミサイルの阻止が目的だった。このため高出力レーダーとともに大型長距離空対空ミサイルの搭載が必須だった。F-35と同様におなじ機体を異なるミッションに投入するのはそもそも無理な話だがこの点が認識されていなくなってしまう。
  13. そしてもちろん政治が絡んでいた。空軍と海軍は政治家が求めてきた場合にだけそれぞれの機材を導入する。シーイーグルはペンタゴンやホワイトハウスに有力な推進支持派がないため失敗する運命だっただろう。
  14. 幸いにも最終的に海軍と空軍はそれぞれ求める機材を調達し、機体統一はしなくてすんだ。
Michael Peck is a contributing writer for the National Interest. He can be found on Twitter and Facebook.


★★UH-X以外にAH-1Z、新型ティルトローター...と日本に期待するベル・ヘリコプター



JAPAN AEROSPACE: Bell, Fuji engineers busy with UH-X specifications
13 OCTOBER, 2016
BY: GREG WALDRON
TOKYO
ベル・ヘリコプターは富士重工業と共同で防衛省が調達するUH-Xヘリコプター150機の生産前準備に取り掛かっている。富士重工の技術陣はベル本社(テキサス州フォートワース)で作業を進めている。
ベルの日本代表リチャード・ソーンリーによれば動力伝達系での性能が向上するとしているが、日本側は改修内容を一切明らかにしていない。
機体は富士重が現地生産し、1号機は2022年納入予定。ベル412EPIを原型とする同機の生産納入は陸上自衛隊で供用中のUH-1Jの退役日程に依存する。
富士重工の生産で経済規模を確保するため民生版の412EPIも日本国内で販売する。両型式合わせ生産は20年以上継続するとソーンリーは見る。
2015年にベルはエアバスヘリコプターの新設計案を破りUH-X選定を勝ち取っている。
同社の軍用ヘリコプター事業開発担当副社長キース・フレイルは日本が求めるAH-X攻撃ヘリ調達(60から70機規模)にも注目中と明らかにした。
「当社のAH-1Zヴァイパーは日本の要求にぴったりです」とし、「海兵隊仕様ですので、長大な沿海地形を有する日本に最適です」と述べた。
ベルは新型ティルトローター機V-280ヴァラー及び最近発表したばかりの無人機V-247で日本関係者と非公式協議をしている。
ソーンリーは日本は初のV-22海外採用国で17機を米海兵隊をモデルに新設した部隊に配備するとし「この国はティルトローター運用にぴったりです」と述べた。■


2016年10月15日土曜日

★川崎C-2は軍用輸送機のすき間需要に活路を見つけられるだろうか



JAPAN AEROSPACE: Kawasaki sees unique niche for C-2 transport


12 OCTOBER, 2016
BY: GREG WALDRON
TOKYO

Wikipedia Commons
川崎重工業は航空自衛隊向けにC-2輸送機二号機を2017年に納入する。1号機は今年6月に納入し供用中と同社広報が説明。
  1. 同広報は納入予定の合計機数を明示しなかったが、防衛省から20機から40機の受注を得て、供用中のC-1の代替機材として納入できると見ている。年間生産は3ないし4機に増産できるが、防衛予算の動向次第だ。
  2. またジェネラル・エレクトリックCF6ターボファン双発のC-2は輸送任務用途で隙間需要に対応できると同広報は述べ、30トンの貨物を搭載し6,000キロを僅かに満たない距離まで輸送できるという。
  3. ボーイングがC-17生産ラインを閉鎖して、戦略輸送機の高性能機材で不足が発生している。同広報によれば数か国C-2に関心を寄せているという。川崎重工業はその中でロッキード・マーティンC-130の後継機需要に期待している。
  4. 「C-130を上回る搭載量で遠距離輸送するニーズにC-2は最適」と同広報は述べている。
  5. また民生用派生機種の開発は凍結しているという。川崎重工業は大型貨物輸送機の需要があると見ていた。
  6. だが航空貨物輸送分野各社との意見交換で現状では民間貨物輸送市場には同機価格は高すぎるとわかった。ただし今後も民間貨物輸送分野を注視していくという。■


★F-15Jをミサイルトラックに変身させる案をボーイングが提案中の模様



トラックと言う表現はB-52にもありますが、F-15がミサイルトラックになるというのは高機動の空中戦が発生するよりまず敵勢力の減衰を狙うミサイル攻撃を先に行うということですね。であればF-15でなくてもミサイルトラックはP-1やC-2を改装すればもっと多量のミサイルが運用できるのでは。

 JAPAN AEROSPACE: Boeing promotes F-15 as air-to-air missile truck

12 OCTOBER, 2016
BY: GREG WALDRON
TOKYO
  1. ボーイングは日本が運用中のF-15J制空戦闘機部隊の改修案を複数用意し、供用期間延長とともに性能向上策を提供する。
  2. 日本におけるボーイング防衛部門の代表を務めるジム・アーミントンはF-15改修案で日本と打ち合わせていることを認めたが詳細は明らかにしない。
  3. 「航空自衛隊が同機ミッションを検討しているなか、F-15に性能拡張の余地が大きいことが理解されている」(アーミントン)
  4. ただし同人は航空自衛隊機材はまだ飛行時間が相当残っていることを確認し、現在利用可能な技術でF-15Jが「一足飛びに」性能向上する可能性があると認めた。
  5. 「選択肢は広いです。AESA(アクティブ電子スキャンアレイ)レーダーがありますし、新型戦術コンピュータや新型電子戦装備一式や機体遺体型燃料タンクの他にミサイル搭載数の増加もある」と自身もF-15パイロットだったアーミントンは指摘する。
  6. 国際航空宇宙展のボーイングブースではF-15模型にレイセオンAIM-120AMRAAM空対空ミサイル16発を搭載しており、現行の二倍の搭載量になっている。
  7. アーミントンは既存機体の改装費用は新型機導入より相当低くなると指摘している。
  8. 2015年にボーイングは2040年まで供用前提としたF-15Cの性能向上型を発表し、2040Cの呼称で「四発パック」弾薬格納方式で空対空ミサイル数を16発にし、機体一体型燃料タンクで飛行距離拡大をめざすとした。またレイセオンのAPG-63(V)3 AESAレーダー、長距離対応の赤外線探知追跡センサーも搭載し「先に探知、先に発射、先に撃墜」が可能となる空対空戦闘能力が実現するとしていた。
  9. ボーイングのF-15営業部門のウィル・レーンはF-15は機外ハードポイントの追加で搭載兵装量を増やせるとする。ただし既存機材ではハードポイント装着は困難かつ高費用なので機体下にミサイルを8発搭載するのが賢明な選択肢と述べている。「既存機材には16発まで、新造機なら20発の搭載が可能です」
  10. 日本には空対空ミッションの優先順位が高い。中国との対戦が発生した場合には中国の巡航ミサイルの波状攻撃以外に拡大中の中国航空戦力への対応が必要になる。■


2016年10月12日水曜日

もし戦わば⑦ 嘉手納、アンダーセンへの攻撃を必然とした米軍が考える予備航空基地


嘉手納基地付近の不動産価格は有事にはゼロになるということですか。同じことが神奈川県でも発生すれば日本の不動産市場は大変なことになりますね。といって中国や北朝鮮のミサイルが精密に基地施設だけを狙うとも思えず、日本の各地が不動産価格暴落の危機にあることになりますね

The National Interest


Revealed: America's Backup Plan in Case of War with China


February 25, 2016

  1. 中国と交戦状態に入れば太平洋各地の米軍基地は安全とはいえない。2015年に出たRAND研究所報告では最悪のシナリオを紹介し、「大規模かつ正確な攻撃が数波に渡り強靭性が劣る基地に加えられると大きな被害が発生し航空機喪失は甚だしく、基地も当面再開できないほどの被害をあびる」としている。
  2. 嘉手納基地は地理的な位置のため最も激しい攻撃を受けるだろう。中国は2015年9月にDF-26弾道ミサイルを公表し、グアムのアンダーセン基地攻撃が可能と明らかにした。アンダーセン、嘉手納の両基地は米軍の海外基地で最重要かつ最大規模の施設だ。
  3. そこでティニアンが登場する。グアム近隣の小島が米空軍の予備飛行機地となる。2月10日に空軍からティニアンを「アンダーセン空軍基地など太平洋地区の基地が利用できなくなるか制限される場合に代替基地として使う」との発表があった。
  4. ペンタゴンの2017年度予算要求では9百万ドルで17.5エーカーの用地を取得し「分散活動や演習時の支援に」使うとしているとサイパン・トリビューン紙が伝えている。飛行施設拡大で平時には「最大12機の給油機他支援要員」を駐留させると空軍は見ている。
  5. ティニアンは今はのんびりした場所だ。
  6. 第二次大戦中は第四及び第二海兵師団が同島を奪取し、B-29スーパーフォートレス部隊が駐留し、原爆投下機も同地から離陸している。戦後に施設は放棄され、使用されないまま残っている。同島にはもう一つ小型の国際空港があったが放棄され荒れ果てたままだ。
  7. 米空軍は当初はサイパンを利用する意向だった。サイパンはティニアンの15倍の人口規模で空港施設も大型で港湾もある。現地からの反対が強く立ちふさがった。
  8. もともとビジネス重視のはずの商工会議所も反対派に加わり今でも混雑気味のサイパン空港に軍人が毎年八週間も演習で来訪しさらに混雑させるのは耐えられないとした。
  9. そのため過去回帰となる。冷戦時には世界各地に軍基地が展開したが、ソ連のミサイル攻撃の脅威が消え、湾岸戦争後の予算削減が1990年代に強まると各地の基地を統合し巨大基地になっていった。
  10. だが2015ン年に論文を書いたRANDのアラン・ヴィックは分散配備の方が残存性が高くなると指摘する。
  11. 「機材を基地多数に分散させることで作戦運用上の冗長性が生まれる。フライトの安全性が生まれ悪天候や緊急時の代替着陸地が利用できる。敵はそれだけ多くの拠点を同時監視する必要が生まれ標的の選択に迷うはずだ。(友軍があちこちの基地に分散する前提)」
  12. 「分散配備で敵は滑走路一本だけ狙うよりも多くの兵力を動員することになる。配備基地を増やせばそれだけ建設費用が運用コストが高くなるが、分散配備先の施設は完全水準でなくてもよく、滑走路だけでも十分になる場合もあるはずだ」
Robert Beckhusen is the managing editor of War is Boring, where this articlefirst appeared.

2016年10月10日月曜日

★韓国が空中早期警戒機を2機追加調達する



稼働状況が悪く部品取りになっている機体があるとの報道もありましたが現状はどうなんでしょう。韓国には日本の防衛上もしっかりしてもらいたいところなので記事が言うような常時警戒態勢が実現すればそれはそれで良いニュースですね。逆に言えばやはり現状では常時監視はしていないということになります。


Posted : 2016-10-09 09:53
Updated : 2016-10-09 10:02

S. Korean Air Force to acquire 2 more Peace Eye AEW&Cs

Wikipedia commons
韓国空軍はピースアイ空中早期警戒統制機 (AEW&C)を2機追加調達すると韓国政府筋が9日述べた。
  1. E-737は6機になり韓国空軍の状況認識能力が向上し、情報収集と空軍機の統制機能が引き上げられる。同様の機材を保有しない北朝鮮へ抑止力となる。
  2. また防空識別圏の監視能力も向上し北東アジアの空で安全保障問題が深刻化する中で意味がある。
  3. 「以前からAEW&C機材の拡張案はあったが、今回は『確認』されて長期調達案の一部となった」と政府筋は匿名を条件に話してくれた。
  4. 同筋は調達の予定期限に触れなかったが長期案とは通常5年を指し、予算手当をしている。
  5. 今回の動きは南北間の緊張が高まっている中で北朝鮮が第五回目の核実験に9月9日踏切り韓国・米国への先制攻撃を警告しているでのこと。
  6. E-737増強で韓国は常時空中待機が可能となる。
  7. 韓国へのピースアイ初号機引き渡しは2011年9月のことで、翌年までに四機が供用されていた。
  8. 各機はLバンド多用途電子スキャンアレイレーダーを機体上部フィンに搭載し360度全周で最大1,000機の航空機を監視する他、海上捜索も可能。ボーイング737旅客機を改造した同機は10時間まで滞空可能で特に低空飛行中の機体の探知に有効だ。韓国空域へ低空で侵入し朝鮮半島の山地地形を利用した侵攻が危惧されている。
  9. E-737は韓国の他にオーストラリアとトルコでも供用中だ。■